【実施例1】
【0019】
本実施例の電気集塵システム1aの構造と、その動作について
図1〜
図5を参照しながら説明する。
図1(a)及び
図1(b)に示すように、電気集塵システム1aは、荷電不良の発生を検出する検出手段2aを備えた電気集塵器2と、発電機10の出力の上限値を設定することでボイラ11における煤塵の発生を抑制する煤塵発生抑制装置3によって構成されている。
煤塵発生抑制装置3は、電気集塵器2の運転条件等に関する情報を入力するための入力手段5と、負荷抑制値(発電機10の出力の適正な上限値)を算出する演算手段6と、検出手段2aや入力手段5から受け取った情報を演算手段6に送る制御手段4と、負荷抑制値を発電機10の出力の上限値として設定する負荷制御手段7と、負荷抑制値の演算に必要な情報等を記憶する記憶手段8と、演算手段6による演算結果等を画面に表示したり、印刷したりするなど視覚によって確認できる状態に変換する出力手段9を備えている。なお、入力手段5、演算手段6、負荷制御手段7、記憶手段8及び出力手段9は制御手段4によって、その動作を制御されている。
【0020】
図1(b)及び
図1(c)に示すように、発電機10に接続された蒸気タービンに使用される蒸気はボイラ11から供給される。ボイラ11において蒸気を発生させる過程で生じた排煙は脱硝装置(図示せず)で有害ガスが除去された後、電気集塵器2に送り込まれる。そして、電気集塵器2の内部において、この排煙は2系統(以下、それぞれA系統及びB系統という。)に分岐し、放電極12によって煤塵にマイナスイオンが付着された後、この煤塵が集塵極(図示せず)で捕集され、最終的に煙突13から大気中に排出される。
【0021】
A系統とB系統は、煤塵の流れに対して上流側及び下流側となる箇所にそれぞれ対をなすように区画が4個ずつ形成されており、各区画内には放電極12や断路器14からなる荷電回路が配置されている。なお、断路器14がON状態の場合、放電極12に対し断路器14を介して整流器15から高圧直流電流が供給されるが、放電極12に煤塵が付着するなどして短絡すると、断路器14がOFF状態に切り替わって整流器15から放電極12への電力の供給が遮断される。
検出手段2aは、OFF状態になった断路器14の位置を検出すると、荷電不良が発生したことを示すOFF信号を発生させる。そして、このOFF信号は、検出された断路器14の位置情報とともに、制御手段4に送られる。
【0022】
図2(a)に示すように、電気集塵器2の内部に形成された区画にはそれぞれA1〜A4及びB1〜B4の記号が付されている。また、上流側入口と下流側出口には手動若しくは自動で開度が調整されるダンパ(図示せず)が各区画に対応するようにそれぞれ設置されており、1区画あたり20列の集塵極(図示せず)が上流側と下流側にそれぞれ9枚ずつ設置されている。なお、上流側と下流側で連続して荷電不良が発生した場合、荷電不良が解消されるまで、その箇所のダンパは全閉状態にされる。
【0023】
一般に、電気集塵器2の集塵効率ηはダストの移動速度をω、単位ガスあたりの集塵面積をfとすると、次の式(1)(ドイチェの式)で表わされる。本実施例の場合、集塵極が上流側と下流側に1/2ずつ設置されているため、単位ガスあたりの集塵面積はf/2となる。したがって、式(1)における集塵効率(計画効率)ηを91%とすると、全てのダンパが全開状態の場合には、上流側の集塵効率η
1と下流側の集塵効率η
2は次の式(2)に示すように、いずれも70%となる。
【0024】
【数1】
【0025】
【数2】
【0026】
さらに、上流側又は下流側のいずれか一方のN区画(本実施例ではA1〜A4及びB1〜B4の8区画)のうちのn
a区画(ただし、n
a≦8)で荷電不良が発生したとすると、上流側及び下流側の集塵効率η
1及びη
2は次の式(3)で表わされる。
【0027】
【数3】
【0028】
ここで、電気集塵器2の入口煤塵量をW
