特許第6331100号(P6331100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331100
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ドキュメント
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20180521BHJP
   B42D 25/20 20140101ALI20180521BHJP
   B42D 25/30 20140101ALI20180521BHJP
   G06F 21/32 20130101ALI20180521BHJP
   G06F 21/62 20130101ALI20180521BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G06K19/07 180
   G06K19/07 090
   B42D15/10 200
   B42D15/10 300
   G06F21/32
   G06F21/62 318
   G06K19/077 112
   G06K19/077 144
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-83058(P2015-83058)
(22)【出願日】2015年4月15日
(62)【分割の表示】特願2012-532541(P2012-532541)の分割
【原出願日】2010年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-164051(P2015-164051A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2015年4月15日
【審判番号】不服2016-19480(P2016-19480/J1)
【審判請求日】2016年12月27日
(31)【優先権主張番号】102009045544.2
(32)【優先日】2009年10月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599147447
【氏名又は名称】ブンデスドルケライ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】BUNDESDRUKEREI GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン、ウーリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】パエシュケ、マンフレッド
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー、イエルク
(72)【発明者】
【氏名】クローザ、ジョアキム
【合議体】
【審判長】 千葉 輝久
【審判官】 新川 圭二
【審判官】 山田 正文
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0145972(US,A1)
【文献】 特開2002−230553(JP,A)
【文献】 特開2006−72890(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0148900(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00
G06F 21/00
B42D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層されている複数のドキュメント層から構成されているドキュメント本体を備えるドキュメントであって、
前記複数のドキュメント層のうち第1の層は、評価部を有しており、
前記複数のドキュメント層のうち第2の層は、第1のバイオメトリクスデータを収集するための第1の取得部を有しており、
前記複数のドキュメント層のうち第3の層は、第2のバイオメトリクスデータを収集する第2の取得部を有しており、
前記評価部は、少なくとも前記第1の取得部および前記第2の取得部に接続されていて、前記第1の取得部および前記第2の取得部から少なくとも前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータを受信し、
前記評価部は、前記第1の取得部および前記第2の取得部から供給される前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータについて評価を行って、前記評価の結果に基づいて前記ドキュメントの機能をアクティブ化し、
前記ドキュメントは、
前記第1のバイオメトリクスデータ用の第1の基準データを格納する第1のメモリ領域を備え、
前記第2のバイオメトリクスデータ用の第2の基準データを格納する第2のメモリ領域を備え、
前記評価部は、前記第1の基準データおよび前記第1のバイオメトリクスデータに基づいて第1の信頼値が決定され、前記第2の基準データおよび前記第2のバイオメトリクスデータに基づいて第2の信頼値が決定されるように構成され、
