(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331192
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】接着剤を基材上に吐出するデバイス
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20180521BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/10
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-79241(P2014-79241)
(22)【出願日】2014年4月8日
(65)【公開番号】特開2014-205140(P2014-205140A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2017年3月6日
(31)【優先権主張番号】00777/13
(32)【優先日】2013年4月15日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】513064450
【氏名又は名称】ベシ スウィツァーランド アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】グロイター リュディ
(72)【発明者】
【氏名】コスター クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】スタッドラー パウル アンドレアス
【審査官】
安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−298131(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0044534(US,A1)
【文献】
特開平04−066157(JP,A)
【文献】
特開2005−081337(JP,A)
【文献】
特開平07−163927(JP,A)
【文献】
実開平06−029664(JP,U)
【文献】
特開昭62−180774(JP,A)
【文献】
特開平05−185004(JP,A)
【文献】
特開2008−203219(JP,A)
【文献】
特開平06−106118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C1/00〜B05C21/00
B05D1/00〜B05D7/26
C09J1/00〜C09J201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤を基材上に吐出するデバイスであって、3つの空間方向に移動可能な書き込みヘッド(1)を含み、第1の吐出ノズル(4)及び少なくとも1つの第2の吐出ノズル(6)を、前記第1の吐出ノズル(4)の先端部が固定され、前記少なくとも1つの第2の吐出ノズル(6)の先端部が前記基材の表面に対して実質的に垂直に延びる方向に移動可能であるように、前記書き込みヘッド(1)に固定することができ、デバイスはピン(22)を備えるアクチュエーター(21)をさらに含み、該デバイスは2つの動作モードで動作することができ、一方の動作モードから他方の動作モードに変わるよう以下のステップ:
−前記書き込みヘッド(1)を持ち上げるステップ、
−前記ピン(22)を後退又は伸張させるステップ、及び
−前記書き込みヘッド(1)を所定の動作高さまで下降させるステップであって、前記ピン(22)が後退した状態では、前記吐出ノズル(4、6)の前記先端部は前記基材上の実質的に同様の高さに達し、前記ピン(22)が伸張した状態では、前記少なくとも1つの第2の吐出ノズル(6)の前記先端部は、前記基材上の、前記第1の吐出ノズル(4)の前記先端部よりも高い高さに達する、下降させるステップ
を行うように構成されている、デバイス。
【請求項2】
前記デバイスは、撓みヒンジ(18)によって互いに接続される4つのストラット(17)を含み、前記少なくとも1つの第2の吐出ノズル(6)は前記ストラット(17)のうちの1つに固定され、前記撓みヒンジ(18)は、前記少なくとも1つの第2の吐出ノズル(6)の前記先端部が前記基材の前記表面に対して実質的に垂直に延びる前記方向に移動することを可能にし、ガイド(13)が、前記少なくとも1つの第2の吐出ノズル(6)が固定される前記ストラット(17)が他の方向に移動することを防止する、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤を基材上に吐出するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなデバイスは、エポキシ等の接着剤を基材のチップ実装面に塗布するために、半導体実装装置において吐出ステーションとして用いられる。その後、基材はボンディングステーションに運ばれ、ここで半導体チップが配置される。特許文献1及び特許文献2から、接着剤を基材に塗布するデバイスが既知であり、このデバイスは、3つの空間方向X、Y及びZに移動可能な吐出ノズルを有する書き込みヘッドを含む。特許文献3から、接着剤の塗布前に基材ロケーションの位置を認識し、接着剤の塗布後の品質を制御するためのカメラを用いる方法が既知であり、このカメラは、高スループットを得るために、接着剤の塗布と書き込みヘッドの移動とを連係させる。特許文献4から、2つの出口開口を有する吐出ノズルを有する書き込みヘッドを含むデバイスが既知である。特許文献5から、互いから少なくとも1つの方向に独立して移動可能な2つの吐出ノズルを含むデバイスが既知である。さらに、それぞれ1つの吐出ノズルを有する2つの完全な吐出ステーションを含む半導体実装装置が既知である。
