(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明によるカム駆動機構の制御装置及び制御方法を、一眼レフカメラに適用した形態を参照して説明する。
図1に示す一眼レフカメラ(以下、カメラ)10は、カメラ本体11の前面に交換式のレンズ鏡筒12を着脱させるレンズマウント13を有し、カメラ本体11の内部にミラーボックス14が設けられている。ミラーボックス14内には可動ミラー(クイックリターンミラー)15が設けられる。
図2や
図5に示すように、可動ミラー15は、メインミラー17を支持するメインミラー保持枠の背面側にサブミラー19を支持するサブミラー保持枠18を回動可能に支持した構造になっており、ミラーボックス14の両側壁に設けた一対のメインミラーヒンジ16x(
図1、
図5ないし
図7)によってメインミラー保持枠16が軸支されている。可動ミラー15の後方にはフォーカルプレーンシャッタ(以下、シャッタ)20が設けられ、シャッタ20の後方にはイメージセンサ21が設けられている。シャッタ20は先幕と後幕で構成され、図示を省略するシャッタ駆動ユニットによって先幕と後幕を所定の時間差で走行させることにより、イメージセンサ21側に被写体光を通過させる。なお、本実施形態のカメラ10は、撮像用受光媒体にイメージセンサ21を用いるデジタルカメラであるが、撮像用受光媒体として銀塩フィルムを用いるカメラに対しても適用が可能である。
【0019】
以下の説明では、レンズマウント13にレンズ鏡筒12を取り付けた状態で、レンズ鏡筒12内の撮影レンズ12aからイメージセンサ21に至る撮像光学系の光軸Oに沿う方向をカメラ10の前後方向とし、被写体側を前方、イメージセンサ21側を後方とする。また、メインミラーヒンジ16xは光軸Oに対して直交する方向に延出されており、このメインミラーヒンジ16xの延出方向をカメラ10の左右方向(横幅方向)とする。また、
図3のようにカメラ10を正面から見て、メインミラーヒンジ16xを軸として可動ミラー15を回動させたときの該可動ミラー15上の所定箇所の変位(移動軌跡)の方向をカメラ10の上下方向とする。つまり、カメラ10の前後方向に延びる軸線と、左右方向に延びる軸線と、上下方向に延びる軸線はそれぞれが互いに直交する関係にある。
【0020】
可動ミラー15は、メインミラーヒンジ16xを軸として、シャッタ20の前方の光路上に光軸Oに対して約45度の角度で斜設されるダウン位置(
図1の実線、
図2ないし
図6)と、シャッタ20の前方の光路から退避したアップ位置(
図1の二点鎖線、
図7)の間で昇降回動される。先にカメラ10における上下方向を定義したが、この上下方向のうち、可動ミラー15のアップ位置に向かう方向が上方、可動ミラー15のダウン位置に向かう方向が下方である。
図1、
図5及び
図6に示すように、可動ミラー15を挟んで位置するミラーボックス14の両側壁のうち一方(正面から見て左側)の内面からダウン位置決め突起25が突出しており、このダウン位置決め突起25に対してメインミラー保持枠16の先端付近の一側部を当接させることで、可動ミラー15のダウン位置が定められる。ダウン位置決め突起25はミラーボックス14に対する取付位置の微調整が可能である。また、ミラーボックス14内には、可動ミラー15をアップ位置に回動させたときにメインミラー保持枠16の上面が当接可能なミラーアップ緩衝材26(
図1、
図2、
図7)が設けられている。
【0021】
図1に示すように、可動ミラー15の上方にペンタプリズム22が保持され、ペンタプリズム22の出射面の後方に接眼レンズ23が設けられている。ペンタプリズム22と接眼レンズ23はファインダ光学系を構成している。レンズ鏡筒12内の撮影レンズ12aを通してミラーボックス14内に入射する被写体光は、可動ミラー15がダウン位置にあるときには、メインミラー17により上方へ反射されてペンタプリズム22に入り、ペンタプリズム22内で反射されて接眼レンズ23を通して被写体像を観察することができる。この状態では、ペンタプリズム22の後方に設けた測光ユニット27による測光が可能である。また、可動ミラー15のダウン位置では、サブミラー18はメインミラー17に対して斜め下方に向けて突出し、サブミラー18によって被写体光の一部がミラーボックス14の下方の測距ユニット28に導かれ、被写体距離を検出することができる。
【0022】
