特許第6331013号(P6331013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331013
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】カチオン硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   C08G59/68
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-105560(P2014-105560)
(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公開番号】特開2015-218332(P2015-218332A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(72)【発明者】
【氏名】大槻 直也
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−025814(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/123803(WO,A1)
【文献】 特開昭56−135517(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/153076(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜()成分を含有することを特徴とするカチオン硬化性樹脂組成物。
(A)成分:水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールE型エポキシ樹脂、エポキシシクロヘキサン、ピネンオキシド、リモネンジオキシド、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3’,4’−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルからなる群のいずれかから選択される化合物
(B)成分:シクロヘキサン、シクロペンタン、2−ノルボルネン、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、メチルシクロヘキサンからなる群から少なくとも1以上選択され、(A)成分との混合物が(C)成分を溶解できる脂環式炭化水素骨格を有する化合物
(C)成分:ヨードニウム塩を含有するカチオン開始剤
(D)成分:シランカップリング剤
【請求項2】
(D)成分が、グリシジル基含有シランカップリング剤であることを特徴とする請求項1に記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(D)成分が、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランからなる群から少なくとも1以上選択されることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)成分は、一般式(1)で表されるヨードニウム塩を含有するカチオン開始剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式中のR〜Rは、水素原子、炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、それぞれのR〜Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。さらに、Xが、AsF、SbF、BF、B(C、C(CFSO又は[P(R(F)6−a(式中、Rは炭素数1〜20のフッ素化アルキル基を示し、aは0〜5の整数を示す。)
【請求項5】
前記(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、(B)成分が0.01〜95質量部、(C)成分が0.001〜30質量部を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
熱のみによって硬化するカチオン硬化性樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のカチオン硬化性樹脂組成物に対して、50〜100℃の温度により硬化することを特徴とする硬化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
活性エネルギー線の照射又は低温加熱のいずれでも硬化するカチオン硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エポキシ樹脂等を含有するカチオン重合性樹脂組成物は、接着力、封止性、高強度、耐熱性、電気特性、耐薬品性に優れることから、接着剤、封止剤、ポッティング剤、コーティング剤、導電性ペーストなどの様々な用途で用いられてきた。また、その対象は多岐にわたり、特に電子機器においては、半導体、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、タッチパネル等のフラットパネルディスプレイ、ハードディスク装置、モバイル端末装置等に用いられている。
【0003】
特許文献1には、エポキシ樹脂と紫外線等の活性エネルギー線の照射によりルイス酸を発生する光カチオン開始剤を含有する光カチオン重合性樹脂組成物が開示されているが、このカチオン重合性樹脂組成物は、光が当たらない箇所は硬化させることができないという問題があった。この問題を解決するためには、200℃程度まで加熱することで、カチオン開始剤から酸を発生させ、硬化させることも考えられるが、あまりにも高温の硬化条件である為、熱により変形しやすいプラスチック、熱により劣化しやすい液晶や有機EL素子などの用途への適用が難しいという問題が生じていた。
【0004】
そのような背景から、特許文献2では、ヨードニウム塩化合物と過酸化物とカチオン重合性物質とを含有してなる低温硬化性カチオン硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−204676号公報
