(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書が開示する容量式MEMSセンサは、第1基板の面内方向であって、受圧部が第1櫛歯電極を支持する方向に関して、支持部が受圧部を両持ち支持しているように構成することができる。
【0010】
上記の容量式MEMSセンサによれば、押圧部が突起部を介して受圧部を押圧する際に、受圧部が第1櫛歯電極を支持する方向に関して、受圧部が傾斜することを抑制することができる。従って、受圧部が第1櫛歯電極を支持する方向に関して、第1櫛歯電極が第2櫛歯電極に対して傾斜してしまうことを抑制することができる。
【0011】
本明細書が開示する容量式MEMSセンサは、第1基板の面内方向であって、受圧部が第1櫛歯電極を支持する方向に直交する方向に関して、支持部が受圧部を両持ち支持しているように構成することができる。
【0012】
上記の容量式MEMSセンサによれば、押圧部が突起部を介して受圧部を押圧する際に、受圧部が第1櫛歯電極を支持する方向に直交する方向に関して、受圧部が傾斜することを抑制することができる。従って、受圧部が第1櫛歯電極を支持する方向に直交する方向に関して、第1櫛歯電極が第2櫛歯電極に対して傾斜してしまうことを抑制することができる。
【0013】
上記の容量式MEMSセンサは、第1基板に、第3櫛歯電極と、第3櫛歯電極と噛み合うように配置された第4櫛歯電極と、第3櫛歯電極を支持する第2受圧部と、第2受圧部を支持する第2支持部を備えており、第2基板に、第2受圧部に対応する第2押圧部を備えており、第2受圧部および第2押圧部の一方に、第2受圧部および第2押圧部の他方に向けて突出する第2突起部を備えており、第2押圧部が第2突起部を介して第2受圧部を押圧することで第2支持部が変形しており、第3櫛歯電極と第4櫛歯電極が段違いに配置されており、第3櫛歯電極の第4櫛歯電極に対するオフセットの方向が、第1櫛歯電極の第2櫛歯電極に対するオフセットの方向とは反対方向であるように構成することができる。
【0014】
上記の容量式MEMSセンサでは、第3櫛歯電極の第4櫛歯電極に対するオフセットの方向が、第1櫛歯電極の第2櫛歯電極に対するオフセットの方向が反対方向となっているため、差動構造のセンサを実現することができる。
【0015】
本明細書が開示する容量式MEMSセンサは、第1基板の面内方向であって、受圧部が第1櫛歯電極を支持する方向に関して、支持部が受圧部を片持ち支持しているように構成することができる。
【0016】
上記の容量式MEMSセンサによれば、支持部を簡素な構成としつつ、段違いの櫛歯電極を実現することができる。
【0017】
本明細書が開示する容量式MEMSセンサは、第1基板と第2基板が積層されており、第2基板が、第1基板との接合面から所定の深さを有する凹部が形成された収容部を備えているように構成することができる。
【0018】
上記の容量式MEMSセンサによれば、第2基板を、第1基板の支持構造として利用することができる。
【0019】
上記の容量式MEMSセンサは、第1基板に接合された第3基板をさらに備えており、第3基板と第1基板と第2基板が順に積層されており、第3基板が、第1基板との接合面から所定の深さを有する凹部が形成された収容部を備えており、第2基板の収容部と第3基板の収容部によって規定される空間が密封されているように構成することができる。
【0020】
上記の容量式MEMSセンサによれば、第2基板と第3基板を、第1基板の支持構造として利用することができる。第2基板と第3基板が、第1基板を両面から挟み込むように支持するため、第1基板が反りにより変形することを抑制することができる。また、上記の容量式MEMSセンサによれば、櫛歯電極等の構成要素が収容されている空間内に外気や粉塵等が侵入することを防ぐことができるので、容量式MEMSセンサの経時劣化を抑制することができる。
【0021】
本明細書は、別の容量式MEMSセンサも開示する。その容量式MEMSセンサは、第1基板と、第1基板に接合された第2基板を備えている。その容量式MEMSセンサは、第1基板に、第1マス部と、第1マス部に固定された第1可動櫛歯電極と、第1可動櫛歯電極と噛み合うように配置された第1固定櫛歯電極と、第1固定櫛歯電極を支持する第1受圧部と、第1受圧部を支持する第1支持部と、第2マス部と、第2マス部に固定された第2可動櫛歯電極と、第2可動櫛歯電極と噛み合うように配置された第2固定櫛歯電極と、第2固定櫛歯電極を支持する第2受圧部と、第2受圧部を支持する第2支持部と、第1マス部と第2マス部を連結する連結部を備えている。連結部は、第1マス部と第2マス部の連結方向に関して、第1マス部と第2マス部が互いに逆方向に移動するように、第1マス部と第2マス部を連結している。その容量式MEMSセンサは、第2基板に、第1受圧部に対応する第1押圧部と、第2受圧部に対応する第2押圧部を備えている。その容量式MEMSセンサは、第1受圧部および第1押圧部の一方に、第1受圧部および第1押圧部の他方に向けて突出する第1突起部を備えており、第2受圧部および第2押圧部の一方に、第2受圧部および第2押圧部の他方に向けて突出する第2突起部を備えている。その容量式MEMSセンサでは、第1押圧部が第1突起部を介して第1受圧部を押圧することで第1支持部が変形しており、第2押圧部が第2突起部を介して第2受圧部を押圧することで第2支持部が変形している。その容量式MEMSセンサでは、第1可動櫛歯電極と第1固定櫛歯電極が段違いに配置されており、第2可動櫛歯電極と第2固定櫛歯電極が段違いに配置されている。
【0022】
上記の容量式MEMSセンサは、音叉構造の1軸センサとして利用することができる。
【0023】
上記の容量式MEMSセンサは、第1基板に、第3マス部と、第3マス部に固定された第3可動櫛歯電極と、第3可動櫛歯電極と噛み合うように配置された第3固定櫛歯電極と、第4マス部と、第4マス部に固定された第4可動櫛歯電極と、第4可動櫛歯電極と噛み合うように配置された第4固定櫛歯電極をさらに備えており、連結部が、第1マス部と第2マス部の連結方向に関して、第1マス部と第2マス部が互いに逆方向に移動し、第3マス部と第4マス部の連結方向に関して、第3マス部と第4マス部が互いに逆方向に移動し、かつ第1マス部と第2マス部が近づくときに第3マス部と第4マス部が遠ざかり、第1マス部と第2マス部が遠ざかるときに第3マス部と第4マス部が近づくように、第1マス部、第2マス部、第3マス部および第4マス部を連結しているように構成することができる。
【0024】
上記の容量式MEMSセンサは、音叉構造の2軸センサとして利用することができる。
【0025】
(実施例1)
図1に示す本実施例のMEMSセンサ2は、容量式の1軸の角速度センサとして用いられる。MEMSセンサ2は、支持基板4と、センサ基板6と、キャップ基板8が順に積層された、積層基板10から構成されている。本実施例のMEMSセンサ2では、例えば、支持基板4の厚さは300〜500μmであり、センサ基板6の厚さは40〜100μmであり、キャップ基板8の厚さは300〜500μmである。なお、支持基板4の厚さとキャップ基板8の厚さをほぼ同程度とすることで、熱膨張係数差による反りの発生を防止することができる。以下の説明では、積層基板10の積層方向をZ方向とし、積層基板10の面内方向をX方向およびY方向とする。また、以下の説明では、Z方向の正方向を上方向といい、Z方向の負方向を下方向という。本実施例のMEMSセンサ2では、支持基板4の上方にセンサ基板6が積層されており、センサ基板6の上方にキャップ基板8が積層されている。
