(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<0.発明の背景>
まず、実施形態について説明する前に、本願発明者等が鋭意研究した結果、想到した事情等について説明する。
【0014】
近年、例えば食品工場などでは、食品等の物品の搬送は、主にベルトコンベア等のコンベア装置が使用されている。食品は季節商品であるため、搬送量や搬送内容の変動が頻繁に生じる。工場では自動化が進んでいない場合もあり、その場合には人海戦術となり、低機能のコンベア装置が使用される。すなわち、操作者が可変ボリュームなどを用いてインバータ制御装置の出力周波数を手動で変更することでコンベア速度を変更し、生産量や人手に合わせて生産ラインの速度を都度設定する。
【0015】
一方で、工場では人手不足の解消等を目的として自動化が推進されている場合もあり、その場合には一部の工程では製造装置やロボット、装置用搬送機等を組み合わせた生産ラインが構成される。この場合にもコンベア装置は必須となるが、ロボットや装置用搬送機や各種センサを備えたコントローラシステムとの同期動作を実現するために、高機能なコンベア装置が使用される。すなわち、コンベア装置にはサーボモータ及びサーボ制御装置が設けられ、サーボ制御装置はコントローラとのデータ通信を行い、高度な同期制御を行う。
【0016】
例えば食品工場などでは、季節向け食品を一時的に大量生産するが、季節ごとの人員の確保が難しい場合もあるため、高度な自動化ラインの構築が要望されている。しかしながら、時期が変わると季節向け食品がなくなるため、生産量や生産内容が変化してしまい、季節向け食品の自動化ラインでは対応できなくなる。この場合、機械は人手に比べると柔軟性が低いため、例えば既存の自動化ラインの高機能なコンベア装置を撤去して加工装置間に人を配置し、上述した低機能なコンベア装置を配置して手動化ラインを敷設することが考えられる。また、季節が変わると、上述した高機能なコンベア装置を配置した自動化ラインに再度戻すことも考えられる。このような場合、低機能なコンベア装置と高機能なコンベア装置の両方が必要となるが、時期によってどちらか一方が不要となるため、使用されないコンベア装置を保管しておく余分なスペースが工場に必要となる。また、年間を通して、休止設備となるコンベア装置が存在することとなるため、投資の無駄が生じてしまう。以上のことにより、製造装置間の搬送の高度な自動化がしづらくなっており、自動化が遅れている要因の1つと考えられる。したがって、今後の人手不足解消のために工場のラインの自動化を推進するにあたり、解決すべき課題となっている。
【0017】
上記課題は、低機能なコンベア装置と高機能なコンベア装置の使い勝手が全く異なることに起因している。すなわち、低機能なコンベア装置では、日々の生産量や人手の変動に対応するため、現場の作業者自身がその都度手動でコンベア速度を可変させる。一般的に、現場作業者は技術者ではなく専門的な作業はできないことから、コンベア装置にはコンベア速度を可変させる可変ボリュームや駆動、停止スイッチなどを設けることになる。一方、高機能なコンベア装置では、生産ラインを敷設するための専門技術者がコントローラとの接続やサーボ制御装置のパラメータ設定等の設置、調整作業を行う。このため、コンベア装置にはコントローラとの接続コネクタやパラメータ設定器等が必要となる。
【0018】
これらの事情に想到した本願発明者等は、鋭意研究を行った結果、高機能なコンベア装置に低機能なコンベア装置と同じ要素を持たせればよいことに想到した。すなわち、コンベア装置を駆動するサーボモータを共通化し、インバータ制御装置及びサーボ制御装置のいずれかで駆動するように構成すればよい。以下、この詳細について説明する。なお、上記で説明した課題や効果等は、以下で説明する各実施形態のあくまで一例であって、さらなる作用効果等を各実施形態が奏することは言うまでもない。
【0019】
<1.第1実施形態>
まず、第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下においては、コンベア装置等の構成の説明の便宜上、幅方向、上下方向、搬送方向等の方向を適宜使用する場合があるが、コンベア装置の各構成の位置関係を限定するものではない。以下において、幅方向はコンベア装置の短手方向、上下方向は鉛直方向、搬送方向はコンベア装置の長手方向を指すものである。
【0020】
(1−1.コンベア装置の全体構成)
図1及び
図3等を参照しつつ、第1実施形態に係るコンベア装置1の全体構成の一例について説明する。
図1は本実施形態のコンベア装置1の幅方向一方側から見た全体構成の一例を表す外観図である。
図3はコンベア装置1の幅方向他方側から見た全体構成の一例を表す外観図である。
【0021】
図1に示すように、コンベア装置1は、コンベアフレーム2と、ベルト3と、モータ4と、制御装置40と、を有する。
