特許第6331197号(P6331197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本キャリア工業の特許一覧

<>
  • 特許6331197-積層トレーの分離搬送装置 図000002
  • 特許6331197-積層トレーの分離搬送装置 図000003
  • 特許6331197-積層トレーの分離搬送装置 図000004
  • 特許6331197-積層トレーの分離搬送装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331197
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】積層トレーの分離搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 59/06 20060101AFI20180521BHJP
   B65G 59/10 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B65G59/06 103
   B65G59/10
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-80393(P2015-80393)
(22)【出願日】2015年3月23日
(65)【公開番号】特開2016-179905(P2016-179905A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年11月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000152815
【氏名又は名称】株式会社日本キャリア工業
(72)【発明者】
【氏名】越智 一志
【審査官】 川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−052627(JP,A)
【文献】 特開2013−103779(JP,A)
【文献】 実開昭56−040108(JP,U)
【文献】 特開2000−034006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 59/06
B65G 59/10
B65G 47/52
B65B 43/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド内に複数個積層されたトレーを吸着具によって一個ずつ分離する分離手段と、分離されたトレーを受け取って機外に搬送する搬送手段とを有し、吸着具が搬送手段の搬送面に設けられた通路を搬送面と交差して上下方向に往復動する積層トレーの分離搬送装置において、吸着具が単一の吸盤からなる吸着具A、又は、下面中央部に凹みがあるトレーを分離する際に使用される、トレーの中央部から適宜な距離を隔てた左右対称位置に一個ずつ吸盤が配置された吸着具Bのいずれかに交換可能とされるとともに、吸着具Aが使用されるときにはトレーを受け取る位置にあって、吸着具Bが使用されるときには吸着具Bの往復動を妨げない位置まで退避可能な補助搬送体が設けられたことを特徴とする積層トレーの分離搬送装置。
【請求項2】
搬送手段は、3本の無端平ベルトが所定の間隔をおいて併設されたベルトコンベヤCであって、
中央の平ベルトの始端部側を両側の平ベルトより短くして、吸着具が往復動する通路とし、
補助搬送体は
通路における吸着具の両側位置に配置される、中央の平ベルトにおける始端部の支持軸を支点として吸着具の往復動と対向して揺動可能な、一対のベルトコンベヤDであって、
ベルトコンベヤDは、
吸着具Aが使用されるときには、上面がベルトコンベヤCの搬送面に沿った、トレーを受け取る位置に保持されるとともにベルトコンベヤCと同調して走行可能であり、
吸着具Bが使用されるときには、吸着具の最下端より下方の退避位置に保持される
ことを特徴とする請求項1に記載の積層トレーの分離搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食品包装などに用いられる発泡樹脂などからなるトレーが複数個積層された積層トレーの下面に吸盤を吸着させて最下端から一個ずつ分離し、機外に搬送する積層トレーの分離搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する従来の積層トレーの分離装置としては、例えば特許文献1(実開平7−42767号公報)に開示されているものがある。
