(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ベアリングハウジングに隣接したタービンハウジング内におけるタービンスクロール流路とタービンインペラとの間に配設されかつ前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積を可変とする可変ノズルユニットを装備した可変容量型過給機において、
前記可変ノズルユニットは、
前記タービンハウジング内に配設された第1ノズルリングと、
前記第1ノズルリングに対して軸方向に離隔対向した位置に前記第1ノズルリングと一体的に設けられた第2ノズルリングと、
前記第1ノズルリングの対向面と前記第2ノズルリングの対向面との間に円周方向に間隔を置いて配設され、前記タービンインペラの軸心に平行な軸心周りに正逆方向へ回動可能な複数の可変ノズルと、
複数の前記可変ノズルを同期して開閉方向へ回動させるためのリンク機構と、を具備し、
前記ベアリングハウジングにおける前記タービンインペラの背面に対向する側面に、前記タービンインペラ側からの熱を遮蔽する環状の遮熱板が取付ボルトによる締結によって一体的に設けられ、前記遮熱板の内周縁部に環状の嵌合鍔が軸方向一方側へ突出して形成され、前記嵌合鍔が、前記ベアリングハウジングにおける前記タービンインペラの背面に対向する側面に形成した嵌合周溝に嵌合し、前記ベアリングハウジングと前記遮熱板との締結部が、前記遮熱板の背面側から前記タービンインペラの背面側への排気ガスの漏れを抑える環状のシール部になっており、前記第1ノズルリングの内周面と前記遮熱板の外周面との間にシール部材が設けられていることを特徴とする可変容量型過給機。
前記第2ノズルリングが、前記タービンハウジング内における前記タービンスクロール流路と前記タービンインペラの間に軸方向一方側へ突出して形成した環状の凸部を囲んでおり、前記第2ノズルリングの内周面と前記タービンハウジングの前記凸部の外周面との間に別のシール部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の可変容量型過給機。
前記第1ノズルリングに無底の複数の第1支持穴が円周方向に間隔を置いて形成され、前記第1ノズルリングの対向面の反対面側が前記タービンスクロール流路に連通し、前記第2ノズルリングに有底の複数の第2支持穴が複数の前記第1支持穴に整合するように形成され、各可変ノズルの軸方向一方側の側面に、前記第1ノズルリングの対応する前記第1支持穴に回動可能に支持される第1ノズル軸が一体形成され、各可変ノズルの軸方向他方側の側面に、前記第2ノズルリングの対応する前記第2支持穴に回動可能に支持される第2ノズル軸が一体形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の可変容量型過給機。
前記遮熱板における前記タービンインペラの背面に対向する側面に、前記タービンインペラの一部分を収容する環状の収容凹部が軸方向一方側へ窪んで形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の可変容量型過給機。
前記第1ノズルリングの内径と前記第2ノズルリングの内径、及び前記第1ノズルリングの外径と前記第2ノズルリングの外径がそれぞれ同一の寸法に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の可変容量型過給機。
【背景技術】
【0002】
近年、可変容量型過給機におけるベアリングハウジングに隣接したタービンハウジング内におけるタービンスクロール流路とタービンインペラとの間に配設される可変ノズルユニットについて種々の開発がなされており、本願の出願人も既に可変ノズルユニットについて開発して出願している(特許文献1及び特許文献2等参照)。そして、その先行技術に係る可変ノズルユニット及びその周辺の構成は、次のようになる。
【0003】
