特許第6331214号(P6331214)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ノーリツの特許一覧

<>
  • 特許6331214-熱交換器およびこれを備えた温水装置 図000002
  • 特許6331214-熱交換器およびこれを備えた温水装置 図000003
  • 特許6331214-熱交換器およびこれを備えた温水装置 図000004
  • 特許6331214-熱交換器およびこれを備えた温水装置 図000005
  • 特許6331214-熱交換器およびこれを備えた温水装置 図000006
  • 特許6331214-熱交換器およびこれを備えた温水装置 図000007
  • 特許6331214-熱交換器およびこれを備えた温水装置 図000008
  • 特許6331214-熱交換器およびこれを備えた温水装置 図000009
  • 特許6331214-熱交換器およびこれを備えた温水装置 図000010
  • 特許6331214-熱交換器およびこれを備えた温水装置 図000011
  • 特許6331214-熱交換器およびこれを備えた温水装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331214
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】熱交換器およびこれを備えた温水装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/00 20060101AFI20180521BHJP
   F24H 1/14 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   F24H9/00 A
   F24H1/14 C
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-3779(P2014-3779)
(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公開番号】特開2015-132415(P2015-132415A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】廣津 誠
(72)【発明者】
【氏名】大東 健
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−012491(JP,A)
【文献】 特開昭55−092894(JP,A)
【文献】 実開昭60−173851(JP,U)
【文献】 特開2013−096609(JP,A)
【文献】 実開昭55−150291(JP,U)
【文献】 特開昭58−000096(JP,A)
【文献】 特開2014−119212(JP,A)
【文献】 特開2008−076002(JP,A)
【文献】 特開2002−267254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00
F24H 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用気体が内部に供給される缶体と、この缶体内に配された複数の伝熱管と、を備えており、
前記複数の伝熱管の配列部として、略同一高さに揃えられて水平方向に間隔を隔てて一定の第1および第2の配列ピッチP1,P2でそれぞれ並んだ複数の伝熱管が、上下2段配列とされた第1および第2の伝熱管配列部を備えており、
これら第1および第2の伝熱管配列部の前記複数の伝熱管は、半円弧状またはU字状のベンド管としての第1および第2の配管部材を介してそれぞれ一連に接続されているとともに、前記第1の配列ピッチP1は、前記第2の配列ピッチP2以下とされており、
前記第1の伝熱管配列部のうち、湯水が最後に流れる最下流の伝熱管は、第3の配管部材を介して前記第2の伝熱管配列部の1つの伝熱管と接続され、前記第1の伝熱管配列部を流れた湯水は、前記第3の配管部材を通過して前記第2の伝熱管配列部に流れていくように構成されている、熱交換器であって、
