(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関を搭載した車両の走行を、予め設定された目標車速に車速を維持する目標車速維持走行とする制御を行う目標車速維持走行制御手段と、車両の走行を、前記内燃機関の燃料噴射を停止した惰性走行とする制御を行う惰性走行制御手段とを備える車両の自動走行装置において、
車両の前方の所定の区間である前方道路の道路状況を取得する道路状況取得手段と、車速を含む車両状況を取得する車両状況取得手段と、前記道路状況と前記車両状況に基づいて、前記前方道路の走行を車両の走行に制動力を付与しない無制動惰性走行とすると予測した場合の予測車速が、前記前方道路の区間内で、前記目標車速よりも遅い速度に予め設定された下限目標車速を下回るか否かを判断する惰性走行予測手段を備え、
前記予測車速が前記下限目標車速を下回らないと前記惰性走行予測手段が判断した場合に、前記惰性走行制御手段は、前記前方道路が登坂路、降坂路、又は平坦路であるか否かに関係なく、前記前方道路の走行を惰性走行とする制御を開始することを特徴とする車両の自動走行装置。
内燃機関を搭載した車両の走行を、予め設定された目標車速に車速を維持する目標車速維持走行とする制御を行う目標車速維持走行制御手段と、車両の走行を、前記内燃機関の燃料噴射を停止した惰性走行とする制御を行う惰性走行制御手段と変速機を備える車両の自動走行装置において、
車両の前方の所定の区間である前方道路の道路状況を取得する道路状況取得手段と、車速を含む車両状況を取得する車両状況取得手段と、前記道路状況と前記車両状況に基づいて、前記前方道路の走行を車両の走行に制動力を付与しない無制動惰性走行と予測した場合の予測車速が、前記前方道路の区間内で、前記目標車速よりも早い速度に予め設定された上限目標車速を上回るか否かを判断する惰性走行予測手段を備え、
前記無制動惰性走行における前記予測車速が前記上限目標車速を上回ると前記惰性走行予測手段が判断した場合に、前記惰性走行制御手段は、前記前方道路の走行を車両の走行に制動力を付与する有制動惰性走行としつつ、車速が前記目標速度よりも速い速度に設定された有制動惰性走行上限目標速度を維持するように前記変速機の変速比を変更する制御を行うことを特徴とする車両の自動走行装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その課題は、運行時間を大幅に増加することなく、燃料消費量を低減することができる車両の自動走行装置、車両、及び車両の自動走行方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明の車両の自動走行装置は、内燃機関を搭載した車両の走行を、予め設定された目標車速に車速を維持する目標車速維持走行とする制御を行う目標車速維持走行制御手段と、車両の走行を、前記内燃機関の燃料噴射を停止した惰性走行とする制御を行う惰性走行制御手段とを備える車両の自動走行装置において、
車両の前方の所定の区間である前方道路の道路状況を取得する道路状況取得手段と、車速を含む車両状況を取得する車両状況取得手段と、前記道路状況と前記車両状況に基づいて、
前記前方道路の走行を
車両の走行に制動力を付与しない無制動惰性走行とすると予測した場合の予測車速が、
前記前方道路の区間内で、前記目標車速よりも遅い速度に予め設定された下限目標車速を下回るか否かを判断する惰性走行予測手段を備え、前記予測車速が前記下限目標車速を下回らないと前記惰性走行予測手段が判断した場合に、前記惰性走行制御手段は、前記前方道路が登坂路、降坂路、又は平坦路であるか否かに関係なく、
前記前方道路の走行を惰性走行とする制御を開始するように構成される。
【0008】
なお、ここでいう前方道路とは、車両の現在位置から車両の進行方向に延在する道路のことであり、この前方道路の距離は、前方道路の状況によって定めるとよい。例えば、前方道路に登坂路があれば、少なくともその登坂路の終点(頂点)を含むことが好ましく、さらにその登坂路の終点から始まる降坂路の途中又は終点を含むことがより好ましい。
【0009】
また、ここでいう道路状況取得手段とは、車両を自動走行するために必要な前方道路の状況を取得する手段である。例えば、衛星測位システムなどを利用して現在位置を確認し、地図情報などのデータベースから前方道路の走行路面の勾配、標高、信号の有無、及びカーブなどを取得したり、天気情報などを利用して前方道路の路面状況を類推したり、センサにより前走車や並走車などを検知し、周囲の走行車両との距離や車速差を取得したりする手段である。また、走行履歴を記憶させておき、その走行履歴から走行路面の勾配、標高、信号の有無、及びカーブなどを取得してもよい。
【0010】
加えて、ここでいう車両状況取得手段とは、車両を自動走行するために必要な車両の状況を取得する手段である。例えば、車速センサで検知した車速、内燃機関の出力制御や変速機のギヤ段の変速制御などに使用される車両の重量、及び現在の変速機のギヤ段などを取得する手段である。
【0011】
更に、ここでいう目標車速は、車両の自動走行を制御する前に、運転手によって予め設定される車速の目標値である。また、ここでいう下限目標車速は、車両の自動走行を制御する前に、運転手によって予め設定される減少値に基づくものであり、この下限目標車速までは、車両の自動走行の車速を減少することができる許容値である。例えば、目標車速が80km/hに設定されている場合に、減少値が−10km/hと設定されると、その下限目標車速は、70km/hとなる。
【0012】
