(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
図1は本発明が適用された定着装置を含む画像形成装置の実施の形態の概要を示す。
同図において、画像形成装置は、記録材10に対して未定着画像Gを作製する作像装置11と、この作像装置11にて作製された未定着画像Gを保持した記録材10を搬送し、記録材10上の未定着画像Gを定着する定着装置12と、を備えている。
本例において、作像装置11は定着装置12を必要とするように未定着画像Gを作製するものであれば、電子写真方式を始めイオン流を用いた静電記録方式等適宜選定して差し支えない。
また、本実施の形態で用いられる定着装置12は、レーザ光Bmが透過可能な透明素材にて回転可能に構成される透明部材1と、透明部材1に対向して設けられ、当該透明部材1との間に接触域nを形成すると共に当該接触域nにて透明部材1と協働して記録材10を移動搬送する対向部材2と、透明部材1の
外部に設けられ、当該透明部材1と対向部材2との間の接触域n内に向けてレーザ光Bmを照射するレーザ光照射装置3と、透明部材1の内部に設けられ、接触域nにて透明部材1を対向部材2側に押し付けると共に、記録材10上の画像Gに対しレーザ光照射装置3から照射されたレーザ光Bmを接触域n内のうち記録材10の搬送方向上流側で集光する集光部材4と、を備えていればよい。
【0011】
このような技術的手段において、透明部材1は透明素材で筒状に構成されるものであれば剛体、弾性体いずれでもよい。また、透明部材1は単層構成でも差し支えないが、強度の確保、対向部材との接触域の確保、画像Gとの離型性などを考慮した複数の機能層を具備するようにしてもよい。
また、透明部材1の駆動系としては、透明部材1、対向部材2を個別に駆動するようにしてもよいし、対向部材2を駆動することで、透明部材1を追従して移動させるようにしてもよい。前者の場合は、両者の駆動ばらつきを抑制するという観点から、一方の駆動機構にワンウェイクラッチ等の追従要素を付加することが好ましく、また、後者の場合には、対向部材2との接触部を介して透明部材1を追従して移動する態様は勿論、対向部材2の駆動機構の駆動力が駆動伝達される駆動伝達機構を介して追従して移動する態様をも含む。
また、対向部材2は透明部材1との間で接触域nを確保し、透明部材1と協働して記録材10を挟持搬送するものであれば適宜選定して差し支えない。記録材10を通過したレーザ光Bmを有効に利用するという観点からすれば、対向部材2はレーザ光Bmが反射可能な反射面を有する態様が好ましい。
更に、レーザ光照射装置3は集光部材4の光入射部4aの予め決められた光入射位置Aに向けてレーザ光Bmを照射するものであればよい。集光部材4による集光性を容易にするという観点からすれば、集光部材4の光入射部4aに対し平行なレーザ光束を入射させるようにすることが好ましい。この場合、例えばレーザ光源3aからの照射されたレーザ光Bmを平行光にする光学部材(コリメータレンズ等)3bを用いるようにすればよい。
【0012】
また、集光部材4は、レンズ本体のうちレーザ光Bmが入射される光入射部4aからレーザ光Bmが出射される光出射部4bに至るまでの距離を考慮し、最適な焦点深度を具備させるように設計すればよい。
更に、集光部材4は、本来の集光作用は勿論であるが、これに加えて、接触域nでは記録材10上の画像Gを加圧する機能を備えていることを要する。このときの加圧力はレーザ光Bmの加熱エネルギとの関係で所定の定着性が得られる範囲で適宜選定すればよい。
ここで、本件の定着方式は、透明部材1と対向部材2との接触域n内で記録材10上の画像Gに対し加圧した状態でレーザ光Bmにて所定の照射域pを加熱する加圧同時加熱方式を採用することになるため、非接触方式でレーザ光Bmにて加熱定着する方式に比べて、加圧による画像Gの表面が平滑になる分、グロス度(光沢度)を上げることが容易になり、しかも、加圧による定着性が付加されることから、その分、レーザ光の照射エネルギを低減させることが可能である。
本例では、
図2(a)に示すように、接触域n内のうち記録材10の搬送方向の上流側にレーザ光Bmの照射域pを変位させているため、
図2(b)に示す比較の形態(接触域n内のうち記録材10の搬送方向の略中央Oc付近にレーザ光Bmの照射域pを設定した態様)に比べて、画像Gがレーザ光照射から接触域nを抜けるまでの距離dfが比較の形態のd0に比べて長くなり、この間に、レーザ光照射によるピーク温度Tpから剥離が可能な冷却温度Thに至るようになれば良好な定着性が得られる。このため、記録材10の搬送速度vfを比較の形態v0より速くしても、定着に要する時間内は記録材10上の画像Gを接触域n内に留めた状態で定着処理を施すことが可能である。
【0013】
次に、本実施の形態に係る定着装置の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、集光部材4の代表的態様としては、レーザ光照射装置3からのレーザ光Bmが入射される側に透明部材1の回転方向に沿った方向で湾曲する光入射部4aを有し、この光入射部4aから入射されたレーザ光Bmが透明部材1と対向部材2との接触域nに対応した部位から出射され、透明部材1の回転方向に沿った方向で湾曲する光出射部4bを有する態様が挙げられる。
本例では、集光部材4の光入射部4aの湾曲部は集光性を考慮して適宜選定するようにすればよい。また、光出射部4bは回転する透明部材1と接触する箇所であるから、透明部材1の回転方向に沿った方向で湾曲していれば両者間の接触抵抗は低減する。尚、光入射部4aが透明部材1に接触する場合には光出射部4bと同様である。
また、透明部材1と集光部材4との代表的な位置関係としては、集光部材4は、レーザ光照射装置3からのレーザ光Bmが入射される側に透明部材1の回転方向に沿った方向で湾曲する光入射部4aを有し、透明部材1に対し光入射部4aを非接触配置したものが挙げられる。
ここで、集光部材4の光入射部4aが透明部材1と非接触である態様であり、レーザ光照射装置3は透明部材1の外部、内部のいずれにも設置可能である。本例では、透明部材1は複数の張架部材にて回転可能に掛け渡され、一定の軌跡に沿って移動することが好ましい。また、透明部材1の内部スペースに余裕があることから、レーザ光照射装置3の全部又は一部の要素を組み込んだり、集光部材4の位置調整代を広く確保する等の利点がある。
