(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法の実施形態について詳細に説明する。
【0028】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態の静電荷像現像用トナー(以下、本実施形態に係るトナーと称することがある)は、非晶性ポリエステル樹脂と、前記非晶性ポリエステル樹脂よりもガラス転移温度が3℃以上15℃以下高いスチレン−アクリル共重合樹脂と、を含有し、X線光電子分光装置(XPS)により測定される表面に存在する樹脂成分に占めるスチレン−アクリル共重合樹脂の割合が5atom%以上30atom%以下とされたトナーである。
【0029】
近年、画像形成装置の小型化及び省エネ化の観点より、低温定着性の機能を備えたトナーが検討されている。トナーの低温定着性の観点より結着樹脂としてポリエステル樹脂が好ましく用いられるが、低融解温度成分であるポリエステル樹脂がトナー表面に存在するためにトナーの流動性・保管性が劣る欠点がある。
定着性及び流動性・保管性の両立を図る手段として、特許文献1には官能基を含む結着樹脂と表面に官能基を有する有機粒子を含有するトナーにおいて結着樹脂と有機粒子の官能基を架橋させているトナーが検討されている。しかし、当該トナーは架橋によりトナー内部にゲル成分を有することになるため、低温定着性を阻害してしまう場合がある。更に未反応の架橋官能基が存在した場合にトナー分布が広くなる傾向があり、定着時に静電的にトナーが定着装置へ移行しやすくなり用紙剥離部材に付着して堆積し、堆積したトナーが用紙へと移行し黒点が発生してしまうことがある。
また、特許文献2にはコアにスチレンアクリル変性ポリエステルを含有し、シェルがスチレンアクリル樹脂であり、被覆率が10%〜50%のトナーが検討されているが、シェルがスチレンアクリル樹脂の場合、スチレンアクリル樹脂はポリエステル樹脂と比較して定着特性が劣る為、トナー−トナー間の接着性及びトナーの用紙への浸み込み性が低下することがある。このような場合、用紙から脱離したトナーは定着装置へ移行し用紙剥離部材に付着し堆積することがある。更に堆積したトナーは用紙へと移行し黒点が発生してしまうことがある。
また、特許文献3ではコアにスチレンアクリル樹脂、シェルにスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂を有しコア含有樹脂とシェル含有樹脂との間にガラス転移温度の差を設けるトナーが検討されている。この構造では表面にポリエステル樹脂が存在するため、ある程度黒点は抑制されるが、定着条件によっては表面のスチレン成分による融着阻害が生じたり低分子量成分が定着ロールへのトナー移行を促進してしまう可能性がある。
このように、定着性、特にハーフトーン画像を形成する際の黒点の発生と流動性・保管性の向上の両立がなされていないのが現状である。
【0030】
本実施形態に係るトナーでは、黒点の発生が抑制される。その理由は明確ではないが、以下のように推察される。
本実施形態に係る黒点は、帯電量の低下したトナーが何らかの原因で感光体上に付着し、その結果ある程度まとまった量のトナーが本来ないはずの画像上に現れることにより黒点のように見えるものである。カラートナーにおいては当然カラートナーの色の点が発生するが便宜上黒点と呼ぶ。
本実施形態に係るトナーは特定の非晶性ポリエステル樹脂とスチレン−アクリル共重合樹脂とを含有するが、これら非晶性ポリエステル樹脂とスチレン−アクリル共重合樹脂とは本来相溶しにくい樹脂である。そのため、海島構造を形成しやすく、非晶性ポリエステル樹脂の領域(ドメイン(海))とスチレン−アクリル共重合樹脂の領域(ドメイン(島))が個別に存在しやすくなる。ここで、非晶性ポリエステル樹脂の領域はスチレン−アクリル共重合樹脂の領域に比較し、負に帯電しやすい傾向があり、同時に水分をより多く含有する傾向がある。これはトナーとキャリアの帯電(一成分においてはトナーと帯電付与部材との帯電)だけでなく、トナー間においても帯電量に差が現れると考えられる。その結果帯電量に差が生じ、より正に帯電したトナーがまとまった形で感光体の本来画像としてトナーが付着しない領域に付着することで黒点として現れるものと考えられる。
本実施形態においては、スチレン−アクリル共重合樹脂のガラス転移温度が非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度よりも3℃以上15℃以下高いため、ガラス転移温度のより高いスチレン−アクリル共重合樹脂の領域がトナー作製時に非晶性ポリエステル樹脂の領域よりも先にガラス転移温度よりも低くなることを示す。樹脂は一般的にガラス転移温度より低い領域で、高い領域よりも体積が減少し、密度が増加する。その結果先に密度が増加したスチレン−アクリル共重合樹脂はトナー内部に沈み込み、トナー表面における割合がある程度抑制される。すなわち前述の様なトナー間に発生する帯電量差を減少させる効果があり、結果黒点の発生を抑制できるものと考えられる。また、低温定着性に優れたポリエステル樹脂がトナー表面に多く存在してトナーの溶融性を確保し、トナー−トナー間の接着性及びトナーの用紙への浸み込み性を向上させることで、トナーが定着装置へ移行し難くなると推察される。
【0031】
本実施形態において、トナー表面に非晶性ポリエステル樹脂の領域とスチレン−アクリル共重合樹脂の領域とが個別に存在しているか否かは、例えば、下記方法により観測される。
トナー表面を走査型顕微鏡で観察することである程度のスチレン-アクリル共重合樹脂の領域の判断ができる。また、トナーをビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と硬化剤を用いて包埋したのち、切削用サンプルを作製する。次にダイヤモンドナイフを用いた切削機、例えばUltracutUCT(Leica社製)を用い‐100℃のもと厚み80nm以上130nm以下の薄片試料を作製する。その試料を超高分解能電界放出型走査顕微鏡、例えばS−4800(日立ハイテクノロジーズ社製)にて観察することによりスチレン-アクリル共重合樹脂の領域の判断ができる。
【0032】
本実施形態においては、X線光電子分光装置(XPS)により測定される本実施形態に係るトナー表面に存在する樹脂成分に占めるスチレン−アクリル共重合樹脂の割合が5atom%以上30atom%以下とされる。トナー表面に存在する樹脂成分に占めるスチレン−アクリル共重合樹脂の割合が5atom%未満であると、トナーの保管性が劣化することがある。一方、トナー表面に存在する樹脂成分に占めるスチレン−アクリル共重合樹脂の割合が30atom%を超えると、黒点の発生が抑制出来ないことがある。トナー表面に存在する樹脂成分に占めるスチレン−アクリル共重合樹脂の割合は5atom%以上25atom%以下が好ましく、5atom%以上20atom%以下が更に好ましい。
【0033】
X線光電子分光装置(XPS)によるトナー表面に存在する樹脂成分に占めるスチレン−アクリル共重合樹脂の割合は、トナー表面のC1Sスペクトル強度をスチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及び離形剤のそれぞれのC1Sスペクトル強度より最小二乗法波形分離処理により分離し、トナー表面のC1S強度に対する波形分離により求められたスチレン−アクリル樹脂強度の比により求められる。