【0022】
コンベアフレーム2は、コンベア装置1の搬送方向(
図1中左右方向)に沿う基台6と、基台6を支持する複数の支柱5と、基台6の上記搬送方向と垂直な幅方向一方側(
図1の紙面の手前側)に取り付けられた側板7及び幅方向他方側(
図1の紙面の奥側)に取り付けられた側板8(
図3参照)とを有する。
【0023】
支柱5の下端には、コンベア装置1を床FLに設置するためのアジャスタ付きのキャスタ11が取り付けられている。このキャスタ11により、コンベア装置1の移動や向きの変更(例えば
図1の状態のコンベア装置1を鉛直軸周りに180°回転して
図3の状態にする等)を容易にできる。なお、キャスタ11は必ずしも設置されなくともよい。側板7,8間には、上記搬送方向一方側(例えば
図1中右側、
図3中左側)の端部に駆動ローラ9が回転自在に支持され、上記搬送方向他方側(例えば
図1中左側、
図3中右側)の端部に従動ローラ10が回転自在に支持されている。
【0024】
ベルト3(搬送部材の一例)は、駆動ローラ9及び従動ローラ10に無端状に掛け回され、側板7,8間において上記搬送方向に沿って水平に配置されている。なお、本実施形態ではコンベア装置1が搬送部材としてベルト3を備えたベルトコンベアである場合について説明するが、搬送部材はベルトに限らず、チェーン、ローラ等でもよい。
【0025】
モータ4はサーボモータであり、例えば永久磁石を備えた同期モータである。モータ4は、図示しない出力軸が側板7の下端から上記幅方向一方側に突出するように、例えば側板7の上記搬送方向一方側の下端に取り付けられている。モータ4の出力軸は、図示しない減速機を介して駆動ローラ9に連結され、駆動ローラ9を回転することによりベルト3を駆動する。なお、モータ4の設置位置は上記以外でもよい。
【0026】
制御装置40は、モータ4の駆動を制御する。
図5に示すように、制御装置40は、サーボ制御装置41と、インバータ制御装置51とを有する。これらの詳細については後述する。
図1に示すように、制御装置40は、コンベアフレーム2の下面に取り付けられた例えば略直方体形状の制御ボックス20(筐体の一例)を備える。この例では、制御ボックス20は、モータ4に近接した位置の側板7,8の下端間に亘って取り付けられている。
【0027】
(1−2.制御装置のパネル構成)
次に、
図2及び
図4等を参照しつつ、制御装置40のパネル構成の一例について説明する。
図2は制御装置のインバータ側操作パネルの一例を表す外観図である。
図4は制御装置のサーボ側操作パネルの一例を表す外観図である。
【0028】
図2及び
図4に示すように、制御ボックス20には、インバータ側操作パネル21(第2操作パネルの一例)とサーボ側操作パネル22(第1操作パネルの一例)とが異なる方向を向くように配置されている。この例では、インバータ側操作パネル21が制御ボックス20の上記幅方向一方側に配置され、サーボ側操作パネル22が制御ボックス20の上記幅方向他方側に配置される。
【0029】
図2に示すように、インバータ側操作パネル21には、コンベア装置1の電源スイッチ23と、モータ4のインバータ制御とサーボ制御とを切り替える制御切替スイッチ24と、コンベア装置1の駆動を開始する駆動スイッチ25a(第3操作入力部の一例)と、コンベア装置1の駆動を停止する停止スイッチ25b(第3操作入力部の一例)と、コンベア装置1の搬送方向を切り替える方向切替スイッチ26と、速度可変ボリューム27とが配置されている。
【0030】
電源スイッチ23は、「ON」に対応するスイッチ部23aと、「OFF」に対応するスイッチ部23bを備える。電源スイッチ23としては、例えば押ボタン形式やトグルスイッチ等、各種形式のスイッチが使用可能である。スイッチ部23aが操作されると交流電源19からコンベア装置1に電力が供給され、スイッチ部23bが操作されるとコンベア装置1への電力供給が遮断される。なお、各スイッチ部23a,23bが点灯する等により電源のON、OFF状態を表す表示部を兼ねてもよい。
【0031】
制御切替スイッチ24(第2操作入力部の一例)は、2つのスイッチ部24a,24bを備える。制御切替スイッチ24としては、例えば押ボタン形式やトグルスイッチ等、各種形式のスイッチが使用可能である。スイッチ部24aが操作されるとインバータ制御装置51(
図5参照)が交流電源19と接続されるとともにモータ4と接続され、モータ4の制御がインバータ制御に切り替えられる。また、スイッチ部24bが操作されるとサーボ制御装置41(
図5参照)が交流電源19と接続されるとともにモータ4と接続され、モータ4の制御がサーボ制御に切り替えられる。なお、各スイッチ部24a,24bが点灯する等により制御の種類を表す表示部を兼ねてもよい。
【0032】