その上、ここでいう惰性走行とは、内燃機関の燃料噴射が停止された走行のことをいい、変速機のギヤ段がニュートラルポジションに設定されたニュートラル惰性走行、変速機が所定のギヤ段に設定され、エンジンブレーキが掛かる状態のアクセルオフ惰性走行、エンジンと変速機の間のクラッチを切った状態のクラッチオフ惰性走行を含むものである。また、ハイブリッド車両においては、電動発電機を回生駆動する回生惰性走行も含む。
【0013】
上記の構成によれば、車両の自動走行中に、道路状況と車両状況に基づいて、前方道路の走行を惰性走行とすると予測した場合の予測車速が、下限目標車速を下回らないと判断したときに、前方道路が登坂路、降坂路、又は平坦路に関係なく、惰性走行を開始する。これにより、車両の自動走行中に惰性走行による走行距離を長くすることができ、燃料消費量を低減することができる。さらに、車速が下限目標車速を下回らないと判断したときに惰性走行を開始するため、車速が極端に遅くなることがなく、運行時間が大幅に増加することなく、到着時刻が遅れることを回避することができる。
【0014】
また、上記の車両の自動走行装置において、前記惰性走行予測手段における前記予測車速が前記下限目標車速を下回る場合、又は前記惰性走行制御手段の実施中に車速が前記下限目標車速を下回った場合に、前記目標車速維持走行制御手段を実施して、車速を前記目標車速に近づけるように構成されることが望ましい。
【0015】
例えば、惰性走行予測手段における予測車速が下限目標車速を下回る場合に、目標車速維持走行に切り換えることで、運行時間が大幅に増加することを回避することができる。また、惰性走行予測手段での予測に反して、惰性走行中による車速が下限目標車速を下回った場合に、目標車速維持走行に切り換えることで、運行時間が大幅に増加することを回避することができる。
【0016】
加えて、上記の車両の自動走行装置において、前記惰性走行予測手段における前記予測車速が前記目標車速よりも速い速度に予め設定された上限目標車速と前記下限目標車速の間に収まるように、予測中の惰性走行を、車両の走行に制動力を付与する有制動惰性走行と、車両の走行に制動力を付与しない無制動惰性走行のどちらか一方から選択する惰性走行選択手段を備え、前記惰性走行制御手段を実施した場合の惰性走行を、前記惰性走行選択手段で選択された前記有制動惰性走行と前記無制動惰性走行のどちらか一方とするように構成されることが望ましい。
【0017】
この構成によれば、予測車速が上限目標車速と下限目標車速の間に収まるように、有制動惰性走行と無制動惰性走行を切り換えることで、内燃機関の燃料噴射が停止された惰性走行を維持できる走行距離を長くすることができる。
【0018】
例えば、降坂路を無制動惰性走行とすると予測した場合の予測車速が、上限目標車速を超えるような場合は、予測中の惰性走行に有制動惰性走行を選択し、再予測を行う。有制動惰性走行では車両に制動力が付与されるため、無制動惰性走行よりも車速が減速する。よって、前方道路の走行を有制動惰性走行とすると予測した場合の予測車速が上限目標車速を超えなくなり、その場合は、有制動惰性走行を行うことで、惰性走行をより長い距離で行うことができる。
【0019】
また、降坂路を有制動惰性走行とすると予測した場合の予測車速が、下限目標車速を下回るような場合は、予測中の惰性走行に無制動惰性走行を選択して再度予測する。無制動惰性走行では車両に制動力が付与されないため、有制動惰性走行よりも車速は減速しない。よって、前方道路の走行を無制動惰性走行とすると予測した場合の予測車速が、下限目標車速を下回らなくなり、その場合は、無制動惰性走行を行うことで、惰性走行をより長い距離で行うことができる。
【0020】
なお、ここでいう有制動惰性走行とは、車両の走行に制動力を付与する惰性走行のことであり、例えば、エンジンブレーキの掛かるアクセルオフ惰性走行などのことをいう。また、無制動惰性走行とは、車両の走行に制動力を付与しない惰性走行のことであり、例えば、エンジンブレーキの掛からない状態のニュートラル惰性走行や、エンジンがクラッチにより駆動軸から切り離された状態のクラッチオフ惰性走行などのことをいう。また、内燃機関と電動発電機の両方を備えるハイブリッド車両の場合は、アクセルオフ惰性走行の代わりに、電動発電機を回生駆動して、発電することで、車両の走行に抵抗を付与する回生惰性走行を行ってもよい。
【0021】
更に、上記の車両の自動走行装置において、前記惰性走行予測手段を、前記道路状況と前記車両状況に基づいて登坂路の後に降坂路がある前方道路の走行を、惰性走行とすると予測した場合に、車両が降坂路に到達するまでに前記予測車速が前記下限目標車速を下回るか否かを判断する手段とし、前記惰性走行予測手段を実施して、車両が降坂路に到達するまでに前記予測車速が前記下限目標車速を下回らないと判断したときに、登坂路から前記惰性走行制御手段を実施するように構成されることが望ましい。
【0022】
この構成によれば、登坂路の頂上の手前を走行中に、前方道路に登坂路の後に重力加速が可能な降り勾配を有する降坂路がある前方道路の走行を惰性走行とすると予測した場合の予測車速が、降坂路に到達するまでに下限目標車速を下回らないと判断したときには、頂上の手前の登坂路から惰性走行を行う。これにより、登坂路の頂上を経由して降坂路まで惰性走行して、惰性走行による走行距離を長くすることができるので、燃料消費量を低減することができる。
【0023】
また、そのような前方道路の走行を惰性走行としても、車速は下限目標車速を下回らないため、惰性走行により運行時間が大幅に増加することなく、到着時刻が遅れることを回避しながら、燃料消費量を削減することができる。
【0024】
