特許第6330654号(P6330654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6330654
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】直方体状の容器および段積み構造
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/10 20060101AFI20180521BHJP
   B65D 21/032 20060101ALI20180521BHJP
   B65D 90/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B65D88/10 Z
   B65D21/032
   B65D90/00 Z
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-261359(P2014-261359)
(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公開番号】特開2016-120942(P2016-120942A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100150223
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 修三
(72)【発明者】
【氏名】中村 信秀
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−312774(JP,A)
【文献】 特開平10−324389(JP,A)
【文献】 米国特許第03937356(US,A)
【文献】 特開平05−319436(JP,A)
【文献】 特開昭62−251380(JP,A)
【文献】 実開昭60−163295(JP,U)
【文献】 実開昭63−070992(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/10
B65D 21/032
B65D 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つの側板および1つの底板を備えて上部が開口した直方体状の箱体と、該箱体の上部の開口を塞ぐ蓋体とを有してなる直方体状の容器であって、
前記蓋体の面方向の形状は前記底板の面方向の形状と略同一であり、
前記箱体の4つの側板および1つの底板は、面方向の形状が各辺1〜2mの長方形で厚さが2〜5mmである鋼板で構成されていて、隣り合う前記側板同士は他の部材を介さずに直接に連結され、かつ、前記4つの側板はそれぞれ他の部材を介さずに直接に前記底板に連結されており、
前記底板の下面には、該底板の面方向の各辺のうちのいずれかの辺と平行な方向にお互いに間隔を空けて複数の長尺部材が取り付けられており、
前記蓋体の上面には、前記長尺部材をその短手方向に挟み込むことが可能なストッパが前記蓋体の対向する外縁部にそれぞれ備えられており、かつ、前記蓋体を前記箱体の開口を覆うように載置した状態を上方向から透視したとき、それぞれの前記ストッパよりも前記箱体の中心寄りの位置にそれぞれの前記ストッパに近接して、または、それぞれの前記ストッパよりも前記箱体の外側寄りの位置にそれぞれの前記ストッパに近接して、前記長尺部材の側部に突起部が設けられていることを特徴とする直方体状の容器。
【請求項2】
前記側板の外側面には、垂直補剛部材が上下方向に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の直方体状の容器。
【請求項3】
前記垂直補剛部材には、自身が取り付けられている前記側板の外側面と平行な水平方向に貫通する貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項に記載の直方体状の容器。
【請求項4】
4つの側板および1つの底板を備えて上部が開口した直方体状の箱体と、該箱体の上部の開口を塞ぐ蓋体とを有してなる直方体状の容器であって、
前記蓋体の面方向の形状は前記底板の面方向の形状と略同一であり、
前記箱体の4つの側板および1つの底板は、面方向の形状が各辺1〜2mの長方形で厚さが2〜5mmである鋼板で構成されていて、隣り合う前記側板同士は他の部材を介さずに直接に連結され、かつ、前記4つの側板はそれぞれ他の部材を介さずに直接に前記底板に連結されており、