前記第2の伝熱管配列部のうち、前記第3の配管部材を介して前記最下流の伝熱管と接続される伝熱管は、前記最下流の伝熱管に最も接近した伝熱管とは別の伝熱管であり、これら2つの伝熱管の中心間距離P3および前記第3の配管部材は、前記第1の配列ピッチP1および前記第1の配管部材よりも長くされており、
前記第3の配管部材は、長手方向中間部に直状管体部を有するベンド管とされていることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記第1および第2の伝熱管配列部を構成する複数の伝熱管は、左右対称の千鳥配列とされており、前記第3の配管部材を介して接続される2つの伝熱管の中心どうしを結ぶ直線Laの水平に対する傾斜角α1は、60°未満とされている、熱交換器。
【請求項3】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記第1および第2の伝熱管配列部のそれぞれを構成する複数の伝熱管は、上下高さ方向において互いに重なった配置に設けられており、
前記第1および第2の伝熱管配列部どうしの配管接続構造においては、互いに水平方向に位置ずれして斜め上下の位置関係にある2つの伝熱管が前記第3の配管部材を介して接続されている、熱交換器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の熱交換器であって、
前記缶体内には、第1および第2の熱交換部が横並び状に設けられ、かつ前記第1の熱交換部は、前記第2の熱交換部よりも占有面積が大きくされており、
前記第2の熱交換部は、前記第1および第2の伝熱管配列部を用いて構成されており、
前記第1の熱交換部は、前記第1および第2の伝熱管配列部とは別の複数の伝熱管が略同一高さに揃えられて水平方向に並べられ、かつ一連に接続された伝熱管配列部が、上下方向において単段で設けられた構成とされている、熱交換器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の熱交換器を備えていることを特徴とする、温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガスなどの加熱用気体から伝熱管を用いて熱回収を行なうように構成された熱交換器、およびこの熱交換器を備えた給湯装置などの温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス給湯装置などに用いられる熱交換器の具体例としては、たとえば図10に示すようなものがある。
同図に示す熱交換器Bは、缶体30内に、プレート状の複数のフィン31、およびこれら複数のフィン31に貫通した複数の伝熱管Tが収容された構成である。バーナ(図示略)を用いて発生させた燃焼ガスからはフィン31および伝熱管Tによって熱回収がなされ、このことにより複数の伝熱管T内を流れる湯水が加熱される。
このような熱交換器Bにおいては、複数の伝熱管Tを、たとえば上下2段などに配列させた上で、これら複数の伝熱管Tのそれぞれに加熱対象の湯水が順次流れていくように構成される。この場合、同図の矢印で示すように、湯水は複数の伝熱管Tのいわば配列順序通りに流れるように構成されるのが通例である。具体的には、下段の第1の伝熱管配列部Raに入水して流れた湯水は、その後に上段の第2の伝熱管配列部Rbに流れるようにされるが、そのための手段としては、第1および第2の伝熱管配列部Ra,Rbのそれぞれの一端に位置して互いに最接近している2つの伝熱管T1,T2を互いに接続する手段が採用されている(たとえば、特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、改善すべき余地があった。
【0004】
前記したような熱交換器Bは、薄型化を図ることが要望される。そのためには、図11(b)に示すように、第1および第2の伝熱管配列部Ra,Rbの上下間隔Hbを小さくする必要がある。
ところが、従来においては、配管部材19を介して接続される2つの伝熱管T1,T2の中心間距離P3を小さくする上で一定の限界があることや、2つの伝熱管T1,T2の中心どうしを結ぶ直線Lbの傾斜角α2を小さな角度に設定することを好適に実現できないといった理由から、上下間隔Hbをさほど小さくすることはできないものとなっていた。この点を以下に、より詳しく説明する。
【0005】
