(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1シート層及び第2シート層が不織布であり、前記通気孔の単位面積当たりの数が、前記貫通孔の単位面積当たりの数よりも少ない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
前身頃及び後身頃を構成する外装体と、この外装体に固定された、吸収体を含む内装体とを備え、前身頃における外装体の両側部と後身頃における外装体の両側部とがそれぞれ接合されてサイドシール部が形成されることにより、胴周り部が環状に形成されるとともに、ウエスト開口及び左右一対の脚開口が形成された、パンツタイプ使い捨ておむつであって、
前記前身頃及び後身頃の少なくとも一方における前記外装体の胴周り部に、前記弾性フィルム伸縮構造を、その伸縮方向が幅方向となるように備えている、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。なお、断面図中の点模様部分はホットメルト接着剤等の接合手段を示している。
図1〜
図6はパンツタイプ使い捨ておむつを示している。このパンツタイプ使い捨ておむつ(以下、単におむつともいう。)は、前身頃F及び後身頃Bをなす外装体20と、この外装体20の内面に固定され一体化された内装体10とを有しており、内装体10は液透過性トップシート11と液不透過性シート12との間に吸収体13が介在されてなるものである。製造に際しては、外装体20の内面(上面)に対して内装体10の裏面がホットメルト接着剤などの接合手段によって接合された後に、内装体10及び外装体20が前身頃F及び後身頃Bの境界である前後方向(縦方向)中央で折り畳まれ、その両側部が相互に熱溶着又はホットメルト接着剤などによって接合されてサイドシール部21が形成されることによって、ウエスト開口及び左右一対の脚開口が形成されたパンツタイプ使い捨ておむつとなる。
【0027】
(内装体の構造例)
内装体10は、
図4〜
図6に示すように、液透過性トップシート11と、ポリエチレン等からなる液不透過性シート12との間に、吸収体13を介在させた構造を有しており、トップシート11を透過した排泄液を吸収保持するものである。内装体10の平面形状は特に限定されないが、
図1に示されるようにほぼ長方形とすることが一般的である。
【0028】
吸収体13の表側(肌側)を覆う液透過性トップシート11としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。液透過性トップシート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。液透過性トップシート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏側まで延在している。
【0029】
吸収体13の裏側(非肌当接側)を覆う液不透過性シート12は、ポリエチレン又はポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0030】
吸収体13としては、公知のもの、例えばパルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。この吸収体13は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート14によって包装することができる。
吸収体13の形状は、股間部に前後両側よりも幅の狭い括れ部分13Nを有するほぼ砂時計状に形成されているが、長方形状等、適宜の意形状とすることができる。括れ部分13Nの寸法は適宜定めることができるが、括れ部分13Nの前後方向長さはおむつ全長の20〜50%程度とすることができ、その最も狭い部分の幅は吸収体13の全幅の40〜60%程度とすることができる。このような括れ部分13Nを有する場合において、内装体10の平面形状がほぼ長方形とされていると、内装体10における吸収体13の括れ部分13Nと対応する部分に、吸収体13を有しない余り部分が形成される。
【0031】
内装体10の両側部には脚周りにフィットする立体ギャザーBSが形成されている。この立体ギャザーBSは、
図5及び
図6に示されるように、内装体の裏面の側部に固定された固定部と、この固定部から内装体の側方を経て内装体の表面の側部まで延在する本体部と、本体部の前後端部が倒伏状態で内装体の表面の側部に固定されて形成された倒伏部分と、この倒伏部分間が非固定とされて形成された自由部分とが、折り返しによって二重シートとしたギャザー不織布15により形成されている。
【0032】
また、二重シート間には、自由部分の先端部等に細長状ギャザー弾性部材16が配設されている。ギャザー弾性部材16は、製品状態において
図5に二点鎖線で示すように、弾性伸縮力により自由部分を起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものである。
【0033】
液不透過性シート12は、液透過性トップシート11とともに吸収体13の幅方向両側で裏側に折り返されている。この液不透過性シート12としては、排便や尿などの褐色が出ないように不透明のものを用いるのが望ましい。不透明化としては、プラスチック中に、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ホワイトカーボン、クレイ、タルク、硫酸バリウムなどの顔料や充填材を内添してフィルム化したものが好適に使用される。
【0034】
ギャザー弾性部材16としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、テンションは150〜350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、ギャザー弾性部材16としては、図示形態のような糸状の他、ある程度の幅を有するテープ状のものを用いることもできる。