前記評価部は、前記第1の信頼値および前記第2の信頼値が入力される計算処理の結果が第2のしきい値を超えている場合に前記機能がアクティブ化されるように構成されており、
前記ドキュメントの前記第2の層は、前記ドキュメントの前記第1の層の第1の側に配置され、
前記ドキュメントの前記第3の層は、前記ドキュメントの前記第1の層の第2の側に配置され、
前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータは、異なる種類のバイオメトリクスデータであり、
前記複数のドキュメント層のうち少なくとも第4の層は、表示デバイスを有しており、前記評価部が前記表示デバイスを制御できるように、前記表示デバイスは前記評価部に接続されており、
前記第1の取得部は、虹彩スキャンデータ、顔バイオメトリクスデータ又は指紋データを収集する電子カメラとして構成され、前記第2の取得部は、ユーザからバイオメトリクスサンプルを採取するよう構成されており、
前記ドキュメントの前記第3の層及び前記第4の層は、前記ドキュメントの前記第1の層の前記第2の側に配置されている
ドキュメント。
【請求項2】
記第2のバイオメトリクスデータは、伝子データある請求項1に記載のドキュメント。
【請求項3】
前記遺伝子データは、DNA配列データである請求項2に記載のドキュメント。
【請求項4】
前記評価部は、前記第1の信頼値および前記第2の信頼値のうち一方が第1のしきい値を超えると、前記機能がアクティブ化されるように構成されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のドキュメント。
【請求項5】
前記計算処理は、前記第1の信頼値および前記第2の信頼値の線形結合である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のドキュメント。
【請求項6】
機密データを格納する電子メモリと、前記機密データを出力するインターフェースと
を備え、
前記機能は、前記機密データへの読出アクセスの実行であり、
前記評価部は、前記機密データを保護するための暗号処理を実行するように構成され、
前記インターフェースを介して前記機密データを出力するために必要な要件は、前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータが予め定められた基準を満たしていることであり、満たしているか否かは前記評価で確認される請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のドキュメント。
【請求項7】
前記評価部は、前記機能がアクティブ化された後に前記機密データの少なくとも一部を表示するように前記表示デバイスが制御されるように、構成されている請求項6に記載のドキュメント。
【請求項8】
少なくとも前記評価部の電源に電気エネルギーを誘導結合するための手段を備える請求項1から請求項のいずれか一項に記載のドキュメント。
【請求項9】
制御可能な光学レンズ素子を含む体積ホログラムを備えており、
前記体積ホログラムは、前記電子カメラの光路に配設されており、前記体積ホログラムは、前記評価部によって制御される請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のドキュメント。
【請求項10】
前記複数のドキュメント層のうち少なくとも第5の層は、光学セキュリティフィーチャを含む
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のドキュメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドキュメントに関する。特に、高価値のドキュメントまたはセキュリティドキュメント、例えば、身分証明書に関する。
【背景技術】
【0002】
電子集積回路、例えば、いわゆるRFIDチップ等を含むさまざまなドキュメントが、先行技術で公知である。例えば、独国特許文献第10 2005 025 806.9号に開示されている。
【0003】
本発明は、ドキュメントを改良することを目的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、請求項1に記載の特徴によって達成される。本発明の実施形態は、従属項に詳しく記載されている。
【0005】
本発明の実施形態に係るドキュメントは、高価値のドキュメントまたはセキュリティドキュメントであり、例えば、身分証明(ID)カード、パスポート、運転免許証あるいは社員IDカード等のIDドキュメントであるか、または、例えば、銀行券、クレジットカード等の支払い手段であるか、または、例えば、入場券、受託書、査証等の別の信任状である。ドキュメントは、紙および/またはプラスチックで出来ている。具体的には、ドキュメントは、本またはカードとして構成することができる。または、ドキュメントはスマートカードであってよい。
