(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、3に記載されたような構成においては、シースに設けられたハブとダイレータとを係合させるため、螺合部(雄ネジ、雌ネジ)等を形成する必要がある。したがって、ハブやダイレータの形状が複雑となり、部品製作コストが上昇するという問題もある。
また、特許文献1、3に記載のように、筒状のシース内にダイレータを貫通させた構成においては、ダイレータを瘻孔から抜去した後、シースを引き裂きながら瘻孔内から撤去するために、ハブに、外周側に両側に突出したタブ等を形成する必要があり、これも部品製作コスト上昇につながる。
【0009】
これに対し、特許文献2に記載のように、ダイレータをシースの挿入孔を通して外周側からシース内に挿入する構成においては、シースの撤去に際しては、その時点で挿入孔からシース内に挿入されているカテーテルによって、シースが挿入孔を起点として引き裂かれる。このため、シースを引き裂くためのタブ等を形成する必要がない。
しかし、特許文献2に記載の構成においては、ダイレータとシースとのずれを有効に防ぐ構成が開示されていない。
そこでなされた本発明の目的は、部品製作コストを抑えつつ、ダイレータとシースとのずれを確実に防ぐことのできるシース、シースダイレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明のシースは、カテーテルを瘻孔に挿入するためのシースであって、筒状のシース本体と、前記シース本体の一端を保持するコネクタと、を備え、前記コネクタは、前記瘻孔を拡径するダイレータとともに前記シース本体を前記瘻孔に挿入するときに、前記ダイレータを把持する把持部材を備えていることを特徴とする。
これにより、瘻孔への挿入時に、コネクタとダイレータに、その中心軸方向に沿って双方が相対変位しようとする力が加わった場合に、ダイレータに対してコネクタがその中心軸方向にずれるのを防止できる。しかも、コネクタに把持部材を設けるのみで良いので、構造が複雑になったり、部品点数が増えるのを抑えることができる。
【0011】
前記把持部材は、前記シース本体の中心軸に直交する方向に沿って対向配置された一対の把持爪から形成されているようにしてもよい。
これにより、把持部材を簡易な構成で実現することができる。
【0012】
一対の前記把持爪のそれぞれの先端部には、対向する前記把持爪側に突出する係止突起が形成されているようにしてもよい。
これにより、一対の把持爪間で把持したダイレータが不用意に抜け出るのを防ぐことができる。
【0013】
前記把持部材は、前記コネクタの外側面において、前記シース本体に近い側の端部に設けられているようにしてもよい。
ダイレータからコネクタを取り外す場合に、コネクタのシース本体から遠い側の端部を引き起こすと、コネクタはシース本体に近い側の端部を支点として回動する。把持部材が、支点に近い位置に設けられていれば、小さな力でコネクタを引き起こしつつ、把持部材によるダイレータの把持を解除することができる。
【0014】
前記コネクタは、前記ダイレータに対向する側の外側面に、前記ダイレータの中心軸方向に連続する凹溝が形成されているようにしてもよい。
凹溝にダイレータの外周面を沿わせることによって、コネクタとダイレータとを安定して一体に保持できる。
【0015】
前記コネクタは、該コネクタと前記ダイレータとが該コネクタの中心軸方向に相対変位するのを拘束する拘束部材を備えているようにしてもよい。
拘束部材によっても、ダイレータとシースとを瘻孔に挿入するときにコネクタがダイレータの中心軸方向に沿って相対的に変位してしまうのを拘束することができる。
【0016】
前記把持部材は、前記コネクタに前記ダイレータが係合している状態において、弾性力により当該ダイレータを前記拘束部材側へ押し付けるようにしてもよい。
把持部材と拘束部材との相乗効果により、コネクタとダイレータとの位置ずれをより確実に抑制することができる。
【0017】
また、本発明のシースダイレータは、上記したようなシースと、先端部に前記瘻孔を拡径する拡径部を有するとともに、中心軸方向の一部が前記シース本体内に挿入され、他部が前記把持部材により把持されて前記コネクタに沿うダイレータと、を備えていることを特徴とすることもできる。
