特許第6331483号(P6331483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331483
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】光硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/12 20060101AFI20180521BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20180521BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C08F290/12
   G09F9/00 343
   G02F1/1339 500
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-40811(P2014-40811)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2014-196473(P2014-196473A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年11月28日
(31)【優先権主張番号】特願2013-46060(P2013-46060)
(32)【優先日】2013年3月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】今井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】大槻 直也
(72)【発明者】
【氏名】霍 ▲でん▼佳
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/084503(WO,A1)
【文献】 特開2012−144634(JP,A)
【文献】 特開2008−281997(JP,A)
【文献】 特開2012−145751(JP,A)
【文献】 特開2009−186963(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/105162(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/12
C08F 290/04
G09F 9/00
C09J 109/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)〜(D)成分を含む光硬化性組成物;
(A)成分:(メタ)アクリル基を有するイソプレン重合体
(B)成分:水酸基を有するイソプレン重合体
(C)成分:芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーおよびアルキル(メタ)アクリレートモノマーから選択される少なくとも1種類の(メタ)アクリレートモノマー
(D)成分:水素添加されたテルペン樹脂。
【請求項2】
前記(C)成分における前記芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーの割合は、前記(C)成分の総量に対し、30〜100質量%である、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
前記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成分を100〜600質量部、前記(C)成分を150〜350質量部、前記(D)成分を250〜450質量部含む、請求項1または2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
屈折率が1.510〜1.525である、請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
厚膜硬化性が2mm以上であり、伸び率が250%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
表示パネル用封止材であって、請求項1〜5のいずれかに記載の光硬化性組成物を含み、前記表示パネルの保護層が無アルカリガラスである、表示パネル封止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射により硬化する光硬化性組成物に関する。より詳細には、本発明は、軟質で、高い耐湿性を有する硬化物を形成することが可能であり、かつ、厚膜硬化性に優れた光硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2004−077887号公報)の様に、従来よりタッチパネルが付与された表示パネルを組み立てる際に、タッチパネルと表示素子との間に、軟質な光硬化性樹脂を充填する技術が知られており、当該光硬化性樹脂は表示パネルを応力から保護するための緩衝材としての役割を果たす。