(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上端が開放状態で地上に立設された風防と、該風防の内側に設けられ、燃焼用空気が通過自在な空気導入部と、当該空気導入部の上に立設された煙突と、当該煙突内に設けられた複数のバーナと、を備えるグランドフレアにおいて、
上方から見たとき、前記煙突内に、前記バーナが設置されるバーナ設置領域と、前記バーナの大きさよりも広くかつ前記バーナが設置されてないバーナ非設置領域とが設けられ、
前記バーナの配列パターンが同一とされると共に前記煙突の周方向に複数配列されるバーナ群を備え、
各々の前記バーナ群にて中心を通る同一箇所に設けられた軸を基準軸とし、
各バーナ群は、上方から見たときの隣り合う前記バーナ群の前記基準軸同士の角度である群間角度の全てが異なるように配列されている
ことを特徴とするグランドフレア。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような構造のグランドフレアは、音場として見た場合には、両端が開放された開管と捉えることができる。このような音場には、バーナを励振源とすると共に管軸方向の管長(音場の長さ)に依存する音響定在波が発生する。この音響定在波は、平面波として音場の管軸方向に伝搬する。
【0005】
ここで、特許文献1に示すグランドフレアのように、管軸方向と直交する面内の全域に対して均一にバーナが配置されていると、平面波に対して面内に均一に熱源(バーナ)からエネルギの授受が行われ、熱音響自励振動と同じ現象が生じやすくなる。すなわち、平面波の全域に対して均一にエネルギの授受が行われ、これによって音場内の気体が大きく振動する。この結果、周囲の物体を共振及び振動させる低周波振動が発生する。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、グランドフレアにおいて、低周波振動による周囲への影響を低減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、上端が開放状態で地上に立設された風防と、該風防の内側に設けられ、燃焼用空気が通過自在な空気導入部と、当該空気導入部の上に立設された煙突と、当該煙突内に設けられた複数のバーナと、を備えるグランドフレアにおいて、上方から見たとき、上記煙突内に、上記バーナが設置されるバーナ設置領域と、上記バーナの大きさよりも広くかつ上記バーナが設置されてないバーナ非設置領域とが設けられている、という手段を採用する。
【0008】
また、本発明では、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、上記バーナの配列パターンが同一とされると共に上記煙突の周方向に複数配列されるバーナ群を備え、各バーナ群は、上方から見たときの隣り合う上記バーナ群同士の角度である群間角度の少なくとも1つが他と異なるように配列されている、という手段を採用する。
【0009】
また、本発明では、第3の解決手段として、上記第2の解決手段として、上記バーナ群同士が干渉しない範囲において、複数の上記群間角度の値の最小公倍数が最も大きくなるように上記バーナ群が配置されている、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上方から見たときに、煙突内に、バーナが設置されるバーナ設置領域と、バーナの大きさよりも広くかつバーナが設置されてないバーナ非設置領域とが設けられている。このため、バーナ設置領域の温度がバーナ非設置領域の温度よりも高くなり、音場の管軸と直交する平面内の温度分布が不均一となる。温度の高い領域では温度の低い領域よりも音速が高まることから、音場を伝搬する音響定在波は、上述のように温度分布が不均一となることで平面内における速度が部分的に異なることになり、平面波を保てなくなる。この結果、管軸と直交する面内において音響定在波に対して均一にエネルギの授受が行われることがなく、音場内の気体が大きく振動することを抑止することができる。したがって、本発明によれば、グランドフレアにおいて、低周波振動による周囲への影響を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係るグランドフレアAは、プラントにおいて余剰に発生した可燃性ガスを処理対象として燃焼処理するための設備である。このグランドフレアAは、例えばLNG基地に備えられ、LNGタンクで不可避的に発生するBOGガス(ボイルオフガス)を熱処理する。
【0013】
また、このグランドフレアAは、
図1及び