更に、透明部材1と集光部材4との代表的な位置関係としては、レーザ光照射装置3は透明部材1の外側に設置され、透明部材1は筒状に構成され、集光部材4は、レーザ光照射装置3からのレーザ光Bmが入射される光入射部4a及び入射されたレーザ光Bmが出射される光出射部4bを有し、透明部材1に対し光入射部4a及び光出射部4bを接触配置したものが挙げられる。これは、集光部材4の光入射部4a、光出射部4bが透明部材1に接触する態様である。
【0014】
また、レーザ光Bmの照射域位置の代表的な設定例としては、集光部材4は、レーザ光照射装置3からのレーザ光Bmが入射される側に透明部材1の回転方向に沿った方向で湾曲する光入射部4aを有すると共に、透明部材1と対向部材2との接触域nのうち記録材10の搬送方向の略中央Ocを通る光軸中心線に対し対称的な形状を有しており、レーザ光照射装置3は、集光部材4の光入射部4aに光軸中心線に対して記録材10の搬送方向
下流側から上流側に向かって傾斜した方向のレーザ光Bmを照射することで、光軸中心線に対し記録材10の搬送方向上流側に変位した部位にレーザ光Bmの照射域pを設定するようにしたものが挙げられる。
本態様は、集光部材4の構成は代表的なレンズ部材を利用し、レーザ光照射装置3からのレーザ光Bmの照射方向を工夫することで、集光後のレーザ光Bmの照射域pの位置を設定するようにしたものである。
更に、集光部材4の代表的な支持構造としては、透明部材1の内部に設置された保持部材6に対して位置決め保持される構造が好ましい。本態様では、集光部材4は保持部材6によって位置決め保持されることから、集光部材4に照射されたレーザ光Bmは位置決めされた集光部材4を通過して所定の集光位置に集光される。
【0015】
更にまた、定着装置の好ましい態様としては、透明部材1と集光部材4とが接触する界面空気層に対しレーザ光Bmが透過可能な透明液体を充填する液体充填体(図示せず)を備えている態様が挙げられる。
ここでいう‘透明液体’は光透過性を有し、かつ、粘性抵抗の小さいもの(例えばシリコーンオイル、フッ素オイル等)が好ましい。
本例では、透明部材1と集光部材4との接触部位に界面空気層が存在すると、レーザ光Bmが界面で反射し、レーザ光Bmの照射効率が低下するのに対し、界面空気層に透明液体を充填すると、レーザ光Bmの界面空気層での反射が抑制されることから、その分、レーザ光Bmの照射効率が上がる。
そして、液体充填体の代表的態様としては、透明部材1の内面に接触して透明液体を塗布する塗布部材が挙げられる。このようにして、透明液体が透明部材1の内面に塗布されると、透明部材1と集光部材4との接触部位に狭い界面空気層が存在しても、この界面空気層には透明液体が充填されるものである。
【0016】
以下、添付図面に示す実施の形態に従って本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
−全体構成−
図3は実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す。
同図において、画像形成装置は、記録材S上に作像材料を用いて複数の色成分(本例ではイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))の画像を形成する複数の画像形成部20(具体的には20a〜20d)と、各画像形成部20にて形成された各色成分画像を記録材Sに転写する前に一時的に保持して搬送するベルト状の中間転写体30と、この中間転写体30上に保持された各色成分画像を記録材Sに一括転写する一括転写装置(二次転写装置)50と、この一括転写装置50にて記録材S上に転写された非定着画像を定着する定着装置80と、を装置筐体60内に備えている。
【0017】
ここで、各画像形成部20の基本的構成は、いずれも電子写真方式を採用したものであり、例えば表面に感光層が形成され且つ予め決められた方向に回転可能なドラム状の感光体21を有し、この感光体21の周囲には、当該感光体21を予め帯電する例えばコロトロンなどの帯電装置22と、この帯電装置22にて帯電された感光体21上に光で静電潜像を書き込むレーザ走査装置などの潜像書込装置23と、この潜像書込装置23にて書き込まれた静電潜像を各色成分トナーにて現像する現像装置24と、感光体21上の残留トナー等を清掃する清掃装置25と、を順次設置したものである。
また、中間転写体30は、複数の張架ロール31〜36に掛け渡されるベルト部材からなり、例えば張架ロール31を駆動ロールとし、他の張架ロール32〜36を従動ロールとして予め決められた方向に循環回転するようになっている。本例では、張架ロール33は中間転写体30に予め決められた張力を付与する張力付与ロールとして機能し、また、張架ロール35は一括転写装置50の一要素である対向ロール52を兼用している。
更に、各画像形成部20(20a〜20d)に対応する中間転写体30の裏面には一次転写装置40が設置されている。本例では、一次転写装置40は例えば一次転写電圧が印加される転写ロールを有し、この転写ロールと感光体21との間に一次転写電界を形成することで感光体21上の画像を中間転写体30に一次転写させるように機能するものである。
尚、符号37は中間転写体上の残留トナー等を清掃する中間転写体清掃装置である。
【0018】
更にまた、一括転写装置(二次転写装置)50は、中間転写体30の張架ロール35を対向ロール52とし、この対向ロール52に対向する中間転写体30の表面側に転写ロール51を有すると共に、対向ロール52の表面には給電ロール53を設置したものである。本例では、一括転写装置50は、給電ロール53に一括転写電圧(二次転写電圧)を印加すると共に転写ロール51を接地することで、転写ロール51と中間転写体30との間に一括転写電界(二次転写電界)を形成し、中間転写体30上の各色成分画像を記録材Sに一括転写するように機能するものである。
