(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本開示に係る有機EL表示パネルの製造方法の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本開示に係る有機EL表示パネルの製造方法、および有機EL表示パネルの一例を示したものに過ぎない。従って本開示は、以下の実施の形態を参考に請求の範囲の文言によって範囲が画定されるものであり、以下の実施の形態のみに限定されるものではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本開示の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0015】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0016】
(実施の形態1)
以下、実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造方法、有機EL表示パネルについて、図面を用いて説明する。
【0017】
[TFTアレイの構成]
まず、実施の形態に係る製造方法により製造される有機EL表示パネル100の一部であるTFTアレイ101の構成を説明する。
【0018】
図1は、実施の形態に係るTFTアレイの一部を示す回路図である。
【0019】
図2は、選択トランジスタの構造を示す断面図である。なお、他のトランジスタも同様の構造を備えていてもよい。
【0020】
図1に示すように、TFTアレイ101は、薄膜トランジスタがマトリクス状に設けられたものである。なお、同図は、オープンショート検査前のTFTアレイ101の回路の状態を示している。
【0021】
TFTアレイ101は、一つの副画素102につき一つの選択トランジスタ121を含む複数のトランジスタを備え、さらに、複数の副画素102にまたがって配線されるスキャン線122と、データ線124とを備えている。また、
図2に示すように、選択トランジスタ121は、基板110上に薄膜状に形成されるトランジスタであり、ゲート電極125とソース電極126とドレイン電極127と第一絶縁層113、チャネル形成層114、第二絶縁層115とを備えている。
【0022】
選択トランジスタ121は、ゲート電極125がスキャン線122に接続され、ソース電極126がデータ線124に接続される薄膜トランジスタであり、データ線124に伝送される画像信号を容量素子に供給するか否かをスキャン線122に伝送される走査信号に基づき選択するためのトランジスタである。本実施の形態の場合、選択トランジスタ121はボトムゲート型が採用されている。
【0023】
基板110の材料は、絶縁性を備えるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス又は高耐熱性ガラス等のガラス材料で構成される場合や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の樹脂材料からなる樹脂材料で構成される場合もある。また、基板110は、比較的剛性の高いリジッド基板ばかりでなく、可撓性を有するフレキシブル基板であってもよい。
【0024】
ゲート電極125は、導電性材料からなる導電膜の単層構造又は多層構造の電極であり、基板110の上方に所定形状で形成される。ゲート電極125の材料は具体的に限定されるものではないが、例えば、金属、又は、複数種類の金属などからなる合金(例えばモリブデンタングステン等)、酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)等の導電性金属酸化物、又は、ポリチオフェンやポリアセチレン等の導電性高分子材料等を例示することができる。
【0025】
第一絶縁層113は、ゲート電極125とチャネル形成層114との間に配置され、ゲート電極125とチャネル形成層114とを絶縁する基板110全体に層状に拡がる部材である。第一絶縁層113は、電気絶縁性を有する材料から構成されるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、シリコン酸化膜、窒化シリコン膜、シリコン酸窒化膜、酸化アルミニウム膜、酸化タンタル膜又は酸化ハフニウム膜等の単層膜、あるいは、これらの膜を複数積層した積層膜を例示することができる。
【0026】