【特許文献2】特開2011ー116977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示されたカチオン硬化性樹脂組成物は、過酸化物の熱分解を利用するものであり、該当する接着剤の硬化物は、高温環境化に晒されると、未反応の過酸化物が分解し、発生したラジカルによって硬化物のポリマーが劣化するおそれがある。また、示差走査熱量測定の結果を確認する限り、反応熱ピークがもっとも低いものでも101℃であり、プラスチック部材を接着するような用途や液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、タッチパネル等のフラットパネルディスプレイ用途を考慮すると、より低温硬化性が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、上述の問題点を解決すること、即ち活性エネルギー線の照射又は低温加熱のいずれでも硬化するカチオン硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、特定のカチオン硬化性樹脂組成物により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の要旨を次に説明する。
下記の(A)〜(C)成分を含有することを特徴とするカチオン硬化性樹脂組成物
(A)成分:シクロアルカン骨格及び少なくとも1つのグリシジル基を有する化合物
(B)成分:脂環式炭化水素骨格を有する化合物(但し、(A)成分及び環状構造を構成する炭素原子に、(メタ)アクリル基、カルボキシ基、イミド基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基からなる群から選択される電子吸引基が直接結合している化合物を除く)
(C)成分:ヨードニウム塩を含有するカチオン開始剤
【発明の効果】
【0009】
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線の照射又は低温加熱のいずれでも速やかに硬化可能であるという点で優れている。また、本発明によれば細部の隙間まで万遍なく硬化させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の示差走査熱量の測定結果のグラフである。
図2】実施例5の示差走査熱量の測定結果のグラフである。
図3】実施例6の示差走査熱量の測定結果のグラフである。
図4】比較例3の示差走査熱量の測定結果のグラフである。
図5】比較例4の示差走査熱量の測定結果のグラフである。
図6】比較例5の示差走査熱量の測定結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、カチオン重合開始剤の分解温度に着目したことにより低温硬化性を実現している。すなわち、一般的にヨードニウム系カチオン開始剤の熱分解温度は、200℃を超えるものが多く、熱には安定である。しかし、ヨードニウム系カチオン開始剤を本発明の(A)成分及び(B)成分の混合物に溶解させるとヨードニウム系カチオン開始剤の熱分解温度が著しく低下することを見出した。
【0012】
以下本発明を詳細に説明する。
<(A)成分>
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物における(A)成分は、シクロアルカン骨格及び少なくとも1つのグリシジル基を有する化合物であれば特に限定されるものではない。単独、あるいは2種以上を混合して使用することができる。ここで(A)成分のシクロアルカン骨格とは、炭素数3〜12の脂環式炭化水素の構造を意味する。
【0013】
(A)成分は、25℃において液状であるものが、作業性及び低温硬化性に優れることから好ましい。また、25℃における粘度は、0.1〜30000mPa・sが好ましく、更に好ましくは1〜15000mPa・sであり、特に好ましくは、10〜1000mPa・sである。また、本発明に用いられる(A)成分のエポキシ当量は、500以下であることが好ましく、更に好ましくは400以下であり、特に好ましくは300以下である。(A)成分のエポキシ当量が500を上回ると、低温硬化性が低下するおそれがある。尚エポキシ当量は、JISK−7236の方法で測定される。
【0014】
(A)成分の具体例としては、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールE型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、水添フェノールノボラックエポキシ樹脂、水添クレゾールノボラックエポキシ樹脂、エポキシシクロヘキサン、ピネンオキシド、リモネンジオキシド、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3’,4’−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、エポキシエチルジビニルシクロヘキサン、ジエポキシビニルシクロヘキサン、1,2,4−トリエポキシエチルシクロヘキサン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらのうち優れた低温硬化性が得られることから、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールE型エポキシ樹脂、エポキシシクロヘキサン、ピネンオキシド、リモネンジオキシド、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3’,4’−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、エポキシエチルジビニルシクロヘキサン、ジエポキシビニルシクロヘキサン、1,2,4−トリエポキシエチルシクロヘキサンが好ましく、特に好ましくは、低温硬化性が優れることから水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールE型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0015】
(A)成分の製造方法は、例えば芳香族エポキシ樹脂を無溶剤又はテトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系の有機溶剤を用いて、ロジウム又はルテニウムをグラファイトに担持した触媒の存在下で、水素化反応し、得る方法などが挙げられるが、これらに限定されない。(A)成分の水素転化率が50%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上、特に好ましくは、80%以上である。水素転化率が50%より少ないと、低温硬化性に劣るおそれがある。
【0016】
