【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「電波状況ビッグデータを利用する局所的ホワイトスペース有効利用促進技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
菅野 一生 Issei Kanno,異種センサーによる局所的ホワイトスペース推定のフレームワーク,電子情報通信学会2014年総合大会講演論文集 通信1 PROCEEDINGS OF THE 2014 IEICE GENERAL CONFERENCE,2014年 3月18日,B−17−27
【文献】
堀端 研志 Kenshi Horihata,異種センサーによる局所的ホワイトスペース推定に関する要素技術の一検討,電子情報通信学会2014年総合大会講演論文集 通信1 PROCEEDINGS OF THE 2014 IEICE GENERAL CONFERENCE,2014年 3月18日,B−17−28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明によるホワイトスペース検出装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0018】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1によるホワイトスペース検出装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態によるホワイトスペース検出装置は、波源の送信電力を推定し、その推定した送信電力を用いて波源からの電波の減衰特性を推定することによって、ホワイトスペースの領域を検出するものである。
【0019】
図1は、本実施の形態によるホワイトスペース検出装置4を含む情報通信システムの構成を示す図である。
図1において、本実施の形態による情報通信システムは、複数の第1の受信装置1と、複数の第2の受信装置2と、波源3と、ホワイトスペース検出装置4とを備える。複数の第1の受信装置1、及び複数の第2の受信装置2と、ホワイトスペース検出装置4とは、有線または無線の通信回線100を介して接続されている。通信回線100は、例えば、インターネットやイントラネット、公衆電話回線網等であってもよい。
【0020】
第1の受信装置1は、波源3からの電波を受信する。第1の受信装置1は、通常、その電波の受信に応じて、波源3からの受信信号を取得するが、そうでなくてもよい。その受信信号は、例えば、ベースバンド信号のIQデータや複素振幅値等であってもよい。受信信号を取得しない場合には、第1の受信装置1は、波源3からの電波の受信電力を取得してもよい。なお、第1の受信装置1は、波源3からの電波を見通しで受信できることが好適であるが、そうでなくてもよい。後述するように、第1の受信装置1からホワイトスペース検出装置4に第1の受信装置1の位置も送信される場合には、第1の受信装置1は、その位置を取得する処理を行ってもよい。第1の受信装置1が移動可能な場合には、第1の受信装置1の位置がホワイトスペース検出装置4に送信されることが好適である。なお、第1の受信装置1の個数は問わないが、例えば、後述するように、TDoAによる位置検出が行われる場合には3個以上であることが好適であり、DoAによる位置検出が行われる場合には2個以上であることが好適である。また、DoAによる位置検出が行われる場合には、第1の受信装置1は、電波の受信の指向性を変更できるものであることが好適である。指向性の変更は、例えば、指向性アンテナを回転させることなどのように物理的になされてもよく、またはフェーズドアレイアンテナにおいて指向性を変更することなどのように電子的になされてもよい。なお、
図1では、第1の受信装置1の受信アンテナがパラボラアンテナである場合について示しているが、そうでなくてもよいことは言うまでもない。
【0021】
第2の受信装置2は、波源3からの電波を受信する。第2の受信装置2は、通常、その受信に応じて、波源3からの電波の受信電力を取得する。なお、第2の受信装置2は、受信電力を取得するだけでなく、波源3からの電波に応じた受信信号の取得をも行ってもよく、またはそうでなくてもよい。また、第2の受信装置2は、波源3からの電波を必ずしも見通しで受信できなくてもよい。すなわち、第2の受信装置2は、波源3からの電波を見通し外で受信してもよい。後述するように、第2の受信装置2からホワイトスペース検出装置4に第2の受信装置2の位置も送信される場合には、第2の受信装置2は、その位置を取得する処理を行ってもよい。第2の受信装置2が移動可能な場合には、第2の受信装置2の位置がホワイトスペース検出装置4に送信されることが好適である。
【0022】
なお、第2の受信装置2の数は、第1の受信装置1の数よりも多くてもよいが、そうでなくてもよい。その受信装置の個数は、例えば、単位面積あたりの個数であってもよい。第1の受信装置1は、例えば、波源3からの電波を見通しで受信可能なものであり、本実施の形態による情報通信システムのために設けられたものであってもよい。そのような場合には、通常、多数の第1の受信装置1を配置することは困難である。一方、第2の受信装置2は、波源3からの電波を見通し外で受信してもよく、例えば、携帯電話等の受信装置であってもよい。そのように、第2の受信装置2は、通常、第1の受信装置1よりも簡易なものである。したがって、第2の受信装置2の数が、第1の受信装置1の数より多くなっても、本実施の形態による情報通信システムの大幅なコスト増には繋がらない。
【0023】
第1の受信装置1や第2の受信装置2における位置の取得は、例えば、GPS(Global Positioning System)を用いて行われてもよく、ジャイロなどの自律航法装置を用いて行われてもよく、携帯電話や無線LAN等の最寄りの基地局を利用して行われてもよく、または、その他の方法で行われてもよい。
【0024】
波源3は、電波を送信するものであればどのようなものであってもよく、例えば、携帯電話等の無線基地局であってもよく、タクシー等の無線システムの基地局であってもよく、その他の電波を送信するものであってもよい。なお、その波源3からの電波の到達範囲は、例えば、
図1において破線の楕円で示される範囲であってもよい。その場合には、破線の楕円の外側が、波源3の送信している電波の周波数について、空間的なホワイトスペースとなる。また、本実施の形態では、説明を簡単にするため、1個の波源3が存在する場合についてのみ説明するが、2以上の波源3が存在してもよい。その場合には、その波源3ごとに、
図1の破線の楕円で示されるような電波の到達範囲が存在することになり、その到達範囲外がホワイトスペースとなる。また、
図1では、波源3からの電波の到達範囲内のみに第1の受信装置1や第2の受信装置2が存在する場合について示しているが、通常、波源3の位置は事前に分からないため、第1の受信装置1や第2の受信装置2は、電波の到達範囲外にも存在することになる。
【0025】
図2は、本実施の形態によるホワイトスペース検出装置4の構成を示すブロック図である。
