特許第6331289号(P6331289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331289
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   B60C13/00 C
   B60C13/00 E
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-174932(P2013-174932)
(22)【出願日】2013年8月26日
(65)【公開番号】特開2015-42535(P2015-42535A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2016年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金子 武士
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−148651(JP,A)
【文献】 特開2013−071651(JP,A)
【文献】 特開2012−106583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォール部を有する空気入りタイヤであって、
前記サイドウォール部は、
複数のディンプル状の凹部がタイヤ径方向に配列した径方向凹部列がタイヤ周上に複数設けられ、前記径方向凹部列のタイヤ周方向の間隔がタイヤ周方向に段階的に又は連続的に変化した径方向凹部列群と、前記凹部のそれぞれを囲むよう設けられた一方向に延びる複数の線状の谷部を有する谷部群と、がサイドウォール表面に形成された、タイヤ径方向の長さがタイヤ周上で一定であるディンプル配置領域と、
サイドウォール表面に標章を表示する領域であって、前記標章を囲む平滑面を有し、前記ディンプル配置領域によってタイヤ周方向の両側から挟まれる標章表示領域と、を有し、
前記ディンプル配置領域は、前記空気入りタイヤのタイヤ幅方向長さが最大となるタイヤ径方向位置を含み、タイヤ径方向内側の端部から前記空気入りタイヤの断面高さの30〜80%の高さにあり、
前記ディンプル配置領域のタイヤ径方向長さTと、前記径方向凹部列群のうちタイヤ周方向に隣接する2つの径方向凹部列間の、前記ディンプル配置領域のタイヤ径方向中央におけるタイヤ周方向の間隔Pとの比T/Pが、4.0≦T/P≦20.0であり、
前記谷部群のうち隣接する2つの前記谷部の間には、前記谷部の谷底部に対して前記サイドウォール部の厚み方向外側に突出する山部が形成され、隣り合う前記山部の間隔は前記凹部の径より短く、
前記ディンプル配置領域に、前記谷底部に対する突出高さが前記山部より高いものが存在しない、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
タイヤ周方向に隣接する2つの径方向凹部列に含まれる凹部の面積の総和を、前記ディンプル配置領域のうち前記2つの径方向凹部列のすべての凹部を当該凹部と接して囲む扇形の仮想領域の面積で割り算して得られる凹部占有率の最小値は20〜30%である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記凹部占有率の最大値は50〜60%である、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ディンプル配置領域のタイヤ径方向の中央位置における、前記径方向凹部列間のタイヤ周方向間隔のうちタイヤ周方向に最大の間隔が、前記凹部のいずれの直径よりも大きい、請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ディンプル配置領域のタイヤ径方向の中央位置における、前記径方向凹部列間のタイヤ周方向間隔のうちタイヤ周方向に最小の間隔が、前記凹部のいずれの直径よりも小さい、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記凹部の直径は、1.0〜5.0mmである、請求項1から5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記凹部の深さは、0.3〜1.5mmである、請求項1から6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記凹部の面積の総和は、前記ディンプル配置領域のうちの前記谷部群が形成された領域の面積の25〜60%である、請求項1から7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記サイドウォール部に用いられるゴム部材のJISに準拠する硬度が45〜60である、請求項1から8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記径方向凹部列は、前記径方向凹部列間のタイヤ周方向間隔が、段階的に又は連続的に大きくなった後、段階的に又は連続的に小さくなる周期パターンがタイヤ周方向に繰り返されるよう配置され、
前記径方向凹部列内の凹部の数が、前記周期パターンに含まれる前記径方向凹部列の数の1〜3倍である、請求項1から9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記径方向凹部列内の凹部間で直径が異なることにより、タイヤ径方向に隣接する2つの凹部の縁間の最短距離がタイヤ径方向に変化し、前記凹部の縁間の最短距離はいずれも互いに異なる、請求項1から10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記径方向凹部列内の凹部の直径が、タイヤ径方向の内側又は外側に向かって大きくなり、前記径方向凹部列群のうちタイヤ周方向に隣接する2つの径方向凹部列間で、凹部の直径が大きくなるタイヤ径方向の向きが異なる、請求項1から11のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
