【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、請求項1に記載の特徴によって達成される。本発明の実施形態は、従属項に詳しく記載されている。
【0005】
本発明の実施形態に係るドキュメントは、高価値のドキュメントまたはセキュリティドキュメントであり、例えば、身分証明(ID)カード、パスポート、運転免許証あるいは社員IDカード等のIDドキュメントであるか、または、例えば、銀行券、クレジットカード等の支払い手段であるか、または、例えば、入場券、受託書、査証等の別の信任状である。ドキュメントは、紙および/またはプラスチックで出来ている。具体的には、ドキュメントは、本またはカードとして構成することができる。または、ドキュメントはスマートカードであってよい。
【0006】
本発明の実施形態に係るドキュメントは、積層されている複数のドキュメント層で構成されているドキュメント本体を備える。各ドキュメント層は、プラスチックまたは紙で形成することができる。例えば、各ドキュメント層はそれぞれ、形状およびサイズが略同じであるので、積層することによって、例えば、カード形状のドキュメント本体が形成される。このため、ドキュメント層は、互いに重ねるとしてよい。
【0007】
第1のドキュメント層は、評価部を含む。評価部は、半導体回路であってよく、例えば、シリコンをベースとする電子回路またはポリマーを利用した電子回路として構成されている。例えば、評価部は、第1のドキュメント層の上または内部に配置されるチップによって実現され得る。評価部は、例えば、印刷技術を用いて第1のドキュメント層に塗布されるポリマー製の電子部品によって構成することができる。
【0008】
第2のドキュメント層は、第1のバイオメトリクスデータを収集する第1の取得部を含み、第3のドキュメント層は、第2のバイオメトリクスデータを収集する第2の取得部を含む。第1および第2のバイオメトリクスデータは、異なる種類のバイオメトリクスデータであってよく、例えば、指紋データ、虹彩スキャンデータ、顔バイオメトリクスデータ、遺伝子データ、具体的には、DNA配列データ等であってよい。
【0009】
例えば、第1または第2の取得部は、ユーザの指紋データを収集する指紋センサとして構成されているとしてよく、または、虹彩スキャンデータまたは顔バイオメトリクスデータを収集する電子カメラとして構成されているとしてもよい。例えば、第1または第2の取得部は、ユーザのDNAに対してDNAシークエンシングプロセスを実行するマイクロシステム、具体的には、例えば、皮下サンプルを採取するいわゆるDNAマイクロトータルアナリシスシステム(TAS)として構成することができる。尚、DNAシークエンシングは、ユーザから採取したサンプルを用いて実行され、結果としてバイオメトリクスデータを供給する。
【0010】
本発明の一実施形態によると、評価部は、いわゆる「カード一致」プロセスを実行するように構成されている。このため、ドキュメントは、第1のバイオメトリクスデータに対する第1の基準データを格納する第1のメモリ領域と、第2のバイオメトリクスデータに対する第2の基準データを格納する第2のメモリ領域とを備える。第1の基準データは、第1のバイオメトリクスデータに対して「カード一致」プロセスを実行するために利用され、第2の基準データは、第2のバイオメトリクスデータに対して「カード一致」プロセスを実行するために利用される。「カード一致」プロセスは、いずれの場合も評価部によって実行される。
【0011】
評価部は、第1の基準データおよび第1のバイオメトリクスデータに関して「カード一致」プロセスを実行した結果を第1の信頼値と呼び、第2の基準データおよび第2のバイオメトリクスデータに関する「カード一致」プロセスを実行した結果を第2の信頼値と呼ぶ。第1および第2の信頼値は、例えば、ユーザによる利用が認められているか否かを確認するべく、評価部によって処理され得る。
【0012】
例えば、評価部は、第1および第2の信頼値のうち少なくとも1つが第1のしきい値を超えるとドキュメントの機能がアクティブ化されるように構成され得る。評価部はさらに、第1の信頼値または第2の信頼値のいずれも第1のしきい値を超えていない場合には、第1および第2の信頼値が共に第1のしきい値未満の第2のしきい値を超えているか否かを確認するように構成されているとしてよい。これらの条件のうち1つが満たされると、つまり、第1および第2の信頼値のうち少なくとも1つが第1のしきい値を超えている場合、または、第1の信頼値および第2の信頼値の両方が第2のしきい値を超えている場合、ユーザは、身元確認が完了したと見なされ、ドキュメントの機能の利用が承認され、ドキュメントがアクティブ化される。
【0013】
