(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記記憶手段及び決定手段は、上記設定手段、検出手段、及び算出手段を用いたPID(Propotional Integral Derivative)制御系に対して追加されたものであることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明をDLP(登録商標)方式のプロジェクタ装置に適用した場合の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係るプロジェクタ装置10の概略機能構成を示す図である。同図で入力部11は、例えばピンジャック(RCA)タイプのビデオ入力端子、D−sub15タイプのRGB入力端子、HDMI(登録商標)(High−Definition Multimedia Interface)端子などにより構成される。入力部11に入力された各種規格のアナログまたはデジタルの画像信号は、入力部11で必要に応じてデジタル化された後に、システムバスSBを介して画像変換部12に送られる。
【0011】
画像変換部12は、一般にスケーラあるいはフォーマッタとも称され、入力されるデジタル値の画像データを、投影に適した所定フォーマットの画像データに統一して投影処理部13へ送る。
【0012】
この際、OSD(On Screen Display)用の各種動作状態を示すシンボル等のデータも必要に応じて画像変換部12により画像データに重畳加工され、加工後の画像データを投影処理部13へ送る。
【0013】
投影処理部13は、送られてきた画像データに応じて、所定のフォーマットに従ったフレームレート、例えば120[フレーム/秒]と色成分の分割数、及び表示階調数を乗算した、より高速な時分割駆動により、空間的光変調素子であるマイクロミラー素子14を表示するべく駆動する。
【0014】
このマイクロミラー素子14は、アレイ状に配列された複数、例えばWXGA(Wide eXtended Graphic Array)(横1280画素×縦800画素)分の微小ミラーの各傾斜角度を個々に高速でオン/オフ動作して画像を表示することで、その反射光により光像を形成する。
【0015】
一方で、光源部15から時分割でR(赤色)、G(緑色),B(青色)の原色光、及びYe(イエロー),Mg(マゼンタ),Cy(シアン)の補色光が所定の順序で循環的に出射される。この光源部15からの原色または補色の光が、ミラー16で全反射して上記マイクロミラー素子14に照射される。
【0016】
そして、マイクロミラー素子14での反射光で光像が形成され、形成された光像が投影レンズ部17を介して、被投影対象となるスクリーン(不図示)に投影表示される。
【0017】
光源部15は、発光素子として、赤色光を発するLED(発光ダイオード)、緑色光を発するLED、及び青色光を発するLEDを有するものとする。
【0018】
上記投影処理部13は、上記マイクロミラー素子14での画像の表示による光像の形成と、上記光源部15内の発光素子としてのLEDの各発光とを、後述するCPU19の制御の下に実行する一方で、デジタル電源18に対してセグメント切換タイミングパルスを送出し、またこのデジタル電源18と電源制御用のコマンド信号の送受を行なう。
【0019】
上記デジタル電源18は、このプロジェクタ装置10用に与えられるAC電源から各回路に必要な多数の直流電圧値を生成して供給すると共に、光源部15に対してLEDを駆動するべく必要な電力を供給する。
【0020】
図2は、上記デジタル電源18内の光源部15を駆動する部分の構成を示す。すなわちデジタル電源18内では、光源部15に印加する電圧を電圧調整部31により調整する。電圧が調整された電力が光源部15内の負荷であるLEDに供給される過程で、その電流値(光源電流値)を電流測定部
(電流検出部)32が測定(検出)する。電流測定部32での測定結果はDSP(Digital Signal Processor)33にフィードバックされる。DSP33では、上記投影処理部13から与えられるセグメント切換タイミングパルスと電源制御コマンドによりその時点で駆動する発光素子に流れる電流値に対するフィードバック制御を行ない、上記電圧調整部31での電圧値を調整する。