図2に示すように、基礎1、風防2、空気導入部3、煙突4、複数のバーナ5、供給管6及び制御弁7を少なくとも備えている。なお、上記風防2は一般に「フェンス」とも呼ばれ、また煙突4は「スタック」とも呼ばれている。また、
図1においては、後述するバーナ設置領域Raとバーナ非設置領域Rbとが図示されるように、断面図の切断面を設定している。
【0014】
基礎1は、上面が水平面となるように地上に構築されたコンクリート構造物である。風防2は、上端が開放状態で地上に立設された円筒体である。より詳しくは、風防2は、基礎1の上面との間に隙間が存在しない状態で基礎1上に垂直状態に設置された円筒体である。さらに言うと、風防2の下端は全周において基礎1の上面と接触した状態であるが、風防2の上端は完全に開放状態である。
【0015】
空気導入部3は、上記風防2の内側に当該風防2に対して同心状に構築された略円筒状の開口である。例えば、空気導入部3は、所定間隔を空けて同環状に配置された複数の支柱によって構成されており、基礎1の上面から所定の高さに亘って、また略全周に亘って燃焼用空気の通過が自在である。
【0016】
煙突4は、上記空気導入部3の上に垂直姿勢で設けられた円筒体である。この煙突4は、上記空気導入部3と同一径であり、所定の長さを有している。なお、煙突4の長さ(高さ)は、複数のバーナ5で発生する火炎が外部から視認できないように、つまり煙突4の上端が火炎の上端よりも高くなるように設定されている。
【0017】
バーナ5は、上記煙突4の内部、かつ当該煙突4内において上記空気導入部3の上端よりも若干高い位置(水平位置)に所定間隔を空けて複数設けられている。このような複数のバーナ5は、風防2の上端から風防2内に取り込まれ、さらに空気導入部3を介して煙突4内に取り込まれた燃焼用空気を酸化剤として、上述した可燃性ガス(処理対象)を燃焼させる。
【0018】
供給管6は、複数のバーナ5に可燃性ガス(処理対象)を供給する配管である。この供給管6は、風防2を貫通して当該風防2内に引き込まれ、さらに空気導入部3を介して煙突4内に引き込まれている。
【0019】
制御弁7は、風防2の外側であって供給管6に設けられている。この制御弁7は、グランドフレアAで可燃性ガスを燃焼処理する必要が生じた場合に開状態に設定され、グランドフレアAで可燃性ガスの処理が必要ない場合には閉状態に設定される。
【0020】
さらに、本グランドフレアAの特徴的構成について説明すると、
図2に示すように、上方から見たとき、煙突4内に、バーナ5が設置されるバーナ設置領域Raと、1つのバーナ5の大きさよりも広くかつバーナ5が設置されてないバーナ非設置領域Rbとが設けられている。
【0021】
バーナ非設置領域Rbは、バーナ5を設置することができるスペースに対して、意図してバーナ5を設置していない領域である。このバーナ非設置領域Rbを設けることによって、上方から見たときの煙突4内におけるバーナ5の配置が不均一なものとなっている。
【0022】
また、本グランドフレアAでは、煙突4の中心に配置される中央バーナ5aと、3つ(複数)のバーナ群10(第1バーナ群11、第2バーナ群12及び第3バーナ群13)を備えている。各バーナ群10は、5つのバーナ5からなり、これらのバーナ5の配列パターンが同一とされている。また、これらのバーナ群10は、中央バーナ5aを中心として、煙突4の周方向に配列されている。つまり、本グランドフレアAは、中央バーナ5aと、煙突4の周方向に複数配列されるバーナ群10を備えている。なお、各バーナ群10は、各々を形成するバーナ5の配置パターンが、中央バーナ5aを中心として点対称となるように配置されている。
【0023】
このようなバーナ群10が配置される領域にはバーナ5が設置され、この領域がバーナ設置領域Raとなっている。また、煙突4の周方向におけるバーナ群10同士の間の領域にはバーナ5が設置されておらず、この領域がバーナ非設置領域Rbとなっている。
【0024】
図2に示すように、各バーナ群10の中心を通る基準軸を基準軸Lとし、上方から見たときの隣り合うバーナ群10の基準軸L同士の角度を群間角度とし、第1バーナ群11の基準軸Lと第2バーナ群12の基準軸Lとの群間角度を第1群間角度θ1、第2バーナ群12の基準軸Lと第3バーナ群13の基準軸Lとの群間角度を第2群間角度θ2、第3バーナ群13の基準軸Lと第1バーナ群11の基準軸Lとの群間角度を第3群間角度θ3とする。
【0025】
本グランドフレアAにおいては、第1群間角度θ1と、第2群間角度θ2と、第3群間角度θ3とが全て異なる角度に設定されている。例えば、第1群間角度θ1を120°、第2群間角度θ2を100°、第3群間角度θ3を140°に設定する。これによって、上方から見たときの煙突4内のバーナ5の配置がより不均一なものとなる。