タービンハウジング内には、第1ノズルリングが配設されており、この第1ノズルリングに対して軸方向(タービンインペラの軸方向)に離隔した位置には、第2ノズルリングが第1ノズルリングと一体的に設けられている。そして、第1ノズルリングの対向面と第2ノズルリングの対向面との間には、複数の可変ノズルが円周方向(所定の円周方向)に間隔を置いて配設されており、各可変ノズルは、タービンインペラの軸心に平行な軸心周りに正逆方向(開閉方向)へ回動可能である。更に、第1ノズルリングの対向面の反対面側には、複数の可変ノズルを正逆方向へ同期して回動させるためのリンク機構が配設されている。ここで、複数の可変ノズルを正方向(開方向)へ同期して回動させると、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積(スロート面積)が大きくなると共に、複数の可変ノズルを逆方向(閉方向)へ同期して回動させると、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積が小さくなるようになっている。
【0004】
ベアリングハウジングにおけるタービンインペラの背面に対向する側面の中央部には、環状の突出部がタービンインペラの背面側へ突出して形成されている。また、ベアリングハウジングの突出部の外周面には、タービンインペラの背面側からの熱を遮蔽する環状の遮熱板が嵌合して設けられている。そして、ベアリングハウジングの突出部の外周面における遮熱板に隣接する位置には、遮熱板を第1ノズルリングの内周縁部に圧接させる方向へ付勢する波ワッシャ等の付勢部材が設けられている。ここで、第1ノズルリングと遮熱板との圧接部は、第1ノズルリングの対向面の反対面側からタービンインペラの入口側への排気ガスの漏れを抑えるためのシール部になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、第1ノズルリングの対向面の反対面側からタービンインペラの入口側への排気ガスの漏れを抑えるには、波ワッシャ等の付勢部材が必要であるものの、付勢部材の付勢力が軸方向の力として可変ノズルユニットに常に働くことになり、可変容量型過給機の運転中における可変ノズルユニットの熱変形が複雑化する傾向にある。すると、エンジン運転状況によっては、可変容量型過給機の運転中における第1ノズルリングの対向面と第2ノズルリングの対向面の平行度が低下する可能性がある。そのため、前記平行度が低下しても、可変ノズルの動作安定性、換言すれば、可変容量型過給機の動作信頼性を十分に確保できるように、通常、ノズルサイドクリアランスを大きめに設定している。
【0007】
一方、ノズルサイドクリアランスを大きめに設定すると、ノズルサイドクリアランスからの漏れ流れ(クリアランスフロー)が増大して、可変容量型過給機のタービン効率が低下することが懸念され、可変容量型過給機のタービン効率の更なる向上が望まれる。なお、ノズルサイドクリアランスとは、第1ノズルリングの対向面と可変ノズルの軸方向一方側の側面との隙間、又は第2ノズルリングの対向面と可変ノズルの軸方向他方側の側面との隙間のことをいい、前者を第1ノズルリングの対向面側のノズルサイドクリアランス、後者を第2ノズルリングの対向面側のノズルサイドクリアランスという。
【0008】
そこで、本発明は、前述の課題を解決することができる、新規な構成の可変容量型過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、ベアリングハウジング(センターハウジング)に隣接したタービンハウジング内におけるタービンスクロール流路とタービンインペラとの間に配設されかつ前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積(スロート面積)を可変とする可変ノズルユニットを装備した可変容量型過給機において、前記可変ノズルユニットは、前記タービンハウジング内に配設された第1ノズルリングと、前記第1ノズルリングに対して軸方向に離隔対向した位置に前記第1ノズルリングと一体的に設けられた第2ノズルリングと、前記第1ノズルリングの対向面と前記第2ノズルリングの対向面との間に円周方向(所定の円周方向)に間隔を置いて配設され、前記タービンインペラの軸心に平行な軸心周りに正逆方向(開閉方向)へ回動可能な複数の可変ノズルと、複数の前記可変ノズルを同期して開閉方向へ回動させるためのリンク機構と、を具備し、前記ベアリングハウジングにおける前記タービンインペラの背面(前記タービンインペラにおけるタービンディスクの背面)に対向する側面に、前記タービンインペラの背面側からの熱を遮蔽する環状の遮熱板が
取付ボルトによる締結によって一体的に設けられ(固定され)、