一方、可動ミラー15がアップ位置にあるときには、撮影レンズ12aを通してミラーボックス14内に入射する被写体光はメインミラー17で反射されずにシャッタ20側に進み、シャッタ20を開くことでイメージセンサ21の受光面上に光を入射させることができる。可動ミラー15のアップ位置では、サブミラー18はメインミラー保持枠16の背面側に格納される。カメラボディの後面に設けたLCDモニタ29には、イメージセンサ21により得られる被写体の電子画像や、電子画像以外の各種の情報を表示することができる。
【0023】
図2以下を参照して、可動ミラー15の昇降回動を行わせるミラー駆動機構40の詳細を説明する。ミラー駆動機構40は、ミラーボックス14の一側部(正面から見て左側)に沿って設けられており、ミラー駆動モータ41と、ミラー駆動モータ41の回転出力軸41aの駆動力を伝達する減速ギヤ列42と、減速ギヤ列42を介して回転駆動力が伝達される端面カムギヤ(回転カム部材)43と、端面カムギヤ43によって位置制御されるスライダ(被駆動部材)44を備えている。
図3のように正面視した状態で、ミラー駆動モータ41がミラーボックス14から離間して位置し、スライダ44がミラーボックス14の側部に沿って位置し、この左右方向に離間するミラー駆動モータ41とスライダ44の上部に減速ギヤ列42と端面カムギヤ43が位置する配置になっている。ミラー駆動モータ41はカメラ10に設けた制御回路(モータ制御手段)55(
図12)によって駆動制御される。
【0024】
ミラー駆動モータ41は長手方向を上下方向に向けて配置され、回転出力軸41aを上方に向けて突出させている。回転出力軸41a上にはピニオン41bが支持されており、回転出力軸41aとピニオン41bが一体的に回転する。減速ギヤ列42は第1減速ギヤ42a、第2減速ギヤ42b及びアイドルギヤ42cで構成され、減速ギヤ列42を構成する各ギヤと端面カムギヤ43はそれぞれ、ミラー駆動モータ41の回転出力軸41aと平行な(すなわち上下方向を向く)回転軸を中心として回転可能に軸支されている。第1減速ギヤ42aと第2減速ギヤ42bはそれぞれ同軸上に位置する大径ギヤと小径ギヤからなる2段ギヤであり、第1減速ギヤ42aの大径ギヤに対してピニオン41bが噛合し、第1減速ギヤ42aの小径ギヤが第2減速ギヤ42bの大径ギヤに噛合し、第2減速ギヤ42bの小径ギヤがアイドルギヤ42cに噛合している。
図3や
図4に示すように、左右方向に離間するピニオン41bと端面カムギヤ43の間のスペースを埋めるように減速ギヤ列42が配列されている。
【0025】
図8に示すように、端面カムギヤ43は、アイドルギヤ42cに噛合するギヤ部43aの下部に筒状カム部43bを有している。筒状カム部43bには下方に向く端面カム43cが形成されている、端面カム43cは、ギヤ部43aから最も遠い下方に位置する(軸線方向の突出量が大きい)ダウン保持面C1と、ギヤ部43aに近い上方に位置する(軸線方向の突出量が小さい)アップ許容面C3との間を、螺旋状のアップ用カム面(逃げカム領域)C2とダウン用カム面(押圧カム領域)C4で接続した形態である。
図11の上部に示す端面カム43cの展開形状から分かるように、ダウン保持面C1とアップ許容面C3はそれぞれ端面カムギヤ43の回転軸に対して略直交する平面であり、アップ用カム面C2は、ダウン用カム面C4よりも傾斜が急な(端面カムギヤ43の単位回転角あたりの軸線方向の変位量が大きい)カム面になっている。アップ用カム面C2のうちアップ許容面C3への接続部分には、アップ用カム面C2から徐々に傾斜を緩くする緩斜接続面CM2が形成されている。
【0026】
減速ギヤ列42と端面カムギヤ43は、ミラーボックス14に対して固定されるミラー駆動ギヤブロックケース72(
図9に一部を示す)上に支持され、ミラー駆動ギヤブロックカバー
(支持部材)73(
図9に一部を示す)によって上側から保持されている。
ミラー駆動ギヤブロックカバー73はミラー駆動ギヤブロックケース72上に固定的に支持されており、ミラー駆動モータ41の駆動力によって回転されない。ミラー駆動モータ41もミラー駆動ギヤブロックケース72に対して固定される。
図9は、ミラー駆動ギヤブロックケース72とミラー駆動ギヤブロックカバー73による端面カムギヤ43の保持部分を示している。端面カムギヤ43は、ミラー駆動ギヤブロックケース72の一部をなす底壁部72a上に突設した固定軸72bを軸穴43dに挿入させることで回転可能に支持されており、ミラー駆動ギヤブロックカバー73の一部をなす上壁部73aによって固定軸72bに対して抜け止めされている。