また、記録材Sは、記録材収容装置71に収容され、この記録材収容装置71から1枚ずつ送出された後に適宜数の搬送ロール72,73を経て位置決めロール74まで搬送され、位置決めロール74にて位置決めされた後に一括転写装置50の一括転写域へと搬送され、一括転写域を通過した後搬送ベルト75を経て定着装置80に搬送され、排出ロール76を経て図示外の記録材排出受けに排出されるようになっている。
【0019】
−定着装置−
本実施の形態では、定着装置80は、
図4に示すように、レーザ光Bmが透過可能な透明材料にて筒状に構成される回転可能な透明チューブ81と、この透明チューブ81に対向して設けられ、当該透明チューブ81との間に接触域nを形成すると共に当該接触域nにて透明チューブ81と協働して記録材Sを移動搬送する対向ロール82と、透明チューブ81の外部に設けられ、当該透明チューブ81のうち予め決められた光入射位置Aに向けてレーザ光Bmを照射するレーザ光照射装置83と、透明チューブ81の内部に設けられ、当該透明チューブ81の接触域nにて透明チューブ81を対向ロール82側に押し付けると共に、記録材S上の画像Gに対し透明チューブ81の光入射位置Aに照射されたレーザ光Bmを接触域n内にて記録材Sの搬送方向で集光する加圧兼用集光部材としてのレンズパッド90と、を備えている。
【0020】
<透明チューブ>
本例において、透明チューブ81における透明とは、レーザ光Bmの波長域において透過率が十分に高いことを意味し、レーザ光Bmを透過するものであればよく、光利用効率やレンズパッド90の加熱を防止するという観点からすれば、透過率が高ければ高いほどよい。例えば90%以上、望ましくは95%以上がよい。
また、透明チューブ81は、
図4及び
図8に示すように、3層構成になっており、必要な強度を維持するための基材層81aと、この基材層81aの上に積層される弾性層81bと、この弾性層81bの上に積層され且つ作像材料としてのトナーが離型し易い離型層81cとを有している。尚、本実施の形態では、透明チューブ81は、3層構造に限られず、その機能に応じて適宜な層を含んでいればよいことは勿論である。
ここで、基材層81aは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PU)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等のシリコーン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびそれらの混合物からなる群から選択される材料により構成される。
また、弾性層81bは、LSRシリコーンゴム、HTVシリコーンゴム、RTVシリコーンゴム等により構成されており、レーザ光Bmを透過するとともに記録材Sの凹凸やトナーによる画像Gの段差を吸収する弾性を有していればよい。
更に、離型層81cは、フッ素樹脂、例えば四フッ化エチレン重合体(PTFE)、四フッ化エチレンパーフロロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等により構成されており、レーザ光Bmを透過すると共に記録材S上に形成されたトナーによる画像Gと透明チューブ81との離型を促進するものであればよい。尚、離型層81cは、弾性層81bと協働して定着画像に好ましい光沢を与える機能も有している。
【0021】
<対向ロール>
対向ロール82は、例えばアルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル等をメッキした銅板等により構成されており、透明チューブ81との間に予め決められた加圧力が作用するように配置されている。
<レーザ光照射装置>
レーザ光照射装置83は、複数のレーザ光源85がアレイ状に配列されたレーザアレイ84を有し、レーザアレイ84の各レーザ光源85から照射されたレーザ光Bmを平行光とする光学部材としてのコリメータレンズ86とを図示外の筐体内に組み込んだものであり、各レーザ光源85からのレーザ光Bmの照射位置及びその照射強度を適宜選定可能に構成されている。
【0022】
<レンズパッド>
レンズパッド90の材料としては、通常レンズに用いられるものの中で耐熱性を持つものから選択でき、例えば、各種光学用ガラス、光学用透明プラスチック樹脂等が挙げられる。光学用透明プラスチック樹脂としては、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート(PADC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PSt)、メチルメタクリレート単位とスチレン単位からなる重合体(MS樹脂)、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、フルオレン樹脂等を含む材料が挙げられる。
また、レンズパッド90は、
図4及び
図5に示すように、レーザアレイ84から照射される複数のレーザ光Bmを透過方向に向かって集光するレンズ本体91を有している。このレンズ本体91は、透明チューブ81と対向ロール82との接触域n内のうち記録材S搬送方向の略中央Ocに光軸中心線が位置するように、レーザアレイ84の長手方向に延びる長尺なレンズ部材にて構成されており、透明チューブ81の光入射位置Aに対応した部位に当該透明チューブ81の回転方向に沿った方向で湾曲する光入射部92と、透明チューブ81と対向ロール82との接触域nに対応した部位に当該透明チューブ81の回転方向に沿った方向で湾曲する光出射部93を有しており、これらの光入射部92及び光出射部93は透明チューブ81の内面に接触配置されている。
特に、本例では、光入射部92及び光出射部93は、
図8に示すように、透明チューブ81の内面の曲率半径rc以下の曲率半径r1又はr2(本例ではr1=r2)の湾曲部として形成されている。
そして、レンズパッド90の湾曲状の光入射部92の曲率半径r1、及び、レンズパッド90の光入射部92及び光出射部93の間の距離Lは、透明チューブ81の光入射位置Aから入射された平行光であるレーザ光Bmが透明チューブ81と対向ロール82との接触域nの略中央Ocよりも記録材Sの搬送方向上流側を照射域pとして集光して焦点を結ぶように予め選定されている。