まず、第1および第2の伝熱管配列部Ra,Rbの2つの伝熱管T1,T2の接続に用いられる配管部材19としては、たとえば図11(a)に示すように、半円弧状またはU字状に形成された金属製のベンド管が用いられるのが一般的である。このような配管部材19は、その最小曲げ半径rを小さくする上で限界がある。たとえば、外径が16mmの銅製パイプを曲げる際の最小曲げ半径は16mm程度であるのが一般的であり、最小曲げ半径rをそれよりも小さくすることは容易でない。曲げ半径をさらに小さくしようとすると、銅製パイプに大きなダメージが生じ、強度低下や損傷などを生じるからである。このようなことから、2つの伝熱管T1,T2の中心間距離P3は、少なくとも配管部材19の最小曲げ半径rの2倍の値となる。したがって、中心間距離P3を、小さくすることによって上下間隔Hbをさらに小さくすることは難しい。
一方、複数の伝熱管Tの配列は、左右対称とすることが望まれる。複数の伝熱管Tが熱交換器Bの缶体30内の左右いずれ一方に偏った左右非対称の分布に設けられていたのでは、燃焼ガスからの熱回収効率が悪くなるからである。このため、第1および第2の伝熱管配列部Ra,Rbのそれぞれの伝熱管ピッチP1,P2が、中心間距離P3と同一寸法とされた千鳥配列の場合には、前記した傾斜角α2は、60°となる。したがって、傾斜
角α2を60°未満の小さい角度に設定することによって上下間隔Hbを小さくすることも難しい。
このようなことから理解されるように、従来においては、第1および第2の伝熱管配列部Ra,Rbの上下間隔Hbをさほど小さくすることができず、その結果、熱交換器Bの薄型化をより促進する上で苦慮するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62−45573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、全体の薄型化を好適に図ることが可能な熱交換器、およびこのような熱交換器を備えた温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供される熱交換器は、加熱用気体が内部に供給される缶体と、この缶体内に配された複数の伝熱管と、を備えており、前記複数の伝熱管の配列部として、略同一高さに揃えられて水平方向に間隔を隔てて一定の第1および第2の配列ピッチP1,P2でそれぞれ並んだ複数の伝熱管が、上下2段配列とされた第1および第2の伝熱管配列部を備えており、これら第1および第2の伝熱管配列部の前記複数の伝熱管は、半円弧状またはU字状のベンド管としての第1および第2の配管部材を介してそれぞれ一連に接続されているとともに、前記第1の配列ピッチP1は、前記第2の配列ピッチP2以下とされており、前記第1の伝熱管配列部のうち、湯水が最後に流れる最下流の伝熱管は、第3の配管部材を介して前記第2の伝熱管配列部の1つの伝熱管と接続され、前記第1の伝熱管配列部を流れた湯水は、前記第3の配管部材を通過して前記第2の伝熱管配列部に流れていくように構成されている、熱交換器であって、前記第2の伝熱管配列部のうち、前記第3の配管部材を介して前記最下流の伝熱管と接続される伝熱管は、前記最下流の伝熱管に最も接近した伝熱管とは別の伝熱管であり、これら2つの伝熱管の中心間距離P3および前記第3の配管部材は、前記第1の配列ピッチP1および前記第1の配管部材よりも長くされており、前記第3の配管部材は、長手方向中間部に直状管体部を有するベンド管とされていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、第1および第2の伝熱管配列部のうち、第3の配管部材を介して接続される2つの伝熱管の中心間距離は、最も接近している2つの伝熱管どうしを接続していた従来技術と比較すると長くなるものの、2つの伝熱管の中心どうしを結ぶ直線の傾斜角については、従来よりもかなり小さくすることが可能である。この傾斜角を小さくし得ることに基づき、第1および第2の伝熱管配列部の上下間隔を、従来よりも小さくすることが可能である。その結果、熱交換器の薄型化を促進することができる。
