(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の軌道面を有し保持機構に保持される第1の軌道盤、第2の軌道面を有する透明の第2の軌道盤、ならびに前記第1および第2の軌道面の間を転動する複数の転動体を有するスラスト軸受の、前記第1および第2の軌道面の相対姿勢を計測するための軌道面姿勢計測方法であって、
前記第2の軌道盤を、前記第2の軌道面が前記第1の軌道面に対向し、かつ前記第2の軌道面が各転動体に接触する接触状態から、前記第1の軌道面に対して微小距離だけ離反する微小離反状態に配置する微小離反状態配置ステップと、
前記微小離反状態に配置された前記第2の軌道盤を、前記第2の軌道面と反対側から前記カメラによって撮像する第1の撮像ステップと、
前記第1の撮像ステップの撮像結果に基づいて、前記第1および第2の軌道面の相対姿勢を検出する姿勢検出ステップとを含む、軌道面姿勢計測方法。
第1の軌道面を有する第1の軌道盤、第2の軌道面を有する透明の第2の軌道盤、ならびに前記第1および第2の軌道面の間を転動する複数の転動体を有するスラスト軸受の、前記第1および第2の軌道面の相対姿勢を計測するための軌道面姿勢計測装置であって、
前記第1の軌道盤を保持する保持機構と、
前記第2の軌道盤を、前記保持機構に対し、接離する方向に移動させる移動手段と、
前記第2の軌道盤を撮像するためのカメラと、
前記第2の軌道盤を、前記第2の軌道面が前記第1の軌道面に対向し、かつ前記第2の軌道面が各転動体に接触する接触状態から、前記第1の軌道面に対して微小距離だけ離反する微小離反状態に配置し、当該微小離反状態に配置された前記第2の軌道盤を、前記第2の軌道面と反対側から前記カメラによって撮像させる制御手段と、
前記カメラによる撮像結果に基づいて、前記第1および第2の軌道面の相対姿勢を検出する姿勢検出手段とを含む、軌道面姿勢計測装置。
第1の軌道面を有し保持機構に保持される第1の軌道盤、第2の軌道面を有する透明の第2の軌道盤、ならびに前記第1および第2の軌道面の間を転動する複数の転動体を有するスラスト軸受の前記転動体の挙動を計測するための転動体挙動計測方法であって、
請求項1または2に記載の軌道面姿勢計測方法と、
前記軌道面姿勢計測方法の計測結果に基づいて、前記第1および第2の軌道面が互いに平行な姿勢をなすように、前記第1および/または第2の軌道面の姿勢を調整する軌道面姿勢調整ステップと、
前記転動体を公転させるべく前記第1および第2の軌道盤を相対回転させる回転ステップと、前記第2の軌道盤を介して、公転している前記転動体に光を照射する光照射ステップと、
前記カメラにより、前記第2の軌道盤を介して、公転している前記転動体を撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップの撮像結果に基づいて、前記転動体の挙動を算出する挙動算出ステップとを含む、転動体挙動計測方法。
前記軌道面姿勢計測方法および前記軌道面姿勢調整ステップを、前記第1および第2の軌道盤の相対回転姿勢を変更させながらそれぞれ複数回実行する、請求項4に記載の転動体挙動計測方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のころ挙動計測装置を用いてころの挙動を計測する場合、ころの挙動を観察するために、一対の軌道盤の一方を透明の軌道盤に変更することがある。これにより、カメラによって、透明の軌道盤越しに複数の転動体を撮像でき、この撮像画像に基づいてころの挙動を計測できる。
このような転動体(ころ)の挙動の計測方法において、転動体の挙動の検出精度を高めるには、一対の軌道盤の軌道面同士が互いに平行になるように調整されている必要がある。
【0005】
一対の軌道面の平行状態を検出するために、非接触レーザ距離センサ等を用いて軌道面の角度を算出する方法等が考えられるが、新たにセンサ等を設けるために設置作業等が必要になる。新たなセンサ等を設けることなく、一対の軌道面の相対姿勢(平行状態)を検出することが望まれている。