このシースダイレータによれば、瘻孔への挿入時に、ダイレータに対してコネクタがその中心軸方向に相対的にずれるのを防止できる。しかも、コネクタに把持部材を設けるのみで良いので、構造が複雑になったり、部品点数が増えるのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、部品製作コストを抑えつつ、ダイレータとシースとのずれを確実に防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明によるシースおよびシースダイレータを実施するための形態を説明する。しかし、本発明はこの実施形態のみに限定されるものではない。
図1は、本実施形態にかかるシースとダイレータとが一体化したシースダイレータを示す斜視図である。
図2は、シースの構成を示す斜視図である。
図3は、シースの構成を示す図であって、(a)はシースの側面図、(b)は(a)のX−X矢視断面図、(c)は(a)のY−Y矢視断面図である。
図1に示すように、シースダイレータ10は、ダイレータ20と、シース30と、を備えている。
【0021】
ダイレータ20は、腹壁と胃壁とを貫通して形成された瘻孔を拡径する。このダイレータ20は、円筒状のダイレータ本体21と、このダイレータ本体21の先端側に設けられ、瘻孔を拡径するためのテーパ状の拡径部22と、ダイレータ本体21および拡径部22の内部に貫通形成された挿通路23と、を備えている。なお、ダイレータ20は、本実施形態で用いるものに限定されるものではなく、瘻孔を拡径できるのであればいかなる構成のものを用いてもよい。
【0022】
図1〜
図3に示すように、シース30は、ダイレータ20と後述するカテーテル50とが挿入されるシース本体31と、逆止弁32と、シース本体31および逆止弁32の一端を挟持固定するコネクタ40と、を備えて構成されている。
【0023】
シース本体31は、全体として円筒状をなし、その中心軸方向に連続して、一定の内径を有した内部通路33が形成されている。ここで、シース本体31の内径は、ダイレータ20およびカテーテル50の外径と略同一の内径に設定されている。
このシース本体31は、その一端31aが、コネクタ40に挟持されている。
また、シース本体31の一端31a側には、外周面に、ダイレータ20およびカテーテル50をシース本体31の外周側から内部通路33内に挿入する挿入口35が形成されている。
図2に示すように、挿入口35は、一端31a側の端部35aとシース本体31の他端31b側の端部35bに対し、端部35aと端部35bの間の中間部35cにおいて、シース本体31の周方向に沿った開口幅wが大きくなるよう形成されている。また、挿入口35の端部35bには、他端31b側にいくにしたがってシース本体31の周方向の開口幅が漸次縮小するV字状に形成された切口部36が形成されている。
【0024】
また、シース本体31の他端31b側には、内部通路33に連通する開口部37が形成されている。
【0025】
さらに、
図2に示すように、シース本体31には、一端31a側に形成された切口部36と、他端31b側の開口部37との間に、シース本体31の中心軸方向に連続するスリット部38が形成されている。このスリット部38は、シース本体31の肉厚を周方向の一部で小さくすることによって形成することができ、例えば、シース本体31の内周面または外周面に、シース本体31の中心軸方向に連続して、断面V字状の溝を形成することによって形成できる。このスリット部38によって、シース本体31は、切口部36を起点として切り裂きやすくなっている。ただし、スリット部38は、ダイレータ20の挿抜時には破断しない強度を有し、カテーテル50をシース本体31内の内部通路33に挿入したときに、スリット部38からシース本体31が容易に切り裂かれるように形成されている。
【0026】
シース本体31を形成する材料は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、等を用いるのが好ましい。また、これらの中でも、特に、摩擦抵抗が低いPTFE,FEP、ETFE等のフッ素樹脂によりシース本体31を形成するのが特に好ましい。これにより、カテーテル50を挿入する際に、内部通路33を通過する際の摩擦抵抗を抑えることができ、カテーテル50の挿入を容易かつ円滑に行うことが可能となる。