前記遮熱板の内周縁部に環状の嵌合鍔が軸方向一方側へ突出して形成され、前記嵌合鍔が、前記ベアリングハウジングにおける前記タービンインペラの背面に対向する側面に形成した嵌合周溝に嵌合し、前記ベアリングハウジングと前記遮熱板との締結部が、前記遮熱板の背面側から前記タービンインペラの背面側への排気ガスの漏れを抑える環状のシール部になっており、前記第1ノズルリングの内周面と前記遮熱板の外周面との間にシール部材が設けられていることを要旨とする。
【0010】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「配設され」とは、直接的に配設されたことの他に、別部材を介して間接的に配設されたことを含む意であって、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたことを含む意である。また、「軸方向」とは、タービンインペラの軸方向(換言すれば、第1ノズルリング又は第2ノズルリングの軸方向)のことをいう。更に、「取付ボルト」とは、皿ボルト、ボタンボルト、又は六角穴付きボルト等を含む意である。なお、「半径方向」とは、タービンインペラの半径方向(換言すれば、第1ノズルリング又は第2ノズルリングの半径方向)のことをいう。
【0011】
本発明の特徴によると、前記可変容量型過給機の運転中、エンジン回転数が高回転域にあって、排気ガスの流量が多い場合には、前記リンク機構を作動させつつ、複数の前記可変ノズルを正方向(開方向)へ同期して回動させる。これにより、前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスのガス流路面積(スロート面積)を大きくして、前記タービンインペラ側に多量の排気ガスを供給する。
【0012】
一方、エンジン回転数が低回転域にあって、排気ガスの流量が少ない場合には、前記リンク機構を作動させつつ、複数の前記可変ノズルを逆方向(閉方向)へ同期して回動させる。これにより、前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスのガス流路面積を小さくして、排気ガスの流速を高めて、前記タービンインペラの仕事量を十分に確保する(前記可変容量型過給機の通常の作用)。
【0013】
前記ベアリングハウジングにおける前記タービンインペラの背面に対向する側面に前記遮熱板が一体的に設けられ、前記第1ノズルリングの内周面と前記遮熱板の外周面との間に前記シール部材が設けられているため、波ワッシャ等の付勢部材を用いることなく、換言すれば、前記可変ノズルユニットに軸方向の力を常に与えることなく、前記第1ノズルリングの対向面の反対面側から前記タービンインペラの入口側への排気ガスの漏れを抑えることができる。これにより、前記可変容量型過給機の運転中における前記可変ノズルユニットの熱変形の複雑化を抑えて、前記第1ノズルリングの対向面と前記第2ノズルリングの対向面の平行度を十分に確保しつつ、ノズルサイドクリアランスを小さく設定することができる(前記可変容量型過給機の特有の作用)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、前記第1ノズルリングの対向面の反対面側から前記タービンインペラの入口側への排気ガスの漏れを抑えた上で、前記可変容量型過給機の運転中における前記第1ノズルリングの対向面と前記第2ノズルリングの対向面の平行度を十分に確保しつつ、ノズルサイドクリアランスを小さく設定できるため、前記可変容量型過給機の動作信頼性を十分に確保しつつ、ノズルサイドクリアランスからの漏れ流れを低減して、前記可変容量型過給機のタービン効率の更なる向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について
図1から
図3を参照して説明する。なお、図面に示すとおり、「L」は、左方向、「R」は、右方向、「D1」は、軸方向、「D2」は、半径方向である。
【0017】
図3に示すように、本発明の実施形態に係る可変容量型過給機1は、エンジン(図示省略)からの排気ガスのエネルギーを利用して、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)するものである。そして、可変容量型過給機1の具体的な構成等は、以下のようになる。
【0018】