また、テレビやパソコン用ディスプレイにおいては、アクリル板やガラス板からなる保護層と表示素子との間に光硬化性樹脂が用いられることもある。しかしながら、被着体はその材質により屈折率が変わるため、光学特性の観点から、被着体の屈折率に合わせるように光硬化性樹脂の屈折率を変える必要がある。光硬化性樹脂の屈折率は、硬化前の光硬化性組成物の原料・組成によって決まる。そのため、光硬化性組成物においては、光学特性を調整すると共に耐熱性、耐湿性等の物理特性を両立させることが困難であった。特に、光硬化性樹脂が吸湿すると白濁して光学特性が低下することや熱により黄変することが知られている。一方、耐熱性(60℃雰囲気で1000時間)や耐湿性(85℃×85%RH雰囲気で1000時間)を向上させるためにはガラス転移点を上げた方が良いが、その際に硬化物の黄変が懸念され、また硬化物が硬質になるために緩衝材としての役割をなさないことが想定される。したがって、これら光学特性と物理特性とを両立させることが課題であった。
【0003】
また、軟質な光硬化性樹脂は、主骨格が長く1分子当たりに含まれる(メタ)アクリル基の数が少ないオリゴマーを用いることで、硬化物が軟質になる。しかしながら、その構造故に光硬化性が低下する。これは、光照射の仕方により未硬化な部位を残すことになると共に、硬化物の膜厚が非常に薄くなりかねない。特許文献2(特開2009−186955号公報、国際公開第2008/123611号パンフレット)の様に表示素子の側面から光を照射する方法をとらないと陰部(shadow zone)が硬化しない。また、タッチパネル側から光照射しても、タッチパネルの部材で照射が部分的に吸収されてしまい光硬化性樹脂まで届く光の積算光量が低下する。よって、厚膜硬化性が低いと硬化状態が不安定になるおそれがある。また、最表面層がタッチパネルやその代わりとして保護層を使用する表示パネルの場合には、当該最表面層と光硬化性樹脂の屈折率が合わないと光学特性が得られず、1種類の光硬化性樹脂でどの様な種類の最表面層に対しても充分な光学特性が得られるという訳ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、軟質で、高い耐湿性を有する硬化物を形成することが可能であり、かつ、厚膜硬化性に優れた光硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、以下の所定の成分を配合することにより、所望の物性を有する光硬化性組成物が得られることを見出しした。
【0006】
すなわち、本発明の光硬化性組成物は、下記(A)〜(D)成分を含む。
(A)成分:(メタ)アクリル基を有するイソプレン重合体
(B)成分:水酸基を有するイソプレン重合体
(C)成分:芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーおよびアルキル(メタ)アクリレートモノマーから選択される少なくとも1種類の(メタ)アクリレートモノマー
(D)成分:水素添加されたテルペン樹脂。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の光硬化性組成物は、下記(A)〜(D)成分を含む。
(A)成分:(メタ)アクリル基を有するイソプレン重合体
(B)成分:水酸基を有するイソプレン重合体
(C)成分:芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーおよびアルキル(メタ)アクリレートモノマーから選択される少なくとも1種類の(メタ)アクリレートモノマー
(D)成分:水素添加されたテルペン樹脂。
【0008】
本発明によると、軟質な硬化物を形成するにもかかわらず、優れた厚膜硬化性を有すことから、硬化ムラが発生しないと共に陰部の硬化性に優れた光硬化性組成物を提供することができる。さらに高い耐湿性を有するために白濁を起こさずに優れた光学特性の発現を可能にする。本発明の光硬化性組成物は、特にナトリウムやカリウムなどのアルカリ成分を含まない無アルカリガラスを保護層とする表示パネルの封止に好適である。
【0009】
以下、本発明の詳細を説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」のいずれか一方または両方を意味する。また、「光硬化性組成物」を単に「組成物」とも称する。
【0010】
本発明において、(A)成分は、(メタ)アクリル基を有するイソプレン重合体である。(メタ)アクリル基の結合位置は、特に制限されず、イソプレン重合体の末端でも主骨格中でもよい。(A)成分としては、具体的には株式会社クラレ製のUC−203、UC−102などが知られているが、これらに限定されるものではない。また、これらは、2種類以上を組合せて使用しても良い。
【0011】
本発明において、(B)成分は、水酸基を有するイソプレン重合体であって、上記(A)成分以外のもの(すなわち、水酸基を有し、(メタ)アクリル基を有しないイソプレン重合体)をいう。具体的には、出光興産株式会社製のPoly ip、株式会社クラレ製のTL−20などが知られているが、これらに限定されるものではない。また、これらは、2種類以上を組合せて使用しても良い。
