特許第6331221号(P6331221)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6331221-溶融物冷却固化装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331221
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】溶融物冷却固化装置
(51)【国際特許分類】
   F23J 1/06 20060101AFI20180521BHJP
   F23J 1/00 20060101ALI20180521BHJP
   F23J 1/08 20060101ALI20180521BHJP
   F27D 3/14 20060101ALI20180521BHJP
   F27D 15/02 20060101ALI20180521BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   F23J1/06ZAB
   F23J1/00 B
   F23J1/08
   F27D3/14 Z
   F27D15/02 B
   B09B3/00 303L
   B09B3/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-181380(P2014-181380)
(22)【出願日】2014年9月5日
(65)【公開番号】特開2016-56967(P2016-56967A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】三好 史洋
(72)【発明者】
【氏名】井上 和之
(72)【発明者】
【氏名】平田 修一
(72)【発明者】
【氏名】林 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬司
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−314969(JP,A)
【文献】 特開2005−226939(JP,A)
【文献】 特開2004−028432(JP,A)
【文献】 特開2002−130639(JP,A)
【文献】 特開昭62−202923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G5/00,5/027,5/24−5/28
F23G7/00−7/02,7/10−7/12
F23J1/00−1/08
F23J9/00
F27D3/00−15/02
B09B3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物焼却後の灰分を溶融炉で溶融した溶融スラグと溶融メタルとから成る溶融物を冷却固化する溶融物冷却固化装置において、
溶融炉からの溶融物を受けてこれを流通案内する流路が形成されていると共に、該流路の下流端で溶融物の落下を許容する出滓口が形成されている溶融物流通案内体と、
溶融物流通案内体の流路下流端に接続されて溶融物の落下空間を形成する落下管と、
水砕水を槽本体内に収容し落下管の下端開口から落下する溶融物を水砕水で冷却固化する水砕槽と、
出滓口に付着した溶融メタルが凝固したメタル塊を破壊する押圧機とを有し、
上記落下管の下端開口が水砕槽の水砕水中に没入して位置しており、
上記溶融物流通案内体は、出滓口の位置で溶融物の流通方向に対して直角な断面にて、流路の底面がその一部を深くしている溝部を形成し、
上記出滓口は、該出滓口の内面をなす縁部の壁面が下端に向け傾斜して該壁面の径方向間隔が下方に向け増大して、該出滓口の縁部が上記流路の下流端に対し尖端形状をなしていて、溶融物が該縁部から離れて落下する際にこの縁部の下側傾斜面にまわり込むことなく、付着を防止して下方へ落下する形状となっており、
上記押圧機は、出没自在な押圧ロッドを備えていて、該押圧ロッドの突出時に該押圧ロッドの先端が出滓口の縁部との間にメタル塊を挟む位置まで出滓口の縁部に対し近接する位置に達し、押圧ロッドの先端で上記メタル塊を切断除去して溶融物の上記縁部への固着を防止するようになっていることを特徴とする溶融物冷却固化装置。
