(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の遮光膜形成基板は、基板と、該基板の上に形成された樹脂層(A)と、該樹脂層(A)の上に形成された樹脂層(B)と、を備え、上記樹脂層(A)が、白色顔料を含有し、上記樹脂層(B)が、上記一般式(I)〜(III)からなる群から選ばれる一般式で表される黒色顔料、又は、赤色顔料及び青色顔料を含有し、上記樹脂層(A)及び上記樹脂層(B)の積層の光学濃度が、3.0以上であることを特徴とする。 本発明の遮光膜形成基板は、基板を備える。基板としては、例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、表面をシリカコートしたソーダライムガラス若しくは化学強化ガラス等の無機ガラス類の平板、又は、有機プラスチックのフィルム若しくはシートが挙げられる。
【0019】
本発明の遮光膜形成基板が備える樹脂層(A)は、白色顔料を含有することが必要である。
【0020】
ここで白色顔料とは、可視領域に特定の吸収を持たず、かつ、屈折率が1.5以上の不透明な顔料をいう。
【0021】
顔料の屈折率とは、ナトリウムD線に相当する波長589nmでの屈折率をいう。顔料の屈折率は、液浸法すなわちベッケ線法により測定することができる。
【0022】
白色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛又は鉛白が挙げられるが、遮蔽性に優れ工業的利用が容易な二酸化チタンが好ましく、分散性の向上及び光触媒活性の抑制を目的とした、Al、Si及び/又はZrで表面処理された二酸化チタンがより好ましい。
【0023】
樹脂層(A)が白色顔料を含有することで、遮光膜のユーザー側の面を、意匠性の高い、淡色系にすることができる。また、樹脂層(A)が白色顔料の他に赤色顔料や青色顔料等を含有することで、遮光膜のユーザー側の面を、ピンクや水色等の所望の色にすることができる。
【0024】
なお、「基板の上に形成された樹脂層(A)」とは、基板から見て上方に樹脂層(A)が形成されていることをいい、基板と樹脂層(A)とが直接接触していることを要求するものではない。このため、基板と樹脂層(A)との間に、例えば遮光膜のユーザー側の面の色度をより好適なものとするため、白色顔料を含有しない他の樹脂層が存在しても構わない。さらには、樹脂層(A)が、それぞれ白色顔料を含有する、組成の異なる複数の層から構成されていても構わない。
【0025】
本発明の遮光膜形成基板が備える樹脂層(B)は、黒色等の濃色系の膜であって、遮光性に劣る淡色系の膜である樹脂層(A)の遮光性を補う役割を果たす。樹脂層(B)の形成によって樹脂層(A)の遮光性が補われることから、
十分な遮光性を高めるために樹脂層(A)の厚みを大きくする必要はなくなる。
【0026】
また、近接センサーが配置される部位においては樹脂層(A)に孔を形成する必要があることから、当該部位においては樹脂層(B)が基板側から視認できることとなる。このため樹脂層(B)には、赤外線を透過できる性質に加えて、当該部位における引き出し配線等の視認を十分に抑止することが要求される。
【0027】
上記のような要求を満たすため、樹脂層(B)は、上記一般式(I)〜(III)からなる群から選ばれる一般式で表される黒色顔料、又は、赤色顔料及び青色顔料を含有することが必要である。
【0028】
上記一般式(I)〜(III)におけるR
1が炭素数1〜10のアルキル基の場合、該アルキル基の水素が他の置換基によって置換されていても構わない。
【0029】
樹脂層(B)が上記一般式(I)〜(III)で表される黒色顔料を含有する場合、樹脂層(B)の遮光性や赤外線の透過をより向上させるため、さらに青色顔料、緑色顔料、黄色顔料及び紫色顔料からなる群から選ばれる顔料を含有しても構わない。
【0030】
また、樹脂層(B)が赤色顔料及び青色顔料の組合せを含有する場合、樹脂層(B)の遮光性や赤外線の透過をより向上させるため、さらに緑色顔料、黄色顔料及び紫色顔料からなる群から選ばれる顔料を含有しても構わない。
【0031】
樹脂層(B)が赤色顔料及び青色顔料の組合せを含有する場合、樹脂層(B)が含有する全顔料に占める赤色顔料の割合が、40〜70質量%であり、樹脂層(B)が含有する全顔料に占める青色顔料の割合が、30〜60質量%であることが好ましい。樹脂層(B)が含有する全顔料に占める赤色顔料及び青色顔料の割合が上記範囲外であると、樹脂層(B)の遮光性が十分とならず、樹脂層(B)の厚みを大きくする必要があり、樹脂層(B)の上に形成した引き出し配線等がエッジ部分で断線する場合がある。
【0032】
樹脂層(B)が含有する場合がある赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275又は276が挙げられるが、C.I.ピグメントレッド48:1、122、168、177、202、206、207、209、224、242又は254が好ましく、C.I.ピグメントレッド177、209、224、242又は254がより好ましい。
【0033】
上記一般式(I)〜(III)で表される黒色顔料、又は、赤色顔料と組み合わせて用いる青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78又は79が挙げられるが、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6又は60が好ましく、C.I.ピグメントブルー15:6がより好ましい。