【0035】
前述のギャザー不織布15を構成する素材繊維も液透過性トップシート11と同様に、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらにギャザー不織布15については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコーン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロライド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0036】
図3に示すように、内装体10はその裏面が、内外固定領域10B(斜線領域)において、外装体20の内面に対してホットメルト接着剤等により固定される。この内外固定領域10Bは、一方の無吸収体側部17から他方の無吸収体側部17にわたる幅で、無吸収体側部17の前後両側にわたり延在される。内外固定領域10Bの側縁は、無吸収体側部17の幅方向中間より側方に位置していることが好ましく、特に内装体10の幅方向のほぼ全体、及び前後方向のほぼ全体にわたり外装体20に固定されているとより好ましい。
【0037】
(外装体の構造例)
外装体20は、サイドシール部21と対応する前後方向範囲である胴周り部Tと、前身頃Fの胴周り部T及び後身頃Bの胴周り部Tの間の前後方向範囲である中間部Lとを有する。そして、図示形態の外装体20では、その中間部Lの前後方向中間を除いて、
図2及び
図4〜
図6に示されるように、第1シート層20A及び第2シート層20Bの間に弾性フィルム30が積層されるとともに、
図7に示されるように、第1シート層20A及び第2シート層20Bが、間隔を空けて配列された多数のシート接合部40で弾性フィルム30を貫通する貫通孔31を通じて接合された、伸縮方向が幅方向とされた弾性フィルム伸縮構造20Xを有している。外装体20の平面形状は、中間部Lの幅方向両側縁がそれぞれ脚開口を形成するように凹状の脚周りライン29により形成されており、全体として擬似砂時計形状をなしている。外装体20は、前後に二分割し、両者が股間部で前後方向に離間するように配置しても良い。
【0038】
図1及び
図2に示す形態は、弾性フィルム伸縮構造20Xがウエスト端部領域23まで延在されている形態であるが、ウエスト端部領域23に弾性フィルム伸縮構造20Xを用いると、ウエスト端部領域23の締め付けが不十分になる等、必要に応じて、
図15及び
図16に示すようにウエスト端部領域23には弾性フィルム伸縮構造20Xを設けずに、従来の細長状のウエスト部弾性部材24による伸縮構造20Xを設けることもできる。ウエスト部弾性部材24は、前後方向に間隔をおいて配置された複数の糸ゴム等の細長状弾性部材であり、身体の胴周りを締め付けるように伸縮力を与えるものである。ウエスト部弾性部材24は、間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように3〜8mm程度の間隔を空けて、3本以上、好ましくは5本以上配置される。ウエスト部弾性部材24の固定時の伸長率は適宜定めることができるが、通常の成人用の場合230〜320%程度とすることができる。ウエスト部弾性部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えば平ゴム等、他の細長状の伸縮部材を用いても良い。
【0039】
他の形態としては、図示しないが、前身頃Fの胴周り部Tと後身頃Bの胴周り部Tとの間の中間部Lには弾性フィルム伸縮構造20Xを設けない形態としたり、前身頃Fの胴周り部T内から中間部Lを経て後身頃Bの胴周り部T内まで前後方向に連続的に伸縮構造20Xを設けたり、前身頃F及び後身頃Bのいずれか一方にのみ弾性フィルム伸縮構造20Xを設けたりすることも可能である。
【0040】
個々のシート接合部40及び貫通孔31の自然長状態での形状は、適宜定めることができるが、真円形(
図7、
図8参照)、楕円形、三角形、長方形(
図9〜
図12参照)、ひし形(
図13(b)参照)等の多角形、あるいは凸レンズ形(
図13(a)参照)、凹レンズ形(
図14(a)参照)、星形、雲形等、任意の形状とすることができる。個々のシート接合部の寸法は特に限定されないが、最大長さは0.5〜3.0mm、特に0.7〜1.1mmとするのが好ましく、最大幅40xは0.1〜3.0mm、特に伸縮方向と直交する方向に長い形状の場合には0.1〜1.1mmとするのが好ましい。
【0041】
個々のシート接合部40の大きさは、適宜定めれば良いが、大きすぎるとシート接合部40の硬さが感触に及ぼす影響が大きくなり、小さすぎると接合面積が少なく資材同士が十分に接着できなくなるため、通常の場合、個々のシート接合部40の面積は0.14〜3.5mm
2程度とすることが好ましい。個々の貫通孔31の開口の面積は、貫通孔31を介してシート接合部が形成されるためシート接合部以上であれば良いが、シート接合部の面積の1〜1.5倍程度とすることが好ましい。なお、貫通孔31の開口の面積は、弾性フィルム30単独の状態ではなく第1シート層20A及び第2シート層20Bと一体化した状態で、かつ自然長の状態における値を意味し、貫通孔31の開口の面積が、弾性フィルム30の表と裏で異なる等、厚み方向に均一でない場合には最小値を意味する。
【0042】
シート接合部40及び貫通孔31の平面配列は適宜定めることができるが、規則的に繰り返される平面配列が好ましく、
図21(a)に示すような斜方格子状や、
図21(b)に示すような六角格子状(これらは千鳥状ともいわれる)、
図21(c)に示すような正方格子状、