(A)成分の市販品としては例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂であればYX−8000、YX−8034(三菱化学株式会社製)、EXA−7015(DIC社製)、ST−3000(新日鉄住金化学株式会社製)、リカレジンHBE−100(新日本理化株式会社)、EX−252(ナガセケムテックス株式会社)等が挙げられる。また、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、例えばYL−6753(三菱化学株式会社製)等が挙げられる。1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルとしては、リカレジン DME−100(新日本理化株式会社)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0017】
<(B)成分>
本発明の(B)成分は、脂環式炭化水素骨格を有する化合物(但し、(A)成分及び環状構造を構成する炭素原子に、(メタ)アクリル基、カルボキシ基、イミド基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、のいずれかから選択される電子吸引基が直接結合している化合物を除く)である。後述する比較例4、5に示すように環状構造を構成する炭素原子に、(メタ)アクリル基、カルボキシ基、イミド基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基のいずれかから選択される電子吸引基が直接結合している化合物を用いた場合、低温硬化性が劣ることから好ましくない。なお、上記脂環式炭化水素骨格とは、炭素数3〜12の炭素原子により構成された構造などがあげられる。(B)成分の沸点は特に限定されないが低温硬化性及び作業性の観点から20℃以上が好ましく、更に好ましくは30℃以上であり、特に好ましくは40℃以上である。
【0018】
(B)成分は、脂環式炭化水素骨格を構成する炭素原子にそれぞれ単独に水素原子、炭素数1〜12の直鎖状又は分枝状のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数1〜12のチオール、ビニルエーテル、炭素数1〜12のアルコールのいずれかが結合している化合物などが挙げられるが、この限りではない。
【0019】
(B)成分の具体的な化合物としては、炭素数3〜12のシクロアルカン誘導体、炭素数3〜12のシクロアルケン誘導体、ノルボルネン誘導体等が挙げられ、好ましくは、炭素数3〜12のシクロアルカン誘導体、ノルボルネン誘導体があげられるがこれらに限定されるものではない。
【0020】
(B)成分に該当する前記炭素数3〜12のシクロアルカン誘導体とは、例えばシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、シクロヘキサンジメタノールジビニルエール、2エチルヘキシルブチルビニルエーテル、クロロシクロヘキシル、フルオロシクロヘキシル、トリフルオロメチルシクロヘキシルなどが挙げられる。
【0021】
(B)成分に該当するノルボルネン誘導体とは、例えばノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエンなどが挙げられる。
【0022】
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物における(B)成分の配合量は、特に制限されないが、前記(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し0.01〜95質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1〜50質量部であり、特に好ましくは0.5〜30質量部である。0.01質量部を満たないと低温硬化性が得られないおそれがあり、また90質量部を超えると室温貯蔵安定性に悪影響を与えるおそれがある。
【0023】
<(C)成分>
本発明の(C)成分は、カチオン開始剤であり、活性エネルギー線の照射又は加熱により酸を発生するヨードニウム塩である。なお、(C)成分の熱分解温度は、組成物の貯蔵安定性の観点から、200℃以上であることが好ましく、より好ましくは220℃以上である。なお、熱分解温度は、(C)成分に対してTG/DTA(熱天秤/示差熱分析)装置を用いて測定した値である。また、本発明の(C)成分は、(A)成分に対して可溶であることから、10μm以下の微細な隙間でも組成物が硬化することができる。
【0024】
前記(C)成分のヨードニウム塩としては、一般式(1)で表されるものがあげられる。
【化1】
(式中のR〜Rは、水素原子、炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、それぞれのR〜Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。さらに、Xは、AsF、SbF、BF、B(C、C(CFSO又は[P(R(F)6−a(式中、Rは炭素数1〜20フッ素化アルキル基を示し、aは0〜5の整数を示す。)であり、より低温硬化性に優れるという観点からXは、B(C、C(CFSO又は[P(R(F)6−aが好ましい。)
【0025】
本発明の(C)成分の具体的な化合物としては、例えばジフェニルヨードニウム−ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム−ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム−テトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウム−フッ素化アルキルフルオロリン酸、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム−ヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム−ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム−テトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム−フッ素化アルキルフルオロリン酸、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム−ヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム−ヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム−テトラフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム−フッ素化アルキルフルオロリン酸4−メトキシジフェニルヨードニウム−ヘキサフルオロホスフェート、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム−ヘキサフルオロホスフェート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム−フッ素化アルキルフルオロリン酸等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、低温硬化性に優れることから、中でも好ましくはジフェニルヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウム−フッ素化アルキルフルオロリン酸、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム−フッ素化アルキルフルオロリン酸、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム−フッ素化アルキルフルオロリン酸、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム−フッ素化アルキルフルオロリン酸があげられる。
【0026】
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物における(C)成分の配合量は、特に制限されないが、前記(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し0.001〜30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部である。0.001質量部を満たないと低温硬化性が得られないおそれがあり、また30質量部を超えると前記(A)成分及び(B)成分に溶解しにくくなるおそれがある。
【0027】
<(D)成分>
本発明の(D)成分のシランカップリング剤は、(A)〜(C)成分の相溶性を向上させ、より低温硬化性を向上させることができる化合物である。(D)成分としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシジル基含有シランカップリング剤、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、その他γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でもグリシジル基含有シランカップリング剤が好ましく用いられ、グリシジル基含有シランカップリング剤の中でも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、(D)成分の配合量は、特に限定されるものではないが、本発明の(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し0.001〜30質量部であることがあげられる。
【0028】
さらに本発明のカチオン硬化性樹脂組成物には、本発明の特性を損なわない範囲において、本発明の(A)成分以外のエポキシ樹脂、オキセタン化合物、(A)成分以外のビニルエーテル、光ラジカル開始剤、増感剤、過酸化物、チオール化合物、保存安定剤、顔料、染料などの着色剤、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、タルク、シリカ、アルミナ、ガラス、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム及び酸化マグネシウム等の平均粒径が0.001〜100μmの無機充填剤、銀等の導電性粒子、難燃剤、アクリルゴム、シリコンゴム、可塑剤、有機溶剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等の酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、消泡剤、発泡剤、離型剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、粘着付与剤、シクロヘキシル基を有するクラウンエーテル(本発明の(A)成分には該当しない)等の硬化遅延剤、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂類、シアネートエステル類、ポリ(メタ)アクリレート樹脂類、ポリウレタン樹脂類、ポリウレア樹脂、ポリエステル樹脂類、ポリビニルブチラール樹脂、SBS、SEBSなどのポリマーや熱可塑性エラストマー等の添加剤を適量配合しても良い。これらの添加により、より樹脂強度・接着強さ・難燃性・熱伝導性、作業性等に優れたカチオン硬化性樹脂組成物およびその硬化物が得られる。
【0029】
前記エポキシ樹脂としては、芳香族ビスフェノールA型エポキシ樹脂、芳香族ビスフェノールF型エポキシ樹脂、芳香族ビスフェノールE型エポキシ樹脂、芳香族ビスフェノールA型のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、芳香族ビスフェノールF型のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、芳香族ビスフェノールE型のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、芳香族ノボラック型エポキシ樹脂、ウレタン変性芳香族エポキシ樹脂、窒素含有芳香族エポキシ樹脂、ポリブタジエン又はニトリルブタジエンゴム(NBR)等を含有するゴム変性芳香族エポキシ樹脂等をあげることができる。
【0030】
前記芳香族エポキシ樹脂の市販品としては、例えばjER825、827、828、828EL、828US、828XA、834、806、806H、807、604、630(三菱化学株式会社製)、EPICLON830、EXA−830LVP、EXA−850CRP、835LV、HP4032D、703、720、726、HP820、N−660、N−680、N−695、N−655−EXP−S、N−665−EXP−S、N−685−EXP−S、N−740、N−775、N−865(DIC株式会社製)、EP4100、EP4000、EP4080、EP4085、EP4088、EP4100HF、EP4901HF、EP4000S、EP4000L、EP4003S、EP4010S、EP4010L(株式会社ADEKA製)、デナコールEX614B、EX411、EX314、EX201、EX212、EX252(ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。