なお、既述したように、第3の配管部材を介して接続された2つの伝熱管の中心間距離は、従来技術よりも長くなるものの、このことはとくに不具合を生じさせるものではなく、前記2つの伝熱管を適切に配管接続することが可能である。また、複数の伝熱管を左右対称に配置することも好適に実現できる。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記第1および第2の伝熱管配列部を構成する複数の伝熱管は、左右対称の千鳥配列とされており、前記第3の配管部材を介して接続される2つの伝熱管の中心どうしを結ぶ直線Laの水平に対する傾斜角α1は、60°未満とされている。
【0012】
このような構成によれば、複数の伝熱管が千鳥配列とされている構造において、第1および第2の伝熱管配列部の上下間隔を小さくすることが好適に実現できる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記第1および第2の伝熱管配列部のそれぞれを構成する複数の伝熱管は、上下高さ方向において互いに重なった配置に設けられており、前記第1および第2の伝熱管配列部どうしの配管接続構造においては、互いに水平方向に位置ずれして斜め上下の位置関係にある2つの伝熱管が前記第3の配管部材を介して接続されている。
【0014】
このような構成によれば、第1および第2の伝熱管配列部を構成する複数の伝熱管が上下に重なった配置(非千鳥配列)に設けられている構造において、第1および第2の伝熱管配列部の上下間隔を小さくすることが好適に実現できる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記缶体内には、第1および第2の熱交換部が横並び状に設けられ、かつ前記第1の熱交換部は、前記第2の熱交換部よりも占有面積が大きくされており、前記第2の熱交換部は、前記第1および第2の伝熱管配列部を用いて構成されており、前記第1の熱交換部は、前記第1および第2の伝熱管配列部とは別の複数の伝熱管が略同一高さに揃えられて水平方向に並べられ、かつ一連に接続された伝熱管配列部が、上下方向において単段で設けられた構成とされている。
【0016】
このような構成によれば、いわゆる1缶2回路方式の熱交換器となる。第1の熱交換部は、複数の伝熱管が上下高さ方向に単段で設けられているために、これらの伝熱管に起因して熱交換器全体の薄型化が阻害されることはない。第1の熱交換部は、占有面積が大きいために、複数の伝熱管が上下高さ方向に単段であっても、熱回収量を多くし、所望の湯水加熱能力を得ることが可能である。一方、第2の熱交換部は、第1の熱交換部よりも占有面積が小さいものの、第1および第2の伝熱管配列部を用いて構成されているために、その薄型化を図りつつ、熱回収量を多くし、やはり所望の湯水加熱能力を得ることができる。
【0017】
本発明の第2の側面により提供される温水装置は、本発明の第1の側面により提供される熱交換器を備えていることを特徴としている。
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される熱交換器について上述したのと同様な効果が得られる。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明が適用された熱交換器(1次熱交換器)を備えた温水装置の一例を示す概略正面断面図である。
図2図1に示す1次熱交換器の平面断面図である。
図3図1に示す1次熱交換器の第2の熱交換部の伝熱管接続構造の説明図である。
図4図1のIV−IV断面図である。
図5図1のV−V断面図である。
図6】本発明の他の例を示す要部説明図である。
図7】本発明の他の例を示す要部説明図である。
図8】本発明の他の例を示す要部説明図である。
図9】本発明の他の例を示す断面図である。
図10】従来技術の一例を示す概略説明図である。
図11】(a)は、伝熱管の接続に用いられる配管部材の一例を示す説明図であり、(b)は、従来技術の伝熱管接続構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図1図5は、本発明が適用された温水装置、およびこれに関連する構成の一例を示している。
図1によく表われているように、本実施形態の温水装置WHは、バーナ5、1次熱交換器HE1、2次熱交換器HE2、およびこれら全体を囲む外装ケース90を備えている。この温水装置WHは、一般給湯と、暖房用給湯または風呂給湯との2系統の給湯動作を独立して行なうことが可能であり、1次熱交換器HE1および2次熱交換器HE2は、ともに1缶2回路方式である。