inとすると、電気集塵器2の出口煤塵量W
outは次の式(4)で表される。このとき、全体の集塵効率η
12は式(5)で表されることから、η
1及びη
2とη
12の間には式(6)の関係が成り立つ。ただし、式(6)において、上流側の集塵効率η
1と下流側の集塵効率η
2のうち、荷電不良が発生していない方の集塵効率は式(2)で示したη
0(=0.7)となる。また、下流側出口においてn
c箇所のダンパが全閉状態の場合、下流側の集塵効率η
2は式(3)ではなく、式(7)で表わされる。なお、式(7)では、上流側から流れてきた排煙が、ダンパが全閉状態となっているn
c区画を除く他の区画内へ均等に分配されることを前提としている。
【0029】
【数4】
【0030】
【数5】
【0031】
【数6】
【0032】
【数7】
【0033】
さらに、煙突出口における煤塵量の目標値をW
Pとすると、電気集塵器2の出口煤塵量W
outは式(8)に示すようにW
P以下でなければならない。したがって、電気集塵器2の入口煤塵量W
inが発電機6の出力に比例する場合、負荷抑制値Pは発電機10の出力の上限値P
0を用いると、式(9)のように表わされる。
【0034】
【数8】
【0035】
【数9】
【0036】
負荷抑制値Pの計算方法について、
図2(b)及び
図2(c)と表1及び表2を用いて具体的に説明する。なお、
図2(b)のハッチングは、上流側のA1〜A3で荷電不良が発生した状態を示し、
図2(c)のハッチングはB1の下流側出口のダンパが全閉状態であることを示している。
表1は、
図2(b)に示すように上流側のA1〜A3のうちの少なくともいずれかにおいて荷電不良が発生した場合について、式(2),(3),(6)を用いて集塵効率η
1、η
2、η
12及び電気集塵器2の出口煤塵量W
outを計算した結果である。ここで、n
aは1〜3、n
cは1であり、電気集塵器2の入口煤塵量W
inは発電機10の出力の上限値P
0が500(MW)のときに93(mg/m
3N)であり、煙突出口煤塵量の目標値W
Pは17(mg/m
3N)である。なお、下流側のA1〜A3のうちの少なくともいずれかの区画において荷電不良が発生した場合も表1と同様の結果となる。
【0037】
【表1】
【0038】
表2は、表1の条件に加え、下流側のB1の出口ダンパを全閉状態にした場合について、式(2),(3),(6)〜(9)を用いて集塵効率η
1、η
2、η
12、電気集塵器2の出口煤塵量W
out及び負荷抑制値Pを計算した結果である。
表1及び表2から、荷電不良が上流側と下流側で連続することなく、2区画以上で発生した場合には、負荷抑制値を500(MW)よりも小さく設定しなければならないことがわかる。
【0039】
【表2】
【0040】
次に、上流側及び下流側の区画において連続して荷電不良が発生した場合について検討する。
まず、上流側又は下流側のいずれか一方のN区画(本実施例ではA1〜A4及びB1〜B4の8区画)のうちのn
a区画(ただし、n
a≦8)で荷電不良が発生した場合、電気集塵器2の出口煤塵量W
outは、それぞれの区画ごとにおける出口煤塵量の合計となるため、次の式(10)で表わされる。なお、荷電不良が上流側と下流側の区画において連続することなく、荷電不良が発生した区画数の合計がn
aの場合も、その電気集塵器2の出口煤塵量W
outは式(10)を用いて同様に求められる。
表3及び表4は
図2(b)及び
図3(a)で示した場合について、Nを8、n
aを3として式(10)に基づいて電気集塵器2の出口煤塵量W
outを求めた結果である。これらの表から、式(10)を用いて求めた電気集塵器2の出口煤塵量W
outは15.69(mg)であり、表2においてn
aを3とした場合の結果と一致していることがわかる。
すなわち、
図3(a)に示すように、荷電不良が上流側と下流側で連続することなく、合計3区画で荷電不良が発生した場合、電気集塵器2の出口煤塵量W