【0027】
逆止弁32は、シース本体31の内部に配置され、その基端部32aがシース本体31の一端31aとともにコネクタ40に挟持されている。
この逆止弁32は、挿入口35の全体を覆うよう、挿入口35よりも大きな外形寸法を有している。また、
図3(b)に示すように、逆止弁32は、シース本体31の中心軸に直交する断面における形状が、シース本体31の外周側に向けて凸となる略円弧状で、その曲率半径がシース本体31の内径(半径)よりも大きく設定されている。さらに、
図2に示すように、逆止弁32は、先端部32bが、基端部32a側から先端32cに向けて、幅寸法が漸次縮小する外形円弧状をなしている。
図2、
図3に示すように、このような逆止弁32は、ダイレータ20またはカテーテル50を挿入しない状態においては、挿入口35をシース本体31の内側から覆い、その外周縁部32eが挿入口35の外周側でシース本体31の内周面に密着するよう設けられている。
【0028】
逆止弁32は、弾性を有したゴム系材料で形成するのが好ましく、例えば、ポリエチレン樹脂、ゴム材料、軟質塩化ビニル樹脂(軟質PVC)等が挙げられる。ゴム材料としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)等のようなジエン系ゴム材料、または、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、アクリルゴム(ACM)、クロロスルホン化ゴム(CSM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)フッ素ゴム(FKM)等のような非ジエン系ゴム材料等が挙げられる。以上の材料の中でも、ポリエチレン樹脂、シリコーンゴム、軟質塩化ビニル樹脂のいずれかを用いるのが好ましく、シリコーンゴムを用いるのが最も好ましい(本実施形態ではシリコーンゴムで逆止弁32を形成している)。このような材料を用いて逆止弁32を形成することにより、逆止弁32が、挿入口35からダイレータ20やカテーテル50を挿入または抜去するときに弾性変形するようになっている。
【0029】
この逆止弁32は、通常時においては、前述のごとく外周縁部32eが挿入口35の外周側でシース本体31の内周面に密着することによって、挿入口35を封止する。このように、逆止弁32によって挿入口35および内部通路33の気密性が保持される。この状態では、シース本体31の開口部37を通して内部通路33にガス等による圧力が作用しても、ガス等が挿入口35から抜け出るのを防止可能となっている。
一方、
図1に示したように、ダイレータ20やカテーテル50を挿入口35から内部通路33内に挿入すると、ダイレータ20やカテーテル50に押圧されることによって、逆止弁32が、基端部32a側に対して先端部32b側がシース本体31の内方に向けて弾性変形する。
【0030】
コネクタ40は、シース本体31の一端31aと、その内部に挿入された逆止弁32の基端部32aとを挟持して固定する。このコネクタ40は、シース本体31内にダイレータ20やカテーテル50を挿入した状態で、ダイレータ20の外周面に沿うように配置される。
【0031】
図2、
図3に示すように、コネクタ40は、例えば、シース本体31の中心軸方向に長軸を有する略直方体状をなしている。コネクタ40において、ダイレータ20やカテーテル50に対向する側とは反対側の外側面40aには、シース本体31側とは反対側の端部40cに、外方に膨出する膨出部41が形成されている。この膨出部41は、コネクタ40をダイレータ20やカテーテル50に沿わせた状態で、術者がダイレータ20やカテーテル50とともにコネクタ40を保持する際の押さえ部、滑り止め部として機能する。
【0032】
コネクタ40において、ダイレータ20に対向する側の外側面40bには、コネクタ40の長軸方向に連続する凹溝42が形成されている。この凹溝42の内周面42aは、例えばダイレータ20やカテーテル50の外周面とほぼ同じ曲率半径の円弧状断面で形成するのが好ましい。この凹溝42は、コネクタ40の長軸方向の全長にわたって形成しても良いし、後述する把持爪46,46の間にのみ形成しても良い。