【0026】
図2に示すように、支持基板4は、例えば、単結晶シリコンからなるシリコン層12と、シリコン層12の下面を覆う酸化シリコン層14と、シリコン層12の上面を覆う酸化シリコン層16から構成されている。支持基板4は、センサ基板6と接合される接合部17と、接合部17の上面から所定の深さを有する凹部18が形成された収容部19を備えている。
図3に示すように、支持基板4を上方向から平面視したときに、接合部17は収容部19の周囲を覆うように配置されている。収容部19の凹部18は、支持基板4を上方向から平面視したときに、略長方形状となるように形成されている。凹部18の深さは、例えば10〜50μmである。凹部18の内部には、複数の凸部20が形成されている。凸部20の上面は、接合部17の上面と同一平面内に位置している。支持基板4は、シリコン層12を上面から所定の深さだけエッチングすることによって複数の凸部20を有する凹部18を形成し、その後に熱酸化によってシリコン層12の下面と上面を酸化して酸化シリコン層14と酸化シリコン層16を形成することによって、形成されている。
【0027】
センサ基板6は、例えば、導電性を付与された単結晶シリコンからなるシリコン層22を備えている。
図4に示すように、センサ基板6には、シリコン層22をエッチングにより選択的に除去することで、マス部24と、櫛歯電極部26と、板状梁部28と、中継部30と、折返し梁部32と、アンカ部34と、櫛歯電極部36と、櫛歯電極部38と、櫛歯電極支持部40と、受圧部42と、直線梁部44と、アンカ部46と、導線部48と、パッド部50と、櫛歯電極部52と、導線部54と、パッド部56と、周辺部58が形成されている。このうち、マス部24と、櫛歯電極部26と、板状梁部28と、中継部30と、折返し梁部32と、アンカ部34と、櫛歯電極部36と、導線部54と、パッド部56は、継ぎ目なく一体的に形成されており、これらは同電位に維持されている。また、櫛歯電極部38と、櫛歯電極支持部40と、受圧部42と、直線梁部44と、アンカ部46と、導線部48と、パッド部50は、継ぎ目なく一体的に形成されており、これらは同電位に維持されている。
【0028】
マス部24は、センサ基板6を上方向から平面視したときに、長方形状に形成されている。マス部24のX方向の両端には、櫛歯電極部26が設けられている。櫛歯電極部26は、マス部24からX方向に沿って伸びる支持部26aと、支持部26aからY方向に沿って伸びる電極部26bを備えている。マス部24のY方向の両端には、板状梁部28が設けられている。板状梁部28はY方向に沿って伸びており、マス部24と中継部30の間を連結している。板状梁部28は、X方向およびY方向の剛性が高く、Z方向の剛性が低い形状に形成されている。中継部30は、センサ基板6を上方向から平面視したときに、長手方向がX方向に沿った長方形状に形成されている。中継部30のX方向の両端には、折返し梁部32が設けられている。折返し梁部32は、中継部30とアンカ部34の間を連結している。折返し梁部32は、X方向およびZ方向の剛性が高く、Y方向の剛性が低い形状に形成されている。折返し梁部32は、中継部30からX方向に沿って伸びる第1直線部32aと、第1直線部32aからY方向に沿って伸びる折返し部32bと、折返し部32bからX方向に沿って伸びる第2直線部32cを備えている。アンカ部34は、支持基板4の凸部20に固定されている。折返し梁部32を用いることによって、支持基板4に反りを生じた場合であっても、その影響を抑制することができる。中継部30のY方向の外側の端部には、櫛歯電極部36が設けられている。櫛歯電極部36は、中継部30からY方向に沿って伸びている。
【0029】
櫛歯電極部38は、長手方向がY方向に沿った長方形状の連結部38aと、連結部38aからX方向に沿って伸びる支持部38bと、支持部38bからY方向に沿って伸びる電極部38cを備えている。櫛歯電極部38の電極部38cは、櫛歯電極部26の電極部26bと、X方向に関して対向して配置されている。櫛歯電極部38と櫛歯電極部26は、互いに噛み合うように配置されていると言える。櫛歯電極部38の連結部38aのX方向の外側端部には、櫛歯電極支持部40が設けられている。櫛歯電極支持部40は、X方向に沿って伸びており、櫛歯電極部38と受圧部42の間を連結している。受圧部42は、センサ基板6を上方向から平面視したときに、正方形状に形成されている。受圧部42のX方向の外側端部には、直線梁部44と、導線部48が設けられている。直線梁部44はX方向に沿って伸びており、受圧部42とアンカ部46の間を連結している。直線梁部44は、X方向およびY方向の剛性が高く、Z方向の剛性が低い形状に形成されている。アンカ部46は、支持基板4の凸部20に固定されている。導線部48は、受圧部42とパッド部50の間を連結している。導線部48は、蛇行形状に形成されており、X方向、Y方向およびZ方向の剛性が低い形状に形成されている。パッド部50は、支持基板4の接合部17に固定されている。
【0030】
櫛歯電極部52は、長手方向がX方向に沿った長方形状の支持部52aと、支持部52aからY方向に沿って伸びる電極部52bを備えている。支持部52aは、支持基板4の接合部17に固定されている。電極部52bは、櫛歯電極部36とX方向に関して対向して配置されている。櫛歯電極部36と櫛歯電極部52は、互いに噛み合うように配置されていると言える。
【0031】
アンカ部34のうちの一つには、導線部54が設けられている。導線部54は、アンカ部34とパッド部56の間を連結している。パッド部56は、支持基板4の接合部17に固定されている。
【0032】
周辺部58は、マス部24と、櫛歯電極部26と、板状梁部28と、中継部30と、折返し梁部32と、アンカ部34と、櫛歯電極部36と、櫛歯電極部38と、櫛歯電極支持部40と、受圧部42と、直線梁部44と、アンカ部46と、導線部48と、パッド部50と、櫛歯電極部52と、導線部54と、パッド部56の周囲を覆うように配置されている。周辺部58は、支持基板4の接合部17に固定されている。
【0033】
図2に示すように、キャップ基板8は、例えば、単結晶シリコンからなるシリコン層60と、シリコン層60の下面を覆う酸化シリコン層62と、シリコン層60の上面を覆う酸化シリコン層64から構成されている。キャップ基板8は、センサ基板6と接合する接合部66と、接合部66の下面から所定の深さを有する凹部68が形成された収容部70を備えている。
図5に示すように、キャップ基板8を下方向から平面視したときに、接合部66は収容部70の周囲を覆うように配置されている。収容部70の凹部68は、キャップ基板8を下方向から平面視したときに、略長方形状となるように形成されている。凹部68の深さは、例えば10〜50μmである。凹部68の内部には、センサ基板6の受圧部42に対応する位置に、押圧部72が形成されている。押圧部72の上面は、接合部66の上面と同一平面内に位置している。押圧部72には、突起部74が形成されている。突起部74は、例えば多結晶シリコンから構成してもよいし、酸化シリコンから構成してもよいし、アルミニウムなどの金属から構成してもよい。突起部74は、MEMSセンサ2を上方向から平面視したときに、センサ基板6の受圧部42の中央に位置するように配置されている。突起部74の高さは、例えば1〜2μmである。また、突起部74の面積は、例えば10μm×10μmである。接合部66には、センサ基板6のパッド部50、パッド部56および櫛歯電極部52の支持部52aに対応する位置に、複数の貫通電極部76が形成されている。貫通電極部76は、
