(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンクリート壁とメンブレンとの間に配置されると共に内部にセカンダリバリア層を有する断熱材層と、前記セカンダリバリア層を貫通して前記コンクリート壁に固定されると共に前記メンブレンを押さえるメンブレンアンカー機構とを備える低温タンクであって、
前記メンブレンアンカー機構が、前記コンクリート壁に固定される脚部と、前記メンブレンを押さえるアンカーと、前記脚部と前記アンカーとを連結する連結部と、前記セカンダリバリア層を貫通する貫通部を覆うとともに、前記連結部の一部も包むシール部を備えることを特徴とする低温タンク。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る低温タンクの一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
図1は、本実施形態の低温タンク1の断面斜視図である。低温タンク1は、容器本体2と、平面メンブレンアンカー機構3と、三面コーナメンブレンアンカー機構4と、二面コーナメンブレンアンカー機構5と、シール部6とを備えている。
【0014】
容器本体2は、外槽を形成するコンクリート壁2aと、内槽を形成するメンブレン2bと、コンクリート壁2aの内壁面に貼付されるベーパーバリア2c(
図2参照)と、当該ベーパーバリア2cとメンブレン2bとの間に設置される保冷材層2d(断熱材層)とを備えた角型の容器である。
【0015】
コンクリート壁2aは、容器本体2の外殻を形成するコンクリートからなる壁部であり、メンブレン2b等を支える強度部材である。メンブレン2bは、内部に貯留される低温液体(例えば液化アルゴン)に直接触れる部位であり、保冷材層2dを介してコンクリート壁2aの内壁面側に設置されている。このようなメンブレン2bには、縦横に格子状に延在し、メンブレン2bの熱変形を吸収するコルゲーション2b1が設けられている。このようなメンブレン2bは、例えばステンレス鋼からなる厚さ数mmの薄板状のメンブレンパネルが溶接されることで形成されている。
【0016】
ここで容器本体2は、角型とされていることから、3面(例えば、2つの側壁面と底面、あるいは、2つの側壁面と天面)とが集まる箇所に形成されるコーナ部(以下、三面コーナ部2A)と、2面(例えば、側壁面と底面、側壁面同士、あるいは、側壁面と天面)とが集まる箇所に形成されるコーナ部(以下、二面コーナ部2B)とを有している。これらのコーナ部に配置されるメンブレンパネルは、コーナ部の形状に応じて湾曲されている。以下、コーナ部以外の領域に配置される平面上のメンブレンパネルを平面メンブレンパネルM1と称し、三面コーナ部2Aに配置されるメンブレンパネルを三面コーナメンブレンパネルM2(コーナメンブレンパネル)と称し、二面コーナ部2Bに配置されるメンブレンパネルを二面コーナメンブレンパネルM3と称する。
【0017】
ベーパーバリア2cは、コンクリート壁2aの内壁面の全域に当接して設けられる金属製の薄板部材である。このようなベーパーバリア2cは、コンクリート壁2aを透過しようとする水分等を遮蔽し、容器本体2の気密性を向上させる。
【0018】
保冷材層2dは、例えばPUF(硬質ウレタンフォーム)によって形成されており、メンブレン2bとベーパーバリア2cとの隙間を埋めている。この保冷材層2dは、外層部2d1と、内層部2d2と、充填部2d3(
図2等参照)とを備えている。外層部2d1は、保冷材層2dのコンクリート壁2a側を形成する層であり、同一の厚みの保冷パネルH1を隙間なく敷き詰めることにより形成されている。内層部2d2は、保冷材層2dのメンブレン2b側を形成する層であり、同一の厚みの保冷パネルH2を隙間なく敷き詰めることにより形成されている。充填部2d3は、外層部2d1と、内層部2d2とを敷き詰めたときに生じてしまう隙間に対して充填される部位であり、設置される隙間の形状と一致する形状とされている。このような充填部2d3としては、例えば、後述する三面コーナメンブレンアンカー機構4のベース部4bと外層部2d1との間に形成される隙間(
図2参照)に充填されるもの(以下、三面コーナ部用充填部2d4と称する)や、後述する二面コーナメンブレンアンカー機構5のベース部5bと外層部2d1との間に形成される隙間(
図4参照)に充填されるもの(以下、二面コーナ部用充填部2d5と称する)が設置されている。
【0019】