【0033】
コネクタ40を形成する材料としては、例えば、ポリアセタール(POM)樹脂、ABS樹脂、硬質PVC等を用いるのが好ましい。これらの材料で形成することにより、PE等で形成されたシース本体31の一端31aと逆止弁32の基端部32aとをコネクタ40で強固に挟持することができる。ここで、コネクタ40に使用される硬質塩化ビニル樹脂とは、一般的に、可塑剤がまったく含まれていないか、含まれていても少量である塩化ビニル樹脂をいう。これに対して、逆止弁32に使用される軟質塩化ビニル樹脂とは、可塑剤が多く含まれている塩化ビニル樹脂を、より具体的には、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤が30重量部以上含まれる塩化ビニル樹脂をいう。
【0034】
上記コネクタ40には、ダイレータ20を把持する把持部材45が設けられている。
図3(c)に示すように、把持部材45は、コネクタ40においてダイレータ20に対向する側の外側面40bにおいて、コネクタ40の長軸方向に直交する幅方向(短軸方向)の両側に間隔を隔てて対向して設けられた、一対の把持爪46,46から形成されている。これら把持爪46,46は、凹溝42の両側に、ダイレータ20の直径と同等の間隔で設けられ、外側面40bから直交する方向に突出するよう形成されている。このような把持部材45においては、一対の把持爪46,46により、ダイレータ20を両側から挟み込むようにして把持する。
【0035】
把持爪46,46の先端部には、
図3(c)に示すように、それぞれ対向する把持爪46側に突出する係止突起47が形成されている。この係止突起47には、頂部(実際には、後述する内側傾斜面47bと外側傾斜面47cとの交線の部分)47aと、把持爪46の基端側から頂部47aに向かって傾斜する内側傾斜面47bと、頂部47aから把持爪46の先端側に向かって傾斜する外側傾斜面47cと、が形成されており、それぞれ対向する内側傾斜面47b,47b間の距離は徐々に狭くなって、頂部47a,47a間で最も狭くなっている。これにより、一対の把持爪46,46間でダイレータ20を把持する際に、係止突起47を構成する一対の頂部47aによってダイレータ20を凹溝42の内周面42a側に押し付けるとともに、把持爪46,46間からダイレータ20が不用意に抜け出るのを防ぐようになっている。一方、係止突起47の、それぞれ対向する外側傾斜面47c,47c間の距離は、頂部47aから把持爪46の先端側に向かって徐々に拡がっている。これにより、外側傾斜面47c,47cがガイドとして働くため、一対の把持爪46,46の間にダイレータ20を容易に挿入することができるようになっている。
【0036】
なお、係止突起47は、外側面40bから直交する方向に突出(起立)するよう形成された把持爪46において、把持爪46,46の間に把持された状態のダイレータ20の半径の位置(高さ)よりも先端側の位置(高さ)に設けることが好ましい。より具体的には、内側傾斜面47bの基端部分が当該位置よりも先端側となるように設けることが好ましい。
【0037】
また、本実施形態では、
図3(c)に示すように、一対の把持爪46,46間でダイレータ20を把持する際に、係止突起47を構成する一対の頂部47aによってダイレータ20を凹溝42の内周面42a側に押し付ける構成を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、一対の内側傾斜面47bにダイレータ20を当接させるような寸法で係止突起47を把持爪46に設ける構成とするとともに、ダイレータ20を凹溝42の内周面42a側に押し付けるように構成してもよい。
【0038】
図3(a)に示すように、このような把持爪46,46は、コネクタ40の外側面40bにおいて、シース本体31に近い側の端部40dに設けるのが好ましい。把持爪46,46間にダイレータ20を把持した状態で、ダイレータ20からコネクタ40を取り外す場合に、術者は、コネクタ40を、シース本体31側とは反対側の端部40cにおいて指で保持し、ダイレータ20の径方向に変位させる。すると、
