【実施例1】
【0016】
本発明の実施例による遠心機について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る遠心機1の構成を示す断面図である。遠心機1は、分離する試料を保持して回転するロータ2と、ロータ2を収容するロータ室3と、ロータ室3へロータ2の出し入れを行うために設けられた開口部を閉塞するように開閉自在に設けられたドア5と、ドア5の開閉状態を検知するためのセンサー(図示せず)と、ロータ室3を減圧する2つの真空ポンプ(油回転真空ポンプ6と油拡散真空ポンプ7)と、ユーザによる遠心分離条件の設定操作を受け付けると共にユーザに対して運転状態等の各種情報の表示する操作表示部8と、ロータ2を回転させる駆動部であるモータ9と、ロータ室3への空気の流入を行うために設けられた開閉自在なエアリークバルブ26と、ロータ室3内部の圧力を測定する真空センサ12と、ロータ2の温度を測定する図示しない温度センサと、ボウル4を冷却することで間接的にロータ2の温度制御を行う図示しない冷却装置と、装着されたロータ2を識別するためのロータ識別センサ14と、これらを制御するための制御装置30を含んで構成される。
【0017】
ボウル4の下部には、ボウル4の内外を連通する貫通孔が設けられ、モータを有するモータ9から延びるシャフトケース9a内を通る図示されていない回転軸がシャフトケース9aと共に貫通孔を貫通し、さらに回転軸の先端の嵌合部9bにロータ2が取り付けられる。尚、貫通孔においてシャフトケース9aは図示せぬシール部材によってシールされ、ロータ室3の気密性が保持できる構造となっている。ロータ2には、試料を入れるチューブ等を挿入するための孔2aが複数形成される。本実施例では、モータ9の回転速度は、例えば最高で毎分15万回転で運転可能であり、この回転によって発生する遠心力により試料が遠心分離される。通常、大気圧下でロータ2が高速回転すると、風損によりロータ2が発熱し、空気抵抗によりロータ2の高速回転化が抑制される。このためロータ2を高速で回転させる場合は、ロータ室3内の空気を抜いて減圧または真空状態にし、風損を抑制することが重要である。
【0018】
油拡散真空ポンプ(DP)7は、吸引側が真空配管21によりロータ室3に接続され、排出側が真空配管22を介して油回転真空ポンプ(RP)6の吸引口に接続される。油拡散真空ポンプ7は内部に液体の油を備え、この油の内部での蒸発・凝縮によってロータ室3内の空気を排出させる公知の装置である。本実施例においては、ロータ室3を減圧させる真空ポンプとして、油拡散真空ポンプ7と油回転真空ポンプ6を直列に接続している。油回転真空ポンプ6の排出側は、排気に含まれるオイルミストを補足するためのオイルミストトラップ23が設けられる。
【0019】
制御装置30は、遠心機1の全体の制御をするもので、後述するマイコンや、ROM/RAM等の記憶装置を含んで構成される。制御装置30は図示しない信号線により真空センサ12および温度センサ13の信号を入力し、モータ9の回転制御や、油回転真空ポンプ6の起動・停止制御、油拡散真空ポンプ7の起動・停止制御、コンプレッサの運転制御による冷媒配管の冷却制御、操作表示部8への情報の表示と入力データの取得、エアリークバルブ26の開閉等の遠心機1の全般の制御を行う。
【0020】
図2は本発明の実施例に係る遠心機1の外観を示す斜視図である。遠心機1の“筐体”は、前後左右及び底面を形成する筐体本体部10と、その上面を覆うトップカバー11の2つの部材によって主に構成される。トップカバー11にはロータ室3へアクセスするための開口部11aが形成され、開口部11aの下側にはドア5が設けられる。
図2の状態はドア5によってロータ室が密閉されている状態を示す。ドア5を開けるには、ロータ2の回転が完全に停止してから、バキュームボタン230を押すことで真空ポンプ(6、7)が停止して、エアリークバルブ26(
図1参照)の解放によりロータ室3の気圧が大気圧になってから、レバー5aの上端を手前から後方に倒すようにしてドア5を前方から後方へスライドさせる。トップカバー11の後方側にはスライドされたドア5を収納するための、ドア収納部15が設けられる。開口部11aの右側にはゴム等の弾性部材28が張られており、遠心作業に用いられる部品等の仮置き台として利用できる。
【0021】