図21(d)に示すような矩形格子状、
図21(e)に示すような平行体格子(図示のように、多数の平行な斜め方向の列の群が互いに交差するように2群設けられる形態)状等(これらが伸縮方向に対して90度未満の角度で傾斜したものを含む)のように規則的に繰り返されるものの他、シート接合部40の群(群単位の配列は規則的でも不規則でも良く、模様や文字状等でも良い)が規則的に繰り返されるものとすることもできる。
【0043】
シート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの接合は、弾性フィルム30に形成された貫通孔31を通じて接合される。この場合、少なくともシート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20B間以外では弾性フィルム30と接合されていないことが望ましい。
【0044】
シート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの接合手段は特に限定されない。例えば、接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの接合はホットメルト接着剤によりなされていても、ヒートシールや超音波シール等の素材溶着による接合手段によりなされていても良い。
【0045】
シート接合部40が素材溶着により形成される形態は、シート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方の大部分又は一部の溶融固化物20mのみにより第1シート層20A及び第2シート層20Bが接合される第1溶着形態(
図17(a)参照)、シート接合部40における弾性フィルム30の全部若しくは大部分又は一部の溶融固化物30mのみにより第1シート層20A及び第2シート層20Bが接合される第2溶着形態(
図17(b)参照)、及びこれらの両者が組み合わさった第3溶着形態(
図17(c)参照)のいずれでも良いが、第2、第3溶着形態が好ましい。特に好ましいのは、第1シート層20A及び第2シート層20Bの一部の溶融固化物20mと、シート接合部40における弾性フィルム30の全部若しくは大部分の溶融固化物30mとにより第1シート層20A及び第2シート層20Bが接合される形態である。なお、
図19(b)に示される第3溶着形態では、黒色に写っている第1シート層20A又は第2シート層20Bの繊維溶融固化物20m間に、白色に写っている弾性フィルム30の溶融固化物30mが見られるのに対して、
図19(a)に示される第1溶着形態では、第1シート層20A又は第2シート層20Bの繊維溶融固化物20m間に弾性フィルムの溶融固化物は見られない(白色部分は繊維溶融固化物20mの境界と、繊維溶融固化物20mの乱反射である)。
【0046】
第1接着形態や第3接着形態のように、第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方の大部分又は一部の溶融固化物20mを接着剤として第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合する場合、第1シート層20A及び第2シート層20Bの一部は溶融しない方がシート接合部40が硬質化しないため好ましい。なお、第1シート層20A及び第2シート層20Bが不織布であるときには、第1シート層20A及び第2シート層20Bの一部が溶融しないことには、シート接合部40の全繊維について芯(複合繊維における芯だけでなく単成分繊維の中心部分を含む)は残るがその周囲部分(複合繊維における鞘だけでなく単成分繊維の表層側の部分を含む)は溶融する形態や、一部の繊維は全く溶融しないが、残りの繊維は全部が溶融する又は芯は残るがその周囲部分は溶融する形態を含む。
【0047】
第2溶着形態及び第3溶着形態のように、弾性フィルム30の溶融固化物30mを接着剤として第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合すると、剥離強度が高いものとなる。第2溶着形態では、第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方の融点が弾性フィルム30の融点及びシート接合部40形成時の加熱温度よりも高い条件下で、第1シート層20A及び第2シート層20B間に弾性フィルム30を挟み、シート接合部40となる部位を加圧・加熱し、弾性フィルム30のみを溶融することにより製造することができる。一方、第3溶着形態では、第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方の融点が弾性フィルム30の融点よりも高い条件下で、第1シート層20A及び第2シート層20B間に弾性フィルム30を挟み、シート接合部40となる部位を加圧・加熱し、第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方と弾性フィルム30とを溶融することにより製造することができる。このような観点から、弾性フィルム30の融点は80〜145℃程度のものが好ましく、第1シート層20A及び第2シート層20Bの融点は85〜190℃程度、特に150〜190℃程度のものが好ましく、第1シート層20A及び第2シート層20Bの融点と弾性フィルム30の融点との差は60〜90℃程度であるのが好ましい。また、加熱温度は100〜150℃程度とするのが好ましい。
【0048】
第2溶着形態及び第3溶着形態では、第1シート層20A及び第2シート層20Bが不織布であるときには、弾性フィルム30の溶融固化物30mは、
図18(c)に示すようにシート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの厚み方向全体にわたり繊維間に浸透していても良いが、