この保冷材層2dは、内部(例えば、外層部2d1と内層部2d2との間)にセカンダリバリア層を備えるものである。このセカンダリバリア層は、ガラスクロスで補強されたエポキシ樹脂等の薄膜からなる層であり、万が一メンブレン2bが破損した場合に、メンブレン2bの内部に貯留された液体が外部に漏出することを防止するセカンダリバリアとしての機能を有する。
【0020】
メンブレン2bと保冷材層2dとには、各メンブレンパネルの熱変形の中央位置に配置される貫通孔7が設けられている。これらの貫通孔7には、平面メンブレンアンカー機構3のアンカー3b、三面コーナメンブレンアンカー機構4のアンカー4e、あるいは二面コーナメンブレンアンカー機構5のアンカー5eが挿入される。
【0021】
平面メンブレンアンカー機構3は、ベーパーバリア2cを介してコンクリート壁2aの内壁面に設けられる基台3aと、基台3aに固定されると共に上記貫通孔7に挿入されるアンカー3bと、貫通孔7から露出するアンカー3bに固定されると共に平面メンブレンパネルM1を容器本体2の内部側からコンクリート壁2aに向けて押さえる押圧部品3cとを備えている。
【0022】
図2は、三面コーナメンブレンアンカー機構4を含む三面コーナ部2Aの断面図である。また、
図3は、三面コーナメンブレンアンカー機構4の押圧部品3cを除き、かつ、保冷材層2dを省略して図示した斜視図である。
【0023】
これらの図に示すように、三面コーナメンブレンアンカー機構4は、三面コーナ部2Aに設けられており、三面コーナ部2Aを形成する3つの面の各々に設けられる脚部4aと、ベース部4bと、ナット4cと、ジョイント4dと、アンカー4eと、押圧部品4fとを備えている。
【0024】
脚部4aは、コンクリート壁2aの内壁面に対して垂直方向に延在する棒状の部材であり、ベーパーバリア2cを介してコンクリート壁2aに立設されている。この脚部4aは、コンクリート壁2a側の一端部を形成する第1スタッドボルト4a1と、ベース部4b側の一端部を形成する第2スタッドボルト4a2と、中央部を形成するロングナット4a3とから構成されている。このような脚部4aは、第2スタッドボルト4a2を除く長さが、保冷材層2dの外層部2d1の厚さと略同一とされており、保冷材層2dに含まれるセカンダリバリア層を貫通してコンクリート壁2aに固定されている。
【0025】
第1スタッドボルト4a1は、ベーパーバリア2cを貫通して一端側がコンクリート壁2aに埋設されており、他端側がネジ溝を形成されてメンブレン2bよりも容器本体2の内部側に突出するように取り付けられており、ベーパーバリア2cに対して溶接されている。このような第1スタッドボルト4a1は、ネジ溝が形成された一端側がロングナット4a3の3端部に螺合されている。第2スタッドボルト4a2は、両端側にネジ溝が形成されており、ロングナット4a3の第1スタッドボルト4a1が螺合される端部と反対側の端部に螺合されると共に、ベース部4bの後述する貫通孔4b3を通じてベース部4bよりも容器本体2の内部側に突出するように取り付けられている。ロングナット4a3は、一端側に第1スタッドボルト4a1が螺合され、もう一端側に第2スタッドボルト4a2が螺合され、これらの第1スタッドボルト4a1と第2スタッドボルト4a2とを接続している。
【0026】
このように、本実施形態において脚部4aは、両端に設けられるスタッドボルト(第1スタッドボルト4a1及び第2スタッドボルト4a2)と、これらのスタッドボルトが螺合されるロングナット4a3とを有している。
【0027】
ベース部4bは、3本の脚部4aやアンカー4eが取り付けられる部位であり、3本の脚部4aの第2スタッドボルト4a2が近接する位置に設けられている。このベース部4bは、ジョイント4dを介してアンカー4eが設置される中央プレート4b1と、中央プレート4b1の縁部に設けられると共に脚部4aが連結される3つの脚部連結プレート4b2とを有している。各脚部連結プレート4b2は、三面コーナ部2Aを形成するコンクリート壁2aの各面に対向する角度で中央プレート4b1に取り付けられている。これらの脚部連結プレート4b2は、上述の保冷材層2dの外層部2d1の内層部2d2側の面に当接する位置に配置されている。また、脚部連結プレート4b2には、貫通孔4b3が設けられている。脚部4aの第2スタッドボルト4a2は、この貫通孔4b3を通過してアンカー4eが設置される側に突出されている。
【0028】