そこで、この発明の目的の一つは、互いに対向する一対の軌道面の相対姿勢を精度良く計測できる軌道面姿勢計測方法および軌道面姿勢計測装置を提供することである。
【0006】
また、この発明の他の目的は、転動体の挙動を精度良く計測できる転動体挙動計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、第1の軌道面(11A)を有し保持機構(2)に保持される第1の軌道盤(11)、第2の軌道面(9A)を有する透明の第2の軌道盤(9)、ならびに前記第1および第2の軌道面の間を転動する複数の転動体(13)を有するスラスト軸受(10)の、前記第1および第2の軌道面の相対姿勢を計測するための軌道面姿勢計測方法であって、前記第2の軌道盤を、前記第2の軌道面が前記第1の軌道面に対向し、かつ前記第2の軌道面が各転動体に接触する接触状態から、前記第1の軌道面に対して微小距離だけ離反する微小離反状態に配置する微小離反状態配置ステップ(S13)と、前記微小離反状態に配置された前記第2の軌道盤を、前記第2の軌道面と反対側から前記カメラによって撮像する第1の撮像ステップ(S14)と、前記第1の撮像ステップの撮像結果に基づいて、前記第1および第2の軌道面の相対姿勢を検出する姿勢検出ステップ(S15,S16)とを含む、軌道面姿勢計測方法を提供する。
【0008】
なお、この項において、括弧内の数字等は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符合を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。
請求項2に記載の発明は、前記接触状態において、前記第2の軌道盤を、前記第2の軌道面と反対側から前記カメラによって撮像する第2の撮像ステップ(S12)をさらに含み、前記姿勢算出ステップは、前記第1および第2の撮像ステップの撮像結果に基づいて前記スラスト軸受の姿勢を算出する、請求項1に記載の軌道面姿勢計測方法である。
【0009】
前記の目的を達成するための請求項3に記載の発明は、第1の軌道面(11A)を有する第1の軌道盤(11)、第2の軌道面(9A)を有する透明の第2の軌道盤(9)、ならびに前記第1および第2の軌道面の間を転動する複数の転動体(13)を有するスラスト軸受(10)の、前記第1および第2の軌道面の相対姿勢を計測するための軌道面姿勢計測装置であって、前記第1の軌道盤を保持する保持機構(2)と、前記第2の軌道盤を、前記保持機構に対し、接離する方向に移動させる移動手段(6)と、前記第2の軌道盤を撮像するためのカメラ(18)と、前記第2の軌道盤を、前記第2の軌道面が前記第1の軌道面に対向し、かつ前記第2の軌道面が各転動体に接触する接触状態から、前記第1の軌道面に対して微小距離だけ離反する微小離反状態に配置し、当該微小離反状態に配置された前記第2の軌道盤を、前記第2の軌道面と反対側から前記カメラによって撮像させる制御手段(4)と、前記カメラによる撮像結果に基づいて、前記第1および第2の軌道面の相対姿勢を検出する姿勢検出手段(5)とを含む、軌道面姿勢計測装置を提供する。
【0010】
前記の目的を達成するための請求項4に記載の発明は、第1の軌道面(11A)を有し保持機構に保持される第1の軌道盤(11)、第2の軌道面(9A)を有する透明の第2の軌道盤(9)、ならびに前記第1および第2の軌道面の間を転動する複数の転動体(13)を有するスラスト軸受(10)の前記転動体の挙動を計測するための転動体挙動計測方法であって、請求項1または2に記載の軌道面姿勢計測方法と、前記軌道面姿勢計測方法の計測結果に基づいて、前記第1および第2の軌道面が互いに平行な姿勢をなすように、前記第1および/または第2の軌道面の姿勢を調整する軌道面姿勢調整ステップ(S2)と、前記転動体を公転させるべく前記第1および第2の軌道盤を相対回転させる回転ステップ(S5)と、前記第2の軌道盤を介して、公転している前記転動体に光を照射する光照射ステップ(S6)と、前記カメラにより、前記第2の軌道盤を介して、公転している前記転動体を撮像する撮像ステップ(S7)と、前記撮像ステップの撮像結果に基づいて、前記転動体の挙動を