(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮機(2)、凝縮器(3)、膨張弁(4)及び蒸発器(5)を備えると共に、前記圧縮機(2)の駆動用モータ(2b)に電力を供給する電力供給装置(P)、及び前記凝縮器(3)から出た冷媒によって前記電力供給装置(P)を構成する電子部品(Tr,Dw,Dr)を冷却する冷却器(30)を備えた冷凍装置において、
前記冷却器(30)における冷媒流量を該冷却器(30)の下流側において調整する流量調整部(40)と、
前記電子部品(Tr,Dw,Dr)の損失に相関する指標と、前記冷却器(30)において冷却能力が不足せず且つ前記冷却器(30)において結露が起こらない前記冷媒流量との対応関係を示す制御マップを用いて前記冷媒流量を決定するとともに、前記流量調整部(40)を制御する制御部(7)と、
を備え、
前記指標は、前記電力供給装置(P)の出力電流を代用する値であり、
制御マップは、前記指標の1つである前記圧縮機(2)の回転数(R)と、該回転数(R)とは異なる他の前記指標の1つに基づいて前記冷媒流量を決定するように構成されていることを特徴とする冷凍装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記文献の例では、温度上昇が検知された場合には、冷却器内の冷媒がガス冷媒になっていると考えられる。このガス冷媒は温度上昇しながら冷却器から流出するので冷却器の温度を一定に制御するのが困難であるとともに、ガス冷媒は液冷媒よりも密度が小さいので十分な冷却性能を発揮させるのが難しい。
【0005】
また、冷却器内の冷媒が液冷媒とガス冷媒の2相状態の場合には冷媒の温度変化がないので、検知した冷媒温度で冷媒流量を制御する方式では冷媒流量の適否を判断できず、液冷媒の流量が過多となってしまう可能性がある。液冷媒の流量が多すぎると、冷却器の温度が下がりすぎて結露を生ずる可能性がある。電子部品の近傍で結露を生ずるのは好ましくはない。
【0006】
本発明は前記の問題に着目してなされたものであり、電子部品を冷媒で冷却する冷却器を備えた冷凍装置において、冷却器の冷却性能を確保しつつ、冷却器における結露を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、第1の発明は、
圧縮機(2)、凝縮器(3)、膨張弁(4)及び蒸発器(5)を備えると共に、前記圧縮機(2)の駆動用モータ(2b)に電力を供給する電力供給装置(P)、及び前記凝縮器(3)から出た冷媒によって前記電力供給装置(P)を構成する電子部品(Tr,Dw,Dr)を冷却する冷却器(30)を備えた冷凍装置において、
前記冷却器(30)における冷媒流量を該冷却器(30)の下流側において調整する流量調整部(40)と、
前記電子部品(Tr,Dw,Dr)の損失に相関する指標と、前記冷却器(30)において冷却能力が不足せず且つ前記冷却器(30)において結露が起こらない前記冷媒流量との対応関係を示す制御マップを用いて前記冷媒流量を決定するとともに、前記流量調整部(40)を制御する制御部(7)と、
を備え、
前記指標は、前記電力供給装置(P)の出力電流を代用する
値であり、
制御マップは、
前記指標の1つである前記圧縮機(2)の回転数(R)と、該回転数(R)とは異なる他の前記指標の1つに基づいて前記冷媒流量を決定するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
この構成では、予め用意しておいた前記制御マップを用いるので、冷却器(30)内の冷媒がガス冷媒のみになってしまう前に冷媒流量を増やして、冷却器(30)内に液冷媒を確保することができる。また、冷却器内の冷媒が液冷媒とガス冷媒の2相状態の場合には、冷却器内の冷媒は温度変化がない。しかしながら、本発明では、前記制御マップを用いることで、所定の冷却能力を確保しつつ、冷却器(30)において結露が起こらない範囲に冷媒流量を制限することができる。