【0006】
本発明の実施形態に係るドキュメントは、積層されている複数のドキュメント層で構成されているドキュメント本体を備える。各ドキュメント層は、プラスチックまたは紙で形成することができる。例えば、各ドキュメント層はそれぞれ、形状およびサイズが略同じであるので、積層することによって、例えば、カード形状のドキュメント本体が形成される。このため、ドキュメント層は、互いに重ねるとしてよい。
【0007】
第1のドキュメント層は、評価部を含む。評価部は、半導体回路であってよく、例えば、シリコンをベースとする電子回路またはポリマーを利用した電子回路として構成されている。例えば、評価部は、第1のドキュメント層の上または内部に配置されるチップによって実現され得る。評価部は、例えば、印刷技術を用いて第1のドキュメント層に塗布されるポリマー製の電子部品によって構成することができる。
【0008】
第2のドキュメント層は、第1のバイオメトリクスデータを収集する第1の取得部を含み、第3のドキュメント層は、第2のバイオメトリクスデータを収集する第2の取得部を含む。第1および第2のバイオメトリクスデータは、異なる種類のバイオメトリクスデータであってよく、例えば、指紋データ、虹彩スキャンデータ、顔バイオメトリクスデータ、遺伝子データ、具体的には、DNA配列データ等であってよい。
【0009】
例えば、第1または第2の取得部は、ユーザの指紋データを収集する指紋センサとして構成されているとしてよく、または、虹彩スキャンデータまたは顔バイオメトリクスデータを収集する電子カメラとして構成されているとしてもよい。例えば、第1または第2の取得部は、ユーザのDNAに対してDNAシークエンシングプロセスを実行するマイクロシステム、具体的には、例えば、皮下サンプルを採取するいわゆるDNAマイクロトータルアナリシスシステム(TAS)として構成することができる。尚、DNAシークエンシングは、ユーザから採取したサンプルを用いて実行され、結果としてバイオメトリクスデータを供給する。
【0010】
本発明の一実施形態によると、評価部は、いわゆる「カード一致」プロセスを実行するように構成されている。このため、ドキュメントは、第1のバイオメトリクスデータに対する第1の基準データを格納する第1のメモリ領域と、第2のバイオメトリクスデータに対する第2の基準データを格納する第2のメモリ領域とを備える。第1の基準データは、第1のバイオメトリクスデータに対して「カード一致」プロセスを実行するために利用され、第2の基準データは、第2のバイオメトリクスデータに対して「カード一致」プロセスを実行するために利用される。「カード一致」プロセスは、いずれの場合も評価部によって実行される。
【0011】
評価部は、第1の基準データおよび第1のバイオメトリクスデータに関して「カード一致」プロセスを実行した結果を第1の信頼値と呼び、第2の基準データおよび第2のバイオメトリクスデータに関する「カード一致」プロセスを実行した結果を第2の信頼値と呼ぶ。第1および第2の信頼値は、例えば、ユーザによる利用が認められているか否かを確認するべく、評価部によって処理され得る。
【0012】
例えば、評価部は、第1および第2の信頼値のうち少なくとも1つが第1のしきい値を超えるとドキュメントの機能がアクティブ化されるように構成され得る。評価部はさらに、第1の信頼値または第2の信頼値のいずれも第1のしきい値を超えていない場合には、第1および第2の信頼値が共に第1のしきい値未満の第2のしきい値を超えているか否かを確認するように構成されているとしてよい。これらの条件のうち1つが満たされると、つまり、第1および第2の信頼値のうち少なくとも1つが第1のしきい値を超えている場合、または、第1の信頼値および第2の信頼値の両方が第2のしきい値を超えている場合、ユーザは、身元確認が完了したと見なされ、ドキュメントの機能の利用が承認され、ドキュメントがアクティブ化される。
【0013】
評価部はさらに、第1および第2の信頼値を利用する計算処理の結果が第2のしきい値を超えている場合に機能がアクティブ化されるように構成されているとしてよい。この計算処理は、第1および第2の信頼値を線形結合させる処理であってよい。
【0014】
ドキュメントの機能は、任意のスマートカード機能であってよく、例えば、データを復号化および/または暗号化する暗号機能、具体的には、電子署名を作成する機能や、支払い機能、ドキュメント内の電子メモリにアクセスするデータ格納機能またはデータ読出機能、または、ドキュメントのユーザのデジタル身元証明情報がネットワーク上、特に、インターネット上で利用可能となる任意のその他の機能であってよい。
【0015】
本発明の一実施形態に係るドキュメントは、機密データを格納する電子メモリと、例えば、機密データを出力する光学インターフェースおよび/または無線方式または接触方式のインターフェースとを備える。この場合、ドキュメントの機能は、機密データに対する読出アクセスの実行、および、インターフェースを介した機密データの出力である。評価部は、機密データを保護するべく暗号処理を実行するように構成されており、インターフェースを介して機密データを出力するのに必要な要件は、第1および第2のバイオメトリクスデータが所定の基準を満たすことであり、満たすか否かの確認は評価部によって実行される。