図2において、本実施の形態によるホワイトスペース検出装置4は、受信部41と、位置取得部42と、送信電力推定部43と、減衰特性推定部44と、ホワイトスペース検出部45と、出力部46とを備える。なお、ホワイトスペース検出装置4は、それら以外の構成要素を有していてもよい。例えば、第1の受信装置1や第2の受信装置2に情報を送信する場合には、ホワイトスペース検出装置4は、情報を送信する送信部を備えていてもよい。
【0026】
受信部41は、第1の受信装置1から第1の観測データを受信する。その第1の観測データは、第1の受信装置1によって観測された波源からの電波の受信電力を含むものである。受信部41は、複数の第1の観測データを複数の第1の受信装置1からそれぞれ受信してもよく、または、1個の第1の観測データを、いずれかの第1の受信装置1から受信してもよい。なお、第1の観測データに受信電力が含まれるとは、結果として、その受信電力を取得可能な情報(例えば、受信信号等)が第1の観測データに含まれている状況を含むものとする。例えば、受信信号がIQ信号データである場合には、そのIQシンボルの原点からの距離である振幅を用いることによって、その受信信号に応じた受信電力を知ることができる。したがって、第1の観測データに受信信号が含まれている場合には、第1の観測データに受信電力も含まれていると考えてもよい。また、後述するように、位置取得部42が位置の算出をも行う場合には、通常、受信部41は、複数の第1の観測データを受信する。
【0027】
また、ホワイトスペース検出装置4においてTDoAによる位置検出が行われる場合には、第1の観測データには、第1の受信装置1が波源3から受信した受信信号と、その受信信号の受信時点とが含まれていてもよい。その受信信号等は、後述するように、波源3の位置の算出のために用いられるものである。したがって、第1の観測データに、波源3の位置の算出のための受信信号等が含まれている場合には、その第1の観測データは、3以上の第1の受信装置1からそれぞれ送信されることが好適である。TDoAによる位置検出を適切に行うことができるようにするためである。また、受信信号の受信時点とは、受信信号の受信時刻であってもよく、または、ある時点を基準として示される受信信号の受信時点であってもよい。後者の場合には、受信時点は、例えば、ある時点を基準とする受信信号の受信時までのタイマのカウント値であってもよい。なお、TDoAによる位置検出を適切に行うことができるようにするため、受信時点を示す情報、例えば、時刻やタイマのカウント値等は、第1の観測データを送信する複数の第1の受信装置1の間で同期されていることが好適である。
【0028】
また、ホワイトスペース検出装置4においてDoAによる位置検出が行われる場合には、受信部41は、第1の受信装置1が波源3からの電波を用いて取得した波源3の方向をも、複数の第1の受信装置1からそれぞれ受信してもよい。受信部41は、例えば、2以上の第1の受信装置1から、その方向を受信してもよい。なお、その方向は、例えば、第1の受信装置1からの波源3の方向を示すものであってもよい。その方向は、例えば、第1の受信装置1を中心とする方位角(例えば、北を0度とし、東を90度とする方位角等)によって示されてもよい。また、その波源3の方向は、例えば、第1の受信装置1において、指向性を変更することによって取得されてもよい。具体的には、電波の強度の最も強い方向が波源の方向であると判断されてもよい。
【0029】
また、受信部41は、第1の受信装置1から、その第1の受信装置1の位置を取得可能な情報をも受信してもよい。その位置を取得可能な情報は、例えば、位置そのものであってもよく、または、その第1の受信装置1の識別子である第1の識別子であってもよい。その位置を取得可能な情報は、例えば、第1の観測データに含まれていてもよく、または、そうでなくてもよい。位置を取得可能な情報が第1の識別子である場合には、ホワイトスペース検出装置4の図示しない記録媒体において、第1の識別子と、その第1の識別子で識別される第1の受信装置1の位置とが対応付けられていてもよい。そして、その第1の識別子に対応する位置が、ホワイトスペース検出装置4において取得されてもよい。
【0030】
また、受信部41は、複数の第2の受信装置2から複数の第2の観測データをそれぞれ受信する。その第2の観測データは、第2の受信装置2によって観測された波源3からの電波の受信電力を含むものである。また、受信部41は、第2の受信装置2から、第2の受信装置2の位置を取得可能な情報をも受信してもよい。その位置を取得可能な情報は、例えば、位置そのものであってもよく、または、その第2の受信装置2の識別子である第2の識別子であってもよい。その位置を取得可能な情報は、例えば、第2の観測データに含まれていてもよく、または、そうでなくてもよい。受信部41は、その位置を取得可能な情報を、複数の第2の受信装置2からそれぞれ受信してもよい。位置を取得可能な情報が第2の識別子である場合には、ホワイトスペース検出装置4の図示しない記録媒体において、第2の識別子と、その第2の識別子で識別される第2の受信装置2の位置とが対応付けられていてもよい。そして、その第2の識別子に対応する位置が、ホワイトスペース検出装置4において取得されてもよい。
【0031】
また、第1の観測データには、その第1の観測データに含まれる受信電力等に応じた電波の周波数(センシング周波数)も含まれていてもよく、または、そうでなくてもよい。第2の観測データについても同様である。なお、1以上の第1の観測データに含まれる受信電力や、複数の第2の観測データに含まれる受信電力は、同一の周波数の受信電力であることが好適である。その周波数は、通常、波源3からの電波の周波数である。また、第1及び第2の観測データには、上述した以外の情報が含まれていてもよい。例えば、後述するように、第1の観測データには、第1の受信装置1で生成された遅延プロファイル、第1の受信装置1の受信アンテナの利得や高さ等が含まれてもよい。また、ホワイトスペース検出装置4において受信アンテナの利得や高さなどを取得できるようにするため、第1の受信装置1から第1の識別子が送信され、受信部41によって受信されてもよい。
【0032】
なお、受信部41は、第1の観測データや第2の観測データ等を、第1の受信装置1や第2の受信装置2から直接受信してもよく、または、他のサーバ等を経由して受信してもよい。後者の場合には、例えば、複数の第1の受信装置1からの第1の観測データや、複数の第2の受信装置2からの第2の観測データ等が基地局等において集められ、その基地局等から、集められた第1の観測データ等がホワイトスペース検出装置4に送信されてもよい。受信部41は、受信を行うための有線または無線の受信デバイス(例えば、モデムやネットワークカードなど)を含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、受信部41は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは受信デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0033】
