特許第6331246号(P6331246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6331246非水電解質二次電池用電極及びそれを用いた電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331246
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用電極及びそれを用いた電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20180521BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20180521BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20180521BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20180521BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20180521BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20180521BHJP
【FI】
   H01M4/48
   H01M4/485
   H01M4/62 Z
   H01M4/13
   H01M4/131
   H01M10/0525
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-244762(P2012-244762)
(22)【出願日】2012年11月6日
(65)【公開番号】特開2014-93271(P2014-93271A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100110799
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 温道
(72)【発明者】
【氏名】今▲崎▼ 充康
(72)【発明者】
【氏名】今村 雄一
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−174350(JP,A)
【文献】 特開2012−043765(JP,A)
【文献】 特開2011−150931(JP,A)
【文献】 特開平05−226004(JP,A)
【文献】 特開2009−032538(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/055760(WO,A1)
【文献】 特開平11−250937(JP,A)
【文献】 特開2012−030989(JP,A)
【文献】 特開2007−273405(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/043765(WO,A1)
【文献】 特開2013−179041(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/165422(WO,A1)
【文献】 特開2003−100298(JP,A)
【文献】 特開2012−018775(JP,A)
【文献】 特開2015−159067(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/025764(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/008058(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/48
H01M 4/13
H01M 4/131
H01M 4/485
H01M 4/62
H01M 10/0525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質と結着材とを含む活物質混合物を含む非水電解質二次電池用電極であって、
前記活物質は、平均粒子径が1μm以上20μm以下である、リチウムイオンの挿入・脱離が可能なチタン酸化物又は/及びチタン複合酸化物からなる負極活物質であり、
前記結着材は、平均粒子径が0.10μm以上0.30μm以下の結着材からなり、
前記結着材は、テトラフルオロエチレン系を混合した粒子からなり、
前記結着材の量は、前記活物質100重量部に対して、1重量部以上30重量部以下であり、負極に用いられる、非水電解質二次電池用電極。
【請求項2】
前記チタン複合酸化物がスピネル型構造を有するチタン酸リチウムである請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項3】
前記チタン酸化物が二酸化チタンである請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項4】
活物質と結着材とを含む活物質混合物を含む非水電解質二次電池用電極であって、
前記活物質は、平均粒子径が1μm以上20μm以下である二酸化チタンからなり、
