(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
輝度成分及び色差成分により画素の色を表した画像データを取得し、所定の色空間において偽色が生じやすい第1の偽色領域を決定し、前記第1の偽色領域と補色関係にある第2の偽色領域を決定する演算部と、
前記第1の偽色領域内に第1の矩形領域を設定し、前記第2の偽色領域内に第2の矩形領域を設定し、
前記画像データに含まれる注目画素を成す色差成分が前記第1の矩形領域に含まれるか否かを示す第1の判断結果を作成し、前記注目画素を成す色差成分が前記第2の矩形領域に含まれるか否かを示す第2の判断結果を作成し、
前記第1の判断結果及び前記第2の判断結果に基づいて前記画像データに偽色が含まれるか否かを判断する検出部を備える偽色検出装置。
輝度成分及び色差成分により画素の色を表した画像データを取得し、所定の色空間において偽色が生じやすい第1の偽色領域を決定し、前記第1の偽色領域と補色関係にある第2の偽色領域を決定する演算部と、
前記画像データに含まれる注目画素を成す色差成分が前記第1の偽色領域に含まれるか否かを示す第1の判断結果を作成し、前記注目画素を成す色差成分が前記第2の偽色領域に含まれるか否かを示す第2の判断結果を作成し、前記第1の判断結果及び前記第2の判断結果に基づいて前記画像データに偽色が含まれるか否かを判断し、さらに、
前記注目画素の色差成分が前記第1の偽色領域に含まれ、かつ前記注目画素から所定の範囲内にある周辺画素の色差成分が前記第2の偽色領域に含まれるか否かを示す第1の最終判断結果を作成し、前記注目画素の色差成分が前記第2の偽色領域に含まれ、かつ前記注目画素から所定の範囲内にある周辺画素の色差成分が前記第1の偽色領域に含まれるか否かを示す第2の最終判断結果を作成し、前記第1の最終判断結果及び前記第2の最終判断結果に基づいて前記注目画素が偽色画素であるか否か判断する検出部を備える偽色検出装置。
前記色空間は、色差に対応する偏角と彩度に対応する動径とにより規定される二次元極座標系で表される平面である請求項1から4のいずれか1項に記載の偽色検出装置。
前記注目画素の色差成分が前記第1の偽色領域に含まれ、かつ前記注目画素から所定の範囲内にある周辺画素の色差成分が前記第2の偽色領域に含まれることを前記第1の最終判断結果が示し、または前記注目画素の色差成分が前記第2の偽色領域に含まれ、かつ前記注目画素から所定の範囲内にある周辺画素の色差成分が前記第1の偽色領域に含まれることを前記第2の最終判断結果が示す場合に、前記注目画素を偽色画素であると判断する請求項2に記載の偽色検出装置。
前記検出部は、前記第2の判断結果から高周波成分を除去して得られる第2の除去結果を作成し、前記第2の除去結果と前記第1の判断結果とに基づいて第1の除去判断結果を作成し、前記第1の判断結果から高周波成分を除去して得られる第1の除去結果を作成し、前記第1の除去結果と前記第2の判断結果とに基づいて第2の除去判断結果を作成し、前記第1の除去判断結果と前記第2の除去判断結果とに基づいて、前記注目画素を偽色画素であると判断する請求項1から5のいずれか1項に記載の偽色検出装置。
前記検出部は、前記第1の偽色領域に含まれる画素を前記第2の判断結果において増やして得られる第2の除去結果を作成し、前記第2の除去結果と前記第1の判断結果とに基づいて第1の除去判断結果を作成し、前記第2の偽色領域に含まれる画素を前記第1の判断結果において増やして得られる第1の除去結果を作成し、前記第1の除去結果と前記第2の判断結果とに基づいて第2の除去判断結果を作成し、前記第1の除去判断結果と前記第2の除去判断結果とに基づいて、前記注目画素を偽色画素であると判断する請求項1から5のいずれかに記載の偽色検出装置。
前記検出部は、前記第1の判断結果において前記第1の偽色領域に含まれると判断されている注目画素の輝度と、前記第2の判断結果において前記第2の偽色領域に含まれると判断されている全ての画素の輝度との相加平均である第1の輝度を算出し、前記第2の判断結果において前記第2の偽色領域に含まれると判断されている注目画素の輝度と、前記第1の判断結果において前記第1の偽色領域に含まれると判断されている全ての画素の輝度との相加平均である第2の輝度を算出し、前記第1の輝度と前記第2の輝度との差が閾値よりも小さい場合に、前記注目画素が偽色を含むと判断する請求項1から5のいずれかに記載の偽色検出装置。
前記検出部は、前記第1の判断結果において前記第1の偽色領域に含まれると判断されている注目画素の彩度と、前記第2の判断結果において前記第2の偽色領域に含まれると判断されている全ての画素の彩度との二乗平均平方根である第1の彩度を算出し、前記第2の判断結果において前記第2の偽色領域に含まれると判断されている注目画素の彩度と、前記第1の判断結果において前記第1の偽色領域に含まれると判断されている全ての画素の彩度との二乗平均平方根である第2の彩度を算出し、前記第1の彩度と前記第2の彩度との差が閾値よりも小さい場合に、前記注目画素が偽色を含むと判断する請求項1から5及び9のいずれかに記載の偽色検出装置。