【0003】
吐出ノズルを1つしか有しない吐出ステーションは、基材に塗布される接着剤が吐出ノズルから分離されるまでに必要とされる待機時間によってスループットが制限されるため、後続のボンディングステーションよりも進みが遅い場合が多いという不都合点を伴う。2つの吐出ノズルを有する現行の技術水準から既知である吐出ステーションには種々の不都合点が伴い、すなわち、融通性及び/又は構造上の高い複雑さに欠ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6129040号
【特許文献2】欧州特許第1432013号
【特許文献3】スイス特許第705475号
【特許文献4】米国特許出願公開第2003044534号
【特許文献5】米国特許第7977231号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一行又は一列あたり奇数の基材位置を有する基材に接着剤を簡単にかつ高速で塗布すること、及び、吐出エラーが認識されたときに接着剤を基材に再度容易に塗布することを可能にする、接着剤を塗布するデバイスを開発するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0006】
接着剤を基材に塗布する本発明によるデバイスは、3つの空間方向に移動可能な書き込みヘッドを含む。第1の吐出ノズル及び少なくとも1つの第2の吐出ノズルを、第1の吐出ノズルの先端部が固定され、少なくとも1つの第2の吐出ノズルの先端部が基材の表面に対して実質的に垂直に延びる方向に移動可能であるように、書き込みヘッドに固定することができる。
該デバイスはピンを備えるアクチュエーターをさらに含む。デバイスは2つの動作モードで動作することができ、一方の動作モードから他方の動作モードに変わるよう以下のステップ:
−書き込みヘッドを持ち上げるステップ;
−ピンを伸張又は後退させるステップ、及び
−書き込みヘッドを所定の動作高さまで下降させるステップであって、ピンが後退した状態では、吐出ノズルの先端部は基材上の実質的に同様の高さに達し、ピンが伸張した状態では、少なくとも1つの第2の吐出ノズルの先端部は、基材上の、第1の吐出ノズルの先端部よりも高い高さに達する、下降させるステップ
を行うように設定される。
【0007】
デバイスは好ましくは、撓みヒンジによって互いに接続される4つのストラットを含む。少なくとも1つの第2の吐出ノズルを上記ストラットのうちの1つに固定することができる。撓みヒンジは、少なくとも1つの第2の吐出ノズルの先端部が基材の表面に対して実質的に垂直に延びる前述の方向に移動することを可能にする。ガイドが、少なくとも1つの第2の吐出ノズルが固定されるストラットが他の方向に移動することを防止する。
【0008】
本明細書に組み込まれて本明細書の一部をなす添付の図面は、本発明の1つ又は複数の実施形態を示し、詳細な説明とともに、本発明の原理及び実施態様を説明する役割を果たす。図面は一定の縮尺では描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】接着剤を基材に塗布する本発明によるデバイスの部分の斜視図である。
【
図3】1つの動作モードにおけるデバイスを示す図である。
【
図4】1つの動作モードにおけるデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の理解に必要とされる範囲で、接着剤を基材に塗布する本発明によるデバイスの斜視図を示している。デバイスは、リテーナー2を有する書き込みヘッド1を含み、リテーナー2には、第1の吐出ノズル4を有する第1の接着剤容器3及び第2の吐出ノズル6を有する第2の接着剤容器5を固定することができる。
図1に加えて、
図2は、本発明によるデバイスの異なる斜視図を示している。