【0021】
上記各回路の動作すべてをCPU19が制御する。このCPU19は、メインメモリ20及びプログラムメモリ21と直接接続される。メインメモリ20は、例えばSRAMで構成され、上記CPU19のワークメモリとして機能する。プログラムメモリ21は、電気的に書換可能な不揮発性メモリで構成され、上記CPU19が実行する動作プログラムや各種定型データなどを記憶する。換言すれば、CPU19は上記メインメモリ20及びプログラムメモリ21を用いて、このプロジェクタ装置10内の制御動作を実行する。
【0022】
上記CPU19は、操作部22からのキー操作信号に応じて各種投影動作を実行する。
この操作部22は、プロジェクタ装置10の本体に設けられるキー操作部と、このプロジェクタ装置10専用の図示しないリモートコントローラからの赤外光を受光する赤外線受光部とを含み、ユーザが本体のキー操作部またはリモートコントローラで操作したキーに基づくキー操作信号をCPU19へ直接出力する。
【0023】
上記CPU19はさらに、上記システムバスSBを介して音声処理部23とも接続される。音声処理部23は、PCM音源等の音源回路を備え、投影動作時にシステムバスSBを介して与えられる音声データをアナログ化し、スピーカ部24を駆動して拡声放音させ、あるいは必要によりビープ音等を発生させる。
【0024】
次に
図3により、上記デジタル電源18とその駆動対象となる光源部15の電気回路の基本モデルの構成を示す。電源電圧Vpが、常開接点(通常時に開である接点)であるスイッチSW1を介して、他端が接地された常開接点であるスイッチSW4の一端と、インダクタンスLの一端とに与えられる。同インダクタンスLの他端は、他端が接地された常開接点であるスイッチSW2の一端と、同じく常開接点であるスイッチSW3の一端とに接続される。上記スイッチSW3の他端が、他端が接地されたコンデンサCの一端と接続されると共に、上記電流測定部32を構成する電流計を介して、駆動対象となるLED15Xのカソードにも接続される。同LED15Xのアノードは、他端が接地された常開接点であるスイッチSW5の一端と接続される。
【0025】
ここでLED15Xは、光源部15内のR,G,Bの原色光を発するLEDをモデル化したものであり、各色のLED毎に設定電圧は異なるものの、同様の回路構成を有する。
【0026】
上記各スイッチSW1〜SW5はいずれも、上記DSP33からの操作信号によりオン/オフ制御される。上記スイッチSW1,SW2が連動して動作する一方で、上記スイッチSW3,SW4が連動して動作する。さらに、電流測定部32の電流計での測定値がDSP33へ送られる。
【0027】
次に上記実施形態の動作について説明する。
図4は上記
図3のモデル回路に対するDSP33による制御処理タイミングを示す図である。
図4(A)は、カラー画像の1フレームを構成する各色セグメント、例えばR,G,B,Ye,Mg,Cyを切替えるために、上記投影処理部13から各セグメントの開始タイミング当初に与えられるセグメント切換えパルスを時間的に拡大して示す。DSP33は、このセグメント切換えパルスの幅に比して十分に短い、数[μ秒]程度の周期で制御サイクルを設定している。1制御サイクルにおいては、詳細は後述するが、「電流測定部32からの出力値測定(「ADC」)」処理、「フィルタ計算によるデューティ計算(「計算」)」処理、「PWM(パルス幅変調)駆動による電圧調整でのデューティを設定(「PWM設定」)」処理を行ない、且つ上記「ADC」処理と「計算」処理との間のタイミングで「割込み」処理を受付ける。
【0028】
(
図4における処理スパンは、後述の
図6で説明する処理(各期間)のタイムスパンに比べて十分に短い。)
図4(A)に示すセグメント切換えパルスが立上がった後の最初の制御サイクルにおいて、DSP33は
図4(B)に示すスイッチSW1,SW2への操作信号と、
図4(C)に示すスイッチSW3,SW4への操作信号とを図示する如く制御すると共に、