【0016】
例えば、評価部は、いわゆる基本アクセス制御(BAC)プロセスおよび/または拡張アクセス制御(EAC)プロセスを実行するように構成され得る。両プロセスは、国際民間航空機関(ICAO)によって規格化されたプロセスである。
【0017】
本発明の一実施形態によると、第4のドキュメント層は、評価部に接続されている表示デバイスを含む。これによって、評価部は、表示デバイスを制御することができる。表示デバイスのドライバ回路はこのため、評価部の一部として、表示デバイスそのものの一部として、または、別のドキュメント層上に設けられる別の回路として実現されるとしてよい。
【0018】
表示デバイスは、常にエネルギーが供給されていなくても、画像データを表示可能なように構成され得る。このような表示デバイスは、表示すべき画像データが変化する場合にのみ、電気エネルギーを必要とする。この場合、表示デバイスは、例えば、電気泳動ディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、回転素子ディスプレイ、強誘電体ディスプレイ、エレクトロウェッティング効果を利用するディスプレイ等の双安定ディスプレイ、および、例えば、ツイストネマチック型、スーパーツイストネマチック型、コレステリックLCDディスプレイまたはネマチックLCDディスプレイ等の双安定LCDディスプレイである。また、表示デバイスは、さまざまな表示技術を組み合わせたハイブリッドディスプレイであってもよい。
【0019】
さらに、表示デバイスは、例えば、米国特許出願公開公報第2006/0250534 A1号から公知であるように、可撓性のある双安定ディスプレイであってよい。また、例えば、国際公開公報第99/53371号および欧州特許文献第1 715 374 A1号から、双安定電気泳動ディスプレイも公知である。
【0020】
双安定ディスプレイは、「電子ペーパーディスプレイ(EPD)」とも呼ばれる。
【0021】
このような双安定ディスプレイは概して、明るい光の中でも簡単に読むことができ、長期間にわたって同じ画像データを表示する上でエネルギー供給が必要ないという利点がある。
【0022】
表示デバイスは、発光型ディスプレイであってよく、例えば、LEDディスプレイであってよい。特に、無機ディスプレイ、有機ディスプレイ、または、ハイブリッドLEDディスプレイであってよい。このようなディスプレイは、薄膜トランジスタ(TFT)、特に、透明なTFTを利用して実現することができる。これは、例えば、P.Gorrn、P.HoLzer、T.Riedl、W.Kowalsky、J.Wang、T.Weinmann、P.HinzeおよびS.Kipp:「バイアスストレス下での透明な酸化亜鉛スズトランジスタの安定性」、Appl.Phys.Lett.90、063502(2007)、SPIE議事録−第6486号、「発光ダイオード:研究、製造および応用XI」、Klaus P.Streubel、Heonsu Jeon、編集者、64860F(2007年2月13日)、および、透明な非晶質の酸化亜鉛インジウムスズのチャネル層を持つ薄膜トランジスタ、M.S.Grover他、2007、J.Phys.D:Appl.Phys.40 1335−1338から公知である。
【0023】
印刷技術を利用して直接塗布することによってTFTを製造する方法は、国際公開公報第03/098696 A1号から公知である。
【0024】
発光型ディスプレイデバイスは、例えば、米国特許出願公開公報第2002/0079494 A1号および米国特許第6,091,194号から公知であるように、エレクトロルミネセント媒体を利用しても実現することが可能である。発光型ディスプレイの利点は、照明がなくても読むことが出来る点と、色再現が容易に実現できる点にある。
【0025】
双安定ディスプレイおよび発光型ディスプレイは共に、パッシブマトリクス方式またはアクティブマトリクス方式のセグメントディスプレイとして構成され得る。この点については、米国第2006/0240603 A1号を参照されたい。
【0026】
双安定ディスプレイおよび発光型ディスプレイは共に、現在の技術水準から公知であるように、反射型および透過型の実施形態で製造可能である。
【0027】
ドキュメントは、同じドキュメント層または異なるドキュメント層に、1以上の同様の表示デバイスまたは異なる表示デバイスを設けることができる。ドキュメントは、例えば、当該ドキュメントに誘導エネルギーが結合される場合にのみ画像が表示される発光型表示デバイスを備えるとしてよい。ドキュメントはさらに、同じドキュメント層または別のドキュメント層に、電気エネルギーが結合されているか否かに関係なく画像が永続的に表示される双安定表示デバイスを備えるとしてよい。
【0028】