前記側板の外側面には、垂直補剛部材が上下方向に取り付けられており、
前記垂直補剛部材には、自身が取り付けられている前記側板の外側面と平行な水平方向に貫通する貫通孔が設けられていることを特徴とする直方体状の容器。
【請求項5】
前記底板の下面には、該底板の面方向の各辺のうちのいずれかの辺と平行な方向にお互いに間隔を空けて複数の長尺部材が取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の直方体状の容器。
【請求項6】
前記長尺部材の下面には、水平力を緩衝可能なゴム部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3、5のいずれかに記載の直方体状の容器。
【請求項7】
前記底板の下面に取り付けられた前記長尺部材の側部の下部を両端部とするように、該長尺部材と略直交する方向に帯板が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3、5、6のいずれかに記載の直方体状の容器。
【請求項8】
隣り合う前記側板同士の連結および前記側板と前記底板との連結のうち、少なくとも一部の連結は溶接でなされていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の直方体状の容器。
【請求項9】
隣り合う前記側板同士の連結および前記側板と前記底板との連結のうち、少なくとも一部の連結は1枚の鋼板を折り曲げてなされていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の直方体状の容器。
【請求項10】
前記箱体は、上部の開口以外の部位は気密性があることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の直方体状の容器。
【請求項11】
前記側板の上辺に沿ってフランジが形成されており、該フランジに前記蓋体を取り付け可能なことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の直方体状の容器。
【請求項12】
上下方向に複数段に積み重ね可能なことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の直方体状の容器。
【請求項13】
請求項1〜3のいずれかに記載の直方体状の容器を水平方向に隣り合うように複数個配置するとともに、上下方向に複数段積み重ねてなる段積み構造であって、
上下方向に隣り合う前記直方体状の容器が、前記ストッパ、前記長尺部材および前記長尺部材の前記突起部によって水平方向の動きが相互に拘束されていることを特徴とする段積み構造。
【請求項14】
前記直方体状の容器の側板の外側面には垂直補剛部材が上下方向に取り付けられていて、水平方向に隣り合う前記直方体状の容器は、該直方体状の容器の垂直補剛部材のうち水平方向に近接している垂直補剛部材同士を連結部材を介して相互に連結させることによって、水平方向に連結されていることを特徴とする請求項13に記載の段積み構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直方体状の容器に関し、特に、長期保管が必要な廃棄物を保管可能な直方体状の容器に関する。また、この直方体状の容器を水平方向に隣り合うように複数個配置するとともに、上下方向に複数段積み重ねてなる段積み構造に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物の中には、外界に漏れ出すと環境に著しい悪影響を与える放射性廃棄物のような廃棄物があり、このような廃棄物は、適切に管理された施設において長期間にわたって保管することが必要である。
【0003】
長期保管が必要な廃棄物を保管する施設は、通常の廃棄物の最終処分場よりもコストがかさむため、保管スペースにデッドスペースを極力設けないようにすることが好ましく、保管スペースを効率よく使用するためには、廃棄物を収容する容器の形状は直方体状であることが好ましい。
【0004】
形状が直方体状であって、廃棄物を長期間にわたって保管可能と考えられる容器としては、例えば特許文献1〜3に記載の容器がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の容器は、直方体状の容器の各辺において枠体を設け、該枠体に板状体を取り付けた構造であり、製作に手間がかかるとともに必要な部材数が多いため、コストが高くなる。