そして、上記の課題を解決するための本発明の車両は、上記に記載の車両の自動走行装置を備えて構成される。この構成によれば、内燃機関の燃料噴射が停止された惰性走行による走行機会を増やして燃料消費量を低減することができると共に、その惰性走行中の車速を目標車速に基づく上限目標車速と下限目標車速との間に収めるため、惰性走行の機会が増えても運行時間が大幅に増加することを回避することができる。
【0025】
そして、上記の課題を解決するための本発明の車両の自動走行方法は、内燃機関を搭載した車両の走行を、予め設定された目標車速に車速を維持する目標車速維持走行とする車両の自動走行方法において、
車両の前方の所定の区間である前方道路の道路状況と、車速を含む車両状況に基づいて、
前記前方道路の走行を前記内燃機関の燃料噴射が停止され
て車両の走行に制動力を付与しない無制動惰性走行とする予測をした場合の予測車速が、
前記前方道路の区間内で、前記目標車速よりも遅い速度に予め設定された下限目標車速を下回らないと判断したときに、前記前方道路が登坂路、降坂路、又は平坦路であるか否かに関係なく、
前記前方道路の走行を惰性走行にすることを特徴とする方法である。
【0026】
また、上記の車両の自動走行方法において、予測中の車速が前記下限目標車速を下回る、又は惰性走行中の車速が前記下限目標車速を下回ったときに、車両の走行を惰性走行から目標車速維持走行に切り換えることが望ましい。
【0027】
加えて、上記の車両の自動走行方法において、前記予測車速が前記目標車速よりも速い速度に予め設定された上限目標車速と前記下限目標車速の間に収まるように、予測中の惰性走行を、車両の走行に制動力を付与する有制動惰性走行と、車両の走行に制動力を付与しない無制動惰性走行のどちらか一方から選択し、前方道路の走行を、選択された前記有制動惰性走行と前記無制動惰性走行のどちらか一方とすることが望ましい。
【0028】
更に、上記の車両の自動走行方法において、前記道路状況と前記車両状況に基づいて、登坂路の後に降坂路がある前方道路の走行を、惰性走行とすると予測した場合に、車両が降坂路に到達するまでに前記予測車速が前記下限目標車速を下回らないと判断したときには、登坂路から惰性走行を開始することが望ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の車両の自動走行装置、車両、及び車両の自動走行方法によれば、車両の自動走行において、前方道路を惰性走行する場合を予測し、惰性走行による増減する車速が予め定めた上限目標車速と下限目標車速の間に収まると判断したときに、前方道路が登坂路、降坂路、又は平坦路に関係なく、惰性走行を開始して、内燃機関の燃料噴射を停止した惰性走行による走行距離を長くすることができる。
【0030】
これにより、内燃機関の燃料噴射が停止された惰性走行による走行機会を増やして燃料消費量を低減することができると共に、その惰性走行中の車速を目標車速に基づく上限目標車速と下限目標車速との間に収めるため、惰性走行の機会が増えても運行時間が大幅に増加することなく、到着時刻が遅れることを回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る実施の形態の車両の自動走行装置と車両の自動走行方法について説明する。
【0033】
なお、
図1では、エンジン3を直列六気筒のディーゼルエンジンとして説明するが、本発明は、ガソリンエンジンでも適用することができ、その気筒の数や配列は特に限定されない。また、車両1を、ディーゼルエンジンを搭載したトラックなどの大型車両を例として説明するが、本発明はトラックなどの大型車両に限定されない。
【0034】
加えて、以下では、符号を付与しない惰性走行と記載した場合は、無制動惰性走行と有制動惰性走行を含むものとする。そして、車両に制動力を付与しない無制動惰性走行として、変速機5のギヤ段をニュートラルに変速したニュートラル惰性走行をC
NEU、一方、車両に制動力を付与する制動力付与惰性走行として、エンジンブレーキにより車両に制動力を付与するアクセルオフ惰性走行をC
OFFとして区別する。
【0035】
更に、以下では、前方道路に符号FR1〜FR8を付与することとする。例えば、
図3における車両1の現在位置をA地点とすると、前方道路FR1は、そのA地点からC地点までの道路のことである。また、
図5における車両1の現在位置をK地点とすると、前方道路FR6は、K地点からM地点までの道路のことである。
【0036】
図1に示すように、この実施の形態の自動走行装置2が搭載される車両1においては、エンジン3の動力は、クラッチ4を経由して変速機(トランスミッション)5に伝達され、さらに、変速機5より推進軸(プロペラシャフト)6を介して作動装置(デファレンシャルギヤ)7に伝達され、作動装置7より駆動軸(ドライブシャフト)8を介して車輪9に伝達される。これにより、エンジン3の動力が車輪9に伝達され、車両1が走行する。
【0037】
この実施の形態の自動走行装置2は、エンジン3の出力、クラッチ4の断接、及び変速機5の変速を制御して、車両1を自動に走行させる装置であり、複数の制御装置によりそれらを制御している。制御装置としては、エンジン3の出力を制御するエンジン用ECU(エンジン用制御装置)10と、クラッチ4の断接及び変速機5の変速を制御する動力伝達用ECU(動力伝達用制御装置)11と、車両1の自動走行を制御する自動走行制御装置12を備えている。これらのエンジン用ECU10と動力伝達用ECU11と自動走行制御装置12は、電気回路によってそれぞれの担当している電気的な制御を行うマイクロコントローラである。そして、これらのエンジン用ECU10と動力伝達用ECU11と自動走行制御装置12は、車載ネットワークにより相互に接続され、必要なデータや制御信号を相互に通信している。
【0038】