方向切替スイッチ26は、2つのスイッチ部26a,26bを備える。方向切替スイッチ26としては、例えば押ボタン形式やトグルスイッチ等、各種形式のスイッチが使用可能である。スイッチ部26aが操作されるとコンベア装置1の搬送方向が例えば駆動ローラ9から従動ローラ10へ向かう方向に切り替えられ、スイッチ部26bが操作されるとコンベア装置1の搬送方向が反対に従動ローラ10から駆動ローラ9へ向かう方向に切り替えられる。なお、各スイッチ部26a,26bが点灯する等により搬送方向を表す表示部を兼ねてもよい。
【0033】
速度可変ボリューム27(第1操作入力部の一例)は、速度制御用の入力信号をインバータ制御装置51に入力するための操作入力部であり、例えば可変抵抗器等により構成される。速度可変ボリューム27が回転されると、回転量に応じた速度制御用の入力信号がインバータ制御装置51に入力される。なお、速度可変ボリューム27の代わりに、例えば速度値を入力可能なタッチパネル等を用いてもよい。
【0034】
図4に示すように、サーボ側操作パネル22には、コンベア装置1の電源スイッチ23と、モータ4のインバータ制御とサーボ制御とを切り替える制御切替スイッチ24と、複数のコネクタ28と、入力キー29と、表示部30とが配置されている。
【0035】
サーボ側操作パネル22の電源スイッチ23は、インバータ側操作パネル21の電源スイッチ23と同様に構成されている。すなわち、インバータ側操作パネル21及びサーボ側操作パネル22は、どちらの操作パネルからでも電源のON、OFF操作を行うことができるように構成されている。
【0036】
サーボ側操作パネル22の制御切替スイッチ24も、インバータ側操作パネル21の制御切替スイッチ24と同様に構成されている。すなわち、インバータ側操作パネル21及びサーボ側操作パネル22は、どちらの操作パネルからでもインバータ制御とサーボ制御の切替操作を行うことができるように構成されている。
【0037】
複数のコネクタ28は、複数(この例では3つ)のコネクタ28a〜28cを含む。例えば第1コネクタ28aには、コントローラ300(上位制御装置の一例)と通信するためのケーブルが接続される。第2コネクタ28bには、モータ4に設けられたエンコーダ13と通信するためのエンコーダケーブルが接続される。第3コネクタ28cには、サーボ制御装置41のパラメータ設定等を行う際にPC等の外部端末が接続される。なお、コネクタ28a〜28cに代えて若しくは加えて、他のコネクタを設けてもよい。
【0038】
入力キー29は、各種の指令や情報を入力するためのコマンドキーや数値キー等を有する。表示部30は、例えば液晶ディスプレイやタッチパネル等で構成されており、各種の情報を表示する。
【0039】
なお、上述したパネル構成は一例であり、上述の内容に限定されるものではない。例えば、インバータ側操作パネル21には上記制御切替スイッチ24を設けずに、サーボ側操作パネル22にのみ制御切替スイッチ24を設けてもよい。つまり、インバータ側操作パネル21を操作する作業者は制御の切り替えを行わず、サーボ側操作パネル22を操作する技術者のみが制御の切り替えを行うようにしてもよい。さらに、インバータ側操作パネル21には必ずしも方向切替スイッチ26等を設けなくともよく、例えば駆動スイッチ25a及び停止スイッチ25bと、速度可変ボリューム27のみ設ける構成としてもよい。
【0040】
また例えば、電源スイッチ23や制御切替スイッチ24については、インバータ側操作パネル21やサーボ側操作パネル22には設けずに、別途の箇所に個別に又は共通に設けてもよい。その際、制御切替スイッチ24をコンベア装置1の外部(例えば上位コントローラや外部端末、外部スイッチ等)に設置してもよい。また、サーボ側操作パネル22には入力キー29や表示部30を必ずしも設けなくともよく、例えば制御切替スイッチ24とコネクタ28のみ設ける構成としてもよい。
【0041】
(1−3.制御装置の機能構成)
次に、
図5を参照しつつ、制御装置40の機能構成の一例について説明する。
図5は制御装置の機能構成の一例を表すブロック図である。
【0042】
図5に示すように、制御装置40は、サーボ制御装置41(第1制御部の一例)と、インバータ制御装置51(第2制御部の一例)とを有する。サーボ制御装置41は、コンバータ部42と、平滑回路部43と、インバータ部44と、制御回路部45とを有する。サーボ制御装置41では、コンバータ部42が交流電源19から供給された交流電力を直流電力に変換し、平滑回路部43が変換された直流電力を平滑化し、インバータ部44が平滑化された直流電力を制御回路部45からの制御信号に基づき所定の周波数の交流電力に変換し、モータ4に供給する。制御回路部45は、コントローラ300からの位置指令(又は速度指令でもよい)と、エンコーダ13からフィードバックされたモータ4の検出位置(又は検出速度)との偏差に基づき、インバータ部44を制御する。このようにして、サーボ制御装置41は、コントローラ300からの指令に基づいてモータ4の回転位置(又は回転速度)を制御する。
【0043】