【0034】
以下、本実施形態に係るトナーの詳細について説明する。
【0035】
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子と、必要に応じて、外添剤と、を含んで構成される。
【0036】
(トナー粒子)
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0037】
−結着樹脂−
本実施形態に係るトナーにおいては、結着樹脂として特定の非晶性ポリエステル樹脂及びスチレン−アクリル共重合樹脂を含有する。結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂を含有してもよい。
【0038】
なお、樹脂の「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10(℃/min)で測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃以内であることを指す。
一方、樹脂の「非晶性」とは、半値幅が10℃を超えること、階段状の吸熱量変化を示すこと、又は明確な吸熱ピークが認められないことを指す。
【0039】
・非晶性ポリエステル樹脂
非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0040】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K−7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0043】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下より好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0044】
非晶性ポリエステル樹脂は、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0045】
・結晶性ポリエステル樹脂
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体が挙げられる。なお、結晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
ここで、結晶性ポリエステル樹脂は、結晶構造を容易に形成するため、芳香族を有する重合性単量体よりも直鎖状脂肪族を有する重合性単量体を用いた重縮合体が好ましい。
【0046】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸等の二塩基酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価のカルボン酸としては、例えば、芳香族カルボン酸(例えば1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸としては、これらジカルボン酸と共に、スルホン酸基を持つジカルボン酸、エチレン性二重結合を持つジカルボン酸を併用してもよい。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えば主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオール)が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールとしては、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
多価アルコールは、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のアルコールを併用してもよい。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
ここで、多価アルコールは、脂肪族ジオールの含有量を80モル%以上とすることがよく、好ましくは90モル%以上である。
【0049】
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度は、50℃以上100℃以下が好ましく、55℃以上90℃以下がより好ましく、60℃以上85℃以下がさらに好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0050】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6,000以上35,000以下が好ましい。
【0051】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、非晶性ポリエステルと同様に、周知の製造方法により得られる。
【0052】
結晶性ポリエステル樹脂は、全結着樹脂に対して、含有量が2質量%以上40質量%以下(好ましくは2質量%以上20質量%以下)の範囲で用いることがよい。
【0053】
・スチレン−アクリル共重合樹脂
スチレン−アクリル共重合樹脂としては、単量体としてスチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等)とCH
2=CR
1COOR
2で表される(メタ)アクリル酸エステル類とを共重合させた樹脂が挙げられる。ここで、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素数1以上18以下のアルキル基を表し、炭素数1以上12以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基がより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル類の具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。さらに、単量体として(メタ)アクリル酸を併用してもよい。なお、本実施形態において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
これらの中でも、スチレン類としてスチレン、アルキル置換スチレン(例えば、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン等)、ハロゲン置換スチレン等、(メタ)アクリル酸エステル類としてアクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等の組合せが好ましく、スチレン類としてスチレン、アルキル置換スチレン等、(メタ)アクリル酸エステル類としてアクリル酸ブチル、アクリル酸エチル等の組合せがより好ましく、スチレン類としてスチレン、(メタ)アクリル酸エステル類としてアクリル酸ブチルの組合せが更に好ましい。
【0054】
