特許第6331544号(P6331544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6331544ゴム組成物、その製造方法およびそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331544
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ゴム組成物、その製造方法およびそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20180521BHJP
   C08K 5/375 20060101ALI20180521BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20180521BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20180521BHJP
   C08K 5/40 20060101ALI20180521BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20180521BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C08L9/06
   C08K5/375
   C08K5/548
   C08K3/36
   C08K5/40
   C08J3/20 Z
   B60C1/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-59588(P2014-59588)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-183057(P2015-183057A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】鹿久保 隆志
【審査官】 楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭46−012148(JP,B1)
【文献】 特開2007−106919(JP,A)
【文献】 特開平11−323004(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0004228(US,A1)
【文献】 特開2014−009249(JP,A)
【文献】 特開2012−188537(JP,A)
【文献】 特開2011−190450(JP,A)
【文献】 特開2011−032402(JP,A)
【文献】 特開2010−270247(JP,A)
【文献】 特開昭62−115045(JP,A)
【文献】 特開昭58−089633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 9/06
C08K 3/36
B60C 1/00
C08K 5/375
C08K 5/40
C08K 5/548
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン−ブタジエン共重合体ゴムとブタジエンゴムとの合計が50質量部以上であるジエン系ゴム成分100質量部に対し、下記一般式(1)で表されるジスルフィド化合物を0.1〜5質量部配合してなるゴム組成物であって、前記ゴム組成物がシリカを含み、前記シリカに対して、メルカプト基を有するシランカップリング剤を0.5〜10質量%配合してなり、かつ前記シリカの配合量が、前記ジエン系ゴム成分100質量部に対し10〜100質量部である
ことを特徴とするゴム組成物。
【化1】
一般式(1)中、R3およびR4はそれぞれ独立して、単結合または炭素数1〜3のアルキレン基を表す。A1およびA2はそれぞれ独立して、下記式で表される基を表す。
【化2】
前記式中、R5は水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記式で表されるジフェニルジスルフィドであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【化3】
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記式で表されるジベンジルジスルフィドであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【化4】
【請求項4】
前記ジエン系ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを2〜80質量部配合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ジエン系ゴム成分100質量部に対して、チウラム系加硫促進剤を0.1〜5質量部配合してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記ジエン系ゴム成分100質量部に対し、加硫系配合物を配合せずかつカーボンブラックおよびシリカ実質上配合せずに、前記一般式(1)で表されるジスルフィド化合物を0.1〜5質量部を配合し、100℃以下の温度で混合する予備混合工程を有する請求項1〜のいずれかに記載のゴム組成物を製造する方法
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載のゴム組成物を使用してなる空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、ゴム組成物の粘度を低下させ、優れた加工性を有し、破断伸びおよび耐摩耗性に優れたゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ用ゴムの製造においては、ゴムの粘度を低下させる必要がある。これにより、優れたゴムの押出し性、シート加工性等が得られる。
一方、地球環境上の観点から自動車に対する低燃費化の要求が高まっており、良好な転がり抵抗性を有するタイヤの開発が望まれている。そこで、ジエン系ゴムにシリカやシランカップリング剤を配合する技術が数多く提案されているが、このようなゴムは高粘度化に伴う加工性の悪化が課題となっている。