サイドウォール表面において前記山部がサイドウォール厚み方向外側に最も突出している、請求項1から12のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
前記標章表示領域を第1の標章表示領域というとき、前記サイドウォール部は、さらに、前記第1の標章表示領域とタイヤ周上に間隔をあけて配置され、サイドウォール表面に標章を表示する第2の標章表示領域を有し、
前記ディンプル配置領域には、さらに、前記第1の標章表示領域および前記第2の標章表示領域に対してタイヤ周方向に沿って隣接して配置され、前記径方向凹部列群および前記谷部群と同じ径方向凹部列群および谷部群を備える、前記ディンプル配置領域の延長領域が付加され、
前記延長領域を除く前記ディンプル配置領域のタイヤ周上に占めるタイヤ回転中心に対する占有角度は140〜300度である、請求項1から13のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール部を有する空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのカーカス層は、シート状のカーカス部材がタイヤ成形ドラム上で一周巻かれることで形成され、カーカス部材の巻き始め端と巻き終わり端とが、サイドウォール部において一部重なってジョイントされている。このジョイントがサイド表面の凹凸をつくる原因となりやすい。
従来の空気入りタイヤにおいて、軽量化や、転がり抵抗の低減のために、サイドウォール部の厚さ(サイドゲージ)を薄くすることが行われている。しかし、サイドゲージを薄くすると、上記したジョイントされて重なったカーカス部材の部分がサイドゲージに対して厚くなるため、完成後のタイヤにおいて、サイドウォール表面に凹凸となって現れ、外観不良を生じやすい。このような外観不良は、タイヤの耐久性や他の運動性能に対し悪影響を及ぼすものではないが、これらタイヤの性能が低い不良品ではないかとの心配をユーザに与えるおそれがある。特に、カーカス部材が1枚だけ巻かれるラジアルタイヤでは、このような凹凸が著しく目立つ。
ところで、従来のタイヤとして、サイドウォール表面に種々の加工が施されたものが知られている。例えば、転動時の空気抵抗の低減を目的として、サイドウォール表面に、ディンプル状の凹部が多数並ぶよう形成されたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−71651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のディンプル状の凹部は、上記したサイドウォール表面に現れる、タイヤ構造等に起因した凹凸を目立たないようにする効果が十分であるとはいえない。
本発明は、サイドウォール表面に存在する、タイヤ構造等に起因した凹凸が目立つのを十分に抑えることができる空気入りタイヤを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、サイドウォール部を有する空気入りタイヤであって、
前記サイドウォール部は、複数のディンプル状の凹部がタイヤ径方向に配列した径方向凹部列がタイヤ周上に複数設けられ、前記径方向凹部列のタイヤ周方向の間隔がタイヤ周方向に段階的に又は連続的に変化した径方向凹部列群と、前記凹部のそれぞれを囲むよう設けられた一方向に延びる複数の線状の谷部を有する谷部群と、がサイドウォール表面に形成された、タイヤ径方向の長さがタイヤ周上で一定であるディンプル配置領域と、
サイドウォール表面に標章を表示する領域であって、前記標章を囲む平滑面を有し、前記ディンプル配置領域によってタイヤ周方向の両側から挟まれる標章表示領域と、を有し、
前記ディンプル配置領域は、前記空気入りタイヤのタイヤ幅方向長さが最大となるタイヤ径方向位置を含み、タイヤ径方向内側の端部から前記空気入りタイヤの断面高さの30〜80%の高さにあり、
前記ディンプル配置領域のタイヤ径方向長さTと、前記径方向凹部列群のうちタイヤ周方向に隣接する2つの径方向凹部列間の、前記ディンプル配置領域のタイヤ径方向中央におけるタイヤ周方向の間隔Pとの比T/Pが、4.0≦T/P≦20.0であり、
前記谷部群のうち隣接する2つの前記谷部の間には、前記谷部の谷底部に対して前記サイドウォール部の厚み方向外側に突出する山部が形成され、隣り合う前記山部の間隔は前記凹部の径より短く、
前記ディンプル配置領域に、前記谷底部に対する突出高さが前記山部より高いものが存在しない、ことを特徴とする空気入りタイヤである。
【0006】
前記空気入りタイヤにおいて、タイヤ周方向に隣接する2つの径方向凹部列に含まれる凹部の面積の総和を、前記ディンプル配置領域のうち前記2つの径方向凹部列のすべての凹部を当該凹部と接して囲む扇形の仮想領域の面積で割り算して得られる凹部占有率の最小値は20〜30%であることが好ましい。
【0007】
この場合に、前記凹部占有率の最大値は50〜60%であることが好ましい。
【0008】
前記空気入りタイヤにおいて、前記ディンプル配置領域のタイヤ径方向の中央位置における、前記径方向凹部列間のタイヤ周方向間隔のうちタイヤ周方向に最大の間隔が、前記凹部のいずれの直径よりも大きいことが好ましい。
【0009】
この場合に、前記ディンプル配置領域のタイヤ径方向の中央位置における、前記径方向凹部列間のタイヤ周方向間隔のうちタイヤ周方向に最小の間隔が、前記凹部のいずれの直径よりも小さいことが好ましい。