算出する挙動算出ステップ(S9)とを含む、転動体挙動計測方法を提供する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記軌道面姿勢計測方法および前記軌道面姿勢調整ステップを、前記第1および第2の軌道盤の相対回転姿勢を変更させながらそれぞれ複数回実行する、請求項4に記載の転動体挙動計測方法である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1によれば、第2の軌道盤が微小離反状態に配置された状態では、転動体に対する第2の軌道盤の押当て状態が解除されており、第2の軌道盤の第2の軌道面は本来の姿勢をなしている。この微小離反状態においては、第1および第2の軌道面の相対姿勢に応じて、第2の軌道面に対する複数の転動体の接触状況が異なる。すなわち、第1および第2の軌道面が互いに平行であれば、微小離反状態において、第2の軌道面に全ての転動体が接触する。これに対し、第1および第2の軌道面が相対的に傾斜していると、一部の転動体は第2の軌道面に接触するが、その他の転動体は第2の軌道面に接触しない。転動体の表面には潤滑剤が付着しているので、微小離反状態において、第2の軌道盤の第2の軌道面において、転動体が接触する箇所には油膜が形成され、転動体が接触しない箇所には、油膜は形成されない。
【0013】
第2の軌道盤の微小離反状態において、透明の第2の軌道盤を、第2の軌道面と反対側から撮像する。このときの撮像画像に含まれる油膜の画像に基づいて、微小離反状態における、第2の軌道面に対する複数の転動体の接触状況を検出でき、この検出結果に基づいて、第1および第2の軌道面の相対姿勢を精度良く計測できる軌道面姿勢計測方法を提供できる。
【0014】
請求項2によれば、第2の軌道盤が接触状態に配置された状態では、各転動体が第2の軌道盤の第2の軌道面に接触している。第2の軌道盤の接触状態において、透明の第2の軌道盤を、第2の軌道面と反対側から撮像することにより、第2の軌道盤が接触状態にあるときの撮像画像を得ることができる。第2の軌道盤が接触状態にあるときの撮像画像と、第2の軌道盤が微小離反状態にあるときの撮像画像とを比較する(差分する)ことにより微小離反状態の撮像画像に含まれる油膜の画像を得ることができ、当該油膜の画像に基づいて、微小離反状態における、第2の軌道面に対する複数の転動体の接触状況を検出できる。これにより、第1および第2の軌道面の相対姿勢を、より一層精度良く検出できる。
【0015】
請求項3によれば、請求項1に関連して説明した作用効果と同等の作用効果を奏する。
請求項4によれば、第1および第2の軌道面の相対姿勢の計測結果に基づいて、第1および第2の軌道面が互いに平行な姿勢をなすようにスラスト軸受の姿勢が調整されるので、第1および第2の軌道面が互いに平行な姿勢である状態で転動体の挙動が計測される。これにより、転動体の挙動を精度良く計測できる転動体挙動計測方法を提供できる。
【0016】
また、転動体の挙動を計測するためのカメラや透明の第2の軌道盤を用いて、第1および第2の軌道面の相対姿勢を計測できるので、このような相対姿勢の計測のために、新たなセンサ等の部品を設ける必要がなく、部品の設置作業の煩わしさがない。
請求項5によれば、第1および第2の軌道盤の回転姿勢を変更させながら、第1および第2の軌道面の姿勢の計測および調整を複数回行う。そのため、第1および第2の軌道盤の互いに異なる複数の相対回転姿勢において、第1および第2の軌道面が平行状態に保たれる。第1および第2の軌道盤を相対回転させながら転動体の挙動を計測するので、各相対回転姿勢において、第1および第2の軌道面が平行状態であることが望ましく、これにより、転動体の挙動を、より一層精度良く精度良く計測できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る軌道面姿勢計測装置が適用された転動体挙動計測装置1の概略構成を示す斜視図である。