図17(b)(c)及び
図18(a)に示すように厚み方向中間まで繊維間に浸透する形態、又は
図18(b)に示すように第1シート層20A及び第2シート層20Bの繊維間にほとんど浸透しない形態の方が、シート接合部40の柔軟性が高いものとなる。
【0049】
図20は、第2溶着形態及び第3溶着形態を形成するのに好適な超音波シール装置の例を示している。この超音波シール装置では、シート接合部40の形成に際して、外面にシート接合部40のパターンで形成した突起部60aを有するアンビルロール60と超音波ホーン61との間に、第1シート層20A、弾性フィルム30及び第2シート層20Bを送り込む。この際、例えば上流側の弾性フィルム30の送り込み駆動ロール63及びニップロール62による送り込み移送速度を、アンビルロール60及び超音波ホーン61以降の移送速度よりも遅くすることにより、送り込み駆動ロール63及びニップロール62によるニップ位置からアンビルロール60及び超音波ホーン61によるシール位置までの経路で、弾性フィルム30をMD方向(マシン方向、流れ方向)に所定の伸長率まで伸長する。この弾性フィルム30の伸長率は、アンビルロール60及び送り込み駆動ロール63の速度差を選択することにより設定することができ、例えば300%〜500%程度とすることができる。62はニップロールである。アンビルロール60と超音波ホーン61との間に送り込まれた、第1シート層20A、弾性フィルム30及び第2シート層20Bは、この順に積層した状態で、突起部60aと超音波ホーン61との間で加圧しつつ、超音波ホーン61の超音波振動エネルギーにより加熱し、弾性フィルム30のみを溶融するか、又は第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方と弾性フィルム30とを溶融することによって、弾性フィルム30に貫通孔31を形成するのと同時に、その貫通孔31を通じて第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合する。したがって、この場合にはアンビルロール60の突起部60aの大きさ、形状、離間間隔、ロール長方向及びロール周方向の配置パターンなどを選定することにより、シート接合部40の面積率を選択することができる。
【0050】
貫通孔31が形成される理由は必ずしも明確ではないが、弾性フィルム30におけるアンビルロール60の突起部60aと対応する部分が溶融して周囲から離脱することにより開孔するものと考えられる。この際、弾性フィルム30における、伸縮方向に並ぶ隣接貫通孔31の間の部分は、
図7(a)、
図9(a)及び
図11(a)に示すように、貫通孔31により伸縮方向両側の部分から切断され、収縮方向両側の支えを失うことになるため、収縮方向と直交する方向の連続性を保ちうる範囲で、伸縮方向と直交する方向の中央側ほど伸縮方向中央側に釣り合うまで収縮し、貫通孔31が伸縮方向に拡大する。そして、後述する伸縮領域80のように弾性フィルム30が伸縮方向に沿って直線的に連続する部分が残るパターンでシート接合部40を形成すると、
図7(a)及び
図9(a)に示すように、個別の製品に切断すること等により自然長状態まで収縮するときに、貫通孔31の拡大部分の伸縮方向の長さは、貫通孔31とシート接合部40との間に隙間ができなくなるまで収縮することとなる。一方、後述する非伸縮領域70のように弾性フィルム30が伸縮方向に沿って直線的に連続する部分がないパターンでシート接合部40を形成すると、
図11(a)に示すように、個別の製品に切断すること等により自然長状態まで収縮するときにほとんど収縮しないため、貫通孔31とシート接合部40との間に隙間が大きく残されることとなる。
【0051】
第1シート層20A及び第2シート層20Bの構成材は、シート状のものであれば特に限定無く使用できるが、通気性及び柔軟性の観点から不織布を用いることが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その目付けは12〜20g/m
2程度とするのが好ましい。また、第1シート層20A及び第2シート層20Bの一部又は全部は、一枚の資材を折り返して対向させた一対の層であっても良い。例えば、図示形態のように、ウエスト端部領域23では、外側に位置する構成材を第2シート層20Bとし、かつそのウエスト開口縁で内面側に折り返してなる折り返し部分20Cを第1シート層20Aとして、その間に弾性フィルム30を介在させるとともに、それ以外の部分では内側に位置する構成材を第1シート層20Aとし、外側に位置する構成材を第2シート層20Bとして、その間に弾性フィルム30を介在させることができる。もちろん、前後方向の全体にわたり第1シート層20Aの構成材及び第2シート層20Bの構成材を個別に設け、構成材を折り返しすることなく、第1シート層20Aの構成材及び第2シート層20Bの構成材間に弾性フィルム30を介在させることもできる。
【0052】
弾性フィルム30は特に限定されるものではなく、それ自体弾性を有する熱可塑性樹脂フィルムであれば、無孔のものの他、通気のために多数の孔やスリットが形成されたものも用いることができる。特に、幅方向(伸縮方向、MD方向)における引張強度が8〜25N/35mm、前後方向(伸縮方向と直交する方向、CD方向)における引張強度が5〜20N/35mm、幅方向における引張伸度が450〜1050%、及び前後方向における引張伸度が450〜1400%の弾性フィルム30であると好ましい。弾性フィルム30の厚みは特に限定されないが、20〜40μm程度であるのが好ましい。
【0053】
(伸縮領域及び非伸縮領域)
