(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記供給先切換用3方バルブは、切り換えた前記蒸発器からの流体の供給先とは異なる側への流体の供給量が、予め定められた許容漏れ量以内となるように構成された遮断機構を備えた請求項1又は3記載の吸着式ヒートポンプ。
前記連通先切換用3方バルブは、切り換えた前記凝縮器への流体の供給元とは異なる側からの流体の供給量が、予め定められた許容漏れ量以内となるように構成された遮断機構を備えた請求項2又は3記載の吸着式ヒートポンプ。
前記凝縮器と連通される先を前記吸着器の前記第1の流体保持部に切り換え、かつ、前記蒸発器からの流体の供給先を前記蓄熱反応器に切り換えるように前記連通先切換用3方バルブ及び前記供給先切換用3方バルブを駆動し、前記凝縮器と連通される先を前記吸着器の前記第2の流体保持部に切り換え、かつ、前記蒸発器からの流体の供給先を前記吸着器に切り換えるように前記連通先切換用3方バルブ及び前記供給先切換用3方バルブを駆動する駆動部を更に含み、
前記制御部は、前記凝縮器と連通される先及び前記蒸発器からの流体の供給先を切り換えるように前記駆動部を制御する請求項3記載の吸着式ヒートポンプ。
前記連通先切換用3方バルブ及び前記供給先切換用3方バルブを、前記凝縮器と連通される先及び前記蒸発器からの流体の供給先を切り換えるための回転式切換バルブで構成した請求項7記載の吸着式ヒートポンプ。
前記供給先切換用3方バルブは、前記蒸発器からの流体の供給先を、前記吸着器及び前記蓄熱反応器の何れか一方、又は前記吸着器及び前記蓄熱反応器の両方に切り換えることが可能であって、
前記制御部は、前記吸着式ヒートポンプを始動するとき又は再開するときに、前記吸着器及び前記蓄熱反応器に対して前記蒸発器からの流体を供給するように前記供給先切換用3方バルブを制御する請求項1、3、又は4記載の吸着式ヒートポンプ。
前記供給先切換用3方バルブは、前記蒸発器からの流体の供給先を、前記吸着器及び前記蓄熱反応器の何れか一方、又は前記吸着器及び前記蓄熱反応器の両方に切り換えることが可能であって、
前記駆動部は、前記凝縮器と連通される先を前記吸着器の前記第2の流体保持部に切り換え、かつ、前記吸着器及び前記蓄熱反応器に対して前記蒸発器からの流体を供給するように前記連通先切換用3方バルブ及び前記供給先切換用3方バルブを駆動し、かつ、前記凝縮器と連通される先を前記吸着器の前記第1の流体保持部に切り換え、かつ、前記蒸発器からの流体の供給先を前記蓄熱反応器に切り換えるように前記連通先切換用3方バルブ及び前記供給先切換用3方バルブを駆動し、前記凝縮器と連通される先を前記吸着器の前記第2の流体保持部に切り換え、かつ、前記蒸発器からの流体の供給先を前記吸着器に切り換えるように前記連通先切換用3方バルブ及び前記供給先切換用3方バルブを駆動する駆動部を更に含み、
前記制御部は、前記吸着式ヒートポンプを始動するとき又は再開するときに、前記吸着器及び前記蓄熱反応器に対して前記蒸発器からの流体を供給するように前記駆動部を制御する請求項7記載の吸着式ヒートポンプ。
前記吸着材が、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、及び粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも一種を含む請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の吸着式ヒートポンプ。
前記蓄熱反応器は、前記化学蓄熱材として、金属酸化物及び金属塩化物から選択される少なくとも一種を含む請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の吸着式ヒートポンプ。
前記化学蓄熱材が、アルカリ金属の酸化物及び塩化物、アルカリ土類金属の酸化物及び塩化物、並びに遷移金属の酸化物及び塩化物からなる群から選択される請求項13に記載の吸着式ヒートポンプ。