【0031】
前記オキセタン化合物としては、例えば3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチレングリコースビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等を挙げることができる。
【0032】
前記ビニルエーテル化合物としては、例えば1,4−ブタンジオールジビニエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0033】
前記光ラジカル開始剤としては、例えばベンジルケタール系光ラジカル重合開始剤、α−ヒドロキシアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤、アミノアセトフェノン系光開始剤、オキシムケトン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光ラジカル重合開始剤、チタノセン系光ラジカル重合開始剤、チオ安息香酸S−フェニル重合開始剤、ベンゾフェノン系光ラジカル開始剤、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤、アントラキノン系光開始剤、ベンゾイルギ酸等が挙げられる。添加量は、特に限定されるものではないが、吸収波長及びモル吸光係数を参考にする必要がある。なお、ヒドロキシアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンがあげられるが、この化合物は本発明において(B)成分ではなく、光ラジカル開始剤として扱われる。
【0034】
前記増感剤としては、9−フルオレノン、アントロン、ジベンゾスベロン、フルオレン、2−ブロモフルオレン、9−ブロモフルオレン、9,9−ジメチルフルオレン、2−フルオロフルオレン、2−ヨードフルオレン、2−フルオレンアミン、9−フルオレノール、2,7−ジブロモフルオレン、9−アミノフルオレン塩酸塩、2,7−ジアミノフルオレン、9,9’−スピロビ[9H−フルオレン]、2−フルオレンカルボキシアルデヒド、9−フルオレニルメタノール、2−アセチルフルオレン、ニトロ化合物、色素等が挙げられる。添加量は、特に限定されるものではないが、吸収波長及びモル吸光係数を参考にする必要がある。
【0035】
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線の照射又は低温加熱のいずれでも硬化することが可能であるが、本発明は特に低温の熱のみによって硬化することが特徴である。
【0036】
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物の硬化方法としては、加熱条件としては、45〜120℃の温度が好ましく、より好ましくは、50〜100℃である。また、活性エネルギー線照射により硬化させることができる。この場合の活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線等が挙げられるが、特に制限されない。活性エネルギー線の積算光量は300〜100000mJ/cmが好ましく、活性エネルギー線の波長は150〜830nmが好ましく、より好ましくは200〜400nmである。
【0037】
本発明の反応開始温度とは、カチオン硬化性樹脂組成物に対する示差走査熱量(DSC)測定により求められる値であり、具体的には、DSC測定結果のグラフのベースラインとピークの変曲点における接線との交点とした温度である。また、本発明の低温硬化性とは、反応開始温度が90℃以下であることを意味する。
【0038】
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物の用途としては、接着剤、封止剤、ポッティング剤、コーティング剤、導電ペースト、シート状接着剤などがあげられる。また、接着剤、封止剤、ポッティング剤、コーティング剤、導電ペースト、シート状接着剤の具体的な対象としては、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク等の自動車分野;液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス、タッチパネル、プラズマディスプレイ、発光ダイオード表示装置等のフラットパネルディスプレイ分野;ビデオディスク、CD、DVD、MD、ピックアップレンズ、ハードディスク周辺部材;ブルーレイディスク等の記録分野;電子部品、電気回路、継電器、電気接点あるいは半導体素子等の封止材料、ダイボンド剤、導電性接着剤、異方性導電性接着剤、ビルドアップ基板を含む多層基板の層間接着剤等の電子材料分野;Li電池、マンガン電池、アルカリ電池、ニッケル系電池、燃料電池、シリコン系太陽電池、色素増感型太陽電池、有機太陽電池等の電池分野;光通信システムでの光スイッチ周辺、光コネクタ周辺の光ファイバー材料、光受動部品、光回路部品、光電子集積回路周辺の等の光部品分野;モバイル端末装置;建築分野;航空分野等が挙げられる。
【0039】
また、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、低温で細部の隙間まで万遍なく硬化させることが可能であるので、リレー部品などのスイッチ部材のシール剤やコイルの含浸などの用途に好適に用いられる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例によって本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により制約されるものではない。また、下記の表中の配合割合は質量基準である。
【0041】
<実施例および比較例の調製>
組成物を調製するために下記成分を準備した。
【0042】
本発明の実施例および比較例に使用した材料は下記に示す市販の製品または試薬である。
<(A)成分>
a1:水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、粘度1900mPas、エポキシ当量205、商品名YX−8000、三菱化学株式会社製