図1中に二点鎖線で示したように、コネクタ40は、コネクタ40の端部40cを力点Pfとし、その反対側のシース本体31側の端部40dを支点Psとし、端部40d側を中心として端部40c側がダイレータ20の外周面から離間する方向に変位する。このようなコネクタ40の引き起こし動作に際して、把持爪46,46がコネクタ40においてシース本体31に近い側の端部40dに設けられていることによって、小さな力でコネクタ40を引き起こすことができる。
【0039】
図2、
図3(a)、(c)に示すように、コネクタ40は、ダイレータ20を一体的に係止させるための拘束部材48を備えている。この拘束部材48は、コネクタ40がダイレータ20の中心軸方向に沿って相対的に変位してしまうのを拘束する。
拘束部材48としては、例えば、コネクタ40においてダイレータ20に対向する側の凹溝42の内周面に、シリコーンゴム等、ダイレータ20に対してコネクタ40を形成する材料よりも高い摩擦係数を有した材料からなる薄板状のパッド49を設けるのが好ましい。より具体的には、
図3(c)に示すように、パッド49は、凹溝42に形成された凹部42b内に収容することができる。凹部42b内に収容した状態で、パッド49の表面49aが、凹溝42の内周面42aに連続して、例えばダイレータ20の外周面とほぼ同じ曲率半径の円弧状断面を形成するのが好ましい。
ここで、パッド49は、把持爪46,46の間にのみ設けてもよいが、コネクタ40の長軸の全長にわたって凹溝42に設けるようにしてもよい。
【0040】
このようなパッド49は、その厚さを、0.5〜1.5mmとするのが好ましい。また、パッド49は、コネクタ40の長軸方向に沿った長さ寸法を、10〜15mmとするのが好ましい。ここで、パッド49の厚さが0.5mm未満であると、ダイレータ20への押しあてが弱くなり、充分にダイレータ20を拘束できなくなるために好ましくない。一方、パッド49の厚さが1.5mmを超えると、パッド49の反発力により、ダイレータ20を把持爪46,46によって拘束できなくなるために好ましくない。
【0041】
このようなパッド49からなる拘束部材48を備えたコネクタ40においては、一対の把持爪46,46により、ダイレータ20を両側から挟み込むようにして把持した状態で、係止突起47,47によってダイレータ20がパッド49に押し付けられて、ダイレータ20の外周面にパッド49が密着するようになっている。パッド49とダイレータ20との摩擦力によって、ダイレータ20に対してコネクタ40が、その中心軸方向に変位するのを拘束する。
【0042】
なお、本実施形態では、
図3(c)に示すように、パッド49の表面49aが凹溝42の内周面42aと連続面となるように凹部42b内にパッド49を埋設するとともに、一対の把持爪46,46によってダイレータ20を両側から挟み込むようにして把持した状態で、係止突起47,47によってダイレータ20がパッド49に押し付けられて、ダイレータ20の外周面にパッド49が密着する構成を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、高い摩擦係数とともに弾性力を有する材料を用いるとともにパッド49の表面49aが凹溝42の内周面42aから僅かに飛び出した状態で凹部42b内にパッド49を埋設するとともに、係止突起47,47によるダイレータ20のパッド49への付勢力を減じた構成の一対の把持爪46,46を用いる構成としてもよい。このような構成としても、ダイレータ20を両側から挟み込むよう把持した状態で、ダイレータ20の外周面にパッド49を密着させることができる。
【0043】
図4は、シースを用いてカテーテルを瘻孔に挿入した状態を示す断面図である。この
図4を用いてカテーテルの構成について説明する。
上記のようなシース30により瘻孔63内への挿入を補助されるカテーテル50は、いかなる構成のものを用いてもよい。例えば、