また、タイヤには一般的に優れた耐破壊性や耐摩耗性に代表される耐久性が求められている。そのため硫黄や充填剤を増量する手法が採られるが、発熱性や破断伸び(とくに高温破断伸び)が悪化するという問題点がある。
以上から、ゴム組成物における加工性、耐摩耗性、破断伸びをいずれも向上させることは当業界では困難な事項とされていた。
【0003】
なお、下記特許文献1には、ジエン系ゴムに、硫黄と、特定の官能基を有するジスルフィド化合物とを配合し、シリカを配合せずに、混練り機を用いて140℃以上の温度で予備混合し、得られた予備混合物にシリカを配合し混合するゴム組成物の製造方法が開示され、得られたゴムは低発熱性に優れるとされている。
しかし、この従来技術でも、製造時にゴム組成物が高粘度化し、押出し性、シート加工性等のゴムの加工性が悪化するという問題点があった。また、耐摩耗性、破断伸びにも改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−18716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、ゴム組成物の粘度を低下させ、優れた加工性を有し、破断伸び(とくに高温破断伸び)および耐摩耗性に優れたゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、特定の組成のジエン系ゴムに対し、特定のジスルフィド化合物を特定量で配合することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0007】
1.スチレン−ブタジエン共重合体ゴムとブタジエンゴムとの合計が50質量部以上であるジエン系ゴム成分100質量部に対し、下記一般式(1)で表されるジスルフィド化合物を0.1〜5質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物。
【0008】
【化1】
【0009】
一般式(1)中、R3およびR4はそれぞれ独立して、単結合または炭素数1〜3のアルキレン基を表す。A1およびA2はそれぞれ独立して、下記式で表される基を表す。
【0010】
【化2】
【0011】
前記式中、R5は水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
2.前記一般式(1)で表される化合物が、下記式で表されるジフェニルジスルフィドであることを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
【0012】
【化3】
【0013】
3.前記一般式(1)で表される化合物が、下記式で表されるジベンジルジスルフィドであることを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
【0014】
【化4】
【0015】
4.前記ジエン系ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックおよび/またはシリカを40〜120質量部配合してなることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
5.前記ジエン系ゴム成分100質量部に対して、チウラム系加硫促進剤を0.1〜5質量部配合してなることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
6.前記ゴム組成物がシリカを含み、前記シリカに対して、メルカプト基を有するシランカップリング剤を0.5〜10質量%配合してなることを特徴とする前記4に記載のゴム組成物。
7.前記ジエン系ゴム成分100質量部に対し、加硫系配合物を配合せずかつカーボンブラックおよび/またはシリカは実質上配合せずに、前記一般式(1)で表されるジスルフィド化合物を0.1〜5質量部を配合し、100℃以下の温度で混合する予備混合工程を経て製造されてなる前記1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
8.前記1〜7のいずれかに記載のゴム組成物を使用してなる空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0016】
本発明のゴム組成物は、特定の組成のジエン系ゴムに対し、特定のジスルフィド化合物を特定量で配合したので、ゴム組成物の粘度を低下させ、優れた加工性を有し、破断伸び(とくに高温破断伸び)および耐摩耗性に優れたゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
また該効果は、前記ジエン系ゴム成分100質量部に対し、加硫系配合物を配合せずかつカーボンブラックおよび/またはシリカは実質上配合せずに、前記一般式(1)で表されるジスルフィド化合物を0.1〜5質量部を配合し、100℃以下の温度で混合する予備混合工程を経てゴム組成物を製造することにより、さらに向上する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0018】
(ジエン系ゴム成分)
本発明で使用されるジエン系ゴム成分は、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)とブタジエンゴム(BR)との合計が50質量部以上である。このようなジエン系ゴム成分の配合においては、高粘度化の課題の解決が当業界でとくに求められ、また破断伸び(とくに高温破断伸び)および耐摩耗性の向上も求められている。
なお本発明では、SBRおよびBR以外の任意のゴムを用いることができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等を必要に応じて使用することもできる。ジエン系ゴム成分の分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
【0019】
(ジスルフィド化合物)
本発明では、ゴムの粘度を低下させ、優れた加工性を付与し得るという効果を奏するために、ジスルフィド化合物の使用が必須である。