前記画像データは、入射光の光路上に設けられるカラーフィルタを介して被写体像を撮像する撮像素子により作成され、前記演算部は、前記カラーフィルタの特性に応じて前記回転角度を決定する請求項12に記載の偽色検出装置。
前記第1の判断結果及び第2の判断結果から除去する高周波成分の範囲は、前記画像データが有する画素数に応じて決定され、前記画素数が多くなるにつれて前記範囲が広げられる請求項9に記載の偽色検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1による構成では、被写体像の周波数が高すぎると固体撮像素子が被写体像を解像できず、被写体像のエッジを捉えることができない。被写体像のエッジを捉えることができないとエッジ検出できないため、偽色を検出できない。また、色差成分の値に基づいて偽色を検出する構成では、偽色以外の部分をも検出してしまうおそれがある。また、特許文献2による構成では、被写体像に合焦した画像と合焦していない画像とを撮像した瞬間にタイムラグがあるため、これらの2枚の画像を比較することが困難となるおそれがある。加えて、比較するために、2枚の画像において特徴点をそれぞれ抽出して被写体像の位置を合わせるなどの特殊な処理が必要となる。この特殊な処理は、装置を複雑にするとともに、コスト上昇を招く。
【0005】
本発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、画像に含まれる偽色を検出する偽色検出装置及び方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願第1の発明による偽色検出装置は、輝度成分及び色差成分により画素の色を表した画像データを取得し、所定の色空間において偽色が生じやすい第1の偽色領域を決定し、第1の偽色領域と補色関係にある第2の偽色領域を決定する演算部と、画像データに含まれる注目画素を成す色差成分が第1の偽色領域に含まれるか否かを示す第1の判断結果を作成し、注目画素を成す色差成分が第2の偽色領域に含まれるか否かを示す第2の判断結果を作成し、第1の判断結果及び第2の判断結果に基づいて画像データに偽色が含まれるか否かを判断する検出部を備えることを特徴とする。
【0007】
演算部は、注目画素の色差成分から成る行列を所定の回転角度で回転変換して回転色差成分を作成し、検出部は、回転色差成分が第1の偽色領域に含まれるか否かを示す第1の判断結果を作成し、回転色差成分が第2の偽色領域に含まれるか否かを示す第2の判断結果を作成することが好ましい。
【0008】
色空間は、直交する2つの色差成分により規定される二次元直交座標系で表される平面が好適である。
【0009】
色空間は、色差に対応する偏角と彩度に対応する動径とにより規定される二次元極座標系で表される平面が好適である。
【0010】
検出部は、注目画素の色差成分が第1の偽色領域に含まれ、かつ注目画素から所定の範囲内にある周辺画素の色差成分が第2の偽色領域に含まれるか否かを示す第1の最終判断結果を作成し、注目画素の色差成分が第2の偽色領域に含まれ、かつ注目画素から所定の範囲内にある周辺画素の色差成分が第1の偽色領域に含まれるか否かを示す第2の最終判断結果を作成し、第1の最終判断結果及び第2の最終判断結果に基づいて注目画素が偽色画素であるか否か判断することが好ましい。
【0011】
注目画素の色差成分が第1の偽色領域に含まれ、かつ注目画素から所定の範囲内にある周辺画素の色差成分が第2の偽色領域に含まれることを第1の最終判断結果が示し、かつ注目画素の色差成分が第2の偽色領域に含まれ、かつ注目画素から所定の範囲内にある周辺画素の色差成分が第1の偽色領域に含まれることを第2の最終判断結果が示す場合に、注目画素を偽色画素であると判断してもよい。
【0012】
所定の範囲は、画像データが有する画素数に応じて決定され、画素数が多くなるにつれて所定の範囲が広くなるように構成されてもよい。
【0013】
検出部は、第2の判断結果から高周波成分を除去して得られる第2の除去結果を作成し、第2の除去結果と第1の判断結果とに基づいて第1の除去判断結果を作成し、第1の判断結果から高周波成分を除去して得られる第1の除去結果を作成し、第1の除去結果と第2の判断結果とに基づいて第2の除去判断結果を作成し、第1の除去判断結果と第2の除去判断結果とに基づいて、注目画素を偽色画素であると判断してもよい。
【0014】