図2に示す、酸化シリコン層64、シリコン層60および酸化シリコン層62を貫通しており、
図1や
図2に示す、酸化シリコン層64の上面に形成された複数の電極パッド78と、
図4に示す、センサ基板6のパッド部50、パッド部56および櫛歯電極部52の支持部52aの間を、電気的に接続している。貫通電極部76は、例えば、酸化シリコンにより側面を覆われた導電性の多結晶シリコンからなる。電極パッド78は、例えば、酸化シリコン層64の上面に配置された導電性の多結晶シリコンと、その多結晶シリコンの上面に配置された金属(例えばアルミニウム)層からなる。
【0034】
本実施例のMEMSセンサ2を製造する際には、まず支持基板4およびキャップ基板8を、それぞれ別個にエッチングで加工し、形成しておく。次に、支持基板4に未加工のシリコン基板を接合で貼り付け、その後エッチングでシリコン基板を加工し、センサ基板6を形成する。その後に、センサ基板6の上面にキャップ基板8を接合する。これらの基板同士の接合は、例えばOH基接合により行われる。具体的には、それぞれの基板の表面をアルゴンプラズマでクリーニングし、その後に酸素プラズマ中で基板表面を活性化して、窒素ガスをキャリアとして水蒸気を導入して基板表面をOH基で終端させる。その後に、真空中においてウェハレベルで加圧接合し、必要に応じてアニールして接合強度を高める。なお、MEMSセンサ2を組み立てた状態では、支持基板4の収容部19とキャップ基板8の収容部70により規定される内部空間は真空状態となり、気密に封止されている。
【0035】
本実施例のMEMSセンサ2では、
図2に示すように、センサ基板6の上面にキャップ基板8を接合する際に、センサ基板6の受圧部42が、キャップ基板8の押圧部72に形成された突起部74と当接して押し下げられ、受圧部42を支持する直線梁部44が撓み変形して、受圧部42、櫛歯電極支持部40および櫛歯電極部38が凹部18に向けて押し下げられる。このとき、導線部48はZ方向に剛性が低いので、Z方向に撓み変形する。そして、撓み変形しても、受圧部42とパッド部50の電気的接続は保たれる。なお、
図2では、撓み変形した導線部48の形状は、簡略化とともに分かりやすくするために、蛇行形状ではなく、直線形状で示してある。この結果、
図6に示すように、MEMSセンサ2を組み立てた状態では、マス部24に設けられた櫛歯電極部26の電極部26bに対して、櫛歯電極部38の電極部38cは下方に沈み込んで配置される。これにより、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38が段違いの櫛歯電極を形成する。
【0036】
以下では
図4を参照しながら、本実施例のMEMSセンサ2の1軸の角速度センサとしての動作について説明する。例えば、
図4の上側の櫛歯電極部36と櫛歯電極部52に関して、両者の間に電圧を印加すると、櫛歯電極部36を櫛歯電極部52の間に引き込もうとする静電引力が作用して、中継部30と、板状梁部28と、マス部24が、Y方向の正方向に向けて、一体的に変位する。逆に、
図4の下側の櫛歯電極部36と櫛歯電極部52に関して、両者の間に電圧を印加すると、櫛歯電極部36を櫛歯電極部52の間に引き込もうとする静電引力が作用して、中継部30と、板状梁部28と、マス部24が、Y方向の負方向に向けて、一体的に変位する。このような電圧の印加を交互に行なうことによって、マス部24はY方向に励振される。
【0037】
マス部24がY方向に振動している状態で、MEMSセンサ2にX軸周りの角速度が作用すると、マス部24にはZ方向のコリオリ力が作用して、マス部24はZ方向に振動する。この際のマス部24のZ方向の振動の振幅は、MEMSセンサ2に作用するX軸周りの角速度の大きさに比例する。マス部24がZ方向に振動すると、櫛歯電極部26が櫛歯電極部38に対してZ方向(
図6の上下方向)に振動し、両者の対向面積が変化する。この対向面積の変化は、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量の変化として検出することができる。これによって、MEMSセンサ2に作用するX軸周りの角速度を検出することができる。
【0038】
仮に、
図7の(a)に示すように、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38が段違いの櫛歯電極として形成されていない場合を考える。この場合に、櫛歯電極部26が櫛歯電極部38に対して上方向(Z方向の正方向)に移動すると、
図7の(b)に示すように、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の対向面積は減少し、両者の間の静電容量も減少する。逆に、櫛歯電極部26が櫛歯電極部38に対して下方向(Z方向の負方向)に移動すると、
図7の(c)に示すように、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の対向面積は減少し、両者の間の静電容量も減少する。従って、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38が段違いの櫛歯電極として形成されていない場合には、MEMSセンサ2のマス部24がZ方向の正方向に動いたか、負方向に動いたかを判別できない。
【0039】
これに対して、本実施例のMEMSセンサ2では、
図8の(a)に示すように、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38が段違いの櫛歯電極として形成されている。この場合、櫛歯電極部26が櫛歯電極部38に対して上方向(Z方向の正方向)に移動すると、
図8の(b)に示すように、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の対向面積は減少して、両者の間の静電容量は減少する。逆に、櫛歯電極部26が櫛歯電極部38に対して下方向(Z方向の負方向)に移動すると、
図8の(c)に示すように、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の対向面積は増加し、両者の間の静電容量も増加する。このように、動く向きによって静電容量の増減が変わる。従って、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38が段違いの櫛歯電極として形成されている場合には、MEMSセンサ2のマス部24がZ方向の正方向に動いたか負方向に動いたかを判別することができる。
【0040】
本実施例の容量式の1軸角速度センサとしてのMEMSセンサ2では、キャップ基板8の押圧部72に形成された突起部74が、センサ基板6の受圧部42に当接して受圧部42を押し下げることで、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38を段違いとしている。突起部74はスパッタリングやCVDなどの膜厚の制御性がよい方法により形成することができるので、形状にばらつきを生じ難く、経時的な変化も生じ難い。加えて、突起部74が受圧部42を押圧することによる直線梁部44、受圧部42、櫛歯電極支持部40、櫛歯電極部38の変形量は、圧縮応力層を利用して直線梁部44、受圧部42、櫛歯電極支持部40、櫛歯電極部38に反りを生じさせる場合の変形量に比べて、ばらつきや経時的な変化を生じ難い。従って、本実施例のMEMSセンサ2によれば、櫛歯電極部38と櫛歯電極部26の間の段差量にばらつきや経時的変化を生じることを抑制することができる。