可変容量型過給機1は、ベアリングハウジング(センターハウジング)3を具備しており、ベアリングハウジング3内には、ラジアルベアリング5及び一対のスラストベアリング7が設けられている。また、複数のベアリング5,7には、左右方向へ延びたロータ軸(タービン軸)9が回転可能に設けられており、換言すれば、ベアリングハウジング3には、ロータ軸9が複数のベアリング5,7を介して回転可能に設けられている。
【0019】
ベアリングハウジング3の右側には、コンプレッサハウジング11が隣接して設けられており、このコンプレッサハウジング11は、内側に、シュラウド11sを有している。そして、コンプレッサハウジング11内には、遠心力を利用して空気を圧縮するコンプレッサインペラ13がその軸心(換言すれば、ロータ軸9の軸心)C周りに回転可能に設けられている。また、コンプレッサインペラ13は、ロータ軸9の右端部に一体的に連結されたコンプレッサディスク15を備えており、このコンプレッサディスク15のハブ面15hは、左側に向かって半径方向外側(コンプレッサインペラ13の半径方向外側)へ延びている。更に、コンプレッサディスク15のハブ面15hには、複数のコンプレッサブレード17が周方向に間隔を置いて一体的に設けられており、各コンプレッサブレード17の先端縁(外縁)17tは、コンプレッサハウジング11のシュラウド11sに沿うように延びている。なお、複数のコンプレッサブレード17の他に、コンプレッサブレード17よりも軸長の短い複数の別のコンプレッサブレード(図示省略)を用い、コンプレッサディスク15のハブ面15hにコンプレッサブレード17と別のコンプレッサブレードが周方向に交互に一体的に設けられるようにしても構わない。
【0020】
コンプレッサハウジング11におけるコンプレッサインペラ13の入口側(空気の主流の流れ方向から見て上流側)には、空気を取入れるための空気取入口19が形成されており、この空気取入口19は、空気を浄化するエアクリーナ(図示省略)に接続可能である。また、ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング11との間におけるコンプレッサインペラ13の出口側(空気の流れ方向の下流側)には、圧縮された空気を昇圧する環状のディフューザ流路21が形成されている。更に、コンプレッサハウジング11の内部には、渦巻き状のコンプレッサスクロール流路23が形成されており、このコンプレッサスクロール流路23は、ディフューザ流路21に連通してある。そして、コンプレッサハウジング11の適宜位置には、圧縮された空気(圧縮空気)を排出するための空気排出口25が形成されており、この空気排出口25は、コンプレッサスクロール流路23に連通し、エンジンの吸気マニホールド(図示省略)に接続可能である。
【0021】
図2及び
図3に示すように、ベアリングハウジング3の左側には、タービンハウジング27が隣接して設けられており、このタービンハウジング27は、内側に、シュラウド27sを有している。そして、タービンハウジング27内には、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させるタービンインペラ29が軸心(タービンインペラ29の軸心、換言すれば、ロータ軸9の軸心)C周りに回転可能に設けられている。また、このタービンインペラ29は、ロータ軸9の左端部に一体的に設けられたタービンディスク31を備えており、このタービンディスク31のハブ面31hは、右側(タービンインペラ29の軸方向一方側)に向かって半径方向外側(タービンインペラ29の半径方向外側)へ延びている。更に、タービンディスク31のハブ面31hには、複数のタービンブレード33が周方向に間隔を置いて一体的に設けられており、各タービンブレード33の先端縁(外縁)33tは、タービンハウジング27のシュラウド27sに沿うように延びている。
【0022】
タービンハウジング27の適宜位置には、排気ガスを取入れるためのガス取入口35が形成されており、このガス取入口35は、エンジンの排気マニホールド(図示省略)に接続可能である。また、タービンハウジング27の内部におけるタービンインペラ29の入口側(排気ガスの主流の流れ方向から見て上流側)には、渦巻き状のタービンスクロール流路37が形成されており、このタービンスクロール流路37は、ガス取入口35に連通してある。更に、タービンハウジング27におけるタービンインペラ29の出口側(排気ガスの主流の流れ方向から見て下流側)には、排気ガスを排出するためのガス排出口39が形成されており、このガス排出口39は、排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置(図示省略)に接続可能である。