また、この自動走行装置2は、図示しないダッシュボードに目標車速設定装置13と増減値設定装置14を備え、それら目標車速設定装置13と増減値設定装置14は、自動走行制御装置12に接続される。
【0039】
この目標車速設定装置13は、車両1の自動走行が開始される前に、運転手に操作されて、車両1の自動走行時の目標車速V’が設定される装置である。運転手により目標車速設定装置13に目標車速V’が設定されると、その目標車速V’は自動走行制御装置12に送信され、自動走行制御装置12に記憶される。
【0040】
また、増減値設定装置14は、車両1の自動走行が開始される前で、且つ目標車速V’が設定された後に、運転手に操作されて、車両1の自動走行時の速度減少値−va及び速度増加値+vbの両方が設定される装置である。運転手により増減値設定装置14に速度減少値−va及び速度増加値+vbの両方が設定されると、その速度減少値−va及び速度増加値+vbは自動走行制御装置12に送信され、自動走行制御装置12に記憶される。そして、目標車速V’に速度減少値−va及び速度増加値+vbのそれぞれを加算して下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’を算出して、記憶する。
【0041】
この目標車速V’と速度減少値−va及び速度増加値+vbは、運転手が別々に任意の値にそれぞれ設定することができる。例えば、目標車速V’を80km/hとし、速度減少値−vaを−5km/hとし、及び速度増加値+vbを+10km/hとした場合は、下限目標車速Va’は75km/hとなり、上限目標車速Vb’は90km/hとなる。なお、この速度減少値−va及び速度増加値+vbは、ゼロに設定してもよい。
【0042】
この下限目標車速Va’及び上限目標車速Vb’は車両1の自動走行時に運転手が許容することができる車速Vの範囲となる。
【0043】
そして、この自動走行装置2は、道路状況取得装置20と車両状況取得装置30を備え、自動走行制御装置12に、それらの装置を用いて、前方道路の道路状況を取得する道路状況取得手段M1と、車両1の車両状況を取得する車両状況取得手段M2と、前方道路の道路状況と車両状況に基づいて前方道路を惰性走行する場合を予測する惰性走行予測手段M3とを備えると共に、惰性走行予測手段M3に従って惰性走行の制御を行う惰性走行制御手段M4と目標車速維持走行の制御を行う目標車速維持走行制御手段M5を備えて構成される。
【0044】
道路状況取得装置20は、前方道路を決定し、その前方道路の道路状況を取得するための装置であり、この実施の形態では、例として、衛星測位システム(GPS)との通信機である現在位置取得装置21と、走行中の天候を取得する天候取得装置22と、前走車や並走車などの周囲の走行車両との距離や車速差を検知する周囲センサ23を備える。
【0045】
その道路状況取得装置20を使用して前方道路の道路状況を取得する道路状況取得手段M1は、前方道路を決定し、前方道路で車両1を自動走行させるために必要となる情報を取得する手段である。詳しくは、現在位置取得装置21の取得した現在位置から、予め記憶させておいた地図データなどから前方道路を決定すると共に、取得される前方道路の道路勾配と前方道路に設けられたカーブと信号の有無を取得する。また、天候取得装置22から取得した現在の天候状況から類推された前方道路の路面状況(凍結路面や冠水路面など)を取得する。加えて、周囲センサ23の検知した情報から周囲の走行車両との距離や車速差などを取得する手段である。
【0046】
なお、この前方道路は、その線形(勾配やカーブ)の状況によって区間の長さを決めるようにするとよい。例えば、
図3に示す前方道路FR1は、少なくともA地点から登坂路の終点(頂上)までを含むとよく、A地点から登坂路の終点を経由してC地点まで含むことが好ましい。また、
図5に示す前方道路FR5のように、ある程度降坂路が続く場合は、その降坂路の終点まで含むことが望ましい。
【0047】
車両状況取得装置30は、車両1の車両状況を取得するための装置であり、この実施の形態では、例として、アクセルペダル31、ブレーキペダル32、シフトレバー33、ターンシグナルスイッチ34、及び車両1の車速Vを検知する車速センサ35を含む。また、エンジン用ECU10と動力伝達用ECU11も車両状況取得装置30の一種とする。
【0048】
その車両状況取得装置30を使用して車両1の車両状況を取得する車両状況取得手段M2は、車両1を自動走行させるために必要な情報を取得する手段である。詳しくは、車速センサ35で検知された車速V、アクセルペダル31、ブレーキペダル32、シフトレバー33、及びターンシグナルスイッチ34などの操作や、エンジン用ECU10及び動力伝達用ECU11で使用されるエンジン3の出力情報や、車両1の重量W、及び変速機5のギヤ段を取得する手段である。
【0049】
なお、道路状況取得手段M1と車両状況取得手段M2は、上記の構成に限定されずに、それぞれ周知の技術を用いることもでき、取得する情報に合わせて道路状況取得装置20や車両状況取得装置30に設けられる装置を変更したり、増やしたりできる。
【0050】
惰性走行予測手段M3は、道路状況と車両状況に基づいて、前方道路の走行を惰性走行とすると予測した場合の予測車速が下限目標車速Va’を下回るか否かを判断し、予測車速が下限目標車速Va’を下回らない場合に惰性走行制御手段M4を実施し、予測車速が下限目標車速Va’を下回る場合は目標車速維持走行制御手段M5を実施する手段である。
【0051】