1次熱交換器HE1は、本発明に係る熱交換器の一例に相当する。2次熱交換器HE2は、本発明に係る熱交換器には相当しない。
【0022】
バーナ5は、たとえばガスバーナであり、ファン51からバーナケース50内に上向きに送られてくる燃焼用空気を利用して燃料ガスを燃焼させる。ただし、このバーナ5の燃焼領域は、個別に燃焼駆動制御が可能な第1および第2の燃焼領域a1,a2に区分されており、その上方領域は仕切り部材52によって仕切られている。第1および第2の燃焼領域a1,a2のそれぞれにおいて発生された燃焼ガスは、後述する第1および第2の熱交換部A1,A2に向けて個々に進行する。
【0023】
1次熱交換器HE1は、バーナ5から上向きに進行してくる燃焼ガスから顕熱を回収するためのものであり、バーナケース50上に載設された缶体6内に、第1および第2の熱交換部A1,A2を構成するプレート状の複数のフィン2A,2B、およびこれらを貫通した複数の伝熱管Ta,Tbが収容された構成である。
【0024】
缶体6は、上面部および下面部が開口した平面視略矩形の枠状または筒状であり、たとえば銅製である。伝熱管Ta,Tbやフィン2A,2Bも、缶体6と同様に、たとえば銅製である。フィン2A,2Bの相互間には、仕切部材3が介装され、第1および第2の熱交換部A1,A2は、この仕切部材3を挟んで缶体6内に横並び状に設けられている。第1の熱交換部A1は、第2の熱交換部A2よりも占有面積が大きくされているが、これは第1の熱交換部A1に配された伝熱管Taは一般給湯用の湯水加熱に利用されるために、伝熱管Tb側よりも高い湯水加熱能力が要求されるからである。
【0025】
第1の熱交換部A1においては、複数の伝熱管Taが、略同一高さに揃えられて缶体6の左右の幅方向に間隔を隔てて並べられており、伝熱管Taの配列数は、上下高さ方向に単段(1段)である。図2に示すように、複数の伝熱管Taは、缶体6の側壁60a,60bを貫通し、かつ缶体6の外部に位置する複数の配管部材12を介して一連に接続されている。配管部材12は、たとえば図11を参照して説明したようなベンド管である。缶体6の側壁60c寄りに位置する伝熱管Taに接続された配管部材13aの一端は、入水口15aとされている。入水口15aに供給された湯水は、複数の伝熱管Taを順次流れて、仕切部材3寄りの伝熱管Taに到達し、その後この伝熱管Taの一端部である出湯口16aから外部への出湯がなされる。このような流通過程において、前記湯水は加熱される。
【0026】
第2の熱交換部A2は、複数の伝熱管Tbの配列として、第1および第2の伝熱管配列部R1,R2が上下高さ方向に2段で設けられた構成である。第1および第2の伝熱管配
列部R1,R2のそれぞれは、複数の伝熱管Tbが略同一高さに揃えられて缶体6の左右の幅方向に間隔を隔てて並んだ構造である(本実施形態では、伝熱管Tbの本数は、第1の伝熱管配列部R1は3本、第2の伝熱管配列部R2は2本)。第1の伝熱管配列部R1の上側に、第2の伝熱管配列部R2が位置しており、複数の伝熱管Tbは、左右対称の千鳥配列とされている。複数の伝熱管Tbを上下2段配列としたのは、第2の熱交換部A2の占有面積を比較的小さくしつつ、湯水加熱能力をできる限り高くし、たとえば温水暖房装置の大型化などに好適に対処するためである。
【0027】
図2および図3に示すように、複数の伝熱管Tbは、伝熱管Taと同様に、缶体6の側壁60a,60bを貫通しており、かつベンド管である第1ないし第3の配管部材12a〜12cを介して一連に接続されている。
より具体的には、第1の伝熱管配列部R1においては、第1の配管部材12aを介して複数の伝熱管Tbが一連に接続されている。缶体6の側壁60d寄りの端部に位置する伝熱管Tbに接続されている配管部材13bの入水口15bに湯水が供給されると、この湯水は、第1の伝熱管配列部R1の伝熱管Tbを順次通過し、仕切部材3寄りの端部に位置する伝熱管Tb’(第1の伝熱管配列部R1における最下流の伝熱管)に到達する。この最下流の伝熱管Tb’は、第2の伝熱管配列部R2のうち、最下流の伝熱管Tb’に最接近している伝熱管Tbとは別の伝熱管Tb”(側壁60d寄りの伝熱管Tb”)と第3の配管部材12cを介して接続されている。第3の配管部材12cは、第1の配管部材12aなどとの干渉を生じない形態に形成されている。第2の伝熱管配列部R2の伝熱管Tbどうしは、第2の配管部材12bを介して接続されている。このことにより、第1の伝熱管配列部R1の最下流の伝熱管Tb’を通過した湯水は、第2の配管部材12bの伝熱管Tb”に流れた後に、第2の伝熱管配列部R2の仕切部材3寄りの伝熱管Tbに到達し、その後はこの伝熱管Tbの一端部である出湯口16bから外部に出湯する。