チャネル形成層114は、アモルファス酸化物半導体からなる部分であり、ゲート電極125の上方において、第一絶縁層113上に所定形状で形成される。本実施の形態において、チャネル形成層114の材料には、透明アモルファス酸化物半導体(TAOS)が用いられており、チャネル形成層114を構成する金属元素は、インジウム(In)、タングステン(W)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)などである。
【0027】
第二絶縁層115は、チャネル形成層114を覆うように第一絶縁層113上に配置され、基板110全体に層状に拡がる層間絶縁層である。
【0028】
第二絶縁層115は、電気絶縁性を有する材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜又は酸化アルミニウム膜等の単層膜、あるいは、これらの積層膜などを例示することができる。
【0029】
また、第二絶縁層115には、当該第二絶縁層115の一部を貫通するように第一コンタクトホール118が形成されている。この第二絶縁層115の第一コンタクトホール118を介して、チャネル形成層114とソース電極126及びドレイン電極127とが接続されている。
【0030】
ソース電極126及びドレイン電極127は、第二絶縁層115の上方に形成される電極である。具体的には、ソース電極126及びドレイン電極127は、第二絶縁層115上において基板110に平行な方向(基板水平方向)に離間して互いに対向して配置されており、かつ、第二絶縁層115に形成された第一コンタクトホール118を介してチャネル形成層114に接続されている。
【0031】
ソース電極126及びドレイン電極127は、導電性材料であれば特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、銀、銅、チタン又はクロム等が用いられる。また、ソース電極126及びドレイン電極127は、単層構造ばかりでなく、多層構造の電極でもよい。
【0032】
スキャン線122は、選択トランジスタ121のゲート電極125と接続される配線であり、画像を表示するための走査信号が伝送される配線である。スキャン線122に走査信号が与えられることによって、選択トランジスタ121のソース電極126とドレイン電極127が導通する、つまり、選択トランジスタ121がオンの状態となる。スキャン線122は、選択トランジスタ121のゲート電極125と接続されている。スキャン線122は、データ線124と交差するように複数本並んで配線されている。
【0033】
データ線124は、一列に並ぶ複数の選択トランジスタ121のソース電極126それぞれに接続される配線であり、画像信号が伝送される配線である。データ線124は、スキャン線122と交差するように複数本並び、TFTアレイ101の一端から他端に延びて配線されている。なお、本開示のオープンショート検査は、データ線124が他の配線(例えば隣り合う副画素に用いられる配線)などと短絡しているか、または、断線しているかを検査する。
【0034】
[TFTアレイの製造工程]
次に、TFTアレイ101の製造工程について、図を用いて説明する。
【0035】
まず、第一パターン形成工程を説明する。第一パターン形成工程とは、選択トランジスタ121、および、その他のトランジスタのゲート電極125、および、ゲート電極に接続されるスキャン線122、第一共通配線141、容量素子105を構成する第一電極151、その他の配線などを形成する工程である。本実施の形態の場合、第一パターン形成工程において、基板110の周縁部にスキャン線122に沿い、データ線124に交差する方向に設けられる第二共通配線142も形成される。
【0036】
図3は、第一パターン形成工程により得られる第一パターンを示す平面図である。
【0037】
図4は、基板周縁部の第一パターンを示す平面図である。
【0038】
図5〜
図7は、第一パターン形成工程に含まれる一工程を示す断面図である。
【0039】
まず、
図5に示すように、基板110の上面の全体にスパッタ法などを用いて導電膜111を成膜する。導電膜は銅とモリブデンの複層構造などでもよい。
【0040】
次に、
図6に示すように、フォトリソグラフィなどを用いて、導電膜111の表面にフォトレジスト112のパターンを形成する。フォトレジスト112のパターンは、次工程のエッチングにおいて残存させたい第一パターンと同じである。
【0041】
次に、導電膜111のフォトレジスト112が形成されていない部分を、ウェットエッチング法などを用いてエッチングする。
【0042】
次に、