前記流体が水であり、水を固定化する前記化学蓄熱材が、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、及び酸化バリウムから選択される請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の吸着式ヒートポンプ。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して、本発明の吸着式ヒートポンプの実施形態について具体的に説明する。但し、本発明においては、以下に示す実施形態に制限されるものではない。
【0041】
(第1実施形態)
本発明の吸着式ヒートポンプの第1実施形態を、
図1〜
図10を参照して説明する。本実施形態では、吸着器の吸着材としてシリカゲルを、蓄熱反応器の化学蓄熱材として酸化カルシウム(CaO)を用い、吸着器や蓄熱反応器に供給される2つの流体(熱媒及び作動流体)として水蒸気(水)を用いた吸着式ヒートポンプ(以下、単に「ヒートポンプ」ともいう。)を一例に詳細に説明する。
【0042】
本実施形態のヒートポンプ100は、
図1に示すように、蒸発器10と、吸着材を有する吸着器20と、化学蓄熱材を有し、吸着器を蒸気加熱する加熱器の機能を担う蓄熱反応器30と、吸着器20から排出された流体(水蒸気)を凝縮する凝縮器40と、凝縮器40から供給された水を貯蔵する水タンク41と、を備えている。
【0043】
水蒸気とは、気体の状態になっている水、及びこれが空気中で凝結して細かい水滴となったものを包含する意味である。
【0044】
本実施形態のヒートポンプ100は、下記の2つの特徴を有している。
【0045】
(1)吸着器等と熱交換するための熱媒と吸着器や蓄熱反応器に吸着等する吸着質等である作動流体とが同一の流体(水蒸気)である。
(2)吸着器に対する加熱、冷却に凝縮熱伝達、蒸発熱伝達を利用する。
【0046】
蒸発器10は、水を気化し、気化して生成された流体である水蒸気を供給可能に吸着器20及び蓄熱反応器30とそれぞれ接続されている。具体的には、蒸発器10には、3方蒸気バルブSV1に一端が接続された流通配管11の他端が接続されており、蒸発器10は、流通配管11及び3方蒸気バルブSV1に一端が接続された流通配管12を介して吸着器20と連通されると共に、流通配管11及び3方蒸気バルブSV1に一端が接続された流通配管14を介して蓄熱反応器30と連通されている。
【0047】
蒸発器10は、蓄熱反応器30の蓄熱反応部に配された化学蓄熱材における水の吸着量が飽和量に達していない場合や、後述するように吸着器に設けられた流体保持室22の吸着材における水蒸気の吸着量が減少した場合に、蒸発器中の水の気化が進行して、水蒸気として流通配管11、12に供給される構造を有するものが好ましい。また、水を外部からの熱で加熱し、水蒸気として流通配管11に排出することができる機能を有していることが好適である。
【0048】
蒸発器10は、上記のように水の気化により気化熱を奪うため、蒸発器10では、吸着器20に供給する水蒸気の気化熱に相当する冷熱が生成される。したがって、冷熱需要の例であるエアコン室外機などの冷熱機器60を例えば熱交換管61を介して熱的に接続することで、冷熱の有効利用が可能である。
【0049】
上記の熱交換管は、無端の配管とこの配管内を流通する熱交換用流体とで構成されている。配管に取り付けられた図示しない循環用ポンプによって、配管中を熱交換用流体(例えば水又は水と水溶性溶剤との混合溶媒)が循環して流通することで、冷熱を冷熱機器50に供給することができる。
【0050】
吸着器20は、蒸発器10から水蒸気が供給され、水蒸気を吸着して保持し、吸着された水蒸気を脱離して放出する第1の流体保持部である流体保持室22と、蓄熱反応器30から水蒸気が供給され、水蒸気を凝縮して保持し、凝縮された水蒸気を再び水蒸気として脱離し放出する第2の流体保持部である流体保持室24と、を備えている。
【0051】
吸着器20には、複数の流体保持室22及び流体保持室24が設けられており、流体保持室22及び流体保持室24の各々は、
図2に示すように、吸着器20の筐体内に交互に配置され、隣り合う室が互いに熱的に接続されている。つまり、流体保持室22で放熱又は吸熱が発生して温度変化が起きると、流体保持室22は流体保持室24との間で熱交換して、流体保持室24は加熱又は冷却されるようになっている。
【0052】