検出部は、第1の判断結果において第1の偽色領域に含まれると判断されている注目画素の輝度と、第2の判断結果において第2の偽色領域に含まれると判断されている全ての画素の輝度との相加平均である第1の輝度を算出し、第2の判断結果において第2の偽色領域に含まれると判断されている注目画素の輝度と、第1の判断結果において第1の偽色領域に含まれると判断されている全ての画素の輝度との相加平均である第2の輝度を算出し、第1の輝度と第2の輝度との差が閾値よりも小さい場合に、注目画素が偽色を含むと判断してもよい。
【0015】
検出部は、第1の判断結果において第1の偽色領域に含まれると判断されている注目画素の彩度と、第2の判断結果において第2の偽色領域に含まれると判断されている全ての画素の彩度との二乗平均平方根である第1の彩度を算出し、第2の判断結果において第2の偽色領域に含まれると判断されている注目画素の彩度と、第1の判断結果において第1の偽色領域に含まれると判断されている全ての画素の彩度との二乗平均平方根である第2の彩度を算出し、第1の彩度と第2の彩度との差が閾値よりも小さい場合に、注目画素が偽色を含むと判断してもよい。
【0016】
演算部は、画像データを作成した機器の特性に応じて回転角度を決定することが好ましい。
【0017】
画像データは、入射光の光路上に設けられるカラーフィルタを介して被写体像を撮像する撮像素子により作成され、演算部は、カラーフィルタの特性に応じて回転角度を決定してもよい。
【0018】
演算部は、画像データを作成するときに用いた画像処理に応じて回転角度を決定してもよい。
【0019】
第1の判断結果及び第2の判断結果から除去する高周波成分の範囲は、画像データが有する画素数に応じて決定され、画素数が多くなるにつれて範囲を広げてもよい。
【0020】
本願第2の発明による撮像装置は、前記偽色検出装置と、画像データを作成する撮像素子と、撮像素子に入射する光の光路上に設けられるカラーフィルタとを備え、演算部は、カラーフィルタの特性に応じて回転角度を決定することを特徴とする。
【0021】
本願第3の発明による偽色検出方法は、輝度成分と色差成分とから画素の色を表した画像データを取得するするステップと、所定の色空間において偽色が生じやすい第1の偽色領域を決定するステップと、第1の偽色領域と補色関係にある第2の偽色領域を決定するステップと、注目画素を成す色差成分が第1の偽色領域に含まれるか否かを示す第1の判断結果を作成するステップと、注目画素を成す色差成分が第2の偽色領域に含まれるか否かを示す第2の判断結果を作成するステップと、第1の判断結果及び第2の判断結果に基づいて画像データに偽色が含まれるか否かを判断するするステップとを備えることを特徴とする。
【0022】
本願第4の発明による偽色検出プログラムは、輝度成分と色差成分とから画素の色を表した画像データを取得するステップと、所定の色空間において偽色が生じやすい第1の偽色領域を決定するステップと、第1の偽色領域と補色関係にある第2の偽色領域を決定するステップと、注目画素を成す色差成分が第1の偽色領域に含まれるか否かを示す第1の判断結果を作成するステップと、注目画素を成す色差成分が第2の偽色領域に含まれるか否かを示す第2の判断結果を作成するステップと、第1の判断結果及び第2の判断結果に基づいて画像データに偽色が含まれるか否かを判断するするステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、画像に含まれる偽色を検出する偽色検出装置及び方法を得る。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願発明の第1の実施形態による偽色検出装置について
図1から7を用いて説明する。
図1は、偽色検出装置を備えるデジタルカメラ100を示す。
図1を用いてデジタルカメラ100の構成について説明する。
【0026】
デジタルカメラ100は、DSP110、撮像素子であるCMOS121、合焦レンズ131、及びLCD122を主に備える。
【0027】
合焦レンズ131は、複数のレンズにより構成され、デジタルカメラ100のボディに畳まれて格納され、デジタルカメラ100が撮影画像を記録する動作モードに設定されたとき、ボディから繰り出される。繰り出された合焦レンズ131は被写体に合焦して、CMOS121に被写体像を結像させる。合焦レンズ131の外周面にはピント調整リング132及び駆動モータ133が設けられる。駆動モータ133は合焦レンズ131を駆動して被写体に合焦させる。ピント調整リング132はユーザにより回転され、合焦レンズ131を被写体に合焦させる。
【0028】
合焦レンズ131とCMOS121との間の光路上には絞り羽根123、シャッター幕124が設けられる。絞り羽根123はCMOS121に到達する光量を調節し、シャッター幕124は、合焦レンズ131からCMOS121までの光路を開閉する。