評価部はさらに、第1および第2の信頼値を利用する計算処理の結果が第2のしきい値を超えている場合に機能がアクティブ化されるように構成されているとしてよい。この計算処理は、第1および第2の信頼値を線形結合させる処理であってよい。
【0014】
ドキュメントの機能は、任意のスマートカード機能であってよく、例えば、データを復号化および/または暗号化する暗号機能、具体的には、電子署名を作成する機能や、支払い機能、ドキュメント内の電子メモリにアクセスするデータ格納機能またはデータ読出機能、または、ドキュメントのユーザのデジタル身元証明情報がネットワーク上、特に、インターネット上で利用可能となる任意のその他の機能であってよい。
【0015】
本発明の一実施形態に係るドキュメントは、機密データを格納する電子メモリと、例えば、機密データを出力する光学インターフェースおよび/または無線方式または接触方式のインターフェースとを備える。この場合、ドキュメントの機能は、機密データに対する読出アクセスの実行、および、インターフェースを介した機密データの出力である。評価部は、機密データを保護するべく暗号処理を実行するように構成されており、インターフェースを介して機密データを出力するのに必要な要件は、第1および第2のバイオメトリクスデータが所定の基準を満たすことであり、満たすか否かの確認は評価部によって実行される。
【0016】
例えば、評価部は、いわゆる基本アクセス制御(BAC)プロセスおよび/または拡張アクセス制御(EAC)プロセスを実行するように構成され得る。両プロセスは、国際民間航空機関(ICAO)によって規格化されたプロセスである。
【0017】
本発明の一実施形態によると、第4のドキュメント層は、評価部に接続されている表示デバイスを含む。これによって、評価部は、表示デバイスを制御することができる。表示デバイスのドライバ回路はこのため、評価部の一部として、表示デバイスそのものの一部として、または、別のドキュメント層上に設けられる別の回路として実現されるとしてよい。
【0018】
表示デバイスは、常にエネルギーが供給されていなくても、画像データを表示可能なように構成され得る。このような表示デバイスは、表示すべき画像データが変化する場合にのみ、電気エネルギーを必要とする。この場合、表示デバイスは、例えば、電気泳動ディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、回転素子ディスプレイ、強誘電体ディスプレイ、エレクトロウェッティング効果を利用するディスプレイ等の双安定ディスプレイ、および、例えば、ツイストネマチック型、スーパーツイストネマチック型、コレステリックLCDディスプレイまたはネマチックLCDディスプレイ等の双安定LCDディスプレイである。また、表示デバイスは、さまざまな表示技術を組み合わせたハイブリッドディスプレイであってもよい。
【0019】
さらに、表示デバイスは、例えば、米国特許出願公開公報第2006/0250534 A1号から公知であるように、可撓性のある双安定ディスプレイであってよい。また、例えば、国際公開公報第99/53371号および欧州特許文献第1 715 374 A1号から、双安定電気泳動ディスプレイも公知である。
【0020】
双安定ディスプレイは、「電子ペーパーディスプレイ(EPD)」とも呼ばれる。
【0021】
このような双安定ディスプレイは概して、明るい光の中でも簡単に読むことができ、長期間にわたって同じ画像データを表示する上でエネルギー供給が必要ないという利点がある。
【0022】
表示デバイスは、発光型ディスプレイであってよく、例えば、LEDディスプレイであってよい。特に、無機ディスプレイ、有機ディスプレイ、または、ハイブリッドLEDディスプレイであってよい。このようなディスプレイは、薄膜トランジスタ(TFT)、特に、透明なTFTを利用して実現することができる。これは、例えば、P.Gorrn、P.HoLzer、T.Riedl、W.Kowalsky、J.Wang、T.Weinmann、P.HinzeおよびS.Kipp:「バイアスストレス下での透明な酸化亜鉛スズトランジスタの安定性」、Appl.Phys.Lett.90、063502(2007)、SPIE議事録−第6486号、「発光ダイオード:研究、製造および応用XI」、Klaus P.Streubel、Heonsu Jeon、編集者、64860F(2007年2月13日)、および、透明な非晶質の酸化亜鉛インジウムスズのチャネル層を持つ薄膜トランジスタ、M.S.Grover他、2007、J.Phys.D:Appl.Phys.40 1335−1338から公知である。
【0023】
印刷技術を利用して直接塗布することによってTFTを製造する方法は、国際公開公報第03/098696 A1号から公知である。
【0024】
