【実施例1】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書において上下方向は各図に示す方向であるとして説明する。
【0014】
図1は本発明の実施例に係る遠心機1の構造を示す断面図である。遠心機1は、板金やプラスチックなどで製作される箱状の筐体11に収容され、筐体11の内部は水平なフレーム14によって上下2段の空間に仕切られている。上段の空間の内部には防護壁6が設けられ、防護壁6とドア12によってチャンバ4を画定し、図示しないドアパッキンによってチャンバ4は密閉される。チャンバ4は上面が開口している円筒状であって、その内部空間(ロータ室2)には試料容器(バケット組立体)30を揺動可能に設置したロータボディ20が収容されている。ロータボディ20は駆動軸3を回転軸として回転可能であって、分離する試料を保持しつつ高速回転するスイングロータを構成する。
図1では、ロータボディ20が停止中であって試料容器30の中心軸が鉛直方向となっている状態を示している。本実施例ではロータボディ20は、例えば最高回転速度が100,000rpm以上で回転できる、いわゆる超高速遠心機と呼ばれるものである。筐体11内のフレーム14によって仕切られた下段には、駆動部9がフレーム14に取付けられており、駆動部9のハウジング8には駆動源としてのモータ7が内蔵されている。そのモータ7の垂直上方に延びる駆動軸3は、チャンバ4を貫通してロータ室2内に達し、その上端部にはロータボディ20が着脱可能に装着される。
【0015】
ロータボディ20は複数の試料容器30を保持しながら高速回転をする回転体であって、ロータボディ20の回転と共に遠心力によって試料容器30が遠心力の作用方向(回転軸から見て径方向外側)にスイングして、試料容器30の中心軸が鉛直方向から水平方向に移動する。ロータボディ20は、駆動部9に含まれるモータ7によって回転されるが、モータ7の回転は図示しない制御装置によって制御される。
【0016】
チャンバ4はドア12によって密閉可能に構成され、ドア12を開けた状態で、上側の開口部5を介してチャンバ4内のロータ室2内にロータボディ20を装着又は取り外しができる。チャンバ4には、図示していないがロータ室2内部を所望の低温に保つための冷却装置と、内部を所定の減圧状態に保つための真空ポンプが接続され、遠心分離運転中は制御装置の制御によってロータ室2の内部が設定された環境に保たれる。ドア12の側方(右側)には、使用者がロータの回転速度や遠心分離時間等の条件を入力すると共に、各種情報を表示する操作表示部10が配置される。操作表示部10は、例えば液晶表示装置と操作ボタンの組み合わせ、又は、タッチ式の液晶パネルで構成される。
【0017】
図2は遠心機用スイングロータの上面図である。遠心機用スイングロータはロータボディ20と試料容器30により構成され、
図2は試料容器30がロータボディ20の貫通孔21に挿入された状態を示している。本実施例にかかるロータボディ20は、上から見た際に略円形であって、径が100mmから300mm程度の大きさのボディに直径が20mmから50mm弱程度の6つの貫通孔21が形成され、貫通孔21のそれぞれに試料容器30が装着される。試料容器30には回動軸40が配置され、その回動軸の長手方向が円周方向に向くように試料容器30が貫通孔21内に収容される。貫通孔21は円周方向に60度ずつ隔てて均等間隔で設けられた、上側から下側に貫通する円筒状の穴であり、穴の直径は試料容器30の外径よりもわずかに大きく形成され、貫通孔21の内壁の円周方向に約180度隔てた2箇所に回動軸係合溝22が形成される。回動軸係合溝22は、試料容器30の回動軸40の両端部を保持するために形成されるもので、貫通孔21の上部開口から、軸方向下側に延びるが、下部開口にまでは到達しない。回動軸40の長さは貫通孔21の直径よりもわずかに大きく形成されるので、回動軸40の両端位置が回動軸係合溝22の位置に一致しないときには、回動軸40の両端部が貫通孔21の上端部に緩衝するため、試料容器30を貫通孔21の所定位置まで挿入することができない。回動軸40の両端部を回動軸係合溝22に沿うように試料容器30を貫通孔21の上側から下方向に挿入すると、回動軸係合溝22の下端部で回動軸40の両側が保持されることにより、試料容器30が下側に落ちないように保持される。試料容器30のスイング方向は回動軸40と垂直な平面内になるため、回動軸40はその平面となす角が90度となる。また、スイング方向を含む平面は遠心荷重がかかる方向と一致させる必要があるので、その平面は駆動軸3(