ナット4cは、脚部連結プレート4b2の貫通孔4b3からアンカー4e側に突出した第2スタッドボルト4a2に螺合されており、ワッシャを介して脚部連結プレート4b2のアンカー4e側の表面に当接されている。各脚部4aの第2スタッドボルト4a2に螺合されたナット4cが、異なる方向にベース部4bを押さえることによって、ベース部4bが固定されている。
【0029】
ジョイント4dは、ベース部4bの中央プレート4b1に取り付けられており、アンカー4eを回動可能に支持する。このジョイント4dは、アンカー4eの延在方向と直交する水平方向を軸方向とするボルトと、このボルトに螺合されてボルトと共にアンカー4eを回動可能に挟持するナットとを有する構造とされている。このようなジョイント4dに支持されることによって、アンカー4eが、アンカー4eの延在方向と直交する水平方向を中心として回動可能とされている。
【0030】
アンカー4eは、軸方向に長い円筒部材であり、先端部の内壁面に押圧部品4fを取り付けるためのネジ溝が形成されている。このアンカー4eは、根元部がジョイント4dを介してベース部4bの中央プレート4b1に取り付けられ、押圧部品4fが固定される先端が容器本体2の内側に向けて露出されるように貫通孔7に挿入されている。このアンカー4eの長さは、保冷材層2dの内層部2d2の厚さと略同一とされている。このようなアンカー4eは、ベース部4bによって支持されることにより、コンクリート壁2aから離間された状態で支持されている。
【0031】
押圧部品4fは、円盤状の本体と、本体と一体化された軸部とを備えている。本体は、一方側の面が三面コーナメンブレンパネルM2の表面形状に合わせた球面の一部形状とされており、この一方側の面が三面コーナメンブレンパネルM2に対して容器本体2の内部側から当接している。軸部は、本体の中央部に設けられており、周面にネジ溝が形成された柱状の部位である。この軸部は、アンカー4eに螺合される。この軸部をアンカー4eに螺合し、押圧部品4fを締め付けることによって、本体が三面コーナメンブレンパネルM2をコンクリート壁2aに向けて押さえつけ、これによって三面コーナメンブレンパネルM2をコンクリート壁2aに対して固定する。なお、押圧部品4fの本体の縁部は、溶接によって三面コーナメンブレンパネルM2に固定されている。
【0032】
図4は、二面コーナメンブレンアンカー機構5を含む二面コーナ部2Bの断面図である。二面コーナメンブレンアンカー機構5は、三面コーナメンブレンアンカー機構4と近い構成を有している。このため、ここでは、三面コーナメンブレンアンカー機構4との相違点について主として説明する。上述の三面コーナメンブレンアンカー機構4は、3つの面が集まる三面コーナ部2Aに設置されるため、三面コーナ部2Aを形成する面に立設される脚部4aを合計で3つ備えている。これに対して、二面コーナメンブレンアンカー機構5は、2つの面が集まる二面コーナ部2Bに設置されるため、脚部5aを2つのみ有している。
【0033】
ベース部5bは、三面コーナメンブレンアンカー機構4のベース部4bに相当する。ただし、二面コーナメンブレンアンカー機構5は、脚部5aを2つのみ備えることから、ベース部5bは、ジョイント5dが設置される中央プレート5b1(中央プレート4b1に相当)に対して、脚部連結プレート5b2(脚部連結プレート4b2に相当)が2つのみ設けられている。
【0034】
ナット5cは三面コーナメンブレンアンカー機構4のナット4cに相当し、ジョイント5dは三面コーナメンブレンアンカー機構4のジョイント4dに相当し、アンカー5eは三面コーナメンブレンアンカー機構4のアンカー4eに相当する。
【0035】
押圧部品5fは、三面コーナメンブレンアンカー機構4の押圧部品4fに相当するが、本体の二面コーナメンブレンパネルM3側が平面とされている点において押圧部品4fと異なる。また、二面コーナメンブレンアンカー機構5は、この押圧部品5fと二面コーナメンブレンパネルM3との間に設置されるスペーサ8を備えている。
【0036】
なお、例えば、保冷材層2dと平面メンブレンアンカー機構3、三面コーナメンブレンアンカー機構4あるいは二面コーナメンブレンアンカー機構5との間に形成される僅かな隙間等には、発泡性の断熱材が必要に応じて充填されている。
【0037】
シール部6は、ガラスクロスを含む接着層からなり、
図2に示すように、保冷材層2dの外層部2d1上に露出した脚部4aを包むように設けられている。またシール部6は、
図3に示す脚部連結プレート4b2の一部も包むように設けられており、脚部4aの延在方向(すなわちセカンダリバリア層を貫通する方向)から見て脚部4aに被るように設けられている。さらに、シール部6は、脚部連結プレート4b2と外層部2d1との間にも充填されている。