外装体20における弾性フィルム伸縮構造20Xを有する領域は、非伸縮領域70と、この非伸縮領域70の少なくとも幅方向一方側に設けられた、幅方向に伸縮可能な伸縮領域80とを有している。これら伸縮領域80及び非伸縮領域70の配置は適宜定めることができる。本実施形態のようなパンツタイプ使い捨ておむつの外装体20の場合、吸収体13と重なる部分は伸縮が不要な領域であるため、図示形態のように、吸収体13と重なる部分の一部又は全部(内外固定領域10Bのほぼ全体を含むことが望ましい)を非伸縮領域70とするのは好ましい。もちろん、吸収体13と重なる領域からその幅方向又は前後方向に位置する吸収体13と重ならない領域にかけて非伸縮領域70を設けることもでき、吸収体13と重ならない領域にのみ非伸縮領域70を設けることもる。
【0054】
(伸縮領域)
伸縮領域80では、弾性フィルム30が幅方向に沿って直線的に連続する部分32を有しており、かつ弾性フィルム30の収縮力により幅方向に収縮しているとともに、幅方向に伸長可能となっている。より具体的には、弾性フィルム30を幅方向に伸長した状態で、幅方向及びこれと直交する前後方向(伸縮方向と直交する方向)にそれぞれ間隔を空けて、弾性フィルム30の貫通孔31を介して第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合し、多数のシート接合部40を形成することにより、伸縮領域80及び非伸縮領域70の両者を含む弾性フィルム伸縮構造20X全体を形成するとともに、伸縮領域80では弾性フィルム30が幅方向に沿って直線的に連続する部分を有するように貫通孔31を配置することによって、このような伸縮性を付与することができる。
【0055】
伸縮領域80では、自然長状態では、
図7(d)及び
図9(d)に示すように、シート接合部40間の第1シート層20A及び第2シート層20Bが互いに離間する方向に膨らんで、前後方向に延びる収縮皺25が形成され、
図7(c)及び
図9(c)に示すように、幅方向にある程度伸長した装着状態でも、収縮皺25は伸ばされるものの、残るようになっている。また、図示形態のように、第1シート層20A及び第2シート層20Bは、少なくともシート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20B間以外では弾性フィルム30と接合されていないと、装着状態を想定した
図7(c)及び
図9(d)及び第1シート層20A及び第2シート層20Bの展開状態を想定した
図7(a)(b)及び
図9(a)(b)からも分かるように、これらの状態では、弾性フィルム30における貫通孔31と、シート接合部40との間に隙間が形成され、弾性フィルム30の素材が無孔のフィルムやシートであっても、この隙間により通気性が付加される。また、
図7(d)及び
図9(d)に示す自然長状態では、弾性フィルム30の収縮により貫通孔31がすぼまり、貫通孔31とシート接合部40との間に隙間がほとんど形成されない。なお、装着状態及び自然長状態の収縮皺25の状態は、
図8及び
図10の参考サンプル写真(通気孔27が穿孔されていないサンプル)にも現れている。
【0056】
伸縮領域80の幅方向の弾性限界伸びは200%以上(好ましくは265〜295%)とすることが望ましい。伸縮領域80の弾性限界伸びは、製造時の弾性フィルム30の伸長率によってほぼ決まるがこれを基本として、幅方向の収縮を阻害する要因により低下する。このような阻害要因の主なものは、幅方向において単位長さ当たりに占めるシート接合部40の長さ40xの割合であり、この割合が大きくなるほど弾性限界伸びが低下する。通常の場合、シート接合部40の長さ40xはシート接合部40の面積率と相関があるため、伸縮領域80の弾性限界伸びはシート接合部40の面積率により調整できる。
【0057】
伸縮領域80の伸長応力は、主に弾性フィルム30が幅方向に沿って直線的に連続する部分32の幅32wの総和により調整することができる。弾性フィルム30が幅方向に沿って直線的に連続する部分32の幅32wは、当該連続する部分32の両側縁に接する貫通孔31の、前後方向の間隔31dに等しく、当該貫通孔31の間隔31dは、前後方向における貫通孔31の長さ31yと、前後方向におけるシート接合部40の長さ40yとが等しいとき(前述の貫通孔31及びシート接合部40の同時形成手法を採用する場合等)には、当該連続する部分の両側縁に接するシート接合部40の、前後方向の間隔40dに等しい。よって、この場合には、前後方向において単位長さ当たりに占めるシート接合部40の長さ40yの割合により、伸縮領域80の伸長応力を調整することができ、通常の場合、シート接合部40の長さ40yはシート接合部40の面積率と相関があるため、シート接合部40の長さはシート接合部40の面積率により調整できる。伸縮領域80の伸長応力は、弾性限界の50%まで伸長したときの伸長応力を目安とすることができる。
【0058】
伸縮領域80におけるシート接合部40の面積率及び個々のシート接合部40の面積は適宜定めることができるが、通常の場合、次の範囲内とするのが好ましい。
シート接合部40の面積:0.14〜3.5mm
2(特に0.14〜1.0mm
2)
シート接合部40の面積率:1.8〜19.1%(特に1.8〜10.6%)
【0059】
このように、伸縮領域80の弾性限界伸び及び伸長応力はシート接合部40の面積により調整できるため、
図15に示すように、伸縮領域80内にシート接合部40の面積率が異なる複数の領域を設け、部位に応じてフィット性を変化させることができる。
図15に示す形態では、前身頃Fにおける脚の付け根に沿って斜め方向に延びる領域81、及び脚開口の縁部領域82は、それ以外の領域と比べてシート接合部40の面積率が高く、従って伸長応力が弱く、柔軟に伸縮する領域となっている。また、後身頃Bにおける腸骨対向領域83、及び脚開口の縁部領域82も、それ以外の領域と比べてシート接合部40の面積率が高く、したがって伸長応力が弱く、柔軟に伸縮する領域となっている。