【0034】
緑色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55又は58が挙げられるが、C.I.ピグメントグリーン7、36又は58が好ましい。
【0035】
黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207又は208が挙げられるが、C.I.ピグメントイエロー83、117、129、138、139、150、154、155、180又は185が好ましく、C.I.ピグメントイエロー83、138、139、150又は180がより好ましい。
【0036】
紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49又は50が挙げられるが、C.I.ピグメントバイオレット19又は23が好ましく、C.I.ピグメントバイオレット23がより好ましい。
【0037】
なお、樹脂層(B)は、上記一般式(I)〜(III)で表される黒色顔料と、赤色顔料及び青色顔料の組合せと、の両方を含有しても構わない。
【0038】
上記一般式(I)〜(III)で表される黒色顔料、又は、赤色顔料及び青色顔料の組合せは、遮光材としての役割を担うが、樹脂層(B)は、その他の遮光材を含有しても構わない。その他の遮光材としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、酸化クロム、酸化鉄、アニリンブラック、ペリレン系顔料又はC.I.ソルベントブラック123が挙げられる。また樹脂層(B)は、さらにオレンジ顔料等の、他色の顔料を含有しても構わない。
【0039】
オレンジ顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、19、20、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78又は79が挙げられるが、C.I.ピグメントオレンジ38又は71が好ましい。
【0040】
樹脂層(A)及び樹脂層(B)の積層の光学濃度(以下、「OD値」)は、3.0以上である必要がある。樹脂層(A)及び樹脂層(B)の積層のOD値が3.0未満であると、ユーザーにより引き出し配線等が視認されてしまい、タッチパネルの意匠性が損なわれる。
【0041】
樹脂層(A)のOD値は、0.5以上であることが好ましい。OD値が0.5未満であると、樹脂層(B)の色の影響を受けてしまい、タッチパネルの意匠性が損なわれる場合がある。
【0042】
樹脂層(A)及び樹脂層(B)の積層のOD値は、透過濃度計(例えば、X−rite 361T(visual)densitometer;サカタインクスエンジニアリング株式会社)を用いて、入射光及び透過光のそれぞれの強度を測定し、以下の式(1)より算出することができる。
OD値 = log
10(I
0/I) ・・・ 式(1)
I
0:入射光強度
I:透過光強度
樹脂層(A)のみのOD値は、形成された遮光膜(樹脂層(A)及び樹脂層(B)の積層)において、樹脂層(A)が露出している部位(樹脂層(B)が積層していない部位)を、透過濃度計を用いて測定して算出することができる。樹脂層(A)が露出している部位が存在しない場合には、樹脂層(A)の組成を分析して、樹脂層(A)の形成に用いた樹脂組成物を再現し、ガラス基板上に被測定対象の樹脂層(A)と同じ厚みになるように形成した該樹脂組成物の塗布膜を、透過濃度計を用いて測定して算出することができる。
【0043】
樹脂層(B)のみのOD値は、樹脂層(A)のみのOD値が既知である場合には、遮光膜のOD値から樹脂層(A)のみのOD値を差し引くことで算出することができる。樹脂層(A)のみのOD値が既知でない場合には、樹脂層(B)の組成を分析して、樹脂層(B)の形成に用いた樹脂組成物を再現し、ガラス基板上に被測定対象の樹脂層(B)と同じ厚みになるように形成した該樹脂組成物の塗布膜を、透過濃度計を用いて測定して算出することができる。
【0044】
樹脂層(A)の厚みは、5〜20μmであることが好ましい。樹脂層(A)の厚みが5μm未満であると、十分な遮光性が得られない場合がある。一方で、樹脂層(A)の厚みが20μmを超えると、タッチパネルにおける凹凸が大きくなり、引き出し配線等が断線する場合がある。
【0045】
樹脂層(B)のOD値は、樹脂層(A)の遮光性を十分に補うため、2.0以上であることが好ましい。
【0046】
樹脂層(B)の厚みは、0.5〜4.0μmであることが好ましい。樹脂層(B)の厚みが0.5μm未満であると、遮光性が十分とならない場合がある。一方で、樹脂層(B)の厚みが4.0μmを超えると、樹脂層(B)の上に形成した引き出し配線等がエッジ部分で断線する場合がある。
【0047】
また、樹脂層(B)は近接センサーの動作に必要な赤外線を透過することが必要であり、波長領域が850〜1000nmの電磁波の平均透過率が80%以上であることが好ましい。該波長領域の電磁波の平均透過率が80%未満であると、近接センサーの感度が十分とならない場合がある。
【0048】
本発明の遮光膜形成基板が備える樹脂層(A)は、白色顔料及び樹脂を含有する樹脂組成物(A)を用いて形成することができる。また、本発明の遮光膜形成基板が備える樹脂層(B)は、上記一般式(I)〜(III)で表される黒色顔料又は赤色顔料及び青色顔料、及び、樹脂を含有する樹脂組成物(B)を用いて形成することができる。
【0049】
樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)が含有する樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、カルド樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂又はポリイミド樹脂が挙げられるが、塗膜の耐熱性や各樹脂組成物の貯蔵安定性等に優れる、アクリル樹脂、シロキサン樹脂又はポリイミド樹脂が好ましい。
【0050】
アクリル樹脂としては、カルボキシル基を有するアクリル樹脂が好ましい。カルボキシル基を有するアクリル系樹脂としては、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物との共重合体が好ましい。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸又はビニル酢酸が挙げられる。エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソ−ブチル、メタクリル酸イソ−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ペンチル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート若しくはベンジルメタクリレート等の不飽和カルボン酸アルキルエステル、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン若しくはα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アミノエチルアクリレート等の不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル、グリシジルアクリレート若しくはグリシジルメタクリレート等の不飽和カルボン酸グリシジルエステル、酢酸ビニル若しくはプロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル若しくはα−クロルアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、1,3−ブタジエン若しくはイソプレン等の脂肪族共役ジエン、それぞれ末端にアクリロイル基若しくはメタクリロイル基を有するポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート又はポリブチルメタクリレートが挙げられる。
【0051】
中でも、メタクリル酸及び/又はアクリル酸と、メタクリル酸メチル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート及びスチレンからなる群から選ばれたモノマーと、の2〜4元共重合体で、重量平均分子量(Mw)が2千〜10万(テトラヒドロフランをキャリヤーとしてゲルパーミェーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算したもの)、酸価が70〜150(mgKOH/g)の樹脂が、アルカリ現像液に対する適度な溶解性を有するため好ましい。
【0052】
また、露光及び現像の際の感度を向上させるのであれば、側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル樹脂が好ましい。この場合、側鎖が有するエチレン性不飽和基としては、アクリル基又はメタクリル基が好ましい。このようなアクリル樹脂は、カルボキシル基を有するアクリル樹脂のカルボキシル基に、グリシジル基又は脂環式エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を付加反応させて得ることができる。
【0053】
側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル樹脂としては、例えば、公知文献(例えば、特許第3120476号公報又は特開平8−262221号公報)に記載のアクリル樹脂又は市販の“サイクロマー(登録商標)”P(ダイセル化学工業(株)製)若しくはアルカリ可溶性カルド樹脂が挙げられる。
【0054】
樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)は、さらにモノマーを含有しても構わない。モノマーとしては、例えば、多官能若しくは単官能のアクリル系モノマー又はオリゴマーが挙げられる。多官能のアクリル系モノマーとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートカルバメート、変性ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、アジピン酸1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリル酸エステル、無水フタル酸プロピレンオキサイド(メタ)アクリル酸エステル、トリメリット酸ジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ロジン変性エポキシジ(メタ)アクリレート、アルキッド変性(メタ)アクリレート、公知文献(例えば、特許第3621533号公報又は特開平8−278630号公報)記載のフルオレンジアクリレート系オリゴマー、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]エーテル、4,4’−ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]シクロヘキサン、9,9−ビス[4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−クロロ−4−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジメタアクリレート、ビスクレゾールフルオレンジアクリレート又はビスクレゾールフルオレンジメタアクリレートが挙げられるが、より感度を向上させるため、3以上の官能基を有するモノマーが好ましく、5以上の官能基を有するモノマーがより好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0055】
樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)は、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)が含有する樹脂として、アクリル樹脂に代表される感光性樹脂を用い、これに光重合開始剤を組み合わせることによって、樹脂組成物及び樹脂組成物(B)に感光性を付与することができる。そしてその結果として、フォトリソグラフィーすなわち露光及び現像工程により、樹脂層(A)及び樹脂層(B)を簡便かつ高精細に形成することが可能となる。なお、樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)が感光性であり、かつそれぞれが青色顔料、緑色顔料、黄色顔料及び紫色顔料からなる群から選ばれる顔料を含有する場合には、露光及び現像の際の光硬化の感度をさらに向上させることが可能となる。
【0056】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、オキサントン系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、オキシムエステル化合物、カルバゾール系化合物、トリアジン系化合物、リン系化合物又はチタネート等の無機系光重合開始剤が挙げられる。
【0057】
より具体的には、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパン、“イルガキュア(登録商標)”369である2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、“イルガキュア(登録商標)”379である2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、CGI−113である2−[4−メチルベンジル]−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、“イルガキュア(登録商標)”OXE01である1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、“イルガキュア(登録商標)”OXE02であるエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)若しくはCGI−242であるエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(いずれもチバ・スペシャリティ・ケミカル(株)製)、t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロル−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、4−(p−メトキシフェニル)−2,6−ジ−(トリクロロメチル)−s−トリアジン又はカルバゾール系化合物である“アデカ(登録商標)オプトマー”N−1818、N−1919若しくは“アデカアークルズ”NCI−831(いずれも旭電化工業(株)製)が挙げられるが、より感度を向上させるため、“イルガキュア(登録商標)”379、“イルガキュア(登録商標)”OXE02及び“アデカ(登録商標)オプトマー”N−1919からなる群から選ばれる2種類を併用することが好ましい。
【0058】
樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)は、各顔料の分散安定性を向上させるため、高分子分散剤を含有しても構わない。高分子分散剤としては、例えば、ポリエチレンイミン系高分子分散剤、ポリウレタン系高分子分散剤又はポリアリルアミン系高分子分散剤が挙げられる。これらの高分子分散剤は密着性や感光性を低下させないため、顔料に対して1〜40質量%添加することが好ましい。
【0059】
樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)においては、反射率、遮光性及び密着性のバランスを保つため、全ての顔料/樹脂、モノマー及び高分子分散剤の質量比が、60/40〜5/95の範囲であることが好ましく、50/50〜10/90の範囲であることがより好ましい。樹脂、モノマー及び高分子分散剤の量が少なすぎると、反射率が高くなる。一方で、各顔料の量が少なすぎると、樹脂層(A)及び樹脂層(B)の厚み当たりのOD値(OD値/μm)が低くなり、それぞれの厚みを大きくする必要が生じる。
【0060】
樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)は、溶媒を含有しても構わない。溶媒としては、分散する各顔料の分散安定性及び添加する樹脂等の溶解性等を考慮して、水又は有機溶媒を適宜選択すればよい。有機溶媒としては、例えば、エステル類、脂肪族アルコール類、(ポリ)アルキレングリコールエーテル系溶媒、ケトン類、アミド系極性溶媒又はラクトン系極性溶媒が挙げられる。
【0061】
より具体的には、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル若しくはトリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート若しくはプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル若しくはテトラヒドロフラン等の他のエーテル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン若しくは3−ヘプタノン等のケトン類、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル若しくは2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル若しくは及び2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類、トルエン若しくはキシレン等の芳香族炭化水素類又はN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド若しくはN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。
【0062】
さらに、基板の大型化に伴いダイコーティング装置による塗布が主流になってきているところ、適度な揮発性及び乾燥性を実現するため、沸点が170℃以上の溶媒を30〜75質量%含有することが好ましく、ダイコーティング装置での異物欠点や真空乾燥装置での乾燥起因欠点を低減するため、沸点が200℃以上の溶媒を1〜20質量%含有することがより好ましく、2種以上からなる混合溶媒を用いることがさらに好ましい。
【0063】
樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)は、塗布性及び着色被膜の平滑性を確保しながらベナードセルを生じさせるため、界面活性剤を含有しても構わない。界面活性剤の添加量は、全ての顔料に対して0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。
【0064】
界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸アンモニウム若しくはポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン等の陰イオン界面活性剤、ステアリルアミンアセテート若しくはラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド若しくはラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル若しくはソルビタンモノステアレート等の非イオン界面活性剤、ポリジメチルシロキサン等を主骨格とするシリコーン系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0065】
樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)における樹脂成分(溶媒を除く、モノマー、オリゴマー及び光重合開始剤等の添加剤も含む成分)と、各顔料とを合わせた固形分濃度としては、塗工性や乾燥性の観点から2〜30%が好ましく、5〜20%がより好ましい。
【0066】
樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)の製造方法としては、例えば、分散機を用いて樹脂溶液中に直接顔料を分散させる方法、又は、分散機を用いて水若しくは有機溶媒中に各顔料を分散させて顔料分散液を作製し、該顔料分散液と樹脂溶液と混合する方法が挙げられる。各顔料の分散方法としては、例えば、ボールミル、サンドグラインダー、3本ロールミル又は高速度衝撃ミルが挙げられるが、分散効率や微分散化の観点から、ビーズミルが好ましい。ビーズミルとしては、例えば、コボールミル、バスケットミル、ピンミル又はダイノーミルが挙げられる。ビーズミルのビーズとしては、例えば、チタニアビーズ、ジルコニアビーズ又はジルコンビーズが好ましい。分散に用いるビーズ径としては、0.01〜5.0mmが好ましく、0.03〜1.0mmがより好ましい。顔料の一次粒子径及び一次粒子が凝集して形成された二次粒子の粒子径が小さい場合には、分散に用いるビーズ径としては、0.03〜0.10mmといった微小な分散ビーズが好ましい。この場合、微小な分散ビーズと分散液とを分離することが可能な、遠心分離方式によるセパレーターを有するビーズミルを用いて分散することが好ましい。一方で、サブミクロン程度の粗大な粒子を含有する各顔料を分散させる際には、十分な粉砕力を得るため、ビーズ径が0.10mm以上の分散ビーズが好ましい。
【0067】
樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)を用いて、樹脂層(A)及び樹脂層(B)をそれぞれ形成する方法としては、例えば、以下のものが挙げられる。まず、基板の上に樹脂組成物(A)を塗布して、塗布膜(A)を得る。
【0068】