この積層トレー分離装置は、複数個積み重ねた積層トレーの最下端トレーの両端縁部を係止する弾性力を有した係止部材を設け、トレーの下面に吸着させた吸着器を下動させることによって係止部材を乗り越えさせて分離し、下方に設けられたベルトコンベヤ上に載せて取り出すようにしている。
【0003】
樹脂製の小トレーは食品の包装に多く使用されるが、包装される食品の種類、盛付量、盛付形態などが多様化したため使用されるトレーも種類が多くなり積層トレーの分離に際してトラブルが起こることがあった。
例えば、図4(a)に示される従来の標準的な大きさと単純な形状のトレーであれば平滑な下面の中央部分に当接して吸着させる単一の吸着器で支障なかったが、図4(b)に示されるような中央部に仕切り壁が設けられた、従来トレーを2個合体させたようなトレーの場合には、下面中央部の凹みが支障となり吸着が不充分で確実に分離できない。
【0004】
又、食品が包装されてスーパーなどで販売される小トレーは消耗品であり、省資源、原価低減のためにトレーの樹脂原料の節約志向から薄肉化がはかられて、許容範囲の限界近くまでトレーの強度が弱められたため、特に幅の広いトレーにおいては剛性が不足して中央部のみの吸着では確実に分離できないことがあった。
従って、従来に比べて形状、大きさの異なるトレーであっても確実に吸着して分離できる積層トレーの分離搬送装置が求められるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−42767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述のような問題点に鑑み、形状、大きさの異なる積層トレーであっても、好適な吸着具と交換することで、確実に分離して搬送できる積層トレーの分離搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ガイド内に複数個積層されたトレーを吸着具によって一個ずつ分離する分離手段と、分離されたトレーを受け取って機外に搬送する搬送手段とを有し、吸着具が搬送手段の搬送面に設けられた通路を搬送面と交差して上下方向に往復動する積層トレーの分離搬送装置において、吸着具が単一の吸盤からなる吸着具A、又は、下面中央部に凹みがあるトレーを分離する際に使用される、トレーの中央部から適宜な距離を隔てた左右対称位置に一個ずつ吸盤が配置された吸着具Bのいずれかに交換可能とされるとともに、吸着具Aが使用されるときにはトレーを受け取る位置にあって、吸着具Bが使用されるときには吸着具Bの往復動を妨げない位置まで退避可能な補助搬送体が設けられたことを特徴とする積層トレーの分離搬送装置とされる。
又、搬送手段は、3本の無端平ベルトが所定の間隔をおいて併設されたベルトコンベヤCであって、
中央の平ベルトの始端部側を両側の平ベルトより短くして、吸着具が往復動する通路とし、
補助搬送体は
通路における吸着具の両側位置に配置される、中央の平ベルトにおける始端部の支持軸を支点として吸着具の往復動と対向して揺動可能な、一対のベルトコンベヤDであって、
ベルトコンベヤDは、
吸着具Aが使用されるときには、上面がベルトコンベヤCの搬送面に沿った、トレーを受け取る位置に保持されるとともにベルトコンベヤCと同調して走行可能であり、
吸着具Bが使用されるときには、吸着具の最下端より下方の退避位置に保持される
【発明の効果】
【0008】
トレーの大きさや、下面の形状に対して、好適な吸着具に交換可能で、しかも補助搬送体が設けられので、幅寸法の比較的大きい、或いは下面の中央部付近が平滑でない積層トレーであっても吸着具を交換することで確実に分離して搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】 本発明の積層トレーの分離搬送装置の実施例の要部を示す側面図である。
図2】 同平面図である。
図3】 (a)単一の吸盤からなる吸着具Aである。(b)幅方向に2個の吸盤が併設された吸着具Bである。(c)吸着具の側面図である。
図4】 (a)単一の吸盤と搬出手段との関係を示す正面図である。(b)中央部に仕切り壁を有するトレーと2個の吸盤を備えた吸着具と搬送手段との関係を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施例における積層トレーの分離搬送装置は、図1に要部のみが記載されているが、トレー1を複数個積層させた積層トレーを傾斜させて収容する貯留タンク2が機台に設けられている。