【0012】
(A)成分100質量部に対して、(B)成分は100〜800質量部添加されている事が好ましく、より好ましくは、100〜600質量部である。(B)成分が100質量部以上であると、硬化物の伸び率が向上すると共に硬度を低くすることができ(すなわち、軟質な硬化物が得られ)、800質量部以下であると、優れた光硬化性が発揮される。
【0013】
本発明において、(C)成分は、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーおよびアルキル(メタ)アクリレートモノマーから選択される少なくとも1種類の(メタ)アクリレートモノマーであって、上記(A)成分以外のものをいう。なお、(メタ)アクリレートモノマーとは、1分子中に(メタ)アクリル基を少なくとも1つ有する化合物である。(C)成分は、粘度が高い(A)成分および(B)成分を希釈して組成物を低粘度化する目的があるため、(C)成分の分子量としては1000以下が好ましい。本発明においては、(C)成分中における芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーの割合は30〜100質量%であることが好ましく(この際、アルキル(メタ)アクリレートモノマーの割合は0〜70質量%であることが好ましく)、40〜80質量%であることがより好ましい(この際、アルキル(メタ)アクリレートモノマーの割合は20〜60質量%であることが好ましい)。(C)成分における(メタ)アクリレートモノマーの種類・割
合により硬化物の屈折率を調整することができるが、上記割合とすることによりガラス板に近い屈折率の硬化物を得ることができる。
【0014】
芳香族基を有する(メタ)アクリルモノマーは、分子内に少なくとも1つの芳香族基を有している(メタ)アクリルモノマーを意味する(ただし、上記(A)成分は除く)。具体的には、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、2種類以上を組合せて使用しても良い。
【0015】
アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、直鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーおよび分岐アルキル(メタ)アクリレートモノマーのいずれであってもよい。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なかでも、炭素原子数10〜20のアルキル(メタ)アクリレートモノマーを用いることが好ましく、炭素原子数10〜20の直鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーを用いることがより好ましい。具体的には、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレートを用いることが好ましいが、これらに限定されるものではない。また、これらは、2種類以上を組合せて使用しても良い。
【0016】
(A)成分100質量部に対して、(C)成分は100〜400質量部添加されている事が好ましく、より好ましくは150〜350質量部である。(C)成分が400質量部以下であると優れた光硬化性が発揮され、100質量部以上であると光硬化性組成物の粘度が高くなり過ぎるのを防ぐことができる。なお、(C)成分の希釈により、光硬化性組成物の粘度としては1000〜3000mPa・sである事が好ましい。
【0017】
本発明において(D)成分は、水素添加されたテルペン樹脂である。水素添加されたテルペン樹脂とは、テルペン樹脂の分子に残留している不飽和結合を飽和状態に還元したものである。なお、テルペン樹脂としては、テルペン骨格のみから合成されたテルペン樹脂だけでなく、フェノールなどの芳香族環で変性したテルペン樹脂も含まれる。他の成分(上記(A)〜(C)成分)に対する溶解性の観点から、(D)成分は融点が150℃以下のものが好ましい。具体例としては、ヤスハラケミカル株式会社製のクリアロンP85、P105、P115などが知られているが、これらに限定されるのもではない。また、これらは、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0018】
(A)成分100質量部に対して、(D)成分は200〜500質量部添加されていることが好ましく、より好ましくは250〜450質量部である。(D)成分が500質量部以下であると、伸び率が高くなりすぎて接着性が低下してしまうのを防ぐことができ、200質量部以上であると、伸び率が低くなり過ぎたり硬度が高くりすぎて硬化物が硬質化したりするのを抑制することができる。
【0019】