【0010】
前記空気入りタイヤにおいて、前記凹部の直径は、1.0〜5.0mmであることが好ましい。
【0011】
前記空気入りタイヤにおいて、前記凹部の深さは、0.3〜1.5mmであることが好ましい。
【0012】
前記空気入りタイヤにおいて、前記凹部の面積の総和は、前記ディンプル配置領域のうちの前記谷部群が形成された領域の面積の25〜60%であることが好ましい。
【0013】
前記空気入りタイヤにおいて、前記サイドウォール部に用いられるゴム部材のJISに準拠する硬度が45〜60であることが好ましい。
【0014】
前記径方向凹部列は、前記径方向凹部列間のタイヤ周方向間隔が段階的に又は連続的に大きくなった後、段階的に又は連続的に小さくなる周期パターンがタイヤ周方向に繰り返されるよう配置され、
前記径方向凹部列内の凹部の数が、前記周期パターンに含まれる前記径方向凹部列の数の1〜3倍であってもよい。
【0015】
前記径方向凹部列内の凹部間で直径が異なることにより、タイヤ径方向に隣接する2つの凹部の縁間の最短距離がタイヤ径方向に変化し、前記凹部の縁間の最短距離はいずれも互いに異なってもよい。
【0016】
前記空気入りタイヤにおいて、前記径方向凹部列内の凹部の直径が、タイヤ径方向の内側又は外側に向かって大きくなり、前記径方向凹部列群のうちタイヤ周方向に隣接する2つの径方向凹部列間で、凹部の直径が大きくなるタイヤ径方向の向きが異なってもよい。
【0017】
前記谷部群のうち隣接する2つの前記谷部の間には、前記谷部の谷底部に対してサイドウォール厚み方向外側に突出する山部が形成され、
サイドウォール表面において前記山部がサイドウォール厚み方向外側に最も突出していることが好ましい。
【0018】
前記サイドウォール部は、さらに、サイドウォール表面に標章を表示する領域であって、タイヤ周上の少なくとも2箇所に設けられる標章表示領域を有し、
前記ディンプル配置領域には、さらに、前記標章表示領域に対してタイヤ周方向に沿って隣接して配置され、前記径方向凹部列群および前記谷部群と同じ径方向凹部列群および谷部群を備える、前記ディンプル配置領域の延長領域が付加され、
前記延長領域を除く前記ディンプル配置領域のタイヤ周上に占めるタイヤ回転中心に対する占有角度は140〜300度であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のタイヤによれば、サイドウォール表面に存在する、タイヤ構造等に起因した凹凸が目立つのを十分に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態のタイヤの側面を示す外観図である。
図2図1のタイヤの一部を示す半断面図である。
図3図1のタイヤのサイドウォール部の一部を拡大して示す図である。
図4図3のサイドウォール部のディンプル配置領域の一部を拡大して示す図である。
図5図3のサイドウォール部の他の例を示す図である。
図6図4に示すVI−VI線に沿ったサイドウォール部の断面に平滑面の断面を追加して示す図である。
図7図3のサイドウォール部のディンプル配置領域の一部を拡大して示す図である。
図8図3のサイドウォール部のディンプル配置領域の一部を拡大して示す図である。
図9】変形例のタイヤのサイドウォール部の一部を拡大して示す図である。
図10図9のサイドウォール部のディンプル配置領域の一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の空気入りタイヤを詳細に説明する。
図1は、本実施形態の空気入りラジアルタイヤ(以下、タイヤという)1を示す側面図である。タイヤ1は乗用車用タイヤである。なお、図1は、本実施形態のタイヤ1を分かりやすく説明するために、後述するサイドウォールの各領域に注目して示している。
【0022】
タイヤ1は、乗用車用タイヤ、重荷重用タイヤ、航空機用タイヤ、建設車両用タイヤ、二輪車用タイヤ等に用いることができ、タイヤの種類は制限されない。なお、以下の説明で例示する寸法は、乗用車用タイヤにおける数値例である。
タイヤ1は、回転方向は特に制限されず、時計回り又は反時計回りに回転するよう、車両に装着される。なお、本発明におけるタイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、タイヤ周方向とは、タイヤを回転体としてみたときの回転の周方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤを回転体としてみたときの径方向をいう。
【0023】
タイヤ1は、図2に示すように、トレッド部4と、サイドウォール2と、ビード部6、カーカス層7と、ベルト層8とを有する。図2は、タイヤ1の一部を示す半断面図である。この他に、図示されないが、タイヤ1は、インナライナ層等を有する。サイドウォール2及びビード部6は、トレッド部4を挟むようにタイヤ幅方向の両側に配されて対を成している。
トレッド部4、ビード部6、ベルト層8、インナライナ層等は、公知のものが用いられてもよいし、新規なものが用いられてもよく、本発明において、特に限定されない。
【0024】
カーカス層7は、引き揃えられた複数本の図示されないカーカスコード(カーカスプライ)からなる単一の層で、1対のビード部6,6間に装架されている。カーカス層7は、カーカスコードのタイヤ周方向の一端部と他端部とを重ね合わせた、図示されないスプライス部を有する。カーカス層7の層数は、特に制限されないが、層数が少ないほど、サイドウォール表面のタイヤ構造等に起因した凹凸が大きく現れるため、後述するサイドウォール2によるタイヤ構造等に起因した凹凸を目立たなくさせる効果が大きくなる。
【0025】