図7に示すように、フォトレジスト112を除去することにより、選択トランジスタ121のゲート電極125、および、ゲート電極125に接続されるスキャン線122、その他、第一共通配線141、容量素子105を構成する第一電極151を含む、
図3に示すような第一パターンが形成される。本実施の形態の場合、ゲート電極125とスキャン線122とは一体に形成されている。また、第二共通配線142も形成される。
【0043】
ここで、第一共通配線141とは、例えば容量素子105に基準電圧を与える基準電圧線である。
【0044】
第二共通配線142とは、例えば、静電気から画素を守るために画素領域外に配置され、同色の副画素同士を接続する配線である。
【0045】
次に、第一絶縁層形成工程を説明する。
【0046】
図8は、第一絶縁層形成工程により第一絶縁層が形成された状態を示す断面図である。
【0047】
第一絶縁層形成工程とは、導電性の材料で形成された第一パターンを覆うように層状に配置される第一絶縁層113(ゲート絶縁膜)を形成する工程である。第一絶縁層113を形成する方法は特に限定されるものではなく、例えばCVD法(化学気相蒸着法:chemical vapor deposition)などを挙示することができる。
【0048】
次に、チャネル形成工程を説明する。チャネル形成工程とはチャネル形成層114を形成する工程である。
【0049】
図9は、チャネル形成工程により得られるパターンを示す平面図である。
【0050】
図10、
図11は、チャネル形成工程に含まれる一工程を示す断面図である。
【0051】
まず、
図10に示すように、第一絶縁層形成工程により形成された第一絶縁層113の上方にチャネル形成層であるアモルファス酸化物半導体膜119を基板110全体に拡がるように成膜する。本実施の形態の場合、スパッタリング法などを用いてTAOSをアモルファス酸化物半導体膜119として成膜する。
【0052】
次に、ゲート電極125などのパターンを形成した場合と同様に、フォトリソグラフィなどを用いて、アモルファス酸化物半導体膜119の表面にフォトレジストのパターンを形成し、ウェットエッチング法などを用いて不要な部分をエッチングする。
【0053】
これにより、
図11に示すように、第一絶縁層113を挟んでゲート電極125と対向する位置にチャネル形成層114が形成される。
【0054】
次に、第二絶縁層形成工程を説明する。
【0055】
図12は、第二絶縁層形成工程により第二絶縁層が第一絶縁層の上に形成された状態を示す断面図である。
【0056】
第二絶縁層形成工程とは、第一絶縁層113の表面に島状に形成されたチャネル形成層114を覆うように層状に配置される第二絶縁層115(チャネル保護膜)を形成する工程である。第二絶縁層115を形成する方法は、第一絶縁層113を形成する方法と同様に、特に限定されるものではない。
【0057】
次に、第一コンタクトホール形成工程を説明する。
【0058】
図13は、第一コンタクトホール形成工程により得られる第一コンタクトホールのパターンを示す平面図である。
【0059】
図14は、第一コンタクトホール形成工程終了後の選択トランジスタを示す断面図である。
【0060】
第一コンタクトホール118は、異なる層に設けられたパターン同士やパターンとチャネルなどを接続するために、絶縁層を厚さ方向に貫通する孔である。例えば、第二絶縁層115を厚さ方向に貫通しチャネル形成層114に達する第一コンタクトホール118や、第二絶縁層115、および、第一絶縁層113を厚さ方向に貫通し、第一パターンに達する貫通孔を例示することができる。
【0061】
第一コンタクトホール118を形成するには、ゲート電極125などの第一パターンを形成した場合と同様に、フォトリソグラフィなどを用いて、第二絶縁層115の表面にフォトレジストのパターンを形成し、ドライエッチング法などを用いて第一コンタクトホール118を形成する。
【0062】
これにより、
図14に示すように、第二絶縁層115を厚さ方向に貫通しチャネル形成層114にまで達する第一コンタクトホール118が形成される。
【0063】
次に、第二パターン形成工程を説明する。
【0064】
図15は、第二パターン形成工程により得られる配線のパターンを示す平面図である。
【0065】
図16は、基板周縁部の第二パターンを示す平面図である。
【0066】
図17は、第二パターン形成工程終了後の選択トランジスタを示す断面図である。
【0067】
第二パターン形成工程とは第二絶縁層115上に選択トランジスタ121のソース電極126と、ドレイン電極127と、データ線124と、第一パターンに含まれる第一共通配線141との接続を分かつ第一未接続部161等を形成する工程である。なお、第二パターンは、他のトランジスタのソース電極やドレイン電極も備えており、