本発明は光硬化性を付与する目的で、(E)成分として光開始剤を使用してもよい。光開始剤としては、可視光線、紫外線、X線、電子線等のエネルギー線によりラジカル種を発生するラジカル系光開始剤であれば特に限定されない。具体的には、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[
4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0020】
上記ラジカル系光開始剤に変えてまたはそれと共に、(E)成分としてカチオン系光開始剤を使用することもできる。前記カチオン系光開始剤の具体例としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられるが、具体的にはベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロフォスフェート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロボーレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロボーレート、4,4‘−ビス[ビス(2−ヒドロキシエトキシフェニル)スルフォニオ]フェニルスルフィドビスヘキサフルオロフォスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。なお、上記ラジカル系光開始剤およびカチオン系光開始剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0021】
(A)成分が100質量部に対して、(E)成分は5〜40質量部を添加されていることが好ましく、より好ましくは10〜30質量部である。(E)成分が5質量部以上であると光硬化性が良好になる。一方、(E)成分が40質量部以下であると保存時に増粘すること無く保存安定性を維持することができる。
【0022】
本発明の組成物は、上記成分以外に、保存安定性を保つために重合禁止剤を使用することもできる。ただし、重合禁止剤は添加量が多すぎると保存安定性が良くなる一方で、反応性が遅くなるため0.001〜0.1重量%にすることが好ましい。重合禁止剤の具体例としては、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール等のキノン系重合禁止剤;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール系重合禁止剤;アルキル化ジフェニルアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のアミン系重合禁止剤;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル系重合禁止剤などが上げられるが、これに限定されるものではない。また、これらは、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0023】
本発明の組成物は、本発明の特性を損なわない範囲において炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム等の無機充填剤、難燃剤、有機充填剤、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤等の添加剤を適量配合しても良い。これらの添加により樹脂強度・接着強さ・作業性・保存性等に優れた組成物およびその硬化物が得られる。
【0024】
本発明の組成物は、液晶表示パネル等の表示パネルにおいて、保護層が無アルカリガラスである場合の封止剤として好適に用いられる。したがって、本発明の他の一形態によると、上記光硬化性組成物を含み、保護層が無アルカリガラスである表示パネルに適した封止剤が提供される。当該封止剤は、その屈折率が無アルカリガラスの屈折率(1.51〜1.52)と近いため、無アルカリガラスを被着体とした場合に、良好な光学特性を発揮させることができる。
【実施例】
【0025】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0026】
組成物を調製するために下記成分を準備した。
(A)成分:(メタ)アクリル基を有するイソプレン重合体
・イソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物(UC−203 株式会社クラレ製)
(B)成分:水酸基を有するイソプレン重合体
・分子末端に水酸基を有するポリイソプレン(Poly ip 出光興産株式会社製)
(B’)成分):(B)成分以外の重合体
・イソプレン重合物の無水マレイン酸付加物(LIR−403 株式会社クラレ製)
・分子末端に水酸基を有するポリブタジエン(Poly BD 出光興産株式会社製)
・分子量が28000のポリイソプレン(LIR−30 株式会社クラレ製)
・分子量が54000のポリイソプレン(LIR−50 株式会社クラレ製)
・分子量が1100のポリブタジエン(B−1000 日本曹達株式会社製)