【0029】
CMOS121は、複数の画素121aと、その画素121aの1つ1つに設けられるカラーフィルタ121bとを備える。1枚のカラーフィルタ121bは、赤、緑、及び青の3色のうち、いずれか1つの色を有する。赤、緑、及び青のカラーフィルタ121bは、例えばベイヤー配列などの配列法に従って並べられる。CMOS121は、DSP110が生成する同期クロック信号を受信し、これに同期して動作する。複数の画素121aは結像した被写体像を撮像して電荷として出力する。CMOS121は、電荷の大きさにより構成される画像データを連続的にDSP110へ出力する。すなわち画像データは、輝度成分及び色差成分によって各画素121aの色を表現する。
【0030】
DSP110は、検出部111及び演算部112を主に備える。検出部111及び演算部112は、画像データに含まれる偽色を検出する。これらの部材の詳細については後述される。
【0031】
DSP110は、画像データに基づいて合焦レンズ131が被写体に合焦しているか否かを判断し、判断に応じた信号を駆動回路125に送信する。駆動回路125は、受信した信号に応じて駆動モータ133を動作させる。これにより、合焦レンズ131が被写体に合焦する。
【0032】
DSP110は、メモリ127を一時記憶装置として用いながら画像データに所定の処理を施した後、画像ファイルを作成してメモリカード128に送信するとともに、処理済みの画像データをLCD122に連続的に送信する。メモリカード128は、例えばSDカードであって、デジタルカメラ100に対して着脱自在となるように設けられ、受信した画像ファイルを保存する。LCD122は、受信した画像データを表示する。
【0033】
DSP110には、操作スイッチ126が接続される。操作スイッチ126は、シャッターレリーズボタンを備える。シャッターレリーズボタンは二段階スイッチであり、ユーザが半押しすると半押し信号をDSP110に送信し、全押しすると全押し信号をDSP110に送信する。
【0034】
DSP110が半押し信号を受信すると、受信した画像データに応じて、絞り値及びシャッター速度を算出し、LCD122は補正画像を表示する。DSP110が全押し信号を受信すると、算出済みの絞り値及びシャッター速度で絞り羽根123及びシャッター幕124を駆動させ、CMOS121に被写体像を撮像させる。そしてCMOS121から取得した画像データに対して所定の画像処理を施し、メモリカード128に送信する。メモリカード128は、受信した画像ファイルを保存する。
【0035】
次に、
図2及び3を用いて演算部112について説明する。
図2(a)は、2つの色差成分により規定される座標系において、偽色が発生しやすい領域20を示す。この座標系は、直交する2つの色差成分により規定される二次元直交座標系であるとともに、色差に対応する偏角と彩度に対応する動径とにより規定される二次元極座標系でもある。以下、色差Cbを横軸、色差Crを縦軸として説明する。
【0036】
偽色が発生しやすい領域20は、カラーフィルタ121bの分光感度や、DSP110が実行する画像処理で行われる色補正処理などに応じて適宜決定される。分光感度や色補正処理は画像を作成した機器によって異なる。そのため、画像を作成した機器に応じて決定してもよい。領域20を決定する手段について説明する。まず、回転角度を決定すべき機器を用いて、CZP(Circular Zone Plate)チャートを撮像する。これにより得られる画像データは偽色を有する。そこで、この画像データが有する輝度成分と色差成分を用いて、
図2(a)に示す座標系において偽色が発生する領域を決定する。偽色が発生する程度に応じて、領域20の大きさが変更される。
【0037】
次に、この領域20内に、矩形の第1の未回転偽色領域21bと第2の未回転偽色領域22bを設定する(
図2(b)参照)。領域20を矩形の領域に近似することにより、画像データの色差成分が含まれるか否かの判断が容易となる。しかしながら、第1の未回転偽色領域21bと第2の未回転偽色領域22bの長手方向が縦軸に対して平行でなく傾いているため、これらの領域に画像データの色差成分が含まれるか否かを判断すると、計算が複雑となり、計算負荷が大きくなる。そこで、第1の未回転偽色領域21bと第2の未回転偽色領域22bとを回転変換することにより第1の回転偽色領域21cと第2の回転偽色領域22cを作成する(
図2(c)参照)。第1の回転偽色領域21cと第2の回転偽色領域22cの長手方向は縦軸に対して平行であるため、これらの領域に画像データの色差成分が含まれるか否かを判断すれば、計算が容易となり、計算負荷を抑えることができる。第1の回転偽色領域21cと第2の回転偽色領域22cとは、互いに補色関係にあり、これらの縦方向の長さは彩度と一致し、これらの横方向の長さは色相と一致する。