図4(D)に示す如くスイッチSW5への操作信号を継続にオンして、LED15Xを点灯駆動させる。この間、DSP33は上記した「出力値測定」処理、「デューティ計算」処理、「PWM設定」処理を制御サイクルに従って繰返すことで、出力値からPWM制御のデューティ(操作量)へのフィードバックを行なって、出力値を目標の値に収束させる。
【0029】
図4(A)に示すセグメント切換えパルスが立下がった後の最初の制御サイクルにおいて、DSP33は
図4(B)〜
図4(D)に示すように上記スイッチSW1〜SW5への各操作信号をいずれもオフとして、次のセグメントの駆動状態となるまで、上記フィードバック制御を停止する。
【0030】
次に上記DSP33が実行する制御処理の詳細について説明する。
図5は、上記DSP33が実行するフィードバック制御時の処理内容を示すフローチャートである。
【0031】
なおDSP33は、カラー画像1フレームを構成する各色セグメントにおいて、直前の過去数フレーム乃至数十フレームを学習期間(後述する「学習点灯」期間)として同色セグメントでの測定値を記憶しておくものとする。
【0032】
上述したようにDSP33は、制御サイクルの当初に上述した如く出力電力の値を、例えば電流測定部32により測定させ(ステップS01)、その測定値を取得する。次に、DSP33は、取得した測定値に基づいてフィルタ処理によるPWM制御のデューティ比を計算する(ステップS02)。
【0033】
計算後、DSP33はその時点が、セグメント切換え直後から予め設定された制御サイクルの回数内の学習期間中であるか否かを判断する(ステップS03)。
【0034】
ここで学習期間ではないと判断された場合に、DSP33は直前のステップS02で計算により得たデューティ比を設定して駆動させ(ステップS04)、以上で当該制御サイクルでの処理を終えて、次の制御サイクルに移行するべく上記ステップS01からの処理に戻る。
【0035】
また上記ステップS03で学習期間中であると判断された場合、DSP33はフィルタ処理で計算により得たデューティ比に対し、各セグメント毎、各光源素子毎に学習期間の回数分を考慮した以下の補正データを算出して加える(ステップS05,S06)。
【0036】
この補正データ(学習データ)を、例えば
Adj.[x][seg][i]
(但し、x:光源素子(R,G,B)、
seg:セグメント(R,G,B,Ye,Mg,Cy)、
i:切換え直後からの制御回数値(サイクル数)。)
とすると、DSP33は、上記Adj.[x][seg][i]の値分だけデューティ比に補正を加えると共に、学習データの更新を行なう(ステップS07)。
【0037】
この学習データの更新方法として、例えば
Adj.[x][seg][i−α]
(但し、α:PWMでデューティを設定してから波形に変化が現れるまでの遅延時間(ハード構成に依存する))
に対し、
[学習係数(学習定数、パラメータ)]×([目標値]−[測定値(検出値)])
を加えるものとする。
【0038】
その後、DSP33は、補正したデューティ比を設定して駆動回路を駆動させ(ステップS04)、以上で当該制御サイクルでの処理を終えて、次の制御サイクルに移行するべく上記ステップS01からの処理に戻る。
【0039】
[上記学習データの計算方法に係る第1の態様]
光源として出力電力が目標値に足りなかった場合よりもオーバーした場合の方が、投影する画質への影響が大きいと考えられる。そのため、出力電力が目標値をオーバーした場合の[学習係数]を、出力電力が目標値に足りなかった場合の[学習係数]よりも大きく設定することで、出力電力が目標値をオーバーする時間を短縮できる。
【0040】
[学習データの計算方法に係る第2の態様]
上記のような[学習係数]による乗算に代えて、関数fを用いて、例えば
[次の学習データ[i−α]]=f([前回の学習データ[i]],[目標値],[測定値])
とすることで一般式化することができる。
また、
[次の学習データ[i−α]]=f([前回の学習データ[i]],[目標値],[測定値],
制御開始からの時間(周期数),温度,・・・)
といったように、他の要因(制御開始からの時間(周期数)、温度、・・・)で、制御中に変わるようにしてもよい。
【0041】
