(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331256
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】車両用空調ダクト
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
B60H1/00 102L
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-77148(P2013-77148)
(22)【出願日】2013年4月2日
(65)【公開番号】特開2014-201129(P2014-201129A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】谷 奈央人
【審査官】
田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−103223(JP,A)
【文献】
特開2002−160608(JP,A)
【文献】
特開2010−203772(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0188171(US,A1)
【文献】
特開2005−162073(JP,A)
【文献】
特開2002−144846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のインストルメントパネル内に収容される車両用空調ダクトであって、
開口部の近傍部分が黒色顔料を含む非発泡樹脂により形成され、他の部分が発泡樹脂により形成され発泡倍率が2倍以上の発泡成形体であり、前記開口部から視認される部分が非発泡樹脂により形成されていることを特徴とする車両用空調ダクト。
【請求項2】
前記発泡成形体における気泡径が100μm以上であることを特徴とする請求項1記載の車両用空調ダクト。
【請求項3】
前記インストルメントパネル表面における、水平面となす角度が45°以下の部分に吹き出し口が形成された車両において、当該吹き出し口から車内にダクト内の流体が導入されるように前記開口部が配置されることを特徴とする請求項1または2記載の車両用空調ダクト。
【請求項4】
前記吹き出し口の真横からの仰角10〜30°の範囲を覆う窓を有する車両に配置されることを特徴とする請求項3記載の車両用空調ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調ダクトに関するものであり、特に、発泡成形体により形成された車両用空調ダクトの見栄えを良くするための工夫に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネル内には、各種空調ダクトが取り付けられており、例えば特許文献1には、複数のエア吹出口を有する車両用インストルメントパネルの裏側に設けられ、調整エアを空調ユニットから各エア吹出口に供給するエアダクトの構造が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されるエアダクトは、デフロスターダクトロアとセンターダクトロアとを一体に形成してフロントダクトロアを構成し、デフロスターダクトロアにインストルメントパネルを上方から接合して内部にデフロスターエア通路が形成されたデフロスターダクトを構成するとともに、センターダクトロアにセンターダクトアッパーを上方から接合して内部に空調エア通路が形成されたセンターダクトを構成したものである。
【0004】
この種の空調ダクトは、プラスチックの成形体として形成されるのが一般的であるが、近年、その軽量化等を目的に、発泡樹脂を成形した成形体により構成される空調ダクトも提案されている(例えば特許文献2〜4を参照)。
【0005】
特許文献2には、熱可塑性樹脂に発泡剤として超臨界流体を添加した発泡ブロー成形によって成形された発泡体ダクトが開示されている。特許文献2に記載される発泡体ダクトは、発泡セル径の小さい発泡セルが薄肉部を含めて均一に分布するとともに発泡倍率が大きく、軽量で断熱性に勝れているという特徴を有し、これにより、自動車等の空調装置等に用いた場合、結露量が著しく低減するという作用効果が奏される。
【0006】
また、特許文献3には、発泡性に優れるポリプロピレン系樹脂発泡層を有する中空発泡ブロー成形体が開示されている。特許文献3に記載される中空発泡ブロー成形体は、車両用空調ダクトなどに好適な、軽量、薄肉で且つ厚さの均一なポリプロピレン系樹脂中空発泡ブロー成形体である。
【0007】
さらに、特許文献4には、弾性係数の高い材質で形成されたハードダクトと、これよりも弾性係数の小さい多孔質の材質等で形成されたソフトダクトとを接続した車両用空調装置のダクト接続構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−198681号公報
【特許文献2】特開2005−241157公報
【特許文献3】特開2010−247427公報