【0038】
回転変換の角度は、領域20を決定する手段と同様に、カラーフィルタ121bの分光感度、DSP110が実行する画像処理で行われる色補正などに応じて適宜決定される。すなわち、画像を作成した機器に応じて決定される。回転角度を決定する手段について説明する。領域20を決定する手段と同様に、回転角度を決定すべき機器を用いてCZPチャートを撮像し、偽色が発生する領域を決定する。そして、この領域を回転変換したとき、領域の長手方向が縦軸と平行になるような回転角度を求める。求められた回転角度が、その機器固有の回転角度である。回転前の色差成分を(Cb,Cr)、回転後の色差成分を(Cb’,Cr’)、回転角度をθとすると、回転後の色差成分(Cb’,Cr’)は以下の式により表される。
Cb’=Cb・cosθ−Cr・sinθ
Cr’=Cb・sinθ+Cr ・cosθ
演算部112は、この式を用いて、取得した画像データの色差成分を回転変換し、回転色差成分を作成する。言い換えると、演算部112が画像データの色相を回転変換する。この処理を回転変換処理という。
【0039】
図3は、
図2(a)に示されるものと異なる特性を持つ機器の偽色が発生しやすい領域30aを示した図である。領域30a内に、矩形の第1の未回転偽色領域31aと第2の未回転偽色領域32aが設定されている(
図3(a)参照)。
【0040】
図2の領域20が長手方向に一直線に延びるのに対して、領域30aは「く」の字型に折れ曲がっている。そのため、領域30a全体を一定の回転角度で回転させても、2つの回転偽色領域の長手方向は縦軸と平行にならない。そこで、第1の未回転偽色領域31aの長手方向が縦軸と平行になるような第1の回転角度θ1と、第2の未回転偽色領域32aの長手方向が縦軸と平行になるような第2の回転角度θ2を求める。求められた第1の回転角度θ1及び第2の回転角度θ2が、その機器固有の回転角度である。演算部112は、第1の回転角度θ1及び第2の回転角度θ2を用いて、取得した画像データの色差成分を回転変換し、回転色差成分を作成する。言い換えると、演算部112が画像データの色相を回転変換する。この処理を回転変換処理という。
【0041】
次に、
図2及び4を用いて検出部111について説明する。検出部111は、画像データに含まれる各画素121aの色差成分が第1の回転偽色領域21cと第2の回転偽色領域22cに含まれるか否かを判断し、その結果に応じて画像データに偽色が含まれるか否かを決定する。すなわち、偽色を有する可能性がある画素121a(偽色可能性画素)に対し、その偽色可能性画素から所定の範囲内に、その偽色可能性画素と補色関係にある偽色可能性画素が存在する場合、その偽色可能性画素が偽色を有すると判断する。以下、この処理について詳細に説明する。
【0042】
まず、検出部111は、画像データを構成する画素121aから検査対象である注目画素を1つ選択する。そして、注目画素を成す色差成分が第1の回転偽色領域21cに含まれるか否かを判断する。そして、第1の回転偽色領域21cに含まれる場合には値1を判断結果として出力し、含まれない場合には値0を判断結果として出力する。この処理を全ての画素121aに対して実行する。出力された判断結果を画素121aの配列に対応するように並べて得られる行列が第1の中間判断結果である。同様にして注目画素を成す色差成分が第2の回転偽色領域22cに含まれるか否かを判断し、第2の中間判断結果を作成する。
【0043】
次に、検出部111は、第1の中間判断結果において値1を有する注目画素を検出し、第2の中間判断結果におけるその注目画素及び注目画素から所定の範囲内の画素121aの値に1が含まれるか否かを判断する。
図4(a)は、第1の中間判断結果において値1を有する注目画素41と、その注目画素から2画素分の範囲に含まれる画素121aの値を示す。
図4(b)及び
図4(c)は、第2の中間判断結果の一部であって、注目画素を中心とする行列であり、第1の中間判断結果において値1を有する注目画素に対応する画素42と、その注目画素から2画素分の範囲に含まれる画素121aの値を示す。
図4(b)及び
図4(c)は、5×5の正方行列であり、注目画素から2画素分の範囲が所定の範囲に相当する。所定の範囲は、画像データが有する画素数に応じて決定され、画素数が多くなるにつれて所定の範囲が広くなる。
図4(b)には値1を取る画素121aが含まれる。しかし
図4(c)には値1を取る画素121aが含まれず、全ての画素121aの値が0を取る。
図4(b)に示すように、第1の中間判断結果において値1を有する注目画素のうち、第2の中間判断結果におけるその注目画素及び注目画素から所定の範囲内の画素121aの値に1が含まれるとき、注目画素に偽色が含まれると判断して値1を判断結果として出力する。他方、