スチレン−アクリル共重合樹脂を構成するスチレン類由来の構成単位と(メタ)アクリル酸エステル類由来の構成単位との比(質量基準)については特に限定されず、スチレン−アクリル共重合樹脂のガラス転移温度等に鑑みて設定されればよく、例えば、65:35〜85:15が好ましく、70:30〜85:15がより好ましく、70:30〜80:20が更に好ましい。
【0055】
スチレン−アクリル共重合樹脂の数平均分子量は、3000以上200000以下が好ましく、4000以上10000以下がより好ましく、5000以上8000以下が更に好ましい。スチレン−アクリル共重合樹脂の重量平均分子量は、5000以上100000以下が好ましく、20000以上80000以下がより好ましく、40000以上70000以下が更に好ましい。
【0056】
スチレン−アクリル共重合樹脂のガラス転移温度は上述した非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度よりも3℃以上15℃以下高いことが必要とされる。スチレン−アクリル共重合樹脂のガラス転移温度が非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度+3℃未満であると、トナー表面の耐熱性が低下する為流動性や保管性が悪化する問題を生ずることがある。スチレン−アクリル共重合樹脂のガラス転移温度が非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度+15℃を超えると、トナー表面が溶融し難くなる為に低温定着性が損なわれるだけでなく、トナー間融着性が劣るか或いは用紙への浸み込み性が低下する為、定着装置へのトナーの移行が増え黒点が悪化する問題を生ずることがある。スチレン−アクリル共重合樹脂のガラス転移温度は上述した非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度よりも4℃以上12℃以下高いことが好ましく、4℃以上7℃以下高いことがより好ましい。
【0057】
スチレン−アクリル共重合樹脂は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈殿重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合により合成することができる。また重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行うことができる。
【0058】
上記重合方法のうち、ラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶剤の単独あるいは2種以上の混合物でもよいし、水との混合溶媒としてもよい。
【0059】
重合温度は生成する共重合樹脂の分子量、重合開始剤の種類などと関連して設定される。通常、0℃以上100℃以下程度であるが、50℃以上100℃以下の範囲で重合を行うことが好ましい。
【0060】
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は、1kgf/cm
2以上100kgf/cm
2以下が好ましく、1kgf/cm
2以上30kgf/cm
2以下がより好ましい。反応時間は、5時間以上30時間以下程度である。得られた共重合樹脂は再沈殿などの精製を行ってもよい。
【0061】
重合開始剤は、特に限定されるものではない。
本実施形態で用いられる重合開始剤としては、例えば、水溶性重合開始剤として、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸tert−ブチルヒドロペルオキシド、過蟻酸tert−ブチル、過酢酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、過フェニル酢酸tert−ブチル、過メトキシ酢酸tert−ブチル、過N−(3−トルイル)カルバミン酸tert−ブチル、重硫酸アンモニウム、重硫酸ナトリウム、等の過酸化物類;等が挙げられるが、これらに限るものではない。
また、油溶性重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤などが挙げられる。
【0062】
スチレン−アクリル共重合樹脂の含有量は、非晶性ポリエステル樹脂100質量部に対して5質量部以上40質量部以下が好ましく、10質量部以上30質量部以下がより好ましく、10質量部以上25質量部以下が更に好ましい。
【0063】
本実施形態において、非晶性ポリエステル樹脂とスチレン−アクリル共重合樹脂との望ましい組合せとしては、重合性単量体としてマレイン酸、テレフタル酸、フマル酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸(カルボン酸成分)及びビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセロール等(アルコール成分)を用いた非晶性ポリエステル樹脂と、重合性単量体としてスチレン及び、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ブチル(アクリル系材料)を用いたスチレン−アクリル共重合樹脂との組合せが好ましく、重合性単量体としてテレフタル酸並びにビスフェノールAエチレンオキサイド付加物及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物を用いた非晶性ポリエステル樹脂と、重合性単量体としてスチレン及びアクリル酸ブチルを用いたスチレン−アクリル共重合樹脂との組合せがより好ましい。
【0064】
結着樹脂の含有量としては、例えば,トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0065】
−着色剤−
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0067】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0068】
−離型剤−
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0069】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K−7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0070】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0071】
−その他の添加剤−
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0072】
−トナー粒子の特性等−
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0073】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0074】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマンーコールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5質量%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小粒径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)