転動体挙動計測装置1は、スラスト軸受10を計測対象とし、公転中の転動体13の挙動を計測する。この実施形態では、スラスト軸受10として、転動体13にころを用いたスラストころ軸受が用いられている。スラスト軸受10は、後述するように、第1の軌道盤11と第2の軌道盤9とを有しているが、転動体13の挙動を観察するために、第2の軌道盤9は透明部材により設けられており、この第2の軌道盤9は、転動体挙動計測装置1に設けられており、一方、第2の軌道盤9を除いたスラスト軸受10が、転動体挙動計測装置1に搬入され、保持機構(保持回転機構)2に保持された状態で、第2の軌道盤9を除いたスラスト軸受10に第2の軌道盤9が組み付けられ、この組付け状態で転動体13の挙動の計測が行われる。
【0019】
転動体挙動計測装置1は、第2の軌道盤9を除いたスラスト軸受10を保持しつつ、当該スラスト軸受10を、回転軸線O回りに回転させるための保持回転機構2と、第2の軌道盤9と、保持回転機構2に保持されている、第2の軌道盤9を除いたスラスト軸受10にリング状の光を照射するためのリングライト3と、保持回転機構2に保持されている、第2の軌道盤9を除いたスラスト軸受10を撮像するためのカメラ18と、カメラ18による撮像画像を処理するための画像処理装置5とを含む。
【0020】
保持回転機構2は、スラスト軸受10の第1の軌道盤11を略鉛直姿勢に支持する回転ベース(図示しない)と、回転ベースを回転させる回転駆動源(モータ等。図示しない)とを含む。第2の軌道盤9を除いたスラスト軸受10を保持回転機構2に保持させた状態では、当該スラスト軸受10の中心軸線と保持回転機構2による回転軸線Oとが一致している。
【0021】
第2の軌道盤9は、硬質ガラスや透明樹脂材料を用いて形成されている。
図1では、第2の軌道盤9が円板状をなしているが、第2の軌道盤9は円板状に限られず、矩形板状等であってもよい。第2の軌道盤9は、平坦な平面からなり、第1の軌道盤11(
図1等参照)の第1の軌道面11A(
図10等参照)に対向する第2の軌道面9A(
図10等参照)を有している。第2の軌道面9Aは、略鉛直姿勢をなしている。転動体13の挙動の計測時には、第2の軌道面9Aが各転動体13の周面(表面)と接触する。第2の軌道盤9(第2の軌道面9A)を透明に設けることにより、転動体13の挙動が観察可能とされている。
【0022】
第2の軌道盤9には、モータ等の回転駆動機構が結合されていない。したがって、第2の軌道盤9を除いたスラスト軸受10の回転(すなわち、軌道盤11、保持器12および転動体13の回転)に拘らず、第2の軌道盤9は静止状態にある。
第2の軌道盤9には、第2の軌道盤9を保持回転機構2に対して接離する方向に移動させる移動機構(移動手段)6と、第2の軌道盤9の第2の軌道面9Aの姿勢を調整可能な姿勢調整機構7とが結合されている。移動機構6は、たとえばモータや、シリンダ、ボールねじを含む構成である。姿勢調整機構7は、たとえばモータや、ボールねじを含む構成である。
【0023】
カメラ18は、たとえばCCDカメラであり、時間的に連続する複数枚の画像からなる動画像を撮像するためのカメラである。カメラ18は、そのレンズ19を保持回転機構2に対向するように配置されている。レンズ19は、仮想レンズであり、カメラ18内の鏡筒20内に収容配置されている。カメラ18は、レンズ19の光軸が回転軸線Oに一致するように配置されている。第2の軌道盤9を除いたスラスト軸受10を保持回転機構2に配置した状態で、第2の軌道盤9を含むスラスト軸受10の前面(
図1の左手前面)の全体が、カメラ18の撮像範囲に含まれる。第1のカメラ11は、回転軸線Oに沿う方向から、第2の軌道盤9を介して、第2の軌道盤9を除いたスラスト軸受10を撮像する。
【0024】
カメラ18として、30(fp)以上のフレームレートで動画を撮像するカメラを採用できるが、100(fp)以上のフレームレートで動画を撮像可能な高速度カメラを採用することがより一層望ましい。
リングライト3は、円環状をなし、保持回転機構2側(すなわち