更に、レンズパッド90はレンズ本体91の光入射部92及び光出射部93を除いた両側に略平行な平面部94を有しており、各平面部94の一部にはレ−ザアレイ84の長手方向に沿って延びる断面略矩形状の被位置決め溝95が一体的に形成されている。
【0023】
−透明チューブ及びレンズパッドの支持構造−
本例では、レンズパッド90は保持枠100によって透明チューブ81内に固定的に保持されている。
本例において、保持枠100は、レンズパッド90を両側方から抱き込み保持する一対の側方保持枠101,102と、レンズパッド90及び一対の側方保持枠101,102の長手方向両端部を図示外の接着剤にて固定保持する端部保持枠131,132とを有している。
ここで、側方保持枠101,102は例えばアルミニウムやステンレス鋼からなる金属や合成樹脂等を用いて一体的に形成された長尺な枠材105を有し、この枠材105には透明チューブ81の内面の曲率半径rcに略対応した曲率半径の湾曲状の案内部106と、レンズパッド90の平面部94に対向して平面状に形成された保持面108の一部にレンズパッド90の被位置決め溝95に嵌まり込むように突出して形成された断面略矩形状の位置決め突部107と、を有している。尚、側方保持枠101,102の保持面108はレンズパッド90の平面部94に対応した大きさを有しており、位置決め突部107がレンズパッド90の被位置決め溝95に嵌まり込んだとき、側方保持枠101,102の案内部106の湾曲方向両端がレンズパッド90の光入射部92、光出射部93の湾曲軌跡の延長面から突出しないように設計されている。
更に、端部保持枠131,132は、レンズパッド90及び一対の側方保持枠101,102が組み合わされた略円柱状のサブアッセンブリの両端を固定する断面円形の端部蓋体133と、この端部蓋体133の外側に隣接して当該端部蓋体133よりも小径で且つ予め決められた段差をもって張り出す案内段部134と、この案内段部134の外側に隣接して突出する断面非円形(本例では矩形)の支軸135と、を有している。
【0024】
また、
図6に示すように、透明チューブ81はその両端にエンドキャップ140(具体的には141,142)を有している。このエンドキャップ140は、透明チューブ81の両端内面に嵌まり込む端部環体143と、この端部環体143の外側に隣接して一体的に設けられ、透明チューブ81に対して回転駆動力を直接若しくは間接的に付与する環状ギア144と、を備えている。
本例では、エンドキャップ140(141,142)は、透明チューブ81の両端開口を完全に塞ぐものではなく、端部環体143及び環状ギア144の中央には連通する貫通孔145を有している。
ここで、端部環体143の貫通孔145には端部保持枠131,132の案内段部134が挿入され、端部環体143は端部保持枠131,132の案内段部134に対して滑り移動可能に回転するようになっている。また、環状ギア144の貫通孔145には端部保持枠131,132の支軸135が貫通して環状ギア144の外側に突出配置されるようになっている。
【0025】
−液体塗布具−
本実施の形態では、透明チューブ81の内面に透明液体を塗布するために透明チューブ81内に液体塗布具150が設けられている。
本例において、液体塗布具150は例えばシリコーンオイルやフッ素オイル等の透明液体が含浸されるフェルト材からなり、この液体塗布具150の取付構造は、例えば一方の側方保持枠101の案内部106の一部にレーザアレイ84の長手方向に沿って断面略矩形状の取付溝110を形成し、この取付溝110に液体塗布具150としてのフェルト材を拘束保持することで、透明チューブ81の内面に液体塗布具150を密接させ、液体塗布具150に含浸している透明液体を均等に塗布するものである。
【0026】
−透明チューブへのレンズパッド組立体、液体塗布具の組込作業−
次に、透明チューブ81内にレンズパッド90を組み込む手順について説明する。
先ず、保持枠100にレンズパッド90を保持するに際し、
図5に示すように、一対の側方保持枠101,102にてレンズパッド90を抱き込み保持した後、一対の端部保持枠131,132に対しレンズパッド90及び側方保持枠101,102の両端部を保持させ、レンズパッド90及び保持枠100が組み立てられたレンズパッド組立体120(
図6参照)を作製する。
一方、
図6に示すように、透明チューブ81の一端開口には一方のエンドキャップ140(本例では141)を装着した後、透明チューブ81の他端開口側からレンズパッド組立体120を挿入し、透明チューブ81の一方のエンドキャップ140(本例では141)の端部環体143にレンズパッド組立体120の一方の端部保持枠131の案内段部134を嵌め込み、かつ、エンドキャップ140(本例では141)の環状ギア144の貫通孔145から一方の端部保持枠131の支軸135を突出させ、レンズパッド組立体120のレンズパッド90が透明チューブ81内に完全に挿入された状態で、透明チューブ81の他端開口に他方のエンドキャップ140(本例では142)を装着し、他方のエンドキャップ140(本例では142)の端部環体143にレンズパッド組立体120の他方の端部保持枠132の案内段部134を嵌め込み、かつ、当該エンドキャップ140(本例では142)の環状ギア144の貫通孔145から他方の端部保持枠132の支軸135を突出させるようにすればよい。
更に、本例では、透明チューブ81内にレンズパッド組立体120を組み込む際に、レンズパッド組立体120に対し透明液体が含浸した液体塗布具150を予め組み込み、この状態で、透明チューブ81内にレンズパッド組立体120及び液体塗布具150を組み込むようにすればよい。
この状態で、透明チューブ81内へのレンズパッド組立体120、液体塗布具150の組込作業が終了し、レンズパッド組立体120、液体塗布具150が組み込まれた透明チューブ組立体125が完成する。
【0027】
−定着装置の駆動系−
透明チューブ組立体125が完成すると、
図7に示すように、装置筐体60の予め決められた部位に透明チューブ組立体125を組み込むようにすればよい。