【0006】
特許文献3に記載の容器は、直方体状の容器でありながら、各辺において枠体を設けておらず、この点で特許文献1、2に記載の容器よりもコスト面で有利とも考えられるが、特許文献3に記載の容器は遠心鋳造法といった特殊な製造方法を用いることが必要であり、この点でコストアップとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−203073号公報
【特許文献2】特開平5−278804号公報
【特許文献3】特開2011−133430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであって、長期保管が必要な廃棄物を保管可能な直方体状の容器を従来よりも低コストに提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の直方体状の容器および段積み構造により、前記課題を解決したものである。
【0010】
即ち、本発明に係る直方体状の容器は、4つの側板および1つの底板を備えて上部が開口した直方体状の箱体と、該箱体の上部の開口を塞ぐ蓋体とを有してなる直方体状の容器であって、前記蓋体の面方向の形状は前記底板の面方向の形状と略同一であり、前記箱体の4つの側板および1つの底板は、面方向の形状が各辺1〜2mの長方形で厚さが2〜5mmである鋼板で構成されていて、隣り合う前記側板同士は他の部材を介さずに直接に連結され、かつ、前記4つの側板はそれぞれ他の部材を介さずに直接に前記底板に連結されていることを特徴とする直方体状の容器である。
【0011】
隣り合う前記側板同士の連結および前記側板と前記底板との連結のうち、少なくとも一部の連結は溶接でなされていてもよく、また、隣り合う前記側板同士の連結および前記側板と前記底板との連結のうち、少なくとも一部の連結は1枚の鋼板を折り曲げてなされていてもよい。
【0012】
前記箱体は、上部の開口以外の部位は気密性があることが好ましい。
【0013】
前記底板の下面には、該底板の面方向の各辺のうちのいずれかの辺と平行な方向にお互いに間隔を空けて複数の長尺部材が取り付けられていることが好ましく、さらに、前記長尺部材の下面には、水平力を緩衝可能なゴム部材が取り付けられていることが好ましい。
【0014】
前記蓋体の上面には、前記長尺部材をその短手方向に挟み込むことが可能なストッパが前記蓋体の対向する外縁部にそれぞれ備えられており、かつ、前記蓋体を前記箱体の開口を覆うように載置した状態を上方向から透視したとき、それぞれの前記ストッパよりも前記箱体の中心寄りの位置にそれぞれの前記ストッパに近接して、または、それぞれの前記ストッパよりも前記箱体の外側寄りの位置にそれぞれの前記ストッパに近接して、前記長尺部材の側部に突起部が設けられていることが好ましい。
【0015】
前記底板の下面に取り付けられた前記長尺部材の側部の下部を両端部とするように、該長尺部材と略直交する方向に帯板が取り付けられていることが好ましい。
【0016】
前記側板の外側面には、垂直補剛部材が上下方向に取り付けられていることが好ましい。
【0017】
前記垂直補剛部材には、自身が取り付けられている前記側板の外側面と平行な水平方向に貫通する貫通孔が設けられていることが好ましい。
【0018】
前記側板の上辺に沿ってフランジを形成し、該フランジに前記蓋体を取り付け可能なようにしてもよい。
【0019】
前記直方体状の容器は、上下方向に複数段に積み重ね可能なことが好ましい。
【0020】
本発明に係る段積み構造は、前述の直方体状の容器を水平方向に隣り合うように複数個配置するとともに、上下方向に複数段積み重ねてなる段積み構造であって、上下方向に隣り合う前記直方体状の容器が、前記ストッパ、前記長尺部材および前記長尺部材の前記突起部によって水平方向の動きが相互に拘束されていることを特徴とする段積み構造である。
【0021】
前記段積み構造において、前記直方体状の容器の側板の外側面には垂直補剛部材が上下方向に取り付けられていて、水平方向に隣り合う前記直方体状の容器は、該直方体状の容器の垂直補剛部材のうち水平方向に近接している垂直補剛部材同士を連結部材を介して相互に連結させることによって、水平方向に連結されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る直方体状の容器によれば、長期保管が必要な廃棄物を保管可能な直方体状の容器を、従来よりも低コストに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る直方体状の容器を斜め上方から見た斜視図