【請求項2】
押圧機は、溶融物流通案内体の端壁に出滓口の縁部近傍に向けて形成された貫通孔内に設けられたケーシングにより、ケーシングとの間に間隙を保ちつつケーシングの上端でシールされた状態で保持されており、
ケーシングは、筒状体をなし端壁の内壁面で開口し、端壁の外面側では外方に突出していて、ケーシングに設けられた窒素ガス注入口から上記間隙へ窒素を封入して溶融物流通案内体内のガスの外部への漏れを防止していることとする請求項1に記載の溶融物冷却固化装置。
【請求項3】
押圧機は、溶融物流通案内体の流路の幅方向にて該流路の両側にそれぞれ配置されていて、各押圧機の押圧ロッドが出滓口に向け交互に突出作動することとする請求項1又は請求項2に記載の溶融物冷却固化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物や廃棄物焼却灰を溶融処理した溶融物を冷却して固化しスラグとメタルを生成する溶融物冷却固化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物や産業廃棄物を処理する際に有害物質の排出を抑制して処理する技術として、廃棄物を熱分解ガス化し灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融処理炉が知られている。この処理においては、灰分を溶融して生成した溶融スラグと溶融金属(溶融メタル)からなる溶融物をそれぞれ冷却固化してスラグそしてメタルとして埋立処分や再利用が容易に行えるようにする冷却固化技術の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1によると、廃棄物の熱分解ガス化に先立ち、廃棄物は圧縮して圧縮廃棄物とされ、しかる後に加熱炉で表面が炭化されて、圧縮廃棄物は崩壊そしてダスト発生が防止された状態で竪型の高温反応炉にもたらされて熱分解ガス化そして溶融される。
【0004】
圧縮廃棄物は高温反応炉に供給されると、圧縮廃棄物中の金属類あるいは灰分は高温反応炉下部に堆積し溶融され、さらにバーナを有する溶融保温炉内で溶融状態が維持される。この溶融物(すなわち溶融金属および溶融スラグ)は、溶融保温炉の底部に落下孔へ向け延びて形成された流路を通過して落下孔から下方に垂下する水砕管内を通って、その下方に設けられた水砕槽へ落下する。
【0005】
上記落下孔から垂下して設けられた水砕管の側壁にはノズルが配設されており、水砕管内を落下する溶融物へ該ノズルから水砕用水が噴射される。この水砕用水によって溶融物が粒化そして凝固し、水砕槽内に落下する。
【0006】
これら溶融物の粒子は水砕槽内で十分に冷却され、搬送設備(例えばベルトコンベア等)によって水砕槽外へ搬出され、金属粒子とスラグ粒子を分別した後、種々の用途に再利用される。
【0007】
特許文献1では、落下孔直下で水砕管との間に金属製で二重管状をなす水冷ジャケットを用いた溶融物排出口が介在していて、落下孔近傍での耐火物が溶融物の熱により溶損することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−314969
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1にあっては、溶融保温炉内の溶融物は、溶融保温炉の流路を下流端の落下孔に向けて流れる際、溶融金属と溶融スラグの比重差に起因して溶融金属が下層に沈降する。廃棄物中の金属含有率が高いと(例えば灰分中金属含有率5重量%以上)、溶融物中の溶融金属の比率が高くなり、流路で下層をなしているが故に落下孔の周辺の面に接触する溶融金属がこの落下孔周辺の面に付着した後に、凝固する。
【0010】
溶融金属は、溶融スラグに比べて熱伝導率が大きく、落下孔周辺の面との接触により冷却されやすいので、この状態で操業を継続すると、落下孔周辺に付着した金属凝固物が急速に成長して落下孔を閉塞してしまう。
【0011】