貯留タンク2は、積層トレーを自重により傾斜方向に沿って滑落可能に収容し、崩れないように保持するために積層トレーの周囲を規制するトレーガイド3が適宜設けられる。
尚、本実施例においては積層トレーを自重で滑落可能にしているが、適宜重錘などを使用した強制送り装置を装備したものであってもよい。
更に、貯留タンク2の下端部付近には、図示しないがトレーが分離されるときには無効とされるトレーの落下止具が設けられている。
【0011】
貯留タンク2の底部付近には、積層トレーの最下端トレー1から一個ずつ順次分離させるトレー分離手段が設けられる。
本発明における分離手段は、吸盤4と吸盤4を支持する支持部材6とからなる吸着具を、吸盤4が最下端トレー1の下面に吸着した状態で移動させることにより積層トレーを一個ずつ分離する分離装置としている。
【0012】
吸盤4は、合成樹脂などの可撓性を有する材質が使用された椀型の吸着部を形成して、トレーの略中心位置に当接させるよう配置される。
この吸盤4は、図3に示されるように、内部に吸盤4に連通するエアー吸引通路5が貫通された支持部材6に取り付けられて吸着具が構成される。この吸盤4と吸盤4を支持する支持部材6からなる吸着具は、機台に軸支された支持管7から延設されたた中空アーム8の先端に挿入され掛け金9を介して着脱自在に取り付けられる。
【0013】
又、吸盤4を支持する支持部材6が取り付けられた中空アーム8を往復動させる作動アーム10が支持管7から延設される。作動アーム10の先端は、機台に据え付けられたモーター軸11に設けられたクランク装置12に連結される。
【0014】
又、支持管7から延設された中空アーム8、中空アーム8に連結された支持部材6に支持された吸盤4に至るまでエアー吸引通路5が繋がった状態で図示しないが支持管7の端部に連結され吸引装置に通じている。
【0015】
クランク装置12が作動されると、作動アーム10を介して中空アーム8が揺動して、中空アーム8の先端に取り付けられた吸着具に支持された吸盤4が、積層トレー1の下面に吸着した位置から分離されたトレー1が搬送手段に受け取られる位置(図1における仮想線表示位置)を過ぎるまで移動しトレー1を分離する構成であり、クランク装置12の作動に関連して図示しない吸気弁が、吸盤4がトレー1の底部に接したときには吸着できるよう開かれ、又、吸盤4がトレー1に吸着した状態で搬送手段のトレー受け取り位置まで到着したときには閉じられてトレー1が離されるように制御される。
【0016】
本実施例において吸着具は、図3(a)に示される単一の吸盤4からなる吸着具Aと、(b)に示される幅方向(トレーが搬送される方向に対して左右方向)に併設された2個の吸盤4からなる吸着具Bとが用意されていて、吸着具を構成する吸盤4を支持する支持部材6が中空アーム8の先端に着脱自在とされて、使用されるトレーの大きさ、形状に合わせて適合する吸着具が選択使用される。
尚、吸着具Bにおける吸盤4は2個に限定されることなくトレーの大きさや形状に合わせて左右対称位置に複数個装着されることもある。
【0017】
貯留タンク2の下方位置には分離手段によって分離されたトレー1を受けて機外に搬送する搬送手段が設けられる。
本実施例における搬送手段は、分離されたトレー1を上面で受けて搬送するベルトコンベヤCであって、ベルトコンベヤCは複数の無端ベルトを、適宜間隔をあけて併設させて構成される。
図1図2に示す本実施例においては、適宜な幅寸法を有した3本の無端平ベルト13を所定の間隔をおいて併設して構成されている。
中央に配された平ベルト13aは、吸盤4を有した吸着具がベルトコンベヤCの中央付近で搬送面と交差して上下方向に往復動するための通路を確保するために短くされている。
これら3本の平ベルトにおける両側に位置する2本の平ベルト13は、機台に軸支された駆動軸14に固着されたプーリー15と、トレーの搬送終端位置の機台に軸支された支持軸16に固着されたプーリー17とに掛け回され張設される。
中央に置かれた短い平ベルト13aは搬送終端位置の支持軸16に固着されたプーリー17と吸着具の通路に面した位置に軸支された支持軸18に形成されたプーリー19とに掛け回され張設される。
【0018】