樹脂組成物(A)を基板の上に塗布する方法としては、例えば、ディップ法、ロールコータ法、スピナー法、ダイコーティング法若しくはワイヤーバーによる方法、基板を溶液中に浸漬する方法又は溶液を基板に噴霧する方法が挙げられる。なお、樹脂組成物(A)を基板上に塗布する場合、シランカップリング剤、アルミニウムキレート剤又はチタニウムキレート剤等の接着助剤で基板表面を処理しておくことで、塗布膜と基板との接着力を向上させることができる。
【0069】
塗布膜(A)は、パターン加工をする前に、風乾、加熱乾燥又は真空乾燥等により乾燥をしておくことが好ましい。
【0070】
得られた塗布膜(A)を、フォトリソグラフィー等の方法を用いてパターン加工することで、所望のパターンの樹脂層(A)を得ることができる。得られた樹脂層(A)は、必要に応じて、さらに加熱乾燥により熱硬化をさせても構わない。熱硬化条件は樹脂により異なるが、アクリル樹脂を用いる場合には、通常、200〜250℃で1〜60分加熱するのが一般的である。
【0071】
樹脂層(A)が得られた段階で、その赤外線透過部位に孔を形成しておくことが好ましい。
【0072】
基板、及び、得られた樹脂層(A)の上に樹脂組成物(B)を塗布して、塗布膜(B)を得る。樹脂層(A)の上に樹脂組成物(B)を塗布して、樹脂層(B)を得る。樹脂組成物(B)を基板の上に塗布する方法としては、樹脂組成物(A)を基板の上に塗布する方法と同様のものが挙げられる。塗布膜(B)は、塗布膜(A)と同様に、パターン加工をする前に、風乾、加熱乾燥又は真空乾燥等により乾燥をしておくことが好ましい。
【0073】
得られた塗布膜(B)を、フォトリソグラフィー等の方法を用いてパターン加工することで、所望のパターンの樹脂層(B)を得ることができる。得られた樹脂層(B)は、必要に応じて、さらに加熱乾燥により熱硬化をさせても構わない。
【0074】
本発明のタッチパネルは、本発明の遮光膜形成基板を具備することを特徴とする。
【0075】
本発明のタッチパネルの製造例を、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1は本発明のタッチパネルの一態様を示す模式図であり、
図2は本発明のタッチパネルの他の一態様を示す模式図である。
【0076】
基板2の上に、樹脂層(A)3を形成し、その赤外線透過部位に孔をする。次に、樹脂層(B)4を、樹脂層(A)3の上部と、赤外線透過部位の孔の内部に形成して、遮光膜形成基板を得る。
【0077】
基板2の上に、ITO等の透明電極からなる、ジャンパ配線5を形成する。ジャンパ配線の形成方法としては、例えば、スパッタリング法又は真空蒸着法により基板2の上にITO膜を形成し、そのITO膜の上にノボラック系ポジレジストを塗布してから乾燥、露光、現像及び酸によるエッチングをしてITO膜をパターニングし、最後にアルカリでポジレジストを剥離する方法が挙げられる。
【0078】
ジャンパ配線5の上に、第一の絶縁膜6を形成する。第一の絶縁膜6以外に、遮光膜の保護のため、第二の絶縁膜10を形成しても構わない。これら絶縁膜は、有機膜又は無機膜のいずれでも構わない。絶縁膜となる有機膜は、一般的なアクリル系ネガレジストを塗布、乾燥、露光、現像及び熱硬化して形成することができる。
【0079】
遮光膜上又は第二の絶縁膜の上に、引き出し配線等の金属配線7を形成する。金属配線7の形成方法としては、例えば、スパッタリング法により形成したMo層、Al層、Mo層の3層構造の金属膜を、ジャンパ配線5と同様にパターニングする方法が挙げられる。
【0080】
透明基板2の上に、ジャンパ配線5と同様の方法により、金属配線7と導通する透明電極8を形成する。
【0081】
最後に、形成した各部材を被覆する保護膜9を形成し、タッチパネルを得る。保護膜9は、有機膜又は無機膜のいずれでも構わない。
【実施例】
【0082】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ただし、以下の実施例3〜6は比較例である。
【0083】
(アクリル樹脂(P−1)の合成)
文献(特許第3120476号公報;実施例1)記載の方法により、メチルメタクリレート/メタクリル酸/スチレン共重合体(質量比30/40/30)を合成後、40質量部のグリシジルメタクリレートを付加させ、精製水で再沈、濾過、乾燥することにより、重量平均分子量(Mw)10,000、酸価110(mgKOH/g)のアクリル樹脂(P−1)粉末を得た。
【0084】
(シロキサン樹脂溶液(S―1)の合成)
500mLの三口フラスコに、47.7gのメチルトリメトキシシラン(以下、「MTMS」)(0.35mol)、99.2gのフェニルトリメトキシシラン(以下、「PTMS」)(0.5mol)、39.4gの3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸(以下、「SuTMS」)(0.15mol)及び152.3gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、「PMA」)を仕込んだ。この三口フラスコを40℃のオイルバスに漬けて撹拌しながら、56.7gの水に0.372gのリン酸(仕込みモノマーに対して0.2質量%)を溶かしたリン酸水溶液を、滴下ロートで10分かけて添加した。40℃で1時間撹拌した後、オイルバス温度を70℃に設定してさらに1時間撹拌し、その後オイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始から1時間後に三口フラスコ内の溶液の温度すなわち内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100〜110℃に保った)。反応の副生成物であるメタノール及び水は、リービッヒ冷却装置を用いて留去した。得られたポリシロキサンのPMA溶液に、ポリシロキサン濃度が40質量%となるようにPMAを加えて、シロキサン樹脂溶液(S―1)を得た。なお、得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)をGPCにより測定したところ、8000(ポリスチレン換算)であった。