【0060】
(非伸縮領域)
一方、非伸縮領域70は、弾性フィルム30は幅方向に連続するものの、貫通孔31の存在により幅方向に沿って直線的に連続する部分を有しない領域とされている。したがって、弾性フィルム30を幅方向に伸長した状態で、幅方向及びこれと直交する前後方向にそれぞれ間隔を空けて、弾性フィルム30の貫通孔31を介して第1シート層20A及び第2シート層20Bを接合し、多数のシート接合部40を形成することにより、伸縮領域80及び非伸縮領域70の両者を含む弾性フィルム伸縮構造20X全体を形成するとしても、
図11に示すように、非伸縮領域70では、弾性フィルム30が幅方向に沿って直線的に連続しないため、弾性フィルム30の収縮力が第1シート層20A及び第2シート層20Bにほとんど作用せず、伸縮性がほぼ消失し、弾性限界伸びは100%に近くなるのである。そしてこのような非伸縮領域70では、第1シート層20A及び第2シート層20Bが間隔を空けて配列された多数のシート接合部40で接合されており、シート接合部40が連続的とならないため、柔軟性の低下は防止される。換言すれば、弾性フィルム30が幅方向に沿って直線的に連続しない部分の有無により伸縮領域80及び非伸縮領域70を形成することができる。また、非伸縮領域70でも弾性フィルム30の連続性が残っており、
図12に示される参考サンプル写真(通気孔27が穿孔されていないサンプル)からも分かるように、弾性フィルム30の独立切断片が残ることもなく、また皺も形成されないため、極めて見栄えが良く、かつ貫通孔31による厚み方向の通気性が確保される。非伸縮領域70は、幅方向の弾性限界伸びが120%以下(好ましくは110%以下、より好ましくは100%)であると好ましい。
【0061】
非伸縮領域70における弾性フィルム30における貫通孔31の配列パターンは適宜定めることができるが、
図11〜
図14に示すように千鳥状配置とし、貫通孔31の前後方向の中心間隔31eが貫通孔31の前後方向の長さ31yより短いパターンとすると、弾性フィルム30の連続性を維持しつつ幅方向の直線連続性をほぼ完全に無くすことができ、見栄えも
図15に示すように好ましいものとなる。この場合、貫通孔31の幅方向の中心間隔31fが貫通孔31の幅方向の長さ31xより短いとがより好ましい。
【0062】
通常の場合、中でも弾性フィルム30を幅方向に4倍に伸長したときの伸長応力が2.5〜4.5N/35mmのものである場合、非伸縮領域70を幅方向に弾性限界まで伸ばした状態で、貫通孔31の前後方向の中心間隔31eが0.3〜2.7mm、かつ貫通孔31の前後方向の長さ31yが0.5〜3.0mm、特に0.7〜1.1mmであると好ましい。また、貫通孔31の幅方向の中心間隔31fが、貫通孔31の前後方向の長さ31yの3.5〜5.5倍、特に3.5〜4.5倍であると好ましく、貫通孔31の幅方向の長さ31xが、貫通孔31の幅方向の中心間隔31fの1.0〜4.0倍、特に1.5〜3.0倍であると好ましい。なお、非伸縮領域70を幅方向に弾性限界まで伸ばした状態(換言すれば第1シート層20A及び第2シート層20Bが完全に展開した状態)では、貫通孔31の幅方向の中心間隔31fはシート接合部40の幅方向の中心間隔40fに等しく、貫通孔31の前後方向の中心間隔31eはシート接合部40の前後方向の中心間隔40eに等しく、貫通孔31の前後方向の長さ31yはシート接合部40の前後方向の長さ40yに等しい。
【0063】
非伸縮領域70では、シート接合部40における第1シート層20A及び第2シート層20Bの間以外では、第1シート層20A及び第2シート層20Bと弾性フィルム30とが接合されておらず、かつ自然長の状態でシート接合部40の幅方向両側に弾性フィルム30の貫通孔31の周縁及びシート接合部40が離間されて形成された隙間を有していると、弾性フィルム30の素材が無孔のフィルムやシートであっても、この隙間により常に通気性が付加されるため好ましい。前述の貫通孔31及びシート接合部40の同時形成手法を採用する場合には、シート接合部40の形状等に関係なく、自然にこの状態になる。
【0064】
個々のシート接合部40及び貫通孔31の自然長状態での形状は、特に限定されないが、柔軟性の観点からは面積が小さいことが望ましく、弾性フィルム30の幅方向の直線連続性をなくすためには、前後方向に長い形状であることが望ましいため、前後方向に長い楕円形、長方形(
図11参照)、ひし形(
図13(b)参照)、凸レンズ形(
図13(a)参照)、凹レンズ形(
図14(a)参照)とすることが好ましい。ただし、ひし形のように角が鋭角であると、弾性フィルム30が破断しやすい。これに対して、凸レンズ形はシート接合部40の溶着が安定するため好ましく、凹レンズ形は面積をより小さくできる点で好ましい。
【0065】
非伸縮領域におけるシート接合部40の面積率及び個々のシート接合部40の面積は適宜定めることができるが、通常の場合、次の範囲内とすると、各シート接合部40の面積が小さくかつシート接合部40の面積率が低いことにより非伸縮領域70が硬くならいためが好ましい。
シート接合部40の面積:0.10〜0.75mm
2(特に0.10〜0.35mm
2)
シート接合部40の面積率:4〜13%(特に5〜10%)
【0066】
このように、非伸縮領域70の弾性限界伸びは、貫通孔31の配列パターンや、個々の貫通孔31の寸法及び中心間隔により変化させることができる。よって、図示しないが、これらを伸縮領域80内の複数個所、又は複数の非伸縮領域70間で異ならしめることもできる。例えば、前身頃Fの非伸縮領域70における弾性限界伸びを後身頃Bの非伸縮領域70における弾性限界伸びよりも大きくするのは一つの好ましい形態である。
【0067】