また、既述したように、落下孔近傍の耐火物の溶損を防止するために、落下孔と金属製水冷ジャケットを用いた溶融物排出口を設けているが、この溶融物排出口では、冷却能力が向上するので耐火物の溶損は抑制できるものの、落下孔の閉塞は防止できない。すなわち、溶融保温炉内の溶融物は、溶融金属と溶融スラグの比重差に起因して、流路を流れて落下孔から落下する際に、溶融金属が下層に位置するので、主に溶融金属が金属製水冷ジャケットに付着し、その後に冷却されて凝固する。そして操業中にこの金属凝固物(メタル塊)が次第に成長して、落下孔を閉塞してしまう。
【0012】
落下孔に付着し凝固した金属凝固物は、落下孔から「つらら」状に成長する。溶融スラグが凝固物として、つらら状をなした場合には、これを切断するスラグカッタが知られている。凝固物がスラグの場合には、スラグが比較的脆いので、上記スラグカッタでの切断により、凝固物の成長を、ある程度防止できる。しかし、凝固物が金属凝固物である場合には、金属がスラグに比べて塑性領域が大きいので、上記スラグカッタで金属凝固物を切断しようとしても、金属凝固物は変形あるいは落下孔の面に押し付けられるだけで、切断できないことが多い。
【0013】
しかも、特許文献1にあっては、溶融金属が落下孔に向って流れる流路は、特別の形状となっていないので、上記溶融金属は流路の幅方向に広がって流れて、その幅をもって落下孔から落下する。したがって、溶融金属は、落下孔に付着すると、幅が広い状態で、あるいは、幅方向での位置が不定な状態で金属凝固物を形成する。また、金属凝固物が大きくなった場合には、形状が大きく重いため水砕槽内から搬送するコンベアがトリップしてしまう問題がある。
【0014】
本発明は上述のような事情に鑑み、廃棄物を熱分解し溶融炉で灰分を溶融して生成した溶融物を落下させて冷却固化するにあたって、落下孔周辺にメタル塊を生じさせることなく溶融物を安定して落下孔から排出できる溶融物の冷却固化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る溶融物冷却固化装置は、廃棄物焼却後の灰分を溶融炉で溶融した溶融スラグと溶融メタルとから成る溶融物を冷却固化する。
【0016】
かかる溶融物冷却固化装置において、本発明では、溶融炉からの溶融物を受けてこれを流通案内する流路が形成されていると共に、該流路の下流端で溶融物の落下を許容する出滓口が形成されている溶融物流通案内体と、
溶融物流通案内体の流路下流端に接続されて溶融物の落下空間を形成する落下管と、
水砕水を槽本体内に収容し落下管の下端開口から落下する溶融物を水砕水で冷却固化する水砕槽と、
出滓口に付着した溶融メタルが凝固したメタル塊を破壊する押圧機とを有し、
上記落下管の下端開口が水砕槽の水砕水中に没入して位置しており、
上記溶融物流通案内体は、出滓口の位置で溶融物の流通方向に対して直角な断面にて、流路の底面がその一部を深くしている溝部を形成し、
上記押圧機は、出没自在な押圧ロッドを備えていて、該押圧ロッドの突出時に該押圧ロッドの先端が出滓口の縁部に対し近接することを特徴としている。
【0017】
本発明では、流路を流れる溶融メタルは、出滓口に達したときには、流路に形成された溝部から集中的に落下するので、落下する溶融メタルそしてメタル塊は、幅方向にて流路の一部の範囲に限定されて細くなり、しかもその幅方向位置で一定している。したがって、押圧ロッドの先端で、上記メタル塊を出滓口の縁部へ押圧するだけで、メタル塊は容易に破壊そして切断されて落下するので、メタル塊はつらら状には成長しない。しかも、上記メタル塊は、出滓口では凝固開始状態にあり、硬度も低く切断しやすい。
【0018】
本発明において、溶融物流通案内体の流路の溝部は、三角形状断面をなしていることが好ましい。こうすることで、落下する溶融メタルの流量を抑制することなく、該溶融メタルの幅をさらに狭く、しかも位置の一定化が確実になる。
【0019】