本発明の一実施形態によると、機密データの少なくとも一部は、ドキュメントの表示デバイスから出力され、当該データは、プレーンテキスト形式またはユーザが視覚的および/または認識的に確認できないような形式で光学的に出力される。例えば、表示デバイスから光学機械可読信号を送る。
【0029】
本発明の一実施形態によると、ドキュメントは、体積ホログラムを持つドキュメント層を備える。体積ホログラムは、制御可能な光学レンズ素子を含むのが好ましい。制御可能な光学レンズ素子を含む体積ホログラムは、ドキュメントの電子カメラの光路に配置するとしてよく、体積ホログラムまたは制御可能な光学レンズ素子は、例えば、顔バイオメトリクスデータを収集するために顔写真の撮影または指紋の採取を行う制御に応じて、例えば、接近が可能になるように、評価部によって制御することが可能である。
【0030】
別の実施形態によると、ドキュメント層のうち少なくとも1つは、例えば、グラビア印刷、具体的には、凹版印刷およびグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷(レターセット印刷)、具体的には、間接凸版印刷等の印刷技術を利用して、または、例えば、熱転写印刷、インクジェット印刷またはレーザ印刷等のパーソナライズ処理によって塗布され得る光学セキュリティフィーチャを含む。
【0031】
具体的には、ドキュメントは、以下に記載する光学セキュリティフィーチャのうち1以上を備えるとしてよい。
組みひも飾り(guilloche):組みひも飾りは、いわゆる線形印刷によってドキュメントに印刷される。通常は、波状パターンおよび輪状パターンから成り、それぞれ異なる色で重ね合わせて印刷されている。
極小印刷:最小フォントで印刷されたものである。極小印刷は、裸眼ではほとんど見ることができない。例えば、ユーロ紙幣には、画像の一部として極小印刷がモチーフに組み込まれている。極小印刷は、拡大レンズを用いることで読むことができる。
条件等色:条件等色により同じ色となるので、光のさまざまなスペクトル成分は人間にとって同じ色に見え、光学的に、例えば、カラーフィルタまたは可変光源によって識別可能となる。
蛍光インク、リン光インクおよび/またはアップコンバージョンインクを用いたインプリント
赤外線インクを用いたインプリント:赤外線でのみ検出可能であり、対応するセンサを持つスキャナで検出する。例えば、ユーロ紙幣には、このような光学セキュリティフィーチャが設けられている。
バーコード:具体的には、1次元または2次元の白黒またはカラーのバーコードである。
光可変インク(OVI):OVIを利用すると、見る角度に応じて色が異なって見える。これは、顔料に当たる光が、屈折、散乱または反射するためである。
ホログラムおよびキネグラム(透過型または反射型)
ウォーターマーク
可視的および/または機械可読方式で情報を保持するデジタルウォーターマーク
レジスタ印刷:複数の異なるパターンまたはシンボルを、組み合わせることで一の特定の絵を構成するように、上下または隣接して並べて印刷する。位置が非常にわずかでもずれていれば、つまり、いわゆる重ね合わせ誤差があれば、裸眼でも容易に見ることができる。例えば、紙幣であるドキュメントの異なる面に部分画像がある場合、この光学セキュリティフィーチャは、シースルーレジスタと呼ばれる。
シースルー窓:透明なプラスチック膜で出来た窓がドキュメントに組み込まれている。
混合繊維:UV光が当たると別々の色で光る繊維をドキュメントを形成している紙に混合する。
セキュリティスレッド
極小穿孔
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の実施形態を図面を参照しつつより詳細に後述する。図面は以下の通りである。
図1】本発明に係るドキュメントの実施形態を示す展開ブロック図である。
図2図1に係るドキュメントを示す側面図である。
図3】本発明に係るドキュメントの別の実施形態を示す展開図である。 以下で説明する各実施形態の構成要素は、互いに対応する場合、同じ参照符号を用いて示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明に係るドキュメント100の実施形態を示す展開図である。同図に示す実施形態では、ドキュメント100は、少なくとも3つのドキュメント層、つまり、ドキュメント層104、106、および108で構成されているドキュメント本体102(図2を参照のこと)を備える。
【0034】
ドキュメント層104は、第1のバイオメトリクスデータを収集する取得部110を含む。例えば、取得部110は、DNAシークエンシングプロセスを実行するマイクロシステムであり、ユーザからサンプルを採取するように構成されており、具体的には、皮下組織のサンプルを採取するように構成されている。具体的には、取得部110は、いわゆるDNAマイクロトータルアナリシスシステム(TAS)として構成されているとしてよい。取得部110が収集するバイオメトリクスデータは、ドキュメント100のユーザのDNAシーケンスであり、当該ユーザからサンプルを予め採取している。
【0035】