【0023】
可変容量型過給機1は、タービンインペラ29側へ供給される排気ガスの流路面積(スロート面積)を可変する可変ノズルユニット41を装備しており、この可変ノズルユニット41は、タービンハウジング27内におけるタービンスクロール流路37とタービンインペラ29との間に配設されている。
【0024】
続いて、可変ノズルユニット41の具体的な構成について説明する。
【0025】
図1及び
図2に示すように、タービンハウジング27内におけるタービンスクロール流路37とタービンインペラ29との間には、第1ノズルリング43がカップ状のサポートリング45を介してタービンインペラ29と同心状に配設されている。また、第1ノズルリング43には、無底(貫通)の複数(1つのみ図示)の第1支持穴47が円周方向(所定の円周方向)に等間隔に形成されており、第1ノズルリング43の内周面には、環状の第1段差部49が半径方向外側へ窪んで形成されている。なお、サポートリング45の外周縁部は、ベアリングハウジング3の左側部とタービンハウジング27の右側部によって挟持されている。複数の第1支持穴47は円周方向に等間隔に並んでいるが、不等間隔に並んでいても構わない。
【0026】
第1ノズルリング43に対して軸方向(タービンインペラ29の軸方向、換言すれば、左右方向)に離隔対向した位置には、第2ノズルリング51が複数(1つのみ図示)の連結ピン53を介して第1ノズルリング43と一体的かつ同心状に設けられている。また、第2ノズルリング51は、タービンハウジング27内におけるタービンスクロール流路37とタービンインペラ29の間に右方向(軸方向一方側)へ突出して形成した環状の凸部55を囲んでおり、換言すれば、タービンハウジング27の環状の凸部55の半径方向外側に位置している。そして、第2ノズルリング51には、有底の複数(1つのみ図示)の第2支持穴57が第1ノズルリング43の複数の第1支持穴47に整合するように形成されており、第2ノズルリング51の内周面には、環状の第2段差部59が半径方向外側へ窪んで形成されている。なお、複数の連結ピン53は、第1ノズルリング43の対向面と第2ノズルリング51の対向面との間隔を設定する機能を有している。
【0027】
ここで、第1ノズルリング43の対向面の反対面(右側面)側は、サポートリング45に形成した通孔(図示省略)を介してタービンスクロール流路37に連通してある。また、第1ノズルリング43の内径と第2ノズルリング51の内径、及び第1ノズルリング43の外径と第2ノズルリング51の外径は、それぞれ同一の寸法に設定されている。なお、「同一の寸法」とは、同一の寸法であることの他に、±5mmの誤差を含む意である。
【0028】
第1ノズルリング43の対向面(左側面)と第2ノズルリング51の対向面(右側面)との間には、複数の可変ノズル61がタービンインペラ29の入口側を囲むように円周方向(所定の円周方向)に等間隔に配設されている。また、各可変ノズル61は、タービンインペラ29の軸心Cに平行な軸心周りに開閉方向(正逆方向)へ回動可能である。そして、各可変ノズル61の右側面(軸方向一方側の側面)には、第1ノズル軸63が一体形成されており、各第1ノズル軸63は、第1ノズルリング43の対応する第1支持穴47に回動可能に支持されている。更に、各可変ノズル61の左側面(軸方向他方側の側面)には、第2ノズル軸65が第1ノズル軸63と同心状に一体形成されており、各第2ノズル軸65は、第2ノズルリング51の対応する第2支持穴57に回動可能に支持されている。なお、複数の可変ノズル61が円周方向に等間隔に並んでいるが、不等間隔に並んでいても構わない。各可変ノズル61は、第1ノズル軸63と第2ノズル軸65を備えた両持ちタイプであるが、第2ノズル軸65を省略して片持ちタイプにしても構わない。
【0029】