位置取得部42は、複数の第1の受信装置1が受信した波源3からの電波を用いて特定された波源3の位置を取得する。なお、波源3の位置を取得するとは、波源3の位置を算出することであってもよく、または、波源3の位置を示す情報を受け取ることであってもよい。後者の場合には、例えば、位置取得部42は、例えば、送信された波源3の位置を示す情報を受信してもよく、記録媒体から波源3の位置を示す情報を読み出してもよく、または、入力デバイス等を介して波源3の位置を示す情報を受け付けてもよい。本実施の形態では、位置取得部42が波源3の位置を算出する場合について主に説明する。ここで、位置取得部42が波源3の位置を算出する方法として、TDoA(Time Difference of Arrival)による算出方法と、DoA(Direction of Arrival)による算出方法とについて説明するが、位置取得部42は、それ以外の方法によって波源3の位置を算出してもよい。なお、その位置は、例えば、緯度と経度であってもよく、または、ある位置を基点とした座標値であってもよい。他の位置についても同様である。
【0034】
[TDoAによる算出方法]
この場合には、受信部41は、3以上の第1の受信装置1からそれぞれ、第1の受信装置1が波源3から受信した受信信号と、その受信信号の受信時点とを含む第1の観測データを受信しているものとする。そして、位置取得部42は、その複数の第1の受信装置1に対応する受信信号及び受信信号の受信時点と、複数の第1の受信装置1の各位置とを用いて、波源3の位置を算出する。その第1の受信装置1の位置は、例えば、第1の受信装置1から送信された位置を取得可能な情報を用いて取得された位置である。位置取得部42は、具体的には、3以上の第1の受信装置1で受信された受信信号の相互相関を用いて、波源3から送信された同じ電波が第1の受信装置1にそれぞれ到達した時間差を算出する。位置取得部42は、その時間差を、受信時点を用いて算出できる。また、位置取得部42は、その時間差に電波の速度(光速)を掛けることによって、波源3から複数の第1の受信装置1までの伝搬距離差を算出する。なお、ある位置からの距離の差が一定である曲線は、双曲線となる。したがって、波源3から第1の受信装置1aまでの距離と、波源3から第1の受信装置1bまでの距離の差がL
abである場合には、その波源3は、第1の受信装置1aの位置と、第1の受信装置1bの位置とを2個の焦点とする双曲線上に位置することになる。なお、その双曲線上の点から2個の焦点までの各距離の差がL
abである。3個の第1の受信装置1から送信された観測データを用いる場合には、位置取得部42は、同様にして、他の2組の第1の受信装置1の組み合わせについても双曲線を特定することができ、その3個の双曲線の交点を算出することによって、波源3の位置を算出してもよい。
なお、このTDoAによる位置の算出方法の詳細については、例えば、次の文献を参照されたい。
文献:K. Ho,Y. Chan,「Solution and performance analysis of geolocation by tdoa」,IEEE Transactions on Aerospace and Electronic Systems,vol. 29,no. 4,p. 1311-1322,1993年10月
【0035】
[DoAによる算出方法]
この場合には、受信部41は、2以上の第1の受信装置1からそれぞれ、第1の受信装置1で取得された波源3の方向を受信しているものとする。そして、位置取得部42は、その複数の第1の受信装置1で取得された波源3の方向と、複数の第1の受信装置1の各位置とを用いて、波源3の位置を算出する。位置取得部42は、第1の受信装置1の位置をTDoAによる算出方法の場合と同様にして取得することができる。なお、ある第1の受信装置1の位置と、そこからの波源3の方向とが分かっている場合には、波源3は、その位置を通り、その方向に延びる直線上に存在することになる。したがって、位置取得部42は、2個の第1の受信装置1の位置と、各第1の受信装置1からの波源3の方向とを知ることによって、2個の直線を特定することができ、その直線の交点である波源3の位置を算出することができる。なお、この場合には、2個の第1の受信装置1と波源3とが同一直線上に存在しないことが好適である。
なお、このDoAによる位置の算出方法の詳細については、例えば、次の文献を参照されたい。
文献:S. U. Pillai,「Array Signal Processing」,Springer-Verlag,1989年
【0036】
また、位置取得部42は、算出した波源3の位置を図示しない記録媒体で記憶してもよい。また、位置取得部42が波源3の位置を算出しない場合には、例えば、ホワイトスペース検出装置4以外の装置によって、上述のようにTDoAやDoAによって波源3の位置が算出されてもよい。
【0037】
送信電力推定部43は、第1の観測データに含まれる受信電力と、位置取得部42が取得した波源3の位置を用いて算出された波源3と第1の受信装置1との距離とを用いて、波源3の送信電力を推定する。その第1の観測データに含まれる受信電力は、例えば、第1の観測データに含まれる受信信号を用いて算出されるものであってもよい。また、送信電力推定部43は、例えば、受信部41が受信した第1の受信装置1の位置を用いて、または第1の観測データに含まれる第1の識別子に対応付けられている位置を用いて、その第1の観測データを送信した第1の受信装置1の位置を取得できる。したがって、送信電力推定部43は、その第1の受信装置1の位置と、位置取得部42が取得した波源3の位置とを用いることによって、第1の受信装置1と波源3との距離を算出できる。
【0038】
次に、波源3の送信電力を推定する方法について説明する。まず、送信電力と、受信電力との関係は、次式のようになる。なお、x
iは、波源3からi番目の第1の受信装置1までの伝搬距離(km)であり、fは、第1の受信装置1で受信した電波の周波数(MHz)であり、P
rx,iは、i番目の第1の受信装置1における受信電力(dBm)であり、P
txは、波源3の送信電力(dBm)であり、G
1rxant,iは、i番目の第1の受信装置1の受信アンテナの利得であり、F(x
i,f)は、伝搬距離がx
iであり、周波数がfである電波の伝搬損失(パスロス)の特性を示す関数(以下、「伝搬損失関数」と呼ぶ)である。
P
rx,i=P
tx+G
1rxant,i−F(x
i,f) (1)
【0039】
また、ここでは伝搬損失関数F(x
i,f)が、例えば、次式のように示される場合について説明するが、そうでなくてもよい。ただし、aは、距離減衰係数であり、bは、周波数特性係数であり、cは、その他の係数である。それらの係数は、後述するように、採用するモデルに応じて決められていたり、計算されたりするものである。
F(x
i,f)=a×Log(x
i)+b×Log(f)+c
上記(1)式から、i番目の第1の受信装置1における受信電力を用いて算出された波源3の送信電力P