【0085】
(白色顔料分散液(DW−1)の製造)
21.00gの白色顔料すなわち二酸化チタン顔料(CR−97;石原産業(株)製)、13.13gのシロキサン樹脂溶液(S―1)及び0.87gのPMAを混合した後、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて分散し、顔料分散液(DW−1)を得た。
【0086】
(黒色顔料分散液(Bk−1)の製造)
600.0gの黒色顔料1(Irgaphor Black S0100CF;BASF社製)に321.4gのアクリル樹脂(P−1)/PMA溶液(35質量%)、93.8gの高分子分散剤(BYK21116;ビックケミー社製)及び1984.8gのPMAをタンクに仕込み、ホモミキサー(特殊機化製)で1時間撹拌し、予備分散液1を得た。その後、0.10mmφのジルコニアビーズ(東レ製)を70%充填した遠心分離セパレーターを具備した、ウルトラアペックスミル(寿工業製)に予備分散液1を供給し、回転速度8m/sで2時間分散を行い、固形分濃度25質量%、顔料/樹脂(質量比)=80/20の黒色顔料分散液(Bk−1)を得た。
【0087】
(有機顔料分散液(DB−1)の製造)
黒色顔料1の代わりに有機顔料PB15:6(東洋インキ(株)製)を用いた以外は、黒色顔料分散液(Bk−1)と同様にして、有機顔料分散液(DB−1)を得た。
【0088】
(有機顔料分散液(DY−1)の製造)
黒色顔料1の代わりに有機顔料PY150(ランクセス製)を用いた以外は、黒色顔料分散液(Bk−1)と同様にして、有機顔料分散液(DY−1)を得た。
【0089】
(有機顔料分散液(DR−1)の製造)
黒色顔料1の代わりに有機顔料PR254(BASF製)を用いた以外は、黒色顔料分散液(Bk−1)と同様にして、有機顔料分散液(DR−1)を得た。
【0090】
(黒色顔料分散液(Bk−2)の製造)
黒色顔料1の代わりに窒化チタン(日清エンジニアリング(株)製)を用いた以外は、黒色顔料分散液(Bk−1)と同様にして、黒色顔料分散液(Bk−2)を得た。
【0091】
(黒色顔料分散液(Bk−3)の製造)
黒色顔料1の代わりにカーボンブラック(TPX1291;CABOT製)を用いた以外は、黒色顔料分散液(Bk−1)と同様にして、黒色顔料分散液(Bk−3)を得た。
【0092】
(樹脂組成物(A−1)の製造)
12.25gの白色顔料分散液(DW−1)、4.60gのシロキサン樹脂溶液(S−1)、3.23gのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、0.29gのビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(イルガキュア819;BASF社製)及び9.18gのPMAを撹拌混合し、樹脂組成物(A−1)を得た。
【0093】
(黒色樹脂組成物(B−1)の製造)
0.38gのアデカオプトマー(登録商標)N1919を、29.52gのPMAに溶解させた。そこに、16.03gのアクリル樹脂(P−1)/PMA溶液(35質量%溶液)、3.38gのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製)及び0.24gのBYK333/PMA溶液(10質量%)を添加し、室温で1時間撹拌した。その後、さらに10.46gの黒色顔料分散液(Bk−1)を添加して、全固形分濃度20%、黒色顔料/樹脂(質量比)=18/82の黒色樹脂組成物(B−1)を得た。
【0094】
(黒色樹脂組成物(B−2)の製造)
黒色顔料分散液(Bk−1)の代わりに、5.23gの有機顔料分散液(DB−1)及び5.23gの有機顔料分散液(DR−1)の混合物を用いた以外は、黒色樹脂組成物(B−1)と同様にして、黒色樹脂組成物(B−2)を得た。
【0095】
(黒色樹脂組成物(B−3)の製造)
黒色顔料分散液(Bk−1)の代わりに、4.18gの有機顔料分散液(DB−1)、5.23gの有機顔料分散液(DR−1)及び1.05gの有機顔料分散液(DY−1)の混合物を用いた以外は、黒色樹脂組成物(B−1)と同様にして、黒色樹脂組成物(B−3)を得た。
【0096】
(黒色樹脂組成物(B−4)の製造)
黒色顔料分散液(Bk−1)の代わりに、10.46gの黒色顔料分散液(Bk−2)を用いた以外は、黒色樹脂組成物(B−1)と同様にして、黒色樹脂組成物(B−4)を得た。
【0097】
(黒色樹脂組成物(B−5)の製造)
黒色顔料分散液(Bk−1)の代わりに、10.46gの黒色顔料分散液(Bk−3)を用いた以外は、黒色樹脂組成物(B−1)と同様にして、黒色樹脂組成物(B−5)を得た。
【0098】
(実施例1)