図1)の回転軸(回転中心)を通ることになる。ロータボディ20の上からみた外縁形状はほぼ円形としても良いが、本実施例では質量軽減を図るためにバケット収容部24(
図3参照)及び貫通孔21が形成されない箇所、即ち矢印27に示す部分において肉厚を落とすように形成している。
【0018】
図3は、
図2のA−A部の断面図である。
図3では、ロータボディ20が停止していて、試料容器30の長手方向が鉛直方向になっている状態を示す。試料容器30は、回動軸40の両端部が回動軸係合溝22の下端部(図示せず)に当接しているために、ロータボディ20から下側に抜け落ちずに図示の位置にて保持される。この際、試料容器30は回動軸40の両端部分を除いて、ロータボディ20には一切接触していない。また、試料容器30の下端部もロータボディ20のいずれの部分にも接触しない。この状態からモータ7(
図1参照)を起動してロータボディ20を回転させると、試料容器30は、回動軸40を回転軸にして、遠心力よって径方向外側にスイングする。この試料容器30のスイングは、試料容器30の長手方向が水平(真横)になるまで続くが、その際に試料容器30のスイングがロータボディ20に阻害されないように、ロータボディ20にはバケット収容部24が形成される。バケット収容部24は、ロータボディ20の下側端部を半円柱状にくり抜いた切り欠き部であって、試料容器30がスイングした際に、特定の箇所を除いて、試料容器30とロータボディ20が接触しないようにするために形成される空間である。
【0019】
図4は、本発明の実施例に係る試料容器30の外観形状を示す斜視図であり、蓋部31に容器部51を装着した状態を示す。容器部51は、その内部に分離する試料を入れるチューブを収容するための容器たるバケット52を有し、バケット52は比強度の高いチタン合金等の金属の削り出しによって一体に製造される。容器部51の開口部53の下方には、径方向に広がるテーパー面54bが形成される。フランジ部54は、開口部53からテーパー面54bに対してなめらかに接続される外縁部54aと、外縁部54aと、外縁部54aの下側に形成され、ロータボディ20のバケット収容部24の側壁面(バケット受け面25)接触するために円周方向に連続する斜面たる着座面54cにより構成される。着座面54cの下方にてバケット52と接続される。テーパー面54bの形状は比較的自由であるが、本実施例では
図3に示したようにフランジ部54の外縁部54aから上方の開口部53の円筒部分になめらかに接続して容器部51の強度を十分確保するようにしている。
【0020】
蓋部31はバケット52の内部空間を密閉するための蓋として作用するもので、容器部51の開口部53にネジ結合又は差込み方式により装着される。蓋部31の上下方向中央付近には容器部51の蓋本体となる円盤状の円盤部33が形成される。円盤部33の上方には円筒形の部分(中空部32)が形成され、中空部32の側方には回動軸40を貫通させるための貫通穴35が設けられ、貫通穴35を介して中空部32の対向する径方向に突出する回動軸40が設けられる。貫通穴35は遠心荷重のかかる方向に延びる単なる長穴ではなくて、本実施例では側面視で略T字状の形状とされるが、その詳細形状は後述する。蓋部31は、例えばアルミニウム合金等の金属の削りだし加工により製造され、円盤部33の下方には後述する装着部34が形成される。回動軸40は、ロータボディ20に形成された回動軸係合溝22に係合されるものであって、スイング状態になる前には試料容器30の荷重を支える役割を果たす。回動軸40の上方には複数枚の皿バネ36が挿入され、皿バネ36の上部において中空部32の水平方向(横方向)に形成されるネジ穴37に止めネジ38が装着されることにより皿バネ36が脱落しないように保持される。尚、本実施例では6枚の皿バネ36が挿入されるが、皿バネ36の枚数は遠心分離の最高回転速度や容器部51の重さや中に入れられる試料の容量等を考慮して適宜設定すればよい。また、皿バネだけに限られずに圧縮スプリングやその他の弾性部材にて付勢するように構成しても良い。また、止めネジ38のほかにピンを用いても、皿バネ36の脱落を防ぐことができる。