詳しくは、前方道路の走行を惰性走行とすると予測した場合の予測車速が、上限目標車速Vb’と下限目標車速Va’との間に収まるか否かを判断し、予測車速が下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まる場合は、惰性走行制御手段M4を実施し、予測車速が下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まらない場合は、目標車速維持走行制御手段M5を実施する手段である。
【0052】
また、この惰性走行予測手段M3は、惰性走行予測手段M3における予測車速が下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まるように、予測中の惰性走行を、車両1の走行に制動力を付与するアクセルオフ惰性走行C
OFF(有制動惰性走行)と、車両1の走行に制動力を付与しないニュートラル惰性走行C
NEU(無制動惰性走行)のどちらか一方から選択する惰性走行選択手段M6を備えて構成される。
【0053】
この惰性走行選択手段M6は、予測中の惰性走行をニュートラル惰性走行C
NEUとした場合の予測車速が下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まらない場合は、予測中の惰性走行としてアクセルオフ惰性走行C
OFFを選択し、又は、予測中の惰性走行をアクセルオフ惰性走行C
OFFとした場合の予測車速が下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まらない場合は、予測中の惰性走行としてニュートラル惰性走行C
NEUを選択する手段である。
【0054】
惰性走行予測手段M3の実施中に、惰性走行選択手段M6が実施されると、再度、前方道路の走行を惰性走行選択手段M6で選択されたアクセルオフ惰性走行C
OFFとニュートラル惰性走行C
NEUのどちらか一方とする場合を予測する。
【0055】
この惰性走行予測手段M3の一例について、
図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。この
図2に示すフローチャートは、目標車速維持走行が行われている場合の例であり、本発明の惰性走行予測手段M3はこれに限定されない。
【0056】
まず、道路状況取得手段M1が、前方道路を決定するステップS10を行う。次に、前方道路の道路状況を取得するステップS20を行う。次に、車両状況取得手段M2が、車両状況を取得するステップS30を行う。
【0057】
次に、惰性走行予測手段M3が、取得された道路状況と車両状況に基づいて、前方道路の走行をニュートラル惰性走行C
NEUとする場合を予測するステップS40を行う。次に、予測車速が下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まるか否かを判断するステップS50を行う。このステップS50で、予測車速が下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まると判断すると、次に、惰性走行制御手段M4を実施させて、ニュートラル惰性走行C
NEUを開始するステップS60を行って、完了する。
【0058】
ステップS50で、予測車速が下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まらないと判断すると、次に、惰性走行選択手段M6を実施して、アクセルオフ惰性走行C
OFFを選択するステップS70を行う。次に、前方道路の走行をアクセルオフ惰性走行C
OFFとする場合を予測するステップS80を行う。次に、予測車速が下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まるか否かを判断するステップS90を行う。このステップS90で、予測車速が下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まると判断すると、次に、惰性走行制御手段M4を実施させて、アクセルオフ惰性走行C
OFFを開始するステップS100を行って完了する。
【0059】
ステップS90で、予測車速が下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まらないと判断すると、次に、目標車速維持走行制御手段M5を実施して、目標車速維持走行を開始するステップS110を行って、完了する。
【0060】
なお、上記の惰性走行予測手段M3が、例えば、アクセルオフ惰性走行C
OFFを行っている最中に実施される場合は、ステップS40及びステップS60と、ステップS80及びステップS100を入れ替え、ステップS70をニュートラル惰性走行C
NEUを選択するステップとしてもよい。
【0061】
惰性走行制御手段M4は、惰性走行予測手段M3で、予測車速が下限目標車速Va’を下回らない、詳しくは、予測車速が下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まると判断された場合に、前方道路の走行をエンジン3の燃料噴射を停止した惰性走行とする制御を行う手段である。この前方道路の走行を惰性走行とする制御は、エンジン用ECU10にエンジン3の燃料噴射を停止するように指示を送る制御である。
【0062】
また、惰性走行予測手段M3で、惰性走行選択手段M6が実施された場合は、エンジン用ECU10にエンジン3の燃料噴射を停止するように指示を送る制御に加えて、惰性走行選択手段M6で選択されたアクセルオフ惰性走行C
OFFとニュートラル惰性走行C
NEUのどちらか一方に合わせて、変速機5をニュートラル及び所定のギヤ段のどちらかに変速するように指示を送る制御が追加される。
【0063】