図2では、接着剤容器及びリテーナー2の部分は省かれているため、デバイスの他の部分をよりはっきりと認識することができる。デバイスは、書き込みヘッド1を3つの空間方向X、Y及びZに移動させるために少なくとも3つの駆動装置(図示せず)を含み、方向X及びYは基材の表面に対して平行に延び、Z方向は方向X及びYに対して垂直である。接着剤容器及びそれぞれの吐出ノズルは互いに着脱可能に接続されている。リテーナー2は、第1の接着剤容器3を固定する第1のブラケット7、第2の接着剤容器5を固定する第2のブラケット8、第1の固定フレーム9、第2の可動フレーム10、プレート12を有するテーブル11、及び任意選択的にガイド13を含む。テーブル11は固定フレーム9に固定されており、テーブル11及びプレート12は、基材が配置される支持面に対して面平行に位置合わせされている。第1の締結部分14がプレート12に固定されており、この締結部分は吐出ノズル4を固定するように構成されている。第1の締結部分14は、プレート12に第1の方向(この場合はX方向)に変位可能に締結することができ、プレート12は、テーブル11に第2の方向(この場合はY方向)に変位可能に締結することができ、それによって、第1の吐出ノズル4の先端部のXY位置は調整可能である。第2の締結部分16が第2のフレーム10に固定されており、第2の締結部分16は第2の吐出ノズル6を固定するように設定されている。第2のフレーム10は、第2の締結部分16が第1のフレーム9及びプレート12に対して実質的にZ方向に変位可能であるように移動可能に配置されている。第2のフレーム10は、例えば、撓みヒンジ18を介して互いにそれぞれ接続されている4つのストラット17からなる。ガイド13は、この例では、細長い金属ストリップ19によって形成され、細長い金属ストリップ19の一方の端部はプレート12に固定され、細長い金属ストリップ19の他方の端部は第2の締結部分16に締結され、また板ばね20によって、第2の締結部分16の一方の端部はフレーム10に固定され、第2の締結部分16の他方の端部は書き込みヘッド1に固定される。ストリップ19及び板ばね20は、第2の締結部分16が固定される可動フレーム10のストラット17が、上下移動、すなわちZ方向への移動を行うことができることを確実にし、一方で、フレーム10のX方向及びY方向への移動は可能ではない。その結果、書き込みヘッド1の急激な移動中の第2の締結部分16のフラッタリングが防止される。第1の吐出ノズル4の先端部はこのように書き込みヘッド1に固定され、一方で、第2の吐出ノズル6の先端部は、この場合はZ方向である、基材の表面に対して実質的に垂直に延びる方向に移動可能である。アクチュエーター21によってY方向に変位可能であるピン22が
該デバイスに固定されており、この目的は以下でより詳細に説明する。アクチュエーター21及びピン22は
図1及び
図2では見えないが、
図3及び
図4では見える。
図1〜
図4は、デバイスに属せず、基材表面の平面を示す小さいプレート23を付加的に示している。
【0011】
デバイスは、第1の接着剤容器3に圧力パルスを供給する第1の空気圧システム、及び、第2の接着剤容器5に圧力パルスを供給する第2の空気圧システム、又は、単一の空気圧システム、並びに、双方の接着剤容器3及び5に第1の弁位置において圧力パルスを同時に供給すること、並びに第1の吐出ノズル4にのみ第2の弁位置において圧力パルスを供給することを可能にする弁のいずれかを更に含む。第2の接着剤容器5には好ましくは第2の弁位置では陰圧が供給される。
【0012】
本発明によるデバイスは、第1のモードで2つの吐出ノズル4及び6を用いて2つの接着剤パターンを2つの隣接する基材位置において同時に書き込むこと、又は、第2のモードで単一の吐出ノズル(すなわち第1の吐出ノズル4)のみを用いて接着剤パターンを1つの基材位置において書き込むことを可能にする。このために、ピン22、可動フレーム10、書き込みヘッド1の動力化されたZ軸及び空気圧システム(単数又は複数)は以下で説明するように協働する。
図3は、モード1におけるデバイスを示しており、
図4はモード2におけるデバイスを示している。書き込みヘッド1はまず、一方のモードから他方のモードに変わる間にZ位置z
1に持ち上げられる。
【0013】
その後、モード1における動作に関して、
−ピン22は後退位置に移動し;
−書き込みヘッドは所定のZ位置
z2に下降し、
z2<z
1であり、
z2は、基材上の吐出ノズル4及び6の先端部の所望の動作高さに相当し;
又はモード2では、
−ピン22は伸張位置に移動し;
−書き込みヘッド1は所定のZ位置
z2に下降する。
【0014】
書き込みヘッド1がモード2において下降すると、可動フレーム10は、Z位置
z2に達する前にピン22に当接する。次に、書き込みヘッド1がZ位置
z2に位置付けられると、第1の吐出ノズル4の先端部は基材上の所望の動作高さにあり、一方で、第2の吐出ノズル6の先端部はより高い高さに位置付けられる。
【0015】
モード1では、書き込みヘッド1は所定の経路に沿って移動し、2つの接着剤容器3及び5には圧力パルスが同時に同期して供給され、一方で、モード2では、書き込みヘッド1は所定の経路に沿って移動し、第1の接着剤容器3にのみ圧力パルスが供給される。
【0016】
デバイスは、第1のモードにおいて3つ、4つ又はそれ以上の接着剤容器及び吐出ノズルを用いて複数の接着剤パターン2を隣接する基材位置において同時に書き込み、また、第2のモードにおいて単一の吐出ノズルを用いて1つのみの接着剤パターンを書き込むために、容易に伸張させることができる。
【0017】
本発明を、一実施形態を参照して説明した。当業者には、2つの動作モードにおけるデバイスの動作を可能にするためにデバイスの機械的構成を他の方法で実現することもできることが明らかである。