【0021】
図5は試料容器30の縦断面図である。容器部51の内部には、チューブ60の外形と一致する空間が形成され、上部にはチューブ60を出し入れするための開口部53が形成される。チューブ60は例えば合成樹脂製の略円筒状の容器であって、全長が約100mmであって開口部の直径が25mm程度であり、内部に遠心分離を行う対象たる試料61が入れられる。容器部51の開口部53には、チューブ60の開口部53を覆うことにより容器部51の内部空間を密閉状態に保つ役割を果たし、バケット52内に充填した試料61がバケット52の外に漏れ出るのを防いでいる。開口部53の内周側には雌ねじまたは密着面が形成され、蓋部31の装着部34の雄ねじ又は密着面と当接し、Oリング39などのシール部材で密閉する。このように蓋部31が容器部51に取り付けられることによりこれらが一体化して揺動できる。
【0022】
試料容器30の上部には、径方向に広がるフランジ部54が形成され、フランジ部54の下側にはロータボディ20と接触するための着座面54cが形成される。テーパー面54bは、フランジ部54から上方の開口部53に至り徐々に軽が細くなるように形成されている。なお、テーパー面54bの形状は比較的に自由に形成できるが、試料容器30の遠心荷重が着座面54cによって受け止められるため、強度の点からフランジ部54とバケット52の形状を設計すると良い。円盤部33の上方には回動軸40が貫通穴35の稜線の輪郭形状に平行に移動可能とされ、止めネジ38と回動軸40間には皿バネ36が組み込まれている。皿バネ36はいわゆる弾性体であればその他のバネ形式でも良く、金属製のバネ部材や樹脂製のバネを用いても良い。
【0023】
図6は、本発明の実施例に係るロータボディ20の軸方向縦断面図であり、試料容器30の実線は回転時の状態を示し、点線は停止時の状態を示す。ロータボディ20の高速回転により試料容器30は点線で示す停止時の位置から実線で示す状態に、回動軸40を中心に矢印29のようにスイングする。試料容器30は回動軸係合溝22の下側端部付近を中心に回転可能に搭載されるため、ある回転速度に達すると試料容器30が回動軸40を揺動中心としてスイングし、バケット52の長手方向が水平方向となる水平状態になる。
図6は試料容器30が水平方向になった直後の低速回転時(例えば500〜1,000rpm程度)の状態を示すもので、このように水平状態になった直後の低速回転数では、試料容器30にかかる遠心荷重が小さいので、皿バネ36の働きにより試料容器30と回動軸40が接近する方向に付勢されるため、フランジ部54とバケット収容部24のバケット受け面25は互いに接触しない位置を保つ。このように回動軸40を試料容器30のボディ部分に対しての皿バネ36を用いて自由度を増加させたことにより、試料容器30が矢印29に示すように鉛直状態から水平状態にスイングする途中では、試料容器30はロータボディ20のいずれの部分にも接触しないので、スムーズにスイングすることができる。また、試料容器30が理想的な状態でなく、やや斜めに捩られた状態でスイングしていき試料容器30のボディ部の片側がバケット受け面25に先に当たるようなことがあったとしても、試料容器30は回動軸40によって拘束されることなく、遠心荷重によってテーパー面54bがバケット受け面25に良好な面接触位置に誘導されることができるので、回動軸40に対してバケット52と試料61の遠心荷重がかかることはない。
【0024】
次に、
図6で示すようにスイングした直後の状態からロータボディ20が更に高速にて回転し、ロータボディ20側のバケット受け面25と容器部51側の着座面54cが接触するまでの動きを
図7〜
図9を用いて説明する。
図7はロータボディ20に対して試料容器30が回転を開始して水平状態に到達した直後の揺動状態を示した図であって、(1)は