本発明において、押圧機は、溶融物流通案内体の流路の幅方向にて該流路の両側にそれぞれ配置されていて、各押圧機の押圧ロッドが出滓口に向け交互に突出作動することが好ましい。このようにすることで、メタル塊の切断頻度を高めることができると共に、メタル塊の位置が一方の押圧方向に片寄ることもなくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上のように、溶融物流通案内体の流路に、流路幅方向で狭い溝部を形成すると共に、出滓口縁部での該溝部位置へ押圧機の押圧ロッドを近接させることとしたので、溶融物の出滓口での落下位置を安定させた上で、押圧ロッドで溶融メタルをその凝固開始状態で破壊そして切断することができ、出滓口でのメタル塊の成長を阻止し、ひいては出滓口の閉塞を防止し、円滑な溶融物の落下を維持できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態装置の要部を示し、(A)は流路における流通方向に平行な方向での縦断面図、(B)は(A)におけるB-B断面図、(C)は(A)におけるC-C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面にもとづき、本発明の一実施形態を説明する。
【0023】
図1は、本実施形態の溶融物冷却固化装置10の概要構成を示し、図1(A)は溶融物の流路の流れ方向での縦断面、(B)は(A)におけるB-B断面図、(C)は(A)におけるC-C断面図である。
【0024】
本実施形態の溶融物冷却固化装置10は、廃棄物を熱分解ガス化し灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融処理炉(図示せず)から溶融物を受けるように該廃棄物ガス化溶融処理炉に接続される。
【0025】
図1において、溶融物冷却固化装置10は、廃棄物ガス化溶融処理炉から排出される溶融物Mを受けて、これを横方向に流通案内する流路12が内部に形成された横長で中空筒状の溶融物流通案内体11と、該溶融物流通案内体11から落下する溶融物Mを冷却そして水砕固化する水砕槽(図示せず)とを有している。上記流路12を流れる溶融物Mは、溶融スラグと溶融メタルから成り高温であるため、上記溶融物流通案内体11は耐火材料で作られている。該溶融物流通案内体11は、溶融物Mの流れ方向で下流端(図1(A)にて左端)に出滓口13が下方に向け開口して形成されている。該出滓口13には、該出滓口13と上述した水砕槽とを接続する落下管14が取り付けられている。該落下管14は、下方に延び、その下端開口(図示せず)は上記水砕槽内の水砕水の水面下に没入している。
【0026】
上記溶融物流通案内体11は、図1(B)に見られるように、その内部空間のうちの下部空間が流路12を形成し、該流路12はその下面が幅方向(図1(B)にて半径方向)中央に向け階段状をなして深くなっている。幅方向中央位置には、V字状(三角形状)部15Aを有する溝部15が形成されている。該溝部15は、上述のごとく階段状に深くなっている流路下面の最深部であり、幅方向寸法は流路12の幅に比しかなり小さくなっている。上記流路12には、かかる幅狭な溝部15が形成されているので、溶融メタルが該溝部15から集中的に流下するようになり、メタル塊の生じる幅方向位置を固定させることができ、後述の押圧機20によるメタル塊の破壊(切断)を確実に行えるようになる。図1(A)に見られるように、下流端における出滓口13は、下端に向け傾斜して左右の対向方向での壁面間隔が増大している。流路12の下流端をなす出滓口13の縁部13Aは尖端を形成していて、溶融物Mが該縁部13Aから離れて落下する際にこの縁部13Aへの付着を極力防止するように、流れがいわゆる「切れ」の良い状態となっている。
【0027】
上記溶融物流通案内体11には、その下流端側域での上壁に三つのバーナ16A,16B,16Cが設けられている。該バーナ16A,16B,16Cは、出滓口13近傍での溶融物Mを高温に維持して凝固を防止することで、溶融物Mを均質化すると共に、出滓口13での流通性を確保する。また、上記溶融物流通案内体11の端壁11Aには、監視窓17が設けられていて、出滓口13における溶融物Mの流れの状態を外部から目視監視できるようになっている。監視窓17からメタル塊の形成状態を監視することで適切な時期に後述の押圧機20を作動させることができる。