tx,iは、次のようになる。
P
tx,i=P
rx,i−G
1rxant,i+F(x
i,f) (2)
【0040】
したがって、送信電力推定部43は、上記(2)式を用いることによって、送信電力を算出することができる。なお、受信電力P
rx,iは、i番目の第1の受信装置1からの第1の観測データに含まれている。また、G
1rxant,iは、i番目の第1の受信装置1からの第1の観測データに含まれていてもよく、または、第1の受信装置1から送信された第1の識別子を用いて取得されてもよい。後者の場合には、ホワイトスペース検出装置4において、第1の識別子と、その第1の識別子で識別される第1の受信装置1の受信アンテナの利得G
1rxant,iとが対応付けられて図示しない記録媒体で記憶されていてもよい。また、伝搬距離x
iは、上述のように、i番目の第1の受信装置1の位置と、位置取得部42が取得した波源3の位置とを用いることによって算出できる。また、周波数fは、例えば、第1の観測データに含まれていてもよく、ホワイトスペース検出装置4において記憶されていてもよい。また、伝搬損失関数Fは、後述するように、採用するモデルに応じて決まることになる。なお、上記(2)式で算出される送信電力は、厳密には、波源3の送信アンテナの利得の影響を含む空中線電力である。また、第1の受信装置1の受信電力があらかじめ決められた閾値より小さい場合には、その受信電力を送信電力の推定で用いなくてもよく、またはそうでなくてもよい。
【0041】
ここで、自由空間モデル、大地反射の2波モデル、奥村−秦モデルのそれぞれの場合の係数a,b,cについて説明する。
[自由空間モデル]
自由空間モデルの場合には、係数a,b,cを次のようにしてもよい。
a=b=20
c=32.44
【0042】
[大地反射の2波モデル]
大地反射の2波モデルの場合には、係数a,b,cを次のようにしてもよい。
(1)1000×x
i<2
1/2×kh
bh
mの場合
a=b=20
c=20.4
(2)1000×x
i>2
1/2×kh
bh
mの場合
a=40
b=0
c=120−20×Log(h
bh
m)
ただし、h
bは、送信アンテナ高(m)であり、h
mは、受信アンテナ高(m)である。また、kは、波数(=2π/λ=2πf/c)である。なお、λは、波源3から送信される電波の波長であり、cは、その伝播の速度(光速)である。また、1000×x
i=2
1/2×kh
bh
mである場合には、上記(1)、(2)のどちらにしてもよい。
【0043】
この大地反射の2波モデルを使用する場合には、受信アンテナ高h
m、すなわち、第1の受信装置1のアンテナの高さを取得する必要がある。そのアンテナの高さは、例えば、第1の観測データに含まれていてもよく、または、ホワイトスペース検出装置4において、第1の識別子と、その第1の識別子で識別される第1の受信装置1のアンテナの高さとが対応付けられて図示しない記録媒体で記憶されていてもよい。また、送信アンテナ高h
b、すなわち、波源3のアンテナの高さは不明であるため、あらかじめ決められた値(例えば、50メートル等)を用いてもよい。
【0044】
[奥村−秦モデル]
奥村−秦モデルの場合、すなわち、市街地モデルの場合には、係数a,b,cを次のようにしてもよい。
a=44.9−6.55×Log(h
b)
b=26.16−1.1×h
m+1.56
c=69.55−13.82×Log(h
b)+0.7×h
m−0.8
ただし、h
bは、送信アンテナ高(m)であり、h
mは、受信アンテナ高(m)である。また、このモデルを使用できるのは、送信アンテナ高h
b等が、次の範囲である場合に限定される。なお、受信アンテナ高と、送信アンテナ高とは、逆であってもよい。すなわち、h
bが、受信アンテナ高(m)であり、h
mが、送信アンテナ高(m)であってもよい。
30<h
b<200
1<h
m<10
150<f<2200
1<x
i<20
【0045】
この奥村−秦モデルを使用する場合も、受信アンテナ高h
m、すなわち、第1の受信装置1のアンテナの高さを取得する必要がある。その取得方法は、大地反射の2波モデルの場合と同様である。また、送信アンテナ高h
b、すなわち、波源3のアンテナの高さは不明であるため、あらかじめ決められた値(例えば、50メートル等)を用いてもよい。
【0046】
ここで、送信電力推定部43が、上記3個のモデルのうち、いずれを用いて送信電力を推定するのかについて簡単に説明する。送信電力推定部43は、例えば、波源3から各第1の受信装置1までがすべて自由空間モデルであると設定して、上記自由空間モデルの係数a,b,cのみを用いてもよい。例えば、各第1の受信装置1が見通しとなるように配置されているような場合には、そのように波源3から第1の受信装置1までのすべてを自由空間モデルとすることもできる。一方、送信電力推定部43は、受信信号電力の時間変動量や遅延プロファイルを用いて、波源3から第1の受信装置1までが見通しであるかどうか判断し、見通しである場合には自由空間モデルまたは大地反射の2波モデルを用い、見通しでない場合には奥村−秦モデルを用いてもよい。遅延プロファイルを用いて見通しか見通し外かを判断する方法はすでに公知であり、詳細な説明を省略する。その判断で用いられる遅延プロファイルは、例えば、第1の観測データに含まれる受信信号(IQ信号データ)を用いて送信電力推定部43によって生成されてもよく、または、第1の観測データに遅延プロファイルそのものが含まれていてもよい。後者の場合には、例えば、第1の受信装置1は、遅延プロファイルを生成し、その遅延プロファイルを第1の観測データに含めて送信してもよい。なお、見通しでない場合であって、奥村−秦モデルを用いる条件である上記h
b等の範囲を満たさない場合には、例えば、別の伝搬モデルを用いるようにしてもよい。また、その遅延プロファイルを用いて見通しであると判断された場合に、自由空間モデルと、大地反射の2波モデルとのどちらを選択するのかについて簡単に説明する。第1の受信装置1の受信アンテナ高が十分高く、周波数が高い場合には、第一フレネルゾーンが大地で遮蔽され始めるブレークポイントまでの距離が大きいため、自由空間モデルを用いても問題ない。そうでない場合には、第一フレネルゾーンが遮蔽される影響を無視できないため、大地反射の2波モデルを用いることが好適である。したがって、例えば、送信電力推定部43は、i番目の第1の受信装置1の受信アンテナ高が、アンテナ高に関する閾値以上であり、周波数fも、周波数に関する閾値以上である場合に、自由空間モデルを採用し、そうでない場合に、大地反射の2波モデルを採用するようにしてもよい。
【0047】
次に、上記(2)式を用いて算出された複数の送信電力P
tx,iから、最終的な送信電力、すなわち、後段の減衰特性推定部44で用いられる送信電力P
ptxを算出する方法として、最大値を用いる方法と、統計的処理を行う方法とについて説明する。なお、波源3の位置の算出がホワイトスペース検出装置4で行われない場合であって、受信部41が1個の第1の観測データのみを受信した場合には、算出された送信電力P
tx,1を、そのまま送信電力P