インバータ制御装置51は、コンバータ部52と、平滑回路部53と、インバータ部54とを有する。インバータ制御装置51では、コンバータ部52が交流電源19から供給された交流電力を直流電力に変換し、平滑回路部53が変換された直流電力を平滑化し、インバータ部54が平滑化された直流電力を速度可変ボリューム27からの入力信号に基づき所定の周波数の交流電力に変換し、モータ4に供給する。このようにして、インバータ制御装置51は、速度可変ボリューム27からの入力信号に基づいてモータ4の速度を制御する。なお、例えば速度可変ボリューム27等の操作入力部をコントローラ300に設けておき、インバータ制御装置51に対する速度制御信号をコントローラ300から入力してもよい。
【0044】
サーボ制御装置41とインバータ制御装置51とは、制御切替スイッチ24により切り替えられて、共通の1台のモータ4を制御する。前述のように、モータ4はサーボモータであり、例えば永久磁石を備えた同期モータであるので、サーボ制御装置41だけでなく、インバータ制御装置51によっても問題なく速度制御を行うことができる。
【0045】
なお、コントローラ300と、制御装置40がサーボ制御装置41に切り替えられたコンベア装置1とが、コンベアシステム100を構成する。
【0046】
なお、上述した制御回路部45等における処理等は、これらの処理の分担の例に限定されるものではなく、例えば、更に少ない数の処理部(例えば1つの処理部)で処理されてもよく、また、更に細分化された処理部により処理されてもよい。また、サーボ制御装置41及びインバータ制御装置51は、モータ4に駆動電力を給電する部分(コンバータ部、平滑回路部、インバータ部等)のみ実際の装置により実装され、その他の機能は後述するCPU901(
図11参照)が実行するプログラムにより実装されてもよい。また、サーボ制御装置41及びインバータ制御装置51の一部又は全部がASICやFPGA、その他の電気回路等の実際の装置により実装されてもよい。
【0047】
(1−4.コンベア装置の使用方法)
上記構成であるコンベア装置1を高機能なコンベア装置として使用する場合、すなわち自動運転させる場合には、技術者はサーボ側操作パネル22(又はインバータ側操作パネル21でもよい)においてスイッチ部24bを操作し、モータ4の制御をサーボ制御に切り替える。そして、技術者が、搬送ライン(生産ラインや物流ライン等)の構成に合わせてコントローラ300等との配線作業やパラメータ設定等の調整作業を行う。
【0048】
一方、コンベア装置1を低機能なコンベア装置として使用する場合、すなわち手動運転させる場合には、作業者はインバータ側操作パネル21(又はサーボ側操作パネル22でもよい)においてスイッチ部24aを操作し、モータ4の制御をインバータ制御に切り替える。そして、作業者はインバータ側操作パネル21の駆動スイッチ25a、停止スイッチ25b、方向切替スイッチ26、及び速度可変ボリューム27を用いて搬送速度や搬送方向を手動で調整しつつコンベア装置1を運転する。
【0049】
なお、インバータ制御装置51がセンサレスベクトル制御機能を有する場合には、エンコーダ13の入力が不要となるため、インバータ制御に切り替えた場合でもエンコーダケーブルはサーボ制御装置41側に接続したままでよい。
【0050】
(1−5.第1実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態のコンベア装置1は、コンベアフレーム2と、コンベアフレーム2に設けられたベルト3と、ベルト3を駆動するモータ4と、モータ4を制御する制御装置40と、を有し、制御装置40は、コントローラ300からの指令に基づいてモータ4を制御するサーボ制御装置41と、速度可変ボリューム27からの入力信号に基づいてモータ4の速度を制御するインバータ制御装置51と、サーボ制御装置41とインバータ制御装置51を切り替えるための制御切替スイッチ24と、を有する。これにより、次の効果を奏する。
【0051】
すなわち、本実施形態のコンベア装置1によれば、ユーザは制御切替スイッチ24を用いて、モータ4の制御をサーボ制御又はインバータ制御に切り替えることができる。サーボ制御に切り替えることで、コンベア装置1を、搬送ラインに設置されるロボットや作業装置等と高度な同期制御が可能な高機能なコンベア装置として使用できる。また、インバータ制御に切り替えることで、コンベア装置1を、速度可変ボリューム27により手動で搬送速度を可変させる低機能なコンベア装置として使用できる。これにより、例えば搬送量の増大や搬送内容の変動により搬送ラインにロボットや作業装置等を設置して自動化を進める場合には、サーボ制御に切り替えて高機能なコンベア装置として使用すればよい。反対に、例えば搬送量の減少や搬送内容の変動により搬送ラインに人を配置して手動化を進める場合には、インバータ制御に切り替えて低機能なコンベア装置として使用すればよい。このようにすることで、例えば市場の動向や季節等に応じて搬送ラインにおける搬送量や搬送内容が変動した場合でも、コンベア装置1を柔軟に対応させることができる。その結果、休止設備となるコンベア装置を少なくできるので、休止設備の退避スペースを減少できると共に、投資を有効活用できる。