加えて、この惰性走行制御手段M4は、アクセルオフ惰性走行C
OFF中の車速Vを目標車速V’よりも速い速度に設定した上限目標車速Vb’を超えない最高車速V
MAXに維持する惰性走行最高車速維持手段M7を備えて構成される。
【0064】
この惰性走行最高車速維持手段M7は、詳しくは、
図1に示す変速機5のギヤ段を最高車速V
MAXに最適なポジションにシフトすると共に、制動装置40により車両1に制動力を付与して、惰性走行中の車速Vが上限目標車速Vb’を上回らないようにして、最高車速V
MAXを維持する手段である。
【0065】
この惰性走行最高車速維持手段M7は、前方道路の道路状況と車両状況に基づいて変速機5のギヤ段を、車速Vを最高車速V
MAXに維持する最適なギヤ段に設定するように、動力伝達用ECU11に指示する制御を行う。また、この惰性走行最高車速維持手段M7は、前方道路の道路状況と車両状況に基づいて制動装置40を稼働する制御を行う。
【0066】
この制動装置40としては、フットブレーキ41、リターダ42、及びエンジン用ECU10や動力伝達用ECU11により制御される排気ブレーキなどの補助ブレーキ43があり、その制動力の大きさは順に小さくなる。よって、この惰性走行最高車速維持手段M7は、前方道路の道路状況や車両状況に応じて、フットブレーキ41とリターダ42と補助ブレーキ43の排気ブレーキのいずれか一つ、又は複数を使用するようにして、アクセルオフ惰性走行C
OFF中の車速Vを最高車速V
MAXに維持するように各制動装置40を制御する。
【0067】
目標車速維持走行制御手段M5は、惰性走行予測手段M3で、予測車速が下限目標車速Va’を下回る、詳しくは、予測車速が下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まらないと判断された場合に、前方道路の走行を目標車速維持走行とする制御を行って、車速Vを目標車速V’に近づけるようにする手段である。
【0068】
また、惰性走行制御手段M4の実施中の惰性走行中の車速Vが下限目標車速Va’を下回った、詳しくは、車速が下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まらなかった場合に、前方道路の走行を目標車速維持走行とする制御を行って、車速Vを目標車速V’に近づけるようにする手段である。
【0069】
この前方道路の走行を目標車速維持走行とする制御は、予測車速が下限目標車速Va’を下回ると判断された場合と惰性走行中の車速Vが下限目標車速Va’を下回った場合は、エンジン用ECU10にエンジン3の燃料噴射を開始するように指示を送ると共に、変速機5のギヤ段を所定のギヤ段にするように指示を送る制御である。これにより、エンジン3の出力を車輪9に伝達し、車速Vを増加させて、目標車速V’に近づける。
【0070】
一方、この前方道路の走行を目標車速維持走行とする制御は、予測車速が上限目標車速Vb’を上回ると判断された場合と惰性走行中の車速Vが上限目標車速Vb’を上回った場合は、制動装置40を使用する制御である。この場合は、惰性走行を維持しながら、各制動装置40を制御して、車両1に制動力を付与し、車速Vを減少させて、目標車速V’に近づける。
【0071】
そして、本発明に係る実施の形態の車両1の自動走行方法は、前方道路の道路状況と、車速を含む車両状況に基づいて、前方道路の走行を惰性走行とすると予測した場合の予測車速が下限目標車速Va’を下回らないと判断したときに、前方道路の走行を惰性走行とすることを特徴とする方法である。
【0072】
この車両1の自動走行方法について、
図3〜
図6を参照しながら説明する。
【0073】
図3に示すように、車両1の現在位置をA地点とし、そして、すでにZ地点の前で、目標車速維持走行制御手段M5を実施して、車両1の走行を目標車速維持走行としているものとする。A地点からC地点までの前方道路FR1は登坂路の後に降坂路がある道路である。A地点で惰性走行予測手段M3を実施すると、前方道路FR1の道路状況と車両1の車両状況に基づいて前方道路FR1の登坂路と降坂路の両方をニュートラル惰性走行C
NEUとすると予測した場合の予測車速v1が、下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まるか否かを判断する。
【0074】
実際には、前方道路FR1の降坂路では重力加速度による加速が見込まれるため、前方道路FR1の降坂路に到達するまでに、つまりB地点に到達するまでにニュートラル惰性走行C
NEUにより減少する予測車速v1が下限目標車速Va’を下回る否かを判断する。そして、予測車速v1が下限目標車速Va’を下回らないと判断した場合は、惰性走行制御手段M4を実施して、前方道路FR1の走行をニュートラル惰性走行C
NEUとする。
【0075】
また、C地点からD地点までの前方道路FR2は降坂路である。C地点で惰性走行予測手段M3を実施すると、前方道路FR2をニュートラル惰性走行C
NEUとすると予測した場合の予測車速v2が、上限目標車速Vb’を上回ると判断する。そして、目標車速維持走行制御手段M5を実施して、前方道路FR2の走行を目標車速維持走行とする。
【0076】
このとき、予測車速v2が上限目標車速Vb’を上回ると判断された場合のため、ニュートラル惰性走行C
NEUを終了し、エンジンブレーキの掛かるアクセルオフ惰性走行C
OFFに切り換える。そして、アクセルオフ惰性走行C
OFFを維持しながら、制動装置40を使用する制御を行う。この制動装置40を使用する制御は、エンジン用ECU10に図示しない排気通路に設けたシャッターバルブを閉じる制御信号を送ると共に、動力伝達用ECU11にギヤ段をニュートラルから所定のギヤ段に変速する制御信号を送る制御や、フットブレーキ41とリターダ42から車両1に負荷を与えるようにする制御のいずれか又は複数である。これにより、制動装置40による制動が開始され、車速Vは減少して、目標車速V’に近づく。