【0009】
この構成では、電力供給装置(P)の出力電流に基づいて冷媒流量が制御される。
【0010】
この構成では、回転数(R)も考慮されて冷媒流量が制御される。
【0011】
また、第2の発明は、
第1の発明の冷凍装置において、
前記制御部(7)は、前記出力電流を代用する値として、前記凝縮器(3)における凝縮温度(Tc)を用いることを特徴とする。
【0012】
この構成では、電子部品(Tr,Dw,Dr)の損失に相関する指標として凝縮器(3)における凝縮温度(Tc)を用いる。
【0013】
また、第3の発明は、
第2の発明の冷凍装置において、
前記制御部(7)は、互いに異なる蒸発温度(Te)について作成された複数種類の前記制御マップを備え、当該制御マップを蒸発温度(Te)応じて用いて、前記流量調整部(40)を制御することを特徴とする
この構成では、電子部品(Tr,Dw,Dr)の損失に相関する指標として蒸発温度(Te)をさらに加味する。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明から第2の発明のそれぞれによれば、冷却器の冷却性能を確保しつつ、冷却器における結露を防止することが可能になる。
【0015】
また、第3の発明によれば、より正確に冷媒流量を制御でき、確実に冷却性能を確保と結露防止を両立できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0018】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る冷凍装置の冷媒回路を示す。同図の冷凍装置は、工場等の大規模な施設において用いられる大型の空気調和装置の冷媒回路を示す。同図の空気調和装置(1)(冷凍装置)は、圧縮機(2)、凝縮器(3)、膨張弁(4)、蒸発器(5)、及び制御部(7)を備えている。
【0019】
圧縮機(2)は、内部には破線で示すように圧縮機構(2a)と、該圧縮機構(2a)を回転駆動するモータ(2b)とが収容される。凝縮器(3)は、空冷の凝縮器であって、室外に配置される。凝縮器(3)の近傍には、空冷ファン(3a)が設けられている。膨張弁(4)は、弁体がパルスモータによって駆動される開度可変な電動膨張弁である。蒸発器(5)は、空冷式の蒸発器であって、室内に配置される。蒸発器(5)の近傍には、空冷ファン(5a)が設けられている。
【0020】
そして、空気調和装置(1)では、圧縮機(2)、凝縮器(3)、膨張弁(4)、及び蒸発器(5)を冷媒配管(6)により順に閉回路に接続して冷媒回路(10)を構成しており、圧縮機(2)から冷媒を凝縮器(3)に送り、この凝縮器(3)で冷媒を外気と熱交換して放熱させた後、その冷媒の流量及び圧力を膨張弁(4)で調整しつつ、蒸発器(5)で室内空気と熱交換させて吸熱させ、ガス冷媒として圧縮機(2)に戻すことを繰り返す。なお、圧縮機(2)の吸入ポートに繋がる冷媒配管(6)の途中には、圧縮機(2)に吸入される冷媒の圧力を検出する吸入圧力センサ(8)が設けられるとともに、圧縮機(2)の吐出ポートに繋がる冷媒配管(6)の途中には、圧縮機(2)から吐出された冷媒の圧力を検出する吐出圧力センサ(9)が設けられている。
【0021】
圧縮機(2)、凝縮器(3)の空冷ファン(3a)、膨張弁(4)、及び蒸発器(5)の空冷ファン(5a)には、制御部(7)が接続され、この制御部(7)により圧縮機(2)のモータ(2b)の回転数、それぞれの空冷ファン(3a,5a)回転数、及び膨張弁(4)の開度が制御される。制御部(7)は、例えばマイクロコンピュータで構成する。
【0022】
次に、圧縮機(2)の圧縮機構(2a)を回転駆動するモータ(2b)に電力を供給する電力供給装置(P)の電気回路を
図2に示す。同図に示すように電力供給装置(P)は、コンバータ部(11)、平滑コンデンサ(12)、及びインバータ(13)を備えている。
【0023】