【0041】
(実施例2)
図9は、実施例2の、容量式の1軸の角速度センサである、MEMSセンサ82を示している。本実施例のMEMSセンサ82は、実施例1のMEMSセンサ2とほぼ同様の構成を備えている。以下では、本実施例のMEMSセンサ82について、実施例1のMEMSセンサ2と相違する点のみを説明する。なお、
図9では、センサ基板6と、キャップ基板8の突起部74のみを図示しており、支持基板4と、キャップ基板8の突起部74以外の部分を図示していない。本実施例のMEMSセンサ82では、受圧部42とアンカ部46が、折返し梁部84によって連結されている。折返し梁部84は、受圧部42の外側の角部に接続されている。折返し梁部84を用いることによって、支持基板4に反りを生じた場合であっても、その影響が抑制され、受圧部42や櫛歯電極部38が反ることはない。また、本実施例のMEMSセンサ82では、1つの受圧部42に対して、4つの突起部74が配置されている。このような構成とすることによって、個々の突起部74の位置や形状がばらついた場合でも、突起部74の当接による直線梁部44、受圧部42、櫛歯電極支持部40、櫛歯電極部38の変形量がばらつくことを抑制することができる。
【0042】
(実施例3)
図10は、実施例3の、容量式の1軸の角速度センサである、MEMSセンサ92を示している。本実施例のMEMSセンサ92は、実施例1のMEMSセンサ2とほぼ同様の構成を備えている。以下では、本実施例のMEMSセンサ92について、実施例1のMEMSセンサ2と相違する点のみを説明する。なお、
図10では、センサ基板6と、キャップ基板8の突起部74のみを図示しており、支持基板4と、キャップ基板8の突起部74以外の部分を図示していない。本実施例のMEMSセンサ92では、受圧部42とアンカ部46が、X方向に沿って伸びる直線梁部94によって連結されている。直線梁部94は、受圧部42のX方向の両側の端部にそれぞれ接続されている。すなわち、受圧部42は、X方向に関して、直線梁部94によって両持ち支持されている。このような構成とすると、突起部74によって受圧部42が押し下げられる際に、受圧部42はY軸周りに傾斜することなく、下方向(Z方向の負方向)へ沈み込む。従って、櫛歯電極部38も、Y軸周りに傾斜することなく、下方向(Z方向の負方向)へ沈み込む。従って、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38を平行に維持したまま、段違いの櫛歯電極を形成することができる。
【0043】
(実施例4)
図11は、実施例4の、容量式の1軸の角速度センサである、MEMSセンサ102を示している。本実施例のMEMSセンサ102は、実施例1のMEMSセンサ2とほぼ同様の構成を備えている。以下では、本実施例のMEMSセンサ102について、実施例1のMEMSセンサ2と相違する点のみを説明する。なお、
図11では、センサ基板6と、キャップ基板8の突起部74のみを図示しており、支持基板4と、キャップ基板8の突起部74以外の部分を図示していない。本実施例のMEMSセンサ102では、受圧部42とアンカ部46が、折返し梁部104によって連結されている。折返し梁部104は、受圧部42のX方向の両側の端部にそれぞれ接続されている。すなわち、受圧部42は、X方向に関して、折返し梁部104によって両持ち支持されている。折返し梁部104は、X方向の剛性が高く、Y方向およびZ方向の剛性が低い形状に形成されている。折返し梁部104は、受圧部42からX方向に沿って伸びる第1直線部と、第1直線部からY方向に沿って伸びる折返し部と、折返し部からX方向に沿って伸びる第2直線部を備えている。折返し梁部104を用いることによって、支持基板4に反りを生じた場合であっても、その影響が抑制され、受圧部42や櫛歯電極部38が反ることはない。また、受圧部42のX方向の両側の端部を折返し梁部104で支持することによって、突起部74によって受圧部42が押し下げられる際に、受圧部42はY軸周りに傾斜することなく、下方向(Z方向の負方向)へ沈み込む。従って、櫛歯電極部38も、Y軸周りに傾斜することなく、下方向(Z方向の負方向)へ沈み込む。従って、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38を平行に維持したまま、段違いの櫛歯電極を形成することができる。
【0044】
(実施例5)
図12は、実施例5の、容量式の1軸の角速度センサである、MEMSセンサ112を示している。本実施例のMEMSセンサ112は、実施例1のMEMSセンサ2とほぼ同様の構成を備えている。以下では、本実施例のMEMSセンサ112について、実施例1のMEMSセンサ2と相違する点のみを説明する。なお、
図12では、センサ基板6と、キャップ基板8の突起部74のみを図示しており、支持基板4と、キャップ基板8の突起部74以外の部分を図示していない。
図12に示すMEMSセンサ112では、受圧部42とアンカ部46が、折返し梁部114によって連結されている。折返し梁部114は、受圧部42のX方向の内側の角部と外側の角部にそれぞれ接続されている。すなわち、受圧部42は、X方向に関して、折返し梁部114によって両持ち支持されているとともに、Y方向に関しても、折返し梁部114によって両持ち支持されている。折返し梁部114を用いることによって、支持基板4に反りを生じた場合であっても、その影響が抑制され、受圧部42や櫛歯電極部38が反ることはない。また、受圧部42のX方向の両側の角部を折返し梁部114で支持することによって、突起部74によって受圧部42が押し下げられる際に、受圧部42はXY平面に対して傾斜することなく、下方向(Z方向の負方向)へ沈み込む。従って、櫛歯電極部38も、XY平面に対して傾斜することなく、下方向(Z方向の負方向)へ沈み込む。従って、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38を平行に維持したまま、段違いの櫛歯電極を形成することができる。また、本実施例のMEMSセンサ112では、1つの受圧部42に対して、4つの突起部74が配置されている。このような構成とすることによって、個々の突起部74の位置や形状がばらついた場合でも、突起部74の当接による折返し梁部114、受圧部42、櫛歯電極支持部40、櫛歯電極部38の変形量がばらつくことを抑制することができる。
【0045】
(実施例6)
図13は、実施例6の、容量式の1軸の角速度センサである、MEMSセンサ122を示している。本実施例のMEMSセンサ122は、実施例1のMEMSセンサ2とほぼ同様の構成を備えている。以下では、本実施例のMEMSセンサ122について、実施例1のMEMSセンサ2と相違する点のみを説明する。なお、