【0038】
このようなシール部6は、三面コーナメンブレンアンカー機構4の脚部4aがセカンダリバリア層を含む保冷材層2dを貫通することで形成される貫通部を覆い、万が一メンブレン2bが破損した場合であっても上記貫通部を介して液体が漏出することを防止する。
【0039】
なお、シール部6は、三面コーナメンブレンアンカー機構4の脚部4aが保冷材層2dを貫通することで形成される貫通部以外にも、
図4に示すように二面コーナメンブレンアンカー機構5の脚部5aが保冷材層2dを貫通することで形成される貫通部にも設けられる。さらに、不図示であるが、平面メンブレンアンカー機構3の基台3aが保冷材層2dを貫通することで形成される貫通部に対しても設けられている。
【0040】
続いて、
図5〜
図7を参照して、三面コーナメンブレンアンカー機構4の脚部4aがセカンダリバリア層を含む保冷材層2dを貫通することで形成される貫通部を覆うシール部6の形成工程について説明する。
【0041】
まず
図5(a)に示すように、三面コーナメンブレンアンカー機構4の脚部4aのみが設置された状態において、各脚部4aが挿通可能な貫通孔が形成された保冷材層2dの外層部2d1(保冷パネルH1)を配置する。
【0042】
続いて、脚部4aの第2スタッドボルト4a2を取り外した上で、
図5(b)に示すように、ロングナット4a3を避けて外層部2d1の表面に、ガラスクロスを含む接着剤6aを配置する。この接着剤6aは、硬化することでシール部6の一部となる。なお、上述のように、脚部4aは、第2スタッドボルト4a2を除く長さが、保冷材層2dの外層部2d1の厚さと略同一とされているため、第2スタッドボルト4a2を取り外すことによって、ロングナット4a3の端部が外層部2d1の表面と略同一となる。
【0043】
続いて、
図5(c)に示すように、3枚の保冷パネルH1によって形成されるコーナ部に三面コーナ部用充填部2d4を設置する。この三面コーナ部用充填部2d4は、三面コーナメンブレンアンカー機構4のベース部4bが設置される底面を有する正三角錐形状を有している。
【0044】
続いて、
図6(a)に示すように、ジョイント4d及びアンカー4eが取り付けられたベース部4bを設置する。ここでは、ベース部4bの脚部連結プレート4b2の貫通孔4b3の位置がロングナット4a3の端部と合うように、ベース部4bを設置する。
【0045】
続いて、
図6(b)に示すように、先に取り外した第2スタッドボルト4a2を、脚部連結プレート4b2の外側から再びロングナット4a3に螺合する。また、
図6(c)に示すように、ワッシャを介して第2スタッドボルト4a2にナット4cを螺合し、ベース部4bを三面コーナ部用充填部2d4に押さえつけるようにナット4cを締め付けることによってアンカー4eが固定される。
【0046】
その後、
図7に示すように、脚部4aを覆うようにガラスクロスを含む接着剤6bを配置する。なお、この接着剤6bは、2回に分けて配置し、先に配置した接着剤6bが硬化した後にさらに接着剤6bを重ねるように配置しても良い。そして、
図5(b)に示した接着剤6aと、
図7に示す接着剤6bとが硬化することによってシール部6が形成される。
【0047】
以上のような本実施形態の低温タンク1によれば、メンブレンアンカー機構(平面メンブレンアンカー機構3、三面コーナメンブレンアンカー機構4及び二面コーナメンブレンアンカー機構5)が保冷材層2dに含まれるセカンダリバリア層を貫通することで形成される貫通部がシール部6によって覆われている。このため、万が一メンブレンが破損した場合であっても、上記貫通部から液体が漏出することを防止することができる。したがって、本実施形態の低温タンク1によれば、液密性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態の低温タンク1においては、シール部6が、ガラスクロスを含む接着層からなる。このため、高いシール性を発揮することができる。
【0049】
また、本実施形態の低温タンク1においては、シール部6が、脚部4aの延在方向(すなわちセカンダリバリア層を貫通する方向)から見て脚部4aに被せて設けられている。このため、脚部4aの周囲から液体が貫通部に流れ込むことをより確実に防止することができる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。