・分子量が3200のポリブタジエン(B−3000 日本曹達株式会社製)
(C)成分:芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーとアルキル(メタ)アクリレートモノマーから選択される少なくとも1種類の(メタ)アクリレートモノマー
・ベンジルアクリレート(FA−BZA 日立化成工業株式会社製)
・ラウリルアクリレート(ライトアクリレートL−A 共栄社化学株式会社製)
(C’)成分:(C)成分以外の(メタ)アクリレートモノマー
・イソボルニルアクリレート(ライトアクリレートIB−XA 共栄社化学株式会社製)・イソボルニルメタクリレート(ライトエステルIB−X 共栄社化学株式会社製)
・ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(FA−512M 日立化成工業株式会社製)
・2−ヒドロキシプロピルアクリレート(ライトエステルHOP−A 共栄社化学株式会社製)
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA 株式会社日本触媒製)
・4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA 日本化成株式会社製)
・アクリロイルモルホリン(ACMO 興人フィルム&ケミカルズ株式会社製)
・ジメチルアクリルアミド(DMAA 興人フィルム&ケミカルズ株式会社製)
(D)成分:水素添加されたテルペン樹脂
・融点が85℃のテルペン系水素化物(クリアロンP85 ヤスハラケミカル株式会社製)
・融点が105℃のテルペン系水素化物(クリアロンP105 ヤスハラケミカル株式会
社製)
光開始剤
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184 BASF製)。
【0027】
[参考例1〜10]
(A)成分および(C)成分(または(C’)成分)を秤量して30分撹拌した。詳細な調製量は表1に従い、数値は全て質量部で表記する。また、相溶性確認と粘度測定を行い、その結果も表1にまとめた。
【0028】
[相溶性確認]
JIS R 3503に対応する直径15φの試験管(化学分析用ガラス器具)または同等の形状のものに深さ50mm以上を注ぎ、試料を目の高さに持ち上げる。入光方向及び暗方向について目視にて確認する。透明または白濁かの確認を行い「相溶性」とする。透明であれば相溶性が良好であることを意味し、白濁であれば相溶性が悪いことを意味する。
【0029】
[粘度測定]
上記参考例1〜10で調製した組成物1ccを採取して、測定用カップに吐出する。以下の条件で、EHD型粘度計(東機産業株式会社製)にて粘度測定を行った。その結果を「初期の粘度(Pa・s)」とする。作業性の観点から、組成物としては1000〜3000mPa・sの粘度が好ましく、最も好ましくは1500〜2500mPa・sである。当該粘度範囲であれば塗布後の組成物の広がりが良く、被着体に対して塗膜厚が均等になりやすい。参考例1〜10の場合、粘度が10000mPa・s未満であれば、組成物として粘度が3000mPa・s以下になる可能性が高い。
測定条件
コーンローター:1°×R24
回転速度:10rpm
測定時間:1分
測定温度:25℃(恒温槽により温度制御する)。
【0030】
【表1】
【0031】
(C)成分または(C’)成分である(メタ)アクリルモノマーの構造により、(A)成分との相溶性に違いが発生する。さらには、相溶性が良好であると粘度が低くなることも確認された。両者を考慮すると、参考例1と2で用いた(C)成分が最も好ましい。
【0032】
[実施例1〜3、比較例1〜8]
(A)成分〜(C)成分(比較例では(B)成分に代えて(B’)成分を使用)を秤量して30分撹拌した。その後、(D)成分と光開始剤を秤量して、さらに30分撹拌した。詳細な調製量は表2に従い、数値は全て質量部で表記する。
【0033】
【表2】
【0034】
実施例1〜3および比較例1〜8に対して、下記に記載の方法に従い、外観(硬化前)確認、外観(硬化後)確認、厚膜硬化性測定、硬度測定、伸び率測定、硬化収縮率測定、耐湿性試験後の外観確認を行い、その結果を表3にまとめた。
【0035】
[外観(硬化前)確認]
JIS R 3503に対応する直径15mmの試験管(化学分析用ガラス器具)または同等の形状のものに深さ50mm以上を注ぎ、試料を目の高さに持ち上げる。入光方向及び暗方向について目視にて確認する。無色透明、有色透明または白濁かの確認を行い「外観(硬化前)」とする。本願発明においては、無色透明であることが好ましい。
【0036】
[外観(硬化後)確認]
一方の2.0mm×50mm×100mmの寸法の無色透明ソーダガラス上に、50mgの組成物を滴下し、もう一方のソーダガラスと貼り合わせて、積算光量3000mJ/cmで光硬化させて肉眼にて外観を確認する。無色透明、有色透明または白濁かの確認を行い「外観(硬化後)」とする。本願発明においては、無色透明であることが好ましい。
【0037】