図17(
図2も含む)には、他のトランジスタ(本実施の形態の場合、参照トランジスタ)のドレイン電極127も示されている。
【0068】
本実施の形態の場合、第二パターン形成工程において、選択トランジスタ121のドレイン電極127と容量素子105との間に、第一未接続部161とは連続しない第二未接続部162も形成される。さらに、第二パターン形成工程において、基板110の周縁部、例えば画像表示領域の外側に設けられた第二共通配線142とデータ線124とを分かつ第三未接続部163も形成される。
【0069】
ここで、「データ線124と第一共通配線141との接続を分かつ」とは、第二パターンによっては、データ線124と第一共通配線141とが電気的に接続されないことを意味する。またこの場合、チャネルの状態にかかわらずトランジスタのソース電極とドレイン電極との間は電気的に接続されているものとしている。また、「データ線124と第二共通配線142とを分かつ第三未接続部163」も同様である。
【0070】
また、第一未接続部161とは、第二パターンにおいては電気的に接続されていないが、第三パターンによって電気的な接続が確保される部分である。これは、第二未接続部162、および、第三未接続部163も同様である。
【0071】
本実施の形態の場合、第一未接続部161は、選択トランジスタ121のドレイン電極127の近傍、つまり、選択トランジスタ121のドレイン電極127と他のトランジスタのドレイン電極127との間に配置されている。なお、第一未接続部161は、データ線124と選択トランジスタ121のソース電極126との間に設けられてもよい。このように、第一未接続部161をできる限りデータ線124の近くに配置することで、データ線124のインピーダンスを安定させることができ、オープンショート検査をより精度よく実施することが可能となる。
【0072】
また、第一未接続部161、第二未接続部162、および、第三未接続部163は、第一パターンが形成されている部分とされていない部分との境界、つまり、第一パターンにより形成された段差をまたいだ位置に配置されている。特に、第二未接続部162、および、第三未接続部163は、複数の段差を跨いだ位置に配置されている。
【0073】
次に、第二パターンの具体的な形成工程を説明する。
【0074】
第一パターンを形成する場合と同様に、第二絶縁層115の表面の全体にスパッタ法などを用いて導電膜を成膜する。これにより第一コンタクトホール118の内周面にも導電膜が成膜され、チャネル形成層114の一部や第一パターンの一部と導電膜とが接触した状態となる。次に、フォトリソグラフィなどを用いて、導電膜の表面にフォトレジストのパターンを形成する。次に、導電膜の不要な部分を、ウェットエッチング法などを用いてエッチングする。ここで、第一未接続部161、第二未接続部162、および、第三未接続部163については、フォトレジストのパターンは設けられておらず、当該部分についてはエッチングにより導電膜が除去される。
【0075】
これにより、
図15、
図16にハッチングで示すような未接続部を含む第二パターンが形成される。
【0076】
以上の工程を経ることにより形成されるデータ線124は、第一未接続部161、および、第三未接続部163により、第一共通配線141、および、第二共通配線142との接続が分かたれた状態となる。つまり、一本のデータ線124は、他との電気的な接続がない、いわゆる浮いた状態となる。
【0077】
[オープンショート検査]
次に、データ線124のオープンショート検査を説明する。
【0078】
図18は、データ線のオープンショート検査の状態を示す斜視図である。
【0079】
同図に示すように、第二パターン形成工程を経て基板110に複数本のデータ線124がそれぞれ浮いた状態で形成され、選択トランジスタ121やその他のトランジスタ、第一パターンなどが形成されたTFTアレイ101を、基板110を下にしてステージ200上に載置する。
【0080】
ここで、選択トランジスタ121のチャネル形成層114の閾値電圧が負であり、ソース電極126とドレイン電極127との間が電気的に導通する状態であったとしても、データ線124は浮いた状態であるため、オープンショート検査を有効に行うことができる。
【0081】
次に、データ線124のオープンショート検査を実施する。オープンショート検査の方法は特に制限されるものではなく、オープンのみの検査やショートのみの検査もオープンショート検査に含まれる。本実施の形態の場合、オープンショート検査を実施するための検査装置は、所定周波数の交流電圧を接触により印加することのできる給電端子133と、配線の電位の変化を非接触で(容量結合で)測定することができる受電センサ134と備えている。