図2】本発明の実施形態に係る直方体状の容器を上方から見た上面図
図3図2のIII−III線断面図
図4図3のIV−IV線断面図
図5図3のV−V線断面図
図6】クレーンを用いて直方体状の容器10を上方に吊り上げている状況を示す図
図7】本発明の実施形態に係る直方体状の容器を斜め下方から見た斜視図
図8】長尺部材20の横断面図(地震による水平力が作用してゴム部材24がせん断変形している状態)
図9】直方体状の容器10を輸送する際の具体例を示す図で、(a)は直方体状の容器10をトラック40に積み込んだ状態を示す図であり、(b)は直方体状の容器10をフォークリフト42を用いてトラック40に積み込んでいる状態を示す図
図10】本発明の実施形態に係る直方体状の容器を保管施設において積み上げている状況を示す図
図11】本発明の実施形態に係る直方体状の容器を斜め上方から見た斜視図
図12図11のXII部を拡大して示す図であり、(a)は長尺部材20の延びる水平方向から見た側面図で、(b)は長尺部材20の延びる方向と直交する水平方向から見た側面図
図13】本発明の実施形態に係る直方体状の容器を3段に積み重ねてなる段積み構造を示す側面図
図14図13のXIV部を拡大して示す図
図15】連結構造の一例を拡大して示す図
図16図15のXVI−XVI線断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る直方体状の容器10(以下、単に「容器10」と記すことがある)を斜め上方から見た斜視図であり、図2は、本発明の実施形態に係る直方体状の容器10を上方から見た上面図であり、図3は、図2のIII−III線断面図であり、図4は、図3のIV−IV線断面図であり、図5は、図3のV−V線断面図である。ただし、図示の都合上、図5のa部においてはストッパ26を描いておらず、図5のb部においては下段の容器10のストッパ26を描いている。
【0026】
図1図5に示すように、本実施形態に係る直方体状の容器10は、上部が開口した箱体11と、該箱体11の上部の開口を塞ぐ蓋体16とを備えており、箱体11は、4つの側板12と1つの底板14とを有して直方体状に構成されている。
【0027】
4つの側板12と1つの底板14は、面方向の形状が各辺1〜2mの長方形で厚さが2〜5mmである鋼板であるが、隣り合う側板12同士は他の部材を介さずに連結されており、また、4つの側板12はそれぞれ他の部材を介さずに直接に底板14に連結されている。
【0028】
本実施形態においては、4つの側板12と1つの底板14は、高精度レーザーで切断されており、高精度の寸法精度が実現されている。このため、隣り合う側板12同士を溶接で連結するとともに、4つの側板12と1つの底板14を溶接で連結するだけで、寸法精度の高い箱体11を得ることができる。このため、本実施形態に係る直方体状の容器10は枠体が不要であり、枠体を用いた従来の容器よりも簡略な製造工程で製造することができ、従来よりも低コストに製造することができるとともに、作業時間を大幅に短くすることができる。また、本実施形態に係る直方体状の容器10は、従来の容器のように枠体を用いておらず、かつ、厚さが2〜5mmである薄肉鋼板を用いているので、材料費の観点からも従来よりも低コストに製造することができる。また、枠体を用いていないので、従来の容器よりも軽量化することもできる。
【0029】
一方、枠体を用いた従来の容器では、形鋼を用いた枠体を組み立てる作業を行った後に、鋼板を溶接で枠体に取り付ける作業をするため、容器の製造途中で枠体を反転させる必要があった。このため、容器を組み立てるのに時間を要し、また、溶接ひずみを矯正するのにも時間を要していた。
【0030】
なお、本実施形態においては、隣り合う側板12同士は溶接で連結され、側板12と底板14も溶接で連結されているが、寸法精度を確保できるのであれば、それらの連結は溶接に限定されるわけではなく、隣り合う側板12同士の連結および側板12と底板14との連結は、例えば1枚の鋼板を折り曲げてなすようにしてもよい。
【0031】