【0027】
図4及び
図9に示すように、端面カムギヤ43の上面にはブラシ50が固定されている。ミラー駆動ギヤブロックカバー73には、ブラシ50に対向する位置にコード板54が取り付けられている。コード板54は制御回路55に電気的に接続されており(
図12)、ブラシ50とコード板54の接触関係によって端面カムギヤ43の回転方向位置を検出することができる。
【0028】
図10はコード板54の詳細を示している。コード板54は、グランド接点54aとミラーダウン接点54bとミラーアップ接点54cを有している。また、ミラーダウン接点54bに導通する前方接点54dと、ミラーアップ接点54cに導通する前方接点54eが形成されている。
図10ではこれらの接点を識別しやすくするためにハッチングを付している。グランド接点54aは端面カムギヤ43の回転軸を中心とする周方向に途切れなく続く円環形状を有し、ミラーダウン接点54b、ミラーアップ接点54c、前方接点54d及び前方接点54eはグランド接点54aの外側で周方向に位置を異ならせて配置されている。ブラシ50は、グランド接点54aに常時接触する内周側端子50aと、端面カムギヤ43の回転方向位置に応じてミラーダウン接点54b、ミラーアップ接点54c、前方接点54d及び前方接点54eに選択的に接触する外周側端子50bとを有する。ブラシ50の外周側端子50bがミラーダウン接点54bに接触する状態で、ミラーダウンスイッチのオン(
図11)が制御回路55に入力され、ブラシ50の外周側端子50bがミラーアップ接点54cに接触する状態で、ミラーアップスイッチのオン(
図11)が制御回路55に入力される。
【0029】
ミラー駆動モータ41は回転出力軸41aを正転及び逆転駆動させることが可能なDCモータであり、端面カムギヤ43は、ミラー駆動モータ41の正転駆動によって一回転する間に可動ミラー15の一往復の昇降動作を行わせる一回転カムギヤである。ミラー駆動モータ41を正転駆動させたときの端面カムギヤ43の回転方向を
図10に矢印V1で示す。コード板54のミラーダウン接点54bとミラーアップ接点54cはそれぞれ、この端面カムギヤ43の回転進行方向(V1)における前方に位置するエッジE1、E3と、回転進行方向の後方に位置するエッジE2、E4を有している。つまり、ミラーダウン接点54bはエッジE1からエッジE2までの回転方向範囲に形成され、ミラーアップ接点54cはエッジE3からエッジE4までの回転方向範囲に形成されている。エッジE1からエッジE2までの回転方向範囲(ミラーダウン接点54bの形成範囲)をダウン域U1、エッジE2からエッジE3までの回転方向範囲をアップ移行域U2、エッジE3からエッジE4までの回転方向範囲をアップ域U3、エッジE4からエッジE1までの回転方向範囲をダウン移行域U4と呼ぶ。
【0030】
ミラーボックス14の側面近傍には、前後方向に位置を異ならせて第1ガイドシャフト47と第2ガイドシャフト48が上下方向に延設されている。第1ガイドシャフト47の上端と下端はそれぞれミラーボックス14に対して固定的に支持され、第2ガイドシャフト48の上端と下端もミラーボックス14に対して固定的に支持される。この固定状態で第1ガイドシャフト47と第2ガイドシャフト48は互いに平行に延設される。
【0031】
スライダ44は、第1スライダ45と第2スライダ46をスライダ連結バネ53で弾性的に結合させて構成されている。
図6及び
図7に示すように、第1スライダ45は、ミラーボックス14の側面に対向する側板部45aと、この側板部45aに対してミラーボックス14から離れる方向に突出する下方壁部45b、上方壁部45c及び接続壁部45dとを有している。下方壁部45bと上方壁部45cは上下方向に離間し、かつそれぞれが前後方向に延設されており、この下方壁部45bと上方壁部45cの前部を接続壁部45dで接続している。つまり、下方壁部45b、上方壁部45c及び接続壁部45dは後方に向けて開かれたコ字状の枠部を形成している。下方壁部45bと上方壁部45cに第1ガイドシャフト47を摺動自在に挿通させるガイド孔45e、45f(
図6、
図7)が形成され、第1スライダ45は第1ガイドシャフト47に沿って上下方向に直進移動可能に案内されている。下方壁部45bの先端にはミラー押圧部45gが設けられている。ミラー押圧部45gは第2ガイドシャフト48を挟む二股状をなし、ミラー押圧部45gと第2ガイドシャフト48の係合によって第1ガイドシャフト47を中心とする第1スライダ45の回転を規制する。