【0052】
また、本実施形態では特に、制御装置40は、サーボ制御装置41に操作入力を行うためのサーボ側操作パネル22と、速度可変ボリューム27を備えた、インバータ制御装置51に操作入力を行うためのインバータ側操作パネル21と、を有する。これにより、サーボ制御装置41に関連する各種の操作入力機器とインバータ制御装置51に関連する各種の操作入力機器を、各操作パネル21,22に分離且つ整理して配置できるので、制御装置40における操作性を向上できる。また、サーボ制御装置41に対する操作とインバータ制御装置51に対する操作の混同や誤操作を抑制できる。
【0053】
また、本実施形態では特に、制御装置40は、サーボ側操作パネル22とインバータ側操作パネル21が異なる方向を向くように配置された制御ボックス20を有する。これにより、操作対象となるインバータ側操作パネル21又はサーボ側操作パネル22のみを技術者や作業者の正面に向けることが可能となるので、操作性の向上及び誤操作の抑制効果を高めることができる。
【0054】
また、本実施形態では特に、サーボ側操作パネル22とインバータ側操作パネル21は、コンベア装置1の幅方向における一方側と他方側をそれぞれ向くように制御ボックス20に配置される。これにより、次の効果を奏する。
【0055】
すなわち、本実施形態によれば、コンベア装置1を高機能コンベア又は低機能コンベアとして使用するかに応じて、コンベア装置1の配置方向を反転(鉛直軸回りに180°回転)させる使用態様が可能となる。これにより、操作対象でない操作パネルをコンベア装置1の裏側に向けることができるので、誤操作の抑制効果をさらに高めることができる。また、高機能又は低機能のいずれのコンベアとして使用しているのかがコンベア装置1の配置により一目瞭然となるので、利便性を向上できる。
【0056】
また、本実施形態では特に、サーボ側操作パネル22は、コントローラ300と通信するための第1コネクタ28aと、モータ4に設けられたエンコーダ13と通信するための第2コネクタ28bとを有し、インバータ側操作パネル21は、速度可変ボリューム27と、モータ4の駆動と停止を切り替えるための駆動スイッチ25a及び停止スイッチ25bと、を有する。
【0057】
これにより、サーボ側操作パネル22の第1コネクタ28aを介してサーボ制御装置41とコントローラ300とを接続できると共に、第2コネクタ28bを介してサーボ制御装置41とエンコーダ13とを接続できるので、コンベア装置1にロボットや作業装置等と同期させた高度な位置決め動作等を実行させることが可能となる。また、インバータ側操作パネル21の速度可変ボリューム27と駆動スイッチ25a、停止スイッチ25bを使用することで、ユーザは搬送量や人手作業等に応じて手動でコンベア装置1の駆動、停止及び搬送速度等を柔軟に変更することができる。
【0058】
<2.第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。上記第1実施形態では、制御装置40がサーボ制御装置41とインバータ制御装置51の2つの制御装置を備える構成としたが、これに限られない。例えば、単体のサーボ制御装置を設けておき、当該サーボ制御装置が有する速度制御機能をインバータ制御部として利用してもよい。第2実施形態のコンベア装置における制御装置の機能構成の一例を
図6に示す。
【0059】
第2実施形態に係るコンベア装置1は、制御装置40に代えて制御装置60を有する。なお、制御装置以外の構成は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0060】
図6に示すように、制御装置60は、サーボ制御装置61のみを備えており、インバータ制御装置を備えていない。サーボ制御装置61は、コンバータ部62と、平滑回路部63と、インバータ部64と、制御回路部65を備える。制御回路部65は、サーボ制御モード66(第1制御部、第1制御モードの一例)と、インバータ制御モード67(第2制御部、第2制御モードの一例)と、モード切替部68とを有する。また、制御装置60の制御ボックス20のインバータ側操作パネル21及びサーボ側操作パネル22には、制御切替スイッチ24の代わりにモード切替スイッチ69(第2操作入力部の一例)設けられている。モード切替部68は、モード切替スイッチ69からの入力信号に基づいて、サーボ制御モード66とインバータ制御モード67とを切り替える。
【0061】