また、本実施形態においては、隣り合う側板12同士の連結箇所および側板12と底板14との連結箇所において、気密性が保たれるように溶接されている。このため、本実施形態に係る容器10は、液体を保管することも可能になっている。ただし、液体を保管する場合でなく、かつ、気密性を確保する必要がないものを保管する場合には、隣り合う側板12同士の連結箇所および側板12と底板14との連結箇所において、気密性が保たれるように連結することは必ずしも必要ない。
【0032】
側板12の外側面には垂直補剛部材12Aが上下方向に取り付けられており、側板12の補剛がなされている。このため、側板12に厚さが2〜5mmである薄肉鋼板を用いていても、側板12に荷重を負担させることが可能になっており、枠体に荷重を負担させることが不要になっている。このため、本実施形態に係る容器10は枠体を用いなくても、複数段重ねることができるようになっている。
【0033】
側板12の外側面への垂直補剛部材12Aの取り付け位置および垂直補剛部材12A自身の寸法精度は、数cm単位で制御すれば十分な補剛効果が得られるので、この点も、本実施形態に係る容器10を製造するコストを低くすることに寄与している。
【0034】
また、垂直補剛部材12Aには、自身が取り付けられている側板12の外側面と平行な水平方向に貫通する貫通孔12A1が設けられている(図3)。この貫通孔12A1には吊上げ用治具30を取り付けられるようになっており、図6に示すように、貫通孔12A1に取り付けた吊上げ用治具30にワイヤ32を取り付けることで、クレーンを用いて容器10を上方に吊り上げることができるようになっている。
【0035】
側板12の上端部には、山形部材が取り付けられてフランジ12Bが形成されている。フランジ12Bには複数の貫通孔12Cが設けられており、また、これら複数の貫通孔12Cの位置と対応するように、蓋体16の外縁部にも貫通孔16Aが設けられている(図2)。蓋体16が箱体11の上部の開口を塞ぐように、かつ、貫通孔12Cと貫通孔16Aの位置が一致するように、蓋体16をパッキン材またはガスケット材を介して箱体11のフランジ12B上に配置した後、貫通孔12Cと貫通孔16Aを貫通するようにボルト18を通して締結することにより、蓋体16を箱体11に取り付けることができる。なお、図2では貫通孔12C、貫通孔16Aおよびボルト18を区別して図示することが困難なため、便宜的に、符号12C、16A、18は同一の箇所を指し示すように図示している。
【0036】
なお、本実施形態では山形部材によってフランジ12Bを形成するようにしたが、フランジ12Bの形成に用いる部材は山形部材に限定されるわけではなく、例えば、L形部材や平形部材を用いてフランジ12Bを形成するようにしてもよい。
【0037】
底板14の下面には、底板14の面方向の各辺のうちのいずれかの辺と平行な方向にお互いに間隔を空けて複数の長尺部材20が取り付けられている(図3)。このため、容器10を地面の上に載置している状態、あるいは他の容器10の上に載置している状態において、容器10の底板14の下方には空間が確保されており、その空間にフォークリフトの腕を差し込むことができるようになっていて、フォークリフトによる運搬がしやすいようになっている。
【0038】
さらに、長尺部材20の側部の下部には、長尺部材20の側部を両端部とするように、該長尺部材20と略直交する方向に帯板22が取り付けられている(図4)。このため、容器10の底板14の下方の空間に差し込まれたフォークリフトの腕の上方には底板14が位置し、下方には帯板22が位置することになる。このため、容器10の底板14の下方の空間にフォークリフトの腕を差し込んで持ち上げた容器10は上下逆さまにすることができ、容器10内のものを外部に放出することも容易にできるようになっている。
【0039】
また、長尺部材20の下面には水平力を緩衝することが可能なゴム部材24(図7図8参照)が取り付けられており、後述するように、容器10を複数段に積み重ねた場合の耐震性能を向上させている。
【0040】
なお、長尺部材20の形状は特には限定されないが、軽量化の観点から、内部が中空の角形鋼管を用いることが好ましい。
【0041】
蓋体16は、その面方向の形状が底板14の面方向の形状と略同一であり、箱体11の上部の開口を塞ぐことができるようになっており、厚さ2〜5mmの鋼板で構成されている。
【0042】