図13では、センサ基板6と、キャップ基板8の突起部74のみを図示しており、支持基板4と、キャップ基板8の突起部74以外の部分を図示していない。本実施例のMEMSセンサ122では、受圧部42とアンカ部46が、直線梁部124によって連結されている。直線梁部124は、受圧部42の角部にそれぞれ接続されている。すなわち、受圧部42は、X方向に関して、直線梁部124によって両持ち支持されているとともに、Y方向に関しても、直線梁部124によって両持ち支持されている。受圧部42のそれぞれの角部を直線梁部124で支持することによって、突起部74によって受圧部42が押し下げられる際に、受圧部42はXY平面に対して傾斜することなく、下方向(Z方向の負方向)へ沈み込む。従って、櫛歯電極部38も、XY平面に対して傾斜することなく、下方向(Z方向の負方向)へ沈み込む。従って、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38を平行に維持したまま、段違いの櫛歯電極を形成することができる。また、本実施例のMEMSセンサ122では、1つの受圧部42に対して、4つの突起部74が配置されている。このような構成とすることによって、個々の突起部74の位置や形状がばらついた場合でも、突起部74の当接による直線梁部124、受圧部42、櫛歯電極支持部40、櫛歯電極部38の変形量がばらつくことを抑制することができる。
【0046】
(実施例7)
図14は、実施例7の、容量式の1軸の角速度センサである、MEMSセンサ132を示している。本実施例のMEMSセンサ132は、実施例1のMEMSセンサ2とほぼ同様の構成を備えている。以下では、本実施例のMEMSセンサ132について、実施例1のMEMSセンサ2と相違する点のみを説明する。なお、
図14では、センサ基板6と、キャップ基板8の突起部74のみを図示しており、支持基板4と、キャップ基板8の突起部74以外の部分を図示していない。本実施例のMEMSセンサ132では、受圧部42とアンカ部46が、X方向に沿って伸びる第1直線梁部134と、Y方向に沿って伸びる第2直線梁部136によって連結されている。第1直線梁部134は、受圧部42のX方向の両側の端部にそれぞれ接続されている。第2直線梁部136は、受圧部42のY方向の両側の端部にそれぞれ接続されている。すなわち、受圧部42は、X方向に関して、第1直線梁部134によって両持ち支持されているとともに、Y方向に関して、第2直線梁部136によって両持ち支持されている。受圧部42のX方向の両側の端部を第1直線梁部134で支持し、受圧部42のY方向の両側の端部を第2直線梁部136で支持することによって、突起部74によって受圧部42が押し下げられる際に、受圧部42はXY平面に対して傾斜することなく、下方向(Z方向の負方向)へ沈み込む。従って、櫛歯電極部38も、XY平面に対して傾斜することなく、下方向(Z方向の負方向)へ沈み込む。従って、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38を平行に維持したまま、段違いの櫛歯電極を形成することができる。
【0047】
(実施例8)
図15は、実施例8の、容量式の1軸の角速度センサである、MEMSセンサ142を示している。本実施例のMEMSセンサ142は、実施例1のMEMSセンサ2とほぼ同様の構成を備えている。以下では、本実施例のMEMSセンサ142について、実施例1のMEMSセンサ2と相違する点のみを説明する。なお、
図15では、センサ基板6と、キャップ基板8の突起部74のみを図示しており、支持基板4と、キャップ基板8の突起部74以外の部分を図示していない。本実施例のMEMSセンサ142では、受圧部42とアンカ部46が、蛇行梁部144によって連結されている。蛇行梁部144は、受圧部42の角部にそれぞれ接続されている。すなわち、受圧部42は、X方向に関して、蛇行梁部144によって両持ち支持されているとともに、Y方向に関しても、蛇行梁部144によって両持ち支持されている。受圧部42のそれぞれの角部を蛇行梁部144で支持することによって、突起部74によって受圧部42が押し下げられる際に、受圧部42はXY平面に対して傾斜することなく、下方向(Z方向の負方向)へ沈み込む。従って、櫛歯電極部38も、XY平面に対して傾斜することなく、下方向(Z方向の負方向)へ沈み込む。従って、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38を平行に維持したまま、段違いの櫛歯電極を形成することができる。
【0048】
(実施例9)
図16は、実施例9の、容量式の1軸の角速度センサである、MEMSセンサ152を示している。本実施例のMEMSセンサ152は、実施例1のMEMSセンサ2とほぼ同様の構成を備えている。以下では、本実施例のMEMSセンサ152について、実施例1のMEMSセンサ2と相違する点のみを説明する。なお、
図16では、センサ基板6と、キャップ基板8の突起部74のみを図示しており、支持基板4と、キャップ基板8の突起部74以外の部分を図示していない。本実施例のMEMSセンサ152では、櫛歯電極部38の連結部38aのY方向の両端に受圧部42が設けられており、導線部48は連結部38aとパッド部50の間を連結している。受圧部42とアンカ部46は、X方向に沿って伸びる直線梁部154によって連結されている。直線梁部154は、受圧部42のX方向の両側の端部にそれぞれ接続されている。すなわち、受圧部42は、X方向に関して、直線梁部154によって両持ち支持されている。本実施例のMEMSセンサ152では、受圧部42がX方向に関して直線梁部154に両持ち支持されているため、突起部74によって受圧部42が押し下げられる際に、受圧部42はY軸周りに傾斜することなく、下方向(Z方向の負方向)へ沈み込む。従って、櫛歯電極部38も、Y軸周りに傾斜することなく、下方向(Z方向の負方向)へ沈み込む。さらに、本実施例のMEMSセンサ152では、櫛歯電極部38がY方向に関して2つの受圧部42に両持ち支持されているため、突起部74によって受圧部42が押し下げられる際に、櫛歯電極部38はX軸周りに傾斜することなく、下方向(Z方向の負方向)へ沈み込む。従って、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38を平行に維持したまま、段違いの櫛歯電極を形成することができる。
【0049】
(実施例10)
図17は、実施例10の、容量式の1軸の角速度センサである、MEMSセンサ162を示している。本実施例のMEMSセンサ162は、実施例1のMEMSセンサ2とほぼ同様の構成を備えている。以下では、本実施例のMEMSセンサ162について、実施例1のMEMSセンサ2と相違する点のみを説明する。なお、
図17では、センサ基板6と、キャップ基板8の突起部74のみを図示しており、支持基板4と、キャップ基板8の突起部74以外の部分を図示していない。本実施例のMEMSセンサ162は、受圧部42近傍の構造に関して、
図14に示す実施例7のMEMSセンサ132と同様の構成子を備えている。
図17に示す本実施例のMEMSセンサ162は、板状梁部28と中継部30を備えておらず、マス部24のY方向の両側の端部に、櫛歯電極部36が設けられている。また、マス部24のそれぞれの角部は、折返し梁部164を介して、アンカ部34に連結されている。折返し梁部164は、マス部24からX方向に沿って伸びる第1直線部164aと、第1直線部164aからY方向に沿って伸びる折返し部164bと、折返し部164bからX方向に沿って伸びてアンカ部34に連結する第2直線部164cを備えている。折返し梁部164は、X方向の剛性が高く、Y方向およびZ方向の剛性が低い形状に形成されている。本実施例のMEMSセンサ162でも、