2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過した樹脂組成物(A−1)を、基板(厚み0.7mmの化学強化ガラス)の上にスピンコーティング装置(1H−DS;ミカサ(株)製)の上に塗布して、塗布膜(A−1)を得た。なお、塗布膜(A−1)の膜厚は、塗布膜(A−1)から最終的に得られる樹脂層(A−1)の厚みが、15μmとなるように調整した。塗布膜(A−1)が形成された基板は、90℃のホットプレートが備えるピン状突起物の上に載せて2分間加熱処理し、さらに、90℃のホットプレートの平面上に2分間基板を静置して、加熱乾燥(プリベイク)をした。加熱乾燥後の塗布膜(A−1)を、解像度テスト用マスクを介して、200mJ/cm
2の露光量で、マスクアライナー(PEM−6M;ユニオン光学(株)製)を用いて露光した。
【0099】
露光後の塗布膜(A−1)を0.045質量%KOH水溶液を用いて現像し、さらに純水洗浄して、パターン加工がされた樹脂層(A−1)を得た。得られた樹脂層(A−1)は、230℃の熱風オーブン中で30分保持(ポストベイク)をした。得られた樹脂層(A−1)について、OD値を測定した。
【0100】
次に、得られた樹脂層(A−1)の上に黒色樹脂組成物(B−1)を塗布して、塗布膜(B−1)を得た。なお、塗布膜(B−1)の膜厚は、塗布膜(B−1)から最終的に得られる樹脂層(B−1)の厚みが、15μmとなるように調整した。塗布膜(B−1)が形成された基板は、90℃のホットプレートが備えるピン状突起物の上に載せて2分間加熱処理し、さらに、90℃のホットプレートの平面上に2分間基板を静置して、加熱乾燥(プリベイク)をした。加熱乾燥後の塗布膜(B−1)を、解像度テスト用マスクを介して、200mJ/cm
2の露光量で、マスクアライナー(PEM−6M;ユニオン光学(株)製)を用いて露光した。
【0101】
露光後の塗布膜(B−1)を0.045質量%KOH水溶液を用いて現像し、さらに純水洗浄して、パターン加工がされた樹脂層(B−1)を得た。得られた樹脂層(B−1)は、230℃の熱風オーブン中で30分保持(ポストベイク)をした。
【0102】
このようにして、基板の上に、パターン加工がされた樹脂層(A−1)とパターン加工がされた樹脂層(B−1)とが形成された、遮光膜形成基板−1を得た。
【0103】
得られた遮光膜形成基板−1について、樹脂層(A−1)及び樹脂層(B−1)の積層のOD値を測定した。また、積層のOD値から樹脂層(A−1)のOD値を差し引くことで、樹脂層(B−1)のOD値を算出した。
【0104】
また、得られた遮光膜形成基板−1について、分光光度計(UV−2500PC;島津製作所)を用いて、樹脂層(A−1)及び樹脂層(B−1)の積層の、波長領域が850〜1000nmの電磁波の平均透過率を測定した(サンプリングピッチ:1.0nm、スキャン速度:低速、スリット幅:2.0nm)。
【0105】
さらに、得られた遮光膜形成基板−1について、50℃に加熱したPAN溶液(HNO
3/H
3PO
4/CH
3COOH/H
2O=5/68/12/15)に2分間浸漬し、浸漬後の、樹脂層(A−1)及び樹脂層(B−1)の積層のOD値(以下、「PAN耐性」)を評価した。
【0106】
(実施例2)
実施例1と同様にして、遮光膜形成基板−1を得た。遮光膜形成基板−1の樹脂層(B−1)の上に、厚みが150nmのSiO
2膜をスパッタリング法により形成し、遮光膜形成基板−2を得た。
【0107】
(実施例3)
樹脂組成物(B−1)の代わりに樹脂組成物(B−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、遮光膜形成基板−3を得た。
【0108】
(実施例4)
実施例3と同様にして、遮光膜形成基板−3を得た。遮光膜形成基板−3の積層遮光膜の上に、厚みが150nmのSiO
2膜をスパッタリング法により形成し、遮光膜形成基板−4を得た。
【0109】
(実施例5)
樹脂組成物(B−1)の代わりに樹脂組成物(B−3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、遮光膜形成基板−5を得た。
【0110】
(実施例6)
実施例5と同様にして、遮光膜形成基板−5を得た。遮光膜形成基板−5の積層遮光膜の上に、厚みが150nmのSiO
2膜をスパッタリング法により形成し、遮光膜形成基板−6を得た。
【0111】
(比較例1)
樹脂組成物(B−1)の代わりに樹脂組成物(B−4)を用い、樹脂層(B)の膜厚を1.5μmとした以外は、実施例1と同様にして、遮光膜形成基板−7を得た。
【0112】
(比較例2)
樹脂組成物(B−1)の代わりに樹脂組成物(B−5)を用いた以外は、比較例1と同様にして、遮光膜形成基板−8を得た。
【0113】
<評価結果>
実施例1〜6並びに比較例1及び2で用いた各樹脂組成物の組成、及び、得られたそれぞれの遮光膜形成基板の各評価結果を、表1に示す。
【0114】
実施例1〜6で得られた遮光膜形成基板は、いずれも波長領域が850〜1000nmの赤外線領域における電磁波の透過率が80%以上であり、近接センサーの感度を十分なものとすることが可能である。
【0115】
ただし、実施例3〜6で得られた遮光膜形成基板のように、樹脂層(B)が青色顔料と赤色顔料との組合せを含有する場合、PAN耐性の値が低いことから、場合によっては積層遮光膜の上に、さらに保護膜が必要となる場合があると考えられる。
【0116】
一方で、比較例1及び2で得られた遮光膜形成基板のように、樹脂層(B)が特定構造の黒色顔料を含有するのではなく、一般的に使用される黒色顔料である窒化チタンやカーボンブラックである場合には、赤外線領域における電磁波の透過率が極めて低く、近接センサーの感度を十分なものとすることはが不可能である。
【0117】
【表1】