1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)
1/2として算出される。
【0075】
トナー粒子の形状係数SF1としては、110以上150以下が好ましく、120以上140以下がより好ましい。
【0076】
なお、形状係数SF1は、下記式により求められる。
式:SF1=(ML
2/A)×(π/4)×100
上記式中、MLはトナーの絶対最大長、Aはトナーの投影面積を各々示す。
具体的には、形状係数SF1は、主に顕微鏡画像又は走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、以下のようにして算出される。すなわち、スライドガラス表面に散布した粒子の光学顕微鏡像をビデオカメラによりルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0077】
(外添剤)
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO
2、TiO
2、Al
2O
3、CuO、ZnO、SnO
2、CeO
2、Fe
2O
3、MgO、BaO、CaO、K
2O、Na
2O、ZrO
2、CaO・SiO
2、K
2O・(TiO
2)n、Al
2O
3・2SiO
2、CaCO
3、MgCO
3、BaSO
4、MgSO
4等が挙げられる。
【0078】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部である。
【0079】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、PMMA、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0080】
外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0081】
(トナーの製造方法)
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0082】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0083】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で(必要に応じて他の粒子分散液を混合した後の分散液中で)、樹脂粒子(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0084】
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0085】
−樹脂粒子分散液準備工程−
まず、結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
【0086】
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0087】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0090】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μmがさらに好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0091】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0092】
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0093】
−凝集粒子形成工程−
次に、樹脂粒子分散液と共に、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0094】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度−30℃以上ガラス転移温度−10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0095】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、例えば無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0096】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等が挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0097】
−融合・合一工程−
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0098】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
なお、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア/シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0099】
ここで、融合・合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0100】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディーゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動師分機、風力師分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0101】
本実施形態において、X線光電子分光装置(XPS)により測定されるトナー表面に存在する全樹脂成分に占めるスチレン−アクリル共重合樹脂の割合を5atom%以上30atom%以下とする場合に、例えば、トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
トナー粒子とスチレン−アクリル共重合樹脂粒子とを混合した状態で、衝撃、圧力、剪断等のような機械的な力を与える機械的処理により行う工程によりトナー表面にスチレン−アクリル共重合樹脂を露出させることができ、露出量はスチレン−アクリル共重合樹脂粒子量により制御できる。機械的乾式処理に使用する装置としては、オングミル(ホソカワミクロン(株)製)、ハイブリタイゼイション(奈良機械製作所社製)、クリプトロン(アーステクニカ社製)、ホソカワミクロン(株)製ノビルタが特に好適に挙げられる。また、湿式製法にて芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造にすることで露出量を制御できる。例えば、被覆層に存在させるスチレン−アクリル共重合樹脂粒子量にて露出量を制御する方法、芯部にスチレン−アクリル共重合樹脂粒子を存在させ、被覆層量にて露出量を制御する方法が挙げられる。