図14に示すMEMSセンサ132と同様に、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38を平行に維持したまま、段違いの櫛歯電極を形成することができる。
【0050】
(実施例11)
図18は、実施例11の、容量式の1軸の角速度センサである、MEMSセンサ172を示している。本実施例のMEMSセンサ172は、実施例1のMEMSセンサ2とほぼ同様の構成を備えている。以下では、本実施例のMEMSセンサ172について、実施例1のMEMSセンサ2と相違する点のみを説明する。なお、
図18では、センサ基板6と、キャップ基板8の突起部74のみを図示しており、支持基板4と、キャップ基板8の突起部74以外の部分を図示していない。本実施例のMEMSセンサ172では、受圧部42とアンカ部46は、Y方向に沿って伸びるねじり梁部174によって連結されている。ねじり梁部174は、受圧部42のY方向の両端において、X方向の中央部に連結されている。すなわち、受圧部42は、Y方向に関して、ねじり梁部174によって両持ち支持されている。また、本実施例のMEMSセンサ172では、突起部74が受圧部42の中央には配置されていない。一方の受圧部42(
図18の右側の受圧部42)に対応する突起部74は、受圧部42のねじり梁部174との接続部174aよりもX方向の外側(マス部24から見て遠い側)に配置されており、他方の受圧部42(
図18の左側の受圧部42)に対応する突起部74は、受圧部42のねじり梁部174との接続部174aよりもX方向の内側(マス部24から見て近い側)に配置されている。
【0051】
図19は、本実施例のMEMSセンサ172を組み立てた状態を示している。対応する突起部74がねじり梁部174との接続部174aよりも外側に位置する受圧部42(
図19の右側の受圧部42)は、突起部74の当接によってねじり梁部174がねじり変形して、X方向の外側の端部が押し下げられ、X方向の内側の端部が持ち上げられるように、受圧部42がY軸周りに傾斜する。このため、この受圧部42に支持されている櫛歯電極部38(
図19の右側の櫛歯電極部38)は、X方向の内側の端部が持ち上げられるように、Y軸周りに傾斜する。逆に、対応する突起部74がねじり梁部174との接続部174aよりも内側に位置する受圧部42(
図19の左側の受圧部42)は、突起部74の当接によってねじり梁部174がねじり変形して、X方向の内側の端部が押し下げられ、X方向の外側の端部が持ち上げられるように、受圧部42がY軸周りに傾斜する。このため、この受圧部42に支持されている櫛歯電極部38(
図19の左側の櫛歯電極部38)は、X方向の内側の端部が押し下げられるように、Y軸周りに傾斜する。このような構成とすることによって、一方の(
図18の右側の)櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間で形成される段差と、他方の(
図18の左側の)櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間で形成される段差を、逆向きに形成することができる。言い換えると、一方の櫛歯電極部38の櫛歯電極部26に対するオフセットの方向を、他方の櫛歯電極部38の櫛歯電極部26に対するオフセットの方向とは、反対方向にすることができる。このような構成とすることによって、差動構造を有するMEMSセンサ172を実現することができる。
【0052】
(実施例12)
図20は本実施例のMEMSセンサ202を示している。本実施例のMEMSセンサ202は、
図16に示す実施例9のMEMSセンサ152と同様の構成を備える角速度センサ204,206を、Y方向に2つ並べて配置し、両者の間を連結梁208によって連結した構成を有している。つまり、本構成で、差動型の容量式1軸角速度センサとなる。なお、
図20では、センサ基板6と、キャップ基板8の突起部74のみを図示しており、支持基板4と、キャップ基板8の突起部74以外の部分を図示していない。また、
図20では、上下方向をX方向とし、左右方向をY方向として図示している。連結梁208は、角速度センサ204の角速度センサ206に近い側の中継部30と、角速度センサ206の角速度センサ204に近い側の中継部30の間を連結している。
【0053】
連結梁208は、角速度センサ204の中継部30からY方向に沿って伸びる直線部208aと、角速度センサ206の中継部30からY方向に沿って伸びる直線部208bと、直線部208aと直線部208bが連結された、X方向に長手方向を有する長方形の枠形状を有する長方形枠部208cを備えている。直線部208aと直線部208bは、それぞれ長方形枠部208cのX方向の中間部に接続している。また、角速度センサ204の角速度センサ206に近い側の櫛歯電極部36は、直線部208aの両側に配置された櫛歯電極部210、212に対向して配置されており、角速度センサ206の角速度センサ204に近い側の櫛歯電極部36は、直線部208bの両側に配置された櫛歯電極部214,216に対向して配置されている。櫛歯電極部210,212,214,216は、それぞれ、長手方向がX方向に沿った長方形状の支持部210a,212a,214a,216aと、支持部210a,212a,214a,216aからY方向に沿って伸びる電極部210b,212b,214b,216bを備えている。支持部210a,212a,214a,216aは、それぞれ、支持基板4の接合部17に固定されている。電極部210b,212b,214b,216bは、それぞれ、櫛歯電極部36とX方向に関して対向して配置されている。なお、支持部210a,212a,214a,216aには、それぞれ別個に、対応する貫通電極部76(
図2参照)と電極パッド78(
図1参照)が設けられている。本実施例のMEMSセンサ202では、櫛歯電極部210,212は、角速度センサ204のY方向の励振をモニタするモニタ電極として機能し、櫛歯電極部214,216は、角速度センサ206のY方向の励振をモニタするモニタ電極として機能する。
【0054】
本実施例のMEMSセンサ202の動作について説明する。本実施例のMEMSセンサ202では、角速度センサ204の角速度センサ206から遠い側の(
図20の左側の)櫛歯電極部36と櫛歯電極部52の間へ電圧の印加を繰り返し、さらに角速度センサ206の角速度センサ204から遠い側の(
図20の右側の)櫛歯電極部36と櫛歯電極部52の間へ電圧の印加を繰り返すことで、角速度センサ204のマス部24と角速度センサ206のマス部24が、音叉振動する。すなわち、角速度センサ204のマス部24と、角速度センサ206のマス部24が、Y方向に互いに逆向きに振動する。この際に、角速度センサ204と角速度センサ206は連結梁208によって連結されているので、両者の間に位相ズレを生じることなく、Y方向に逆相モードで振動させ続けることができる。
【0055】
このように角速度センサ204と角速度センサ206を音叉振動させている状態で、MEMSセンサ202にX軸周りの角速度が作用すると、角速度センサ204のマス部24と角速度センサ206のマス部24にはそれぞれZ方向に逆向きのコリオリ力が作用して、角速度センサ204のマス部24と角速度センサ206のマス部24は互いに逆位相でZ方向に振動する。例えば、角速度センサ204のマス部24が上方向に動き、角速度センサ206のマス部24が下方向に動くとする。このとき、角速度センサ204の櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量は、