【0028】
第1の伝熱管配列部R1の伝熱管配列ピッチP1は、たとえば図11を参照して説明したのと同様に、たとえば最小曲げ半径rの2倍とされている。伝熱管配列ピッチP1、第2の伝熱管配列部R2の伝熱管配列ピッチP2、および2つの伝熱管Tb’,Tb”の中心間距離P3は、P3>P1 および P2≧P1 の関係にある。
伝熱管Tb’,Tb”の中心どうしを結ぶ直線Laの水平に対する傾斜角α1は、60°未満である。
第2の熱交換部A2を構成する複数の伝熱管Tbは、これらの幅方向中心線CLを中心として左右対称の配置に設けられている。
【0029】
図1によく表われているように、第1の伝熱管配列部R1は、第1の熱交換部A1の伝熱管Taの配列と略同一高さとされている。フィン2Aは、フィン2Bよりも上下高さ方向の幅が小さくされ、小サイズ化が図られている。これは、製造コストの低減化ならびに1次熱交換器HE1の全体の軽量化を図る上で好ましい。図面では省略しているが、フィン2A,2Bには、これらのフィン2A,2Bの適当な箇所を部分的に突出させた複数の凸状部(切り起こしによる凸状部や、バーリング加工部分など)が設けられている。これら凸状部は、フィン2A,2Bと燃焼ガスとの接触度合いを高めて熱回収量を多くするのに役立つ。
【0030】
2次熱交換器HE2は、1次熱交換器HE1を通過した燃焼ガスから潜熱を回収するためのものであり、1次熱交換器HE1上に載設されたケース7内に、複数の伝熱管80,81が収容され、かつそれらの間が仕切板74を介して仕切られた構成である。伝熱管80,81、ならびにケース7は、潜熱回収に伴って発生する強酸性のドレインに対する耐食性を有すべくその材質はたとえばステンレスである。複数の伝熱管80は、サイズが相違する螺旋状管体として形成されて重ね巻き状に配列されており、それらの上下両端部は、ケース7の外部に引き出されて通水用のヘッダ75a,75bと連結されている。複数
の伝熱管81も、その基本的な形態は伝熱管80と同様であり、重ね巻き状に配列された螺旋状管体として形成され、かつその上下両端部には、通水用のヘッダ75c,75dが連結されている。
【0031】
図4に示すように、1次熱交換器HE1の第1の熱交換部A1を通過した燃焼ガスは、ケース7の底壁部70aの給気口71aからケース7内に進行し、伝熱管80どうしの隙間を通過した後に、前壁部70bの排気口72から外部に排出される。また、図5に示すように、1次熱交換器HE1の第2の熱交換部A2を通過した燃焼ガスは、給気口71bからケース7内に進行し、伝熱管81どうしの隙間を通過した後に排気口72から外部に排出される。このような過程において、前記燃焼ガスから伝熱管80,81によって潜熱回収がなされる。
【0032】
図1に示すように、給水管95aから外部入水口90aに供給された湯水は、配管部92a、およびヘッダ75bを通過して2次熱交換器HE2の伝熱管80に流れる。その後、この湯水は、ヘッダ75aおよび配管部93aを介して1次熱交換器HE1の入水口15aに送られ、複数の伝熱管Taを順次通過する。これら複数の伝熱管Taを通過した湯水は、その後配管部94aを介して外部出湯口91aに到達した後に、たとえば台所や洗面所などに供給される。一方、給水管95bから外部入水口90bに供給された湯水は、配管部92bを介してヘッダ75dに供給され、2次熱交換器HE2の伝熱管81を流通する。その後、この湯水は、ヘッダ75cおよび配管部93bを介して1次熱交換器HE1の入水口15bに送られ、複数の伝熱管Tbを順次通過する。これら複数の伝熱管Tbを通過した湯水は、その後配管部94bを介して外部出湯口91bに到達した後に、温水暖房器具に供給され、あるいは風呂給湯に用いられる。
【0033】
次に、前記した温水装置WHの作用について説明する。
【0034】