【0032】
第1スライダ45にはさらに、下方壁部45bの前方に突出するバネ掛け腕45hが設けられ、下方壁部45bに対して第1ミラーアップバネ(付勢手段)51と第2ミラーアップバネ(付勢手段)52のそれぞれの下端部が係着されている。第1ミラーアップバネ51と第2ミラーアップバネ52の上端部はミラーボックス14に設けたバネ掛け部(不図示)に係着される。第1ミラーアップバネ51と第2ミラーアップバネ52は引張バネからなり、第1スライダ45を上方に向けて移動付勢する。また、第1スライダ45の上部には、上方壁部45cを挟んで接続壁部45dの後方に位置する後方壁部45iが形成され、側板部45aと上方壁部45cと接続壁部45dと後方壁部45iによって、下方に向けて開放された筒状のバネ保持部が形成されている。
【0033】
第1スライダ45の側板部45aの上部には、後方壁部45iの後方に位置するカムフォロア45jが突設されている。カムフォロア45jの上端は端面カムギヤ43の端面カム43cに対向する位置にあり(
図2、
図5)、第1ミラーアップバネ51と第2ミラーアップバネ52の付勢力はカムフォロア45jを端面カム43cに当接させる方向
(押し付ける方向)に作用する。
図5ないし
図7に示すように、カムフォロア45jは前後方向において第1ガイドシャフト47と第2ガイドシャフト48の間に位置している。カムフォロア45jは、第1ガイドシャフト47や第2ガイドシャフト48の軸線と平行な方向に長手方向を向けた突起部として形成されている。カムフォロア45jにおける端面カム43cとの当接部分は、端面カムギヤ43の回転動作に応じて、アップ用カム面C2やダウン用カム面C4との間で上下方向(第1ガイドシャフト47や第2ガイドシャフト48の軸線と平行な方向)への押圧分力が生じる形状に設定されている。なお、
図11の上部には、端面カムギヤ43を回転させたときの端面カム43cに対するカムフォロア45jの相対的な位置変化を示しているが、
図11ではカムフォロア45jを模式的に円形形状で表している。
【0034】
第2スライダ46は、第1スライダ45の側板部45a、下方壁部45b、上方壁部45c及び接続壁部45dによって囲まれる空間に位置し、第1ガイドシャフト47を摺動自在に挿通させるガイド孔46a(
図6、
図7)が形成されている。第2スライダ46には上方へ向けてガイド突起46b(
図6、
図7)が突設されており、ガイド孔46aは第2スライダ46の底面からガイド突起46bまで貫通している。第1スライダ45と同様に、第2スライダ46は第1ガイドシャフト47に沿って上下方向に直進移動可能に案内されている。第2スライダ46には第2ガイドシャフト48を挟む二股状をなすミラー押圧部46cが設けられ、ミラー押圧部46cと第2ガイドシャフト48の係合によって第1ガイドシャフト47を中心とする第2スライダ46の回転が規制される。
【0035】
第1スライダ45の上方壁部45cと第2スライダ46の上面の間には、スライダ連結バネ53が挿入されている。スライダ連結バネ53は、内側に第1ガイドシャフト47を挿通させた圧縮バネであり、下端部側の内周部にガイド突起46bを挿入させ、上端部側の外周部が第1スライダ45のバネ保持部(側板部45aと上方壁部45cと接続壁部45dと後方壁部45iにより囲まれる部分)に挿入されることにより、座屈することなく軸線方向に伸縮可能になっている。スライダ連結バネ53は、第2スライダ46を第1スライダ45の下方壁部45bに当接させる方向に付勢し、この付勢力によって第1スライダ45と第2スライダ46が弾性的に結合されてスライダ44を構成する。スライダ44は全体として第1ミラーアップバネ51と第2ミラーアップバネ52の付勢力によって上方へ移動付勢されている。スライダ連結バネ53の付勢力は、第1ミラーアップバネ51と第2ミラーアップバネ52を合わせた付勢力よりも強く設定されている。なお、本実施形態では第1ミラーアップバネ51と第2ミラーアップバネ52の2つのバネを配しているが、単独のバネによってスライダ44を上方へ移動付勢してもよい。
【0036】