図1に戻り、サイドウォール2の表面には、ディンプル配置領域11、延長領域12、標章表示領域13が形成されている。これらの領域11,12,13は、1対のサイドウォール2の一方または両方に設けられる。一方にのみ設けられる場合は、タイヤ1を車両に装着した場合に車両外側に配されるサイドウォール2に設けられるのが好ましい。サイドウォール2のサイドゴムの厚さ(サイドゲージ)は、サイドウォール表面に存在する、タイヤ構造等に起因する凹凸が目立たないようにする観点から、最小の部分が1.5〜3.0mmであることが好ましい。サイドゲージの最小の部分とは、後述する凹部、谷部が形成された部分を除くサイドウォール表面の部分(後述する平滑面)とこれに対応するタイヤ内表面との最小距離をいう。
【0026】
ディンプル配置領域11は、サイドウォール2のタイヤ周上の2箇所に設けられている。ディンプル配置領域11には、図3および図4に示すように、径方向凹部列群20と、谷部群30と、がサイドウォール表面に形成されている。図3は、図1のタイヤのサイドウォール部の一部を拡大して示す図である。図4は、図3のサイドウォール部のディンプル配置領域の一部を拡大して示す図である。
【0027】
径方向凹部列群20は、タイヤ周上に複数設けられた径方向凹部列21を有し、径方向凹部列21のそれぞれには、複数のディンプル状の凹部22がタイヤ径方向に配列されている。凹部22の、サイドウォール表面の平滑面2a(図6参照)と交差する縁を仮想平面に投影したときの形状は、真円形、楕円形、非円形のいずれであってもよい。この凹部22の上記形状は、径方向凹部列21間あるいは径方向凹部列21内の凹部22間で異なっていてもよい。凹部22の、サイドウォール表面の平滑面2aに対して凹む面は、球面または非球面、の一部であってよい。
径方向凹部列21に含まれる凹部22の数は、特に制限されず、図4に示すように8個であってもよく、図5に示すように16個であってもよく、例えば4〜24個である。なお、図5は、図3に示すサイドウォール部の他の例を示す図である。本実施形態では、また、ディンプル配置領域11に含まれる凹部22の総数は、特に制限されず、例えば500〜1500個である。径方向凹部列21内の凹部22間で、凹部22の中心は、タイヤ径方向に等間隔に配置されている。凹部22の直径および深さは、本実施形態では、複数の凹部22間で等しいが、異なっていてもよい。
【0028】
タイヤ周方向に隣接する2つの径方向凹部列21のタイヤ周方向の間隔P(以下、径方向凹部列21間の間隔Pともいう)は、タイヤ周方向に段階的に又は連続的に変化している。なお、本実施形態において、1つの径方向凹部列21内に含まれる凹部22の中心は、タイヤ径方向に延びる1本の直線上に並ぶよう配置されている。径方向凹部列21間の間隔Pは、タイヤ周方向に隣り合う2つの径方向凹部列21のそれぞれに含まれる凹部22の中心をタイヤ径方向に通る直線を想定したとき、この2つの直線同士の、ディンプル配置領域11のタイヤ径方向の中央位置における間隔をいい、特に断らない限り、ディンプル配置領域11のタイヤ径方向の中央位置における間隔を指す。
【0029】
間隔Pが連続的に変化するとは、タイヤ周方向に隣り合う間隔P同士が異なっていることをいい、例えば、隣り合う3つ以上の間隔Pがタイヤ周方向に常に大きく又は小さくなることが含まれる。一方、間隔Pが段階的に変化するとは、同一の間隔Pが連続して続いた後、間隔Pが大きくなるあるいは小さくなることをいう。連続的に変化する場合および段階的に変化する場合のいずれの場合においても、タイヤ周方向に隣り合って並ぶ少なくとも3つ以上の間隔Pが常に大きく又は小さくなっている部分があることが好ましい。
このように径方向凹部列21間の間隔Pが段階的に又は連続的に変化していることによって、タイヤ1のサイドウォール表面を見る者の視線を、タイヤ周方向に移動させやすくなり、これにより、サイドウォール表面の周上の一部にある、タイヤ構造等に起因した凹凸を目立たなくすることができる。
【0030】
上記谷部群30は、凹部22が形成された領域を除くディンプル配置領域11の領域11Bにセレーション加工が施されることにより設けられ、凹部22のそれぞれを囲むよう設けられた一方向に延びる複数の線状の谷部31を有する。このような谷部群30が設けられることにより、タイヤ製造時の加硫工程で用いられる金型の凹部22に対応する部分と、この部分に入り込んだゴム材料との間に入ったエアが、谷部31に沿って移動し、上記エアが金型とゴム材料の間から抜けやすくなる。なお、谷部31に沿って移動したエアは、金型の所定箇所に設けられたエア抜きのための孔に導かれ、金型の外側に排出される。これにより、ゴム材料中にエア溜まりが生じるのを抑え、凹部22表面に外観不良が生じるのを防止できる。
また、エアの排出性にムラが生じないよう、隣接する2つの谷部31間の間隔は、ディンプル配置領域11の全域にわたって一定であることが好ましい。隣接する2つの谷部31間の間隔は、隣接する山部32(後述)間の間隔(リッジ間隔ともいう)と等しく、図6に示すように、凹部22の直径よりも小さいことが好ましい。図6は、図4に示すVI−VI線に沿ったサイドウォール2の断面に平滑面2aの断面を追加して示す図である。隣接する2つの谷部31間の間隔は、例えば、0.5〜2.0mmである。また、谷部31のサイドウォール表面の平滑面2aからの深さ位置は、凹部22の平滑面2aからの深さ位置よりも深いことが好ましく、例えば、0.5〜2.0mmである。複数の谷部31は、タイヤ周方向に対し平行に又は傾斜して延びていてもよい。傾斜して延びる場合は、例えば、タイヤ周方向に45°傾斜して延びる。さらに、複数の谷部31は、延びる方向の向きが途中で変わるよう屈曲又は湾曲して延びていてもよい。
【0031】