第1ノズルリング43の対向面の反対面側に形成した環状のリンク室67内には、複数の可変ノズル61を開閉方向へ同期して回動させるためのリンク機構69が配設されており、このリンク機構69は、複数の可変ノズル61の第1ノズル軸63に連動連結してある。また、リンク機構69は、例えば2009−243300号公報及び特開2009−243432号公報等に示す公知の構成からなるものであって、複数の可変ノズル61を開閉方向へ回動させる回動モータ又は回動シリンダ等の回動アクチュエータ(図示省略)に動力伝達機構71を介して接続されている。なお、リンク機構69が第1ノズルリング43の対向面の反対面側(リンク室67内)に配設される代わりに、第2ノズルリング51の対向面の反対面側に配設されるようにしても構わない。
【0030】
続いて、可変ノズルユニット41の周辺の構成について説明する。
【0031】
図1に示すように、ベアリングハウジング3におけるタービンディスク31の背面31bに対向する側面の中央部には、タービンインペラ29側からの熱を遮蔽する環状の遮熱板73が複数(1つのみ図示)の皿ボルト75による締結によって一体的に設けられている。また、遮熱板73は、タービンインペラ29と同心状に配置されており、遮熱板73の外周面は、第1ノズルリング43の内周面に嵌合してある。そして、遮熱板73の内周縁部には、環状の嵌合鍔77が右方向へ突出して形成されており、この遮熱板73の嵌合鍔77は、ベアリングハウジング3におけるタービンディスク31の背面31bに対向する側面の中央部にタービンインペラ29と同心状に形成した嵌合周溝79に嵌合してある。更に、遮熱板73におけるタービンディスク31の背面31に対向する側面には、タービンディスク31の外縁部分(タービンインペラ29の一部分)を収容する環状の収容凹部(収容段差部)80が右方向(軸方向一方側)へ窪んで形成されており、遮熱板73の外周面には、嵌入周溝81が形成されている。ここで、ベアリングハウジング3と遮熱板73との締結部Fは、遮熱板73の背面73b側からタービンディスク31の背面31b側への排気ガスの漏れを抑える環状のシール部になっている。
【0032】
第1ノズルリング43の第1段差部49の底面49u(第1ノズルリング43の内周面の一部)には、第1ノズルリング43の対向面の反対面側からタービンインペラ29の入口側への排気ガスの漏れを抑えるための2つの第1シールリング83(シール部材の一例)が自己の弾性力(第1シールリング83の弾性力)によって圧接して設けられている。また、各第1シールリング83の内周縁部は、遮熱板73の嵌入周溝81に嵌入してある。換言すれば、第1ノズルリング43の内周面と遮熱板73の外周面との間には、複数の第1シールリング83が自己の弾性力によって設けられている。
【0033】
タービンハウジング27の凸部55の外周面には、嵌入周溝85が形成されている。そして、第2ノズルリング51の第2段差部59の底面59u(第2ノズルリング51の内周面の一部)には、第2ノズルリング51の対向面の反対面側からタービンインペラ29の入口側への排気ガスの漏れを抑えるための2つの第2シールリング87(別のシール部材の一例)が自己の弾性力(第2シールリング87の弾性力)によって圧接して設けられている。また、各第2シールリング87の内周縁部は、タービンハウジング27の凸部55の嵌入周溝85に嵌入してある。換言すれば、第2ノズルリング51の内周面とタービンハウジング27の凸部55の外周面との間には、複数の第2シールリング87が自己の弾性力によって設けられている。
【0034】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0035】
ガス取入口35から取入れた排気ガスをタービンスクロール流路37を経由してタービンインペラ29の入口側から出口側へ流通させることにより、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させて、ロータ軸9及びコンプレッサインペラ13をタービンインペラ29と一体的に回転させることができる。これにより、空気取入口19から取入れた空気を圧縮して、ディフューザ流路21及びコンプレッサスクロール流路23を経由して空気排出口25から排出することができ、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)することができる。
【0036】