【0028】
上記溶融物流通案内体11の端壁11Aには、押圧機20が設けられている。該押圧機20は、上記出滓口13の縁部13A近傍に向けて上記端壁11Aに形成された貫通孔11B内に設けられたケーシング21により、該ケーシングとの間に間隙を保ちつつケーシング21の上端でシールされた状態で保持されている。ケーシング21は、筒状体をなし端壁11Aの内壁面で開口し、端壁11Aの外面側では外方に突出していて上端に設けられた窒素ガス注入口21Aから上記間隙へ窒素を封入して溶融物流通案内体11内のガスの外部への漏れを防止している。
【0029】
押圧機20は、上記貫通孔11Bが延びる方向に長く形成されていて、上記ケーシング21で保持されて該ケーシング21から外方へ突出する駆動シリンダ部22と、該駆動シリンダ部22で駆動されて突出そして没入する可動軸体23と、該可動軸体23に連結された押圧ロッド24とを有している。該押圧ロッド24は、上記ケーシング21との間に間隙を保ちつつ駆動シリンダ部22により駆動されて突出したときには、該押圧ロッド24の先端が上記出滓口13の縁部13Aに近接する位置に達し、該押圧ロッド24の先端と上記出滓口13の縁部13Aとの間に溶融物Mを挟んで切断除去し溶融物Mの固着を防止する。上記押圧ロッド24は、高温雰囲気にさらされ、また高温のメタル塊と接触するので、冷却のために内部に冷却媒体を流通する冷却配管が設けられていたり、あるいはケーシング21内面から水ミストが噴霧されることで、冷却されるようにしてもよい。
【0030】
図1(A)そして図1(B)の実線にて示されている押圧機20は、溶融物流通案内体11の幅方向中央に一つだけ設けられているが、図1(B)の二点鎖線で示されているように、幅方向両側で計二つ設けられていて、それぞれの押圧機が交互に作動して、各押圧ロッドの先端が上記出滓口13の縁部13Aに近接する位置まで突出移動するようにしてもよい。
【0031】
上記出滓口13の下端側から垂下して設けられた落下管14は、既述したように、その下端開口(図示せず)は、下方に位置している水砕槽(図示せず)内の水砕水の水面よりも下方にまで没入している。
【0032】
上記落下管14は、その上端近傍、すなわち出滓口13の下側開口縁近傍位置に、その内周面に環状溝14Aが形成されていて、該環状溝14Aは、その周方向の一箇所で管壁を貫通する窓部14Bを介して外部に連通している。
【0033】
上記環状溝14Aには、ナイフ状のスラグカッタ25が配設されている。このスラグカッタ25は、落下管14の上部付近に落下するスラグ塊を間欠的に切断する。こうすることで、溶融スラグによるつらら状のスラグ塊が成長することを防止して落下管14での閉塞トラブルを回避する。またこのスラグカッタ25は水で洗浄冷却する。
【0034】
該スラグカッタ25は、図1(C)に見られるように、管外に突出した基部25Aでピン26により揺動自在に支持されていて図示しない手段により揺動駆動を受ける。該スラグカッタ25は、揺動駆動を受けると、管内に位置する先端部25Bが管内壁の対向部分同士間を往復する(図1(C)の実線位置と第二点鎖線位置)ことにより、スラグ塊を切断する。
【0035】
上記落下管14の下方に設けられている、図示しない水砕槽は槽本体の上部に上記落下管14が突入する開口が形成されており、また槽本体内には水砕水が貯留されている。該水砕槽は、さらに、水砕水へ落下した溶融物Mが該水砕水により冷却固化された槽内のメタル粒子そしてスラグ粒子を槽外へ搬出する搬送コンベア(図示せず)をも備えている。
【0036】
流路12から出滓口13を経て出滓した溶融物Mは落下管14内を落下し、水砕槽(スラグ冷却槽)の水砕水中に入る。溶融物Mは水砕槽中の水砕水により冷却され固化し、粒状のスラグ、メタルとなる。その際、水砕槽中の水を落下管14の壁面に供給して濡れ壁を形成することが好ましい。この濡れ壁の形成により、溶融スラグの放射冷却が促進されると共に、落下管14の壁面にメタルやスラグが付着するのを防止することができる。また、落下管14内を落下する溶融物Mに水を吹き付ける水噴射機構を設けることが好ましい。このように落下する溶融物Mに水を噴射して溶融物Mを直接冷却することによりさらに冷却固化が促進される。噴射水及び濡れ壁形成用の水としては水砕槽中の水を循環使用することが水の節約の観点から好ましい。