ディンプル配置領域11のタイヤ径方向の長さT(図3参照)は、タイヤ周方向にわたり一定であり、例えば、50.0〜150.0mmである。
ディンプル配置領域11は、タイヤ1のタイヤ幅方向長さが最大となるタイヤ径方向位置Wmax(図2参照)を含み、かつ、タイヤ径方向内側の端部1a(図1,2参照)からタイヤ1の断面高さH(図2参照)の30〜80%の高さにある。断面高さHは、タイヤのビード部6の最もタイヤ径方向内側の端部1aからタイヤ回転中心からの距離が最大となる径方向位置までのタイヤ径方向の距離をいう。このように、ディンプル配置領域11が、タイヤ1の最大幅を含み、かつ、タイヤ1の断面高さHが上記範囲である領域に形成されていることによって、ディンプル配置領域がサイドウォール上の視認されやすい部分に設けられるので、見る者の注意をディンプル配置領域11に効果的に引き付けることができる。
さらに、ディンプル配置領域11のタイヤ径方向長さTと、径方向凹部列群20のうちタイヤ周方向に隣接する2つの径方向凹部列21間の、ディンプル配置領域11のタイヤ径方向中央におけるタイヤ周方向の間隔Pとの比T/Pが、4.0≦T/P≦20.0であることが好ましい。Pは、ディンプル配置領域11のタイヤ径方向の中央位置での長さである。比T/Pがこのような範囲で変化することによって、ディンプル配置領域11内に配置される複数の凹部22のそれぞれが、径方向凹部列21をなすとともに、径方向凹部列21間の間隔Pが種々の長さをとる特徴的な模様がサイドウォール表面に現れる。
【0032】
本実施形態のタイヤ1において、タイヤ周方向に隣り合う2つの径方向凹部列21に含まれる凹部22の面積の総和を、ディンプル配置領域11のうち、これら2つの径方向凹部列21のすべての凹部22を当該凹部22と接して囲む略扇形の仮想領域11A(図4において斜線で示す領域)の面積で割り算した値を凹部占有率とする。このとき、凹部占有率の最小値は20〜30%であることが好ましい。扇形の領域11Aは、図4に示されるように、ディンプル配置領域11のタイヤ径方向の内側の端部11cと外側の端部11dとに挟まれるとともに、前記隣接する2つの径方向凹部列21のそれぞれに対し、タイヤ周方向の外側から当接してこれら2つの径方向凹部列21の凹部22を囲む領域である。
扇形の領域11Aの面積は、径方向凹部列21間の間隔Pがタイヤ周方向に異なっていることによって、タイヤ周上で変化しており、凹部占有率は、径方向凹部列21間の間隔Pが最大となる場合に最小となる。凹部占有率の最小値が20〜30%であることで、径方向凹部列21間の間隔Pが広くなりすぎず、見る者の視線を引き付ける効果を確保できる。本実施形態において、凹部占有率の最小値は、例えば22%である。
【0033】
凹部占有率の最小値が上記範囲にある場合に、さらに、凹部占有率の最大値は50〜60%であることが好ましい。凹部占有率は、径方向凹部列21間の間隔Pが最小となる場合に最大となる。凹部占有率の最大値が50〜60%であることで、径方向凹部列21間の間隔Pが狭くなりすぎない。これにより、凹部占有率が小さい部分と大きい部分とのコントラストを高めて、見る者の視線を効果的に引き付けることができる。本実施形態において、凹部占有率の最大値は、例えば58%である。
【0034】
本実施形態のタイヤ1において、ディンプル配置領域11のタイヤ径方向の中央位置における、径方向凹部列21間の間隔Pのうち最大の間隔Pmaxは、図7に示すように、凹部22の直径C22よりも大きいことが好ましい。図7は、図3のサイドウォール部のディンプル配置領域の一部を拡大して示す図である。間隔Pmaxが、凹部22の直径C22よりも大きいことによって、径方向凹部列21間の隙間が大きい領域がディンプル配置領域11内に現れ、見る者の注意を引き付けることができる。なお、直径C22は、本実施形態において、複数の凹部22間で等しいが、特に制限されず、異なっていてもよい。この場合、上記間隔Pmaxは、複数の凹部22の直径のうち最大の直径よりも大きい。
【0035】
さらに、上記間隔Pmaxが凹部22の直径C22よりも大きい場合に、ディンプル配置領域11のタイヤ径方向の中央位置における、径方向凹部列21間の間隔Pのうちタイヤ周方向に最小の間隔Pminは、図7に示すように、前記凹部22の直径よりも小さいことが好ましい。これにより、ディンプル配置領域11内に、タイヤ周方向長さあたりの径方向凹部列21の数が疎な部分と密な部分とが現れ、見る者の注意を効果的に引きつけることができる。なお、径方向凹部列21内の凹部22同士で直径が異なる場合は、上記最小の間隔Pminは、複数の凹部22の直径のうち最小の直径よりも小さい。
【0036】
本実施形態のタイヤ1において、凹部22の直径C22は、1.0〜5.0mmであることが好ましい。凹部22の直径が1.0mm以上であることにより、サイドウォール表面において凹部22を目立たせることができる。また、凹部22の直径C22が大きくなるほど、凹部22を視認しやすくするために凹部22の深さは深く形成されるが、凹部22の直径C22が5.0mm以下であることにより、凹部22の深さが深くなって、サイドゲージが薄くなるのを抑えることができる。凹部22の直径C22は、2.0〜3.0mmであることがより好ましく、例えば2.5mmである。
また、凹部22の直径C22の、隣接する2つの谷部31間の間隔に対する比は、3〜10であることが好ましい。この比が3以上であることによって、凹部22が谷部31よりも目立って見え、見る者の視線が凹部22に引きつけられやすくなる。また、この比が10以下であることによって、凹部22の深さが大きくなって、サイドゲージが小さくなるのを抑えることができる。なお、径方向凹部列21内の凹部22間で直径C22が異なる場合は、その径方向凹部列21内の凹部22の直径C22の平均値が用いられる。凹部22の直径C22の、隣接する谷部31間の間隔に対する比は、より好ましくは5〜7であり、例えば、6である。