本実施形態においては、湿式製法が好ましく、コア-シェル構造がより好ましく、例えば、シェル層に存在させるスチレン−アクリル共重合樹脂粒子量にて露出量を制御する方法、コア部にスチレン−アクリル共重合樹脂粒子を存在させ、シェル構造にて露出量を制御する方法が好ましい。
【0102】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアと混合した二成分現像剤であってもよい。
【0103】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア、及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0104】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0105】
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0106】
被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電材料等、その他添加剤を含ませてもよい。
【0107】
ここで、芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0108】
二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0109】
<画像形成装置/画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0110】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0111】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0112】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0113】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0114】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0115】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0116】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0117】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
なお、一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0118】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率:1×10
−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0119】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。
【0120】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0121】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0122】
また、第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0123】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。なお、この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0124】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0125】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑が好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0126】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0127】
<プロセスカートリッジ/トナーカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0128】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0129】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0130】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
なお、
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0131】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0132】
なお、
図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例】
【0133】
以下、実施例および比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準である。
また、本実施例においては、「実施例2、3、6」を「参考例2、3、6」と読み替えるものとする。
【0134】
(非晶性ポリエステル樹脂Aの作製)
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:10モル%
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物:40モル%
テレフタル酸:40モル%
ドデセニルコハク酸無水物:5モル%
トリメリット酸無水物:5モル%
【0135】
上記モノマー成分を攪拌機、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管を備えた反応容器中に投入し、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、触媒として上記モノマー成分の合計量に対してジブチル錫オキサイドの1.0%を加え、窒素ガス気流下約190℃で約5時間撹拌反応させ、さらに温度を約240℃に上げて約6時間撹拌反応させた後、反応容器内を10.0mmHgまで減圧し、減圧下で約0.5時間攪拌反応させて、黄色透明な非晶性ポリエステル樹脂Aを得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度は55℃であった。