図4に示すように、カテーテル50は、栄養液や薬液等を胃内部60に注入するためのチューブ部51と、胃内部60に留置される留置部52と、腹壁62の表面にカテーテル50を固定するためのストッパ部53と、未使用時にチューブ部51の注入口54に嵌め、チューブ部51内を塞ぐためのボタン部55とを備えた構成とすることができる。このカテーテル50は、瘻孔63内への挿入の際には、オブチュレータ56に装着される。オブチュレータ56も、いかなる構成のものを用いてもよく、例えば、カテーテル50内に挿入される不図示のロッド部と、ロッド部を挿入する外筒部57と、ロッド部の挿入や挿入長さを調整する押圧部58と、を少なくとも備えて構成されている。外筒部57には、押圧部58を操作する際、またはカテーテル50ごとオブチュレータ56をシース30内に挿入する際に、手指を掛けて支持するためのフランジ部59が突出形成されている。
【0044】
〔シースを用いたカテーテルの挿入方法〕
次に、本実施形態のシース30を用い、胃内部にカテーテル50を挿入し、留置する方法について説明する。
図4、および
図5〜
図11は、その作業の流れを示す図である。
図5は、ガイドワイヤを瘻孔に挿入した状態を示す断面図である。
図6は、瘻孔にシースダイレータを挿入する状態を示す斜視図である。
図7は、シースダイレータを瘻孔に挿入した状態を示す断面図である。
図8は、シースからダイレータを抜去し、シースのみを瘻孔に留置した状態を示す断面図である。
図9は、シースにカテーテルを挿入することによって、シースを切り裂いている状態を示す斜視図である。
図10は、カテーテルを瘻孔に挿入し、シースを除去した状態を示す断面図である。
図11は、カテーテルの設置が完了した状態を示す断面図である。
なお、以下の作業は、患者の胃内部60に内視鏡を挿入して、術者が状況を観察しながら行う。
まず、患者の胃内部60に内視鏡を挿入し、胃内部60にガス(空気、二酸化炭素等)を供給し、内視鏡の視野を確保する。次いで、内視鏡により胃内部60における位置を確認しながら、腹壁62の表面側から触診を行い、胃壁61と腹壁62との固定部位を決定する。
【0045】
次に、
図5に示すように、縫合糸70を用いて、胃壁61と腹壁62とが密着するよう縫合して固定し、縫合部71を形成する。
続いて、縫合部71において、腹壁62の表面側から、不図示の中空筒状の穿孔針を刺して胃内部60に貫通させ、瘻孔63を形成する。そして、穿孔針内に、ガイドワイヤ80を胃内部60に到達するよう挿通させる。この後、穿孔針のみを抜き取る。すると、胃壁61と腹壁62とを貫通して形成された小径な瘻孔63内に、ガイドワイヤ80が留置される。
【0046】
次に、
図6に示すように、シースダイレータ10を、瘻孔63に挿入する。シースダイレータ10は、予め、挿入口35からシース本体31内にダイレータ20を挿入して一体化しておく。このとき、シース本体31の開口部37から、ダイレータ20の拡径部22が外部に露出するようにしておく。また、シース30のコネクタ40は、一対の把持爪46,46によりダイレータ20を両側から挟み込むようにして把持した状態で、ダイレータ本体21の外周面に沿わせた状態とされている。
【0047】
シースダイレータ10を瘻孔63に挿入するには、まず、ダイレータ20の拡径部22の先端から挿通路23(
図1参照)内に、ガイドワイヤ80を挿通させる。そして、シースダイレータ10を、ガイドワイヤ80に沿って腹壁62の表面に接近させ、拡径部22の先端を瘻孔63内に徐々に挿入していく。すると、テーパ状の拡径部22により、瘻孔63の内径が徐々に拡径される。そして、
図7に示すように、拡径された瘻孔63内に、シースダイレータ10を所定深さまで貫通させる。
この状態で、ダイレータ本体21と、その外周面に一体に設けられているシース本体31の端部31bとが、腹壁62および胃壁61を貫通し、胃内部60に到達している。
【0048】
上記のシースダイレータ10の瘻孔63への挿入時には、瘻孔63とシース本体31の外周面との摩擦力、術者がコネクタ40とダイレータ20とを手指で保持しながらシースダイレータ10を瘻孔63に挿入するために加える力等によって、コネクタ40とダイレータ20には、その中心軸方向に沿って双方が相対変位しようとする力が加わることがある。このとき、一対の把持爪46,46により、ダイレータ20が把持され、さらに、ダイレータ20の外周面にパッド49(
図3参照)が密着しているので、ダイレータ20に対してコネクタ40が、その中心軸方向にずれるのが防止される。
【0049】