【0037】
本実施形態のタイヤ1において、凹部22の深さD22は、0.3〜1.5mmであることが好ましい。凹部22の深さD22は、図6に示すように、谷部31の谷底部を基準とした凹み深さである。凹部22の深さD22が0.3mm以上であることにより、サイドウォール表面において凹部22を目立たせることができる。また、凹部22の深さD22が1.5mm以下であることにより、サイドゲージが最小の部分においてもサイドウォールの厚みを確保できる。凹部22の深さD22は、0.3〜1.0mmであることがより好ましく、例えば0.6mmである。
また、凹部の深さD22の、谷部31の深さD31に対する比は、4〜8であることが好ましい。この比が4以上であることによって、凹部22が谷部31よりも目立って見え、見る者の視線が凹部22に引きつけられやすくなる。また、この比が8以下であることによって、凹部22の深さが大きくなって、サイドゲージが小さくなるのを抑えることができる。なお、本実施形態では、径方向凹部列群20内の凹部22間で深さD22が等しいが、特に制限されず、異なっていてもよい。その場合は、その径方向凹部列21内の凹部22の深さの平均値が用いられる。凹部22の深さD22の、谷部31の深さD31に対する比は、より好ましくは5〜7であり、例えば、6である。
【0038】
本実施形態のタイヤ1において、ディンプル配置領域11内の凹部22の面積の総和は、ディンプル配置領域11のうち谷部群30が形成された領域11Bの面積の25〜60%であることが好ましい。凹部22の面積の総和が領域11Bの面積の25%以上であることで、ディンプル配置領域11において凹部22が一定以上の密度で配置され、凹部22間の隙間が広がり過ぎないようにすることができる。逆に、凹部22の面積の総和が領域11Bの面積の60%以下であることで、ディンプル配置領域11において凹部22間の隙間を一定以上確保することができる。凹部22の面積の総和が領域11Bの面積の割合は、より好ましくは30〜45%であり、例えば37%である。
【0039】
本実施形態のタイヤ1において、サイドウォール2に用いられるゴム部材のJISに準拠する硬度(JIS硬度)は45〜60であることが好ましい。ここでいうJIS硬度は、温度20度における硬度であり、JIS K6253に規定されるデュロメータ硬さ試験に準拠する硬度である。このような硬度のゴム部材をサイドウォール2に用いることにより、タイヤ1全体としての転がり抵抗を低減し、低燃費性能を確保することができる。
【0040】
本実施形態のタイヤ1において、径方向凹部列21は、図8に示すように、径方向凹部列21間の間隔Pが、段階的に又は連続的に大きくなった後、段階的に又は連続的に小さくなる周期パターンPTがタイヤ周方向に繰り返されるよう配置されていることが好ましい。図8は、図3のサイドウォール部のディンプル配置領域の一部を拡大して示す図である。周期パターンPTがタイヤ周方向に繰り返されるよう凹部22が配置されることにより、ディンプル配置領域11に引きつけられた見る者の視線をさらにタイヤ周方向に分散させる効果が得られ、これにより、サイドウォール表面に現れる、タイヤ構造等に起因した凹凸を目立たなくさせることができる。特に、径方向凹部列群20は、サイドウォール表面において谷部群30よりも目立つため、径方向凹部列21間の間隔Pが狭まった粗な部分と、間隔Pが開いた密な部分とがタイヤ周方向に繰り返されることで、両者のコントラストが高くなり、見る者の視線を効果的にタイヤ周方向に分散させることができる。また、このように凹部22を配置することで、見栄えのよいデザインが得られる。
なお、周期パターンPTのタイヤ周方向長さは、タイヤ周方向に隣接する周期パターンPT間で等しくてもよく、異なってもよい。また、1つの周期パターンに含まれる径方向凹部列21の数や、1つの径方向凹部列21に含まれる凹部22の数、直径は、周期パターンPT間で等しくてもよく、異なってもよい。
さらに、径方向凹部列21内の凹部22の数は、周期パターンPTに含まれる径方向凹部21列の数の1〜3倍であることが好ましい。例えば、1つの周期パターンPTに径方向凹部列21が8個含まれている場合の、径方向凹部列21のそれぞれに含まれる凹部22は8個、16個または24個である。
【0041】
上記延長領域12は、サイドウォール2のタイヤ周上の2箇所に設けられている。延長領域12は、上述した径方向凹部列群20および谷部群30と同じ径方向凹部列群および谷部群(以降、径方向凹部列群20、谷部群30という)を備える、ディンプル配置領域11に対しタイヤ周方向に付加された領域である。すなわち、延長領域12は、ディンプル配置領域11内の径方向凹部列群20および谷部群30が、そのままの態様でタイヤ周方向に延びるよう延長された領域であり、ディンプル配置領域11との間で、一体の径方向凹部列群20および谷部群30が構成されるよう、延長領域12はディンプル配置領域11に付加されている。延長領域12のタイヤ径方向長さは、タイヤ周方向の両端部、すなわち、ディンプル配置領域11と接続される部分においてディンプル配置領域11のタイヤ径方向長さと同じ長さであるとともに、ディンプル配置領域11からタイヤ周方向に遠ざかるにつれ徐々に短くなり、ディンプル配置領域11のタイヤ径方向長さから標章表示領域13のタイヤ径方向長さを引いたタイヤ径方向長さにまで変化している。また、延長領域12は、標章表示領域13に対してタイヤ周方向に沿って隣接して配置されている。以上の構成により、径方向凹部列群20および谷部群30は、ディンプル配置領域11および延長領域12内をタイヤ全周にわたって配置される。