流体保持室22には、流通配管12の他端が接続されており、蒸発器10から水蒸気が供給される。この流体保持室22には、
図2に示すように、各室の天面及び底面に板状の吸着材26が配設されており、供給された水蒸気を吸着して保持できるようになっている。
【0053】
吸着材26は、シリカゲル(物理吸着材)を用いて板状に成形したものであり、
図3のように、シリカゲル板26A、26Bとで構成されている。シリカゲル板26A、26Bの流体保持室24と向き合う面S、すなわち各室の天面、底面と接する面は、伝熱面であり、この面を通じて互いに隣り合う室と熱交換することができる。
【0054】
例えば、流体保持室24で水蒸気が凝縮して凝縮熱が発生すると、シリカゲル板26A、26Bの伝熱面Sで熱交換され、シリカゲル板26A、26B(吸着材)が加熱されると、シリカゲルに吸着されている水蒸気が脱離し、加熱時に供された熱量分の水蒸気を凝縮器40に供給することができる。
【0055】
吸着材が用いられることにより、水蒸気の吸着(固定化)及び脱離に要する熱量を小さく抑えることができ、低エネルギーでも水蒸気の着脱が容易に行われる。本実施形態では、流体として水蒸気を用いているが、水蒸気のほか、アンモニア等の蒸発潜熱の大きい物質は好適に用いることができる。例えばアンモニアを用いた場合では、アンモニア1molの吸着及び脱離に要する熱量は、20〜30kJ/molに抑えることができる。なお、対比値として、化学蓄熱材(例えばMgCl
2、CaCl
2等)をもちいたときの熱量は40〜60kJ/molである。
【0056】
吸着材としては、本実施形態で用いたシリカゲルのように、多孔体を用いることができる。多孔体としては、吸着(好ましくは物理吸着)による水蒸気等の流体の固定化及び脱離の反応性をより向上させる観点から、細孔径が10nm以下の孔を有する多孔体が好ましい。細孔径の下限は、製造適性等の観点から、0.5nmが好ましい。多孔体としては、前記同様の観点から、平均1次粒子径が50μm以下の1次粒子が凝集して得られた1次粒子凝集体である多孔体が好ましい。平均1次粒子径の下限は、製造適性等の観点から1μmが好ましい。
【0057】
吸着材の例としては、本実施形態で用いられているシリカゲルのほか、例えば、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、粘土鉱物等が挙げられる。前記粘土鉱物としては、非架橋の粘土鉱物であっても、架橋された粘土鉱物(架橋粘土鉱物)であってもよい。粘土鉱物の例として、セピオライト、スメクタイト系粘土(サポナイト、モンホリロナイト、ヘクトライト、等)、4−珪素雲母、雲母、バーミキュライト等が挙げられ、中でもセピオライトが好ましい。
【0058】
前記シリカゲルとしては、BET法による比表面積が100m
2/g以上1500m
2/g以下(より好ましくは、300m
2/g以上1000m
2/g以下)であるシリカゲルが好ましい。
【0059】
前記活性炭としては、BET法による比表面積が800m
2/g以上4000m
2/g以下(より好ましくは、1000m
2/g以上2000m
2/g以下)である活性炭が好ましい。
【0060】
前記メソポーラスシリカとしては、BET法による比表面積が500m
2/g以上1500m
2/g以下(より好ましくは、700m
2/g以上1300m
2/g以下)であるメソポーラスシリカが好ましい。
【0061】
前記ゼオライトとしては、BET法による比表面積が50m
2/g以上1000m
2/g以下(より好ましくは、100m
2/g以上1000m
2/g以下)であるゼオライトが好ましい。
【0062】
本発明においては、流体の圧力や温度に合わせて、吸着材(好ましくは多孔体)の種類を適宜選定することができる。吸着による流体(本実施形態では水)の固定化及び脱離の反応性をより向上させる観点からは、シリカゲルを少なくとも含む態様が好ましい。また、吸着によるアンモニアの固定化及び脱離の反応性をより向上させる観点からは、活性炭を少なくとも含む態様が好ましい。
【0063】
吸着材(好ましくは物理吸着材)を用いた流体の授受により吸発熱する構成の場合、吸着材の全量中に占める吸着材の含有比率は、流体の固定化及び脱離の反応性をより高く維持する観点から、80体積%以上が好ましく、90体積%以上がより好ましい。