遠心機1の筐体上面、開口部11aよりも前側であって、筐体部分の上面(トップカバー11)と前面で接合部10aよりも上側部分(トップカバー11の前面部分)が交わる角部(稜線部)には、所定の横幅を有する発光部40が設けられる。発光部40は帯状の細長い形状であって、遠心機1の通電中に発光され、外部から見える全体部分が発光する。実際には外部から見える素材自体が発光しているのでは無いが(光を透過又は拡散している)、外部からは発光しているように見える。発光部40にて発光させる光源をどのような形態で実現するかは任意であるが、本実施例の発光部40は、筐体本体部10の内部に配置される後述するLED42の光を透過させる半透明の樹脂部材で構成した。発光部40を透明の樹脂にて内部のLEDが見えるように構成しても良いが、本実施例のように半透明で白色系の樹脂製とすれば、面発光をしているような発光状態となる上に、カラーLEDを用いることにより任意の色にて発光させることが可能となる。尚、EL(エレクトロ ルミネッセンス)パネル、EL照明のような面発光素子を用いて発光部40を実現するようにしても良い。さらに、発光部40は、直接光にて発光状態を実現しても良いし、間接光にて発光状態を実現しても良い。
【0022】
トップカバー11に上面右側、前方側であって、発光部40の右側には、操作表示部8が設けられる。操作表示部8は例えば、タッチパネル式の液晶表示装置又ELパネルであって、情報を可視的に表示する表示手段(表示部)としての機能と、ユーザが指又はタッチペンでタッチすることにより情報を入力するための入力手段(入力部)としての機能を果たす。尚、操作表示部8はタッチパネル式の液晶表示装置だけでなく、入力キーを有する入力装置と、タッチ機能無しの表示装置によって構成しても良い。筐体本体部10の右側側面の上方には、遠心機1の電源スイッチを配置するためのスイッチ部29が形成される。本実施例では、スイッチ部29は蓋にて覆われており、蓋を開けると図示しない電源スイッチをアクセスできるが、スイッチ部29の構成はこれだけに限らずに、筐体本体部10の外縁からくぼんだ部分に電源スイッチを配置するように構成しても良い。
【0023】
図3は本実施例に係る遠心機1の上面図である。発光部40は、上面図で見たときにその一部又は全部が見えるような位置に配置し、かつ、正面図(図示していない)で見たときにも発光面の一部又は全部が見えるような位置に配置することが重要である。ここでは、トップカバー11の開口部11aの直径D1に対して、発光部40の幅Wが十分大きくなるように構成した。この際、ロータの軸心の左右方向線(位置)と発光部40の左右中心線(位置)が一致するように配置される。通常、ユーザがロータ室3内にロータ2を装着する際には、ロータ2を遠心機1の前方側から矢印で示すように開口部11aに移動させる。この際、発光部40の上側を通るようにしてロータ室3内にロータ2を移動させることになる。遠心機1で用いられるようなロータ2は、チタン製の一体成形品であり、重量で10〜30kg程度であって片手で容易に扱えるほど軽くない。そこでユーザは体の前方側にロータ2を位置づけて両手でしっかりと把持しながら移動させる。この際、遠心機1において横幅D1の発光部40全体が発光していると、この発光位置を目安としてロータ2をロータ室3の内部に導くことができる。また、発光部40によってロータ2の下側から照らすことにより、ロータ2の下側付近が見やすくなるため、ロータ2の下端付近に設けられている部材、例えば、オーバースピードアダプタや、ロータの識別情報を記憶させる磁気リング等をぶつける恐れを低減させることができる。さらに、発光部40の横幅Wが開口部D1よりも左右にそれぞれ幅Sの分だけ広くなっているので、ユーザが把持しているロータ2を上から見ると、ロータ2の左右端部より見える発光部の一部の長さが左右で等しくなるようにロータ2を移動させると、ロータ2をロータ室3の左右方向中心位置に効果的に導くことができる。
【0024】
操作表示部8は発光部40の右側近傍に位置している。操作表示部8の横幅W1は開口部11aに対して大きくないが、発光部40の横幅Wと横幅W1の間は距離にしてRだけの間隔が開いている。この間隔Rを所定量だけ確保することにより、ロータ2の装着行為の最中においても操作表示部8に干渉することを効果的に防止できる。尚、本実施例では