【0026】
なお、後に説明するが、低周波振動の発生を抑制するためには、上方から見たときの煙突4内のバーナ5の配置が出来る限り不均一であることが望ましい。このため、バーナ群10同士が干渉しない範囲において、第1群間角度θ1と、第2群間角度θ2と、第3群間角度θ3との値の最小公倍数が最も大きくなるようにバーナ群10を配置することが好ましい。
【0027】
次に、本グランドフレアAの作用・効果について詳しく説明する。
本グランドフレアAでは、可燃性ガスの燃焼処理が必要な事態となると、プラント制御装置によって制御弁7が閉状態から開状態に設定され、さらにプラント制御装置によって不図示のパイロットバーナが作動させられることによって、バーナ5が着火する。
【0028】
このようにして本グランドフレアAが稼働を開始すると、複数のバーナ5は、各々に空気導入部3を介して外気から取り入れた燃焼用空気を酸化剤として可燃性ガス(処理対象)を燃焼させるが、この燃焼に伴って煙突4内では騒音(燃焼音)が発生する。そして、この燃焼音が主因となって風防2及び煙突4が自らの固有振動数で共振して低周波振動を発する。
【0029】
ここで、本実施形態のグランドフレアAによれば、上方から見たときに、煙突4内に、バーナ5が設置されるバーナ設置領域Raと、バーナ5の大きさよりも広くかつバーナ5が設置されてないバーナ非設置領域Rbとが設けられている。このため、バーナ設置領域Raの温度がバーナ非設置領域Rbの温度よりも高くなり、煙突4の管軸と直交する平面内の温度分布が不均一となる。
【0030】
温度の高い領域では温度の低い領域よりも音速が高まることから、煙突4内を伝搬する音響定在波は、温度分布が不均一となることで平面内における速度が部分的に異なることになり、平面波を保てなくなる。すなわち、
図3(a)に示すように、バーナ設置領域Raでは温度が高く音速が高まり、バーナ非設置領域Rbでは温度が低く音速がバーナ設置領域Raよりも遅くなる。
【0031】
このため、
図3(b)に示すように、従来のグランドフレアのように、煙突4内に均一にバーナ5を設置した場合には、音響定在波Hが平面波のまま伝搬するのに対して、本グランドフレアAによれば、音響定在波Hが平面波ではなくなる。
【0032】
このような本グランドフレアAによれば、煙突4の管軸と直交する面内において音響定在波Hに対して均一にエネルギの授受が行われることがなく、音場内の気体が大きく振動することを抑止することができる。したがって、本グランドフレアAによれば、低周波振動による周囲への影響を低減することができる。
【0033】
また、本グランドフレアAにおいては、バーナ5の配列パターンが同一とされると共に煙突4の周方向に複数配列されるバーナ群10を備え、第1群間角度θ1と、第2群間角度θ2と、第3群間角度θ3とが全て異なる角度に設定されている。このため、上方から見たときの煙突4内のバーナ5の配置がより不均一なものとすることができ、気体の振動抑止効果がより高まる。なお、バーナ群10同士が干渉しない範囲において、第1群間角度θ1、第2群間角度θ2、及び第3群間角度θ3の値の最小公倍数が最も大きくなるようにバーナ群10を配置することによって、煙突4内のバーナ5の配置がより不均一なものとなり、気体の振動抑止効果がさらに高まる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態においては、複数のバーナ5からなるバーナ群10を3つ備え、各バーナ群10を煙突4の周方向に配列し、これらのバーナ群10の間をバーナ非設置領域Rbとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図4に示すグランドフレアA1に示すように、バーナ5をグループ化せずに水平方向に配列し、そのうちの複数の除くことによってバーナ非設置領域Rbを形成しても良い。
【0035】
(2)上記実施形態では、3つのバーナ群10を備えた。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、バーナ非設置領域Rbが設けられるようにバーナ群10を2つあるいは4つ以上備えるようにしても良い。
【0036】
(3)上記実施形態では、第1群間角度θ1と、第2群間角度θ2と、第3群間角度θ3とが全て異なる角度とされている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、これらの群間角度のうちいずれかが同じ値であっても良い。すなわち、本発明では、群間角度の少なくとも1つが他とことなるようにバーナ群10が配列されていれば良い。