これは、上述の[学習係数]を制御中に変えることに対応する。
【0042】
[学習データの計算方法に係る第3の態様]
上記遅延時間αが制御サイクルの周期の整数倍となることは稀であるので、
[次の学習データ[i−α]]=f([前回の学習データ[i]],[目標値],[測定値])
[次の学習データ[i−α−1]]=g([前回の学習データ[i]],[目標値],[測定値])
というように、複数回に渡って学習データの更新を行なうことも考えられる。
【0043】
[学習データの計算方法に係る第4の態様]
出力電力の変動が一番画質に影響を与えるのは、光源素子がオフ状態からオン状態となる点灯初期であるため、制御を簡易化するために、その点灯初期の一定時間のみ学習を行なうことも考えられる。
【0044】
この場合、点灯中に電源を共有する別の光源素子がオン/オフすることから生じる変動や、異なるセグメントで同一光源素子がオフ状態からオン状態となる際との駆動傾向の差を学習することができないが、一番影響を与えるタイミングで的確に制御を行なうことで、DSP33の演算処理に要する負担を軽減しながらも、画質の向上に大きく寄与できる。
【0045】
次にDSP33の演算時間を考慮した処理スケジュールについて説明する。
DSP33が非常に短い周期で上記フィードバック制御を実行するため、その制御周期に比してDSP33の演算量を考慮する必要がある。
【0046】
通常、DSPでの演算量の関係は、
[学習制御での点灯期間]>[通常の制御での点灯期間]>[消灯中]
となる。従って、学習データの計算、更新を、消灯中の比較的DSP33での処理があいている期間に行なうと、学習によってDSP33の演算量が無闇に増大するのを回避できる。
【0047】
図6は、カラー画像1フレームを、R,G,Mg,B,Ye,Cyの計6個のセグメント(フィールド)で構成した場合の、第n番目のフレームでDSP33が実行する処理の内容を示すタイミングチャートの例を示す。
【0048】
図6(A)がフレーム内のセグメント構成を示し、
図6(B)〜
図6(D)が光源部15内のR,G,B色で発光する各LEDに対するDSP33の処理内容を示す。
R,G,Bの各原色セグメントにおいては、光源部15内のR,G,BのLEDが単色で発光するよう点灯駆動される。またYe,Mg,Cyの各補色セグメントにおいては、光源部15内のR,G,BのLEDが、例えばMgセグメントではR及びBのLEDのように、2色が同時に発光するよう点灯駆動される。
【0049】
そして、
図6(B)〜
図6(D)において、「学習点灯」期間は、上述の学習制御によって制御される操作量により点灯させる期間であることを表し、この期間に、「n/seg計算」期間で計算される、電流の測定、記憶が行なわれる。
【0050】
「点灯」期間は、通常の制御(短周期内でのフィードバック制御(PID制御等))によって、制御される操作量により点灯させる期間であることを表す。
【0051】
そして、「n/seg計算」期間(「計算」期間)は、nフレームでのsegセグメント期間での「学習点灯」期間で測定、記憶された電流値に基づく、次の「学習点灯」期間での制御で用いられる補正データを計算(更新、設定)する期間であることを表す。
【0052】
このように、
図6では、上述した処理の重い[学習制御での点灯期間]が、「学習点灯」期間と、「n/seg計算」期間に分けられて実行されることになる。
【0053】
つまり、DSP33は、各点灯セグメントにおいては、点灯当初の一定期間を「学習点灯」期間として、上述したように出力電力の測定と記憶とを行なった後、「学習点灯」期間を終えると、通常の点灯駆動としてフィルタ処理で計算したデューティ比を設定しての通常の点灯駆動(「点灯」期間)に移行する。
【0054】
また、DSP33は、各非点灯セグメントにおいては、次の点灯セグメントに備え、他の光源用処理での「学習点灯」期間を避けるタイミングで、それまでに記憶していた点灯セグメントの「学習点灯」期間中の測定値に基づく計算と更新(「n/seg計算」)を実行する。
【0055】
例えば、
図6(B)に示すように、光源部15内のRのLEDを駆動するための処理としては、R,Mg,Yeの各セグメントが点灯セグメントとなっており、点灯セグメント直後のG,B,Cyの各セグメントが非点灯セグメントとなっている。