outは
図2(b)の場合と同様の結果となる。
【0041】
【数10】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
一方、荷電不良がn
a区画(ただし、n
a≦16)で発生し、かつ、上流側と下流側のn
b箇所(ただし、n
b≦8)で荷電不良が連続して発生している場合、電気集塵器2の出口煤塵量W
out2は次の式(11)で表される。なお、式(11)と式(10)を比較することにより、W
out2とW
outの間には次の式(12)で表わす関係があることがわかる。このとき、W
out2は煙突出口煤塵量の目標値W
P以下でなければならないため、負荷抑制値Pは式(9)ではなく、次の式(13)で表わされる。
【0045】
【数11】
【0046】
【数12】
【0047】
【数13】
【0048】
【表5】
【0049】
ここで、電気集塵システム1aの動作について、
図4及び
図5を用いて説明する。
図4(a)は電気集塵システム1aの機能を説明するためのブロック図であり、
図4(b)は電気集塵システム1aの動作手順を示すフローチャートである。また、
図5は演算手段6においてなされる演算のアルゴリズムを示すフローチャートである。なお、
図1に示した構成要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0050】
図4(a)に示すように、まず、本システムの利用者が入力手段5を用いて、電気集塵器2の運転条件に関する情報として、区画数N、集塵効率η
0、煙突出口煤塵量の目標値W
P、電気集塵器2の入口煤塵量W
in及び発電機10の出力の上限値P
0を発電機出力抑制装置3に入力すると(矢印A)、制御手段4は、これらの情報を記憶手段8に送って記憶させる(矢印B)。
次に、
図4(b)に示すように、電気集塵器2に荷電不良が発生すると、検出手段2aはOFF状態となった断路器14を検出してOFF信号を発生させ(ステップS10)、OFF状態の断路器14の位置を示す情報とOFF信号を制御手段4に送る(矢印C)。OFF信号を受け取った制御手段4は、記憶手段8から電気集塵器2の運転条件に関する情報を読み出して(矢印D)、この情報を断路器14の位置情報とともに演算手段6に送り(矢印E)、演算手段6に負荷抑制値の演算をさせる(ステップS20)。
【0051】
演算手段6は、制御手段4から受け取った情報に基づいて負荷抑制値Pを計算する(ステップS30〜ステップS39)。
ここで、演算手段6による負荷抑制値Pの演算方法について、Nを8として、
図5を用いて具体的に説明する。なお、BL(i,j)は、上流側(i=1)と下流側(i=2)においてj番目の区画内に設置された断路器14がON状態(0)とOFF状態(1)のいずれの状態にあるかを示すものである。例えば、上流側においてB2の区画内に設置された断路器14がOFF状態の場合、BL(1,6)の値は1となり、下流側においてA3の区画内に設置された断路器14がON状態の場合、BL(2,3)の値は0となる。
【0052】
まず、ステップS30では、制御手段4から受け取った「OFF状態の断路器14の位置情報」に基づいて、BL(i,j)(i=1〜2、j=1〜N)に0又は1が代入される。このとき、n
a,n
bの値は0、i,jの値は1とする。
ステップS31では、BL(i,j)の値が1であるとき、すなわち、上流側又は下流側においてj番目の断路器14がOFF状態であると演算手段6が判断すると、ステップS32に進み、BL(i,j)の値が1でないとき、すなわち、上流側又は下流側においてj番目の断路器14がON状態であると演算手段6が判断すると、ステップS35に進む。
【0053】
ステップS32では、iの値が2であり、かつ、BL(1,j)の値が1であるとき、すなわち、下流側においてj番目の断路器14がOFF状態であると演算手段6が判断すると、j番目の断路器14が上流側と下流側で連続してOFF状態になっているとして、ステップS33において、n