発光型ディスプレイデバイスは、例えば、米国特許出願公開公報第2002/0079494 A1号および米国特許第6,091,194号から公知であるように、エレクトロルミネセント媒体を利用しても実現することが可能である。発光型ディスプレイの利点は、照明がなくても読むことが出来る点と、色再現が容易に実現できる点にある。
【0025】
双安定ディスプレイおよび発光型ディスプレイは共に、パッシブマトリクス方式またはアクティブマトリクス方式のセグメントディスプレイとして構成され得る。この点については、米国第2006/0240603 A1号を参照されたい。
【0026】
双安定ディスプレイおよび発光型ディスプレイは共に、現在の技術水準から公知であるように、反射型および透過型の実施形態で製造可能である。
【0027】
ドキュメントは、同じドキュメント層または異なるドキュメント層に、1以上の同様の表示デバイスまたは異なる表示デバイスを設けることができる。ドキュメントは、例えば、当該ドキュメントに誘導エネルギーが結合される場合にのみ画像が表示される発光型表示デバイスを備えるとしてよい。ドキュメントはさらに、同じドキュメント層または別のドキュメント層に、電気エネルギーが結合されているか否かに関係なく画像が永続的に表示される双安定表示デバイスを備えるとしてよい。
【0028】
本発明の一実施形態によると、機密データの少なくとも一部は、ドキュメントの表示デバイスから出力され、当該データは、プレーンテキスト形式またはユーザが視覚的および/または認識的に確認できないような形式で光学的に出力される。例えば、表示デバイスから光学機械可読信号を送る。
【0029】
本発明の一実施形態によると、ドキュメントは、体積ホログラムを持つドキュメント層を備える。体積ホログラムは、制御可能な光学レンズ素子を含むのが好ましい。制御可能な光学レンズ素子を含む体積ホログラムは、ドキュメントの電子カメラの光路に配置するとしてよく、体積ホログラムまたは制御可能な光学レンズ素子は、例えば、顔バイオメトリクスデータを収集するために顔写真の撮影または指紋の採取を行う制御に応じて、例えば、接近が可能になるように、評価部によって制御することが可能である。
【0030】
別の実施形態によると、ドキュメント層のうち少なくとも1つは、例えば、グラビア印刷、具体的には、凹版印刷およびグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷(レターセット印刷)、具体的には、間接凸版印刷等の印刷技術を利用して、または、例えば、熱転写印刷、インクジェット印刷またはレーザ印刷等のパーソナライズ処理によって塗布され得る光学セキュリティフィーチャを含む。
【0031】
具体的には、ドキュメントは、以下に記載する光学セキュリティフィーチャのうち1以上を備えるとしてよい。
組みひも飾り(guilloche):組みひも飾りは、いわゆる線形印刷によってドキュメントに印刷される。通常は、波状パターンおよび輪状パターンから成り、それぞれ異なる色で重ね合わせて印刷されている。
極小印刷:最小フォントで印刷されたものである。極小印刷は、裸眼ではほとんど見ることができない。例えば、ユーロ紙幣には、画像の一部として極小印刷がモチーフに組み込まれている。極小印刷は、拡大レンズを用いることで読むことができる。
条件等色:条件等色により同じ色となるので、光のさまざまなスペクトル成分は人間にとって同じ色に見え、光学的に、例えば、カラーフィルタまたは可変光源によって識別可能となる。
蛍光インク、リン光インクおよび/またはアップコンバージョンインクを用いたインプリント
赤外線インクを用いたインプリント:赤外線でのみ検出可能であり、対応するセンサを持つスキャナで検出する。例えば、ユーロ紙幣には、このような光学セキュリティフィーチャが設けられている。
バーコード:具体的には、1次元または2次元の白黒またはカラーのバーコードである。
光可変インク(OVI):OVIを利用すると、見る角度に応じて色が異なって見える。これは、顔料に当たる光が、屈折、散乱または反射するためである。
ホログラムおよびキネグラム(透過型または反射型)
ウォーターマーク
可視的および/または機械可読方式で情報を保持するデジタルウォーターマーク
レジスタ印刷:複数の異なるパターンまたはシンボルを、組み合わせることで一の特定の絵を構成するように、上下または隣接して並べて印刷する。位置が非常にわずかでもずれていれば、つまり、いわゆる重ね合わせ誤差があれば、裸眼でも容易に見ることができる。例えば、紙幣であるドキュメントの異なる面に部分画像がある場合、この光学セキュリティフィーチャは、シースルーレジスタと呼ばれる。
シースルー窓:透明なプラスチック膜で出来た窓がドキュメントに組み込まれている。
混合繊維:UV光が当たると別々の色で光る繊維をドキュメントを形成している紙に混合する。
セキュリティスレッド
極小穿孔