前記結着材は、平均粒子径が0.10μm以上0.30μm以下の結着材からなり、
前記結着材の量は、前記活物質100重量部に対して、1重量部以上30重量部以下であり、負極に用いられる、非水電解質二次電池用電極。
【請求項5】
前記結着材がテトラフルオロエチレン系、アクリル酸エステル系、メタクリル酸エステル系の何れか1種若しくは2種以上を混合した粒子からなる請求項4に記載の非水電解質二次電池用電極。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用電極を用いた非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用電極、及びそれを用いた電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン蓄電池はモバイル機器用電源として現在幅広く使用されている。リチウムイオン蓄電池は、既存のニッケル−カドミウム蓄電池やニッケル−水素蓄電池と比較して高エネルギー密度であるために、電気自動車や電力貯蔵などの大型電源用途としても期待されている。特に、活物質に遷移金属複合酸化物を用いる非水電解質二次電池はサイクル特性が良いこと及び安全性が高いことから注目を浴びている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
このような非水電解質二次電池において、正極の構造は、正極用活物質と導電材と、正極用活物質に形状安定性を持たせるための結着材(バインダー)とを練り合わせたものとを、集電体に貼り付けて成形した構造となっている。負極の構造も、正極用活物質の代わりに負極用活物質を用いること以外は正極と同様である。
前述した結着材として、有機ポリマー系の粒子が使用される。例えば特許文献1は、ポリメチルアクリレート粒子、アクリル酸エステル系粒子、ポリフッ化ビニリデン粒子などを、正極又は負極の活物質に対して用いられる結着材として開示している。特許文献2は、エチレン/ エチルアクリレートコポリマー粒子を開示している。特許文献3は、結着材としてPTFE粉末を添加したものを用いたリチウム二次電池を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−7881号公報
【特許文献2】特開2004−172017号公報
【特許文献3】特開平6−275277号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】高見、小杉、本多「耐久性と安全性に優れたハイブリッド自動車用新型二次電池SCiBTM」東芝レビューVol.63, No.12, pp.54-57 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、遷移金属酸化物又は/及び遷移金属複合酸化物を正極又は負極の活物質として用いた二次電池の場合、正極又は負極の形状安定性に影響を与える、正極又は負極用活物質の粒子径の範囲と、結着材の粒子径の範囲との関係が、従来調査されていない。
例えば特許文献1の実施例は、正極として、粒子径10μmのコバルト酸リチウム活物質に、粒子径2μmのポリメチルアクリレート粒子、粒子径5μmのアクリル酸エステル系粒子などをそれぞれイソプロピルアルコールに分散させたものを塗工している。しかしこのような粒子径の大きな有機ポリマー系の粒子を使用すると、乾燥後、活物質の形状安定性が低下するおそれがある。
【0007】
特許文献2(特開2004−172017号公報)は、実施例において、正極コバルト酸リチウム活物質に、粒子径0.18〜0.26μmのエチレン/ エチルアクリレートコポリマーの粒子をNMPに分散させたものを塗付して乾燥させて、ピール強度を測定している。しかし、正極用活物質の粒子径が開示されていないので、正極又は負極用活物質の粒子径の範囲と、結着材の粒子径の範囲との関係が求められているとは言えない。
【0008】
また特許文献2は、実施例において、粒子を分散させた溶液に、ポリフッ化ビニリデンなどを加えて溶解させている。このため、ポリフッ化ビニリデンなどを溶解させることができる有機溶媒が必要になり、特許文献2は前記NMPを用いている。しかし有機溶媒を分散剤に使用した場合は、溶媒自体のコストに加え、溶媒を回収する必要があるため、設備的にもコストが割高である。
【0009】
特許文献3には、リチウム、コバルト、リンなどを含む複合酸化物からなる正極用活物質を用いたリチウム二次電池において、正極用活物質に対する結着材の粒子径比率を、0.02〜20倍、好ましくは0.1〜5倍で使用すれば、正極に不規則な空隙が生じることが抑制でき、割れや欠陥の発生が抑制される、と記載されている(段落[0021])。しかし、粒子径比率の好ましい範囲を規定しても、この粒子径比率の範囲に入る各粒子径の活物質と結着材との全ての組み合わせが、必ずしも良い結果を与えないことを、本願の発明者は確認している。
【0010】
結局、何れの特許文献も、活物質の粒子径の好ましい範囲と、結着材の粒子径の好ましい範囲との組み合わせを示唆していない。