ptxとしてもよい。
【0048】
[最大値を用いる方法]
送信電力推定部43は、算出した複数の送信電力P
tx,iのうち、最大値を最終的な送信電力P
ptxとしてもよい。通常、理想的な見通しである伝搬経路を介して受信された受信電力を用いて算出された送信電力が最大値になると考えられる。したがって、そのような送信電力の最大値を推定結果の送信電力P
ptxとすることにより、送信電力をより正確な値に設定できると考えられる。なお、その最大値に、正の値のマージンMを加算した結果を送信電力P
ptxとしてもよい。この場合には、推定結果の送信電力P
ptxは、例えば、次のようになる。
P
ptx=max{P
tx,i}+M
【0049】
[統計的処理を行う方法]
送信電力推定部43は、統計的な処理を行うことによって、複数の送信電力の最大値を算出し、その算出した最大値を最終的な送信電力P
ptxとしてもよい。具体的には、送信電力推定部43は、算出した複数の送信電力P
tx,iを用いて、送信電力{P
tx,i}の平均Eと、標準偏差σとを算出する。そして、送信電力推定部43は、E+3σを送信電力P
ptxとしてもよい。そのようにすることで、統計的なばらつきも考慮した送信電力の最大値を送信電力の推定結果P
ptxとすることができる。
【0050】
なお、上記説明では、伝搬損失関数が、波源3からの方向に依存しない場合について説明したが、そうでなくてもよい。伝搬損失関数は、波源3からの方向に依存するものであってもよい。その場合には、例えば、伝搬損失関数の距離減衰係数a、周波数特性係数b、その他の係数cは、それぞれa(θ),b(θ),c(θ)というように、波源3を中心とする角度θの依存性を有していてもよい。その角度θは、例えば、北を0度とし、東を90度とする方位角であってもよい。そのように、伝搬損失関数が波源3からの方向に依存する場合には、送信電力推定部43は、例えば、位置取得部42が取得した波源3の位置を用いて、その角度依存性を有する伝搬損失関数を取得してもよい。具体的には、送信電力推定部43は、波源3の位置と、図示しない記録媒体で記憶されている、その位置に応じた地形図とを用いて、波源3と波源3の周囲との高低差を特定し、その特定結果に応じて角度依存性を有する伝搬損失関数を取得してもよい。また、あらかじめ各位置について伝搬損失関数の角度依存性を測定しておき、位置と、その位置に対応する角度依存性とを図示しない記録媒体で記憶している場合には、送信電力推定部43は、波源3の位置に対応する角度依存性を読み出して、その角度依存性を有する伝搬損失関数を用いるようにしてもよい。なお、そのあらかじめ記憶されている角度依存性は、例えば、距離減衰係数a、周波数特性係数b、その他の係数cに乗算される角度依存性を有する係数であってもよい。具体的には、その角度依存性を有する係数は、g
a(θ),g
b(θ),g
c(θ)であり、a(θ)=a×g
a(θ),b(θ)=b×g
b(θ),c(θ)=c×g
c(θ)であってもよい。なお、a,b,cは、上述のように、各モデルに応じて取得または算出される係数である。
【0051】
減衰特性推定部44は、送信電力推定部43が推定した波源3の送信電力と、複数の第2の観測データに含まれる複数の受信電力と、位置取得部42が取得した波源3の位置を用いて算出された波源3と複数の第2の受信装置との各距離とを用いて、波源3からの電波の減衰特性を推定する。減衰特性を推定するとは、伝搬損失関数を推定することである。例えば、伝搬損失関数が上記Fのように示される場合には、係数a,b,cの値を決めることが減衰特性を推定することであってもよい。なお、波源3から第1の受信装置1までの伝搬経路が見通しとなる場合には、上述のように、例えば、減衰特性として自由空間モデル等を用いることができる。一方、実際に通信機器を用いる場合には、見通し外での運用となることが多い。したがって、この減衰特性推定部44では、例えば、波源3から第2の受信装置2までの伝送経路が見通し外である場合に、その第2の受信装置2で受信された受信電力を用いて減衰特性を推定することにより、実際に通信機器が運用される状況における波源3の影響を適切に評価でき、より正確なホワイトスペースの検出を実現することができると考えられる。また、第2の受信装置2の数が多いほど、より正確な減衰特性を推定できると考えられる。また、後述するように、第2の受信装置2の数が多い場合には、例えば、波源3からの方向に依存する減衰特性を推定することも可能になる。なお、減衰特性推定部44は、例えば、受信部41が受信した複数の第2の受信装置2の各位置を用いて、または複数の第2の観測データに含まれる第2の識別子にそれぞれ対応付けられている各位置を用いて、その第2の観測データを送信した複数の第2の受信装置2の各位置を取得できる。したがって、送信電力推定部43は、その第2の受信装置2の位置と、位置取得部42が取得した波源3の位置とを用いることによって、第2の受信装置2と波源3との距離を算出できる。
【0052】
減衰特性推定部44は、具体的には、推定する減衰特性、及び第2の受信装置2での受信電力を用いて算出された送信電力と、送信電力推定部43が推定した送信電力との差が小さくなるように、減衰特性を推定してもよい。すなわち、減衰特性推定部44は、次式のように推定係数a
p,b
p,c
pを算出してもよい。なお、推定係数a
p,b
p,c
pは、それぞれ係数a,b,cに対応する推定結果である。推定係数a
p,b
p,c
pが推定された減衰特性であると考えてもよく、それらの推定係数を用いた伝搬損失関数Fが推定された減衰特性であると考えてもよい。なお、x
jは、波源3からj番目の第2の受信装置2までの伝搬距離(km)であり、P
ptxは、送信電力推定部43によって推定された波源3の送信電力(dBm)であり、P
rx,jは、j番目の第2の受信装置2における受信電力(dBm)であり、G
2rxant,jは、j番目の第2の受信装置2の受信アンテナの利得である。また、F(x
j,f)は、前述のように、F(x
j,f)=a×Log(x
j)+b×Log(f)+cとなる伝搬損失関数であり、argminは、a,b,cについて算出されるものとする。また、総和Σは、j=1からN2までの和であり、N2は、減衰特性の算出で用いられる第2の観測データを送信した第2の受信装置2の総数である。
(a
p,b
p,c
p)
=argminΣ
j=1N2|P
ptx−P
rx,j+G
2rxant,j−F(x
j,f)|
2 (3)
【0053】
したがって、減衰特性推定部44は、上記(3)式を用いることによって、波源3の位置からの減衰特性を算出することができる。なお、受信電力P
rx,jは、j番目の第2の受信装置2からの第2の観測データに含まれている。また、G
2rxant,jは、j番目の第2の受信装置2からの第2の観測データに含まれていてもよく、または、第2の受信装置2から送信された第2の識別子を用いて取得されてもよい。後者の場合には、ホワイトスペース検出装置4において、第2の識別子と、その第2の識別子で識別される第2の受信装置2の受信アンテナの利得G