【0064】
吸着材を成形体にして利用する場合、吸着材と共にバインダーを含有してもよい。バインダーを含有することで、成形体の形状がより維持され易くなるので、吸着による熱媒の固定化及び脱離の反応性がより向上する。バインダーとしては、水溶性バインダーが好ましい。水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、トリメチルセルロース等が挙げられる。
【0065】
また、吸着材及びバインダーに加え、必要に応じて、他の成分を含有していてもよい。他の成分の例として、カーボンファイバーや金属繊維等の熱伝導性無機材料等が挙げられる。
【0066】
吸着材及びバインダーを用いて成形する場合、バインダーの含有比率は、成形体の形状をより効果的に維持する観点から、5体積%以上が好ましく、10体積%以上がより好ましい。成形方法については、特に限定はなく、例えば、吸着材(及び必要に応じバインダー等の他の成分)を加圧成形、押し出し成形等の公知の成形手段により成形する方法が挙げられる。成形時の圧力は、例えば20〜100MPaとすることができ、20〜40MPaが好ましい。
【0067】
流体保持室24には、流通配管38の一端が接続されており、後述する蓄熱反応器30から水蒸気と共に熱が供給される。熱が供給されると、流体保持室22との間で熱交換され、流体保持室24では水蒸気は凝縮し水が生成される。このときの凝縮熱も、流体保持室22との間で熱交換される。これにより、流体保持室22では、吸着材が加熱され、吸着材に吸着されている水蒸気が脱離する。
【0068】
流体保持室24の、流体保持室22との間で熱交換が行なえる天面及び底面には、グルーブやウィック(溝)が設けられている。グルーブ構造やウィック構造を有する面は、凹状の溝が施されており、この溝部において液体(本実施形態では水)をその表面張力により保持し、液膜を形成することができる。これより、熱交換が行なわれる面に水を均一的に存在させて、熱交換する面内の気化分布を均一化することができる。
【0069】
グルーブ(groove)構造とは、溝や窪み状の凹みが形成された構造を指し、熱交換器の内壁に形成されたものである。また、ウィック構造とは、網細現象を持つメッシュ状等に形成された構造を指し、やはり内壁に形成されたものである。これらの溝部は、壁面に対してプレス、切削等をすることにより形成されたものである。
【0070】
本実施形態では、流体保持室24に溝構造を施すのみで吸着材を設けない構成としたが、流体保持室24の流体保持室22と向き合う天面や底面に多孔層を配設した構造にしてもよい。
【0071】
多孔層としては、上記の多孔体を用いるほか、多孔構造を形成し得る材料を用いることによって、多孔構造が設けられていればよい。多孔構造を形成し得る材料としては、シリカゲル、ゼオライト、シリカ、活性炭、及び粘土鉱物などを使用することができる。多孔層として、吸着材を配してもよく、流体保持室22で使用可能な吸着材と同様のものを使用できる。シリカゲル、ゼオライト、シリカ、活性炭、及び粘土鉱物の詳細については既述の通りである。
【0072】
蓄熱反応器30は、蒸発器10から水蒸気が供給され、水蒸気が水和反応により固定化されるときに反応熱を放出し、水蒸気が脱離するときに蓄熱する化学蓄熱材を有する蓄熱反応部である反応室32と、水タンク41から水が供給され、水を反応室32からの熱で気化する流体気化部である気化室34と、を備えている。
【0073】
蓄熱反応器30には、複数の反応室32及び気化室34が設けられており、反応室32及び気化室34の各々は、
図4に示すように、蓄熱反応器30の筐体内に交互に配置され、隣り合う室が互いに熱的に接続されている。つまり、反応室32で放熱又は吸熱が発生して温度変化が起きると、反応室32は気化室34との間で熱交換して、気化室34は加熱又は冷却されるようになっている。
【0074】
反応室32には、流通配管14の他端が接続されており、蒸発器10から水蒸気が供給される。この反応室32には、
図4に示すように、各室の天面及び底面に板状の蓄熱材36が配設されており、供給された水蒸気が蓄熱材と反応して保持されるようになっている。