非伸縮領域70は、伸縮領域と同様に幅方向に沿って直線的に連続する部分を有するものの、シート接合部の面積率が伸縮領域よりも高いことにより弾性限界伸びが著しく低く、具体的には130%以下とされている形態、従来の糸ゴムを用いる伸縮構造のように幅方向に一か所又は複数個所で切断する形態等、他の伸縮性を殺す形態を採用することもできる。
【0068】
(通気孔)
特徴的には、
図7及び
図9、並びに
図17及び
図18に示すように、伸縮領域80において、第1シート層20A及び第2シート層20Bにおけるシート接合部40以外の部分に、厚み方向に貫通する通気孔27が穿孔されている。この結果、弾性フィルム30の貫通孔31と、第1シート層20A及び第2シート層20Bの少なくとも一方の通気孔27とにより、肌触りを損ねることなく、厚み方向の通気性を向上させることができる。第1シート層20A及び第2シート層20Bのいずれか一方にのみ通気孔27を形成しても良い。また、伸縮領域80に通気孔27を形成するとともに、又は伸縮領域80に通気孔27を形成せずに、
図11、
図13及び
図14に示すように、非伸縮領域70に通気孔27を形成することもできる。
【0069】
通気孔27は、打ち抜き加工や針刺し加工により形成することができ、シート接合部40の形成前、つまり第1シート層20A及び第2シート層20Bの単独の状態で加工しても、またシート接合部40の形成後に第1シート層20A、弾性フィルム30及び第2シート層20Bが積層された状態で加工しても良い。ただし、シート接合部40の形成後には弾性フィルム30が存在するため、後述するように弾性フィルム30の貫通孔31と重なる位置で穿孔することが望ましい。もちろん、第1シート層20A、弾性フィルム30及び第2シート層20Bが積層された状態で、弾性フィルム30も合わせて穿孔することもできるが、その場合には当該穿孔による伸長応力や弾性限界伸びへの影響、弾性フィルム30の切断等を考慮する必要がある。
【0070】
通気孔27の形成位置は、伸縮領域80が使用時に伸長される際、弾性フィルム30に形成された貫通孔31はシート接合部40の幅方向両側に拡大するため、及び非伸縮領域70では自然長状態でも貫通孔31はシート接合部40の幅方向両側に広がっているため、図示形態のように、伸縮領域80及び非伸縮領域70のいずれの領域においても、通気孔27はシート接合部40の幅方向両側に少なくとも一つ形成されていると、他の位置に形成されているよりも通気性向上の観点で好ましい。
【0071】
特に、
図7及び
図9に示すように、伸縮領域80の伸長状態、つまり自然長状態以外の弾性限界を含む状態で、通気孔27の一部又は全体が貫通孔31と重なるように、貫通孔31に対して通気孔27が配置されているのは一つの好ましい形態である。伸縮領域80が使用時に伸長される際、弾性フィルム30に形成された貫通孔31は幅方向に拡大するため、この拡大した貫通孔31に通気孔27の一部又は全体が重なるように配置すると、貫通孔31を介した通気性が特に向上する。なお、
図7(a)及び
図9(a)は、弾性限界での重なり状態を示しているが、弾性限界まで伸長する過程で重なりはじめることはいうまでもなく、したがって装着状態を想定し、伸長率が150〜200%の範囲で第1シート層20A及び第2シート層20Bの通気孔27が弾性フィルム30の貫通孔31と重なるように構成することが好ましい。
【0072】
同様の理由から、
図11、
図13及び
図14に示すように、非伸縮領域70に通気孔27を形成する場合には、非伸縮領域の自然長状態で、通気孔27の一部又は全体が貫通孔31と重なるように、貫通孔31に対して通気孔27が配置されているのは好ましい。
図14(b)に示すように、一つの通気孔が複数の貫通孔に跨って重なるように配置するのも好ましい形態である。
図14(b)に示す形態は、非伸縮領域70に関するものであるが、伸縮領域80でも同様の形態を採用できることはいうまでもない。
【0073】
なお、伸縮領域80及び非伸縮領域70において、使用中に通気孔27の一部又は全体が貫通孔31に重なるように配置すると、通気性は向上するが、透過性の向上により肌の露出度が増えたり、漏れ防止性が低下したりするおそれがある。よって、このような問題を回避する場合は、図示しないが伸縮領域80の伸縮状態に関係なく、通気孔27の全体が貫通孔31と重ならないように、通気孔27及び貫通孔31を配置することが好ましい。
【0074】
第1シート層20A及び第2シート層20Bは弾性フィルム30を覆う層であり、耐摩擦性等の耐久性が要求される部材である。また、第1シート層20A及び第2シート層20Bを不織布により形成する場合、素材自体の通気性があるため、通気孔27の数は過度に増加させなくても良い。一方、弾性フィルム30の貫通孔31は、通気性を確保するため、及び第1シート層20A及び第2シート層20Bを均等に一体化するためには相当数必要である。よって、第1シート層20A及び第2シート層20Bが不織布である場合には、
図13(b)及び
図14(b)に示すように、通気孔27の単位面積当たりの数を貫通孔31の単位面積当たりの数よりも少なくするのも、一つの好ましい形態である。なお、
図13(b)及び
図14(b)に示す形態は、非伸縮領域70に関するものであるが、伸縮領域80でも同様の形態を採用できることはいうまでもない。
【0075】
通気孔27の形状は特に限定されず、真円形(図示形態)、楕円形、三角形、長方形、ひし形等の多角形、あるいは星形、雲形等、任意の形状とすることができる。個々の通気孔27の寸法は特に限定されないが、小さ過ぎたり、少な過ぎたりすると通気性向上作用に乏しくなり、大き過ぎたり、多過ぎたりすると、第1シート層20A及び第2シート層20Bの強度の低下や、見栄えの悪化をもたらすため、通常の場合、通気孔27の面積は0.34〜3.5mm
2程度とすることが好ましく、通気孔27の面積率は4.4〜19.1%程度とすることが好ましい。