2rxant,jとが対応付けられて図示しない記録媒体で記憶されていてもよい。また、伝搬距離x
jは、上述のように、j番目の第2の受信装置2の位置と、位置取得部42が取得した波源3の位置とを用いることによって算出できる。また、周波数fは、例えば、第2の観測データに含まれていてもよく、ホワイトスペース検出装置4において記憶されていてもよい。なお、前述のように、上記(3)式に含まれる送信電力P
ptxは、厳密には、波源3の送信アンテナの利得の影響を含む空中線電力である。また、第2の受信装置2で取得された受信電力があらかじめ決められた閾値より小さい場合には、上記の計算で用いなくてもよい。ノイズの影響を低減させるためである。
【0054】
また、上記説明では、伝搬損失関数Fが波源3からの方向に依存しない場合について説明したが、そうでなくてもよい。上記(3)式において用いるF(x
j,f)が、波源3からの方向に依存するようにしてもよい。その場合には、例えば、伝搬損失関数を、次式のようにしてもよい。ここで、θは、波源3を中心とする角度であり、例えば、北を0度とし、東を90度とする方位角であってもよい。
F(x,f,θ)=a(θ)×Log(x)+b(θ)×Log(f)+c(θ)
【0055】
ここで、伝搬損失関数がθに依存する場合に、減衰特性を推定する方法について簡単に説明する。第2の受信装置2の総数であるN2の値が十分に大きい場合には、その方位角θの角度ごとに伝搬損失関数F(x,f,θ)を算出してもよい。なお、その場合に、ある角度θについて伝搬損失関数F(x,f,θ)を算出できなかった場合には、a(θ)等を内挿または外挿することによって、その角度の伝搬損失関数を算出してもよい。一方、N2がそれほど大きくない場合には、θの範囲ごとに伝搬損失関数F(x,f,θ)を算出してもよい。θの範囲ごとに伝搬損失関数を算出する場合には、例えば、θを90度ごとの4つの範囲に分けて、その範囲ごとに伝搬損失関数F
n(x,f)を算出してもよい。なお、n=1,2,3,4であり、
F
n(x,f)=a
n×Log(x)+b
n×Log(f)+c
n
であってもよい。そして、推定係数a
np,b
np,c
npは、それぞれ波源3からの方位角が90度×(n−1)≦θ<90度×nの範囲に含まれる第2の受信装置2の受信電力を用いて算出されてもよい。なお、上記(3)式を用いて、90度×(n−1)≦θ<90度×nの範囲ごとに推定係数a
np,b
np,c
npを算出する以外は、上記説明と同様となる。また、ここでは、90度ごとに4個の範囲に分ける場合について説明したが、90度よりも小さい範囲ごとに分けてもよく、または、90度よりも大きい範囲ごとに分けてもよい。また、その分割する角度の範囲は、90度ごとなどのように均等であってもよく、そうでなくてもよい。後者の場合には、例えば、各範囲に含まれる第2の受信装置2の個数が平均化されるように範囲を分割してもよい。なお、上記の式では、距離減衰係数a、周波数特性係数b、その他の係数cのそれぞれが角度依存を有する場合、すなわち、a(θ),b(θ),c(θ)となる場合について説明したが、そうでなくてもよい。角度依存を有するのは、距離減衰係数aのみであり、周波数特性係数bと、その他の係数cとについては、角度依存性を有しなくてもよい。
【0056】
ホワイトスペース検出部45は、送信電力推定部43が推定した波源3の送信電力P
ptxと、減衰特性推定部44が推定した減衰特性とを用いて、波源3からの電波の到達範囲を推定することによってホワイトスペースを検出する。なお、そのホワイトスペースは、波源3からの電波の到達しない地域的な領域である。具体的には、推定された波源3の送信電力P
ptxと、推定された減衰特性a
p,b
p,c
pと、上記(1)式とを用いると、波源3からxだけ離れた位置における空中線電力Pは、次式のようになる。
P=P
ptx−F
p(x,f)
ただし、F
p(x,f)は、推定された減衰特性に応じた伝搬損失関数であり、次式で示されるものである。
F
p(x,f)=a
p×Log(x)+b
p×Log(f)+c
p
【0057】
図4Aは、その空中線電力と、波源3からの距離との関係を示すグラフである。
図4Aにおいて、電力が閾値P
TH以上である範囲を、波源3からの電波の到達範囲とする場合には、ホワイトスペース検出装置4は、P
ptx−F
p(x,f)=P
THとなる距離xを算出することによって、電波の到達範囲を推定できる。なお、その距離をdとすると、dは次式のようになる。ただし、10^αは、10
αの意味である。
d=10^{(P
ptx−P
TH−b
p×Log(f)−c
p)/a
p}
この場合には、
図4Bで示されるように、波源3から半径dの円の範囲が波源3からの電波の到達範囲となり、波源3によって利用されている空間となるため、その半径dの円の外側がホワイトスペースとなる。
【0058】
なお、ホワイトスペース検出装置4によるホワイトスペースの検出は、結果として、ホワイトスペースと、それ以外とを区別できるようになるのであれば、その方法を問わない。例えば、ホワイトスペース検出装置4は、ホワイトスペースに応じた領域の輪郭を示す情報を取得してもよく、ホワイトスペースでない領域である利用空間の輪郭を示す情報を取得してもよい。後者の場合であって、例えば、
図4Bで示される場合には、利用空間の輪郭を示す情報は、波源3の位置と半径dとを含む情報であってもよい。また、複数の波源3が存在する場合には、その波源3ごとに利用空間が存在するため、ホワイトスペース検出装置4は、そのいずれの利用空間にも含まれない領域であるホワイトスペースを特定してもよい。また、ホワイトスペース検出装置4は、例えば、ある周波数について、波源3からの電波の到達範囲の領域を示すホワイトスペースを検出してもよく、または周波数帯域ごとに、そのホワイトスペースを検出してもよい。
【0059】
ここで、角度依存を有する減衰特性に応じてホワイトスペースを検出する処理について簡単に説明する。その場合には、θごとに、波源3からの電波の到達範囲が算出されることになる。例えば、上述のように、n=1〜4に対応するa
np,b
np,c
npが推定された場合には、
図4Cで示されるように、空中線電力は、方位角θの90度の範囲ごとに応じた4個のグラフとなる。そして、その方位角θの90度ごとに、電力が閾値P
THとなる距離を算出すると、d
1〜d
4になったとする。すると、ホワイトスペース検出装置4は、例えば、
図4Dの実線で示されるように、方位角θが90度ごとの利用空間を特定し、それ以外の領域をホワイトスペースとしてもよい。また、ホワイトスペース検出装置4は、
図4Dの破線で示されるように、境界線が、θ=0,90,180,270度において滑らかにつながるように、利用空間を特定してもよい。
【0060】
出力部46は、ホワイトスペース検出部45が検出したホワイトスペースに関する出力を行う。その出力は、例えば、ホワイトスペースを示す情報を、ホワイトスペースのデータベース等に追加することであってもよく、その他の出力であってもよい。例えば、ユーザや通信装置等は、その出力結果を用いることによって、ホワイトスペースの領域と、そうでない領域とを区別できることが好適である。