図2から理解できるように、発光部40は角部を有する様に形成されるが、操作表示部8は角部を有しないように斜めに配置される。従ってユーザから見やすい角度とすることができる上に、操作表示部8と発光部40との間に発光しない空間(間隔Rの部分)が存在するので、発光部40をロータ2の装着の際に位置合わせ用のガイドとして用いるときの誤認を効果的に防止できる。
【0025】
図4は
図3のA−A部の部分断面図である。本実施例ではトップカバー11の前面側の角部分に樹脂製の発光部(透過窓)40を設け、透過窓を介して内部に配置されたLED42の光が外部に照射または拡散されるように構成した。発光部40は樹脂製のトップカバー11と一体に構成(鋳込む)しても良いし、樹脂製又は金属製のトップカバー11に帯状のスリットを設け、スリットの開口部に樹脂製の透過部材を取り付けるように構成しても良いし、その他の構成としても良い。LED42はその性質上、光の直進性が強いので、発光部40を半透明の合成樹脂製の部材とすると光を適度に拡散するうえに、発光部40を直視したユーザが過度にまぶしくないように最適な光拡散状況を実現できる。
【0026】
発光部40を設ける位置は、筐体の開口部11aから筐体の前面に至る部分であって、
図3のように上面図で図示した際と、図示しない正面図で図示した際のいずれにも発光部40の一部が見えるような位置に配置する。この位置は箱状の筐体ならば筐体の上面と前面の交わる角部近傍、好ましくは筐体の上面と前面の交わる稜線上に発光部40(透過面、光拡散面)を設けるようにすると好ましい。本実施例では、複数のLED42を帯状の基板41上に搭載し、その基板41を取付アーム45にネジ止め固定するようにした。取付アーム45は、ネジ46によってトップカバー11の内側に固定されるが、この際、スペーサ44、47を用いることにより基板41の取付位置、取付角度を容易に設定できる。LED42による光の照射方向は斜め前方に向くようにすると好ましく、本実施例ではLED42の照射方向θが、水平面より45度になるようにした。発光部40は、筐体の上面と前面の交わる角部の稜線上に設けたので、発光範囲が水平方向から垂直方向に広がるように構成できた。ここで発光方向を上方のみとすると、遠心機とユーザの距離が離れるほど上面を視認しづらくなるという問題があり、筐体前面に発光部を設ける構成とすると発光方向が前方のみとなり上方向からの視認が困難になるという問題があるので、本実施例のように角部に配置して上方側からも前方側からも見えるように発光部40を配置することにより、様々な方向から容易に視認できるように構成できた。尚、
図4の断面図で見た際の発光部40の前後方向幅をどの程度にするかは任意であるが、正面から遠心機を見た際に帯状に見えるような発光部40とすると好ましい。また、発光部40の形状を更に工夫して、光を任意の方向に拡散する拡散部を有した窓とすることにより、光源(LED42)の点灯状況を任意の方向から見えるように構成することも可能である。拡散部としては、例えば樹脂製の発光部40の表側又は裏側に断面形状が三角形のギザギザ状部分を形成し、プリズムの役割をさせて中から照射される光を屈折させるように構成すれば良い。
【0027】
図5は
図4の基板41の上面図である。ここでは基板41上に等間隔で16個のLED42を配置した例を示しているが、複数個のLEDを用いて、発光部40の発光状態が点でなくて面発光状態となれば良いので、LED42の個数は任意である。基板41は、例えばプリント基板で構成でき、基板上には図示しない配線が形成されており、図示しないリード線によって後述するLED駆動回路35(
図6参照)に接続される。LED42はそれぞれの発光色を変更できるように構成すると好ましく、例えば市販されている“3色RGBカラーLED”を用いることにより、任意の色にて発光させることができる。これらのLED42は、複数個のLEDを同一形態にて発光させるように制御して表示するように構成すればLEDドライバ(点灯駆動回路)を単純化できるが、数個ずつのLED42をグループ化し、グループごとにLEDドライバを設けて異なる表示態様で点灯するように構成しても良い。さらには、各LEDごとにLEDドライバを個別に準備して多彩な点灯形態を実現するようにしても良い。第1の実施例では複数のLED42に対して一つのLEDドライバを準備して、それぞれにオンオフ、発光色、発光パターン、輝度等を一体に制御するように構成した。