蓋体16の下面には補剛のために、補強ブレース16Bが設けられている。補強ブレース16Bの形状は特には限定されないが、補強ブレース16Bとしては、例えば山形部材を用いることができる。
【0043】
また、蓋体16の上面の対向する外縁部には、図1に示すように、取っ手16Cが設けられており、蓋体16の開閉を行いやすくできるようにしている。
【0044】
蓋体16の外縁部には、前述したように、貫通孔16Aが設けられている。蓋体16が箱体11の上部の開口を塞ぐように、かつ、貫通孔12Cと貫通孔16Aの位置が一致するように、蓋体16をパッキン材またはガスケット材を介して箱体11のフランジ12B上に配置した後、貫通孔12Cと貫通孔16Aを貫通するようにボルト18を通して締結することにより、蓋体16を箱体11に取り付けることができる。
【0045】
また、蓋体16の上面には、容器10を積み重ねた場合に、長尺部材20をその短手方向に挟み込むことが可能なストッパ26が蓋体16の対向する外縁部にそれぞれ備えられている。また、蓋体16を箱体11の開口を覆うように載置した状態を上方向から透視したとき、それぞれのストッパ26よりも箱体11の中心寄りの位置にそれぞれのストッパ26に近接して、長尺部材20の側部に突起部20Aが設けられている。
【0046】
このため、上下に積み重ねた容器10に地震による水平力が加わっても、下段の容器10のストッパ26が上段の容器10の長尺部材20および突起部20Aと干渉するため、上下に積み重ねた容器10は水平方向の動きが相互に拘束されており、容器10を上下に積み重ねた場合でも、地震による水平力に対して強い構造となっている。
【0047】
ストッパ26および突起部20Aの形状は、設計で想定している地震力に抵抗できる強度および剛性を有していれば特には限定されないが、本実施形態では、ストッパ26は鋼板を組み立てて構成された部材(図1図11図12(a)、(b)等参照)とし、突起部20Aは山形部材としている。
【0048】
なお、突起部20Aの取り付け位置は、上下に積み重ねた容器10の水平方向の動きを相互に拘束する作用を損なわないのであれば、上記の位置に限定されず、例えば、蓋体16を箱体11の開口を覆うように載置した状態を上方向から透視したとき、それぞれのストッパ26よりも箱体11の外側寄りの位置にそれぞれのストッパ26に近接して、長尺部材20の側部に突起部20Aを設けてもよい。
【0049】
また、図7(直方体状の容器10を斜め下方から見た斜視図)および図8(地震による水平力が作用してゴム部材24がせん断変形している状態を示す図)に示すように、長尺部材20の下面には水平力を緩衝することが可能なゴム部材24が取り付けられていて、ゴム部材24によって地震による水平力をある程度吸収できるようになっており、この点も、上下に積み重ねた場合の容器10の耐震性能向上に寄与している。なお、図8において、符号16は下に位置する容器10の蓋体を示している。
【0050】
以上、本実施形態に係る直方体状の容器10について部材ごとに説明してきたが、以下ではさらに、容器10を輸送する際の具体例、および容器10を保管施設において積み上げる際の具体例、ならびに容器10を複数段に積み重ねて構成された段積み構造50の耐震性の向上に寄与する構成について、説明する。
【0051】
図9(a)は容器10をトラック40に積み込んだ状態を示す図であり、図9(b)は容器10をフォークリフト42を用いてトラック40に積み込んでいる状態を示す図である。
【0052】
前述したように、容器10の底板14の下面には、底板14の面方向の各辺のうちのいずれかの辺と平行な方向にお互いに間隔を空けて複数の長尺部材20が取り付けられている。このため、容器10を地面の上に載置している状態、あるいは他の容器10の上に載置している状態において、容器10の底板14の下方には空間が確保されており、その空間にフォークリフトの腕を差し込むことができるようになっていて、フォークリフトによる運搬をしやすいようになっている。
【0053】
また、容器10の各辺の長さは1〜2m程度であるので、図9(b)に示すように、フォークリフト42を用いて容器10をトラック40に両側から積み込むことができる。
【0054】
図10は、容器10を保管施設において積み上げている状況を示す図である。3段フルフリーマスト付きのフォークリフト44を用いることで6mの高さまで容器10を積み重ねることが可能であり、容器10の高さが1m程度の場合、6段まで積み重ねることができる。
【0055】