【0061】
ここで、この出力は、例えば、表示デバイス(例えば、CRTや液晶ディスプレイなど)への表示でもよく、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、プリンタによる印刷でもよく、記録媒体への蓄積でもよく、他の構成要素への引き渡しでもよい。なお、出力部46は、出力を行うデバイス(例えば、表示デバイスやプリンタなど)を含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、出力部46は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは、それらのデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0062】
次に、ホワイトスペース検出装置4の動作について
図3のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)ホワイトスペース検出装置4は、第1の観測データを送信する旨の送信要求を複数の第1の受信装置1に送信する。なお、その送信要求において、例えば、周波数が指定されていてもよく、または、そうでなくてもよい。前者の場合には、例えば、ホワイトスペース検出装置4は、第1の受信装置1で取得されたスペクトラムセンシングの結果を用いて、波源3に応じた周波数を特定してもよい。また、送信要求において周波数を指定する場合には、その周波数が、ホワイトスペース検出装置4において、図示しない記録媒体において記憶されてもよい。送信電力の推定や減衰特性の推定において用いることができるようにするためである。また、送信要求によって周波数が指定されない場合には、第1の受信装置1は、例えば、数MHz幅で受信信号の取得を行い、その周波数(例えば、数MHz幅の中心周波数や、その範囲を示す情報等)と、受信信号との組を1個または2個以上含む第1の観測データを送信してもよい。
【0063】
(ステップS102)受信部41は、複数の第1の受信装置1から第1の観測データをそれぞれ受信したかどうか判断する。そして、複数の第1の受信装置1のすべてから第1の観測データを受信した場合には、ステップS103に進み、そうでない場合には、ステップS102の処理を繰り返す。なお、その第1の観測データには、位置取得部42が波源3の位置を取得するために用いる情報が含まれているものとする。
【0064】
(ステップS103)位置取得部42は、受信部41が受信した複数の第1の観測データに含まれる情報を用いて、波源3の位置を算出する。その算出された波源3の位置は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0065】
(ステップS104)送信電力推定部43は、ステップS103で算出された波源3の位置と、複数の第1の受信装置1の各位置とを用いて、波源3と複数の第1の受信装置1とのそれぞれの距離を算出する。そして、送信電力推定部43は、その各距離と、第1の観測データに含まれる受信電力とを用いて、波源3の送信電力を推定する。その推定された送信電力は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0066】
(ステップS105)ホワイトスペース検出装置4は、第2の観測データを送信する旨の送信要求を複数の第2の受信装置2に送信する。なお、その送信要求においても、ステップS101と同様に、周波数が指定されていてもよく、または、そうでなくてもよい。後者の場合には、第2の受信装置2は、例えば、数MHz幅で受信電力の取得を行い、その周波数と、受信電力との組を1個または2個以上含む第2の観測データを送信してもよい。
【0067】
(ステップS106)受信部41は、複数の第2の受信装置2から第2の観測データをそれぞれ受信したかどうか判断する。そして、すべての第2の受信装置2から、またはあらかじめ決められた閾値以上の個数の第2の受信装置2から第2の観測データを受信した場合には、ステップS107に進み、そうでない場合には、ステップS106の処理を繰り返す。
【0068】
(ステップS107)減衰特性推定部44は、ステップS103で算出された波源3の位置と、複数の第2の受信装置2の各位置とを用いて、波源3と複数の第2の受信装置2とのそれぞれの距離を算出する。そして、減衰特性推定部44は、その各距離と、ステップS104で推定された送信電力と、第2の観測データに含まれる受信電力とを用いて、減衰特性を推定する。その推定された減衰特性は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0069】
(ステップS108)ホワイトスペース検出部45は、ステップS104で推定された送信電力と、ステップS107で推定された減衰特性とを用いて、ホワイトスペースを検出する。
【0070】
(ステップS109)出力部46は、ステップS108で検出されたホワイトスペースに関する出力を行う。そして、ホワイトスペースを検出する一連の処理は終了となる。
【0071】
なお、
図3のフローチャートにおける処理の順序は一例であり、同様の結果を得られるのであれば、各ステップの順序を変更してもよい。例えば、第1及び第2の受信装置1,2への送信要求を同時に行い、それに応じて第1及び第2の観測データを受信し、その受信後に、ステップS103,S104,S107等の処理を行ってもよい。また、このフローチャートでは、第1及び第2の受信装置1,2が、送信要求に応じて第1及び第2の観測データを送信する場合について説明したが、そうでなくてもよい。第1及び第2の受信装置1,2は、送信要求に関わらず、第1及び第2の観測データを送信するようにしてもよい。その場合には、例えば、第1及び第2の受信装置1,2は、あらかじめ決められている時刻ごとに第1及び第2の観測データを送信してもよい。また、送信要求に応じて第1及び第2の観測データが送信される場合であって、送信要求によって周波数が指定されている場合には、第1及び第2の受信装置1,2は、その指定されている周波数の受信電力が、あらかじめ決められている閾値以上でないときに、第1及び第2の観測データを送信しなくてもよい。また、第1及び第2の受信装置1,2から、周波数と、受信信号や受信電力との組が複数送信される場合には、ホワイトスペース検出装置4において、その周波数ごとに送信電力の推定等の処理が行われ、その周波数ごとにホワイトスペースの検出が行われてもよい。
【0072】
以上のように、本実施の形態によるホワイトスペース検出装置4によれば、波源3の位置と、推定された波源3の送信電力と、推定された波源3からの電波の減衰特性とを用いてホワイトスペースを検出することができる。そのため、従来のスペクトラムセンシング技術を用いてホワイトスペースを検出する場合よりも少ない受信装置の数であっても、ホワイトスペースを検出することができるようになる。また、その減衰特性を自由空間モデルとするのではなく、第2の受信装置2が取得した受信電力を用いて算出するため、より実態に即した減衰特性の推定が可能となり、より正確なホワイトスペースのエリアの検出が可能となる。また、波源3からの方向に依存する減衰特性を推定する場合には、より精度の高い減衰特性が算出されることになり、その結果、ホワイトスペースを高精度に検出することが可能となる。