【0028】
次に
図6を用いて本実施例に係る遠心機1の制御ブロック図を説明する。制御装置30は内部にマイコン(マイクロコンピュータ)31と、遠心機を動作させるためのプログラムや制御情報データを記憶しておくための不揮発性メモリ34と、演算や一時的なデータを保持するためのRAM(ランダムアクセスメモリ)33と、タッチ式液晶ディスプレイである操作表示部8の入力制御及び出力制御を行う入出力制御回路32と、LED42を点灯させるためのLED駆動回路35と、モータ9を駆動するためのインバータで構成されたモータ駆動回路36と、ロータを冷却するためのペルチェ素子(冷却装置)18を駆動させための冷却装置駆動回路37と、油回転真空ポンプ6と油拡散真空ポンプ7を駆動するための真空ポンプ駆動回路38を有する。マイコン31には、ロータ2の温度を測定するための温度センサ13と、ドア5の開閉状態を検出するドアセンサ16と、ロータ室3内の気圧を測定する真空センサ12と、ロータ2の装着とその識別情報を認識するロータ識別センサ14と、モータ9の回転を検出する回転センサ9cが接続され、その出力がマイコン31に入力される。モータ駆動回路36、冷却装置駆動回路37、真空ポンプ駆動回路38には、交流100V又は交流200V等の商用電源39が供給され、マイコン31によってモータ9、ペルチェ素子18、油回転真空ポンプ6、油拡散真空ポンプ7への電源供給が制御され、それらの起動、停止、及び運転の制御が行われる。複数のLED42の点灯は、ON又はOFF、発光色、点滅パターン、明るさ等はマイコン31がLED駆動回路35に制御信号を送信することによって制御される。このLED42の制御は、マイコン31においてコンピュータプログラムを実行することによりソフトウェア的に制御できるので、マイコン31は遠心機1の運転状況に応じてLED42の発光形態を任意に変更することが可能である。
【0029】
次に
図7を用いて本発明の実施例に係る操作表示部8における表示例を説明する。この画面は、複数のプログラム運転を設定するための操作画面である。画面200は、主に、遠心機1の運転状態と運転条件(設定値)を表示するもので、その画面中には、遠心分離機の運転条件である回転速度表示領域201、時間表示領域204、温度表示領域207が設けられる。これら領域の周囲には、現在のプログラム運転状態を表示するプログラム運転表示欄250、遠心分離動作の開始を指示するためのスタートボタン220、遠心分離動作の中断又はモータ9の回転停止を指示するためのストップボタン221が表示される。回転速度表示領域201の中央の大きな数字“0”は、ロータ2の現在の回転速度202を示し、下線部で区切られた下段(小さな文字)は設定回転速度203を示す。使用者が回転速度表示領域201の枠内を指でタッチすると、テンキー画面(図示せず)がポップアップ表示されるので、使用者はテンキーを操作することにより回転速度を設定できる。時間表示領域204の中央の大きな数字は、ロータ2を設定回転速度203で実際に運転された運転時間(経過時間)205であり、時、分の単位で表示される。運転時間205は、マイコン31に含まれるタイマー機能を用いて自動的にカウントされ、表示される。下線部で区切られた下段(小さな文字)は、遠心分離を行う設定運転時間206である。温度表示領域207の中央の大きな文字は、現在のロータ室3の内部のロータ温度208であり、下線部の下段(小さな文字)が、遠心分離を行う際に保持すべきロータ2の設定温度209である。
【0030】
ロータ表示領域210には設定されるロータ2の型番号が表示される。ACCEL/DECEL表示欄211は、加速モードと、減速モードの設定を表示するもので、ここをタッチすることにより加速モードは、0〜500rpmまでの加速時間を複数の選択肢の中から番号で選択することができ、減速モードは500rpm〜0までの減速時間を複数の選択肢の中から番号で選択あるいは、設定回転速度から自然減速させるかを選択するためのものである。画面200の右上には、現在日時215が表示される。バキュームボタン230は、ロータ2の回転に先駆けてロータ室3の真空度を下げておく際に用いる真空ポンプ(6、7)の起動ボタンまたは、稼働中の真空ポンプ(6、7)を停止させてエアリークバルブ26を稼働させるためのボタンである。
【0031】