サーボ制御モード66に切り替えられた制御回路部65は、コントローラ300からの位置指令(又は速度指令でもよい)と、エンコーダ13からフィードバックされたモータ4の検出位置(又は検出速度)との偏差に基づき、インバータ部64を制御する。このようにして、サーボ制御装置61は、サーボ制御モード66で、コントローラ300からの指令に基づいてモータ4の回転位置(又は回転速度)を制御する。
【0062】
インバータ制御モード67に切り替えられた制御回路部65は、速度可変ボリューム27からの入力信号に基づいてインバータ部64を制御する。このようにして、サーボ制御装置61は、インバータ制御モード67で、速度可変ボリューム27からの入力信号に基づいてモータ4の速度を制御する。
【0063】
なお、コントローラ300と、サーボ制御装置61がサーボ制御モード66に切り替えられたコンベア装置1とが、コンベアシステム100を構成する。
【0064】
なお、上述した制御回路部65等における処理等は、これらの処理の分担の例に限定されるものではなく、例えば、更に少ない数の処理部(例えば1つの処理部)で処理されてもよく、また、更に細分化された処理部により処理されてもよい。また、サーボ制御装置61は、モータ4に駆動電力を給電する部分(コンバータ部、平滑回路部、インバータ部等)のみ実際の装置により実装され、その他の機能は後述するCPU901(
図11参照)が実行するプログラムにより実装されてもよい。また、サーボ制御装置61の一部又は全部がASICやFPGA、その他の電気回路等の実際の装置により実装されてもよい。
【0065】
なお、本実施形態のサーボ制御装置61は、例えば一般的なサーボ制御装置の位置制御系のソフトウェアに速度制御系のソフトウェアを追加し、外部のモード切替スイッチ69を適宜の接点に割り付けることで実現することが可能である。インバータ制御モード67に切り替えて低機能なコンベア装置として使用する際には、例えば外部の速度可変ボリューム27と、駆動及び停止スイッチ25a,25bを適宜の接点に割り付けることで、前述のインバータ制御装置51と同様に動作させることができる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、サーボ制御装置61が2つの制御モード(サーボ制御モード66とインバータ制御モード67)を備えており、その制御モードを切り替えることによって、コンベア装置1を高機能コンベア又は低機能コンベアとして使用することができる。これにより、サーボ制御装置61とは別にインバータ制御装置を新たに設置する必要が無くなるので、回路構成を簡素化できると共に制御装置60を小型化できる。
【0067】
<3.第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。上記第1及び第2実施形態では、手動操作にてサーボ制御とインバータ制御が切り替えられる構成としたが、これに限られない。例えば、外部装置からの切替信号や、コネクタ28へのケーブル接続の有無等により自動的にサーボ制御とインバータ制御が切り替わる構成としてもよい。第3実施形態のコンベア装置における制御装置の機能構成の一例を
図7に示す。
【0068】
図7に示すように、本実施形態の制御装置70は、上述のサーボ制御装置41及びインバータ制御装置51と、これらを切り替える制御切替部71を有する。制御切替部71は、例えばリレー等で構成されるスイッチ72,73の動作を制御することにより、サーボ制御装置41とインバータ制御装置51の切り替えを自動的に行う。制御切替部71は、外部からの切替信号(例えば上位コントローラや外部端末、外部スイッチ等)に基づいて制御を切り替えてもよい。また
図7に示すように、コネクタ検出部74によりサーボ側操作パネル22のコネクタ28(コネクタ28a〜28cの少なくとも1つ)へのケーブルの接続の有無を検出しておき、制御切替部71が、コネクタ検出部74によりケーブルの接続があると検出された場合にサーボ制御装置41に切り替え、コネクタ検出部74によりケーブルの接続がないと検出された場合にインバータ制御装置51に切り替えるようにしてもよい。
【0069】
本変形例によれば、制御装置70を適切な制御に自動的に切り替えることができるので、制御切替操作が不要となり、技術者の利便性を向上できる。
【0070】
<4.変形例>
なお、開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0071】
(4−1.使用しない操作パネルにカバーを設ける場合)
上実施形態では特に設けなかったが、操作の混同や誤操作を抑制するために、使用しない操作パネルに例えばカバーを設けるようにしてもよい。その際、カバーを固定するための例えばキーによる操作で、モータ4の制御を切り替えてもよい。本変形例の構成の一例を
図8及び
図9に示す。
【0072】