a2:水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、粘度200mPas、エポキシ当量180、商品名YL−6753、三菱化学株式会社製
<(A)成分の比較成分>
a’1:芳香族ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び芳香族ビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物、粘度2250mPas、エポキシ当量165、商品名EXA−835LV、DIC株式会社製
<(B)成分>
b1:シクロヘキサン、沸点81℃
b2:シクロペンタン、沸点49℃
b3:2−ノルボルネン、沸点96℃
b4:シクロヘキシルビニルエーテル、沸点147℃
b5:シクロヘキサンジメタノール、沸点283℃
b6:シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、沸点104℃、商品名CHDVE、日本カーバイド工業株式会社
b7:メチルシクロヘキサン、沸点101℃
<(B)成分の比較成分>
b’1:N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド(環状構造を構成する炭素原子に電子吸引基であるイミド基が直接結合している脂環式炭化水素骨格を有する化合物)
b’2:シクロヘキシルアクリレート(環状構造を構成する炭素原子に電子吸引基である(メタ)アクリル基が直接結合している脂環式炭化水素骨格を有する化合物)、沸点183℃
<(C)成分>
c1:4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム−フッ素化アルキルフルオロリン酸、熱分解温度247℃
c2:4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、商品名Photo initiator2074ローディア社製、熱分解温度252℃
<(D)成分>
d1:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0043】
[実施例1〜12および比較例1〜5のカチオン硬化性樹脂組成物の調製]
表1、2に示す重量割合で、(A)〜(D)成分を加え、遮光環境化で、25℃で攪拌混合し、カチオン硬化性樹脂組成物を調整した。
【0044】
<反応開始温度の測定>
各カチオン硬化性樹脂組成物の低温硬化性について、示差走査熱量(DSC)を用いて反応開始温度を測定し、その結果を表1、2に示す。なお、DSC測定にはセイコーインスツルメント社製DSC110を用い、窒素雰囲気下昇温速度10℃/minで30〜200℃まで昇温測定した。反応開始温度とは、DSC測定結果のグラフのベースラインとピークの変曲点における接線との交点とした。なお、実施例1、5、6と比較例3〜5の示差走査熱量の測定結果のグラフについて、図1〜6に示す。
【0045】
<活性エネルギー線硬化性の確認>
実施例1〜12の各カチオン硬化性樹脂組成物0.01gをスライドガラス上に滴下し、カバーグラスを被せてカチオン硬化性組成物が薄膜としてガラスに挟まれた試験片を作成する。次に紫外線照射機により積算光量30kJ/mの光活性エネルギーを照射後、ガラス同士が接着して手で動かせなくなることを確認する試験を行った。
試験結果は、実施例1〜12の各カチオン硬化性樹脂組成物はすべて接着しており、活性エネルギー線硬化性を有することを確認した。
【0046】
[比較例6]
実施例1において、c1の代わりに、平均粒径3μmの潜在性硬化剤(製品名PN-23J、味の素ファインテクノ株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして調製し、比較例6を得た。
【0047】
<細部隙間硬化性試験>
2枚のスライドガラスを重ね両端をピンチで固定した後、重なり合う端面が上になるうスライドガラスを垂直に立てる。上部端面中央の重ねあわせ部分に実施例1及び比較例6の硬化性組成物を滴下し、100℃の高温槽に1時間放置する。硬化後のガラスを剥がし、液状の箇所がある場合を「×」、ない場合を「○」とした。
試験結果は、実施例1を用いた場合は「○」であり、比較例6を用いた場合は「×」であった。
【0048】
【表1】
【0049】
表1の実施例の結果より、比較例よりも反応開始温度が低温であることがわかる。
【0050】
【表2】
【0051】
表2の比較例1の結果より、本発明の(B)成分を非含有であり、且つ本発明の(A)成分ではないエポキシ樹脂を用いている組成物では、本発明の実施例と比較し、反応開始温度が高温であり、低温硬化性が劣ることがわかる。また、比較例2の結果より、本発明の(A)成分ではないエポキシ樹脂を用いている組成物では、本発明の実施例と比較し、反応開始温度が高温であり、低温硬化性が劣ることがわかる。また、比較例3の結果より、本発明の(B)成分を非含有の組成物では、本発明の実施例と比較し、反応開始温度が高温であり、低温硬化性が劣ることがわかる。また、比較例4の結果より、本発明の(B)成分の代わりにN−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド(環状構造を構成する炭素原子に電子吸引基であるイミド基が直接結合している脂環式炭化水素骨格を有する化合物)を含有した組成物では、本発明の実施例と比較し、反応開始温度が高温であり、低温硬化性が劣ることがわかる。また、比較例5の結果より、本発明の(B)成分の代わりにシクロヘキシルアクリレート(環状構造を構成する炭素原子に電子吸引基である(メタ)アクリル基が直接結合している脂環式炭化水素骨格を有する化合物)を含有した組成物は、本発明の実施例と比較し、反応開始温度が高温であり、低温硬化性が劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線の照射又は低温加熱のいずれでも速やかに硬化可能であるので、接着剤、封止剤、ポッティング剤、コーティング剤、導電ペースト、シート状接着剤など広い分野に適用可能であることから産業上有用である。更に、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、低温で細部の隙間まで万遍なく硬化させることが可能であるので、リレー部品などのスイッチ部材のシール剤やコイルの含浸などの用途に好適に用いられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6