図4(c)に示すように、第1の中間判断結果において値1を有する注目画素のうち、第2の中間判断結果におけるその注目画素及び注目画素から所定の範囲内の画素121aの値に1が含まれないとき、注目画素に偽色が含まれないと判断し、値0を判断結果として出力する。この処理を全ての画素121aに対して実行する。出力された判断結果を画素121aの配列に対応するように並べて得られる行列が第1の最終判断結果である。同様にして、検出部111は、第2の中間判断結果において値1を有する注目画素を検出し、第1の中間判断結果におけるその注目画素及び注目画素から所定の範囲内の画素121aの値に1が含まれるか否かを判断する。判断結果を画素121aの配列に対応するように並べて得られる行列が第2の最終判断結果である。
【0044】
そして、検出部111は、第1の最終判断結果と第2の最終判断結果とを対応する画素毎に加算して、偽色判定結果を作成する。偽色判定結果は、画像データの画素121aが作る行列と同じ行列であり、行列において対応する要素の値が1であるとき、その画素121aは偽色であると判断されていることを示し、対応する要素の値が0であるとき、その画素121aは偽色でないと判断されていることを示す。
【0045】
次に、
図5を用いて第1の偽色判定処理について説明する。第1の偽色判定処理は、演算部112及び検出部111によって実行される処理である。
【0046】
初めのステップS51では、演算部112が画像データを読み込む。画像データは、例えばJPEG形式のような輝度成分及び色差成分から構成される画像データである。
【0047】
次のステップS52では、演算部112が画像データの色相を回転変換処理して回転色差成分を作成する。
【0048】
次のステップS53では、検出部111が第1の中間判断結果及び第2の中間判断結果を作成する。
【0049】
次のステップS54では、検出部111が、第1の中間判断結果及び第2の中間判断結果に基づいて第1の最終判断結果及び第2の最終判断結果を作成した後、第1の最終判断結果と第2の最終判断結果とを加算して偽色判定結果を作成する。これにより、偽色を持つ画素121aが検出される。
【0050】
本実施形態によれば、第1の回転偽色領域21cと、第1の回転偽色領域21cと補色関係にある第2の回転偽色領域22cとを用いて偽色の判定を行うため、偽色と同じような配色を誤って偽色と判断することを防止し、精度良く偽色を検出できる。
【0051】
また、演算部112が回転変換を行うことにより、計算が複雑となることを防ぎ、計算負荷を減らすことができる。
【0052】
さらに、画像データの画素数が増えるに従って、前述した所定の範囲を拡大、すなわち
図4(b)及び
図4(c)に示す正方行列の大きさを大きくすることにより、画像データの画素数に適した範囲を設定して、精度良く偽色を含む領域を検出できる。
【0053】
次に、
図2、5、及び6を用いて第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の中間判断結果又は第2の中間判断結果にLPF(ローパスフィルタ)を掛けてから第1の最終判断結果及び第2の最終判断結果を算出する点が第1の実施形態と異なる。第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0054】
次に、
図6を用いて検出部111について説明する。検出部111は、画像データに含まれる各画素121aの色差成分が第1の回転偽色領域21cと第2の回転偽色領域22cに含まれるか否かを判断し、その結果にLPFを掛けた結果に応じて画像データに偽色が含まれるか否かを決定する。以下、これらの処理について詳細に説明する。第1の中間判断結果及び第2の中間判断結果を作成する手順に関しては第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
図6(a)は5×5のサイズを有するLPFを示し、
図6(b)は第2の中間判断結果を示す。ここで、注目画素をA13とすると、A13に対してLPFを掛けて得られる値LPF_A13は以下の式により求められる。
LPF_A13=L1・A1+L2・A2+L3・A3+L4・A4+L5・A5+L6・A6+L7・A7+L8・A8+L9・A9+L10・A10+L11・A11+L12・A12+L13・A13+L14・A14+L15・A15+L16・A16+L17・A17+L18・A19+L20・A20+L21・A21+L22・A22+L23・A23+L24・A24+L25・A25