メインミラー保持枠16の一側部には、ミラーシートヒンジ16xに近い位置に、スライダ44に接近する方向に突出するミラーシートボス16aが設けられている。ミラーシートボス16aは円筒状の外面形状を有する。第1スライダ45のミラー押圧部45gと第2スライダ46のミラー押圧部46cはミラーシートボス16aを挟んで上下方向に対向しており、ミラー押圧部45gがミラーシートボス16aの下方、ミラー押圧部46cがミラーシートボス16aの上方に位置する。第1スライダ45と第2スライダ46は上下方向に相対移動可能であり、この相対移動に応じてミラー押圧部45gとミラー押圧部46cの間隔が変化する。
図7のようにスライダ連結バネ53の付勢力によって第2スライダ46の下面が第1スライダ45の下方壁部45bに当接する状態でミラー押圧部45gとミラー押圧部46cの間隔が最も小さくなるが、このときのミラー押圧部45gとミラー押圧部46cの最小間隔はミラーシートボス16aの直径よりもわずかに大きく設定されている。このミラー押圧部45gとミラー押圧部46cの最小間隔とミラーシートボス16aの直径の差を最小クリアランスM1と呼ぶ。
【0037】
スライダ44は、上下方向の移動によって可動ミラー15を動作させる。スライダ44が下方に移動してミラー押圧部46cがミラーシートボス16aを下方に押圧することで可動ミラー15をダウン位置に向けて回動させ、スライダ44が上方に移動してミラー押圧部45gがミラーシートボス16aを上方に押圧することで可動ミラー15をアップ位置に向けて回動させる。
【0038】
以上の構成からなるミラー駆動機構40の動作を説明する。なお、端面カムギヤ43を
図10のV1方向に回転させるミラー駆動モータ41の回転駆動方向を正転、これと反対の回転駆動方向を逆転とする。
図2ないし
図6は可動ミラー15がダウン位置にあるミラーダウン状態を示している。スライダ44は、可動ミラー15をダウン位置に保持させるミラーダウン保持位置にある。より詳しくは、第1スライダ45は、端面カムギヤ43に形成した端面カム43cのダウン保持面C1によってカムフォロア45jが押圧されることで、第1ミラーアップバネ51と第2ミラーアップバネ52の付勢力に抗して下方に位置している。第1スライダ45に伴って第2スライダ46も下方に位置しており、ミラー押圧部46cによってミラーシートボス16aを下方に押圧することで可動ミラー15がダウン位置に保持される。スライダ連結バネ53の付勢力は、第2スライダ46が第1スライダ45から離れて上方へ単独で移動せず、ミラー押圧部46cによるミラーシートボス16aの押圧を維持できる強さに設定されている。
【0039】
図6に示すように、ミラーダウン状態では、第1スライダ45の下方壁部45b及び第2スライダ46とミラーシートボス16aとの間に前述した最小クリアランスM1よりも大きい拡大クリアランスM2があり、ミラー押圧部45gはミラーシートボス16aから下方へ離間した状態にある。つまり、可動ミラー15がダウン位置にあるとき、第2スライダ46はミラー押圧部46cとミラーシートボス16aの当接関係でそれ以上の下方への移動が規制されるのに対し、第1スライダ45は、端面カム43cのダウン保持面C1にカムフォロア45jが押圧されることによって、第2スライダ46に対して下方へ若干量大きく移動(オーバーチャージ)されている。このように第1スライダ45をオーバーチャージ位置に保持してミラーシートボス16aとの間に拡大クリアランスM2を設けることにより、ミラーシートボス16aとダウン位置決め突起25の当接による可動ミラー15のダウン位置の設定に第1スライダ45が影響を及ぼさず、高精度な可動ミラー15の位置決めを行わせることができる。特に、可動ミラー15のダウン位置では測距や測光のためにミラー位置を精密に設定する必要があり、しかもダウン位置決め突起25による位置調整分を見込んだマージンも必要とされるため、拡大クリアランスM2を設けて誤差の吸収を行うことが有効である。
【0040】
ミラーダウン状態で、カメラ10のユーザーが指などで可動ミラー15をアップ位置方向に持ち上げた場合には、ミラーシートボス16aが第2スライダ46のミラー押圧部46cを上方に押圧し、スライダ連結バネ53をチャージさせながら第2スライダ46が上方へ押し上げられる。このとき第1スライダ45は上方へ移動せず、スライダ連結バネ53によって第1スライダ45に対する第2スライダ46の差動が吸収されるため、ミラー駆動機構40に過大な負荷がかからず損傷を防ぐことができる。可動ミラー15に対する持ち上げが解除されると、スライダ連結バネ53のチャージを解放しながら第2スライダ46が下方に戻り、可動ミラー15もダウン位置に復帰する。
【0041】