【0075】
板状の蓄熱材36は、化学蓄熱材である酸化カルシウム(CaO)の粉末をプレスすることで、板状に成形されたものである。この蓄熱材36は、上記の吸着材26と同様に、
図3に示されるように、CaO板状体(化学蓄熱材構造体)36Aと36Bとで構成されている。CaO板状体36A、36Bの反応室32と向き合う面S、すなわち各室の天面、底面と接する面は、伝熱面であり、この面を通じて互いに隣り合う室と熱交換することができる。
【0076】
化学蓄熱材の1つである酸化カルシウムは、下記の反応を起こして反応熱を生じる。化学蓄熱材は、化学反応を利用して熱の吸収、放出を行なうことのできる物質である。例えばCaOによる熱の吸収、放出は、水和により放熱(発熱)し、脱水を伴なって蓄熱(吸熱)する構成となる。すなわち、CaOは、以下に示す反応により蓄熱、放熱を可逆的に繰り返することができる。
【0077】
CaO + H
2O ⇔ Ca(OH)
2 ・・・(a)
【0078】
また、これに蓄熱量、発熱量Qを併せて示すと、以下のようになる。
【0079】
CaO + H
2O → Ca(OH)
2 + Q ・・・(b)
Ca(OH)
2 + Q → CaO + H
2O ・・・(c)
【0080】
例えば、気化室34で水蒸気が凝縮して凝縮熱が発生すると、蓄熱材36のCaO板状体36A、36Bの伝熱面Sで熱交換され、CaO板状体36A、36Bが加熱されると、上記式(c)の反応が進行して脱水し、加熱時に供された熱量分の水蒸気を吸着器20に供給することができる。
【0081】
化学蓄熱材が用いられることにより、水蒸気の固定化及び脱離に要する熱量を小さく抑えることができ、低エネルギーでも水蒸気の着脱が容易に行なえる。
【0082】
化学蓄熱材の例としては、本実施形態で用いられているCaOのほか、例えば、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)などのアルカリ土類金属の無機酸化物や、酸化リチウムなどのアルカリ金属の無機酸化物、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、等の無機酸化物などが挙げられる。金属酸化物は、一種単独で用いるほか、二種以上を併用してもよい。
【0083】
本実施形態では、流体として水(水蒸気)を用いているが、水のほか、アンモニア等の蒸発潜熱の大きい物質を好適に用いることができる。流体としてアンモニアを用いる場合には、化学蓄熱材として、上記と異なる金属塩化物が好適に用いられる。金属塩化物を用いると、蓄熱密度をより高めることができる。
【0084】
金属塩化物は、アンモニアの吸着時に発熱反応を生じる化合物が適用可能である。金属塩化物では、アンモニアが蓄熱材に固定化(吸着)されるときに放熱し、アンモニアが蓄熱材から脱離するときに蓄熱する。例えば塩化マグネシウム(MgCl
2)の場合、下記の可逆反応において、右方向に進む反応時に放熱し、左方向に進む反応時に蓄熱することができる。
【0085】
MgCl
2・2NH
3+ 4NH
3 ⇔ MgCl
2・6NH
3+ Q
1[kJ]
【0086】
金属塩化物としては、アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、及び遷移金属の塩化物などが好適であり、塩化リチウム(LiCl)、塩化マグネシウム(MgCl
2)、塩化カルシウム(CaCl
2)、塩化ストロンチウム(SrCl
2)、塩化バリウム(BaCl
2)、塩化マンガン(MnCl
2)、塩化コバルト(CoCl
2)、及び塩化ニッケル(NiCl
2)が好適に挙げられる。金属塩化物は、一種単独で用いるほか、二種以上を併用してもよい。
【0087】
金属塩化物の種類は、アンモニア圧や温度に合わせて適宜選定することができる。したがって、熱利用の対象に合わせ、アンモニア圧や温度を選定できる幅が広がる。
【0088】
上記の中では、水を流体とする系では、水和反応に伴なって放熱し、脱水反応に伴なって吸熱する水和反応性蓄熱材が好ましく、特に酸化カルシウム(CaO)好ましい。
【0089】