可変容量型過給機1の運転中に、エンジン回転数が高回転域にあって、排気ガスの流量が多い場合には、回動アクチュエータの駆動によりリンク機構69を作動させつつ、複数の可変ノズル61を正方向(開方向)へ同期して回動させる。これにより、タービンインペラ29側に供給される排気ガスの流路面積(スロート面積)を大きくして、タービンインペラ29側に多量の排気ガスを供給することができる。
【0037】
エンジン回転数が低回転域にあって、排気ガスの流量が少ない場合には、回動アクチュエータの駆動によりリンク機構69を作動させつつ、複数の可変ノズル61を逆方向(閉方向)へ同期して回動させる。これにより、タービンインペラ29側に供給される排気ガスの流路面積を小さくして、排気ガスの流速を高くして、タービンインペラ29の仕事量を十分に確保することができる(可変容量型過給機1の通常の作用)。
【0038】
ベアリングハウジング3におけるタービンディスク31の背面31bに対向する側面に遮熱板73が皿ボルト75による締結によって一体的に設けられ、第1ノズルリング43の内周面と遮熱板73の外周面との間に2つの第1シールリング83が設けられているため、波ワッシャ等の付勢部材を用いることなく、換言すれば、可変ノズルユニット41に軸方向の力を常に与えることなく、第1ノズルリング43の対向面の反対面側からタービンインペラ29の入口側への排気ガスの漏れを抑えることができる。これにより、可変容量型過給機1の運転中における可変ノズルユニット41の熱変形の複雑化を抑えて、第1ノズルリング43の対向面と第2ノズルリング51の対向面の平行度を十分に確保しつつ、ノズルサイドクリアランスを小さく設定することができる。
【0039】
特に、第1ノズルリング43の内径と第2ノズルリング51の内径、及び第1ノズルリング43の外径と第2ノズルリング51の外径がそれぞれ同一の寸法に設定されているため、可変容量型過給機1の運転中における第1ノズルリング43と第2ノズルリング51の半径方向の熱膨張差を低減して、第1ノズルリング43の各第1支持穴47と第2ノズルリング51の各第2支持穴57とのミスアライメントを抑えることができる。また、第2ノズルリング51の内周面とタービンハウジング27の凸部55の外周面との間に2つの第2シールリング87が設けられているため、第2ノズルリング51の対向面の反対面側からタービンインペラ29の入口側への排気ガスの漏れを抑えることができる。
【0040】
タービンディスク31の外縁部分が遮熱板73の環状の収容凹部80に収容されているため、可変ノズル61側からタービンディスク31の背面31b側への排気ガスの漏れを抑えることができる。また、ベアリングハウジング3と遮熱板73との締結部Fが環状のシール部になっているため、遮熱板73の背面73b側からタービンディスク31の背面31b側への排気ガスの漏れを抑えることができる。
【0041】
第1ノズルリング43の各第1支持穴47が無底(貫通穴)であって、第1ノズルリング43の対向面の反対面側がタービンスクロール流路37に連通し、第2ノズルリング51の各第2支持穴57が有底であるため、可変容量型過給機1の運転中、各可変ノズル61における第1ノズル軸63の端面に働く圧力を第2ノズル軸65の端面に働く圧力よりも十分に大きくすることができる。これにより、可変容量型過給機1の運転中に、各可変ノズル61をその圧力差によって第2ノズルリング51の対向面側に寄せて、第2ノズルリング51の対向面側のノズルサイドクリアランスからの漏れ流れを低減することができる。
【0042】
以上の如き、本発明の実施形態によれば、第1ノズルリング43の対向面の反対面側等からタービンインペラ29の入口側への排気ガスの漏れを抑えた上で、可変容量型過給機1の運転中における第1ノズルリング43の対向面と第2ノズルリング51の対向面の平行度を十分に確保しつつ、ノズルサイドクリアランスを小さく設定できるため、可変容量型過給機1の動作信頼性を十分に確保しつつ、ノズルサイドクリアランスからの漏れ流れを低減して、可変容量型過給機1のタービン効率の更なる向上を図ることができる。
【0043】