図6のB−B部に相当する位置の部分断面図であり、(2)は(1)のC−C部の断面図である。試料容器30の遠心荷重を支える回動軸40には、容器部51、蓋部31、チューブ60、及び、チューブ60内に満たされた試料の分の遠心力荷重合計F1がかかっている。ここで、回動軸40には自重分と皿バネ36分による遠心力荷重合計F2も加わっている。バケット52が水平方向に到達した直後の状態では、回動軸40はまだ撓んでおらず、皿バネ36も縮んでいない。この際のロータボディ20の壁面(バケット受け面25付近)とバケット52は隙間がある程度存在する状態であって接触していない。この状態から更に回転速度が上昇し遠心加速度が増加すると
図8の状態になる。
【0025】
図8の状態では、ロータボディ20の回転速度が上昇して試料容器30には矢印F1の方向に強い遠心荷重がかかるため、皿バネ36による付勢力(耐荷重)を遠心加速度が上回っているため皿バネ36は撓んで試料容器30は外周側に移動し、バケット受け面25と試料容器30との隙間が縮まる。さらに高速回転になるとバケット52は遠心加速度方向(径方向外側)にさらに移動し、バケット受け面25とテーパー面54bが良好に面接触する。この面接触した状態をここでは「着座」と呼ぶことにする。この着座の際の回転数は、例えば3000rpm程度であり、面接触する範囲は、試料容器30の着座面54cの周方向に見て上側に位置する約半分程度である。またその移動量は
図6で図示したロータボディ20とバケット52の隙間分(移動距離限界L)でバケット受け面25と着座面54cが接触して移動が止まりロータボディ20にてバケット52、回動軸40と皿バネ36を除いた蓋部31、チューブ60及び試料61の遠心力荷重合計F1を負担する状態になる。この状態では回動軸40に加わる力はF2だけになるが、回動軸40の曲げ剛性がF2よりも高いため、回動軸40はまだ撓んでいない。このようにロータボディ20の回転速度が高速になった場合は、試料容器30の遠心荷重は、ロータボディ20に形成されたバケット受け面25の広い領域で受け止められるので、回動軸40には試料容器30部にかかる遠心力荷重合計F1は作用しないようになる。回動軸40の自重分と皿バネ36分による遠心力荷重合計F2は、さほど大きくないので回動軸40は撓むこと無く図の状態に保持される。この状態からロータボディ20の回転速度がさらに上昇し、いわゆる超高速の速度領域に到達すると
図9の状態になる。
【0026】
図9はバケットがロータボディ20に着座した後に回動軸40が貫通穴35の稜線に平行に滑りながら遠心力の方向に移動して、円盤部33の上面に備えた回動軸用着座面(後述)に着座した状態を示した図である。
図9において、バケット52の位置は長手方向が水平状態であり
図8の状態と同じであるが、回動軸40がその自重と皿バネ36の遠心力荷重合計F2に耐え切れずに回動軸40の軸方向中央部付近が撓むことになる。本実施例の場合、回動軸40の自重は約3g(試料容器30の2%未満)であり、ロータボディ20の回転数が32,000prmで回転すると回動軸40だけの遠心荷重でも約300kgとなるため、回動軸40を両端部だけで自重だけを遠心荷重を支えるだけでも困難になってしまう。この遠心荷重に耐えるために回動軸40の強度を上げることも考えられるが、強度アップは通常重量増加を伴うのでさらに遠心荷重が増える結果になってしまう。
【0027】
そこで、本実施例では回動軸40は意図的に剛性を小さくして軽量化し撓むように形状決定し、回動軸40の軸方向中央部付近を矩形またはオーバル状開口部を有する貫通穴35の稜線に平行に滑りながら移動させるように撓ませて、円盤部33の中央付近上面に回動軸40の中央付近(両端部の間付近)が接触する着座面を設けるように構成した。つまり、バケット52内部を覆う円盤部33に対して回動軸40が移動限界距離L分だけ撓むと円盤部33の中央上面に着座するように構成し、回動軸40と円盤部33の上面の着座面との隙間をゼロとした。このように回動軸40の長手方向中央付近を円盤部33に着座させることで、回動軸40を両端部と中央部の三点支持とすることができ、本来であれば折損してしまう太さ、長さ、材質の回動軸40を折損させないように継続使用することを可能とした。この構造であれば、仮に使用される材料の塑性域で使用せざるを得ない場合でも、前述したように回動軸40と回動軸の移動限界距離Lを適切に設置し変形量を制御することで、耐力以上の部分で繰り返し使用してもひずみが増加することなく回動軸40が折損せず使用できる。