ミラーダウン状態で端面カムギヤ43の端面カム43cのダウン保持面C1が第1スライダ45のカムフォロア45jに対向しているとき、コード板54に対するブラシ50の内周側端子50aと外周側端子50bの接触部分は
図10のダウン域U1に位置する。ダウン域U1では、ブラシ50の内周側端子50aがグランド接点54aに接触し、外周側端子50bがミラーダウン接点54bに接触することで、ミラーダウンスイッチがオンになる(
図11参照)。
【0042】
ミラーダウン状態においてシャッタレリーズやライブビューなどのミラーアップを伴う動作の信号が入力されると、制御回路55がミラー駆動モータ41を正転駆動させ(
図11のT1)、端面カムギヤ43を回転させる(
図10のV1方向への回転)。ダウン保持面C1は端面カムギヤ43の回転方向に所定の幅を有しており、ダウン保持面C1がカムフォロア45jに当接している間(コード板54に対するブラシ50の接触位置が
図10のダウン域U1にある間)は、ミラー駆動モータ41は一定の速度(パワー)で正転駆動される。
【0043】
端面カムギヤ43の回転によって、コード板54に対するブラシ50の外周側端子50bの接触位置がエッジE2を越えてアップ移行域U2に入ると、外周側端子50bがミラーダウン接点54bから離れてミラーダウンスイッチがオフになる(
図11のT2)。ミラーダウンスイッチがオフになると、制御回路55は、ミラー駆動モータ41を減速して正転駆動させる(
図11のT3)。
図11から分かるように、この段階で端面カム43cのダウン保持面C1がカムフォロア45jとの対向位置から退避して、アップ用カム面C2がカムフォロア45jと対向するようになる。すると、上方への移動規制が解除されたスライダ44が、第1ミラーアップバネ51及び第2ミラーアップバネ52の付勢力によってミラーダウン保持位置から上方に移動される。上方に移動するスライダ44の第1スライダ45に設けたミラー押圧部45gがミラーシートボス16aを上方に押し上げ、可動ミラー15がアップ位置に向けて回動する。スライダ44が上方に移動する際に、第2スライダ46に対する第1スライダ45のオーバーチャージが解除され、ミラーシートボス16aに対するスライダ44側のクリアランスは、前述の拡大クリアランスM2から最小クリアランスM1になる。最小クリアランスM1が確保されていることで、第1スライダ45と第2スライダ46でミラーシートボス16aを挟み込むことによる摩擦抵抗が生じず、スムーズなミラーアップ動作を行うことができる。また、可動ミラー15の駆動機構の耐久性も向上する。
【0044】
第1ミラーアップバネ51及び第2ミラーアップバネ52の付勢力に抗して端面カム43cでカムフォロア45jを押し下げていたミラーダウン状態から、第1ミラーアップバネ51及び第2ミラーアップバネ52の付勢力に応じてカムフォロア45jの上方への移動を許容するミラーアップ動作に移行すると、端面カム43cへの負荷が変化する。特に、第1ミラーアップバネ51及び第2ミラーアップバネ52の付勢力を受けるカムフォロア45jがアップ用カム面C2を上方へ押し上げようとすることで、端面カムギヤ43に対して
図11に矢印F1で示す回転アシスト方向のトルク(分力)が働く。しかし、ミラーアップ動作時にミラー駆動モータ41を減速して正転駆動させる(
図11のT3)ことで、アシストトルクによる端面カムギヤ43の加速を抑え、想定したカム曲線通りにスライダ44や可動ミラー15を動作させることができる。
【0045】
アップ用カム面C2によってスライダ44の位置を制御しながら端面カムギヤ43が回転し、ブラシ50の外周側端子50bがアップ移行域U2内を進んで前方接点54eに接触すると、ミラーアップスイッチが短時間オンになる(
図11のT4)。この信号入力を受けて、制御回路55はミラー駆動モータ41の正転駆動(減速した正転駆動)を停止させる(
図11のT5)。このときミラー駆動モータ41の両端子を短絡させてショートブレーキを効かせる。これにより端面カムギヤ43は慣性で回転しながら減速される。
図11から分かるように、ミラー駆動モータ41の正転を停止させた段階では、アップ用カム面C2のうち傾斜の緩い緩斜接続面CM2にカムフォロア45jが当接しており、続くアップ許容面C3へのカムフォロア45jの当接を滑らかに移行させることができる。
【0046】
ミラー駆動モータ41の正転停止(
図11のT5)の後で端面カムギヤ43が慣性で回転を続けると、外周側端子50bが前方接点54eを通過してミラーアップスイッチがオフになる(