なお、延長領域12とディンプル配置領域11とで、径方向凹部列群20および谷部群30の態様が異なっていてもよく、さらには、周期パターンPTの態様が異なっていてもよい。
【0042】
上記標章表示領域13は、サイドウォール2のタイヤ周上の2箇所に設けられている。標章表示領域13は、サイドウォール表面に標章13a(図1参照)を表示する領域である。標章13aは、メーカー名、ブランド名、タイヤサイズなどを示す文字、記号またはこれらの組み合わせからなる。記号には数字が含まれる。文字、記号はそれぞれ、図案化されたものも含む。標章13aを構成する文字及び記号の数は、1つまたは複数であってよい。なお、標章表示領域13は、タイヤ周上の2箇所にあることが好ましいが、1箇所又は3箇所以上にあってもよい。
【0043】
本実施形態のタイヤ1において、ディンプル配置領域11のタイヤ周上に占めるタイヤ回転中心O(図1参照)に対する角度の総和である占有角度αは140〜300度であることが好ましい。なお、本実施形態では、ディンプル配置領域11は、タイヤ周上の2箇所に分かれて存在し、図1に示すように、占有角度αは、それぞれのディンプル配置領域11のタイヤ回転中心Oに対するタイヤ周方向角度α/2の和で表される。この占有角度が140度以上であることにより、サイドウォール表面の十分なタイヤ周方向長さにわたってディンプル配置領域11が形成され、見る者の視線をタイヤ周上の広範囲に引きつけることができ、これにより、タイヤ構造等に起因したサイドウォール表面の凹凸を目立たなくさせることができる。また、この占有角度が300度以下であることにより、標章表示領域13のタイヤ周方向長さを確保して、標章の視認性を上げることができる。上記占有角度は、より好ましくは180〜270度であり、例えば、230度である。
【0044】
また、本実施形態のタイヤ1において、ディンプル配置領域11のタイヤ径方向の中央位置におけるタイヤ周方向長さの総和をR、ディンプル配置領域11のタイヤ径方向の中央位置におけるタイヤ1の周方向長さをLとしたとき、0.4≦R/L≦0.8を満たすことが好ましい。R/Lが0.4以上であることで、サイドウォール表面の十分なタイヤ周方向長さにわたってディンプル配置領域11が形成され、見る者の視線をタイヤ周上の広範囲に引きつけることができ、これにより、タイヤ構造等に起因したサイドウォール表面の凹凸を目立たなくさせることができる。また、R/Lが0.8以下であることで、標章表示領域13のタイヤ周方向長さを確保して、標章の視認性を上げることができる。R/Lは、より好ましくは0.5≦R/L≦0.7であり、例えば0.6である。
【0045】
本実施形態のタイヤ1において、隣接する2つの谷部31の間には、図6に示すように、谷部31の谷底部31aよりもサイドウォール厚み方向外側(図6において上方)に突出する山部32が形成され、この山部32が、サイドウォール表面においてサイドウォール厚み方向外側に最も突出していることが好ましい。つまり、サイドウォール2には、平滑面2aよりも外側に突出する部分(例えば、上記特許文献1に示される、タイヤ径方向に延びるよう形成され、サイドウォール厚み方向外側に突出する凸部)が存在しない。このようにサイドウォール表面の平滑面2aよりもタイヤ幅方向の外側に突出する部分が存在しないことによって、見る者の視線をタイヤ周方向にスムーズに移動させることができ、見る者の視野に一度に入るタイヤ周方向の長さが大きくなることによって、タイヤ構造等に起因したサイドウォール表面の凹凸をより目立たなくさせることができる。
【0046】
以上のタイヤ1によれば、径方向凹部列21間の間隔Pが段階的に又は連続的に変化していることによって、タイヤ1のサイドウォール表面を見る者の視線を、ディンプル配置領域11に効果的に引き付けることができ、タイヤ構造等に起因したサイドウォール表面の凹凸を目立たなくさせることができる。これにより、タイヤ1のユーザに対し、タイヤ性能の低い不良品ではないかとの不安を抱かせることを抑えることができる。
【0047】
(変形例)
図9および図10を参照して、本実施形態のタイヤ1の変形例について説明する。
図9は、変形例のタイヤのサイドウォール部の一部を拡大して示す図である。図10は、図9のサイドウォール部のディンプル配置領域の一部を拡大して示す図である。なお、図9および図10において、上記実施形態で説明したのと同じ符号で示す要素は、特に断りのない限り、上記実施形態で説明した要素と同様に構成されている。
変形例のタイヤ1では、径方向凹部列21内の凹部22間で直径が異なることにより、タイヤ径方向に隣り合う2つの凹部22の縁間の最短距離Gがタイヤ径方向に変化し、いずれの凹部22の縁間の最短距離Gも互いに異なっている。具体的には、変形例では、径方向凹部列21内の凹部22の直径は、タイヤ径方向の内側から外側にかけて又は外側から内側にかけて徐々に大きくなっており、さらに、タイヤ周方向に隣り合う2つの径方向凹部列21間で、凹部22の直径が大きくなるタイヤ径方向の向き(タイヤ径方向の内側から外側にかけて、または、外側から内側にかけての向き)が異なっている。このような態様により、タイヤ1側面を見る者の注意を効果的にディンプル配置領域11に引きつけ、サイドウォール表面においてタイヤ構造等に起因した凹凸が目立つのを抑えることができる。
【0048】
なお、変形例において、上記周期パターンに関して、径方向凹部列の数、径方向凹部列に含まれる凹部の数は、上記実施形態と等しいが、異なっていてもよい。また、変形例において、径方向凹部列21内の凹部22の中心は、上記実施形態と同様、タイヤ径方向に等間隔に並んで配置されているが、異なる間隔で配置されてもよい。