次いで、得られた非晶性ポリエステル樹脂Aを、キャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)を高温高圧型に改造した分散機を用いて分散した。イオン交換水80%、ポリエステル樹脂の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5Kg/cm
2、熱交換器による加熱140℃、の条件でキャビトロンを運転し、非晶性ポリエステル樹脂分散液A(固形分20%)を得た。
【0136】
(非晶性ポリエステル樹脂Bの作製)
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:20モル%
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物:30モル%
テレフタル酸:30モル%
ドデセニルコハク酸無水物:10モル%
トリメリット酸無水物:10モル%
【0137】
上記モノマー成分を攪拌機、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管を備えた反応容器中に投入し、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、触媒として上記モノマー成分の合計量に対してジブチル錫オキサイドの1.0%を加え、窒素ガス気流下約190℃で約6時間撹拌反応させ、さらに温度を約240℃に上げて約6時間撹拌反応させた後、反応容器内を10.0mmHgまで減圧し、減圧下で約0.5時間攪拌反応させて、黄色透明な非晶性ポリエステル樹脂Bを得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂Bのガラス転移温度は57℃であった。
次いで非晶性ポリエステル樹脂Aと同じ方法にて、非晶性ポリエステル樹脂分散液B(固形分20%)を得た。
【0138】
(非晶性ポリエステル樹脂Cの作製)
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物:20モル%
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物:30モル%
テレフタル酸:20モル%
ドデセニルコハク酸無水物:15モル%
トリメリット酸無水物:15モル%
【0139】
上記モノマー成分を攪拌機、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管を備えた反応容器中に投入し、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、触媒として上記モノマー成分の合計量に対してジブチル錫オキサイドの1.0%を加え、窒素ガス気流下約190℃で約6時間撹拌反応させ、さらに温度を約240℃に上げて約6時間撹拌反応させた後、反応容器内を10.0mmHgまで減圧し、減圧下で約0.5時間攪拌反応させて、黄色透明な非晶性ポリエステル樹脂Cを得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂Cのガラス転移温度は58℃であった。
次いで非晶性ポリエステル樹脂Aと同じ方法にて、非晶性ポリエステル樹脂分散液C(固形分20%)を得た。
【0140】
(結晶性ポリエステル樹脂の作製)
セバシン酸50モル%、1,6−ヘキサンジオール50モル%、及び上記モノマー成分の合計量に対してジブチル錫オキサイドの0.3%をフラスコ内で混合し、減圧雰囲気下で240℃に加熱して6時間脱水縮合して結晶性ポリエステル樹脂を得た。
次に、コンデンサー、温度計、水滴下装置、アンカー翼を備えたジャケット付き3リットル反応槽(東京理化器械(株)製:BJ−30N)に、結晶性ポリエステル樹脂300部と、メチルエチルケトン(溶剤)160部と、イソプロピルアルコール(溶剤)100部とを入れ、水循環式恒温槽にて70℃に維持しながら、100rpmで攪拌混合しつつ樹脂を溶解させた(溶解液調製工程)。
その後攪拌回転数を150rpmにし、水循環式恒温槽を66℃に設定し、10%アンモニア水(試薬)17部を10分間かけて投入した後、66℃に保温されたイオン交換水を7部/分の速度で、合計900部滴下し転相させて、乳化液を得た。
すぐに、得られた乳化液800部とイオン交換水700部とを2リットルのナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレーター(東京理化器械(株))にセットした。ナスフラスコを回転させながら、60℃の湯バスで加温し、突沸に注意しつつ7kPaまで減圧し溶剤を除去した。溶剤回収量が1,100部になった時点で常圧に戻し、ナスフラスコを水冷して分散液を得た。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20%になるように調製した。
【0141】
(スチレン−アクリル共重合樹脂Aの作製)
スチレン(和光純薬工業(株)製) :413部
n−ブチルアクリレート(和光純薬工業(株)製) :87部
1,10−デカンジオールジアクリレート(新中村化学(株)製):2部
ドデカンチオール(和光純薬工業(株)製) :4部
【0142】
上記成分を混合溶解し、アニオン性界面活性剤ダウファックス(ダウ・ケミカル社製)4.5部をイオン交換水1050部に溶解した溶液を加えてフラスコ中で乳化し、10分間ゆっくりと混合撹拌しながら、さらに、過硫酸アンモニウム5部を溶解したイオン交換水50部を投入した。次に、フラスコ内の窒素置換を行った後、フラスコ内の溶液を撹拌しながらオイルバスで65℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、固形分34%のスチレン−アクリル共重合樹脂粒子分散液Aを得た。得られたスチレン−アクリル共重合樹脂Aのガラス転移温度は65℃であった。
【0143】
(スチレン−アクリル共重合樹脂Bの作製)
スチレン(和光純薬工業(株)製) :424部
n−ブチルアクリレート(和光純薬工業(株)製) :76部
1,10−デカンジオールジアクリレート(新中村化学(株)製):2部
ドデカンチオール(和光純薬工業(株)製) :4部
上記成分に変更する以外はスチレン−アクリル共重合樹脂Aと同様にして固形分32%のスチレン−アクリル共重合樹脂粒子分散液Bを得た。得られたスチレン−アクリル共重合樹脂Bのガラス転移温度は69℃であった。
【0144】
(スチレン−アクリル共重合樹脂Cの作製)
スチレン(和光純薬工業(株)製) :400部
n−ブチルアクリレート(和光純薬工業(株)製) :100部
1,10−デカンジオールジアクリレート(新中村化学(株)製):3部
ドデカンチオール(和光純薬工業(株)製) :4部
上記成分に変更する以外はスチレン−アクリル共重合樹脂Aと同様にして固形分34%のスチレン−アクリル共重合樹脂粒子分散液Cを得た。得られたスチレン−アクリル共重合樹脂Cのガラス転移温度は60℃であった
【0145】
(スチレン−アクリル共重合樹脂Dの作製)
スチレン(和光純薬工業(株)製) :432部
n−ブチルアクリレート(和光純薬工業(株)製) :68部
1,10−デカンジオールジアクリレート(新中村化学(株)製):4部
ドデカンチオール(和光純薬工業(株)製) :4部
上記成分に変更する以外はスチレン−アクリル共重合樹脂Aと同様にして固形分33%のスチレン−アクリル共重合樹脂粒子分散液Dを得た。得られたスチレン−アクリル共重合樹脂Dのガラス転移温度は74℃であった