図1で示す右奥側)の端面に円形の照射面3Aを有している。リングライト3は、鉛直姿勢をなし、その中心が回転軸線O上に位置するように配置されている。照射面3Aからは、保持回転機構2に保持されている、第2の軌道盤9を除いたスラスト軸受10に対して均一に光が照射される。リングライト3は、保持回転機構2により保持されるスラスト軸受10よりも大径であり、そのため、保持回転機構2に保持されている、第2の軌道盤9を介してスラスト軸受10の全体に、外側から内側に向かう光を照射することができるようになっている。リングライト3として、1つのリングライトだけでなく、径の異なる複数のリングライトを同心状に配置した構成を採用することもできる。
【0025】
制御装置4は、CPU(図示しない)、メモリおよび各種のインターフェイス等を含む構成のコンピュータにより構成されている。制御装置4は、カメラ18による撮像や、保持回転機構2の回転、リングライト3からの光の照射、ならびに移動機構6および姿勢調整機構7の駆動を制御する。
画像処理装置5には、カメラ18による撮像画像が入力される。画像処理装置5は、CPU(図示しない)、メモリおよび各種のインターフェイス等を含む構成のコンピュータにより構成されている。画像処理装置5は、入力された各撮像画像に対して、所定の画像処理を施す。
【0026】
なお、本発明に係る軌道面姿勢計測装置は、制御装置4、画像処理装置5、第2の軌道盤9およびカメラ18によって構成されている。
図2は、第2の軌道盤9を除いたスラスト軸受10の構成を示す図である。転動体挙動計測装置1を用いて、スラスト軸受10における転動体13の挙動を計測する。
スラスト軸受10は、円板状の第1の軌道盤11と、第2の軌道盤9(
図1参照)と、たとえば円筒状(ころ状)の複数の転動体13と、複数の転動体13が放射状に組込まれて、第1の軌道盤11と相対回転する円環板状の保持器12とを含む。第1の軌道盤11は、平坦な平面からなる第1の軌道盤11A(
図10等参照)を有している。転動体13はころである。保持器12には、その厚み方向に貫通する貫通孔より構成される複数の矩形ポケット15が放射状に設けられており、各矩形ポケット15に転動体13が1つずつ収容配置されている。
【0027】
スラスト軸受10では、第1の軌道盤11の第1の軌道盤11Aと第2の軌道盤9の第2の軌道面9Aとの間の相対回転に伴って、保持器12および各転動体13が回転(時点)しながら、スラスト軸受10の円周方向に転動(公転)する。
図3は、スラスト軸受10の転動体13および保持器12の構成を示す斜視図である。
保持器12の径方向の途中部には、保持器12の径方向に波打つ形状の波打ち屈曲部14が絞り加工により設けられている。波打ち屈曲部14は、径方向の外周側位置および径方向の内周側位置のそれぞれで、保持器12の厚み方向の一方に向けてそれぞれ張り出す外側張出し部14aおよび内側張出し部14bと、前記の外側位置と内側位置との間に設けられて、保持器12の厚み方向の他方に向けて張り出す中間部張出し部14cとを備えている。
【0028】
波打ち屈曲部14における、外径側の屈曲起点から内径側の屈曲起点に至る範囲における円周方向位置(たとえば数箇所)には、平面視矩形(より具体的には、径方向に長い長方形)の矩形ポケット15が、保持器12の厚み方向に打ち抜き形成されている。この各矩形ポケット15に対して転動体13が回動自在な状態で非分離に収納されている。なお、矩形ポケット15に対して転動体13は、締り嵌めされることで収納される。
【0029】
各矩形ポケット15の内周壁面において外径側と内径側には、矩形ポケット15内へ向けて突出する凸部16,17が設けられている。この凸部16,17は、転動体13の軸方向外端面や軸方向内端面の中心部に対して当接して転動体13をピボット支持するためのものであり、矩形ポケット15を打ち抜いて形成するときに同時に形成される。この凸部16,17は、平面視で丸い湾曲形状をなしている。
【0030】
図4は、転動体挙動計測装置1を用いた計測の原理を説明するための図である。