ジスルフィド化合物は、下記一般式(1)で表される。
【0020】
【化5】
【0021】
一般式(1)中、R3およびR4はそれぞれ独立して、単結合または炭素数1〜3のアルキレン基を表す。A1およびA2はそれぞれ独立して、下記式で表される基を表す。
【0022】
【化6】
【0023】
前記式中、R5は水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0024】
また、本発明の効果が向上するという観点から、前記一般式(1)で表される化合物は、下記式で表されるジフェニルジスルフィドであることがとくに好ましい。
【0025】
【化7】
【0026】
これとは別に、本発明の効果が向上するという観点から、前記一般式(1)で表される化合物は、下記式で表されるジベンジルジスルフィドであることがとくに好ましい。
【0027】
【化8】
【0028】
(ジスルフィド化合物の配合割合)
前記一般式(1)で表されるジスルフィド化合物は、ジエン系ゴム成分100質量部に対し、0.1〜5質量部を配合される。0.1質量部未満では、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に5質量部を超えると、発熱性が悪化が悪化する。さらに好ましい前記ジスルフィド化合物の配合量は、ジエン系ゴム成分100質量部に対し、0.3〜2質量部である。
【0029】
(カーボンブラックおよび/またはシリカ)
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックおよび/またはシリカを配合することが好ましい。これらの充填剤を配合することにより、耐破壊性や耐摩耗性に代表される耐久性を高めることができる。なお従来技術では、カーボンブラックやシリカを増量すると発熱性や破断伸び(とくに高温破断伸び)が悪化するという問題点を有していたが、本発明では上記特定のジスルフィド化合物を特定量で配合しているので、このような問題点は生じない。
カーボンブラックおよび/またはシリカは、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、40〜120質量部の範囲で配合することが好ましい。この範囲によれば、発熱性や破断伸び(とくに高温破断伸び)を悪化させることなく、耐破壊性や耐摩耗性に代表される耐久性をさらに向上できるという効果を奏する。なおカーボンブラックおよびシリカの両方を配合する場合、ジエン系ゴム成分100質量部に対し、カーボンブラックは2〜80質量部、シリカは10〜100質量部配合するのが好ましい。
なお、本発明において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、30〜200m/gであるのが好ましく、シリカのBET比表面積は、100〜220m/gであるのが好ましい。
なお、窒素吸着比表面積(NSA)はJIS K6217−2に準拠して求めた値であり、BET比表面積は、ISO5794/1に準拠して求めた値である。
【0030】
(シランカップリング剤)
本発明のゴム組成物がシリカを含む場合、前記シリカに対して、メルカプト基を有するシランカップリング剤を0.5〜15質量%配合するのが好ましい。メルカプト基を有するシランカップリング剤を配合することにより、ジエン系ゴム成分中でシリカの分散性が高まり、破断伸び(とくに高温破断伸び)および耐摩耗性をさらに高めることができる。なお、従来技術では一般的にメルカプト基を有するシランカップリング剤を配合すると、押出性等の加工性や破断伸びが悪化する傾向にあるが、本発明では上記特定のジスルフィド化合物を特定量で配合しているので、このような問題点を軽減できる。
なおメルカプト基を有するシランカップリング剤のさらに好ましい前記配合量は、1〜10質量%である。また必要に応じてメルカプト基を有するシランカップリング剤以外のシランカップリング剤を使用することもできる。
【0031】
(加硫促進剤)
本発明のゴム組成物は、加硫促進剤を配合するのが好ましい。加硫促進剤としては、従来から公知のものがいずれも使用可能であり、例えば、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、等が挙げられ、中でも本発明の効果が向上するという観点から、好ましくはチウラム系加硫促進剤である。
【0032】
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム成分100質量部に対し、加硫系配合物を配合せずかつカーボンブラックおよび/またはシリカは実質上配合せずに、前記一般式(1)で表されるジスルフィド化合物を0.1〜5質量部を配合し、100℃以下の温度で混合する予備混合工程を経て製造されることが好ましい。なお加硫系配合物とは、硫黄のような加硫剤や加硫促進剤を意味する。
また、カーボンブラックおよび/またはシリカを「実質上配合しない」とは、カーボンブラックおよび/またはシリカを、ジエン系ゴム成分100質量部に対して0〜5質量部の範囲であれば配合してもよいことを意味する。
この予備混合工程によって、分断されたジエン系ゴム成分の分子末端とジスルフィド化合物とが相互作用し、分断されたジエン系ゴム成分の分子同士の再結合が抑制され、結果としてゴムの粘度が低下するものと考えられる。また、破断伸び(とくに高温破断伸び)および耐摩耗性も良化する。なお予備混合工程で、カーボンブラックおよび/またはシリカを0〜5質量部の範囲で混合すると、混合発熱性を抑制できるという点で有利であるが、5質量部を超えて配合すると、混合発熱温度が高くなり、ジスルフィド化合物がフィラーに吸着し効果が低減するという理由で好ましくない。
予備混合工程は、100℃以下の混合温度で行われるのがよい。100℃以下の温度で予備混合工程が行われることにより、分断されたジエン系ゴム成分の分子同士の再結合が抑制され、好ましい。さらに好ましい予備混合工程の温度は、70〜95℃である。予備混合工程は、従来公知の各種ミキサーを用いて実施することができ、ヒータ等によってミキサー内の温度、すなわち予備混合工程の混合温度を制御することができる。