図8の(b)のように、減少する。逆に、角速度センサ206の櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量は、
図8の(c)のように、増加する。従って、角速度センサ204の櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量の変化と、角速度センサ206の櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量の変化を、差動検出することによって、MEMSセンサ202に作用するX軸周りの角速度を検出することができる。
【0056】
なお、MEMSセンサ202にZ軸方向の加速度が作用した場合も、角速度センサ204のマス部24と角速度センサ206のマス部24はそれぞれZ方向に変位するが、この場合、角速度センサ204のマス部24と角速度センサ206のマス部24は互いに同位相でZ方向に変位する。従って、角速度センサ204の櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量の変化と、角速度センサ206の櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量の変化を、差動検出することによって、MEMSセンサ202に作用するZ方向の加速度の影響を排除して、MEMSセンサ202に作用するX軸周りの角速度を正確に検出することができる。
【0057】
(実施例13)
図21は本実施例の、容量式の2軸角速度センサであるMEMSセンサ222を示している。本実施例のMEMSセンサ222は、
図20に示す実施例12のMEMSセンサ202の角速度センサ204,206と同様の構成を備える角速度センサ224,226を、Y方向に2つ並べて配置し、実施例12のMEMSセンサ202の角速度センサ204,206を一部変更して、Z軸周りに90度回転させた角速度センサ228,230を、X方向に2つ並べて配置し、これらの角速度センサ224,226,228,230を、連結梁232によって連結した構成を有している。角速度センサ228,230は、受圧部42および対応する突起部74を有しておらず、角速度センサ228,230の櫛歯電極部38は、櫛歯電極支持部40を介してパッド部50に連結されている。すなわち、角速度センサ228,230では、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38は、段違いの櫛歯電極を形成していない。また、
図21においてX方向の正方向を上にして紙面を見たとき、角速度センサ228,230の左側に配置される櫛歯電極部26では、櫛歯電極部26の電極部は、Y方向の負方向で隣接する櫛歯電極部38の電極部との距離が近く、Y方向の正方向で隣接する櫛歯電極部38の電極部との距離が遠くなるように配置されている。一方、
図21においてX方向の正方向を上にして紙面を見たとき、角速度センサ228,230の右側に配置される櫛歯電極部26では、櫛歯電極部26の電極部は、Y方向の正方向で隣接する櫛歯電極部38の電極部との距離が近く、Y方向の負方向で隣接する櫛歯電極部38の電極部との距離が遠くなるように配置されている。また、角速度センサ228,230では、Y方向の剛性が低い直線梁234によって、マス部24と中継部30が連結されている。角速度センサ228,230では、マス部24がY方向に変位したときに、互いに近接する櫛歯電極部26の電極部と櫛歯電極部38の電極部の間の距離が変化し、両者の間の静電容量が変化する。なお、角速度センサ228の櫛歯電極部235,236は、角速度センサ228のX方向の励振をモニタするモニタ電極として機能し、角速度センサ230の櫛歯電極部237,238は、角速度センサ230のX方向の励振をモニタするモニタ電極として機能する。
【0058】
連結梁232は、角速度センサ224の中継部30からY方向に沿って伸びる直線部232aと、角速度センサ226の中継部30からY方向に沿って伸びる直線部232bと、角速度センサ228の中継部30からX方向に沿って伸びる直線部232cと、角速度センサ230の中継部30からX方向に沿って伸びる直線部232dと、X方向の両端部およびY方向の両端部に頂点を有する菱形形状の菱形枠部232eを備えている。直線部232a,232b,232c,232dは、それぞれ菱形枠部232eの頂点に接続している。
【0059】
本実施例のMEMSセンサ222の動作について説明する。本実施例のMEMSセンサ222では、角速度センサ224,226,228,230が連結梁232によって連結されているので、それぞれの角速度センサ224,226,228,230の櫛歯電極部36と櫛歯電極部52への電圧の印加を繰り返すことで、それぞれの角速度センサ224,226,228,230が音叉振動する。すなわち、角速度センサ224のマス部24と角速度センサ226のマス部24が、Y方向に互いに逆位相で振動するとともに、角速度センサ228のマス部24と角速度センサ230のマス部24が、X方向に互いに逆位相で振動する。加えて、角速度センサ224のマス部24と角速度センサ226のマス部24がY方向に互いに近づくときには、角速度センサ228のマス部24と角速度センサ230のマス部24はX方向に互いに離れ、角速度センサ224のマス部24と角速度センサ226のマス部24がY方向に互いに離れるときには、角速度センサ228のマス部24と角速度センサ230のマス部24はX方向に互いに近づく。
【0060】
このように音叉振動させている状態で、MEMSセンサ222にX軸周りの角速度が作用すると、角速度センサ224のマス部24と角速度センサ226のマス部24にはそれぞれZ方向に逆向きのコリオリ力が作用して、角速度センサ224のマス部24と角速度センサ226のマス部24は互いに逆位相でZ方向に振動する。例えば、角速度センサ224のマス部24が上方向に動き、角速度センサ226のマス部24が下方向に動くとする。このとき、角速度センサ224の櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量は、
図8の(b)のように、減少する。逆に、角速度センサ226の櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量は、
図8の(c)のように、増加する。従って、角速度センサ224の櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量の変化と、角速度センサ226の櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量の変化を、差動検出することによって、MEMSセンサ222に作用するX軸周りの角速度を検出することができる。なお、MEMSセンサ222にZ方向の加速度が作用した場合も、角速度センサ224のマス部24と角速度センサ226のマス部24はそれぞれZ方向に変位するが、この場合、角速度センサ224のマス部24と角速度センサ226のマス部24は互いに同位相でZ方向に変位する。従って、角速度センサ224の櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量の変化と、角速度センサ226の櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量の変化を、差動検出することによって、MEMSセンサ222に作用するZ方向の加速度の影響を排除して、MEMSセンサ222に作用するX軸周りの角速度を正確に検出することができる。