このとき、透明チューブ組立体125のうち、レンズパッド組立体120は、その両端から突出した支軸135を定着装置筐体126の支持孔127に固定的に支持することで装置筐体60に対して固定設置される。
一方、透明チューブ組立体125のうち、透明チューブ81の駆動系は例えばエンドキャップ140(本例では142)の環状ギア144に駆動伝達機構160を介して駆動モータ161を接続し、駆動モータ161からの駆動力をエンドキャップ140(本例では142)を通じて透明チューブ81へと伝達するようになっている。尚、本例では、透明チューブ81の一方のエンドキャップ140にも環状ギア144が設けられており、この環状ギア144は複数の支持ギア(図示せず)で回転可能に支えられ、透明チューブ81の軸方向両端での負荷のバランスを図るようになっている。
更に、本例では、対向ロール82も透明チューブ81とは別個の駆動系を有しており、この対向ロール82の駆動系は、ギアやベルト等の駆動伝達機構170を介して駆動モータ171に接続し、駆動モータ171からの駆動力を駆動伝達機構170を通じて対向ロール82へと伝達するようになっている。
そして、本例では、透明チューブ81、対向ロール82には夫々別個の駆動系が作用していることから、透明チューブ81及び対向ロール82の接触域nで両者間に大きな速度差が生ずる懸念がある。
そこで、本実施の形態では、例えば透明チューブ81の駆動系のうち、駆動伝達機構160の一部にワンウェイクラッチ162を介在させ、接触域nで両者間に大きな速度差が生ずるような状況に至った場合に、ワンウェイクラッチ162を働かせ、接触域nでの両者間の速度差を低減させるようになっている。
尚、本例では、透明チューブ81、対向ロール82に個別に駆動系を設けるようにしているが、これに限られるものではなく、例えば対向ロール82側にのみ駆動系を具備させ、透明チューブ81については対向ロール82との接触域nで対向ロール82に追従移動させるようにしてもよい。
【0028】
−画像形成装置による作像処理−
先ず、画像形成装置にて作像処理を実施するには、図示外の作像モード選択ボタンを操作した後に、図示外のスタートスイッチをオン操作すればよい。
このとき、
図3に示すように、各画像形成部20(20a〜20d)では、各色成分のトナーによる画像が感光体21上に形成され、中間転写体30に逐次一次転写される。そして、中間転写体30に一次転写された画像は一括転写域(二次転写域)に到達した段階で一括転写装置50にて記録材Sに一括転写され、その後、記録材S上の未定着画像は定着装置80にて定着される。
【0029】
−定着装置による定着処理−
本実施の形態に係る定着装置80では、
図4及び
図8に示すように、レーザ光照射装置83のレーザアレイ84から照射されたレーザ光Bmは、コリメータレンズ86にて平行にされた後、平行化されたレーザ光Bmが透明チューブ81の光入射位置Aに照射される。
そして、透明チューブ81の光入射位置Aに照射されたレーザ光Bmは、透明チューブ81を透過した後、レンズパッド90の光入射部92からレンズ本体91を透過して光出射部93を経て再び透明チューブ81を透過し、記録材S上のトナーによる画像Gに向けて集光する。
この状態において、トナーによる画像Gはレーザ光Bmにより定着される。
【0030】
このような定着過程において、本例の定着装置80は以下のような挙動を示す。
(1)透明チューブ81の回転動作
透明チューブ81は駆動モータ161からの駆動力を駆動伝達機構160、エンドキャップ142(140)を介して受け、対向ロール82と共に回転し、両者の接触域nにて記録材Sを挟持して搬送する。
このとき、透明チューブ81は円柱状のレンズパッド組立体120の周囲に案内されて移動する。具体的には、透明チューブ81は、レンズパッド90の光入射部92、光出射部93に接触し、更に、側方保持枠101,102の案内部106に接触しながら安定的に回転する。
(2)レンズパッド90による加圧、集光動作
レンズパッド90は保持枠100を介して予め決められた位置に固定され、予め決められた曲率半径r1の湾曲状の光入射部92を有し、更に、光入射部92と光出射部93との間の距離Lを所定の長さに選定していることから、透明チューブ81の光入射位置Aに入射されたレーザ光Bmは所定の焦点深度のレンズパッド90を透過し、予め決められた集光特性にて集光する。また、所定の位置に位置決めされたレンズパッド90の光出射部93は対向ロール82に対し透明チューブ81を所定の加圧力で加圧することから、透明チューブ81と対向ロール82との接触域nでは、記録材S上のトナーによる画像Gは加圧処理を受けながらレーザ光Bmによる照射域pにて加熱処理を受ける。
【0031】
(3)透明液体の塗布動作
本例では、シリコーンオイル等の透明液体を含浸した液体塗布具150が透明チューブ81の内面に接触配置されていることから、透明チューブ81の内面には透明液体180が塗布される。
このとき、透明チューブ81の光入射位置Aでは、透明チューブ81とレンズパッド90の光入射部92とは接触配置されてはいるが、両者間には曲率度合の相違などに起因して界面空気層181が存在する。しかしながら、本実施の形態では、両者間の界面空気層181には透明液体180が充填されることから、透明チューブ81の光入射位置Aから入射されたレーザ光Bmは透明液体180を透過してレンズパッド90の光入射部92に至る。このため、透明液体180が存在しない場合には、界面空気層181でレーザ光Bmの一部が反射してしまうが、透明液体180が存在することで、この種のレーザ光Bmの反射動作が防止されることになり、その分、レーザ光Bmの照射損失が少なくなる。
また、透明液体180は透明チューブ81の内面に塗布されることから、透明チューブ81がレンズパッド組立体120の周面に接触しても、両者間の接触抵抗を抑制する潤滑剤として機能する。