まず、図1および図3を参照して説明したように、1次熱交換器HE1の第2の熱交換部A2においては、第1の伝熱管配列部R1の最下流の伝熱管Tb’が、第2の伝熱管配列部R2のうち、最下流の伝熱管Tb’に最も接近した伝熱管Tbではなく、それよりも遠く離れた位置の伝熱管Tb”に接続されている。このため、2つの伝熱管Tb’,Tb”の中心どうしを結ぶ直線Laの傾斜角α1を、60°未満とすることができる。このことにより、第1および第2の伝熱管配列部R1,R2の上下間隔Haを、図11(b)に示した従来の上下間隔Hbよりも小さくすることができる。その結果、第2の熱交換部A2の薄型化、ひいては1次熱交換器HE1の全体の薄型化を促進することができる。
【0035】
前記した2つの伝熱管Tb’,Tb”の中心間距離P3は、第1の伝熱管配列ピッチP1よりも長くなるものの、このことによってとくに不具合を生じることはない。中心間距離P3を第1の伝熱管配列ピッチP1よりも小さくする必要がないため、熱交換器の設計・製作の困難化を好適に回避することが可能である。また、複数の伝熱管Tbの全体配置は、左右対称とされているために、熱回収分布に大きな偏りが生じないようにし、熱回収効率が大きく低下するといった不具合を生じないようにすることも可能である。
【0036】
その他、本実施形態によれば、次のような作用も得られる。
まず、第2の熱交換部A2は、その占有面積が第1の熱交換部A1よりも小さくされているものの、複数の伝熱管Tbが上下2段に設けられているために、湯水加熱能力を高めることが可能である。したがって、大型の温水暖房装置を用いるような場合であっても、1次熱交換器HE1の全体のサイズの拡大を生じさせることなく、好適に対処することが可能となる。一方、第1の熱交換部A1については、複数の伝熱管Taが単段で設けられているために、その構造を簡素にすることができる。第1の熱交換部A1は、その占有面積が大きいために、伝熱管Taが単段であっても一般給湯に必要な湯水加熱能力を適切に
具備させることが可能である。第1の熱交換部A1の伝熱管Taと、第2の熱交換部A2の下段の伝熱管Tbとは、略同一高さであるため、バーナ5からそれら伝熱管Ta,Tb迄の距離も略同一となり、伝熱管Ta,Tbの双方を熱回収に最適な配置とすることが可能である。フィン2A,2Bの下縁部の高さも略同一高さであるために、フィン2A,2Bを利用した熱回収効率も高めることができる。
【0037】
図6図9は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0038】
図6に示す実施形態においては、第1および第2の伝熱管配列部R1,R2のそれぞれの伝熱管Tbの数が、図3に示した構成よりも多くされている。このため、第2の伝熱管配列部R2の右端の伝熱管Tbに流れた湯水を、左端の伝熱管Tbに流れさせるための追加の配管部材12dが設けられている。第3の配管部材12cを介して2つの伝熱管Tb’,Tb”を接続する構造については、図3に示した構造と同様である。したがって、第1および第2の伝熱管配列部R1,R2の上下間隔Haを小さくすることが可能である。
【0039】
図7に示す実施形態においては、第1および第2の伝熱管配列部R1,R2のそれぞれの伝熱管Tbの数が、同一であり、第1の伝熱管配列部R1の各伝熱管Tbの直上に、第2の伝熱管配列部R2の各伝熱管Tbが重なった配置に設けられている。第3の配管部材12cを介して接続される2つの伝熱管Tb’,Tb”は、上下高さ方向において重なった位置関係にはなく、水平方向において互いに位置ずれした上下斜め位置関係にある伝熱管である。このことにより、2つの伝熱管Tb’,Tb”の中心間距離P3は、伝熱管ピッチP1との関係において、P3>P1となり、伝熱管Tb’,Tb”の中心どうしを結ぶ直線Laの傾斜角α1は、60°未満とされる。
本実施形態においては、第1および第2の伝熱管配列部R1,R2の上下間隔Haは、Ha=P3・sin(α1) となるが、傾斜角α1を小さくすることによって、上下間隔Haを図11(b)の上下間隔Hbよりも小さくし、1次熱交換器HE1の薄型化を図ることが可能である。
【0040】
図8に示す実施形態においては、図7に示す実施形態よりも、第1および第2の伝熱管配列部R1,R2の伝熱管数が多くされている。ただし、第3の配管部材12cを介して2つの伝熱管Tb’,Tb”を接続する構造は、図7に示した場合と同様である。したがって、やはり第1および第2の伝熱管配列部R1,R2の上下間隔Haを、小さくすることが可能である。