次いで、ダイレータ20からコネクタ40を取り外す。これには、術者が、コネクタ40を、シース本体31側とは反対側の端部40cにおいて指で保持し、ダイレータ20の径方向外周側に向けて変位させる。すると、
図1中に二点鎖線で示したように、コネクタ40は、コネクタ40の端部40cを力点Pfとし、その反対側のシース本体31側の端部40dを支点Psとし、端部40d側を中心として端部40c側がダイレータ20の外周面から離間する方向に変位する。これにより、把持爪46、46の間からダイレータ20が抜け出て、ダイレータ20の把持が解除される。
【0050】
この後、シース30のみを残して、ダイレータ20とガイドワイヤ80とを体外へ抜取る。
図8に示すように、このようにダイレータ20をシース本体31から抜き取ると、弾性変形していた逆止弁32が復元して挿入口35を封止する。
【0051】
次に、
図9に示すように、カテーテル50を、シース30の挿入口35から、シース本体31内に挿入する。このとき、シース30が胃内部60方向に移動しないように、コネクタ40を手で保持するのが好ましい。
上記シース本体31の挿入口35には、V字状の切口部36が形成され、この切口部36に連続してスリット部38が形成されている。一方、カテーテル50の留置部52の外径は、シース本体31の内径よりも大径とされる。そのため、シース本体31内に、カテーテル50の留置部52を挿入していくと、シース本体31は、切口部36を起点としてスリット部38が長手方向に切り裂かれる。その結果、大径な留置部52を、シース本体31に貫通させて胃内部60に到達させることができる。
このようにしてカテーテル50を挿入していき、
図4に示したように、腹壁62の外表面にカテーテル50のストッパ部53が到達すると、シース本体31の開口部37から留置部52が突出し、胃内部60に留置部52が留置された状態となり、カテーテル50の挿入が完了する。
【0052】
そして、カテーテル50の挿入が完了したら、
図10に示すように、オブチュレータ56の図示しないロッド部でカテーテル50の留置部52を伸張させた状態で、破断したシース本体31を瘻孔63内から抜取り、シース30全体を体外へ除去する。
【0053】
この後、
図11に示すように、カテーテル50を操作し、留置部52を瘻孔63の内径よりも大径に拡張させる。そして、カテーテル50が装着されていたオブチュレータ56を瘻孔63内から抜取ることにより、カテーテル50の胃壁61および腹壁62への装着が完了する。また、
図11中の点線矢印で示すように、ボタン部55をチューブ部51の注入口54方向に回動させ、当該注入口54にボタン部55を嵌めてチューブ部51内を塞ぐことで、カテーテル50の留置作業が終了する。
しかる後、カテーテル50を介して栄養や薬液を胃内部60に注入する際には、ボタン部55を注入口54から外すことで、チューブ部51を介して栄養液や薬液等を胃内部60に注入することができる。
【0054】
上述したように、コネクタ40には、ダイレータ20を把持する把持部材45が設けられている。
これにより、シースダイレータ10の瘻孔63への挿入時に、コネクタ40とダイレータ20に、その中心軸方向に沿って双方が相対変位しようとする力が加わった場合に、ダイレータ20に対してコネクタ40がその中心軸方向にずれるのを防止できる。したがって、シースダイレータ10の瘻孔63への挿入作業を円滑かつ確実に行うことができる。
しかも、コネクタ40に把持部材45を設けるのみで良いので、シースダイレータ10の構造が複雑になったり、部品点数が増えるのを抑え、低コストで上記作用効果を得ることができる。
【0055】
また、把持部材45は、一対の把持爪46,46から形成されている。これにより、把持部材45を簡易な構成で実現することができ、コスト上昇を有効に抑えることができる。
【0056】
さらに、把持爪46,46の先端部には、それぞれ対向する把持爪46側に突出する係止突起47が形成されている。これにより、一対の把持爪46,46間で把持したダイレータ20が、把持爪46,46間から不用意に抜け出るのを防ぐことができ、ダイレータ20とコネクタ40とが一体化した状態を確実に維持できる。
【0057】