コンバータ部(11)は、6個のダイオード(Dr)がブリッジ状に結線されて構成され、三相交流電源(15)の三相交流を直流に変換する。平滑コンデンサ(12)は、コンバータ部(11)により変換された直流電圧を平滑する。インバータ(13)は、平滑コンデンサ(12)によって平滑された直流電圧を、三相交流電圧に変換する。この例では、インバータ(13)は、6個のスイッチング素子(Tr)、及びスイッチング素子(Tr)の各々に逆並列に接続された6個の還流ダイオード(Dw)を有している。スイッチング素子(Tr)は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)で構成する。
【0024】
電力供給装置(P)では、インバータ(13)で変換された三相交流電圧が、圧縮機構(2a)駆動用のモータ(2b)に供給される。制御部(7)は、モータ(2b)の各相に流れる電流(iu,iv,iw)を制御するように、インバータ(13)が内蔵する6個のスイッチング素子(Tr)に制御信号(CNT)を出力して、モータ(2b)の回転数を制御する。
【0025】
そして、
図1に戻って、空気調和装置(1)の冷媒回路(10)には、電力供給装置(P)の電子部品を冷却する2つの冷却器(30)が設けられている。一方の冷却器(30)は、コンバータ部(11)の6個のダイオード(Dr)を冷却するダイオード用冷却器であり、もう一方の冷却器(30)は、インバータ(13)の6個のスイッチング素子(Tr)(パワーデバイス)及び6個の還流ダイオード(Dw)を冷却するスイッチング素子用冷却器である。冷却器(30)の構成は後に詳述する。
【0026】
2つの冷却器(30)は、ダイオード用冷却器(30)の方がスイッチング素子用冷却器(30)よりも、上流側(凝縮器(3)に近い側)となるように、冷媒配管(24)によって直列接続されている。直列接続の冷却器(30)は、膨張弁(4)と並列接続されている(
図1参照)。より具体的には、ダイオード用冷却器(30)には、凝縮器(3)と膨張弁(4)を繋ぐ冷媒配管(6)から分岐した冷媒配管(23)が接続されている。また、スイッチング素子用冷却器(30)には、冷媒配管(25)が接続され、この冷媒配管(25)は、膨張弁(4)と蒸発器(5)とを繋ぐ冷媒配管(6)に合流する。冷媒配管(25)の途中には、2つの冷却器(30)に流れる冷媒流量を調整する流量調整部(40)が設けられている。この例では、
図1に示すように、流量調整部(40)には、互いに直列接続された電磁弁(27)とキャピラリ(28)が2組設けられている。
【0027】
流量調整部(40)では、両方の電磁弁(27)を開いた状態にしたり、何れか一方のみの電磁弁(27)を開いた状態にしたりすることで、2つの冷却器(30)における冷媒流量を調整することができる。すなわち、本実施形態では、冷媒流量を大小の2段階に制御することができる。それぞれの電磁弁(27)の開閉制御(後述)は、制御部(7)が行う。
【0028】
〈冷却器の構成〉
図3は、冷却器(30)の斜視図である。また、
図4は、冷却器(30)の横断面図、
図5は、冷却器(30)の縦断面図である。
図3〜
図5に示すように、冷却器(30)は、外板(32)、伝熱板(33)、複数のフィン(34)、及び2つの配管取付部材(36)を備えている。
【0029】
外板(32)は、板材(例えば銅板)を折り曲げて形成したものであり、その断面形状は、底部(32a)がフラットなU字状である。伝熱板(33)は、平板状の板材(例えば銅板)で構成されている。この伝熱板(33)には冷却する電子部品(詳しくは電子部品を封入したパッケージ)が取り付けられ、これらの電子部品の熱を冷媒に伝える。
【0030】
配管取付部材(36,36)は、冷媒配管(23,24,25)を取り付けるための部材である。
【0031】
この例では、配管取付部材(36,36)は、外板(32)等と同じ材料でブロック状に形成され、冷媒配管(23,24,25)を挿入するための穴が設けられている。なお、
図3の冷却器(30)は、冷媒配管(23,24)を接続してあり、ダイオード用冷却器である。