【特許文献4】特開2002−144846公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前述の特許文献2、3に記載された発泡ダクトは、表面に気泡の粒が見えるために、カーボンブラック等を混入しても、非発泡樹脂を用いたソリッドタイプのダクトと比べて白っぽく見える傾向にある。特に、サイドデフロスターダクトが接続される車内への吹き出し口は、日光が当たって開口部の色合いが良く見え、前記傾向は見栄えを悪くする要因となる。
【0010】
特許文献4に記載されるダクト接続構造においても、車内への吹き出し開口部近傍部分は、多孔質材料等で形成されたソフトダクトで構成されており、特許文献2や特許文献3に記載された発泡ダクトの場合と同様、見栄えの点で問題である。
【0011】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、発泡ダクトの利点を活かし、できる限りの軽量化等を図りながら、車内への吹き出し開口部近傍部分の見栄えを良好なものとすることが可能な車両用空調ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的を達成するために、本発明の車両用空調ダクトは、車両のインストルメントパネル内に収容される車両用空調ダクトであって、開口部の近傍部分が黒色顔料を含む非発泡樹脂により形成され、他の部分が発泡樹脂により形成され発泡倍率が2倍以上の発泡成形体
であり、前記開口部から視認される部分が非発泡樹脂により形成されていることを特徴とする。
【0013】
車両用空調ダクトにおいて、車内への吹き出し開口部近傍部分は、運転者や搭乗者から視認可能であり、特に水平方向よりも上方に向かって開口する開口部においては、日光が当たって空調ダクトの色合いが良く見える。
【0014】
本発明の車両用空調ダクトにおいては、開口部の近傍部分が非発泡樹脂により形成されているので、発泡体のように白っぽく見えることがなく、所定の色合いで視認されることになる。また、前記開口部の近傍部分以外の部分は、発泡樹脂により形成された発泡成形体により構成されているので、軽量化等、発泡成形体を採用したことによる利点が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両用空調ダクトにおいて、軽量化等、発泡ダクトの利点を活かしながら、車内への吹き出し開口部の見栄えを良好なものとすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を適用した車両用空調ダクトの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】車内の吹き出し開口部の配置例を示す概略斜視図である。
【
図3】水平方向よりも上方に向かって開口する開口部の視認状態を模式的に示す図である。
【
図4】(a)は開口部における窓の仰角を示す模式図、(b)は開口部と窓の位置関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した車両用空調ダクトの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
本実施形態例の車両用空調ダクトは、自動車のインストルメントパネル内に取り付けられるものであり、車内空調用ダクトや、いわゆるデフロスターダクト等を有して構成されている。本実施形態の車両用空調ダクトの構造を
図1に示す。
【0019】
本実施形態の車両用空調ダクト1の形態としては、
図1に示すように、吸気のためのセンターダクト部2を中心に、左右に伸びる湾曲形状のサイドベントダクト3,4を有し、各サイドベントダクト3,4には車室内に向けた水平開口部5,6が設けられている。この水平開口部5,6のエアの吹き出し方向は、概ね水平方向である。
【0020】
また、センターダクト部2からは、前記サイドベントダクト3,4の他、サイドデフロスターダクト7,8がサイドベントダクト3,4と平行に左右に伸びる形で設けられている。これらサイドデフロスターダクト7,8は、湾曲後にサイドベントダクト3,4上に重なる形で形成され、その先端には上方に向かって開口するサイドデフロスター開口部9,10が形成されている。このサイドデフロスター開口部9,10のエアの吹き出し方向は、水平方向よりも上方に向かう方向である。
【0021】
その他、本実施形態の車両用空調ダクト1には、センターダクト部2から車室内のセンターコンソールの両側に設けた吹き出し口に対応するセンター開口部11,12や、フロントウインドウの曇り止めを行うフロントデフロスター用開口部等が形成されている。
【0022】
以上の構造を有する車両用空調ダクト1は、中空の樹脂成形体として形成され、成形方法としては、例えばブロー成形が採用される。また、車両用空調ダクト1の成形に際しては、発泡樹脂を用いた発泡ブロー成形が採用され、例えばポリプロピレン樹脂のようなポリオレフィン樹脂等に発泡剤を加えて成形することで、発泡成形体からなる車両用空調ダクト1が形成される。車両用空調ダクト1の大部分を発泡樹脂により形成された発泡成形体とすることで、軽量化や結露防止等の効果を得ることができる。
【0023】
ただし、前述のように車両用空調ダクト1を発泡成形体とした場合、表面に気泡の粒が見えるため、非発泡樹脂で形成した、いわゆるソリッドダクトに比べて白っぽく見える傾向にある。車両用空調ダクト1では、成形に使用する樹脂材料にカーボンブラック等の黒色顔料を混ぜ、その色合いを黒色にすることが一般的であるが、発泡成形体からなるダクトの場合、灰色に見えてしまい、見栄えを大きく損なうことになる。