また、何れの特許文献も、正極用活物質と結着材との組み合わせを論じており、遷移金属酸化物又は/及び遷移金属複合酸化物系の負極用活物質については、活物質の粒子径の好ましい範囲と、結着材の粒子径の好ましい範囲との組み合わせを示唆していない。前記遷移金属酸化物又は/及び遷移金属複合酸化物系の負極用活物質は、粉体中に残存アルカリ成分が存在し、水で分散させると液がアルカリ性になる。また前記負極用活物質は絶縁体である。こういった点で前記各特許文献にあげられたコバルト酸リチウムなどの活物質と物性が異なっている。
【0011】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、作製が容易であり、形状安定性に優れた非水電解質二次電池用電極及びそれを用いた電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者が鋭意研究したところ、電極用の活物質である遷移金属酸化物の平均粒子径と、水に分散された結着材の平均粒子径とを、それぞれ一定範囲内とすることにより、低コストで、形状安定性の良好な電極を作製することが可能となることを見出した。この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
本発明の非水電解質二次電池用電極は、平均粒子径が1μm以上20μm以下である、リチウムイオンの挿入・脱離が可能な遷移金属酸化物又は/及び遷移金属複合酸化物と、平均粒子径が0.10μm以上0.30μm以下の結着材とを含む活物質混合物を含むものである。
【0013】
前記遷移金属がチタンであってもよく、前記遷移金属複合酸化物がスピネル型構造を有するチタン酸リチウム又は二酸化チタンであってもよい。また、チタンの一部を別の元素で置換したものであっても良い。
前記活物質混合物は負極に用いられる。
前述の結着材がテトラフルオロエチレン(PTFE)系、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)系、アクリル酸エステル系、メタクリル酸エステル系の何れか1種若しくは2種以上を混合した粒子からなることが好ましい。
【0014】
さらに本発明によれば、上記の非水電解質二次電池用電極を具えてなる非水電解質二次電池が提供される。
また、 上記の非水電解質二次電池用電極の製造方法は、平均粒子径が1μm以上20μm以下である、リチウムイオンの挿入・脱離が可能な遷移金属酸化物又は/及び遷移金属複合酸化物と、平均粒子径が0.10μm以上0.30μm以下の結着材とを水に分散させる工程と、前記工程で得られた水に分散された活物質混合物を、集電体に塗工して水を除去する工程とを含む。
【0015】
前記活物質スラリーの固形分濃度は、低くても問題はないが、70重量%以上であれば、分散良く強固な電極とすることができる。また、従来の塗布方式での電極製造でも問題はないが、加圧による電極成形であれば、より強固な電極とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の非水電解質二次電池用電極は、平均粒子径が1μm以上20μm以下であるリチウムイオンの挿入・脱離が可能な遷移金属酸化物又は/及び遷移金属複合酸化物を電極用活物質として用い、水分散結着材の平均粒子径が0.1μm以上0.3μm以下のものを用いて製造されることにより、低コストで、形状安定性の良好な電極とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図されている。
<電極>
本発明の非水電解質二次電池用電極は、少なくとも活物質混合物と集電体とで構成される。活物質混合物は、少なくとも、活物質(電極用活物質と言うこともある)及び結着材(結着材)を含み、必要に応じて導電助材を含んでよい。
【0018】
活物質として、平均粒子径が1μm以上20μm以下であるリチウムイオンの挿入・脱離が可能な遷移金属酸化物又は/及び遷移金属複合酸化物が使用される。例えば、特に限定されないが、リチウムチタン酸化物、チタン酸化物、ニオブ酸化物、バナジウム酸化物、モリブデン酸化物などが挙げられる。特に、チタンを含有する複合酸化物はサイクルに対して安定で、スピネル型LiTi12、アナターゼ型TiO、TiO(B)等が好ましい。
【0019】
結着材は平均粒子径が0.10μm以上0.30μm以下のものが使用され、水に分散されて用いられる。例えば、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)系、アクリル酸エステル系、ポリイミド系及びそれら誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これらに分散剤、増粘剤を加えても良い。
【0020】
本発明において、電極に含まれる結着材の量は、活物質100重量部に対して、好ましくは1重量部以上30重量部以下、より好ましくは1重量部以上15重量部以下である。上記範囲であれば、活物質と導電助材との接着性が維持され、集電体との密着性を十分に得ることができる。