図11のT6)。端面カムギヤ43がさらに回転して、コード板54に対するブラシ50の外周側端子50bの接触位置がエッジE3を越えてアップ域U3に入ると、ミラーアップスイッチが再びオンになり(
図11のT7)、これを受けて制御回路55が、ミラー駆動モータ41を短時間逆転させる逆転ブレーキをかけてから(
図11のT8)、ミラー駆動モータ41を停止させる(
図11のT9)。この状態でカムフォロア45jにアップ許容面C3が対向する位置に端面カムギヤ43が保持される。カムフォロア45jがアップ許容面C3に当接するとき、スライダ44が
図7に示すミラーアップ許容位置にあり、スライダ44のミラー押圧部45gにより押し上げられた可動ミラー15がアップ位置に達する。このミラーアップ状態では、ミラー押圧部46cとミラーシートボス16aの間に前述の最小クリアランスM1があり、アップ位置にある可動ミラー15に対してスライダ44が影響を及ぼさない。ミラーアップ状態では、シャッタ20を動作させて露光やライブビューを行うことができる。
【0047】
以上のミラーアップ動作では、カムフォロア45jの当接位置が端面カム43cのダウン保持面C1からアップ用カム面C2に変化したときに、ミラー駆動モータ41を減速して正転駆動させることによって端面カムギヤ43の加速を抑え(
図11のT3)、さらにカムフォロア45jの当接位置がアップ用カム面C2からアップ許容面C3に変化する際に、ミラー駆動モータ41のショートブレーキ(
図11のT5)や逆転ブレーキ(
図11のT8)で端面カムギヤ43を停止させている。これと異なり、ミラー駆動モータ41の減速正転駆動を行わない場合、ミラーアップ時にカムフォロア45jからのアシストトルク(
図11のF1)で端面カムギヤ43が想定よりも速く回転し、ミラーアップ完了時にスライダ44や可動ミラー15に作用する衝撃が大きくなってしまうおそれがある。ショートブレーキをかけるタイミングを早くして端面カムギヤ43の加速を抑えるという選択も可能であるが、端面カムギヤ43の回転が遅くなりすぎて可動ミラー15の動作性能(撮影駒速)に影響を及ぼしてしまう。これに対し、減速したミラー駆動モータ41の正転駆動によってミラーアップ動作を行わせることで、端面カムギヤ43の回転が遅すぎたり速すぎたりすることがなく、最適な速度で精度の高いミラーアップ動作を実現することができる。
【0048】
図11のT1からT3へのミラー駆動モータ41の駆動速度切替は、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御でのパルス波形のデューティー比を変更させる手法や、モータ駆動電圧を変化させる手法によって行うことができる。ミラー駆動モータ41のPWM制御でのデューティー比は、周期における通電と非通電の時間幅を異ならせることで変更することができる。あるいは、周期においてミラー駆動モータ41の端子間を一時的に短絡させて非通電と同様のオフ状態にさせ、その短絡の時間幅の設定によってデューティー比を変更することもできる。
図11のT1とT3でのミラー駆動モータ41の駆動速度にどの程度の差を持たせるかは、ミラー駆動モータ41の出力や、端面カムギヤ43に作用する負荷変動の大きさ等によって異なるが、PWM制御を例にすると、T3で駆動速度を落とすときにデューティー比を50パーセントよりも小さくするように設定することで、ミラー駆動モータ41に適切な減速を行わせることができる。例えば、通電と非通電の時間幅によってデューティー比を設定する場合は、通電時間に対する非通電時間の長さが1倍を超える(各周期での通電時間よりも非通電時間の方が長くなる)ようにするとよい。
【0049】
続いて、ミラーアップ状態からミラーダウン状態への移行信号を受けて、制御回路55がミラー駆動モータ41を正転させ(
図11のT10)、端面カムギヤ43が回転される。このときの端面カムギヤ43の回転方向は、端面カム43cにおけるカムフォロア45jへの対向領域をアップ許容面C3からダウン用カム面C4に変化させる方向である。コード板54に対するブラシ50の外周側端子50bの接触位置がエッジE4を越えてダウン移行域U4に入ると、外周側端子50bがミラーアップ接点54cから離れてミラーダウンスイッチがオフになる(
図11のT11)。
【0050】