【0076】
通気孔27の平面配列は適宜定めることができるが、
図7、
図9、
図11、
図13及び
図14に示すように、規則的に繰り返される平面配列が好ましく、
図21に示されるシート接合部40の配列形態と同様に、斜方格子状、六角格子状(これらは千鳥状ともいわれる)、正方格子状、矩形格子状、平行体格子(図示のように、多数の平行な斜め方向の列の群が互いに交差するように2群設けられる形態)状等(これらが幅方向に対して90度未満の角度で傾斜したものを含む)のように規則的に繰り返されるものの他、通気孔27の群(群単位の配列は規則的でも不規則でも良く、模様や文字状等でも良い)が規則的に繰り返されるものとすることもできる。
【0077】
(前後押さえシート)
図1及び
図4にも示されるように、外装体20の内面上に取り付けられた内装体10の前後端部をカバーし、且つ内装体10の前後縁からの漏れを防ぐために、前後押さえシート50,60が設けられていても良い。図示形態について更に詳細に説明すると、前押さえシート50は、前身頃Fの外装体20の内面のうちウエスト端部領域23の折り返し部分20Cの内面から内装体10の前端部と重なる位置まで幅方向全体にわたり延在しており、後押さえシート60は、後身頃Bの外装体20の内面のうちウエスト端部領域23の折り返し部分20Cの内面から内装体10の後端部と重なる位置まで幅方向全体にわたり延在している。前後押さえシート50,60の股間側の縁部に幅方向の全体にわたり(中央部のみでも良い)若干の非接着部分を設けると、接着剤がはみ出ないだけでなく、この部分をトップシートから若干浮かせて防漏壁として機能させることができる。
【0078】
図示形態のように、前後押さえシート50,60を別体として取り付けると、素材選択の自由度が高くなる利点があるものの、資材や製造工程が増加する等のデメリットもある。そのため、外装体20をおむつ内面に折り返してなる折り返し部分20Cを、内装体10と重なる部分まで延在させて、前述の押さえシート50,60と同等の部分を形成することもできる。
【0079】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「前身頃」「後身頃」は、パンツタイプ使い捨ておむつの前後方向中央を境としてそれぞれ前側及び後側の部分を意味する。また、股間部は、パンツタイプ使い捨ておむつの前後方向中央を含む前後方向範囲を意味し、吸収体が括れ部を有する場合には当該括れ部を有する部分の前後方向範囲を意味する。
・「弾性限界伸び」とは、伸縮方向における弾性限界(換言すれば第1シート層及び第2シート層が完全に展開した状態)の伸びを意味し、弾性限界時の長さを自然長を100%としたときの百分率で表すものである。
・「面積率」とは単位面積に占める対象部分の割合を意味し、対象領域(例えば伸縮領域80、非伸縮領域70、主伸縮部分、緩衝伸縮部分)における対象部分(例えばシート接合部40、貫通孔31の開口、通気孔)の総和面積を当該対象領域の面積で除して百分率で表すものであり、特に伸縮構造を有する領域における「面積率」とは、伸縮方向に弾性限界まで伸ばした状態の面積率を意味するものである。対象部分が間隔を空けて多数設けられる形態では、対象部分が10個以上含まれるような大きさに対象領域を設定して、面積率を求めることが望ましい。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から米坪板(200mm×250mm、±2mm)を使用し、200mm×250mm(±2mm)の寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、20倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・吸収体の「厚み」は、株式会社尾崎製作所の厚み測定器(ピーコック、ダイヤルシックネスゲージ大型タイプ、型式J−B(測定範囲0〜35mm)又は型式K−4(測定範囲0〜50mm))を用い、試料と厚み測定器を水平にして、測定する。
・上記以外の「厚み」は、自動厚み測定器(KES−G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm
2、及び加圧面積:2cm
2の条件下で自動測定する。
・「引張強度」及び「引張伸度(破断伸び)」は、試験片を幅35mm×長さ80mmの長方形状とする以外は、JIS K7127:1999「プラスチック−引張特性の試験方法−」に準じて、初期チャック間隔(標線間距離)を50mmとし、引張速度を300mm/minとして測定される値を意味する。引張試験機としては、例えばSHIMADZU社製のAUTOGRAPH AGS−G100Nを用いることができる。
・「伸長応力」とは、JIS K7127:1999「プラスチック−引張特性の試験方法−」に準じて、初期チャック間隔(標線間距離)を50mmとし、引張速度を300mm/minとする引張試験により、弾性領域内で伸長するときに測定される引張応力(N/35mm)を意味し、伸長の程度は試験対象により適宜決定することができる。試験片は幅35mm、長さ80mm以上の長方形状とすることが好ましいが、幅35mmの試験片を切り出すことができない場合には、切り出し可能な幅で試験片を作成し、測定値を幅35mmに換算した値とする。また、対象領域が小さく、十分な試験片を採取できない場合であっても、伸長応力の大小を比較するのであれば、適宜小さい試験片でも同寸法の試験片を用いる限り少なくとも比較は可能である。引張試験機としては、例えばSHIMADZU社製のAUTOGRAPH AGS−G100Nを用いることができる。
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内で行うものとする。