【0146】
(スチレン−アクリル共重合樹脂Eの作製)
スチレン(和光純薬工業(株)製) :405部
n−ブチルアクリレート(和光純薬工業(株)製) :95部
1,10−デカンジオールジアクリレート(新中村化学(株)製):3部
ドデカンチオール(和光純薬工業(株)製) :4部
上記成分に変更する以外はスチレン―アクリル共重合樹脂Aと同様にして固形分35%のスチレン−アクリル共重合樹脂粒子分散液Eを得た。得られたスチレン−アクリル共重合樹脂Eのガラス転移温度は62℃であった
【0147】
<着色剤粒子分散液の調製>
カーボンブラック(キャボット製、Regal330):250部
アニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンSC):33部(有効成分60%、着色剤に対して8%)
イオン交換水:750部
上記成分をすべて投入した際に液面の高さが容器の高さの1/3程度になる大きさのステンレス容器に、イオン交換水を280部とアニオン系界面活性剤33部とを入れ、充分に界面活性剤を溶解させた後、前記固溶体顔料すべてを投入し、攪拌機を用いて濡れていない顔料がなくなるまで攪拌するとともに、充分に脱泡させた。脱泡後に残りのイオン交換水を加え、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、5000回転で10分間分散した後、攪拌器で1昼夜攪拌させて脱泡した。脱泡後、再度ホモジナイザーを用いて、6000回転で10分間分散した後、攪拌器で1昼夜攪拌させて脱泡した。続けて、分散液を高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン社製、HJP30006)を用いて、圧力240MPaで分散した。分散は、トータル仕込み量と装置の処理能力とから換算して25パス相当行った。得られた分散液を72時間放置して沈殿物を除去し、イオン交換水を加えて、固形分濃度を20%に調製し、着色剤粒子分散液を得た。
【0148】
<離型剤粒子分散液の調整>
ポリエチレン系ワックス(炭化水素系ワックス:商品名「ポリワックス725(ベイカーペトロライト(株)製)」): 270部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK、有効成分量:60%): 13.5部(有効成分として、離型剤に対して3.0%)
イオン交換水: 21.6部
上記成分を混合し、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製、ゴーリンホモジナイザ)で、内液温度120℃にて離型剤を溶解した後、分散圧力5MPaで120分間、続いて40MPaで360分間分散処理し、冷却して、離型剤粒子分散液を得た。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20.0%になるように調整した。
【0149】
<硫酸アルミニウム水溶液の調製>
硫酸アルミニウム粉末(浅田化学工業(株)製:17%硫酸アルミニウム): 35部
イオン交換水: 2部
上記成分を容器へ投入し、30℃にて沈殿物が消失するまで攪拌混合して硫酸アルミニウム水溶液を調製した。
【0150】
[実施例1]
<トナー1の作製>
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A: 230部
スチレン−アクリル共重合樹脂分散液A: 44部
結晶性ポリエステル樹脂分散液: 25部
着色剤粒子分散液: 30部
離型剤粒子分散液: 40部
イオン交換水: 150部
アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、Dowfax2A1) : 3部
【0151】
上記成分を、温度計、pH計、攪拌器を具備した3リットルの反応容器に入れ、温度25℃にて、1.0%硝酸を加えてpHを4.0にした後、ホモジナイザー(IKAジャパン(株)製:ウルトラタラクスT50)にて5,000rpmで分散しながら、調製した硫酸アルミニウム水溶液を18部添加して3分間分散した。
その後、反応容器に攪拌器、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌されるように攪拌器の回転数を調整しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、コールター社製)にて粒径を測定した。体積平均粒径が5.4μmになったところで温度を保持し、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A 100部を3分間で投入した。
30分間保持した後、1%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを8.5に調整した。その後、10℃ごとにpHが8.5になるように同様にして調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、保持した。光学顕微鏡と走査電子顕微鏡(FE−SEM)にて粒子形状及び表面性を観察したところ、4時間目で粒子の合一が確認されたので、冷却水にて容器を35℃まで5分間かけて冷却した。
冷却後のスラリーを、目開き15μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粉を除去し、メッシュを通過したトナースラリーをアスピレータで減圧ろ過した。ろ紙上に残ったトナー粒子を手でできるだけ細かく砕いて、温度30℃でトナー粒子量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合した。引き続き、アスピレータで減圧ろ過し、ろ紙上に残ったトナー粒子を手でできるだけ細かく砕いて、温度30℃でトナー粒子量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合した後、再度アスピレータで減圧ろ過し、ろ液の電気伝導度を測定した。ろ液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、トナー粒子を洗浄した。
洗浄されたトナー粒子を湿式乾式整粒機(コーミル)で細かく砕いてから、35℃のオーブン中で40時間真空乾燥して、トナー粒子1を得た。
得られたトナー粒子1の体積平均径D50は6.3μmであった。
【0152】
<トナー1の作製>
トナー粒子1: 100部
シリカ粒子(日本アエロジル(株)製、商品名RY50) : 0.8部
上記組成をヘンシェルミキサーにより周速20m/sで15分間の混合を行い、トナー1を得た。
【0153】
<キャリアの作製>
スチレン−メチルメタクリレート共重合体(質量比:70/30): 5部
トルエン: 15部
カーボンブラック(キャボット製、Regal330): 1部
上記成分を混合し、10分間スターラーで撹拌させて被覆層形成用溶液を調製した。次に、この被覆液とフェライト粒子(体積平均粒子径:40μm)100部とを真空脱気型ニーダーに入れて、60℃において30分撹拌した後、さらに加温しながら減圧して脱気し、乾燥させることによりキャリアを作製した。