特に、可変容量型過給機1の運転中における第1ノズルリング43の各第1支持穴47と第2ノズルリング51の各第2支持穴57とのミスアライメントを抑えることができるため、可変容量型過給機1の動作信頼性をより十分に確保することができる。また、可変ノズル61側等からタービンディスク31の背面31b側への排気ガスの漏れを抑えつつ、第2ノズルリング51の対向面側のノズルサイドクリアランスからの漏れ流れを低減できるため、タービンインペラ29内におけるタービンハウジング27のシュラウド27s側の排気ガスの流れを安定させて、可変容量型過給機1のタービン効率のより一層の向上を図ることができる(可変容量型過給機1の特有の作用)。
【0044】
(変形例1)
本発明の実施形態の変形例1について
図4を参照して説明する。なお、図面に示すとおり、「L」は、左方向、「R」は、右方向、「D1」は、軸方向、「D2」は、半径方向である。
【0045】
図4に示すように、ベアリングハウジング3におけるタービンディスク31の背面31bに対向する側面の中央部に、環状の遮熱板73が複数の皿ボルト75(
図1参照)に代えて複数(1つのみ図示)のボタンボルト89による締結によって一体的に設けられるようにしても構わない。この場合には、遮熱板73がボタンボルト89等に対して半径方向へ僅かに変位が許容されることになる。なお、図示は省略するが、ボタンボルト89に代えて、例えば、六角ボルト、六角穴付ボルト、又は星型穴付ボルト等を用いても構わない。
【0046】
そして、本発明の実施形態の変形例1においても、前述の本発明の実施形態と同様の作用及び効果を奏するものである。
【0047】
(変形例2)
本発明の実施形態の変形例2について
図5を参照して説明する。なお、図面に示すとおり、「L」は、左方向、「R」は、右方向、「D1」は、軸方向、「D2」は、半径方向である。
【0048】
図5に示すように、ベアリングハウジング3におけるタービンディスク31の背面31bに対向する側面の中央部に、環状の遮熱板73(
図1参照)が複数の皿ボルト75(
図1参照)等の取付ボルトによる締結によって一体的に設けられる代わりに、タービンインペラ29側からの熱を遮蔽する別の環状の遮熱板91がレーザ溶接によって一体的に設けられている。また、遮熱板91は、タービンインペラ29と同心状に配置されており、遮熱板91の外周面は、第1ノズルリング43の内周面に嵌合してある。ここで、ベアリングハウジング3と遮熱板91との溶接部Wは、遮熱板91の背面91b側からタービンディスク31の背面31b側への排気ガスの漏れを抑える環状のシール部になっている。なお、レーザ溶接に代えて、TIG溶接、MIG溶接、電子ビーム溶接、又は摩擦溶接等の別の溶接手法を用いても構わない。
【0049】
遮熱板91の内周縁部には、環状の嵌合鍔93が半径方向内側へ突出して形成されており、この遮熱板91の嵌合鍔93は、ベアリングハウジング3におけるタービンディスク31の背面31bに対向する側面の中央部にタービンディスク31側へ突出して形成した嵌合凸部95の外周面に嵌合してある。また、遮熱板91の外周面には、嵌入周溝97が形成されており、各第1シールリング83の内周縁部は、遮熱板91の嵌入周溝97に嵌入してある。
【0050】
そして、本発明の実施形態の変形例2においても、前述の本発明の実施形態と同様の作用及び効果を奏するものである。
【0051】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば、次のように、種々の態様で実施可能である。
【0052】
即ち、ベアリングハウジング3におけるタービンディスク31の背面31bに対向する側面の中央部に遮熱板73が取付ボルトによる締結又は溶接によって一体的に設けられる代わりに、ベアリングハウジング3又は遮熱板73の一方に形成された圧入用の凹部と、ベアリングハウジング3又は遮熱板73の他方に形成された圧入用の凸部とによる圧入作用によって一体的に設けられるようにしても構わない。また、第1シールリング83又は第2シールリング87の個数を1つ又は3つ以上に変更しても構わなく、第1シールリング83又は第2シールリング87の合口形状はストレートカット、ステップカット、又はアングルカット等のいずれであっても構わない。更に、シール部材又は別のシール部材として、第1シールリング83又は第2シールリング87の代わりに、メタルOリング又はメタルガスケット(断面U字形状のメタルガスケット、断面V字形状のメタルガスケット、断面C字形状のメタルガスケット等)を用いても構わない。
【0053】
そして、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。