【0041】
これらの実施形態から理解されるように、第1および第2の伝熱管配列部R1,R2のそれぞれの伝熱管Tbが千鳥配列である場合と、上下高さ方向に重なった配置とされている場合とのいずれにおいても本発明を適用し、第1および第2の伝熱管配列部R1,R2の上下間隔を従来よりも小さくすることが可能である。第1および第2の伝熱管配列部R1,R2のそれぞれの具体的な伝熱管の数も限定されない。
【0042】
図9に示す実施形態の熱交換器HE1は、1缶1回路方式であり、缶体6内に、第1および第2の伝熱管配列部R1,R2が設けられているが、上述した実施形態の第1の熱交換部A1に相当する部位は設けられていない。本発明に係る熱交換器は、1缶2回路方式に限らず、1缶1回路方式とすることも可能である。
【0043】
本実施形態においては、第1の伝熱管配列部R1の左端の伝熱管Tb1に湯水が供給されると、この湯水は、その後に配管部材12eを介して右端の伝熱管Tb2に流れ、その後は配管部材12fを介して伝熱管Tb3に流れた後に最下流の伝熱管Tb’に到達するように構成されている。最下流の伝熱管Tb’は、第1の伝熱管配列部R1の端部に位置
しておらず、本実施形態は、この点においても上述した実施形態とは相違している。最下流の伝熱管Tb’が、第2の伝熱管配列部R2のうち、最接近している伝熱管とは別の伝熱管Tb”に対して第3の配管部材12cを介して接続されている点は、上述した実施形態と同様である。
【0044】
本実施形態によれば、右端の伝熱管Tb2には、伝熱管Tb1のみを通過した湯水であって、燃焼ガスによって未だ十分な高温に加熱されていない湯水が供給される。したがって、第1の伝熱管配列部R1の左側および右側の伝熱管Tb1,Tb2による燃焼ガスからの熱回収量を多くすることができる。その結果、缶体6の右側および左側の側壁部60c,60dが異常な高温になることを抑制し、これらの部分が熱損傷することを防止することが可能となる。本実施形態から理解されるように、第1の伝熱管配列部R1の伝熱管Tbに湯水を流れさせる場合、伝熱管Tbの配列順序とは異なる順序で湯水を流れさせることができる(第2の伝熱管配列部も同様)。本発明でいう第1の伝熱管配列部の最下流の伝熱管の具体的な位置も限定されない。
【0045】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る熱交換器、および温水装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0046】
上述の実施形態では、バーナの上方に熱交換器が設けられて、燃焼ガスが熱交換器の下方から上方に向けて進行するいわゆる正燃方式とされているが、これとは反対に、バーナの下方に熱交換器が設けられて、燃焼ガスが上方から下方に向けて進行する逆燃方式とすることも可能である。本発明でいう加熱用気体は、燃焼ガスに限らず、たとえばコージェネレーションシステムの燃料電池やガスエンジンなどの発電部から排出される高温の排ガスなどを用いることもできる。
【0047】
本発明における熱交換器においては、第1および第2の伝熱管配列部が上下2段で並ぶだけではなく、さらに第3の伝熱管配列部などの他の伝熱管配列部が加えられていることにより、伝熱管が上下高さ方向に3段あるいはそれ以上の段数で設けられている構成とすることもできる。本発明に係る熱交換器は、顕熱回収用に好適であるものの、顕熱回収用であるか潜熱回収用であるかといった区別も問わない。本発明でいう温水装置とは、湯を生成する機能を備えた装置の意であり、一般給湯用、風呂給湯用、暖房用、あるいは融雪用などの各種の給湯装置、および給湯以外に用いられる湯を生成する装置を広く含む。
【符号の説明】
【0048】
WH 温水装置
HE1 1次熱交換器(本発明に係る熱交換器)
HE2 2次熱交換器
A1,A2 第1および第2の熱交換部
Ta,Tb 伝熱管
Tb’ 最下流の伝熱管(第1の伝熱管配列部の)
Tb” 伝熱管(最下流の伝熱管と接続される伝熱管)
R1 第1の伝熱管配列部
R2 第2の伝熱管配列部
2A,2B
6 缶体
12a〜12c 第1ないし第3の配管部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11