吸着具は、吸盤4が積層トレーの下面に当接して吸着する位置からベルトコンベヤCの上面を通過する位置(図1の仮想線表示位置)までの間をクランク装置12によって搬送面に設けられた通路を搬送面と交差して上下方向に往復動される。
この吸着具が往復動する通路の幅寸法は、吸着具が通過できる最小寸法とすることが望ましいが、少なくとも吸盤4が2個併設された吸着具Bが通過できる幅寸法を必要とする。
従って、単一の吸盤4を有した吸着具Aが使用されるときは、通路には通路幅に占める吸着具Aの幅との差分だけの隙間が発生するので幅寸法の小さいトレーのときには、この隙間にトレーが落ち込み搬送できないおそれがある。
【0019】
そこで、本実施例においてはこの隙間を少なくするために補助搬送体が設けられる。この補助搬送体は複数の丸ベルト20が使用されたベルトコンベヤDであって、図2に示されるようにベルトコンベヤCの搬送面に開口された吸着具の通路におけるトレーを受け取る位置に張設される。
【0020】
ベルトコンベヤDは、ベルトコンベヤCを構成する中央部の短い平ベルト13aの支持軸18に形成されたプーリー21と、一端が支持軸に回動自在に遊嵌されトレーの受取位置付近まで延設された支持アーム22に軸支されたローラー23とに掛け回された複数の丸ベルト20によって構成される。
このベルトコンベヤDは、図2に示されるように通路における吸着具の両側位置に一対が配設されて吸着具Aと両側平ベルト13との隙間を少なくするように配置される。
又、このベルトコンベヤDは、上面がベルトコンベヤCの搬送面に沿ってトレーを受け取る位置と、吸着具の往復動と妨げない退避位置(図1の仮想線位置)とに保持できるように図示しないが抜き差し可能なノックピンなど適宜な係止手段が設けられる。
尚、20aは両側の平ベルト13と中央部の平ベルト13aとの間で、プーリー21とプーリー17とに掛け回され張設された丸ベルトであって両側の平ベルト13と中央部の平ベルト13aとの隙間を小さくしてトレー1の搬送をスムーズにする。
【0021】
このように構成された積層トレーの分離搬送装置において、標準的な大きさで下面が平滑なトレー1を使用するときは、吸着具は、単一の吸盤からなる吸着具Aが使用され、補助搬送体であるベルトコンベヤDを、上面がベルトコンベヤCの搬送面に沿うトレーを受け取る位置に保持させる。
搬送手段における各コンベヤベルトは、補助搬送体であるベルトコンベヤDを含め、すべて機台に軸支された駆動軸14の軸端に固着された入力プーリー24とモーターの出力プーリー25とに掛け回された駆動ベルト26を介して駆動され、分離手段によって分離されたトレーを受け取り機外に搬送する。
【0022】
尚、ベルトコンベヤDは、少なくとも上面がベルトコンベヤCの搬送面に沿う位置にあって分離されたトレーを受取り搬送する場合にはトレーの搬送をスムーズにするために、他のコンベヤベルトと同調して走行されるようにするが、吸着具Bが使用されて吸着具Bの往復動を妨げない位置まで退避したときには走行させる必要がないので適宜機構を介して停止させるようにしてもよい。
【0023】
幅方向の寸法が比較的大きくトレーの中央部付近の一か所を吸着させて分離することが困難なトレー、或いは図4(b)に示されるような中央部に仕切り壁があって下面が平滑でないトレー1などを使用するときには、トレーの中央部から適宜な距離を隔てた左右対称位置にそれぞれ吸盤4が配設された吸着具Bに付け替える。このとき補助搬送体は吸着具Bの往復動を妨げにならない位置に退避させて保持する。
【0024】
従って、本発明によれば、図4の(a)に示される単一の吸盤4からなる吸着具Aを使用してトレー1の中央部付近を吸盤4が吸着して分離できる標準的な大きさで下面が平滑なトレーは勿論、トレー1が幅方向に比較的大きく単一の吸盤4では安定して分離できないものであっても、或いはトレー下面の中央部付近が平滑でなくとも簡単な操作で吸着具Bに付け替えて確実に分離して搬出させることができる。
【0025】
尚、搬送手段は本実施例のようなコンベヤを使用しないで、平板からなる受板を適宜傾斜させてトレーを受取り、トレーの自重によって滑走させ搬出させるようにし、搬送面(滑走面)に開口された吸着具の通路に設ける補助搬送体(補助滑走体)も平板で形成して、トレーを受け取る位置と吸着具の往復動を妨げない退避位置とに切り替え可能にすることもできる。
【符号の説明】
【0026】
1 トレー
トレーガイド
吸盤
支持部材
13 搬送コンベヤ






図1
図2
図3
図4