【0028】
図10は、回動軸40単体の外観形状を示す斜視図であって、(1)は斜め上から見た図であり、(2)は斜め下から見た図である。ここでは説明の都合上、上下左右を図の方向であると仮定して説明する。回動軸40は中央部40dの径又は幅が大きくなった略円柱形のステンレス製一体成形品であって、左右対称の形状であって、長手軸(=回動軸)に対して対称の形状とされる。回動軸40の長手方向の長さは40mm強であり、基本的な直径(軸部40bの直径)は3mm程度とするのが好ましく、試料容器30の全重量(試料61を除く)の2%未満の重量とすることが好ましい。回動軸40は左右方向の中心の接合面でもある中央部40d付近の直径が一番太く、そこから軸方向に離れるに従って回動軸40の径が徐々に細くなるようなテーパー部40aが形成される。ここで径方向とは長手軸と垂直な断面形状における径方向を指すものとして説明している。テーパー部40aから先は、直径が一定の円柱状の軸部40bが延びて、軸部40bの先端は略半球状に形成された端部40cが形成される。中央部40dとテーパー部40aは、皿バネ36たる皿バネを保持するための保持部41を形成するために形成したものであって、周方向に連続して形成された中央部40dの一部を円環状に切削することにより、皿バネ36と嵌合させることにより皿バネ36を良好に保持するための嵌合部42を形成した。嵌合部42は皿バネ36の内周側に位置するように形成される凸部となる。
図10では説明の都合上、テーパー部40a、軸部40b、端部40c、中央部40dの境界を理解が容易となるように線で示しているが、回動軸40は金属の一体品にて製造されるので、明確な境界や接合面があるわけではない。
【0029】
図10(2)の斜め下からの斜視図でわかるように、左右方向の中央から所定の範囲においては平面状に研削された面取り部43が形成される。この面取り部43は円盤部33やバケット52側に向くように配置される。基本形状が円柱形の回動軸40の一部を(2)のように平面に研削すると、2つの端部40c間で保持する場合の剛性が低下し、上下方向に見ると中央部40dを中心にたわみやすくなる。しかしながら、回動軸40の重量で見るとわずかではあるが軽量化できるので、回動軸40に加わる遠心荷重を低減できる。このように面取り部43の切削又は研削量、左右方向の長さを調整することで、回動軸40の軽量化を図り、曲げ剛性を調整することができる。
【0030】
図11は、
図4の回動軸40単体を示す図であって、(1)は上面図、(2)は正面図、(3)は底面図、(4)は側面図である。(1)において嵌合部42は皿バネ36の内周側に嵌合させて保持するために外形が円形に構成された凸部とされる。また、回動軸40の中央部40dの径を太くされた基材を切削加工又は研磨加工しているので、保持部41として所定の接触面積を有するように構成される。つまり、保持部41の部分を円環状に切削又は研磨すると、(1)に示すように外形が菱形になるような広めの平面部が露出する。(2)においては面取り部43の切削又は研削量がどの程度であるかが理解できるであろう。尚、面取り部43を設けることは必須の構成ではないので必ずしも設けなくても良いが、面取り部43を設けることにより回動軸40が遠心荷重によって撓む量を容易に調整することができる。さらに回動軸40が撓んだ際に、円盤部33の着座面に点領域ではなく、所定の長さを有する線状領域、又は(3)の点線で示すような所定の面領域たる接触部分44にて円盤部33に接触することができるので、回動軸40の遠心荷重を円盤部33によって良好に保持させることができる。尚、接触部分44はその領域の一例を示したもので、必ずしもこのような長方形の接触領域となるわけでは無い。
【0031】