更に、本実施の形態では、液体塗布具150は、透明チューブ81のうち、光入射位置Aよりも回転方向上流側で、接触域nよりも回転方向下流側に位置しているため、レンズパッド90の光入射部92に対応した界面空気層181は液体塗布具150による透明液体180の塗布位置に近く、塗布された透明液体180が良好に充填される。一方、レンズパッド90の光出射部93に対応した部位にも界面空気層181が存在するが、液体塗布具150による透明液体180の塗布位置から離れているため、適量の透明液体180が充填されることになり、当該界面空気層181でレーザ光Bmが無駄に反射することは有効に回避される。
本例では、レンズパッド90の光出射部93は対向ロール82に透明チューブ81を加圧することから、透明チューブ81のうち、レンズパッド90の光入射部92との間に広い界面空気層181が生成され易く、その分、本例のように、液体塗布具150の設置位置を選定することが好ましい。
【0032】
(4)レーザ光による照射域の選定
本例では、レーザ光Bmによる照射域pは、
図9(a)に示すように、透明チューブ81と対向ロール82との接触域nの記録材Sの搬送方向の略中央Ocに位置するレンズパッド90の光軸中心線よりも記録材Sの搬送方向上流側に選定されている。
レーザ光Bmによる照射域pの選定に際しては、レンズパッド90の形状を工夫することで集光経路を調整するようにすることは勿論可能であるが、本例では、レンズパッド90の形状としては光軸中心線を挟んで対称的なものをそのまま利用し、
図4、
図8及び
図9(a)に示すように、レーザ光照射装置83をレンズパッド90の光軸中心線に対して左側に僅かに傾斜配置し、レンズパッド90の光入射部92に当該レンズパッド90の光軸中心線に対して記録材Sの搬送方向下流側に傾斜した方向のレーザ光Bmを照射することで、レンズパッド90を介して光出射部93から出射されたレーザ光Bmを、透明チューブ81と対向ロール82との接触域nでは、レンズパッド90の光軸中心線に対し記録材Sの搬送方向上流側に変位した部位に集光させ、レーザ光Bmの照射域pを設定するという手法が採用されている。
ここで、レーザ光照射後、透明チューブ81からトナー画像を剥離しなかった場合の温度変化を調べたところ、
図9(b)に示す結果が得られた。同図は、例えばレーザ光照射条件として、0.2ms 0.81J/cm
2としたものである。
同図によれば、トナー温度は、レーザ光照射直後にピーク温度Tp(例えば200℃)に達し、1ms後には約Tp/2の温度(例えば100℃)、2ms後には約Tp/3の温度(例えば70℃)まで冷却されることが理解される。このとき、トナー画像は、レーザ光照射後1〜2msという短時間の間、透明チューブ81と対向ロール82との接触域n内にいれば、透明チューブ81に対して剥離が可能な冷却温度Th(例えば70℃〜100℃)に至ることが把握される。
今、
図9(b)に示すように、レーザ光照射後のピーク温度Tpから剥離が可能な冷却温度Thに至るまでの時間をΔtとすれば、本例の場合、
図9(a)に示すように、記録材Sの搬送速度vfは、透明チューブ81と対向ロール82との接触域n内において、レーザ光Bmの照射域pから接触域nのうち記録材Sの搬送方向下流側端に至るまでの時間tがΔt以上になるように選定されればよい。
つまり、接触域nのうち、レーザ光Bmの照射域pから記録材Sの搬送方向下流側端までの距離をdfとすれば、vf=df/Δtを満たすように、記録材Sの搬送速度vfを選定すれば、良好な定着性が得られることが理解される。
【0033】
本実施の形態に係る定着装置80は、上述したものに限られるものではなく、例えば
図10〜
図13に示すように適宜変更して差し支えない。
◎変形の形態1
本実施の形態では、レンズパッド90は、レンズ本体91に湾曲状の光入射部92、湾曲状の光出射部93、平面部94を有しているが、本変形の形態では、
図10(a)に示すように、例えば光入射部92と平面部94との境界部位を湾曲状の隅部190として形成すると共に、光出射部93と平面部94との境界部位を湾曲隅部191として形成するようにしたものである。
本例では、湾曲隅部190,191の曲率半径はレンズパッド90の光入射部92、光出射部93の曲率半径よりも小さくなっており、レンズパッド90の光入射部92、光出射部93に角隅部がなくなることから、透明チューブ81が前述した角隅部に接触せず、透明チューブ81の滑り移動性が良好に保たれる。
尚、レンズパッド90に隣接する側方保持枠101,102の案内部106と平面部108との境界部位を湾曲隅部195として形成するようにすれば、側方保持枠101,102に角隅部が無くなることから、透明チューブ81が前述した角隅部に接触せず、透明チューブ81の滑り移動性が良好に保たれる。
また、
図10(b)に示す変形の形態では、レンズパッド90の光出射部93のうちレーザ光Bmの照射域p(
図8参照)に対応した部位に当該レンズパッド90の長手方向に延びる湾曲状の突起196を形成するようにすれば、透明チューブ81を介して対向ロール82への加圧力を更に高めることが可能になり、より定着強度の高い定着処理がなされる。尚、突起196の形状、位置は図示のものに限定されるものではない。
【0034】
◎変形の形態2
本実施の形態では、レンズパッド組立体120は側方保持枠101,102及び端部保持枠131,132にて構成された保持枠100にレンズパッド90を組み込んだものであるが、これに限られるものではなく、例えば
図11(a)(b)に示すように、レンズパッド90として、断面略楔状形状のレンズ本体201を有し、このレンズ本体201の幅広側に光入射部202を形成すると共に、幅狭側に光出射部203を形成したものを用意する。
一方、保持枠100としては、円柱状部211の両端に案内段部214、支軸215を一体的に形成すると共に、円柱状部211には液体塗布具150を取り付けるための取付溝216及びレンズパッド90の形状に対応した形状の位置決め孔217を貫通したものを用意する。
本例では、レンズパッド組立体120を構成するには、保持枠100の位置決め孔217にレンズパッド90を挿入し、保持枠100の周面にレンズパッド90の光入射部202及び光出射部203を露呈させた状態で位置決め保持するようにすればよい。
尚、保持枠100としては、円柱状部211と案内段部214、支軸215とを一体に形成したものを示したが、例えば円柱状部211を含む保持枠本体と案内段部214、支軸215を含む側方保持枠とを別々に設けておき、レンズパッド組立体120を構成するときに保持枠本体と側方保持枠とを接着剤等で固着するようにしてもよい。