リングライト3のたとえばA点から照射された光は、第2の軌道盤9を透過して、転動体13の周面における所定の反射位置A1に入射するとともに、当該反射位置A1で反射して、第2の軌道盤9を透過してレンズ19に入射する。同様に、リングライト3のたとえばB点から照射された光は、第2の軌道盤9を透過して、転動体13の周面における所定の反射位置B1に入射するとともに、当該反射位置B1で反射して、第2の軌道盤9を透過してレンズ19に入射する。すなわち、リングライト3の各点から照射された光は、それぞれ対応する転動体13の周面上の所定の点で反射してレンズ19に入射する。これにより、転動体13の周面に、1本のたとえば直線からなる反射光模様が表れる。
【0031】
図5は、転動体挙動計測装置1を用いた転動体挙動計測処理の流れを示すフローチャートである。
図6は、
図5に示す軌道面姿勢計測処理の流れを示すフローチャートである。
図7は、押当て時撮像画像41の一例を示す図である。
図8は、微小離反時撮像画像42の一例を示す図である。
図9は、差分画像43の一例を示す図である。
図10および
図11は、軌道面姿勢調整処理を説明するための模式的な平面図である。
【0032】
以下、転動体挙動計測処理について、
図1、
図5および
図6を参照しながら説明する。
図4および
図7〜
図11は適宜参照する。
以下では、スラスト軸受10に含まれる転動体13のうち、所定の一つの転動体13の挙動を計測する場合を例に挙げて説明するが、全ての転動体13の位置を計測対象としてもよい。
【0033】
まず、オペレータが、第2の軌道盤9を除いたスラスト軸受10を保持回転機構2に保持させる(ステップS0)。このスラスト軸受10には、潤滑剤(たとえばグリース)が十分に充填されている。そのため、各転動体13の周面には、潤滑剤が付着している。
保持回転機構2にスラスト軸受10が保持されると次いで、第1および第2の軌道面11A,9Aの相対姿勢が計測される(S1:軌道面姿勢計測)。
【0034】
以下、
図6を併せて参照しながら、軌道面姿勢計測処理(S1)について説明する。
制御装置4は、移動機構6を制御して、第2の軌道盤9を保持回転機構2に接近する方向(
図1の右奥方向)に移動させ、保持回転機構2に保持されている、第2の軌道盤9を除いたスラスト軸受10に第2の軌道盤9を押し当てる(ステップS11)。この押当て状態(接触状態)では、第2の軌道面9Aが本来の姿勢から若干ずれている。押当て状態では、全ての転動体13の周面が第2の軌道面9Aに接触しており、この状態において、カメラ8により、第2の軌道面9Aと反対側から、第2の軌道盤9を撮像する(第2の撮像ステップ。ステップS12)。押当て状態における撮像画像を、以降において、「押当て時撮像画像41」と言う。押当て時撮像画像41の一例を
図7に示す。第2の軌道盤9が透明に設けられているので、押当て時撮像画像41は、第1の軌道盤11、保持器12および転動体13の各画像と、第2の軌道面9Aへの転動体13の接触により第2の軌道面9Aに形成された油膜の画像とを含む。
【0035】
次いで、制御装置4は、移動機構6を制御して、前記の押当て状態から第2の軌道盤9を、保持回転機構2から離反する方向(
図1の左手前方向)に微小量(たとえば数百μM)だけ移動させる(微小離反状態配置ステップ。ステップS13)。この状態(以下、単に「微小離反状態」という)では、スラスト軸受10に対する第2の軌道盤9の押当て状態が解除され、第2の軌道面9Aは本来の姿勢に復帰している。
【0036】
微小離反状態では、一部または全部の転動体13の周面が第2の軌道面9Aに接触しており、この状態において、カメラ8により、第2の軌道面9Aと反対側から、第2の軌道盤9を撮像する(第1の撮像ステップ。ステップS14)。微小離反状態における撮像を第1の撮像とし、このときの撮像画像を、「微小離反時撮像画像42」と言う。微小離反時撮像画像42の一例を
図8に示す。微小離反時撮像画像42は、第1の軌道盤11、保持器12および転動体13の各画像と、第2の軌道面9Aへの転動体13の接触により第2の軌道面9Aに形成された油膜の画像とを含む。
【0037】