活物質には、必要に応じて導電助材を含有しても良い。導電助材としては、特に限定されないが、炭素材料又は/及び金属微粒子が好ましい。炭素材料として、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、及びファーネスブラックなどが挙げられる。金属微粒子として、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル及びこれら少なくとも1種を含む合金が挙げられる。また、無機材料の微粒子にめっきを施したものでも良い。これら炭素材料及び金属微粒子は1種類でも良いし、2種類以上用いても良い。
【0021】
導電助材の量は、活物質100重量部に対して、好ましくは1重量部以上30重量部以下、より好ましくは1重量部以上15重量部以下である。上記範囲であれば、電極の導電性が確保される。
本発明の非水電解質二次電池用電極に用いられる集電体は、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン及びこれら少なくとも1種を含む合金または導電性を有する高分子が挙げられる。形状としては、箔状、メッシュ状、パンチング状、エキスパンド状、または発泡構造体が挙げられる。集電体の空隙度を「集電体を含む単位体積内に存在する孔の内容積の合計」と定義する。
【0022】
ここで、メッシュ状とは、金属または導電性高分子の繊維を織布あるいは不織布にしたものである。繊維の太さは50μm以上2000μm以下であることが好ましい。50μm未満の場合は集電体が破壊されやすい傾向がある。一方、2000μmより太い繊維を用いた場合、後述の空隙度とするには目開きが大きくなりすぎ、メッシュによる活物質混合物の保持が困難になる傾向がある。
【0023】
パンチング状とは、板に円形、四角形、または六角形などの孔を開けたものであり、金属からなるものがパンチングメタルである。板状であるので、空隙度は開孔率(平面視して、板の単位面積あたりの孔の合計面積の割合)に対応する。開孔率は孔径と骨(地金の部分)の比率、孔の形状、及び孔の配列によって決定される。孔の形状は特に限定されないが、開孔率上昇の観点から、丸孔千鳥型(千鳥型の開き角は例えば60°)、角孔並列型が好ましい。
【0024】
エキスパンド状とは、板に千鳥状の切れ目を入れ、引き伸ばして網目状にしたもので、金属からなるものがエキスパンドメタルである。エキスパンドメタルの空隙度は開孔率に対応し、開孔率は孔径と骨の比率、孔の形状、及び孔の配列によって決定される。
発泡構造体とは、骨格がスポンジのように3次元の網目状になっているもので、その孔は連続または分散している。構造は孔径及び気孔率で決定される。連続孔の形状や孔径は特に限定されないが、高い比表面積を有する構造が好ましい。
【0025】
本発明の集電体に用いられる金属は、電極作動電位で安定であればよく、作動電位がリチウム基準で0.7V以下では、銅及びその合金が好ましく、0.7V以上ではアルミニウム及びその合金が好ましい。
本発明の電極は、例えば、活物質、導電助材、及び結着材を水に分散させた活物質混合物を集電体に担持することによって作製される。活物質混合物を集電体の空孔部及びその外面に充填及び塗布した後に、水を除去することによって電極を作製する。
【0026】
活物質混合物を作製する方法は、特に限定されないが、活物質、導電助材、結着材、及び水を均一に混合できることから、撹拌造粒装置、ボールミル、プラネタリミキサ、ジェットミル、薄膜旋回型ミキサーを用いることが好ましい。活物質混合物の混練方法は、特に限定されないが、活物質、導電助材を混合した後に、水に分散させた結着材を加えて作製しても良いし、活物質、導電助材、及び結着材を混合した後に水を加えて作製しても良い。
【0027】
集電体上への活物質混合物の担持方法は、特に限定されないが、例えば活物質混合物を集電体上へ分散させ、加圧して電極を形成後に水を除去する方法、活物質混合物のみでシートを形成し、集電体へ圧着させることで電極形成し水を除去する方法、活物質混合物をドクターブレード、ダイコータ等により塗布した後に溶媒を除去する方法、スプレーにより集電体に付着させた後に溶媒を除去する方法、活物質混合物に集電体を含浸させた後に溶媒を除去する方法が好ましい。特に、加圧・圧着等により電極を形成する方法が好ましい。水を除去する方法は、オーブンや真空オーブンを用いた乾燥が簡単であり好ましい。雰囲気としては、室温あるいは高温とした空気、不活性ガス、真空状態などが挙げられる。
【0028】
得られた電極は、非水電解質二次電池の負極として用いても良いし、正極として用いても良い。正極として用いる場合には、リチウムイオンをあらかじめ挿入しておいても良い。
<負極と正極の容量比及び面積比>
本発明の非水電解質二次電池用電極を用いて作製した二次電池における正極と負極の電気容量の比は、下記式(1)を満たすことが望ましい。
【0029】
0.7≦B/A≦1.3 (1)
但し、上記式(1)中、Aは正極1cmあたりの電気容量を示し、Bは負極1cmあたりの電気容量を示す。
B/Aが0.7未満である場合は、過充電時に負極の電位が負極集電体とリチウムが反応する電位またはリチウムの析出電位になる場合があり、一方、B/Aが1.3より大きい場合は電池反応に関与しない負極用活物質多いために副反応が起こる場合がある。
【0030】
本発明の非水電解質二次電池における正極と負極との面積比は、特に限定されないが、下記式(2)を満たすことが好ましい。