【0032】
フィン(34)は、伝熱板(33)の熱を冷媒に伝えることで、冷媒と電子部品(この例ではスイッチング素子(Tr)、還流ダイオード(Dw)、ダイオード(Dr))との熱交換を促進させる機能を有している。それぞれのフィン(34)は、外板(32)の底部(32a)と伝熱板(33)との間に、所定間隔を持って互いに並行して配置され、外板(32)(詳しくは底部(32a))と伝熱板(33)とに接続されている。この構成により、互いに対向するフィン(34)の間の空間が、冷媒が流通する流路(37)となる。
【0033】
〈電磁弁(27)の開閉制御〉
制御部(7)は、冷却器(30)における冷却能力が不足しないように冷媒流量を制御する。既述のとおり、ガス冷媒は液冷媒よりも密度が小さいので十分な冷却性能を発揮させるのが難しい場合がある。そこで、制御部(7)は、冷却器(30)内の冷媒がガス冷媒のみになってしまわないように流量調整部(40)を介して冷却器(30)における冷媒流量を制御する。この場合、制御部(7)は、冷却器(30)において結露を生じないように、すなわち冷媒流量が過多にならないように流量調整部(40)を制御する。
【0034】
前記制御は、電力供給装置(P)の電子部品の損失(発熱量)に相関する指標に基づいて行われる。この例での電力供給装置(P)の電子部品とは、冷却器(30)で冷却される電子部品であって、具体的には、スイッチング素子(Tr)、ダイオード(Dw)、及び整流用のダイオード(Dr)である。これらの電子部品(Tr,Dw,Dr)の損失に相関する指標のひとつとして、インバータ(13)の出力電流がある。なお、冷却器(30)内の冷媒温度は、冷却器(30)内で冷媒が蒸発している間は変化しないので、その間の冷媒温度は電子部品(Tr,Dw,Dr)の損失に相関しない。すなわち、本実施形態の目的からは、前記冷媒温度は、電子部品(Tr,Dw,Dr)の損失と相関する指標ではない。
【0035】
前記出力電流は、凝縮器(3)における凝縮温度(Tc)とモータ(2b)の回転数(R)に相関がある。そこで、空気調和装置(1)では、前記出力電流の代用値として、凝縮器(3)における冷媒の凝縮温度(Tc)、及びモータ(2b)の回転数(R)を用いて流量調整部(40)を制御する。
【0036】
例えば、凝縮温度(Tc)が上昇した状態は、凝縮器(3)で放熱すべき熱量が増大した状態であり、それにともなってインバータ(13)のスイッチング素子(Tr)の負荷が増大し、損失も増大する。この場合は、冷却器(30)の冷媒流量を増やして、冷却器(30)内の冷媒がガス冷媒のみにならないようにする必要がある。また、モータ(2b)の回転数(R)を大きくすると、インバータ(13)の出力電流も増大し、その結果、スイッチング素子(Tr)の損失も増大する。この場合も、冷媒流量を増加させて、冷却器(30)内の冷媒がガス冷媒のみにならないようにする必要がある。一方、冷却器(30)における結露発生を防止する観点からは、冷媒流量を増やしすぎるのは好ましくない。
【0037】
本実施形態では、前記指標(回転数(R)と凝縮温度(Tc))と、その指標の下で運転した場合に冷却器(30)における冷媒がガス冷媒のみとならず且つ冷却器(30)において結露が起こらない冷媒流量との対応関係を予め実験などによって求めておく。本実施形態では、求めた前記対応関係を基に前記指標に基づいて前記冷媒流量を決定するための制御マップを作り、制御部(7)(マイクロコンピュータ)を動作させるプログラムにその制御マップを組み込んである。ここで、制御マップとは、前記指標と、前記冷媒流量との対応関係を示すものであって、具体例としてテーブル(データの配列)や数式などが挙げられる。
【0038】
図6は、実施形態1における制御マップの一例を示す。この例では、空気調和装置(1)の運転状態(ここでは回転数(R)と凝縮温度(Tc)の状態)が、圧損大領域(R≦R1且つTc≦Tc1)と記した領域、及び圧損小領域(R1<R<Rmax且つTc1<Tc<TcMax)と記した領域の何れの領域に含まれるかで冷媒流量を切替えている。