【0061】
また、上記のように音叉振動させている状態で、MEMSセンサ222にZ軸周りの角速度が作用すると、角速度センサ228のマス部24と角速度センサ230のマス部24にはそれぞれY方向に逆向きのコリオリ力が作用して、角速度センサ228のマス部24と角速度センサ230のマス部24は互いに逆位相でY方向に振動する。例えば、角速度センサ228のマス部24がY方向正方向に動き、角速度センサ230のマス部24がY方向負方向に動くとする。このとき、角速度センサ228の左側にある櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量は、電極間隔が増加するため、減少する。逆に、角速度センサ228の右側にある櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量は、電極間隔が減少するため、増加する。一方、角速度センサ230の左側にある櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量は、電極間隔が減少するため、増加する。逆に、角速度センサ230の右側にある櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量は、電極間隔が増加するため、減少する。このように、角速度センサ228、230のそれぞれで、左側と右側の櫛歯電極が差動電極構造になっている。従って、角速度センサ228の櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量の変化と、角速度センサ230の櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量の変化を、差動検出することによって、MEMSセンサ222に作用するZ軸周りの角速度を検出することができる。なお、MEMSセンサ222にY方向の加速度が作用した場合も、角速度センサ228のマス部24と角速度センサ230のマス部24はそれぞれY方向に変位するが、この場合、角速度センサ228のマス部24と角速度センサ230のマス部24は互いに同位相でY方向に変位する。従って、角速度センサ228の左側と右側の櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量の変化を差動検出し、そして、角速度センサ230の左側と右側の櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量の変化を差動検出することによって、MEMSセンサ222に作用するY方向の加速度の影響を排除して、MEMSセンサ222に作用するZ軸周りの角速度を正確に検出することができる。
【0062】
(実施例14)
図22は本実施例の、容量式の2軸角速度センサであるMEMSセンサ242を示している。本実施例のMEMSセンサ242は、
図16に示す実施例9のMEMSセンサ152について、一部を変更した形態を備えている。本実施例のMEMSセンサ242では、中継部30のY方向の外側の端部には、櫛歯電極部244が設けられている。櫛歯電極部244は、中継部30からY方向に沿って伸びる支持部244aと、支持部244aからY方向に沿って伸びる電極部244bを備えている。また、櫛歯電極部244に対応して、櫛歯電極部246が設けられている。櫛歯電極部246は、長手方向がX方向に沿った長方形状の連結部246aと、連結部246aからY方向に沿って伸びる支持部246bと、支持部246bからY方向に沿って伸びる電極部246cを備えている。櫛歯電極部246の電極部246cは、櫛歯電極部244の電極部244bと、Y方向に関して対向して配置されている。すなわち、櫛歯電極部246と櫛歯電極部244は、互いに噛み合うように配置されている。
図22においてY方向の正方向を上にして紙面を見たとき、MEMSセンサ242の上側に配置される櫛歯電極部246では、櫛歯電極部246の電極部246cは、Y方向の正方向で隣接する櫛歯電極部244の電極部244bとの距離が近く、Y方向の負方向で隣接する櫛歯電極部244の電極部244bとの距離が遠くなるように配置されている。一方、
図22においてY方向の正方向を上にして紙面を見たとき、MEMSセンサ242の下側に配置される櫛歯電極部246では、櫛歯電極部246の電極部246cは、Y方向の負方向で隣接する櫛歯電極部244の電極部244bとの距離が近く、Y方向の正方向で隣接する櫛歯電極部244の電極部244bとの距離が遠くなるように配置されている。MEMSセンサ242では、マス部24がY方向に変位したときに、互いに近接する櫛歯電極部244の電極部244bと櫛歯電極部246の電極部246cの間の距離が変化し、両者の間の静電容量が変化する。櫛歯電極部246は、櫛歯電極支持部248を介して、パッド部250に連結している。パッド部250は、支持基板4の接合部17に固定されている。
【0063】
本実施例のMEMSセンサ242の動作について説明する。MEMSセンサ242にY方向の加速度が作用すると、マス部24はY方向に変位する。例えば、マス部24がY方向正方向に動いたとする。このとき、上側にある櫛歯電極部244と櫛歯電極部246の間の静電容量は、電極間隔が増加するため、減少する。逆に、下側にある櫛歯電極部244と櫛歯電極部246の間の静電容量は、電極間隔が減少するため、増加する。従って、上側と下側の櫛歯電極部244と櫛歯電極部246の間の静電容量の変化を差動検出することで、MEMSセンサ242に作用するY方向の加速度を検出することができる。また、MEMSセンサ242にZ方向の加速度が作用すると、マス部24はZ方向に変位する。従って、櫛歯電極部26と櫛歯電極部38の間の静電容量の変化を検出することで、MEMSセンサ242に作用するZ方向の加速度を検出することができる。
【0064】
上記の各実施例では、突起部74がキャップ基板8の押圧部72に形成されている構成について説明したが、突起部74はセンサ基板6の受圧部42に形成されていてもよい。
【0065】
上記の各実施例で述べたMEMSセンサの構造は、Z方向の変位を段違いの櫛歯電極によるスライド方向の容量変化として検出する。だから、温度変化によって基板に反りが発生したときでも、櫛歯電極の間隔が変化しない(ギャップクロージングにはならない)。そのため、温度変化によって段違いの櫛歯電極の初期容量が変化することを抑制している。
【0066】
各MEMSセンサのマス部を支持する支持梁が、基板反りの影響による応力を緩和する折返し梁であること、支持基板とキャップ基板の厚さがほぼ等しく温度変化により基板が反り難い構造であること、受圧部につながった櫛歯電極部が応力を緩和する折返し梁で支持されていることから、温度変化によって段違いの櫛歯電極の初期容量が変化することをさらに抑制している。
【0067】
以上のことから、本発明のMEMSセンサは、温度変化に対してロバストで、温度変化による零点変動が小さい特性を備える。
【0068】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0069】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。