【0077】
よって、
図3において、区間L1は、燃料を消費して、車両1に駆動力を付与する区間で、区間L2は燃料を消費せずに、重力ポテンシャルエネルギーと運動エネルギーを交互に変換する区間で、区間L3は燃料を消費せずに、重力ポテンシャルエネルギーを運動エネルギーに変換すると共に、車両1に制動力を付与する区間となる。
【0078】
図4に示すように、E地点からI地点までの前方道路FR3は、登坂路の後に降坂路がある道路である。E地点で惰性走行予測手段M3を実施して、前方道路FR3の走行をニュートラル惰性走行C
NEUとすると予測した場合の予測車速v3が、下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まると判断する。次に、惰性走行制御手段M4を実施して、前方道路FR3の走行をニュートラル惰性走行C
NEUとする。
【0079】
ニュートラル惰性走行C
NEU中のF地点で、惰性走行予測手段M3で行われた予測に反して、車両1の前方を走行している前走車の車速が遅く、車両1が前走車に接近し過ぎた場合に、車両1の車速Vを一時的に減少する制御などが行われ、G地点で、車速Vは下限目標車速Va’を下回る。
【0080】
このとき、目標車速維持走行制御手段M5を実施して、ニュートラル惰性走行C
NEUを終了して、目標車速維持走行を開始する。車速Vが下限目標車速Va’を下回ったため、エンジン3に燃料噴射を行ってエンジン3の始動を開始する。これにより、エンジン3の動力が車輪9に伝達されて、車速Vは目標車速V’に近づく。
【0081】
また、H地点からI地点までの前方道路FR4は降坂路である。H地点で惰性走行予測手段M3を実施して、前方道路FR4の走行をニュートラル惰性走行C
NEUとすると予測した場合の予測車速v4が、下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まると判断する。次に、惰性走行制御手段M4を実施して、前方道路FR4の走行をニュートラル惰性走行C
NEUとする。
【0082】
加えて、I地点からJ地点までの前方道路FR5は、降坂路の道路である。I地点で惰性走行予測手段M3を実施して、前方道路FR5の走行をニュートラル惰性走行C
NEUとすると予測した場合の予測車速v5aが、上限目標車速Vb’を上回ると判断する。このとき、惰性走行選択手段M6を実施して、アクセルオフ惰性走行C
OFFを選択し、再度予測を行う。再予測では、前方道路FR5の走行をアクセルオフ惰性走行C
OFFとすると予測した場合の予測車速v5bが、上限目標車速Vb’を上回らないと判断する。次に、I地点から惰性走行制御手段M4を実施して、前方道路FR5の走行をアクセルオフ惰性走行C
OFFとする。
【0083】
よって、
図4において、区間L4は、燃料を消費して、車両1に駆動力を付与する区間で、区間L5は燃料を消費せずに、運動エネルギーを重力ポテンシャルエネルギーに変換する区間で、区間L6は、燃料を消費して、車両1に駆動力を付与する区間で、区間L7は燃料を消費せずに、重力ポテンシャルエネルギーを運動エネルギーに変換する区間で、区間L8は燃料を消費せずに、重力ポテンシャルエネルギーを運動エネルギーに変換すると共に、車両1に制動力を付与する区間となる。
【0084】
図5に示すように、車両1の現在位置をK地点とし、そして、すでにZ地点の前で、アクセルオフ惰性走行C
OFFが行われて、且つ惰性走行最高車速維持手段M7により車速Vが最高車速V
MAXに維持されているものとする。K地点からM地点までの前方道路FR6はその勾配が徐々に緩やかになる降坂路である。K地点で、惰性走行予測手段M3を実施して、前方道路FR6の走行をアクセルオフ惰性走行C
OFFとすると予測した場合の予測車速v6aが、下限目標車速Va’を下回ると判断する。このとき、惰性走行選択手段M6を実施して、惰性走行としてニュートラル惰性走行C
NEUを選択し、再度、予測を行う。再予測では、前方道路FR6の走行をニュートラル惰性走行C
NEUとすると予測した場合の予測車速v6bが、下限目標車速Va’を下回らないと判断する。そして、K地点から惰性走行制御手段M4を実施して、前方道路FR6の走行をニュートラル惰性走行C
NEUとする。
【0085】
また、M地点からN地点を経由した前方道路FR7は、略平坦路の道路である。N地点で惰性走行予測手段M3を実施して、前方道路FR7の走行をニュートラル惰性走行C
NEUとすると予測した場合の予測車速v7aが、下限目標車速Va’を下回ると判断する。次に、惰性走行選択手段M6を実施して、前方道路FR7の走行をアクセルオフ惰性走行C
OFFとすると予測した場合の予測車速v7bが、下限目標車速Va’を下回ると判断する。次に、目標車速維持走行制御手段M5を実施して、前方道路FR7の走行を目標車速維持走行とする。予測車速v7a及びv7bが下限目標車速Va’を下回ると判断した場合であるのため、エンジン3を駆動して、車速Vを目標車速V’に近づける。
【0086】
よって、
図5において、区間L9は燃料を消費せずに、重力ポテンシャルエネルギーを運動エネルギーに変換すると共に、車両1に制動力を付与する区間で、区間L10は燃料を消費せずに、重力ポテンシャルエネルギーを運動エネルギーに変換する区間で、区間L11は燃料を消費して、車両1に駆動力を付与する区間となる。
【0087】
図6に示すように、車両1の現在位置をO地点とし、そして、すでにZ地点の前で、アクセルオフ惰性走行C