変形例において、径方向凹部列21内の凹部22の直径は、例えば、1.0〜4.5mmの範囲で変化しているが、径方向凹部列内の凹部のすべての直径が異なっていなくてもよい。また、変形例において、径方向凹部列21の凹部22の深さは、例えば、0.5〜1.0mmの範囲で変化し、直径の大きい凹部22であるほど深さが深く、直径の小さい凹部22であるほど深さが浅くなっているが、直径の大小関係とは無関係に各凹部の深さが設定されてもよく、あるいは、径方向凹部列21内の凹部22のすべてが同じ深さであってもよい。
【0049】
(実施例)
以下、本発明のタイヤの効果を調べるために、図1に示すサイドウォール表面の形態を基準として、サイドウォールの仕様を、下記表1〜5に示すように、種々変えたタイヤ(195/65R15 91H)を試作した(従来例、比較例1〜4、実施例1〜22)。なお、カーカス層は、1枚であった。サイドゲージは、3.0mmであった。凹部22の直径C22は、実施例4〜8を除き3.0mm、径方向凹部列の凹部の数を8個とした。
表1〜5において、セレーション加工領域が「有」である場合は、隣接する谷部間の間隔が一定であることを意味する。「径方向凹部列の周方向間隔」の欄に示す「不均一」、「一定」は、径方向凹部列のタイヤ周方向間隔がタイヤ周方向に一定でない(周期的である)こと、一定(タイヤ周方向間隔1.0mm)であることをそれぞれ意味する。さらに、表1〜5において、左向きの矢印で示す欄は、その欄の左隣の欄と同様であることを意味する。
【0050】
これら試作したタイヤをリムに組み付け、タイヤ構造等に起因したサイドウォール表面の凹凸を目立たせるために300kPaの内圧を充填し、小型FF車両に装着し、外観不良として生じる、タイヤ構造等に起因したサイドウォール表面の凹凸の視認性を評価した。
タイヤ構造等に起因した凹凸の評価は、タイヤから1m離れた位置に100人のモニターが立ってそれぞれ目視したときに、サイドウォール表面のタイヤ構造等に起因した凹凸(凹凸の段差はレーザ形状測定器にて実測)を確認できるかを調べ、その結果を集計して以下のように評価した。
95人以上のモニターが、凹凸を明瞭に認識できないとき 評点110
90人以上94人以下のモニターが、凹凸を明瞭に認識できないとき 評点108
80人以上89人以下のモニターが、凹凸を明瞭に認識できないとき 評点106
70人以上79人以下のモニターが、凹凸を明瞭に認識できないとき 評点104
60人以上69人以下のモニターが、凹凸を明瞭に認識できないとき 評点102
50人以上59人以下のモニターが、凹凸を明瞭に認識できないとき 評点100
49人以下のモニターが、凹凸を明瞭に認識できないとき 評点97
なお、凹凸を明瞭に認識できないとは、モニターが、サイドウォール表面にタイヤ構造等に起因した凹凸を確認できなかったことを意味する。観察結果を、表1〜5に示す。表1において、従来例の「凹部なし」とは、サイドウォールに、凹部が形成されたディンプル配置領域が存在しないことを意味する。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1と比較例1の評価結果から、径方向凹部列間のタイヤ周方向間隔が不均一である場合には、タイヤ構造等に起因した凹凸の視認性が向上することが分かる。
実施例1〜3と、比較例2、3の評価結果から、T/Pが4.0〜20.0の範囲内である場合には、タイヤ構造等に起因した凹凸の視認性が向上することが分かる。
実施例1〜3と、比較例4の評価結果から、セレーション加工領域が有る場合には、タイヤ構造等に起因した凹凸の視認性が向上することが分かる。
実施例1〜3と従来例の評価結果から、凹部を有するディンプル配置領域がサイドウォールに設けられている場合は、タイヤ構造等に起因した凹凸の視認性が格段に向上することが分かる。
【0053】
【表2】
【0054】
実施例4〜8の評価結果から、凹部の直径が1.0〜5.0mmである場合は、タイヤ構造等に起因した凹凸の視認性がさらに向上することが分かる。
【0055】
【表3】
【0056】
実施例9〜13の評価結果から、凹部の深さが0.3〜1.5mmである場合は、タイヤ構造等に起因した凹凸の視認性がさらに向上することが分かる。
【0057】
【表4】
【0058】
表4において、「凹部の面積/セレーション加工領域の面積」は、セレーション加工領域、すなわち、ディンプル配置領域のうちの谷部群が形成された領域の面積に対する、凹部の面積の総和を意味する。
実施例14〜18の評価結果から、セレーション加工領域に対する、凹部の面積が25〜60%である場合は、タイヤ構造等に起因した凹凸の視認性がさらに向上することが分かる。
【0059】
【表5】
【0060】
表5において、「占有角度」は、ディンプル配置領域のタイヤ周上に占めるタイヤ回転中心に対する占有角度を意味する。
実施例19〜22の評価結果から、占有角度が140〜300度である場合は、タイヤ構造等に起因した凹凸の視認性がさらに向上することが分かる。
【0061】
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0062】
1 空気入りタイヤ
2 サイドウォール
1a タイヤのタイヤ径方向内側の端部
2a 平滑面
11 ディンプル配置領域
11A ディンプル配置領域の部分
11B 谷部群が形成されたディンプル配置領域の領域
12 延長領域
13 標章表示領域
22 凹部
21 径方向凹部列
20 径方向凹部列群
30 谷部群
31 谷部
32 山部
D 凹部の直径
G 凹部の縁間の最短距離
P 隣接する径方向凹部列間の間隔
Pmax 最大間隔
Pmin 最小間隔
PT 周期パターン
T ディンプル配置領域の径方向長さ
α 占有角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10