また、アンモニアを流体とする系では、氷点下での運転が可能である。この場合、アンモニアの吸着温度が低い場合は、BaCl
2、CaCl
2、SrCl
2を選択することができ、アンモニアの吸着温度が比較的高い場合は、MgCl
2、MnCl
2、CoCl
2、NiCl
2を選択することができる。
【0090】
化学蓄熱材は、CaO等の例えば粒状物をプレス成形して得られた成形体として設けることができる。成形方法については、特に限定はなく、例えば、化学蓄熱材及び必要に応じてバインダー等の他の成分を含む蓄熱材(又は蓄熱材を含むスラリー)を、加圧成形、押出成形等の公知の成形方法を適用することができる。成形時の圧力は、例えば20〜100MPaとすることができ、20〜40MPaが好ましい。
【0091】
気化室34には、吸着器の流体保持室24と繋がる流通配管38の他端と、流通配管42の一端とが接続されている。気化室34では、室内に凝縮水が存在するときはこの凝縮水が反応室32との間で熱交換し、また後述の凝縮器40から水が供給されたときは供給された水が反応室32との間で熱交換することで、水蒸気が生成される。
【0092】
気化室34の、反応室32との間で熱交換が行なえる天面及び底面には、グルーブやウィック(溝)が設けられている。グルーブ構造やウィック構造を有する面は、凹状の溝が施されており、この溝部において液体(本実施形態では水)をその表面張力により保持し、液膜を形成することができる。これより、熱交換が行なわれる面に水を均一的に存在させて、熱交換する面内の気化分布を均一化することができる。
【0093】
グルーブ(groove)構造及びウィック構造については、既述の通りである。
【0094】
本実施形態では、気化室34に溝構造を施すのみで吸着材を設けない構成としたが、気化室34の反応室32と向き合う天面や底面に多孔層を配設した構造にしてもよい。多孔層としては、上記の多孔体を用いるほか、多孔構造を形成し得る材料を用いることによって、多孔構造が設けられていればよい。多孔構造を形成し得る材料の詳細については、既述の通りである。
【0095】
蓄熱反応器30には、外部から化学蓄熱材を加熱することができる加熱器を更に備えていることが好ましい。蒸発器10から供給された水蒸気で水和反応が進行し難くなったときは、加熱器により加熱して例えば脱水反応(水の脱離)を進めることで化学蓄熱材を再生することができる。再生時に生じた水蒸気は、流通配管11、14を通じて蒸発器10に戻し、再利用に供することができる。
【0096】
凝縮器40は、吸着器20からの水蒸気の供給が可能に接続されており、吸着器20から供給された水蒸気を凝縮する。具体的には、凝縮器40には、バルブSV01を有する流通配管28の一端と、バルブSV02を有する流通配管29の一端と、がそれぞれ接続されている。凝縮器40は、流通配管28を介して吸着器20の流体保持室22と連通されると共に、流通配管29を介して吸着器20の流体保持室24と連通されており、流体保持室22、24からそれぞれ流通配管28、29を通じて排出された水蒸気が凝縮器40一箇所に回収されるようになっている。
【0097】
また、凝縮器40には、バルブV3を有する流通配管43の一端が接続されており、凝縮器40は、流通配管43によって水タンク41と連通されている。水タンク41は、バルブV1及びポンプP1を有する流通配管42の一端が接続されており、水タンク41は、流通配管42によって蓄熱反応器30の気化室34と連通されている。凝縮器40で水蒸気が凝縮されて液化した水は、水タンク41に貯蔵され、水タンク41に貯蔵された水は、バルブV1を開状態にし、ポンプP1を駆動させることにより、流通配管42を通じて蓄熱反応器30の気化室34に送られ、気化室で水蒸気が生成される。ここで生成された水蒸気は、吸着器20を水蒸気加熱するために用いられる。
【0098】
更に、水タンク41には、バルブV2及びポンプP2を有する流通配管44の一端が接続されており、流通配管44によって水タンク41と蒸発器10とが連通されている。凝縮器40で凝縮された水は、水タンク41に貯蔵され、水タンク41に貯蔵された水は、バルブV2を開状態にし、ポンプP2を駆動させることで流通配管44を通じて蒸発器10にも供給される。蒸発器10に供給された水は、水蒸気として蓄熱反応器の反応室32に送られ、送られた水蒸気は化学蓄熱材に吸着され、気化室の水の気化を促進する熱の生成に用いられる。