1≦D/C≦1.2 (2)
但し、Cは正極の面積、Dは負極の面積を示す。D/Cが1未満である場合は、例えば先述のB/A=1の場合、負極の容量が正極よりも小さくなるため、過充電時に負極の電位がリチウムの析出電位になる恐れがある。一方、D/Cが1.2より大きい場合は、正極と接していない部分の負極が大きいため、電池反応に関与しない負極用活物質が副反応を起こす場合がある。正極及び負極の面積の制御は特に限定されないが、例えば、電極作製の際、塗工幅を制御することによって行うことができる。
【0031】
本発明の非水電解質二次電池に用いるセパレータと負極との面積比は特に限定されないが、下記式(3)を満たすことが好ましい。
1≦F/E≦1.5 (3)
但し、Eは負極の面積、Fはセパレータの面積を示す。F/Eが1未満である場合は、正極と負極とが接触し、1.5より大きい場合は外装に要する体積が大きくなり、電池の容量密度及び出力密度が低下する場合がある。
【0032】
<セパレータ>
本発明の非水電解質二次電池に用いるセパレータとしては、多孔質材料または不織布等が挙げられる。セパレータの材質としては、電解液を構成する有機溶媒に対して溶解しないものが好ましく、具体的にはポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル系ポリマー、セルロース、ガラスのような無機材料が挙げられる。
【0033】
セパレータの厚みは1〜500μmが好ましい。1μm未満であるとセパレータの機械的強度の不足により破断し、内部短絡する傾向がある。一方、500μmより厚い場合、電池の内部抵抗と、正極・負極の電極間距離が増大することにより、電池の負荷特性が低下する傾向がある。より好ましい厚みは、10〜300μmである。
<非水電解質>
本発明の非水電解質二次電池に用いる非水電解質は、特に限定されないが、非水溶媒に溶質を溶解させた電解液、非水溶媒に溶質を溶解させた電解液を高分子に含浸させたゲル電解質などを用いることができる。
【0034】
非水溶媒としては、環状の非プロトン性溶媒及び/又は鎖状の非プロトン性溶媒を含むことが好ましい。環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状エステル、環状スルホン及び環状エーテルなどが例示される。鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル及び鎖状エーテルなどが例示される。また、上記に加えアセトニトリルなどの一般的に非水電解質の溶媒として用いられる溶媒を用いても良い。より具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジオキソラン、プロピオン酸メチルなどを用いることができる。これら溶媒は1種類で用いてもよいし、2種類以上混合しても用いてもよいが、後述の溶質を溶解させやすさ、リチウムイオンの伝導性の高さから、2種類以上混合した溶媒を用いることが好ましい。また、高分子に電解液をしみこませたゲル状電解質も用いることができる。
【0035】
溶質は、特に限定されないが、例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiAsF、LiCFSO、LiBOB(Lithium Bis (Oxalato) Borate)、LiN(SOCFなどは溶媒に溶解しやすいことから好ましい。電解液に含まれる溶質の濃度は、0.5mol/L以上2.0mol/L以下であることが好ましい。0.5mol/L未満では所望のリチウムイオン伝導性が発現しない場合があり、一方、2.0mol/Lより高いと、溶質がそれ以上溶解しない場合がある。非水電解質には、難燃剤、安定化剤などの添加剤が微量含まれてもよい。
【0036】
<非水電解質二次電池>
本発明の非水電解質二次電池の正極及び負極は、集電体の両面に同じ電極を形成させた形態であってもよく、集電体の片面に正極、一方の面に負極を形成させた形態、すなわち、バイポーラ電極であってもよいが、バイポーラ型とする場合、集電体を介した正極と負極の液絡を防止するため、導電材料及び/または絶縁材料が正極と負極間に配置されている。また、バイポーラ電極である場合は、隣り合うバイポーラ電極の正極側と負極側との間にセパレータを配置し、各正極側と負極側とが対向した層内は、液絡を防止するため正極及び負極の周辺部に絶縁材料が配置されている。
【0037】
本発明の非水電解質二次電池は、正極側と負極側との間にセパレータを配置したものを倦回したものであってもよいし、積層したものであってもよい。正極、負極、及びセパレータには、リチウムイオン伝導を担う非水電解質が含浸している。非水電解質としてゲル状のものを使用する場合は、電解質が正極及び負極に含浸していても、正極・負極間のみにある状態でもよい。ゲル状電解質により正極・負極間が直接接触していなければ、セパレータを使用する必要はない。
【0038】
本発明の非水電解質二次電池に用いる非水電解質の量は、特に限定されないが、電池容量1Ahあたり、0.1mL以上であることが好ましい。0.1mL未満の場合、電極反応に伴うリチウムイオンの伝導が追いつかず、所望の電池性能が発現しない場合がある。