微小離反状態においては、第1および第2の軌道面11A,9Aの相対姿勢に応じて、第2の軌道面9Aに対する複数の転動体の接触状況が異なる。すなわち、第1および第2の軌道面11A,9Aが互いに平行であれば、微小離反状態において、第2の軌道面9Aに全ての転動体13が接触する。これに対し、第1および第2の軌道面11A,9Aが相対的に傾斜していると、一部の転動体13は第2の軌道面9Aに接触するが、その他の転動体13は第2の軌道面9Aに接触しない。転動体13の周面には潤滑剤が付着しているので、微小離反状態において、第2の軌道盤9の第2の軌道面9Aおいて、転動体13が接触する箇所に油膜が形成され、転動体13が接触しない箇所には、油膜は形成されない。
【0038】
押当て時撮像画像41および微小離反時撮像画像42は、画像処理装置5に与えられる。
画像処理装置5は、微小離反時撮像画像42から押当て時撮像画像41を差分した差分画像43を取得する(姿勢検出ステップ。ステップS15)。差分画像43の一例を
図9に示す。
【0039】
図9に示すように、微小離反時撮像画像42から押当て時撮像画像41を差分することにより、微小離反状態の撮像画像に含まれる油膜の画像を、差分画像43として得ることができる。そのため、差分画像43に基づいて、微小離反状態における、第2の軌道面9Aに対する複数の転動体13の接触状況を検出できる。
図9では、破線で囲んだ部分43Aが、微小離反時撮像画像42において、油膜の画像がなかった部分である。すなわち、この破線で囲んだ部分43Aにおいて、第2の軌道面9Aに転動体13が接触していないことがわかる。したがって、画像処理装置5は、差分画像43に基づいて、第1および第2の軌道面11A,9Aが相対的に傾斜していること、およびその傾斜方向を求めることができる(姿勢検出ステップ。ステップS16)。画像処理装置5の画像処理の結果は、制御装置4に与えられる。
【0040】
図5に戻り、制御装置4は、画像処理装置5の画像処理の結果に基づいて、姿勢調整機構7を制御して、第1および第2の軌道面11A,9Aが互いに平行な姿勢をなすように、第2の軌道盤9の姿勢を調整する(軌道面姿勢調整ステップ。ステップS2)。その結果、第1および第2の軌道面11A,9Aが相対的に傾斜している状態(
図10に示す状態)が解消され、
図11に示すように、第1および第2の軌道面11A,9Aが互いに平行な姿勢をなすようになる。
【0041】
また、ステップS1およびステップS2の各処理は、制御装置4が、保持回転機構2を制御して第1の軌道盤11を回転させて、第1および第2の軌道盤11,9の相対回転姿勢を変更させながら、予め定める回数だけ実行する(ステップS3,S4)。
ステップS1およびステップS2の各処理が予め定める回数実行された後(ステップS3でYES)は、転動体13の挙動が計測される。
【0042】
制御装置4は、移動機構6を制御して、第2の軌道盤9を保持回転機構2に接近する方向(
図1の右奥方向。
図10の上方向)に移動させ、保持回転機構2に保持されている、第2の軌道盤9を除いたスラスト軸受10に第2の軌道盤9を押し当てる。
また、制御装置4は、保持回転機構2の回転駆動源(図示しない)を制御して、第1の軌道盤11の回転を開始させる(回転ステップ。ステップS5)。所定大きさのアキシャル荷重が、スラスト軸受10(第2の軌道盤9を含むスラスト軸受10)に与えられた状態で、保持回転機構2に保持されたスラスト軸受10の第1の軌道盤11が回転させられる。第1の軌道盤11の回転に伴って、転動体13および保持器12も、第1の軌道面11Aと第2の軌道面9Aとの間を、円周方向に公転(回転)する。このとき、第2の軌道盤9は回転せずに静止している。
【0043】
また、制御装置4は、リングライト3を制御して、照射面3Aを発光させる(光照射ステップ。ステップS6)。これにより、リングライト3からの光が、スラスト軸受10に向けて照射され、より具体的には、透明の第2の軌道盤9を透過して、転動体13の表面に照射される。
制御装置4は、カメラ18によって、光が照射されているスラスト軸受10を撮像する(撮像ステップ。ステップS7)。より具体的には、透明の第2の軌道盤9を透過して、転動体13の表面が撮像される。
【0044】