【0082】
当該検査装置を用いたオープンショート検査は、次の通りである。データ線124の一端部に給電端子133を接触させ、データ線124の他端部の近傍(容量結合できる程度の距離)に受電センサ134を配置する。給電端子133を介してデータ線124の一端に所定周波数の交流電圧を印加する。データ線124が断線、または、短絡していない良好な場合は、印加した交流電圧に対応する電圧の変化を受電センサ134に基づき取得することができる。一方、断線、または、短絡している場合には受電センサ134が取得する電圧の変化状態は、良好な場合とは異なる電圧の変化状態となる。以上のように電圧の変化状態を観察することによりデータ線124のオープンショート検査をすることができる。
【0083】
以上のオープンショート検査を各データ線124に対して実施する。例えば、ステージ200とこれに載置されたTFTアレイ101を固定しておき、ステージ200に対して相対的に給電端子133と受電センサ134を移動させることで、縞状に並んだデータ線124に対して順にオープンショート検査を行えばよい。
【0084】
なお、給電端子133がデータ線124と接触するか非接触かは特に限定されず、また、受電センサ134がデータ線124と接触するか非接触かも特に限定されない。また、これらの組み合わせも任意である。
【0085】
以上のように、チャネル形成層114に閾値電圧が負となるようなアモルファス酸化物半導体を用いた場合であっても、個々のデータ線124を他から電気的に切り離した状態でオープンショート検査を行うことができる。従って、断線や短絡のないデータ線124を備えたTFTアレイ101を用いて有機EL表示パネル100を製造することができ、有機EL表示パネル100の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0086】
以上のオープンショート検査により、不具合が発見されたTFTアレイ101は、可能な物はリペアされる。
【0087】
不具合が発見されなかったTFTアレイ101やリペアされたTFTアレイ101に対して、次の、第三絶縁層形成工程が実施される。
【0088】
次に、第三絶縁層形成工程を説明する。
【0089】
図19は、第三絶縁層形成工程により第三絶縁層が第二絶縁層の上に形成された状態を示す断面図である。なお、同図は、第一パターンにより形成される段差部分を強調して示している。
【0090】
第三絶縁層形成工程とは、第二絶縁層115の表面に形成された第二パターンを覆うように層状に配置される第三絶縁層117を形成する工程である。第三絶縁層117を形成する方法は、第一絶縁層113を形成する方法と同様に、特に限定されるものではない。
【0091】
次に、第二コンタクトホール形成工程を説明する。
【0092】
図20は、第二コンタクトホール形成工程終了後の選択トランジスタの一部を示す断面図である。
【0093】
第二コンタクトホール128は、第二パターンに設けられた第一未接続部161の両端縁外方近傍にあたる導電体の部分、例えば、ドレイン電極127などとの電気的な接続を確保するために第三絶縁層117の厚さ方向に設けられる貫通孔である。本実施の形態の場合、第二未接続部162の両端縁外方近傍にあたる導電体の部分、および、第三未接続部163の両端縁外方近傍にあたる導電体の部分にも第二コンタクトホール128が設けられている。
【0094】
第二コンタクトホール128の形成方法は、第一コンタクトホール118と同様に、フォトリソグラフィなどを用いて、第三絶縁層117の表面にフォトレジストのパターンを形成し、ドライエッチング法などを用いて第二コンタクトホール128を形成する。
【0095】
次に、第三パターン形成工程を説明する。
【0096】
図21は、第三パターン形成工程により得られる配線のパターンを示す平面図である。
【0097】
図22は、基板周縁部の第三パターンを示す平面図である。
【0098】
図23は、第三パターン形成工程終了後の選択トランジスタの一部を示す断面図である。
【0099】
第三パターン形成工程とは第三絶縁層117上に第一ブリッジ線171等を形成する工程である。本実施の形態の場合、第三パターン形成工程において、第二ブリッジ線172、第三ブリッジ線173も形成される。
【0100】