【0024】
特に、発泡倍率が2倍を超えると、顕著に白っぽく見えてしまう。また、発泡層の気泡径が100μmよりも大きい場合は、ダクト表面での破泡(気泡の破れ)が目立つため、白っぽく見えやすい。尚、ここでの気泡径とは、ダクトの厚さ方向と直交する方向の気泡径である。当該気泡径は次のように測定することができる。ダクトの流路方向と平行なダクト断面(流路中心を通る断面)を準備し、流路方向と平行に約2mmの幅の部分に存在する全ての気泡について、流路方向と平行に気泡径を測定した平均値として測定される。
【0025】
図2は、前記車両用空調ダクト1の各開口部の配置を示すものである。車室内のインストルメントパネル21には、メータ類22、センターコンソール23、ハンドル24等が配置されるとともに、車両用空調ダクト1の各開口部に対応した吹き出し口が設けられている。
【0026】
具体的には、インストルメントパネル21の両サイドには、車室内の空調を行うための吹き出し口25,26、その近傍に配置されインストルメントパネル21の水平に近い面に形成されるサイドデフロスター用吹き出し口27,28、及びセンターコンソール23両脇の中央吹き出し口である。
【0027】
これら吹き出し口の内、吹き出し口25,26には車両用空調ダクト1の水平開口部5,6が接続され、当該水平開口部5,6から吹き出されるエアーが、インストルメントパネル21に設けられた吹き出し口25,26から車内へと導入される。同様に、センターコンソール23両脇の中央吹き出し口にはセンター開口部11,12が接続されている。また、サイドデフロスター用吹き出し口27,28には、車両用空調ダクト1のサイドデフロスターダクト7,8の先端に設けられたサイドデフロスター開口部9,10が対応している。
【0028】
ここで、サイドデフロスターダクト7,8の先端に設けられたサイドデフロスター開口部9,10が接続されるサイドデフロスター用吹き出し口27,28は、インストルメントパネル21の水平に近い面に上方に向かって開口しており、サイドデフロスター開口部9,10の吹き出し方向も上方に向かっている。この上を向いたサイドデフロスター用吹き出し口27,28では、例えば三角窓31等からの環境光を受けやすく、
図3に示すように、サイドデフロスター開口部9,10の近傍部分7A,8Aの色合いが良く見える。
【0029】
特に、サイドデフロスター用吹き出し口27,28が形成される位置におけるインストルメントパネル21の表面の傾斜角度θ(水平面を0°としたときの傾斜角度)が45°以下の場合、運転者や搭乗者等からサイドデフロスター開口部9,10の近傍部分7A,8Aが良く見えてしまい、見栄えの劣化が顕著である。また、
図4(a),(b)に示すように、サイドデフロスター用吹き出し口27,28の位置の真横方向[車両前後方向及び上下方向、のそれぞれに対して直交する方向。例えば
図3や
図4(b)では紙面に対して直交する方向。]よりもやや上方に向かう方向(真横方向に対して所定の仰角をもつ方向)に三角窓31が位置する場合は、三角窓31からの光がサイドデフロスター開口部9,10に当たりやすい。そのため、当該開口部9,10が白いと目立ってしまい、見栄えが非常に悪くなる。
図4(a)に示すように、三角窓31がサイドデフロスター用吹き出し口27,28の真横からの仰角10°〜30°の範囲を覆うように配置されている場合は特に光が当たりやすい。
【0030】
そこで本実施形態の車両用空調ダクト1においては、前記サイドデフロスター開口部9,10の近傍部分7A,8A(
図1中、ドットを付した領域)を非発泡樹脂により形成されるソリッドダクトとし、前記不都合を解消している。
【0031】
サイドデフロスター開口部9,10の近傍部分7A,8Aを非発泡樹脂により形成することで、表面に気泡の粒が見えることがなくなり、白く見えることがなくなる。したがって、サイドデフロスター開口部9,10の近傍部分7A,8Aを、例えば、カーボンブラック等を混入した樹脂を用いて発泡させずに成形することで、灰色ではなく黒色の状態にすることができる。これにより、サイドデフロスター用吹き出し口27,28からサイドデフロスター開口部9,10の近傍部分7A,8Aが見えたとしても、見栄えの良いものとなる。
【0032】
なお、前記サイドデフロスター開口部9,10の近傍部分7A,8Aをソリッドダクトとし、他の部分を発泡ダクトとするには、サイドデフロスター開口部9,10の近傍部分7A,8Aと他の部分を別体で成形する必要がある。したがって、本実施形態の車両用空調ダクト1の製造に際しては、サイドデフロスター開口部9,10の近傍部分7A,8Aを非発泡樹脂により成形し、これを発泡成形した他の部分(車両用空調ダクト1の本体部分)に嵌合,溶着等の手法で接続すれば良い。
【0033】
以上、本発明を適用した実施形態についてを説明してきたが、本発明が前述の実施形態に限られるものでないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 車両用空調ダクト
2 センターダクト部
3,4 サイドベントダクト
5,6 水平開口部
7,8 サイドデフロスターダクト
7A,8A サイドデフロスター開口部の近傍部分
9,10 サイドデフロスター開口部