【0073】
なお、本実施の形態では、第1及び第2の受信装置1,2が異なる種類の受信装置である場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。第1及び第2の受信装置1,2は、同じ種類の受信装置であり、そのうち、位置の取得や送信電力の推定の処理のために用いる受信装置を第1の受信装置1と呼び、減衰特性の推定の処理のために用いる受信装置を第2の受信装置2と呼んでいると考えてもよい。
【0074】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、あるいは、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いる閾値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、あるいは長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、あるいは、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、あるいは、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0077】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いる閾値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0078】
また、上記実施の形態において、ホワイトスペース検出装置4に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、あるいは、別々のデバイスを有してもよい。
【0079】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。なお、上記実施の形態におけるホワイトスペース検出装置4を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータを、複数の第1の受信装置が受信した波源からの電波を用いて特定された波源の位置を取得する位置取得部、第1の受信装置によって観測された波源からの電波の受信電力を含む第1の観測データを受信し、複数の第2の受信装置によってそれぞれ観測された波源からの電波の受信電力を含む複数の第2の観測データを受信する受信部、第1の観測データに含まれる受信電力と、位置取得部が取得した波源の位置を用いて算出された波源と第1の受信装置との距離とを用いて、波源の送信電力を推定する送信電力推定部、送信電力推定部が推定した波源の送信電力と、複数の第2の観測データに含まれる複数の受信電力と、位置取得部が取得した波源の位置を用いて算出された波源と複数の第2の受信装置との各距離とを用いて、波源からの電波の減衰特性を推定する減衰特性推定部、前記送信電力推定部が推定した前記波源の送信電力と、減衰特性推定部が推定した減衰特性とを用いて波源からの電波の到達範囲を推定することによってホワイトスペースを検出するホワイトスペース検出部、ホワイトスペース検出部が検出したホワイトスペースに関する出力を行う出力部として機能させるためのプログラムである。
【0080】
なお、上記プログラムにおいて、上記プログラムが実現する機能には、ハードウェアでしか実現できない機能は含まれない。例えば、情報を取得する取得部や、情報を受信する受信部、情報を出力する出力部などにおけるモデムやインターフェースカードなどのハードウェアでしか実現できない機能は、上記プログラムが実現する機能には少なくとも含まれない。
【0081】
また、このプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD−ROMなどの光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
【0082】
図5は、上記プログラムを実行して、上記実施の形態によるホワイトスペース検出装置4を実現するコンピュータの外観の一例を示す模式図である。上記実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されうる。
図5において、コンピュータシステム900は、CD−ROMドライブ905を含むコンピュータ901と、キーボード902と、マウス903と、モニタ904とを備える。
【0083】
図6は、コンピュータシステム900の内部構成を示す図である。
図6において、コンピュータ901は、CD−ROMドライブ905に加えて、MPU(Micro Processing Unit)911と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM912と、MPU911に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM913と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するハードディスク914と、MPU911、ROM912等を相互に接続するバス915とを備える。なお、コンピュータ901は、LANやWAN等への接続を提供する図示しないネットワークカードを含んでいてもよい。
【0084】
コンピュータシステム900に、上記実施の形態によるホワイトスペース検出装置4の機能を実行させるプログラムは、CD−ROM921に記憶されて、CD−ROMドライブ905に挿入され、ハードディスク914に転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ901に送信され、ハードディスク914に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM913にロードされる。なお、プログラムは、CD−ROM921、またはネットワークから直接、ロードされてもよい。また、CD−ROM921に代えて他の記録媒体(例えば、DVD等)を介して、プログラムがコンピュータシステム900に読み込まれてもよい。
【0085】
プログラムは、コンピュータ901に、上記実施の形態によるホワイトスペース検出装置4の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能やモジュールを呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステム900がどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
【0086】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。