非水電解質は、あらかじめ正極、負極及びセパレータに含ませてもよいし、正極側と負極側との間にセパレータを配置したものを倦回、あるいは積層した後に添加してもよい。ゲル状の非水電解質を使用する場合は、モノマーを含浸させた後ゲル状にしても、予めゲル状にした後に正極と負極の間に配置してもよい。
【0039】
本発明の非水電解質二次電池は、上記積層体を倦回、あるいは複数積層した後にラミネートフィルムで外装してもよいし、角形、楕円形、円筒形、コイン形、ボタン形、シート形の金属缶で外装してもよい。外装には発生したガス等を放出するための機構が備わっていてもよい。また、劣化した当該非水電解質二次電池の機能を回復させるための添加剤を電池外部から注入する機構が備わっていてもよい。積層体の積層数は、所望の電池容量を発現するまで積層させることができる。積層の場合は、電極の積層方向に圧力が加えられていても良い。セル内部で圧力を加えても、外装の外側から圧力を加えても良い。
【0040】
本発明の非水電解質二次電池は、複数接続することによって二次電池モジュールとすることができる。本発明のモジュールは、所望の大きさ、容量、電圧によって適宜直列、並列に接続することによって作製することができる。また、各電池の充電状態の確認、安全性向上のため、前記二次電池モジュールに制御回路が付属されていても良い。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
(1)電極の製造
電極用活物質(LiTi12及びTiO(B))をそれぞれ100重量部に対して、導電助材(アセチレンブラック)を6.8重量部と、種々の水分散結着材(バインダー)の固形分換算6.8重量部とを混合して活物質混合物を作製した。
【0042】
電極用活物質(LiTi12)は、文献("Zero-Strain Insertion Material of Li [Li1/3Ti5/3] O4 for Rechargeable Lithium Cells" J. Electrochem. Soc., Volume 142, Issue 5, pp. 1431-1435 (1995))に記載されている方法で作製した。すなわち、まず二酸化チタンと水酸化リチウムを、チタンとリチウムとのモル比を5:4となるように混合し、次にこの混合物を窒素雰囲気下800℃で12時間加熱することによって作製することができる。
【0043】
電極用活物質 TiO(B)は、文献(Minoru Inaba,“TiO2(B) as a promising high potential negative electrode for large-size lithium-ion batteries”, Journal of power sources, 189, 580 (2009) )に記載されている方法で作製した。すなわち、炭酸カリウムとアナターゼ型TiOをモル比1:4で混合し、空気中1000℃で24時間焼成を2回行うことによりKTiを得た後に、1M塩化水素溶液中で3日浸漬させることによりイオン交換を行い、500℃で30分脱水・乾燥させることにより作製した。
【0044】
電極用活物質(Li4Ti5O12)、電極用活物質TiO2(B)の平均粒子径(D50)は、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置により測定した。
水分散結着材として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PTFEとテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)との1:1混合物、アクリル酸エステル重合体の各粒子を用いた。
【0045】
各水分散結着材の平均粒子径(D50)は、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置により測定した。
先ず電極用活物質と導電助材を自動乳鉢を用いて混合した。混合粉体をステンレスボウルに移し、水分散結着材(固形分濃度約50%)を加え、アルミナ乳棒を用いて予備混合した後、水を加えて固形分濃度75%に調整し、均一になるまで混合することにより、活物質混合物を作製した。
【0046】
前述の活物質混合物をアルミニウムエキスパンドメタル(目開き1mm×2mm、厚み0.1mm)上に分散し、上部から加圧することにより成形した後に、170℃で真空乾燥することにより電極を作製した。乾燥後、アルミニウムエキスパンドメタルを含む電極の厚さは0.5mmであった。実施例においては、この電極を電池用負極として使用した。
【0047】
各電極は、表1に示すとおり、電極用活物質の種類、電極用活物質の粒子径、結着材の種類、結着材の粒子径で分類した(実施例1〜12、比較例1〜4)。
(2)電極の状態
これらの電極(実施例1〜12、比較例1〜4)の状態を目視で観察した。その結果を表1に示す。落下の有無は、電極を持ち上げ、5分間保持することにより判定した。
【0048】
(3)対極(正極)の製造