取得部110は、ドキュメント層106に設けられているドキュメント100の電子回路に、例えば、ドキュメント本体102を垂直方向に貫通しているいわゆるビア112によって、接続されている。取得部110によって収集されたバイオメトリクスデータは、ビアを介して、電子回路の評価モジュール114に送信され、評価モジュール114によって評価される。ドキュメント層106の電子回路はさらに、ドキュメント100の機能を実行する機能モジュール116を備え、機能を実行する必要条件は、機能モジュール116が評価モジュール114によってアクティブ化されることである。
【0036】
ドキュメント層106の電子回路はさらに、少なくとも1つの電子メモリ118および通信インターフェース120を含む。
【0037】
図1に示す実施形態とは別に、評価モジュール114、機能モジュール116、メモリ118および通信インターフェース120は、一部または全体が、ドキュメント100が備える複数の異なるドキュメント層に配設されるとしてよく、例えば、別のビアを介して互いにやり取りを行うことができるとしてよい。
【0038】
メモリ118は、取得部110が供給するバイオメトリクスデータに対する第1の基準データを格納する第1のメモリ領域と、取得部122が供給するバイオメトリクスデータに対する第2の基準データを格納する第2のメモリ領域とを有するとしてよい。
【0039】
通信インターフェース120は、例えば、LEDまたは表示デバイス等の光インターフェース、例えば、接触方式のスマートカードインターフェース等の接触方式インターフェース、例えば、RFIDインターフェース等の非接触方式のインターフェース、または、接触方式および非接触方式での通信がどちらも可能であるいわゆる二重モードインターフェースであってよい。
【0040】
例えば、通信インターフェース120は、RFID通信プロセスを実行するように構成されている。通信インターフェース120は、例えば、外部スキャンデバイス(不図示)との間で通信を行うと共に、電気エネルギーをドキュメント100に結合するためにも利用することができ、具体的には、誘導磁場による誘導結合を実現して、ドキュメントの電子回路およびその他の能動素子、例えば、取得部110および122に電気エネルギーを供給する。
【0041】
取得部122は、ドキュメント層108に配設されており、ビア124によって評価モジュール114に接続されている。取得部122は、ビア124を用いて、バイオメトリクスデータを評価部114に入力して、評価部114でこのバイオメトリクスデータを評価させる。例えば、取得部122は、電子カメラとして構成されており、具体的には、CMOS技術を用いて製造される能動ピクセルセンサ(APS)または電荷結合素子(CCD)アレイとして構成されており、ドキュメント100のユーザから1以上のバイオメトリクスフィーチャ、例えば、顔バイオメトリクスデータを収集する。
【0042】
評価モジュール114は、取得部110および122が供給するバイオメトリクスデータを評価して、評価結果に応じて機能モジュール116をアクティブ化するように構成されている。アクティブ化は、評価モジュール114がアクティブ化信号を生成することによって行われる。バイオメトリクスデータの評価結果が所定の基準を満たしていれば、アクティブ化信号によってスイッチング処理が開始されて、機能モジュール116がアクティブ化され、対応する機能を実行する。
【0043】
バイオメトリクスデータの評価は、例えば、評価モジュール114によって以下の手順で行われる。取得部110から供給されるバイオメトリクスデータ、および、取得部122から供給されるバイオメトリクスデータのそれぞれについて、メモリ118に格納されている第1の基準データおよび第2の基準データを利用して、「カード一致」プロセスを実行して、収集されたバイオメトリクスデータが対応する基準データと十分に対応しているか否かを確認する。この結果、取得部110から供給されたバイオメトリクスデータについて第1の信頼値が供給され、取得部122から供給されたバイオメトリクスデータについて第2の信頼値が供給される。第1および第2の信頼値はそれぞれ、対応するバイオメトリクスフィーチャの検出元であるユーザが、メモリ118に格納されている基準データに対応付けられているユーザと同じである確率を示す。
【0044】
評価モジュールは、第1および第2の信頼値のうち少なくとも1つが第1のしきい値を超える場合に、機能モジュール116に対するアクティブ化信号が生成されるように構成され得る。評価モジュール114はさらに、上記の条件が満たされない場合には、第1および第2の信頼値が共に、第1のしきい値未満の第2のしきい値を超えるか否かを確認するように構成され得る。例えば、第1のしきい値を99%として、第2のしきい値を80%とするとしてよい。
【0045】
このような構成とすることによって、例えば、ユーザのバイオメトリクスフィーチャのいずれか1つが一時的に高品質では取得できない場合にも機能モジュール116をアクティブ化できるという利点が得られる。これは、取得部122が指紋データを収集するように構成されていて、ユーザが指に負傷している場合が一例として挙げられる。この場合、取得部110が供給するバイオメトリクスデータの信頼値が高ければ、ユーザはドキュメント100を利用することができる。