図12は蓋部31の構成部品を示す図であって、(1)は側面図、(2)は斜視図、(3)は付属部品を取り付けた後の斜視図(一部断面図)である。蓋部31は、蓋となる作用する部分の円盤部33と、円盤部33の上方に形成された中空部32と、下方に形成された装着部34により主に構成される。中空部32の側面には、一方の側から他方の側に貫通する側面視で略T字状の貫通穴35が形成される。貫通穴35のうち上下方向に長い長手方向穴35b部分は、回動軸40が
図7〜
図9で示したようにスライドするための移動空間を確保するために形成するものである。そのため貫通穴35の横方向(円周方向)の幅は回動軸40が移動する際に抵抗とならない程度の幅を確保すると良い。T字状の貫通穴35には横方向(円周方向)に広い幅を有する周方向穴35aが形成される。周方向穴35aは、中央部40d(
図11参照)の径が太くなっている回動軸40を挿入するために形成される挿入口である。貫通穴35の上部付近には円周方向に連続する溝部32bが形成される。これは皿バネ36、回動軸40を取り付けるためのスペース確保と軽量化のためである。円盤部33の下側には円筒状の装着部34が設けられるが、これは容器部51の開口部53と係合する部分であって、本実施例では蓋部31を容器部51に対して、軸方向にネジ込んで装着および取り外することができる。装着部34には密着性をあげるために周方向に連続した密着部34bが形成される。
【0032】
図12(3)は、蓋部31に回動軸40、複数の皿バネ36、ネジ穴37に螺合された止めネジ38が装着した状態を示す図である。皿バネ36は、円盤状のばねを皿のように膨らみ持たせたものであって、小さなたわみで大きな荷重や衝撃を受けることができる弾性体であり、回動軸40が止めネジ38から離れる方向に付勢する。ここで
図13を用いて蓋部31の組み立ての際の回動軸40の装着方法を説明する。
図13において(1)は回動軸40と貫通穴35の大きさの関係を示す図である。貫通穴35は側面視であり、回動軸40も側面視(
図11(4)と同じ)である。側面視でT字状の貫通穴38のうちの鉛直部分(長穴状の貫通穴)に加えて、鉛直部分の上部に連結さえる水平方向に長い貫通穴が形成される。ここで、この(1)からわかるように回動軸40は、上方向に延びる凸部たる嵌合部42が形成されるので、そのままの状態で貫通穴35に回動軸40を挿入しようとしてもはいらない。そこで、本実施例では(2)に示すように回動軸40を上下逆向きになるように反転させて貫通穴35に挿入する。この際、凸部たる嵌合部42がT字状の貫通穴35の縦穴の部分に対応するため、回動軸40の中央部40dが貫通穴35の内部、即ち中空部32の内部に位置づけることができる。その状態で再び回動軸40を上下逆向きになるように回転させると、(3)の位置に回動軸40を位置づけることができる。その後、中空部32の上側端部から6枚の皿バネを挿入(または、貫通穴35から皿バネを挿入)した後に止めネジ38をネジ穴37から横方向にねじ込むことにより皿バネ36が中空部32から外側に抜けないように保持することができる。この止めネジ38で固定した後の状態を示すのが
図12(3)の状態である。この図から理解できるように止めネジ38と回動軸40は交差する方向に配置すると好ましく、好ましくは止めネジ38と回動軸40の軸方向はバケット中心軸を基準に90度隔てるように配置される。
【0033】
次に
図14を用いて蓋部31の詳細形状を説明する。蓋部31は、バケット52の開口部を覆う蓋としての機能を果たす円盤部33から上方に延びる中空部32を有し、中空部32の端部は閉鎖された底面たる着座面32cとなっている。ここで、本実施例では着座面32cは、円盤部33の外周側主要面の上部よりも高さH1だけ高くなるように構成される。このように着座面32cを高くするための理由を(2)(3)の模式図で説明する。
図14(2)は回動軸40に加わる遠心荷重の強さと、その遠心荷重を支える支点22a、22bを示したものである。試料容器30はロータボディ20の貫通孔21内に配置され、回動軸40が回動軸係合溝22に案内されてその溝の下側端部(支点22a、22bに相当)にて保持される。ロータボディ20が停止している際には回動軸40には容器部51とその内部に収容される試料61の重量が加わるが、