【0056】
そのため、DSP33は、当該第nフレーム内において、直前の点灯セグメントで記憶した電流の測定値を、次の非点灯セグメント中の、他の光源用処理での「学習点灯」期間を避けるタイミングで計算してデータを更新し、設定するものとしている。
【0057】
また例えば、
図6(D)に示すように、光源部15内のBのLEDを駆動するための処理としては、Mg,B,Cyの各セグメントが点灯セグメントとなっており、R,G,Yeの各セグメントが非点灯セグメントとなっている。
【0058】
そのため、DSP33は、フレーム当初のRセグメントとGセグメントにおいては、直前の第n−1フレームのBセグメントとCyセグメントで記憶した電力の測定値を、他の光源での「学習点灯」期間を避けるタイミングで計算してデータを更新し、設定する。そして、DSP33は、Yeセグメントにおいて、当該第nフレームのMgセグメントで記憶した電流の測定値を、他の光源用処理での「学習点灯」期間を避けるタイミングで計算してデータを更新し、設定するものとしている。
【0059】
このようにDSP33の重い演算処理を分散させ、非点灯セグメント中の、他の光源用処理での「学習点灯」期間のタイミングを避けて、計算、設定の処理を行なわれるようにすることにより、DSP33での演算処理を平均化することができる。これにより、DSP33に無用な負担を強いることなく、適切な制御が実現できる。
【0060】
また、
図7に示すように、光源用処理での「n/seg計算」期間(「計算」期間)自体が、他の光源用処理間での、「n/seg計算」期間にも重ならないようにしてもよい。
【0061】
このようにすれば、よりDSP33での演算処理の平均化を図ることができる。
【0062】
また、上述のように、補正データを、Adj.[x][seg][i]という形式で、光源毎、セグメント毎に管理して、記憶、決定制御するようにしたので、制御を容易かつ適切に行なうことができる。
【0063】
図8は、複数フレームに渡る上記DSP33の処理を簡略化して示すタイミングチャートである。上述したようにDSP33は、光源の素子、セグメント、及び点灯開始タイミングからの制御サイクルの回数毎に計算された補正データを持つ。例えば
図8(C)に示す、第nフレームのMgセグメントの点灯開始タイミングから2番目の制御サイクルt1で測定された値と、次の第n+1フレームのMgセグメントの点灯開始タイミングから2番目の制御サイクルt2で測定された値とが、同一光源、同一セグメント、及び同一制御サイクルでのデータとして、次の第n+2フレーム移行のフレームでフィードバックされる。
【0064】
図9は、上記フィードバック制御の基本的な概念を示す。例えば第nフレームのある光源素子用の処理に関して、あるセグメントにおいて、図中にタイミングt11で示す制御サイクルでの制御の実行に対し、それより後のタイミングt12で示す制御サイクルで波形が変化するものとする。
【0065】
この場合、タイミングt12の制御サイクルでの波形のずれを偏差として、この偏差に応じて、その前のタイミングt11の制御サイクルで用いた補正データを修正するものとする。
【0066】
したがって、次の第n+1フレームの同一光源素子用の処理の同一セグメントにおいて、図中にタイミングt21で示す制御サイクルでの制御値に上記偏差を考慮した補正を施すことにより、その後のタイミングt22の制御サイクルでの波形が修正されることとなる。
【0067】
次に、上記した過去の複数フレームに遡った、同一光源用素子、同一セグメント、及び同一制御サイクル毎の学習の有無について実験結果を用いて比較する。
<比較例>
図10は、上記学習を行なわない、短周期内でのフィードバック制御(従来のPID制御に相当する制御)のみを行なった場合の、光源素子であるLEDの点灯開始直後の電流値の波形を例示する。ここでは、「1」がセグメント切換えパルスであり、「4」が当該LEDの出力電流値を示す。セグメント切換えパルスが立ち上がった直後の制御サイクルに同期して、光源素子であるLEDへの通電が開始されると、大きなオーバーシュートを伴い、一定の電流値に収束するまでに、120[マイクロ秒]程度かかってしまっている。