【0046】
本発明の一実施形態によると、機密データは電子メモリ118に格納されている。機密データは、例えば、ドキュメントのユーザについての個人情報、例えば、関連する所定条件が満たされた場合にのみ影響を受ける、名前、アドレス、住所等であってよい。
【0047】
このような読出アクセスおよびインターフェース120を介した機密データの出力についての必要条件は、取得部110および122が供給するバイオメトリクスデータの評価によって得られる複数の信頼値のうち少なくとも1つが、第1のしきい値を超えているか、または、超えていない場合には、両方の信頼値が第2のしきい値を超えていることである。この要件が満たされている場合、評価モジュール114は、機能モジュール116についてのアクティブ化信号を生成して、機能モジュール116は、メモリ118から機密データの少なくとも一部を読み出して、例えば、インターフェース120を介して外部スキャンデバイスに出力する。
【0048】
機密データの出力に際して満たす必要がある別の要件は、例えば、BACプロセスおよび/またはEACプロセスの実行であるとしてよい。
【0049】
図2は、図1に示すドキュメント100の側面図であり、ドキュメント100は、図1に示した3つのドキュメント層104、106および108に加えて、さらにドキュメント層を備えることができる。
【0050】
図3は、本発明に係るドキュメント100の別の実施形態を示す図である。ドキュメント層104、106および108と同様に(図1および図2の実施形態を参照のこと)、当該実施形態に係るドキュメントは、ドキュメント層126、128、130および132をさらに備える。
【0051】
ドキュメント層126は、1以上の光学セキュリティフィーチャを有しており、印刷技術を利用して生成することができる。具体的には、ドキュメント層126は、個人情報を保持することができる。
【0052】
ドキュメント層128は、例えば、透明OLED表示デバイスおよび/またはタッチパッド等の表示デバイスを有するとしてよく、具体的には、同時に2本以上の指を検出可能ないわゆるマルチタッチパッド、および/または、例えば、指紋センサ等の、バイオメトリクスフィーチャを検出する別の取得部を有する。タッチパッドによってマニピュランダムが提供され、ユーザは、タッチパッドを利用することで、例えば、表示デバイス上に表示されている画像群を操作するべくドキュメント100にコマンドを入力することができる。
【0053】
ドキュメント層130は、例えば、双安定表示デバイス、具体的には、いわゆる電子ペーパーとして構成されている別の表示デバイスを有するとしてよい。
【0054】
ドキュメント層104は、例えば、図1の実施形態と同様に構成されているとしてよく、つまり、ドキュメント層104の取得部110が、例えば、皮下組織のサンプルを採取するDNAマイクロTASとして構成されているとしてよい。
【0055】
ドキュメント層106は、図1の実施形態と同様に構成されているとしてよく、つまり、当該ドキュメント層は、例えば、さまざまな取得部から供給されるバイオメトリクスデータの評価を実行するべく、機能をアクティブ化して実行するべく、そして、ドキュメント100のさまざまな表示デバイスおよびスキャナ等の通信インターフェースを制御するべく、プロセッサまたは任意のその他の論理回路等の電子回路を含むとしてよい。
【0056】
ドキュメント層108は、図1の実施形態と同様に構成されているとしてよく、つまり、取得部110は、例えば、カメラチップ等の電子カメラとして構成されているとしてよい。また、電力管理用の電子回路をドキュメント層108に配置するとしてもよく、具体的には、エネルギーの誘導結合に起因して発生する高電圧からドキュメント層106の電子回路を保護するために設けるとしてもよい。電力管理用の電子回路は、具体的には、ドキュメント層106の電子回路を高電圧から保護するための回路を含むとしてよい。
【0057】
ドキュメント層108の下方に配置されているドキュメント層132は、制御可能な光学レンズ素子を含む体積ホログラムを有するとしてよく、ドキュメント層106の電子回路のレンズ素子は、制御可能である。体積ホログラムは、カメラチップの前方に配置されるとしてよく、カメラの光学特性は光学素子を制御することによって変更させることができ、例えば、顔バイオメトリクスデータを収集するべく顔写真の撮影または指紋の採取を行うように接近させるとしてよい。
【符号の説明】
【0058】
100:ドキュメント、102:ドキュメント本体、104:ドキュメント層、106:ドキュメント層、108:ドキュメント層、110:取得部、112:ビア、114:評価モジュール、116:機能モジュール、118:メモリ、120:通信インターフェース、122:取得部、124:ビア、126:ドキュメント層、128:ドキュメント層、130:ドキュメント層、132:ドキュメント層
図1
図2
図3