bの値を1増やし、さらに、ステップS34において、n
aの値を1増やした後、ステップS35に進む。これに対し、ステップS32において、iの値が2でないか、又はBL(1,j)の値が1でないとき、すなわち、j番目の断路器14はOFF状態であるが、それが上流側と下流側において連続しているのではないと演算手段6が判断すると、ステップS34において、n
aの値を1増やした後、ステップS35に進む。
【0054】
ステップS35では、jの値を1増やし、ステップS36において、jの値がNよりも小さければ、ステップS31に戻り、jの値がN以上であれば、ステップS37に進む。さらに、ステップS37では、jの値を1に戻すとともにiの値を1増やし、ステップS38において、iの値が2よりも小さければ、ステップS31に戻り、ステップS38において、iの値が2以上であれば、ステップS39に進む。
すなわち、ステップS31〜ステップS38では、上流側(i=1)と下流側(i=2)において1番目からN番目までの断路器14それぞれについて、ON状態であるかOFF状態であるかを判断し、OFF状態となった断路器14の数の合計(n
a)と、上流側と下流側で連続してOFF状態となっている場合の数(n
b)をカウントしているのである。
このようにして求められたn
a,n
bを用いることで、ステップS39では、式(11)に基づいて電気集塵器2の出口煤塵量W
out2が求められ、さらに、式(13)に基づいて負荷抑制値Pが求められる。
【0055】
このようにして求められた負荷抑制値Pは、演算手段6から制御手段4に送られた後(矢印F)、制御手段4から負荷制御手段7に送られる(矢印G)。ステップS40では、負荷抑制値Pが負荷制御手段7から発電機10に送られ(矢印H)、発電機10の出力の上限値がPに設定される。
なお、演算手段6による演算結果は制御手段4を介して、記憶手段8に記憶されるとともに、記憶手段8に記憶された他の情報とともに適宜、出力手段9から出力される(矢印I)。
【0056】
以上説明したように、電気集塵システム1aでは、荷電不良の発生した箇所が検出手段2aの検出結果に基づいて特定され、式(11)を用いて電気集塵器2の出口煤塵量が計算される。すなわち、本発明の電気集塵システム1aにおいては、演算手段6が荷電不良の影響を考慮して電気集塵器2の集塵効率を見積もる構成となっているため、放電極に荷電不良が発生した場合でも、電気集塵器2の出口煤塵量が正確に予測される。
さらに、電気集塵器2の出口煤塵量の計算結果に基づいて式(13)から負荷抑制値が簡単かつ正確に求められる。そして、この負荷抑制値が発電機10の出力の上限値として設定されることから、本発明の電気集塵システム1aによれば、発電機10の発電効率を必要以上に低下させることなく、ボイラ11における煤塵の発生を適切に抑制し、煙突出口における煤塵量を常に規制値以下に抑えることができる。
【実施例2】
【0057】
上流側入口のダンパの開度が異なる場合に負荷抑制値Pを求める手順について
図3及び
図6を参照しながら説明する。なお、
図3及び
図6は電気集塵器2の一部を拡大した模式図である。
図6に示した電気集塵器2において、2N区画のうちの数箇所で荷電不良が発生すると、電気集塵器2の出口煤塵量W
out3は、荷電不良の発生箇所が上流側と下流側で連続しているか否かに関わらず、N区画の上流側入口にそれぞれ分配される排煙の割合をα
k(k≦N)として、次の式(14)で表わされる。
このとき、W
out3は煙突出口煤塵量の目標値W
P以下でなければならないことから、負荷抑制値Pは式(13)ではなく、次の式(15)で表わされる。なお、式(14)において、荷電不良が発生していないkに対するη
k1やη
k2の値は0.7であり、荷電不良が発生しているkに対するη