同様の処理を第2の中間判断結果に含まれる全ての画素121aに対して行い、第2の除去結果を得る。そして、第1の中間判断結果と第2の除去結果とを同じ位置にある要素毎に乗算を行う。乗じた要素と同じ位置に乗算の結果を配置した結果が第1の除去判断結果である。これにより、第1の中間判断結果と第2の除去結果との双方において0でない値を取る画素121aのみが、第1の除去判断結果において0でない値を取ることになり、いずれかにおいて値が0である画素121aは第1の除去判断結果において値0を取ることになる。同様にして、検出部111は、第1の中間判断結果に対してLPFを掛けて第1の除去結果を得る。そして第2の中間判断結果と第1の除去結果とを同じ位置にある要素毎に乗算を行い、第2の除去判断結果を得る。第1の中間判断結果及び第2の中間判断結果に対してLPFを掛けると、第1の除去結果及び第2の除去結果において0でない値を取る領域が拡大する。つまり、第1の中間判断結果及び第2の中間判断結果から高周波成分を除去すると第1の偽色領域に含まれる画素が第2の判断結果において増え、第2の偽色領域に含まれる画素が第1の判断結果において増える。すなわち、偽色を含む可能性がある領域が拡大する。これにより、より確実に偽色を含む領域を検出できる。
【0056】
そして、検出部111は、第1の除去判断結果と第2の除去判断結果とを対応する要素毎に加算して、偽色判定結果を作成する。偽色判定結果は、画像データの画素121aが作る行列と同じ行列であり、行列において対応する要素の値が1であるとき、その画素121aは偽色であると判断されており、対応する要素の値が0であるとき、その画素121aは偽色でないと判断されている。
【0057】
図6(c)は、全ての要素が同じ値を取るLPFの一例である。補色関係にある第1の回転偽色領域21cと第2の回転偽色領域22cに含まれるか否かを判断して作成される第1の中間判断結果と第2の中間判断結果は、通常、同じ位置に値1を取る要素、すなわち第1の回転偽色領域21c又は第2の回転偽色領域22cに含まれる画素121aを持たない。ここで、第2の中間判断結果に対してLPFを掛けると、第2の除去結果において0でない値を取る領域、すなわち偽色を含む可能性がある領域が第2の中間判断結果よりも拡大する。これにより、第2の除去結果と第1の中間判断結果とが補色関係となる。
【0058】
また、第1の中間判断結果及び第2の中間判断結果に対してLPFを掛ける回数を増やすにつれて、第1の除去結果及び第2の除去結果において0でない値を取る領域が拡大していく。そこで、画像データの画素数が増えるに従って、LPFを掛ける回数を増やせば、偽色を含む可能性がある領域を拡大して、より確実に偽色を含む領域を検出できる。
【0059】
あるいは、LPFのサイズを大きくするにつれて、第1の除去結果及び第2の除去結果において0でない値を取る領域を拡大することもできる。そこで、画像データの画素数が増えるに従って、LPFのサイズを大きくすれば、偽色を含む可能性がある領域を拡大して、より確実に偽色を含む領域を検出できる。
【0060】
次に、
図5を用いて第2の偽色判定処理について説明する。第2の偽色判定処理は、演算部及び検出部111によって実行される処理である。
【0061】
ステップS51からS53は、第1の偽色判定処理と同じであるため、説明を省略する。
【0062】
ステップS54では、検出部111が、第1の中間判断結果及び第2の中間判断結果に基づいて第1の除去判断結果と第2の除去判断結果を作成した後、第1の除去判断結果と第2の除去判断結果とを加算して偽色判定結果を作成する。これにより、偽色を持つ画素121aが検出される。
【0063】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を備えると共に、従来の撮像装置が備えるLPFを用いて偽色を検出できるため、新たな構成要素を設けずに、従来の画像処理ICでも偽色を精度良く検出することができる。
【0064】
また、画像データの画素数が増えるに従って、LPFを掛ける回数を増やすことにより、偽色を含む可能性がある領域を拡大して、より確実に偽色を含む領域を検出できる。
【0065】
さらに、画像データの画素数が増えるに従って、LPFのサイズを大きくすることにより、偽色を含む可能性がある領域を拡大して、より確実に偽色を含む領域を検出できる。
【0066】
次に、
図4及び7を用いて第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、第1の中間判断結果及び第2の中間判断結果の作成と、第1の除去判断結果と第2の除去判断結果の作成との間に、輝度及び彩度を判定する点が第1及び第2の実施形態と異なる。第1及び第2の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0067】
次に、
図4及び7を用いて第3の偽色判定処理について説明する。第3の偽色判定処理は、演算部112及び検出部111によって実行される処理である。