撮像終了後、制御装置4は、保持回転機構2の回転駆動源(図示しない)を制御して、第1の軌道盤11の回転を停止させる(ステップS8)。その後、オペレータは、スラスト軸受10を保持回転機構2から取り出し、玉位置計測装置1からスラスト軸受10が搬出される。
次いで、画像処理装置5が画像計測処理を実行し(挙動算出ステップ。ステップS9)、転動体13の挙動を計測する。この画像計測処理として、たとえば特開2013−156201号にて開示されている画像処理を挙げることができる。
【0045】
以上によりこの実施形態によれば、押当て状態では、各転動体13が第2の軌道盤9の第2の軌道面9Aに接触している。第2の軌道盤9の接触状態において、透明の第2の軌道盤9を、第2の軌道面9Aと反対側から撮像することにより、押当て状態時撮像画像41が得られる。
微小離反状態では、転動体13に対する第2の軌道盤9の押当て状態が解除されており、第2の軌道盤9の第2の軌道面9Aは本来の姿勢をなしている。この微小離反状態においては、第1および第2の軌道面11A,9Aの相対姿勢に応じて、第2の軌道面9Aに対する複数の転動体13の接触状況が異なる。第2の軌道盤9の微小離反状態において、透明の第2の軌道盤9を、第2の軌道面9Aと反対側から撮像することにより、微小離反時撮像画像42が得られる。
【0046】
押当て状態時撮像画像41と、微小離反時撮像画像42との間の差分画像43では、微小離反時撮像画像42に含まれる油膜の画像を得ることができ、当該油膜の画像に基づいて、微小離反状態における、第2の軌道面9Aに対する複数の転動体13の接触状況を検出できる。これにより、第1および第2の軌道面11A,9Aの相対姿勢を、より一層精度良く検出できる。
【0047】
また、第1および第2の軌道盤11,9の回転姿勢を変更させながら、第1および第2の軌道面11A,9Aの姿勢の計測および調整を複数回行うので、第1および第2の軌道盤11,9の互いに異なる複数の相対回転姿勢において、第1および第2の軌道面11A,9Aが平行状態に保たれる。第1および第2の軌道盤11,9を相対回転させながら転動体13の挙動を計測するので、各相対回転姿勢において、第1および第2の軌道面11,9が平行状態であることが望ましく、これにより、転動体13の挙動を、より一層精度良く精度良く計測できる。
【0048】
また、転動体13の挙動を計測するためのカメラ18や透明の第2の軌道盤9を用いて、第1および第2の軌道面11A,9Aの相対姿勢を計測できる。すなわち、第1および第2の軌道面11A,9Aの相対姿勢の計測で使用したカメラ8をそのまま使用して、転動体13の挙動の計測を行える。したがって、このような相対姿勢の計測のために、新たなセンサ等の部品を設ける必要がなく、部品の設置作業の煩わしさがない。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は他の形態で実施することもできる。
たとえば、押当て状態および微小離反状態でのカメラ18による撮像画像は、静止画像でなく、動画像であってもよい。この場合、押当て状態から微小離反状態への状態推移を動画で撮像し、変化が鮮明なフレームを抜き出して、ステップS15およびステップS16の各処理(
図6参照)を実行するようにしてもよい。
【0050】
画像処理装置5が、微小離反時撮像画像42から押当て時撮像画像41を差分して差分画像43を取得するとして説明したが、押当て時撮像画像41から微小離反時撮像画像42を差分して差分画像43を求めてもよい。
また、ステップS2の処理(
図5参照)では、第2の軌道盤9の姿勢を変更することにより、第1および第2の軌道面11A,9Aの相対位置を調整する例について説明したが、第1の軌道盤11の姿勢を変更したり、第1および第2の軌道部材11,9の双方の姿勢を変更したりすることにより、第1および第2の軌道面11A,9Aの相対位置を調整してもよい。
【0051】
前述の実施形態では、スラスト軸受の一例として、転動体13にころを用いたスラストころ軸受を挙げたが、転動体13の玉を用いたスラスト玉軸受にも、本願発明を適用できる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。