【0035】
◎変形の形態3
本実施の形態では、側方保持枠101,102は湾曲状の案内部106を有し、この案内部106の周面を曲面として形成したものが示されているが、これに限定されるものではなく、例えば
図12(a)(b)に示すように、側方保持枠101,102の案内部106の周面には透明チューブ81の移動方向に沿って延びる断面略円弧状の突条リブ230をレンズパッド90の長手方向に対し所定の間隔毎に配列し、透明チューブ81と側方保持枠101,102の案内部106とを突条リブ230を介して接触配置するようにしたものである。
本態様によれば、透明チューブ81とレンズパッド組立体120の周面との接触面積が低減するため、透明チューブ81回転時における透明チューブ81とレンズパッド組立体120との接触抵抗が少なく抑えられる。
尚、実施の形態1と同様な構成要素については、実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
【0036】
◎変形の形態4
本変形の形態は、
図13に示すように、実施の形態1と略同様な構成を有しているが、実施の形態1と異なり、透明チューブ組立体125として透明チューブ81の外側に一対の押さえロール240(具体的には241,242)を設けたものである。尚、実施の形態1と同様な構成要素については、実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本例において、一対の押さえロール240(241,242)は、透明チューブ81の光入射位置Aを挟む両側に設置され、透明チューブ81をレンズパッド組立体120に向けて押さえ込むものであり、金属又は合成樹脂にて透明チューブ81の長手方向に沿って長尺に構成されたロール部材で、透明チューブ81の回転に追従して回転するようになっている。
本例によれば、透明チューブ81の光入射位置Aを挟む両側には押さえロール240(241,242)が設置されていることから、透明チューブ81の光照射位置Aを含む透明チューブ81とレンズパッド90の光入射部92との間は、少なくとも一対の押さえロール240(241,242)間の領域で透明チューブ81の浮き上がりは有効に防止される。このため、透明チューブ81とレンズパッド90の光入射部92との界面空気層には透明液体が良好に充填され、透明チューブ81の浮き上がりに伴う透明液体の充填性が不良に至ることは有効に回避される。
本例では、一対の押さえロール240(241,242)の配設位置は任意ではあるが、レーザ光Bmの透過経路内での透明チューブ81の浮き上がりを有効に抑制する上では、透明チューブ81の光入射位置Aを挟む当該光入射位置Aに接近した部位を選定することが好ましい。
尚、本例では、一対の押さえロール240を設置しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、いずれか片側に押さえロール240(241又は242)を設置するようにしてもよい。また、この押さえロール240は他の機能部材(例えば駆動ロール、清掃部材など)を兼用してもよい。
【0037】
◎実施の形態2
図14は実施の形態2に係る定着装置の要部を示す説明図である。
同図において、定着装置80の基本的構成は、実施の形態1と略同様であるが、実施の形態1と異なり、透明チューブ81と対向ロール82との接触域n内で記録材Sの搬送方向に対するレーザ光Bmの照射域pの位置を適宜選定することを可能としたものである。
尚、実施の形態1と同様な構成要素については実施の形態1と同様な符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本例において、レーザ光照射装置83は、透明チューブ81が回転軌跡円と略同心の円弧状移動ラインmに沿って移動可能に設けられ、駆動モータ250からの駆動力を駆動機構251を介して伝達することで円弧状移動ラインmに沿って適宜移動するものである。
本例では、制御装置260は、例えば定着モードMfに応じて記録材Sの搬送速度vを切替選択し、これに伴って、画像形成装置の定着装置80による定着位置(記録材S上の画像に対するレーザ光Bmによる照射域pの位置)を変更するようにしたものである。
今、
図14は、実施の形態1と同様に、定着装置80によるレーザ光Bmの照射域pを透明チューブ81と対向ロール82との接触域nの記録材Sの搬送方向の略中央Oc付近に設定されているものと仮定する。この場合の記録材Sの搬送速度をv0とする。
【0038】
−高速定着モード−
今、定着モードMfとして高速定着モードを選択すると、制御装置260は、定着装置80に搬入される記録材Sの搬送速度を高速(v→v1)に切替える。
このとき、制御装置260は、
図14及び
図15に示すように、駆動系(250,251)を介してレーザ光照射装置83を円弧状移動ラインmに沿ってD1方向に移動させる。
すると、レーザ光照射装置83の姿勢が
図15中左側に傾くことから、透明チューブ81の光入射位置Aが
図15中左寄りに僅かに変位し、透明チューブ81の光入射位置Aに照射されたレーザ光Bmは、レンズパッド90を透過して透明チューブ81と対向ロール82との接触域nに集光する。
この状態において、レーザ光Bmの照射域pは、
図15及び
図17(a)に示すように、透明チューブ81と対向ロール82との接触域nの略中央Ocより記録材Sの搬送方向上流側に変位した位置に設定される。
このとき、
図9(b)に示すように、レーザ光照射後のピーク温度Tpから剥離が可能な冷却温度Thに至るまでの時間をΔtとすれば、本例の場合、
図17(a)に示すように、透明チューブ81と対向ロール82との接触域n内において、レーザ光Bmの照射域pから接触域nのうち記録材Sの搬送方向下流側端に至るまでの時間tがΔt以上になるように選定されればよいため、接触域n内のうち広い領域を使ってトナー画像を冷却することが可能になり、記録材Sの搬送速度v1が高速になったとしても、良好な定着性が得られる。
【0039】
−低速定着モード−