【0068】
ステップS51からS53は、第1及び第2の偽色判定処理と同じであるため、説明を省略する。
【0069】
次のステップS71では、輝度を用いて偽色を判定する。より詳しく説明すると、
図4(a)の第1の中間判断結果において値1を取る注目画素の輝度と、第1の中間判断結果と補色関係にある
図4(b)の第2の中間判断結果において値1を取る全ての画素121aの輝度との相加平均を算出する。そして得られた値を第1の輝度とする。同様に、第2の中間判断結果において値1を取る注目画素の輝度と、第2の中間判断結果と補色関係にある第1の中間判断結果において値1を取る全ての画素121aの輝度との相加平均を算出する。そして得られた値を第2の輝度とする。次に、第1の輝度と第2の輝度との差を求め、予め定めた閾値よりも差が小さい場合には偽色を含む可能性があると判断して、第1の中間判断結果において対応する画素121a(注目画素)の値を1のまま維持する。他方、差が閾値以上である場合には偽色を含む可能性がないと判断し、第1の中間判断結果において対応する画素121a(注目画素)の値を1から0に変更する。偽色が発生した画素121aでは、補色関係にある色差成分どうしは大きく異なるが、輝度成分どうしは差が少ない現象を利用したものである。すなわち、色差成分の差が大きく、かつ輝度成分の差が少ない画素121aを、偽色を含む可能性があると判断する。これにより、補色関係にある色を有する物体が近接している被写体を撮像する場合に、補色関係にある色を誤って偽色と判断してしまうことを防止できる。
【0070】
次のステップS72では、彩度を用いて偽色を判定する。より詳しく説明すると、
図4(a)の第1の中間判断結果において値1を取る注目画素の彩度と、第1の中間判断結果と補色関係にある
図4(b)の第2の中間判断結果において値1を取る全ての画素121aの彩度との相加平均を算出する。彩度は、色差Cbと色差Crとの二乗平均平方根である。そして得られた値を第1の彩度とする。同様に、第2の中間判断結果において値1を取る注目画素の彩度と、第2の中間判断結果と補色関係にある第1の中間判断結果において値1を取る全ての画素121aの彩度との相加平均を算出する。そして得られた値を第2の彩度とする。次に、第1の彩度と第2の彩度との差を求め、予め定めた閾値よりも差が小さい場合には偽色を含む可能性があると判断して、第1の中間判断結果において対応する画素121a(注目画素)の値を1のまま維持する。他方、差が閾値以上である場合には偽色を含む可能性がないと判断し、第1の中間判断結果において対応する画素121a(注目画素)の値を1から0に変更する。偽色が発生した画素121aでは、補色関係にある色差成分どうしは大きく異なるが、彩度成分どうしは差が少ない現象を利用したものである。すなわち、色差成分の差が大きく、かつ彩度成分の差が少ない画素121aを、偽色を含む可能性があると判断する。これにより、補色関係にある色を有する物体が近接している被写体を撮像する場合に、補色関係にある色を誤って偽色と判断してしまうことを防止できる。
【0071】
次のステップS54では、検出部111が、第1の中間判断結果及び第2の中間判断結果に基づいて第1の最終判断結果及び第2の最終判断結果を作成した後、第1の最終判断結果と第2の最終判断結果とを加算して偽色判定結果を作成する。これにより、偽色を持つ画素121aが検出される。
【0072】
本実施形態によれば、補色関係にある色を有する物体が近接している被写体を撮像する場合に、補色関係にある色を誤って偽色と判断してしまうことを防止できる。また、補色関係にある一方で輝度や彩度が異なる被写体を偽色と判断してしまうことを防止できる。
【0073】
なお第3の実施形態において、第3の偽色判定処理における、輝度を用いた偽色の判定と彩度を用いた偽色の判定は、いずれか一方のみを実行しても良い。
【0074】
また第3の実施形態において、色差Cbと色差Crとの二乗平均平方根を彩度であると説明したが、色差Cbと色差Crとの二乗平均を彩度として使用しても良い。
【0075】
なお、いずれの実施形態においても、検出部111は、第1の回転偽色領域21cと第2の回転偽色領域22cではなく、第1の未回転偽色領域21b、31aと第2の未回転偽色領域22b、32aに画素121aの色差成分が含まれるか否かを判断することにより、偽色を検出しても良い。
【0076】
また、第1の偽色判定処理のステップS51及び第2の偽色判定処理のステップS71において、輝度成分及び色差成分から構成されるJPEG形式以外の形式のファイル、例えばRAW形式を読み込んでも良い。このとき、輝度成分及び色差成分から構成されない画像データに関しては、画像データを輝度成分及び色差成分に変換する。