【0039】
ここで、圧損大領域とは、流量調整部(40)における圧損をより大きく制御する領域、すなわち冷媒流量をより小さく制御する領域である。また、圧損小領域とは、流量調整部(40)における圧損をより小さく制御する領域、すなわち冷媒流量をより大きく制御する領域である。本実施形態では、前記指標に応じて、2段階に冷媒流量を切替えるのである。なお、Rmaxは空気調和装置(1)における回転数(R)の上限値であり、TcMaxは、空気調和装置(1)における凝縮温度(Tc)の上限値である。
【0040】
例えば、
図6の制御マップをテーブルとして実装する場合には、回転数(R)、凝縮温度(Tc)、及び冷媒流量(この例では大、小の2段階)のデータの組を、運転に必要な数だけ格納しておくとよい。制御部(7)は、前記指標である凝縮温度(Tc)を求めるとともに、求めた凝縮温度(Tc)、回転数(R)、及び制御マップを用いて冷媒流量を決定する。例えば、制御マップをテーブルとして実装した場合には、制御部(7)は、凝縮温度(Tc)と回転数(R)を基にしてテーブルを検索して冷媒流量を決定する。なお、凝縮温度(Tc)は、吐出圧力センサ(9)の値(凝縮圧力とみなして差し支えない)を用いて算出するとよい。
【0041】
《運転動作》
前記の構成により、空気調和装置(1)では、圧縮機(2)が運転されると、凝縮器(3)を流通した後の冷媒の一部は、膨張弁(4)をバイパスしてダイオード用冷却器(30)、及びスイッチング素子用冷却器(30)を流通し、その後に、流量調整部(40)を経由して蒸発器(5)に流入する。これらの冷却器(30)によって、インバータ(13)のスイッチング素子(Tr)、ダイオード(Dw)、コンバータ部(11)のダイオード(Dr)が冷却される。
【0042】
この際、制御部(7)は、吐出圧力センサ(9)の検出値から凝縮温度(Tc)を求めるとともに、モータ(2b)の回転数(R)の情報を取得する。制御部(7)は制御マップを用いて、求めた凝縮温度(Tc)及び回転数(R)に適した冷媒流量を決定する。そして、制御部(7)は、決定した冷媒流量に応じて流量調整部(40)を制御する。例えば回転数(R)と凝縮温度(Tc)とが圧損大領域に含まれる場合には、制御部(7)は、流量調整部(40)の一方の電磁弁(27)を開き、もう一方の電磁弁(27)を閉じる。また、例えば、室内温度が上昇するなどして、回転数(R)と凝縮温度(Tc)が圧損小領域に含まれる場合には、制御部(7)は両方の電磁弁(27)を開く。
【0043】
冷却器の冷媒温度に応じて冷媒流量を制御する方式(説明の便宜のため従来の制御方式と呼ぶ)では、冷却器内の冷媒がガス冷媒のみにならないと温度上昇を検知できない。すなわち、この冷媒温度は、冷却対象の電子部品の損失を反映していない。そして、冷媒の温度上昇を検知したタイミングでは、冷却器の冷媒がガス冷媒のみになっているので、冷却性能が不足する可能性がある。しかしながら、本実施形態では、予め用意しておいた制御マップを用いることで、冷却器(30)内の冷媒がガス冷媒のみになってしまう前に冷媒流量を増やして、冷却器(30)内に液冷媒を確保することができる。これにより、本実施形態では、所望の冷却性能が確保される。
【0044】
一方、冷却器内の冷媒が液冷媒とガス冷媒の2相状態の場合には、冷却器内の冷媒は温度変化がない。そのため、従来の制御方式では冷媒流量の適否を判断できず、液冷媒の流量が過多となって結露が発生する可能性がある。しかしながら、本実施形態では、前記制御マップを用いることで、所定の冷却能力を確保しつつ、冷却器(30)において結露が起こらない範囲に冷媒流量を制限することができる。
【0045】
《本実施形態における効果》
以上の通り、本実施形態によれば、冷却器の冷却性能を確保しつつ、冷却器における結露を防止することが可能になる。なお、吐出圧力センサ(9)は、空気調和装置(1)に備わっている場合が多く、凝縮温度(Tc)を求めるために新たにセンサ等を設ける必要がない。そのため、新たなコストの増加を抑えつつ、前記効果を得ることができる。
【0046】
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2では、制御マップの別の例を説明する。本実施形態では、実施形態1で用いた回転数(R)と凝縮温度(Tc)に加えて、蒸発器(5)における冷媒の蒸発温度(Te)を制御マップに加味する。蒸発温度(Te)も前記出力電流に相関がある。
【0047】
蒸発温度(Te)が上昇すると、圧縮機構(2a)が吸入するガス冷媒の密度がより大きくなるので、圧縮機構(2a)の1回転あたりの吐出量が増加する。この観点からは、冷却器(30)における冷媒流量は増加することになる。一方、冷媒は、圧縮機構(2a)の吐出側の圧力と吸入側の圧力との差(高低差と呼ぶ)が大きいほど流量が大きくなる。蒸発温度(Te)がより高くなるということは、前記高低差が小さいということであり、高低差の観点から、蒸発温度(Te)が上昇すると冷媒は流れ難いことになる。本実施形態では、これらの2つの観点の兼合いから前記制御マップを定めてある。
【0048】
図7は、実施形態2における制御マップの一例を示す。この例では、蒸発温度(Te)を大きさに応じて大、中、小の3段階に区分して、蒸発温度(Te)の区分毎に、実施形態1で用いたのと同様の制御マップを作成した。
【0049】
まず、
図7(B)は、蒸発温度(Te)の区分が「中」の場合の制御マップを例示する。圧損大領域、及び圧損小領域の意味は、実施形態1と同様である。圧損大領域では、制御部(7)は、一方の電磁弁(27)を閉じ、他方の電磁弁を開く。また、圧損小領域では、制御部(7)は、両方の電磁弁(27)を開く。
【0050】
図7(A)は、蒸発温度(Te)の区分が「小」の場合の制御マップを例示する。
図7(A)の例では、圧損大領域(すなわち、冷媒流量をより減少させる領域)の区分が「中」の場合(
図7(B)参照)よりも広がっている(Tc2>Tc1,R2>R1)。蒸発温度(Te)の区分が「小」の場合、すなわち蒸発温度(Te)がより低くなった場合には冷媒流量が増加する傾向にあったので、圧損大領域を増やしたのである。また、
図7(C)は、蒸発温度(Te)の区分が「大」の場合の制御マップを例示する。
図7(C)の例では、圧損大領域(すなわち、冷媒流量をより減少させる領域)が「中」の場合(
図7(B)参照)よりも狭まっている(Tc3<Tc1,R3<R1)。蒸発温度(Te)の区分が「大」の場合、すなわち蒸発温度(Te)がより高くなった場合には冷媒流量が減少する傾向にあったので、圧損大領域を狭めたのである。
【0051】
なお、蒸発温度(Te)は、吸入圧力センサ(8)の値(蒸発圧力とみなして差し支えない)を用いて算出すればよい。吸入圧力センサ(8)は、空気調和装置(1)に備わっている場合が多く、蒸発温度(Te)を求めるために新たにセンサを設ける必要がない。そのため、新たなコストの増加を抑えつつ、指標として蒸発温度(Te)を用いることができる。
【0052】
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態では、蒸発器(5)における蒸発温度(Te)を加味した制御マップに基づいて流量調整部(40)を制御するので、冷媒流量をより正確に規定することができる。
【0053】
《その他の実施形態》
なお、出力電流自体を前記指標として制御マップを構成してもよい。出力電流を用いた制御マップは、制御電流と冷媒流量を対応させたテーブルや、さらに回転数(R)を用いた制御マップ(例えば
図6の制御マップにおける縦軸を出力電流としたもの)を採用できる。
【0054】
また、流量調整部(40)における流量切り替えの段数は例示である。例えば、電磁弁(27)とキャピラリ(28)の組を3組以上設けてもよい。また、流量調整部(40)を電動膨張弁によって構成して連続的に冷媒流量を制御してもよい。
【0055】
また、冷却器(30)の構造も例示である。