ダウン用カム面C4はアップ許容面C3から離れてダウン保持面C1に接近するにつれて下方への突出量を大きくする傾斜面であるため、ダウン用カム面C4がカムフォロア45jに対向する状態でミラー駆動モータ41の正転によって端面カムギヤ43が回転すると、ダウン用カム面C4がカムフォロア45jを徐々に下方へ押圧し、第1ミラーアップバネ51と第2ミラーアップバネ52の付勢力に抗してスライダ44をミラーアップ許容位置から下方へ移動させる。このスライダ44の下方移動によって第2スライダ46のミラー押圧部46cがミラーシートボス16aを押圧し、可動ミラー15がアップ位置からダウン位置へ向けて回動される。
【0051】
図11のタイミングチャートでは、ミラーダウン動作以降のミラー駆動モータ41の動作を省略しているが、端面カムギヤ43の回転でブラシ50の外周側端子50bがダウン移行域U4内を進んで前方接点54dに接触すると、ミラーダウンスイッチが短時間オンになる。この信号入力を受けて、制御回路55はミラー駆動モータ41の正転を停止させる(モータ端子間を短絡させてショートブレーキをかける)。端面カムギヤ43は慣性で回転を続け、外周側端子50bが前方接点54dを通過してミラーダウンスイッチがオフになり、続いてコード板54に対するブラシ50の外周側端子50bの接触位置がエッジE1を越えてダウン域U1に入ると、ミラーダウンスイッチが再びオンになり、これを受けて制御回路55がミラー駆動モータ41を短時間逆転させてから停止する。この状態で、ダウン保持面C1がカムフォロア45jに当接し、スライダ44がミラーダウン保持位置に達して可動ミラー15がダウン位置に保持される。
【0052】
ミラーアップ時とは逆にミラーダウン時は、端面カムギヤ43の回転アシスト方向と反対方向の負荷(
図11に矢印F2で示す)に抗してダウン用カム面C4がカムフォロア45jを押圧する動作になるため、スライダ44から端面カムギヤ43に回転アシスト方向のトルクが作用しない。よって、ミラーダウン動作において制御回路55は、
図11のT3のような減速制御を行わずに通常速度でミラー駆動モータ41を正転駆動(
図11のT10)させる。別言すれば制御回路55は、ミラーダウン動作時のミラー駆動モータ41の正転駆動速度よりも、ミラーアップ動作時のミラー駆動モータ41の正転駆動速度の方が遅くなるように制御している。
【0053】
以上の説明から明らかなように、端面カムギヤ43の端面カム43cの使用状況(端面カムギヤ43の回転方向位置)に応じて、ミラー駆動モータ41の正転駆動の速度を変化させることによって、端面カムギヤ43の回転速度の最適化を実現している。特に、端面カムギヤ43の端面カム43cが負荷に抗してカムフォロア45jを押圧するときに比べて、カムフォロア45jから端面カムギヤ43にアシストトルクが作用するときに、ミラー駆動モータ41を減速して正転駆動させることによって、アシストトルクによる端面カムギヤ43の加速や、モータのブレーキによる端面カムギヤ43の過大な減速を伴うことなく、端面カムギヤ43を適切な速度で回転駆動させることができる。
また、ブラシ50とコード板54によって端面カムギヤ43の回転位置の変化を検知して、ミラー駆動モータ41の駆動時の速度変更とミラー駆動モータ41の駆動停止を行うため、端面カムギヤ43の回転速度をより高精度かつ確実に制御することができる。
【0054】
なお、本発明は図示実施形態に限定されるものではない。例えば、図示実施形態は一眼レフカメラのミラー駆動機構に適用したものであるが、モータの駆動力を回転カム部材を介して伝達するという基本構造を有するものであれば、他の駆動機構にも適用が可能である。一眼レフカメラの場合、ミラー駆動機構以外にシャッタチャージ機構で回転カム部材を備えたものが知られており(例えば特開2010-266618号公報)、こうしたシャッタチャージ機構に本発明を適用することができる。もちろん、一眼レフカメラ以外の機器のカム駆動機構に本発明を適用してもよい。
【0055】
また、図示実施形態では回転カム部材として端面カムギヤ43を用いているが、このような端面カム部材に代えて、回転軸を囲む形態の周面カムを有する周面カム部材を用いることもできる。一例として、前述の特開2010-266618号公報では、一眼レフカメラのミラー駆動機構とシャッタチャージ機構に周面カム部材を用いており、この周面カム部材の駆動制御に本発明を適用可能である。
【0056】
また、図示実施形態のミラー駆動モータ41は正転駆動と逆転駆動が可能なモータであるが、一方向にのみ回転駆動可能なモータを用いても本発明は適用が可能である。この場合、
図11のモータ駆動シーケンスのうちT8で示す逆転ブレーキを省略した制御で対応可能である。