【0037】
落下管14の下端開口は、既述したように、水砕槽の水中に没しているので、水封されており、溶融物流通案内体11内の有毒ガスや可燃性ガスが落下管14の下端開口から噴出するのを避けることができ、またトラブル時に大気中のO2ガスが溶融物流通案内体11の内部空間を通じて溶融炉内に侵入するのを防ぐようになる。
【0038】
上記落下管14は水冷ジャケット構造とすることが好ましく、そうすることにより落下管14における冷却能力をさらに高めることができる。
【0039】
次に、本実施形態装置による溶融物Mの冷却固化がどのように行われるか、その作動を説明する。
【0040】
廃棄物を廃棄物ガス化溶融炉(図示せず)で熱分解ガス化した後の残渣としての灰分が該ガス化溶融炉で溶融され、この溶融物Mが溶融物流通案内体11に受け渡されて、流路12を下流側(図1(A)にて左方)へ矢印Aで示されるように流通する。
【0041】
流路12を流通する溶融物Mは、溶融メタルと溶融スラグから成っていて、バーナ16A,16B,16Cから熱を受けて流動性を保っており、比重の大きい溶融メタルが下層そして溶融スラグが上層をなしている。溶融物Mは、流路12の下流端へ近づくと、出滓口13に向けた下流端に沿って該出滓口13から落下する。上記流路12には、幅方向中央で深くなっているV字状部15Aを有する溝部15が形成されているので、溶融物Mは、該溝部15へ案内されて該溝部15から集中的に落下する。
【0042】
出滓口13の縁部13Aは尖端形状をなしているので、流れの「切れ」が良く、縁部13Aの下側傾斜面にまわり込むことなく、下方へ落下する。
【0043】
溶融物Mの流れの下層をなす溶融メタルは、熱伝導性が良いために、流路12の面で冷却されて凝固が始まることもある。凝固が始まると、出滓口13の縁部13Aに付着してメタル塊となる。この様子は、監視窓17からの監視により状況把握できる。
【0044】
メタル塊が生成したことを確認したならば、押圧機20を作動させる。押圧機20が作動すると、駆動シリンダ部22により押圧ロッド24が駆出され、該押圧ロッド24がその先端で上記メタル塊を出滓口13の縁部13Aとの間で挟圧するように押圧する。メタル塊は凝固開始状態なので、挟圧されることで容易に破壊そして切断されて落下し、メタル塊のそれ以上の成長は阻止される。なお、押圧機20が、図1(B)で二点鎖線により示されているように、左右に二つ設けられている場合、両者は交互に作動する。
【0045】
一方、スラグは溶融物Mの上層をなしていて、押圧ロッド24による上記メタル塊の切断時に、該メタル塊と一緒に切断される。スラグが切断しきれないこともあり、その場合には出滓口13の縁部13Aから下方に向けスラグ塊として成長する。しかし、該出滓口13の直下には、スラグカッタ25が設けられており、これにより脆いスラグ塊は容易に切断される。
【0046】
上記溶融物流通案内体11の端壁に設けられた押圧機20の押圧ロッド24とケーシング21との間には間隙が形成されているが、この間隙へは窒素ガス注入口21Aから不活性ガスたる窒素ガスが注入されているので、溶融物流通案内体11の内部から有害ガスが上記間隙を経て外部へ漏出することはない。
【0047】
このようにして、出滓口13の縁部13Aでの溶融物Mの付着凝固によるメタル塊そしてスラグ塊がつらら状に成長することなく、破壊そして切断されて落下し、水砕槽の水砕水中へ至り、水砕水への突入時の衝撃と水砕水での冷却により、メタル粒そしてスラグ粒となって水砕水中を沈降する。水砕槽には搬送コンベアが設けられていて、これらのメタル粒そしてスラグ粒は搬送コンベアにより槽外へ搬送され、適宜処分される。
【符号の説明】
【0048】
10 溶融物冷却固化装置
11 溶融物流通案内体
12 流路
13 出滓口
13A 縁部
14 落下管
15 溝部
20 押圧機
24 押圧ロッド
M 溶融物
図1