【0068】
<実施例>
これに対し、
図11は、上記本発明における学習制御を行なった場合の、光源素子であるLEDの点灯開始直後の電流値の波形を例示する。ここでも「1」がセグメント切換えパルス、「4」が当該LEDの出力電流値を示す。なお同図では、上記
図10より時間軸(横軸)を4倍に拡大した波形となっている。セグメント切換えパルスが立ち上がった直後の制御サイクルに同期して、光源素子であるLEDへの通電が開始されると、特にオーバーシュート等も発生せず、12[マイクロ秒]程度で一定の電流値に収束していることがわかる。
【0069】
このように、過去の数フレーム〜数十フレームに渡って同一光源用素子、同一セグメント、及び同一制御サイクル毎の学習を行なって補正値に反映することで、特にオフ状態からオン状態に立ち上げる直後に発生する変動を大幅に低減でき、結果としてデジタル電源18側が光源部15を駆動する際に生じる脈動を大幅に低減させることができる。
【0070】
以上詳述した如く本実施形態によれば、制御対象となる物理量(電圧、電流)が変動する際に生じる脈動を大幅に低減させることが可能となる。
【0071】
また上記実施形態では、DSP33が周期的に変化する物理量がステップ状に変化するタイミングを学習期間として、偏差を記憶するものとしたので、急峻な負荷の変動に起因して発生し易い脈動を確実に抑制できる。
【0072】
この場合、特に負荷に供給する電力がオン状態からオフ状態に変動する場合に比べて、オフ状態からオン状態に変動する際にそのオン状態直後の駆動中に脈動が発生し易いため、電力の立上りタイミングに限って上記制御を実行することにより、DSP33の負担を最小限にしながらも確実に脈動を抑制し得る。
【0073】
なお上記実施形態では、学習データの計算方法に係る第1乃至第3の態様で示した如く、計算に使用する学習係数をパラメータとして調整した上で補正に用いるものとしたので、より確実に脈動を抑制できる。
【0074】
また、上術したDSP33による一連の制御を、一般的なフィードバック手法の基礎となっているPID制御系に組込んで使用することにより、さらに効率的なフィードバックが実現できる。
【0075】
なお上記実施形態では、負荷として、発光素子を駆動する例で説明したが、本発明は発光素子以外の負荷にも適用できる。例えば、周期的に回転速度を変えるようなモーターの速度制御等にも好適に用いることができる。
【0076】
その他、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施形態で実行される機能は可能な限り適宜組み合わせて実施しても良い。上述した実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件による適宜の組み合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、効果が得られるのであれば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0077】
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0078】
請求項1記載の発明は、制御対象となる物理量の値が周期的に変化するように負荷を駆動する駆動装置であって、上記物理量の目標値を設定する設定手段と、上記物理量の現在値を検出する検出手段と、上記目標値と上記検出手段で得た検出値との偏差を算出する算出手段と、上記算出手段で算出した過去の偏差を記憶する記憶手段と、上記記憶手段で記憶した過去の所定周期前の偏差を参照して上記物理量に対応する操作量を決定する決定手段と、上記決定手段で決定した操作量に基づき、上記負荷を駆動する駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【0079】
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記記憶手段は、上記物理量がステップ状に変化するタイミングの偏差を記憶することを特徴とする。
【0080】