ここで、第一ブリッジ線171とは、第二パターンとは異なる層において、第一未接続部161にまたがり、第一未接続部161の両端縁外方近傍にあたる導電体の部分と電気的に接続されることで、データ線124と第一共通配線141とを電気的に接続する導電体の配線パターンである。
【0101】
また、第三ブリッジ線173とは、第二パターンとは異なる層において、第三未接続部163にまたがり、第三未接続部163の両端縁外方近傍にあたる導電体の部分と電気的に接続されることで、データ線124と第二共通配線142とを電気的に接続する導電体の配線パターンである。
【0102】
また、第二ブリッジ線172とは、第二パターンとは異なる層において、第二未接続部162にまたがり、第二未接続部162の両端縁外方近傍にあたる導電体の部分と電気的に接続されることで、選択トランジスタ121のドレイン電極127と容量素子105とを電気的に接続する導電体の配線パターンである。
【0103】
また、第一未接続部161とは、第二パターンにおいては電気的に接続されていないが、第三パターンによって電気的な接続が確保される部分である。これは、第二未接続部162、および、第三未接続部163も同様である。
【0104】
本実施の形態の場合、第一未接続部161、第二未接続部162、および、第三未接続部163は、第一パターンが形成されている部分とされていない部分との境界、つまり、第一パターンにより形成された段差をまたいだ位置に配置されている。従って、第一ブリッジ線171、第二ブリッジ線172、および、第三ブリッジ線173も段差をまたいだ位置に配置される。
【0105】
以上によれば、第一絶縁層113、第二絶縁層115、および、第三絶縁層117により段差が緩和され、第一パターンが存在する部分から存在しない部分に至る傾斜が緩やかになるため、第二パターンにより傾斜が比較的きつい位置で電気的に接続するよりも、第一ブリッジ線171、第二ブリッジ線172、および、第三ブリッジ線173を用いて電気的に接続する場合の方が断線の可能性を抑制し、製造される有機EL表示パネル100の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0106】
第三パターンを形成する方法は、第一パターンを形成する場合と同様に、第三絶縁層117の表面の全体にスパッタ法などを用いて導電膜を成膜する。これにより第二コンタクトホール128の内周面にも導電膜が成膜され、未接続部の両端縁外方近傍にあたる導電体の部分と導電膜とが接触した状態となる。次に、フォトリソグラフィなどを用いて、導電膜の表面にフォトレジストのパターンを形成する。次に、導電膜の不要な部分を、ウェットエッチング法などを用いてエッチングする。
【0107】
これにより、
図21、
図22に斜め格子のハッチングで示すような第三パターンが形成される。
【0108】
以上のように、オープンショート検査によりデータ線124に不具合が発見されなかったTFTアレイ101やリペアされたTFTアレイ101に対して、第三絶縁膜を形成し、第一ブリッジ線171などを備えた第三パターンを形成し、さらに、その他成膜工程などを実施することにより有機EL表示パネル100が製造される。
【0109】
以上のような製造方法によれば、チャネル形成層114に閾値電圧が負となるようなアモルファス酸化物半導体を用いた場合であっても、電気的に切り離された状態のデータ線124に対してオープンショート検査を行うことができる。従って、断線や短絡のないデータ線124を備えたTFTアレイ101を用いて有機EL表示パネル100を製造することができ、有機EL表示パネル100の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0110】
さらに、第一パターンにより形成される段差部分に第二パターンの未接続部を配置し、段差部分の高低差が三層以上の絶縁層によって緩和された部分に第一ブリッジ線171などを備える第三パターンを形成することで、パターンを形成する面の高低差に基づく断線などを回避することができ、有機EL表示パネル100の歩留まりをさらに向上させることが可能となる。
【0111】
なお、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本開示の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本開示の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本開示に含まれる。
【0112】
例えば、本実施の形態では、第二未接続部162を第二パターンに設けた場合を示したが、第二未接続部162は省略されるものでもかまわない。