次に、定着モードMfとして低速定着モードを選択すると、制御装置260は、定着装置80に搬入される記録材Sの搬送速度を低速(v→v2)に切替える。
このとき、制御装置260は、
図14及び
図16に示すように、駆動系(250,251)を介してレーザ光照射装置83を円弧状移動ラインmに沿ってD2方向に移動させる。
すると、レーザ光照射装置83の姿勢が
図16中右側に傾くことから、透明チューブ81の光入射位置Aが
図16中右寄りに僅かに変位し、透明チューブ81の光入射位置Aに照射されたレーザ光Bmは、レンズパッド90を透過して透明チューブ81と対向ロール82との接触域nに集光する。
この状態において、レーザ光Bmの照射域pは、
図16及び
図17(b)に示すように、透明チューブ81と対向ロール82との接触域nの略中央Ocより記録材Sの搬送方向下流側に変位した位置に設定される。
このとき、
図9(b)に示すように、レーザ光照射後のピーク温度Tpから剥離が可能な冷却温度Thに至るまでの時間をΔtとすれば、本例の場合、
図17(b)に示すように、透明チューブ81と対向ロール82との接触域n内において、レーザ光Bmの照射域pから接触域nのうち記録材Sの搬送方向下流側端に至るまでの時間tがΔt以上になるように選定されればよいため、接触域n内のうち狭い領域で時間をかけてトナー画像を冷却することが可能になり、記録材Sの搬送速度v2が低速になったとしても、良好な定着性が得られる。特に、本例では、接触域n内のうち狭い領域で加熱されたトナー画像が移動することから、透明チューブ81や対向ロール82が不必要に加熱される懸念は少ない。
【0040】
本実施の形態では、透明チューブ81の光入射位置Aから照射されたレーザ光Bmのレンズパッド90内での透過経路はレーザ光照射装置83の移動に伴って変化することになるが、レーザ光Bmの照射域pでの集光性を保つように予め光入射部92、光出射部93の曲率を微調整しておくことが好ましい。
また、本例では、高速定着モード、低速定着モードとして夫々一例を示したが、少なくともいずれかについては複数段階に切替え、夫々に定着位置を変えるようにしてもよい。
【0041】
◎実施の形態3
図18は実施の形態3に係る定着装置の要部を示す説明図である。
尚、本実施の形態は本発明に関連する発明が適用された参考の形態である。
同図において、定着装置80は、実施の形態1,2とは異なり、レーザ光Bmが透過可能な透明材料にて構成され、複数(本例では4つ)の張架ロール285〜288にて回転可能に掛け渡される透明ベルト281と、この透明ベルト281に対向して設けられ、当該透明ベルト281との間に接触域nを形成すると共に当該接触域nにて透明ベルト281と協働して記録材Sを移動搬送する対向ロール282と、透明ベルト281の内部に設けられ、レーザ光Bmを照射するレーザ光照射装置283と、透明ベルト281の内部に設けられ、当該透明ベルト281の接触域nにて透明ベルト281を対向ロール282側に押し付けると共に、記録材S上の画像Gに対しレーザ光照射装置283から照射されたレーザ光Bmを接触域n内にて記録材Sの搬送方向で集光する加圧兼用集光部材としてのレンズパッド290と、を備えている。
本例においては、透明ベルト281は、実施の形態1の透明チューブ81と同様な透明材料にて構成されており、例えば張架ロール285〜288の一つを駆動ロールとして循環回転するようになっている。また、対向ロール282は透明ベルト281の駆動系を兼用して駆動されているが、透明ベルト281とは別の駆動系で別途駆動するようにしてもよい。更に、レーザ光照射装置283は実施の形態1のレーザ光照射装置83と略同様に構成されており、また、レンズパッド290は実施の形態1のレンズパッド90と略同様の構成を有しており、図示外の保持部材にて位置決め保持され、透明ベルト281を対向ロール282側に加圧して透明ベルト281と対向ロール282との間に接触域nを形成するようになっている。
そして、本例では、例えば実施の形態1と略同様に、レンズパッド290の光入射部292に対してレーザ光照射装置283から照射されるレーザ光Bmの照射方向を工夫することで、透明ベルト281と対向ロール282との接触域n内の略中央Ocより記録材Sの搬送方向上流側にレーザ光Bmの照射域pが設定されている。
従って、本実施の形態に係る定着装置80にあっては、記録材S上の画像Gは、透明ベルト281と対向ロール282との間の接触域nにて加圧されながら、接触域nの略中央Ocよりも記録材Sの搬送方向上流側に設定されたレーザ光Bmの照射域pにてレーザ光Bmによる加熱を受け、加圧同時加熱による定着処理が行われる。
尚、本例では、レーザ光照射装置283は透明ベルト281内に固定的に設置されているが、実施の形態2のように、レーザ光Bmの照射域pの位置を可変設定できるようにしてもよいことは勿論である。
【0042】
◎実施の形態4
図19は実施の形態4に係る定着装置の要部を示す説明図である。
同図において、定着装置80は、実施の形態3と同様に、複数(本例では2つ)の張架ロール285,286に回転可能に掛け渡された透明ベルト281を使用する態様であるが、実施の形態3と異なり、透明ベルト281の外部にレーザ光照射装置283を設置し、レーザ光照射装置283から照射されたレーザ光Bmを透明ベルト281を透過させて透明ベルト281内に導き、レンズパッド290を経て透明ベルト281と対向ロール282との間の接触域n内の略中央Ocより記録材Sの搬送方向上流側にレーザ光Bmの照射域pを設定するようにしたものである。
特に、本例では、レーザ光照射装置283から照射される平行化されたレーザ光Bmは、張架ロール285,286間に掛け渡される透明ベルト281の直線部281aに対して略直交する角度で透明ベルト281内に入射することから、透明ベルト281内に入射するときに不必要に反射する懸念は少ない。
従って、本実施の形態でも、記録材S上の画像Gは、透明ベルト281と対向ロール282との間の接触域nにて加圧されながら、接触域nの略中央Ocよりも記録材Sの搬送方向上流側に設定されたレーザ光Bmの照射域pにてレーザ光Bmによる加熱を受け、加圧同時加熱による定着処理が行われる。