k1やη
k2の値は0である。
【0058】
【数14】
【0059】
【数15】
【0060】
図6(a)に示すように、上流側入口のダンパの開度がA1〜A1で90度、B1で0度、B2で50度、B3及びB4で60度である場合、排煙は
図6(b)に示すように各区画へ分配される。ただし、ダンパを通過する排煙の割合は0度及び90度のときをそれぞれ0%及び100%としてダンパの開度に比例するものとする。すなわち、各区画へ分配される排煙の割合α
kの値は、例えば、A1〜A4であれば、0.17(=100%/590%)となる。
【0061】
表6にA1〜B4の各区画への排煙の分配率とk及びα
kの値を示す。また、表7及び表8に、
図3(a)及び
図3(b)で示した場合について、式(14)に基づいて求めた電気集塵器2の出口煤塵量W
out3を示す。
表7及び表8を見ると、
図3(a)及び
図3(b)の場合の電気集塵器2の出口煤塵量W
out3はそれぞれ18.33(mg)及び26.08(mg)であり、両者の差は7.75(mg)となっている。
このようにして求めたW
out3から式(15)に基づいて、
図3(a)及び
図3(b)の場合の負荷抑制値Pを算出すると、それぞれ464(MW)及び326(MW)となる。
すなわち、排煙の分配量の多い箇所において上流側と下流側で連続して荷電不良が発生すると、電気集塵器2の集塵性能が著しく低下するため、それに応じて負荷抑制値も大きくなることがわかる。
【0062】
【表6】
【0063】
【表7】
【0064】
【表8】
【0065】
既に述べたように、本実施例の電気集塵システム1bは、各区画に対して排煙が均等に分配されない場合に適した構造となっている。以下、電気集塵システム1bの構造と、その動作について
図7及び
図8を参照しながら説明する。
図7(a)及び
図7(b)はそれぞれ電気集塵システム1bの機能を説明するためのブロック図及びその動作手順を示すフローチャートである。また、
図8は電気集塵システム1bの演算手段6においてなされる演算のアルゴリズムを示すフローチャートである。
図7(a)に示すように、本実施例の電気集塵システム1bは、実施例1の電気集塵システム1aにおいて、ダンパの開度を検出する検出手段2bを備えた構造となっている。そして、検出手段2bが検出したダンパの開度に基づいて、演算手段6が、電気集塵器2の各区画に分配される排煙の割合を計算することを特徴とする。
【0066】
まず、本システムの利用者が入力手段5を用いて、電気集塵器2の運転条件に関する情報として、区画数N、集塵効率η
0、煙突出口煤塵量の目標値W
P、電気集塵器2の入口煤塵量W
in及び発電機10の出力の上限値P
0を発電機出力抑制装置3に入力すると(矢印A)、制御手段4は、これらの情報を記憶手段8に送って記憶させる(矢印B)。
次に、
図7(b)に示すように、電気集塵器2に荷電不良が発生すると、検出手段2aはOFF状態となった断路器14を検出してOFF信号を発生させるとともに、検出手段2bがダンパの開度を検出し(ステップS10)、OFF状態の断路器14の位置を示す情報とOFF信号及びダンパの開度に関する情報を制御手段4に送る(矢印C)。OFF信号を受け取った制御手段4は、記憶手段8から電気集塵器2の運転条件に関する情報を読み出して(矢印D)、この情報を断路器14の位置情報とダンパの開度に関する情報とともに演算手段6に送り(矢印E)、演算手段6に負荷抑制値の演算をさせる(ステップS20)。
【0067】
演算手段6は、検出手段2bによって検出されたダンパの開度に関する情報に基づいて各区画に分配される排煙の割合α
k(k≦N)を計算した後、検出手段2aによって検出されたOFF状態の断路器14の位置情報に基づいて負荷抑制値Pを計算する(ステップS30〜ステップS39)。
ここで、演算手段6によって負荷抑制値Pが算出される手法について
図8を用いて具体的に説明する。