プログラム運転表示欄250は、
図12のプログラム01のステップ1(S1)から2回目のプログラム01のステップ2(S2)までを一連に設定するためと、設定された運転状況を表示するために設けられる表示欄である。この欄には、プログラム番号251、ステップ番号252、プログラムのおおよその残り時間を示す運転残時間253が表示され、右上にはプログラム運転表示欄250を閉じるためのアイコン254が表示される。ここで、プログラム番号251欄をタッチすると
図8(1)の状態に表示が切り替わる。
【0032】
図8は本発明の実施例に係るプログラム運転の設定手順を説明するための図である。
図8(1)においてユーザはプログラム番号を設定する。ここでいうプログラム番号とは、
図12で説明した従来例で示した一連の動作(プログラム01、停止、プログラム02、停止、プログラム01の複数の動作)を含むプログラムの識別番号であり、分離対象の検体をセットして、すべての遠心分離運転が終わって検体をロータ室3から取り出すまでの動作を含む。本実施例では、ロータ2の回転を止めて、エアリークバルブ26を開くことによりロータ室3内を大気圧に戻してドア5の開閉を許可するステップを、プログラムのステップのひとつとして設定可能としたものである。ドア5の開閉を許可するステップ(ここでは、ロータの回転数0にして、ドアの開閉を許可するステップを「特定ステップ」と呼ぶものとする)では、ユーザがドア5を開閉して検体に試薬を追加する等の作業を行うが、制御装置30からみるとドア5がいつ閉められて、いつ次のステップに移行して良いかがわからず、予め運転時間(所要時間)をプログラムしておくことが難しい。そこで本実施例ではそのようなロータ2の回転数がゼロ(又は所定の低速回転)であって、ドア5の開閉が許可される“特定ステップ”を一連のプログラム制御中に含めることができるように構成し、特定ステップでは運転時間を設定しない状況で登録できるように構成した。
【0033】
図8(1)でユーザは入力欄121に作成するプログラムの識別のための番号(ここでは“1”)を入力する。ユーザが入力欄121をタッチすると、画面120の下半分にテンキー122が表示される。ここで所望の数字を(ここでは“1”)タッチした後にエンター123をタッチするか、閉じるアイコン124をタッチすると、
図8(2)の画面に移行する。
図8(2)はプログラム中の各ステップを定義するための入力画面である。各ステップには、タイトル欄131に表示されているように、ステップ番号に対応して「ロータの回転速度(SPEED)、ロータの設定温度(TEMP)、運転時間(TIME)、加速モード(ACCEL)、減速モード(DECEL)」を設定する。例えば、ユーザがステップ1の欄132aをタッチすると
図8(3)のような入力画面になり、ロータの回転速度(SPEED)、ロータの設定温度(TEMP)、運転時間(TIME)の入力が可能となる。ここでは、スピード欄141、時間欄142、設定温度欄143のいずれかをタッチすると、画面140の下半分にテンキー144が表示される。ここで所望の数字をタッチした後にOKキー145をタッチするか、閉じるアイコン146をタッチすると、入力された数字が選択した欄(141〜143)内に入力される。尚、
図8(3)では加速モード(ACCEL)、減速モード(DECEL)の数字の入力部分が、テンキーに隠れて表示されていないが、これらはデフォルトで自動的に設定されるためである。但し、それらを個別に変更設定できるようにすると好ましい。
図8(3)で入力が完了すると、図示しない完了アイコンを押すことにより
図8(2)の画面に戻る。
【0034】
図8(2)のステップ1、2が
図12のプログラム01のステップ1、2に相当するものである。ステップ3は特定ステップであり、特定ステップにおいては、スピード欄141に“0”を、時間欄142に運転時間として“00:00”(又は未設定“−−:−−”のまま)を設定する。
図8(3)にて設定時間(TIME)を“00:00”と設定すると、
図8(2)に戻ると“−−:−−”と表示されるので、ユーザはそれが特定ステップであることを識別できる。このように、本実施例ではプログラム化されるステップの一つとして、運転時間(TIME)を未設定とした特定ステップを設けたことを特徴とする。特定ステップの実行時間は、前のステップが終了して、ユーザがスタートボタン220(