また、把持爪46,46は、コネクタ40の外側面40bにおいて、シース本体31に近い側の端部に設けられている。これにより、ダイレータ20からコネクタ40を取り外す場合に、小さな力でコネクタ40を引き起こし、コネクタ40をダイレータ20から容易かつ確実に取り外すことができる。
【0058】
加えて、コネクタ40において、ダイレータ20やカテーテル50に対向する側の外側面40bには、コネクタ40の長軸方向に連続する凹溝42が形成されている。これにより、凹溝42の内周面42aにダイレータ20やカテーテル50の外周面を沿わせることによって、ダイレータ20やカテーテル50を挿入口35からシース本体31内に挿入するときに、容易かつ確実に挿入作業を行うことができ、また、コネクタ40をダイレータ20やカテーテル50に沿わせた状態では、コネクタ40とダイレータ20またはカテーテル50とを、安定して保持できる。
【0059】
また、上述したように、コネクタ40は、ダイレータ20を一体的に係止させるための拘束部材48を備えている。この拘束部材48は、コネクタ40がダイレータ20の中心軸方向に沿って相対的に変位してしまうのを拘束することができる。したがって、シースダイレータ10の瘻孔63への挿入作業を円滑かつ確実に行うことができる。
しかも、コネクタ40に拘束部材48を設けるのみで良いので、シースダイレータ10の構造が複雑になったり、部品点数が増えるのを抑え、低コストで上記作用効果を得ることができる。
【0060】
そして、拘束部材48としては、シリコーンゴム等、ダイレータ20に対してコネクタ40を形成する材料よりも高い摩擦係数を有した材料からなる薄板状のパッド49を用いることができる。
これにより、パッド49とコネクタ40との間に生じる摩擦により、コネクタ40がダイレータ20の中心軸方向に沿って相対的に変位してしまうのを確実に拘束することができる。しかも、パッド49は安価に製作することができるため、低コスト化を確実に実現することができる。
【0061】
さらに、パッド49は、その表面49aが、ダイレータ20の外周面とほぼ同じ曲率半径の円弧状断面を形成するようにした。これにより、パッド49とダイレータ20との接触面積を有効に増やすことができ、コネクタ40がダイレータ20の中心軸方向に沿って相対的に変位してしまうのを確実に拘束することができる。
【0062】
(その他の実施形態)
なお、本発明のシース、シースダイレータは、図面を参照して説明した上述の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、ダイレータ20を把持する把持部材45として、一対の把持爪46,46を例示したが、ダイレータ20を把持することができるのであれば、把持部材45は、把持爪46以外のいかなる形状、構成のものとしてもよい。
また、把持爪46,46は、コネクタ40の外側面40bにおいて、シース本体31に近い端部40dに設けるようにしたが、シース本体31から遠い端部40c側に設けてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、ダイレータ20を一体的に係止させるための拘束部材48として、パッド49を用いるようにしたが、これに限るものではない。コネクタ40がダイレータ20の中心軸方向に沿って相対的に変位してしまうのを拘束することができるのであれば、例えば、凹溝42に、ダイレータ20との間の摩擦力を高めるよう、梨地加工等の表面処理を施してもよい。さらには、ダイレータ本体21と、コネクタ40に、互いに嵌め合う凸部と凹部等を形成することによって、コネクタ40がダイレータ20の中心軸方向に沿って相対的に変位してしまうのを拘束するようにしてもよい。
【0064】
さらに、ダイレータ20をコネクタ本体31から抜去するとき等の滑り止めとして、コネクタ40の表面に凹凸等を形成してもよい。
【0065】
加えて、上記実施形態では、シース30において、挿入口35に密着するよう逆止弁32を設けているが、本発明がこれに限定されるわけではなく、逆止弁を内部通路33のいずれかの位置に、いかなる構造で設けてもよい。
これ以外にも、例えばカテーテル50の構成や、作業手順等については、あくまでも一例を示したに過ぎず、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。