【0068】
まず、ステップS30では、上述したように、制御手段4から受け取った「ダンパの開度に関する情報」に基づいてα
kが計算され、AL(j)(j=1〜N)にそれぞれ代入される。
ステップS31では、制御手段4から受け取った「OFF状態の断路器14の位置情報」に基づいてBL(i,j)(i=1〜2、j=1〜N)に0又は1がそれぞれ代入され、EK(i)(i=1〜2)にη
0が代入される。このとき、W
out3の値は0とし、i,jの値は1とする。
【0069】
ステップS32では、BL(i,j)の値が1であるとき、すなわち、上流側又は下流側においてj番目の断路器14がOFF状態であると演算手段6が判断すると、ステップS33においてEK(i)の値を0にした後、ステップS34に進む。一方、BL(i,j)が1でないとき、すなわち、上流側又は下流側においてj番目の断路器14がON状態であると演算手段6が判断すると、ステップS33を迂回してステップS34に進む。
ステップS34では、iの値を1増やし、ステップS35において、iの値が2よりも小さければ、ステップS32に戻り、iの値が2以上であれば、ステップS36に進む。
【0070】
このようにして求められたEK(1)及びEK(2)を用いて、ステップS36では、式(14)においてkが1の場合について計算を行う。その後、ステップS37において、iの値を1に戻し、EK(1)及びEK(2)の値をη
0として、jの値を1増やす。ステップS38では、jの値がNよりも小さければ、ステップS32に戻り、jの値がN以上であれば、ステップS39に進む。このように、ステップS32〜ステップS36をN回繰り返すと、式(14)においてkが1からNまでの場合について計算が行われることになり、電気集塵器2の出口煤塵量W
out3が求められる。
このようにして求められたW
out3を用いることで、ステップS39では、式(15)に基づいて負荷抑制値Pが求められる。
【0071】
負荷抑制値Pは、電気集塵システム1aの場合と同様に、演算手段6から制御手段4に送られ(矢印F)、さらに、制御手段4から負荷制御手段7に送られる(矢印G)。そして、ステップS40では、負荷抑制値Pが負荷制御手段7から発電機10に送られ(矢印H)、発電機10の出力の上限値がPに設定される。
なお、演算手段6による演算結果は制御手段4を介して、記憶手段8に記憶されるとともに、記憶手段8に記憶された他の情報とともに適宜、出力手段9から出力される(矢印I)。
【0072】
このように、電気集塵システム1bでは、検出手段2a,2bの検出結果に基づいて荷電不良の発生した箇所と電気集塵器2の各区画に分配される排煙の割合が特定され、式(14)及び式(15)に基づいて荷電不良の発生パターンに応じた負荷抑制値Pが演算手段6によって算出され、負荷制御手段7によって発電機10の出力の上限値が設定される構成となっている。
したがって、本発明の電気集塵システム1bによれば、電気集塵器2の放電極に荷電不良が発生し、かつ、排煙が各区画に均等に分配されない場合であっても発電機10の発電効率を必要以上に低下させることなく、ボイラ11における煤塵の発生を適切に抑制し、煙突出口における煤塵量を常に規制値以下に抑えることができる。
【0073】
なお、本実施例では、検出手段2bによってダンパの開度を検出しているが、本発明の電気集塵システムは、このような構造に限定されるものではない。例えば、検出手段2bを備える代わりに、電気集塵器2の各区画に排煙が分配される割合(式(14)のα
kに相当)を、予め入力手段5から入力して記憶手段8に記憶させ、演算手段6が電気集塵器2の出口煤塵量の演算をする際に、この情報が記憶手段8から読み出され、制御手段4を介して演算手段6に送られるように構成されていても良い。この場合、演算手段6によって式(14)及び式(15)から負荷抑制値が算出されるため、上述の作用・効果が同様に発揮される。