[厚膜硬化性測定]
内径34mm×高さ40mmの穴を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の円柱形状の容器の底部に蓋をして、前記容器に組成物を充填する。前記容器の真上から積算光量3000mJ/cmの照射を行い組成物を光硬化させた。その後、硬化物を容器から取り出して、未硬化部分をガーゼで拭き取る。硬化物は、中央部付近5ヶ所をダイヤルゲージにて測定し平均値を「厚膜硬化性(mm)」とする。厚膜硬化性は2mm以上
であることが好ましく、さらに好ましくは3mm以上である。なお、下記表3における数値の単位は全てmmである。
【0038】
[硬度測定]
容器に均一に厚さ6mmになる様に組成物を滴下し、真上から積算光量3000mJ/cmの照射を行い組成物を光硬化させる。A型デュロメータの加圧基準面を硬化物表面に平行に保ちながら試料表面に5Nの力で押しつけ、加圧基準面と試料とを密着させた時のデュロメータの最大値を読み取る。当該最大値を「硬度」とする。硬度は10以下が好ましい。
【0039】
[伸び率測定]
積算光量3000mJ/cmにより組成物を光硬化して、厚さ0.5mm×幅20mm×長さ150mmの矩形の試験片を作成する。引張り試験器(テンシロン、オリエンテック社)により、環境温度25℃、引張速度50mm/minで測定を行い、破断するまでの最大の長さを測定する。(最大の長さ)/(初期の長さ)×100により算出された数値を「伸び率(%)」とする。伸び率は200%以上が好ましく、さらに好ましくは250%以上である。なお、下記表3における数値の単位は全て%である。
【0040】
[硬化収縮率測定]
積算光量3000mJ/cmで光硬化した硬化物の「空気中での質量」を測定した後に、「水中(蒸留水)での質量」を測定して、数式1より「硬化物の比重」を求める。比重カップ法にて「組成物の比重」を測定して、「組成物の比重」と「硬化物の比重」から数式2より「硬化収縮率(%)」を算出する。本願発明においては、硬化収縮率が2.0%以下であることが好ましい。なお、下記表3における数値の単位は全て%である。
【0041】
【数1】
【0042】
[耐湿性試験後の外観確認]
外観(硬化後)確認と同様のテストピースを作成し、60℃、95%RH(相対湿度)の雰囲気下に1200時間静置後の外観を肉眼にて確認する。無色透明、有色透明または白濁かの確認を行い「耐湿性試験後の外観」とする。本願発明においては、耐湿性試験後に無色透明であることが好ましい。
【0043】
【表3】
【0044】
(B)成分を用いた実施例1〜3は、(B’)成分用いた比較例と比較して、硬度および伸び率の点で良好な結果が得られた。比較例4は実施例1〜3と比較して、硬度および伸び率の点で近い値を示したが、厚膜硬化性が低く、被着体の形状によっては硬化状態が不安定になるおそれがある。はっきりした理由は分からないが、比較例4の(B’)成分は、末端に水酸基を有していても主骨格がポリブタジエンであることで厚膜硬化性が低下したものと考えらえる。また無変性のポリブタジエンやポリイソプレンを用いた比較例5〜8では、組成物の白濁や耐湿性試験後の外観で変色が発生している。
【0045】
[実施例4〜9]
(A)成分〜(C)成分を秤量して30分撹拌した。その後、(D)成分と光開始剤を秤量して、さらに30分撹拌した。詳細な調製量は表4に従い、数値は全て質量部で表記する。さらに、(C)成分中における芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーの割合(%)も合わせて記載した。
【0046】
上記の実施例1および実施例4〜9について、下記に記載の方法に従い、屈折率測定を行った。また、外観(硬化前)確認、外観(硬化後)確認、厚膜硬化性測定、硬度測定、伸び率測定を行い、その結果を表5にまとめた。屈折率測定以外は上記測定と同じ方法により行われた。
【0047】
[屈折率測定]
組成物をアッベ屈折率計を用いて、20℃雰囲気下でD線(589.6nm)により屈折率を測定する。特に、被着体の材質が液晶パネルに用いられる無アルカリガラスである場合は、無アルカリガラスの屈折率が1.51〜1.52なので、組成物の屈折率は1.510〜1.525であることが好ましい。
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
実施例1および実施例4〜9は、被着体であるガラスの屈折率に近く、当該材質には光学的に適した組成物である。特に、表示パネルに使用される無アルカリガラスに対しては、屈折率が1.510〜1.525であることが好ましく、実施例1及び実施例4〜7が好適であると考えられる。その他、厚膜硬化性、硬度、伸び率についても、所望の特性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、硬化物が軟質であるが厚膜硬化性に優れているため、構造が複雑な表示パネルにおいても硬化不良を生じることが無い。また、耐湿性試験後も硬化物が白濁や変色することが無く良好である。