図7参照)をタッチしてロータ2の回転が開始するまでとなるので、制御装置30からみると固定時間ではなくてユーザの操作によって変動する可変時間となる。以上のように、(2)と(3)の画面を遷移させながら同様にしてステップ1〜8までをすべて入力する。(2)の表示画面からステップ6はステップ3と同様に設定時間を未設定とした特定ステップであることが理解できるであろう。尚、本実施例の遠心機では特定ステップにおいては、ドア5を開くことが前提とされているために、特定ステップが設定されたら、マイコン31は特定ステップの実行の際にバキュームボタン230の操作を許可する。バキュームボタン230が操作されると真空ポンプ(6、7)が停止し、エアリークバルブ26が開くことによりロータ室3内が大気圧に戻る。ロータ室3が大気圧に戻ることによりドア5は開閉できるようになる。
【0035】
次に
図9を用いて本実施例に係る遠心機1のプログラム運転中における操作表示部8に表示される画面200を説明する。ここで表示される画面は、
図7で説明した画面とほぼ同様であり、運転中であることから現在の回転速度202、実際に運転された運転時間(経過時間)205、現在のロータ温度208が表示される。この運転状況は、プログラム番号251が“1”、ステップ番号252が1番目であることを示し、
図8(2)の欄132aにて設定された運転条件が、設定回転速度203、設定運転時間206、設定温度209、ACCEL/DECEL表示欄211に表示される。プログラム運転表示欄250には、運転のおおよその残り時間253が表示される。この時間は、ステップ3とステップ6でのユーザによる作業の時間が確定しないため、平均的な作業時間を用いた推定値を算出して表示する。ここで、ユーザがステップ番号252の表示された欄をタッチすると
図10のプログラム運転の進捗表示画面300の表示に切り替わる。
【0036】
図10は本発明の実施例に係るプログラム運転の進捗表示画面300を示す図である。ここでは
図10の表示画面の上側3/4の領域の表示が変更されたものであり、この変更される部分に、プログラミングされたロータの回転状況と経過時間の関係がわかるグラフが表示欄301内に表示される。表示欄301内には、回転速度カーブ305と、プログラムされたステップがS1〜S8として表示され、現在進行中の位置を示すインジケータ(ここでは矢印309)が表示される。矢印309は時間の進捗に伴い右方向に移動するように表示される。また、運転が完了した部分はハッチング310にて強調表示され、回転速度カーブ305と横軸の交差点(つまりロータ2の回転速度が0になる部分)には、到達予想時間307a、307bが表示される。ここでは、ステップ1の開始時間306は、7:00(実時間)である。また、ステップ2(S2)が終了する時間(9:20)は、ほぼ正確な予測時間であり、ステップ5(S5)が終了する時間(13:45)は特定ステップ3の作業時間が5分と仮定された上での予測値である。全体の終了時間308は、特定ステップ3、6の作業時間がそれぞれ5分と仮定された上での予測値(推定時間)である。終了時間308は特定ステップ3、6におけるユーザの作業により大きく異なり、例えば特定ステップの到来時間の際にユーザが他の作業中であった場合等に作業が遅れることがありうるので、特定ステップ3において次のステップ4の運転を開始させるべくスタートボタン220が押されたら、時間(307b)および終了時間(308)を再計算し、再計算後の到達予想時間を表示させる。このように画面300では、プログラム運転の全体の状況がビジュアルに表示されるので作業者は全体の流れと、現在どのあたりを実行中であるかを容易に知ることができる。
【0037】
さらに本実施例では、表示欄320に次の特定ステップ(S3)でユーザがおこなう作業内容(「比重液Bを6ml加え、静かに混和する」)が表示される。このように特定ステップ3(S3)の到達予想時間307aと表示欄320の表示によってユーザは、いつ、どんな特定作業を行えば良いのかを容易に認識することができるので大変使いやすい遠心機を実現できた。同様にして、現在進行中の位置が、ステップ4(S4)〜ステップ5(S5)の時は、表示欄320にステップ6にて実行する内容の説明文を表示するようにすれば、作業者は特定作業における作業内容を画面300にて確認してから作業に移ることができる。尚、表示欄320に表示される説明文は、