図8に示すように、制御ボックス20のインバータ側操作パネル21には、制御切替スイッチ24の代わりにキー差し込み口31が設けられている。キー差し込み口31は、制御切替スイッチ24と同様の機能を有しており、図示しないキーが差し込まれて所定量回転されることにより、サーボ制御に切り替えられる。インバータ側操作パネル21のその他の構成は前述の
図2と同様であるので説明を省略する。サーボ制御に切り替える場合には、使用しないインバータ側操作パネル21にカバー32が取り付けられる。そのカバー32にも、キー差し込み口31と対応する位置にカバー32を固定するためのキー差し込み口33が設けられている。
【0073】
モータ4の制御をサーボ制御に切り替える場合には、インバータ側操作パネル21にカバー32が取り付けられる。そして、カバー32のキー差し込み口33から図示しないキーが差し込まれて所定量回転されることにより、カバー32がインバータ側操作パネル21に固定されると共に、サーボ制御に切り替えられる。
【0074】
図9に示すように、制御ボックス20のサーボ側操作パネル22には、制御切替スイッチ24の代わりにキー差し込み口34が設けられている。キー差し込み口34は、制御切替スイッチ24と同様の機能を有しており、図示しないキーが差し込まれて所定量回転されることにより、インバータ制御に切り替えられる。サーボ側操作パネル22のその他の構成は前述の
図4と同様であるので説明を省略する。インバータ制御に切り替える場合には、使用しないサーボ側操作パネル22にカバー35が取り付けられ、そのカバー35にも、キー差し込み口34と対応する位置にカバー35を固定するためのキー差し込み口36が設けられている。
【0075】
モータ4の制御をインバータ制御に切り替えるには、サーボ側操作パネル22にカバー35が取り付けられる。そして、カバー35のキー差し込み口36から図示しないキーが差し込まれて所定量回転されることにより、カバー35がサーボ側操作パネル22に固定されると共に、インバータ制御に切り替えられる。
【0076】
なお、以上ではキーによる操作で制御を切り替えるようにしたが、キーによる操作でカバーの固定のみを行い、制御の切り替えは制御切替スイッチ24で行うようにしてもよい。また、キーによる切り替えの代わりに、制御ボックス20のインバータ側操作パネル21及びサーボ側操作パネル22に例えばマグネットスイッチ等の近接スイッチを設けておき、カバー32,35の接近を近接スイッチで検知して、制御を切り替えるようにしてもよい。
【0077】
(4−2.インバータ側操作パネル及びサーボ側操作パネルを横並びに配置する場合)
上実施形態では、インバータ側操作パネル21とサーボ側操作パネル22がコンベア装置1の幅方向一方側と他方側を向くように配置される構成としたが、例えば同じ向きとなるように横並びに配置してもよい。本変形例の一例を
図10に示す。
【0078】
図10に示すように、本変形例のコンベア装置1の制御ボックス20は、2つの制御ボックス20Aと制御ボックス20Bを備えており、制御ボックス20Aと制御ボックス20Bは上記搬送方向に横並びに配置されている。制御ボックス20Aと制御ボックス20Bは、別体として構成されてもよいし、一体として構成されてもよい。制御ボックス20Aの上記幅方向一方側にはインバータ側操作パネル21が設けられ、制御ボックス20Bの上記幅方向一方側にはサーボ側操作パネル22が設けられ、インバータ側操作パネル21とサーボ側操作パネル22が同じ向きに配置されている。電源スイッチ23及び制御切替スイッチ24はインバータ側操作パネル21とサーボ側操作パネル22の両方に設ける必要がないので、一方側、この例ではインバータ側操作パネル21のみに設けられている。
【0079】
本変形例によれば、コンベア装置1を鉛直軸回りに180°回転させて向きを変更しなくても、インバータ側操作パネル21及びサーボ側操作パネル22の両方をユーザの正面に向けることができる。なお、本変形例において、使用しない操作パネルに上述したカバーを設置する構成としてもよい。
【0080】
(4−3.制御ボックスを回転可能な構成とする場合)
以上では、制御ボックス20をコンベア装置1に対して固定的に設置したが、制御ボックス20をコンベア装置1に対して回転可能に設置してもよい。本変形例の一例を
図11に示す。
【0081】
図11に示すように、本変形例では、制御ボックス20はコンベア装置1の下面に回転機構38を介して回転可能に支持されている。この制御ボックス20の水平方向の一面にはインバータ側操作パネル21が配置され、制御ボックス20の水平方向の他の一面、この例では向きが90°異なる隣接した一面にサーボ側操作パネル22が配置されている。なお、向きが180°異なる面に各操作パネル21,22を配置してもよい。
【0082】
本変形例によれば、制御ボックス20を回転するという容易な操作により、操作対象となるインバータ側操作パネル21又はサーボ側操作パネル22をユーザの正面に向けることができる。
【0083】
<5.コントローラのハードウェア構成例>
次に、