図11は容器10を斜め上方から見た斜視図であり、図12は容器10のストッパ26の部位(図11のXII部)を拡大して示す図(図12(a)は長尺部材20の延びる水平方向から見た側面図で、図12(b)は長尺部材20の延びる方向と直交する水平方向から見た側面図)である。なお、図12では、図11に記載の容器10の上に積まれた容器10の各部位についても図示している。
【0056】
図12(a)および図12(b)から明らかなように、上下に積み重ねた容器10に地震による水平力が加わっても、下段の容器10のストッパ26が上段の容器10の長尺部材20および突起部20Aと干渉するため、上下方向に隣り合う直方体状の容器10は、水平方向の動きが相互に拘束されており、容器10を上下に積み重ねた場合でも、地震による水平力に対して強い構造となっている。
【0057】
なお、図11図12(a)および図12(b)から明らかなように、本実施形態においては、長尺部材20としては断面が正方形の角形鋼管を用いており、ストッパ26としては鋼板を組み立てて構成された部材を用いており、突起部20Aとしては山形部材を用いている。
【0058】
図13は容器10を3段に積み重ねてなる段積み構造50を示す側面図であり、図14は水平方向に隣り合う容器10を水平方向に連結している部位(図13のXIV部)を拡大して示す図である。
【0059】
図12(a)および図12(b)を用いて前述したように、上下に積み重ねた容器10に地震による水平力が加わっても、下段の容器10のストッパ26が上段の容器10の長尺部材20および突起部20Aと干渉するため、上下方向に隣り合う直方体状の容器10は、水平方向の動きが相互に拘束されている。このため、段積み構造50は容器10を複数段に積み重ねた構造であるが、地震による水平力に対して強い構造となっている。
【0060】
また、前述したように、側板12に上下方向に取り付けられている垂直補剛部材12Aには、自身が取り付けられている側板12の外側面と平行な水平方向に貫通する貫通孔12A1が設けられている。このため、水平方向に隣り合う容器10の垂直補剛部材12Aのうち水平方向に近接している垂直補剛部材12A同士を、図14に示すように、連結部材52およびボルト54を用いて相互に連結させることができ、段積み構造50では、このようにして、水平方向に隣り合う容器10同士を水平方向に連結している。このため、段積み構造50自体の耐震性能が向上しているとともに、個々の容器10の転倒も防止されている。なお、連結部材52は、図14に示すように、2つの貫通孔を有しているが、一方の貫通孔は長孔52Aであり、隣り合う容器10同士の間の間隔に応じて取り付け位置を調整できるようになっている。
【0061】
なお、段積み構造50では、水平方向に隣り合う容器10の垂直補剛部材12Aのうち水平方向に近接している垂直補剛部材12A同士を、連結部材52およびボルト54を用いて相互に連結させたが、連結部材52およびボルト54を用いるのに替えて、水平方向に隣り合う容器10の垂直補剛部材12Aのうち水平方向に近接している垂直補剛部材12A同士の貫通孔12A1を、ワイヤを用いて連結するようにしてもよい。
【0062】
また、図15および図16に示すように、側板12にフック60を取り付けておき、水平方向に隣り合う容器10のフック60同士をかんぬき62で連結するようにしてもよい。
【0063】
以上説明したように、段積み構造50においては、上下方向に隣り合う直方体状の容器10が、ストッパ26、長尺部材20および長尺部材20の突起部20Aによって水平方向の動きが相互に拘束されているだけでなく、水平方向に隣り合う容器10同士は水平方向に連結されている。このため、段積み構造50は、地震に対して極めて強い構造となっている。
【符号の説明】
【0064】
10…直方体状の容器
11…箱体
12…側板
12A…垂直補剛部材
12A1、12C、16A…貫通孔
12B…フランジ
14…底板
16…蓋体
16B…補強ブレース
16C…取っ手
18、54…ボルト
20…長尺部材
20A…突起部
22…帯板
24…ゴム部材
26…ストッパ
30…吊上げ用治具
32…ワイヤ
40…トラック
42…フォークリフト
44…3段フルフリーマスト付きのフォークリフト
50…段積み構造
52…連結部材
52A…長孔
60…フック
62…かんぬき
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16