【0099】
蒸発器10は、蒸発流路内部における液保水量が少なくなるように構成されており、保水液の顕熱変化量による温度応答遅れを低減でき、保水量変化による蒸発量不安定性を抑制可能であることから、供給水量に対する発生蒸気量の応答性が良好で、安定した蒸気量を液供給のみで制御可能となる(
図5参照)。また、蒸気バルブ方式と比較して小型・安価な水バルブにより水供給の開始/停止をすることで(
図6参照)、蒸気バルブなしで蒸気の生成/停止制御が可能となる。
【0100】
また、連続的な温熱/冷熱生成では、蓄熱反応器または吸着器と蒸発器の連続切換制御が必要となる。そこで、本実施形態では、蒸発器10と蓄熱反応器30/吸着器20との間に3方蒸気バルブSV1を設置し、3方蒸気バルブSV1を切換駆動させることにより、蒸発器10で発生した蒸気を蓄熱反応器30/吸着器20へ連続切換供給でき、1台の蒸気バルブで連続的な温熱/冷熱が生成可能となる。
【0101】
3方蒸気バルブSV1の側面図を、
図7(A)に示し、上面図を
図7(B)に示す。3方蒸気バルブSV1は、駆動部66を備え、駆動部66により、3方蒸気バルブSV1内のバルブ部62を駆動し、バルブ部62に設けられた1つの貫通孔によって、流通配管11が、流通配管12、14の何れか一方と接続されるように切り換えられ、バルブ部62に設けられたシール部64によって、流通配管11が、流通配管12、14の何れか他方と遮断されるように切り換えられる(
図7(C)、(D)参照)。
【0102】
次に、本実施形態の吸着式ヒートポンプの動作例について、
図8〜
図9を参照して説明する。
図8は、吸着器再生モードで熱利用する際の流通形態を示す図であり、
図9は、吸着器吸着モードで熱利用する際の流通形態を示す図である。
【0103】
蒸発器10では、水タンク41から水が供給されて蒸発が進行し、水蒸気を生成する。このとき、例えば15℃程度の冷熱生成が可能であり、冷熱需要の例であるエアコン室外機などの冷熱機器60を例えば熱交換管61を介して熱的に接続することで、冷熱の有効利用が可能になる。
【0104】
続いて、
図8に示すように、蒸発器10で生成された水蒸気は、3方蒸気バルブSV1及び流通配管11、14を通じて蓄熱反応器30の反応室32に送られる。送られた水蒸気は、化学蓄熱材との間で水和反応して反応熱を生じる。このとき、例えば100℃超の温熱生成が可能である。この反応熱が気化室34との間で熱交換されることにより、気化室34内の水が熱で気化し、例えば100℃の高温蒸気を生成する。この高温蒸気が、流通配管38を通じて吸着器20の流体保持室24に送られると、蒸気熱が熱交換されて流体保持室22の吸着材26が熱せられると共に、蒸気は流体保持室24で凝縮して液状に相変化することで保持され、さらに凝縮熱を放出する。このとき、例えば約90℃程度の温熱生成が可能である。そのため、流体保持室22の吸着材26は、放出された凝縮熱の熱交換によっても加熱されることになる。これにより、流体保持室22の吸着材26に吸着されていた水は、例えば40℃の水蒸気として脱離する。脱離した水蒸気は、流通配管28を通じて凝縮器40に送られ、例えば40℃の温熱が生成される。
【0105】
このとき、流体保持室24では、凝縮により生成された水が増え、流体保持室22では、吸着材26に吸着されている水蒸気は徐々に減少する。
【0106】
上記のようにして流体保持室22に吸着された水蒸気の量が減るに伴ない、吸着材26は水蒸気を吸着しやすい状態になる。そのため、水タンク41から蒸発器10に供給された水は容易に気化し、生成した水蒸気は、
図9に示すように吸着器20の流体保持室22に供給される。このとき、流通配管14、28、38は3方蒸気バルブSV1、バルブSV01、SV03により閉じられている。
【0107】
蒸発器10からの水蒸気が、