図12を参照しつつ、上記で説明したCPU901が実行するプログラムにより実装された制御回路部45等による処理を実現する制御装置41,51,61(サーボ制御装置41,61、インバータ制御装置51)のハードウェア構成例について説明する。なお、
図12中では、制御装置41,51,61のモータ4に駆動電力を給電する機能に係る構成を適宜省略して図示している。
【0084】
図12に示すように、制御装置41,51,61は、例えば、CPU901と、ROM903と、RAM905と、ASIC又はFPGA等の特定の用途向けに構築された専用集積回路907と、入力装置913と、出力装置915と、記録装置917と、ドライブ919と、接続ポート921と、通信装置923とを有する。これらの構成は、バス909や入出力インターフェース911を介し相互に信号を伝達可能に接続されている。
【0085】
プログラムは、例えば、ROM903やRAM905、記録装置917等に記録しておくことができる。
【0086】
また、プログラムは、例えば、フレキシブルディスクなどの磁気ディスク、各種のCD・MOディスク・DVD等の光ディスク、半導体メモリ等のリムーバブルな記録媒体925に、一時的又は非一時的(永続的)に記録しておくこともできる。このような記録媒体925は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することもできる。この場合、これらの記録媒体925に記録されたプログラムは、ドライブ919により読み出されて、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0087】
また、プログラムは、例えば、ダウンロードサイト・他のコンピュータ・他の記録装置等(図示せず)に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、LANやインターネット等のネットワークNWを介し転送され、通信装置923がこのプログラムを受信する。そして、通信装置923が受信したプログラムは、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0088】
また、プログラムは、例えば、適宜の外部接続機器927に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、適宜の接続ポート921を介し転送され、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0089】
そして、CPU901が、上記記録装置917に記録されたプログラムに従い各種の処理を実行することにより、上記の制御回路部45等による処理が実現される。この際、CPU901は、例えば、上記記録装置917からプログラムを直接読み出して実行してもよいし、RAM905に一旦ロードした上で実行してもよい。更にCPU901は、例えば、プログラムを通信装置923やドライブ919、接続ポート921を介し受信する場合、受信したプログラムを記録装置917に記録せずに直接実行してもよい。
【0090】
また、CPU901は、必要に応じて、前述の入力キー29や、例えばマウス・キーボード・マイク(図示せず)等の入力装置913から入力する信号や情報に基づいて各種の処理を行ってもよい。
【0091】
そして、CPU901は、上記の処理を実行した結果を、前述の表示部30や、例えば表示装置や音声出力装置等の出力装置915から出力してもよく、さらにCPU901は、必要に応じてこの処理結果を通信装置923や接続ポート921を介し送信してもよく、上記記録装置917や記録媒体925に記録させてもよい。
【0092】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0093】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさ、形状、位置等が「同一」「同じ」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「同じ」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に同じ」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0094】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【解決手段】コンベア装置1は、コンベアフレーム2と、コンベアフレーム2に設けられたベルト3と、ベルト3を駆動するモータ4と、モータ4を制御する制御装置40と、を有する。制御装置40は、コントローラ300からの指令に基づいてモータ4を制御するサーボ制御装置41と、速度可変ボリューム27からの入力信号に基づいてモータ4の速度を制御するインバータ制御装置51とを有する。