予備混合工程における混合時間としては、例えば1分〜5分である。
ここで予備混合工程において加硫系配合物を配合しないことにより、前記と同様に、分断されたジエン系ゴム成分の分子同士の再結合が抑制され、好ましい。
また予備混合工程は、加硫系配合物、カーボンブラックおよびシリカ以外にも、白色充填剤を配合しないことが好ましく、ジエン系ゴム成分およびジスルフィド化合物のみを配合して実施するのがとくに好ましい。
【0033】
なお予備混合工程の実施前に、ジエン系ゴム成分のみを素練りする素練り工程を行なってもよい。また、予備混合工程は、配合物を分割して複数回行なってもよい。
予備混合工程の実施後は、配合設計に基づき、予備混合工程で配合しなかったその他の配合材料を予備混合物に配合し、本混合を行うことができる。本混合の条件は、とくに制限されず、公知の方法により行うことができる。
【0034】
なお、本発明において、ゴム中には、前記した成分に加えて無機充填剤、老化防止剤、可塑剤などのゴムに一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
また本発明で製造されたゴムは、タイヤ用途に有用であり、従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに使用することができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0036】
実施例1〜6および比較例1、3
表1に示す配合(質量部)において、ジエン系ゴム成分およびジスルフィド化合物を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーに入れ、混合時の温度が80〜90℃となるように1分間混練した(予備混合工程)。続いて、カーボンブラック、シリカおよびその他の配合物を加え、130〜150℃で8分混合した(本混合工程)。さらに加硫系配合物を加え、オープンロールで80〜110℃で3分混合した。
次に得られたゴム組成物を所定の金型中で170℃で10分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を調製した。得られたゴム組成物および加硫ゴム試験片について以下に示す試験法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0037】
粘度:JIS 6300に従い、100℃におけるムーニー粘度を測定した。結果は実施例1〜4では比較例1の値を100として指数表示した。実施例5、6は比較例3の値に対する比として表示した。この値が低いほど粘度が低く、加工性が良好であることを示す。
押出性:ガーベダイテストを行い、以下の評価基準で押出性を評価した。
○:押出し後のゴム平面部が平滑で、エッジのゴム薄部も連続性がある
△:押出し後のゴム平面部にやや凹凸があり、エッジ部のギザギザが少し見られる
×:押出し後のゴム平面部に凹凸があり、エッジ部にギザギザがある
破断伸び:JIS K 6251(JIS 3号ダンベル)に準拠して、25℃および100℃にて引張試験を実施し、切断時伸び(EB)を測定した。結果は実施例1〜4では比較例1の値を100として指数表示した。実施例5、6は比較例3の値に対する比として表示した。指数が大きいほど破断伸びに優れることを示す。
耐摩耗性:JIS K6264に準拠して、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所(株)製)を使用して、荷重49N、スリップ率25%、時間4分、室温において測定した。結果は実施例1〜4に関しては比較例1の値を100として、実施例5、6は比較例3の値に対する比として表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性が良好であることを意味する。
【0038】
【表1】
【0039】
*1:SBR(日本ゼオン(株)製Nipol 1502)
*2:BR(日本ゼオン(株)製Nipol BR1220)
*3:ジスルフィド化合物−1(関東化学(株)製ジベンジルジスルフィド)
*4:ジスルフィド化合物−2(関東化学(株)製ジフェニルジスルフィド)
*5:シリカ(UNITED SILICA INDUSTRIAL社製ULTRASIL VN-3G、BET比表面積=170m/g)
*6:カーボンブラック(東海カーボン(株)製シーストKH、窒素吸着比表面積(NSA)=93m/g)
*7:シランカップリング剤−1(エボニックデグッサジャパン(株)製Si69)
*8:シランカップリング剤−2(エボニックデグッサジャパン(株)製Si363。メルカプト基を有するシランカップリング剤)
*9:加硫促進剤−1(大内新興化学工業(株)製テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド)
*10:加硫促進剤−2(大内新興化学工業(株)製テトラベンジルチウラムジスルフィド)
*11:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸YR)
*12:老化防止剤(フレキシス社製サントフレックス6PPD)
*13:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*14:ワックス(大内新興化学工業(株)製パラフィンワックス)
*15:オイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*16:加硫促進剤−3(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ)
*17:加硫促進剤−4(住友化学(株)製ソクシノールDG)
*18:硫黄(四国化成工業(株)製ミュークロンOT−20)
【0040】
上記の表1から明らかなように、実施例1〜6で調製されたタイヤ用ゴム組成物は、特定の組成のジエン系ゴムに対し、特定のジスルフィド化合物を特定量で配合したので、比較例1、3の従来のゴム組成物と比較すると、ゴム組成物の粘度が低下し、優れた加工性を有し、破断伸び(とくに高温破断伸び)および耐摩耗性に優れることが分かった。なお、実施例1〜4は参考例である。