図8のようにバケット52が水平にスイングして着座面54cがバケット側のバケット受け面25と接触するため、回動軸40には容器部51とその内部に収容される試料61の遠心荷重はかからなくなる。このようにバケット52が水平にスイングした状態の回動軸40を模式的に示すのが
図14(2)であり、回動軸40にはバケット52等の遠心荷重がほとんどかからなくなるため、回動軸40自体の自重及び皿バネ36の遠心荷重だけが回動軸40に加わることになる。しかし、着座面54cがバケット受け面25と接触した直後はロータボディ20の回転速度が低いため遠心荷重が小さく、回動軸40は変形しない。
【0034】
ロータボディ20の回転速度が上昇すると
図9に示したように回動軸40に加わる遠心力荷重合計F2がさらに増大するため回動軸40が撓むことになる。この状態を示す模式図が
図14(3)である。この撓む状態が大きくなると回動軸40自体が破損する恐れがある。そこで本実施例では回動軸40の長手方向にみてほぼ中央付近に、回動軸40のたわみを支えるための保持部を設けるようにした。この保持部として本実施例では着座面32cを利用するものであり、回動軸40がある程度撓んだ後に中央の底面側が着座面32cに着座するために、回動軸40を支点22a、22bに加えて着座面32cの三点にて支持することができる。この結果、二点支持だけで保持させる場合に比べて回動軸40を細く軽量に構成することができ、この結果試料容器の30の全体の重さの軽減を実現できる。また、(3)の保持部58の高さH1(これは
図11(1)のH1のこと)を調整することにより、回動軸40の最大許容撓み量S1を設定することができるので、遠心分離運転のたびに繰り返しうける曲げ応力を受けて使用しても回動軸40が折損せずに使用可能となり、かつロータボディ20への負荷荷重を低減することができるので、ロータボディ20および回動軸40の長寿命化、低コスト化を図ることができた。
【0035】
次に
図15を用いて本発明の実施例の変形例を説明する。
図15(1)は、基本的には
図14(1)の蓋部31の構成と同じであるが、中空部32に形成された貫通穴135の端部135cが、底面132cよりも下側に到達して状態を示している。この状態が発生するのは貫通穴135の製造過程に関係するものであり、側面視で略T字状の貫通穴135を形成するに当たり、中空部32の側面から試料容器30の中心軸に対して直角方向にドリルやエンドミル等を用いて穿孔するためである。回動軸40の移動範囲を確保する穿孔を行うために図示しないエンドミル等の端部が底面132cよりも下側に到達してしまう場合があり得る。しかしながら仮に
図15(1)のように端部135cが底面132cよりも下側に到達した状態になっても、回動軸40の接触する中央部分付近のくぼみの幅d1が、回動軸40の面取り部43の幅d(
図11(3)参照)よりも十分小さいならば、幅d1の外側の面にて回動軸40が底面132cに接触することになるので、特に問題は生じない。
【0036】
図15(2)は、基本的なアイディアは
図14(1)の蓋部31と同じであるが、中空部32の内側の底面132cの中央部に隆起する着座面となる凸面239を設けるようにした。この凸面239の高さは、フランジ状の円盤部33の上面に対してH3だけ高くなるように構成した。凸面239の上面は、回動軸40の遠心力による撓みを支えるために必要十分な面積を有するようにすれば良く、回動軸40の面取り部43の幅dとほぼ同じ程度の直径か、やや広い幅d2分の凸面239を形成するようにすると良い。凸面239の高さH3は回動軸40の撓み具合を考慮して、最適な量を設定すれば良い。
【0037】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば回動軸40の形状は上述の実施例のような円柱形の形状だけに限らず、長手方向と垂直な断面形状が略四角形又は楕円形の形状であって、回動軸係合溝22に係合する部分だけが半球状に形成されたものであっても良い。また、回動軸40の長手方向の長さを50mm以上として、基本的な直径(軸部40bの直径)は4mm以下とし、試料容器30の全重量(試料61を除く)の1%未満の重量とするように構成しても良い。