正極用活物質のLi1.1Al0.1Mn1.8は、文献("Lithium Aluminum Manganese Oxide Having Spinel-Framework Structure for Long-Life Lithium-Ion Batteries" Electrochemical and Solid-State Letters Volume9, Issue12, Pages A557 (2006))に記載されている方法で作製した。
【0049】
すなわち、二酸化マンガン、炭酸リチウム、水酸化アルミニウム、及びホウ酸の水分散液を調製し、スプレードライ法で混合粉末を作製した。このとき、二酸化マンガン、炭酸リチウム及び水酸化アルミニウムの量は、リチウム、アルミニウム及びマンガンのモル比が1.1:0.1:1.8となるように調製した。次に、この混合粉末を空気雰囲気下900℃で12時間加熱した後、再度650℃で24時間加熱した。最後に、この粉末を95℃の水で洗浄後、乾燥させることによって正極用活物質を作製した。
【0050】
この正極用活物質を100重量部、導電助材(アセチレンブラック)を6.8重量部、及びPTFE結着材(ダイキン工業製)(固形分濃度50wt%)を固形分6.8重量部混合して活物質混合物を作製した。活物質混合物の作製方法は、前述の電極と同様に行った。すなわち、先ず電極用活物質と導電助材を自動乳鉢を用いて混合した。混合粉体をステンレスボウルに移し、水分散結着材(固形分濃度約50%)を加え、アルミナ乳棒を用いて予備混合した後、水を加えて固形分濃度75%に調整し、均一になるまで混合することにより、活物質混合物を作製した。この活物質混合物をアルミニウムエキスパンドメタル(目開き1mm×2mm、厚み0.1mm)上に分散し、上部から加圧することにより成形した後に、170℃で真空乾燥することにより電極を作製した。
【0051】
(4)非水電解質二次電池の作製
LiTi12/Li1.1Al0.1Mn1.8非水電解質二次電池またはTiO(B)/Li1.1Al0.1Mn1.8非水電解質二次電池を次のとおり作製した。
最初に、得られた正極/セパレータ/得られた負極、の順に積層した。負極は、それぞれ実施例1〜12、比較例1〜4に係るものである。セパレータはセルロース不織布(厚さ25μm、面積20cm)を2枚用いた。次に、正極及び負極に引き出し電極となるアルミニウムタブを振動溶接させた後に、袋状のアルミラミネートシートに入れた。
【0052】
袋の中に、非水電解液(プロピレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=3/7vol%、LiPF 1mol/L)を1mL入れた後に、袋の出口を引き出し電極ごと熱封止することによって非水電解質二次電池を作製した。
(5)容量維持率測定
作製した非水電解質二次電池を外装の外側から金属板で挟んだ状態で、電圧1.5〜3V、8時間で充電または放電が終わる電流値(1/8Cレート)で充放電サイクル試験を行った。サイクルには充放電試験装置(HJ1005SD8、北斗電工社製)を用い、サイクル数は20サイクルとした。
【0053】
(6)総合結果
製造された電極(実施例1〜12、比較例1〜4)について、電極の状態、容量維持率を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
実施例3と比較例1に示すように電極用活物質の平均粒子径が20μmを超えると、同一の結着材を使用したとしても集電体から活物質の落下が起こる。また、比較例2に示すように、結着材粒子の平均粒子径が0.30μmを超えても、集電体から活物質の落下が起こる。
実施例5と比較例3に示すように、電極用活物質の平均粒子径が1μm未満である場合、同一の結着材を使用したとしても集電体から活物質の落下が起こる。
【0056】
実施例6と比較例4に示すように、結着材の平均粒子径が0.10μm未満である場合、同一の電極用活物質を使用したとしても集電体から活物質の落下が起こる。
電極用活物質の落下が無かった電極を用いた非水電解質二次電池は、20回のサイクル測定における、20サイクル目の放電容量の1サイクル目の放電容量に対する割合(容量維持率)はすべて90%以上と良好な結果を示した。
【0057】
これらのことから、集電体と電極用活物質混合物との良好な接着性、形状安定性を付与するためには、平均粒子径が1〜20μmである電極用活物質と、平均粒子径が0.10〜0.30μmである結着材を組み合わせることが最適であることがわかる。
なお、電極用活物質の平均粒子径aと結着材の平均粒子径bとの比率b/aに関しては、「ある範囲内であれば電極の状態は良好、その範囲から出ていれば良好でない」とか、「あるしきい値以下であれば良好、そのしきい値を超えていれば良好でない」といった基準を適用することができない。計算すればわかるように、例えば比較例4の比率b/aは0.013、実施例1の比率b/aは0.028、比較例2の比率b/aは0.057であり、実施例7の比率b/aは0.17となっており、前記したような基準を当てはめることができないことが分かる。そこで本発明者は、電極用活物質の平均粒子径aと結着材の平均粒子径bとの比率b/aよりも、電極用活物質の平均粒子径aの範囲と結着材の平均粒子径bの範囲に注目し、それぞれの好ましい範囲を規定することとした。