請求項3記載の発明は、上記請求項2記載の発明において、上記記憶手段は、上記物理量がステップ状に上昇したタイミングでの偏差を記憶することを特徴とする。
【0081】
請求項4記載の発明は、上記請求項1〜3いずれか記載の発明において、上記決定手段は、計算に使用するパラメータを調整し、上記操作量を決定することを特徴とする。
【0082】
請求項5記載の発明は、上記請求項1〜4いずれか記載の発明において、上記記憶手段及び決定手段は、上記設定手段、検出手段、及び算出手段を用いたPID(Propotional Integral Derivative)制御系に対して追加されたものであることを特徴とする。
【0083】
請求項6記載の発明は、上記請求項1〜5いずれか記載の発明において、周期中に負荷が駆動されない期間を含み、上記決定手段は、上記駆動されない期間に上記物理量に対応する操作量を決定することを特徴とする。
【0084】
請求項7記載の発明は、上記請求項1〜6いずれか記載の発明において、上記負荷は複数種類の負荷を含み、上記記憶手段は、負荷毎に過去の偏差を記憶し、上記決定手段は、負荷毎に上記物理量に対応する操作量を決定することを特徴とする。
【0085】
請求項8記載の発明は、上記請求項7記載の発明において、上記決定手段は、各負荷の上記物理量に対応する操作量を、他の負荷の上記物理量に対応する操作量の決定と重ならないタイミングで決定することを特徴とする。
【0086】
請求項9記載の発明は、制御対象となる物理量の値が周期的に変化するように光源素子を駆動する光源駆動装置であって、上記物理量の目標値を設定する設定手段と、上記物理量の現在値を検出する検出手段と、上記目標値と上記検出手段で得た検出値との偏差を算出する算出手段と、上記算出手段で算出した過去の偏差を記憶する記憶手段と、上記記憶手段で記憶した過去の所定周期前の偏差を参照して上記物理量に対応する操作量を決定する決定手段と、上記決定手段で決定した操作量に基づき、上記光源素子を駆動する駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【0087】
請求項10記載の発明は、制御対象となる物理量の値が周期的に変化するように駆動される発光素子と、上記物理量の目標値を設定する設定手段と、上記物理量の現在値を検出する検出手段と、上記目標値と上記検出手段で得た検出値との偏差を算出する算出手段と、上記算出手段で算出した過去の偏差を記憶する記憶手段と、上記記憶手段で記憶した過去の所定周期前の偏差を参照して上記物理量に対応する操作量を決定する決定手段と、上記決定手段で決定した操作量に基づき、上記発光素子を駆動する駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【0088】
請求項11記載の発明は、供給される制御対象となる物理量の値が周期的に変化するように駆動される発光素子と、上記物理量の目標値を設定する設定手段と、上記物理量の現在値を検出する検出手段と、上記目標値と上記検出手段で得た検出値との偏差を算出する算出手段と、上記算出手段で算出した過去の偏差を記憶する記憶手段と、上記記憶手段で記憶した過去の所定周期前の偏差を参照して上記物理量に対応する操作量を決定する決定手段と、上記決定手段で決定した操作量に基づき、上記発光素子を駆動する駆動手段と、画像信号を入力する入力手段と、上記入力手段で入力した画像信号に基づいた画像を表示し、上記発光素子からの発光を用いて光像を形成して表示素子と、上記表示素子で形成された光像を被投影対象に向けて投影する投影手段とを備えたことを特徴とする。
【0089】
請求項12記載の発明は、制御対象となる物理量の値が周期的に変化するように負荷を駆動する駆動方法であって、上記物理量の目標値を設定する設定工程と、上記物理量の現在値を検出する検出工程と、上記目標値と上記検出工程で得た検出値との偏差を算出する算出工程と、上記算出工程で算出した過去の偏差を記憶する記憶工程と、上記記憶手段で記憶した過去の所定周期前の偏差を参照して上記物理量に対応する操作量を決定する決定工程と、上記決定工程で決定した操作量に基づき、上記負荷を駆動する駆動工程とを有したことを特徴とする。