【0154】
<現像剤1の作製>
トナー1の8部とキャリア92部をVブレンダーにて混合し、現像剤1を作製した。
【0155】
<評価>
トナー表面のスチレン−アクリル共重合樹脂成分量は、XPS(X線光電子分光)測定により求めた値とした。XPS測定は、測定装置として日本電子社製、JPS−9000MXを使用し、X線源としてMgKα線を用い、加速電圧を10kV、エミッション電流を30mAに設定した。
上記条件で得られたC1Sスペクトルから、トナー表面のスチレン−アクリル共重合樹脂成分に起因する成分をピーク分離することによってトナー表面のスチレン−アクリル共重合樹脂成分量を定量した。測定されたC1Sスペクトルを、最小二乗法によるカーブフィッティングを用いてピークを各成分に分離した。分離のベースとなる成分スペクトルとしては、トナーの作製に用いたスチレン−アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂及び離型剤を単独に測定して得られたC1Sスペクトルを用いた。ピーク分離された樹脂成分の定量結果に基づいて、トナー表面の樹脂成分に占めるスチレン−アクリル共重合樹脂の割合を算出した。
【0156】
ガラス転移温度は、「DSC−20」(セイコー電子工業(株)製)を使用し、試料10mgを一定の昇温速度(10℃/min)で加熱して測定する。
【0157】
<画質評価>
上述のようにして得られた現像剤1を用い、DocuPrint P450d(富士ゼロックス社製)により、15℃,20%RHの環境下でハーフトーン50%のプリントサンプルを30000枚プリントアウトした。その後、上記環境で12時間放置後ハーフトーン50%の画像を3枚両面出力した。
<黒点の評価>
両面出力した3枚の画像における黒点のサイズを測定し、0.3mm以上の黒点が0個を◎、3個以下を○、6個以下を△、6個を超える場合を×と評価した。得られた結果を表1に示す。
【0158】
[実施例2]
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Aを255部に変更し、体積平均粒径が5.4μmになったところに投入する非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Aを75部に変更する以外は実施例1の現像剤1と同様にして現像剤2を得た。現像剤2を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0159】
[比較例1]
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Aを280部に変更し、体積平均粒径が5.4μmになったところに投入する非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Aを50部に変更する以外は実施例1の現像剤1と同様にして現像剤3を得た。現像剤3を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0160】
[実施例3]
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Aの230部を非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Bの210部に、スチレン−アクリル共重合樹脂分散液Aの44部をスチレン−アクリル共重合樹脂分散液Bの47部に変更し、体積平均粒径が5.4μmになったところに投入する分散液を非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Bの120部に変更する以外は実施例1の現像剤1と同様にして現像剤4を得た。現像剤4を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0161】
[実施例4]
スチレン−アクリル共重合樹脂分散液Cの44部に変更する以外は実施例3の現像剤4と同様にして現像剤5を得た。現像剤5を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0162】
[比較例2]
スチレン−アクリル共重合樹脂分散液Dの45部に変更する以外は実施例3の現像剤4と同様にして現像剤6を得た。現像剤6を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0163】
[実施例5]
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Aの230部を非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Cの185部に、スチレン−アクリル共重合樹脂分散液Aの44部をスチレン−アクリル共重合樹脂分散液Eの34部に変更し、体積平均粒径が5.4μmになったところに投入する分散液を非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Cの160部に変更する以外は実施例1の現像剤1と同様にして現像剤7を得た。現像剤7を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0164】
[実施例6]
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Cの100部にスチレン−アクリル共重合樹脂分散液Eの82部に変更する以外は実施例5の現像剤7と同様にして現像剤8を得た。現像剤8を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0165】
[比較例3]
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Cの205部にスチレン−アクリル共重合樹脂分散液Eの23部に変更する以外は実施例5の現像剤7と同様にして現像剤9を得た。現像剤9を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0166】
[比較例4]
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液Cの80部にスチレン−アクリル共重合樹脂分散液Cの94部に変更する以外は実施例5の現像剤7と同様にして現像剤10を得た。現像剤10を用いた以外は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0167】
【表1】
【0168】
表1において、「PES Tg」は非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度を意味し、「第二成分Tg」はスチレン−アクリル共重合樹脂のガラス転移温度を意味し、「ΔTg」は非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度とスチレン−アクリル共重合樹脂のガラス転移温度との差を意味し、「露出量」はXPSにより測定されるトナー表面に存在する樹脂成分に占めるスチレン−アクリル共重合樹脂の割合を意味する。