OFFが行われて、且つ惰性走行最高車速維持手段M7により車速Vが最高車速V
MAXに維持されているものとする。O地点からR地点を経由する前方道路FR8はその勾配が徐々に緩やかになる降坂路の後に平坦路がある道路である。O地点で、惰性走行予測手段M3を実施して、前方道路FR8の走行をアクセルオフ惰性走行C
OFFとすると予測した場合の予測車速v8aが、下限目標車速Va’を下回ると判断する。このとき、惰性走行選択手段M6を実施して、惰性走行としてニュートラル惰性走行C
NEUを選択し、再度予測を行う。再予測では、前方道路FR8の走行をニュートラル惰性走行C
NEUとすると予測した場合の予測車速v8bが、下限目標車速Va’を下回らないと判断する。そして、O地点から惰性走行制御手段M4を実施して、前方道路FR8の走行をニュートラル惰性走行C
NEUとする。
【0088】
よって、
図6において、区間L12は燃料を消費せずに、重力ポテンシャルエネルギーを運動エネルギーに変換すると共に、車両1に制動力を付与する区間で、区間L13は燃料を消費せずに、重力ポテンシャルエネルギーを運動エネルギーに変換する区間となる。
【0089】
上記の実施の形態の自動走行装置2、それを備える車両1、及びその自動走行方法によれば、車両1の自動走行中に、道路状況と車両状況に基づいて、前方道路の走行を惰性走行とすると予測した場合の予測車速が、下限目標車速Va’を下回らないと判断したときに、前方道路が登坂路、降坂路、又は平坦路に関係なく、惰性走行を開始する。これにより、車両1の自動走行中に惰性走行による走行距離を長くすることができ、燃料消費量を低減することができる。さらに、車速Vが下限目標車速Va’を下回らないと判断したときに惰性走行を開始するため、車速Vが極端に遅くなることがなく、運行時間が大幅に増加することなく、到着時刻が遅れることを回避することができる。
【0090】
また、惰性走行予測手段M3が予測中の惰性走行をニュートラル惰性走行C
NEUとして予測する場合に、予測車速が下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まらないような場合は、予測中の惰性走行をアクセルオフ惰性走行C
OFFに切り換えて再度予測する。そして、再予測で、予測車速が下限目標車速Va’と上限目標車速Vb’の間に収まる場合は、前方道路の走行をアクセルオフ惰性走行C
OFFとする。これにより、惰性走行をより長い距離で行うことができ、燃料消費量を低減することができる。
【0091】
特に、本発明は
図3に示すように、登坂路の頂上の手前を走行中に、前方道路FR1に登坂路の後に重力加速が可能な降り勾配を有する降坂路がある前方道路の走行をニュートラル惰性走行C
NEUとすると予測した場合に、その降坂路に到達するまでに予測車速v1が下限目標車速Va’を下回らないと判断したときには、頂上の手前の登坂路からニュートラル惰性走行C
NEUを行う。これにより、坂の頂上に到達するまでは、登坂路の走行をニュートラル惰性走行C
NEUとするので、車速Vは下限目標車速Va’を下回らない範囲で減速され、頂上からの降坂路の走行をニュートラル惰性走行C
NEUとするので増速される。よって、ニュートラル惰性走行C
NEUによる走行距離を長くすることができるので、燃料消費量を低減することができる。また、前方道路FR1の走行をニュートラル惰性走行C
NEUとしても、車速Vが下限目標車速Va’を下回らないため、運行時間が大幅に増加することを回避することができる。
【0092】
なお、道路状況取得手段M1で取得される前方道路の道路状況については、上記の記載に限定されない。例えば、道路勾配の代わりに標高データを用いてもよく、また、上記のセンサや装置の他にも車両1を自動走行させるために必要な前方道路の状況を取得できるセンサや装置を設けてもよい。
【0093】
また、道路状況取得装置20の衛星測位システム(GPS)との通信機である現在位置取得装置21の代わりに、ドライブレコーダーなどの走行した道路状況を記憶する装置を設け、その記憶させた道路状況を用いてもよい。
【0094】
加えて、上記の実施の形態では、車両の走行に制動力を付与しない無制動惰性走行として、ニュートラル惰性走行C
NEUを用いたが、本発明はこれに限定されずに、例えば、クラッチ4を切断した状態のクラッチオフ惰性走行を用いてもよい。この場合は、惰性走行制御手段M4で、変速機5をニュートラルにシフトする代わりに、クラッチ4を断状態にする制御を行う。
【0095】
更に、上記の実施の形態では、車両の走行に制動力を付与する有制動惰性走行として、アクセルオフ惰性走行C
OFFを用いたが、本発明はこれに限定されずに、例えば、車両1が電動発電機を備えるハイブリッド車両の場合は、電動発電機を回生駆動して、車両に制動力を付与する回生惰性走行を用いてもよい。
【0096】
その上、上記の自動走行方法は、道路状況の中でも主に前方道路の勾配の変化について説明したが、本発明は、カーブなども考慮して、前方道路の走行を惰性走行とする場合を予測するとよい。例えば、
図5の前方道路FR6に車速Vを減少しないと曲がり切れないカーブがあれば、ニュートラル惰性走行C
NEUからアクセルオフ惰性走行C
OFFに切り換えて、カーブを曲がり切れる速度まで減少するように構成してもよい。
【0097】
そして、上記の自動走行方法は、街中では、道路状況として、信号の有無を取得すると共に、信号の切り替わるタイミングを取得するようにするとよい。例えば、信号の切り替わるタイミングを取得することで、信号による停止を避けるように車両1を自動走行させることで、より燃料消費量を低減することができる。