図8(2)の設定画面にて、ステップ3、6として特定ステップとして指定した場合(ロータの回転0で時間設定を空欄にした場合)に付随して入力できるように構成しておけば良い。このようにしてステップ1,2の実行が終了すると、現在進行中の位置(矢印309)がステップ2の終了位置を示す位置に移動し(時刻9:30付近)、ロータ2の回転が停止する。この際、ユーザはドア5を開けるべくバキュームボタン230をタッチすると
図11にてログイン画面330が表示される。なお、特定ステップ(S3、S6)で遠心機の管理(たとえば、あらかじめ決まられている条件や、ステップ2の終了からドアが開けられるまでの時間や、ステップ3に掛かった時間、ロータ室の温度や真空度の状態などや、ロータに加わった振動など)の情報をRAM33に記憶することで履歴を残すことができ、従来ユーザが記録できなかったことが、本発明では、記録することができるので、ステップ(S3、S6)の状態も含めた検証を含めた一連の試験条件(プロトコール)を、再現できるようになるので、再現性の良い試験が何度もできるようになった。
【0038】
図11は本発明の実施例に係るログイン画面を説明するための図である。(1)は遠心機1に登録されたユーザのリストである。ここではユーザが4人しか設定されていないが、さらに多くのユーザが登録される場合はページ切替えアイコン336a、336bを選択して表示を切り替えることにより多数のユーザの登録が可能である。各ユーザ331〜334にはユーザネームとアクセスレベルが設定されている。遠心機1を操作しているユーザはこのリスト中から該当のものを選ぶと(2)の画面に遷移する。(2)では、暗証番号入力欄341とテンキー342が表示される。ユーザは設定されている暗証番号(パスワード)をテンキーから入力し、エンターキー343を押すとマイコン31は入力された暗証番号が一致するかどうかを判定し、一致したら真空ポンプ(6、7)を停止するとともにエアリークバルブ26を解放して減圧されているロータ室3を大気圧に戻すことによりドア5が開閉可能となる。尚、真空ポンプを用いない遠心機の場合は、ドア5にロック機構を設けて、暗証番号を入力して一致したらロックを解除してドア5を開閉可能なように構成しても良い。本実施例では特定ステップの実行の際にユーザに必ず再ログインをさせるように構成したので、特定ステップの実行した時間(開始時刻がログイン時、終了時刻がスタートボタン220のタッチ時)とその操作者を確実に記録することができる。尚、
図11によるログインを要求しないように設定することも可能である。その場合は、ユーザがバキュームボタン230をタッチすることで直ちに真空ポンプ6、7が停止させて、エアリークバルブ26を開くように制御する。但し、特定ステップではない通常ステップの実行中においては、ユーザがバキュームボタン230をタッチしても何も反応しないように構成する。作業者が特定ステップでの処理(作業)が完了するとロータ2に蓋をしてからドア5を閉じてスタートボタン220をタッチする。この際、マイコン31はドア5が確実に閉められているかをドアセンサ16の出力によりチェックし、ドア5が閉じられている場合にのみ次のステップの実行を開始する。ドア5が閉じられていない場合には、アラーム音等による警告に加えて「ドアを閉じてからスタートボタンを押してください」とのメッセージを操作表示部8に表示する。
【0039】
以上のようにして遠心機1のプログラム運転の全ステップが正常に終了した際には、操作表示部8に「全工程終了」メッセージを表示・点滅させると共に発光部40を特定の色で点灯または点滅させる。この際に合わせてメロディーを鳴らす等の音響的な注意喚起を行うようにしてもよい。
【0040】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例では特定ステップにおいて運転時間を設定しないように構成したが、制限時間(例えば10分)や仮の設定時間を設けておいて、特定ステップから次ステップへの移行のトリガを通常ステップの場合は設定時間経過とし、特定ステップの場合はスタートボタン220の押下とドアの閉鎖でスタートするように制御すれば良い。この場合は、制限時間や仮の設定時間を用いることにより特定ステップの到達予想時間や終了予想時間をより精度良く算出できる。