図9のように3方蒸気バルブSV1及び流通配管11、12を通じて流体保持室22に送られると、水蒸気は流体保持室22の吸着材に吸着されて保持されると共に、吸着熱を放出する。このとき、例えば40℃の温熱生成が可能である。放出された吸着熱は、流体保持室24との間で熱交換されることによって、流体保持室24を加熱し、凝縮により流体保持室24に溜まった水を気化し、水蒸気として脱離する。このとき脱離した水蒸気は、流通配管29を通じて凝縮器40に送られる。
【0108】
このとき、流体保持室22では、吸着材26における水蒸気の吸着量が増え、流体保持室24では、溜まった水が気化して徐々に減少する。
【0109】
以上のように、
図8に示す吸着器再生モードと
図9に示す吸着器吸着モードを、蓄熱反応器30での蓄熱エネルギーがゼロになるまで繰り返すことによって、凝縮器40において、継続的に利用された熱エネルギーを回収することができる。これにより、冷熱と温熱との連続生成が可能になる。
【0110】
そして、蓄熱反応器30の化学蓄熱材の水和反応が進行しなくなった場合、流通配管14のみをバルブにより開通し、図示しない外部熱源によって化学蓄熱材を加熱(例えば400℃)する。これにより、化学蓄熱材において脱水反応が進行し、水蒸気が生成される。生成された水蒸気は、流通配管14を通じて蒸発器10に戻される。このとき、蒸発器10を凝縮器として利用し、送られた水蒸気を凝縮して蓄える。このとき、凝縮熱として例えば40℃の温熱生成が可能である。
【0111】
制御装置90は、吸着式ヒートポンプの全制御を担う制御手段であり、3方蒸気バルブSV1、バルブSV01〜SV03、バルブV1〜V3、ポンプP1〜P2、及び外部熱源などと電気的に接続されており、3方蒸気バルブ、バルブやポンプ、熱源、熱交換を制御して熱利用をコントロールできるように構成されている。
【0112】
次に、本実施形態の吸着式ヒートポンプを制御する流通制御手段である制御装置90による制御ルーチンのうち、吸着器20の2つの流体保持室に交互に水蒸気を供給して増熱サイクルを継続し熱エネルギーを回収する増熱サイクル制御ルーチンを中心に
図10を参照して説明する。
【0113】
本実施形態の吸着式ヒートポンプの起動スイッチのオンにより制御装置90の電源がオンされると、システムが起動され、増熱サイクル制御ルーチンが実行される。なお、システムの起動は、自動で行なう以外に手動で行なうようにしてもよい。
【0114】
本ルーチンが実行されると、まず、ステップ100において、流通配管42、43、44に取り付けられたバルブV1、V2、V3を開き、次のステップ110において、ポンプP1、P2の稼動を開始させる。
【0115】
そして、流体保持室22の吸着材26における吸着質(水蒸気)の吸着量を判断するため、ステップ120において、吸着量を計測する。そして、次のステップ130において、吸着量が所定の閾値P未満であるか否かが判定される。
【0116】
ステップ130において、水蒸気の吸着量が閾値P未満であると判定されたときには、蒸発器10からの水蒸気を吸着材26が継続的に吸着できる状態にあるため、ステップ140に移行する(吸着器吸着モード)。ステップ140において、蒸発器10に接続されている流通配管11を、吸着器20に接続されている流通配管12と連通させるように、3方蒸気バルブSV1を切り換えて、吸着材26による水蒸気の吸着を開始する。このとき、水蒸気の吸着により吸着熱が発生し、熱交換が可能な流体保持室24が加熱される。また、流通配管28に取り付けられたバルブSV01は、閉塞されている。流体保持室22からの吸着熱を熱交換して加熱された流体保持室24では、水が気化して水蒸気として脱離する。そのため、次のステップ160において、流通配管29に設けられているバルブSV02を開き、流通配管29を通じて凝縮器40に水蒸気が送られる。このとき、流通配管38に取り付けられたバルブSV03は、閉塞されている。そして、ステップ170において、バルブV1を閉塞すると共に、ポンプP1の稼動を停止する。
【0117】
次のステップ180において、ステップ140へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q
1に満たない状況にあるか否かが判定され、未だ時間Q
1が経過していないと判定されたときは、吸着器20の吸着材が水蒸気を吸着できる状態にあるため、ステップ140、160、170を継続する。一方、時間Q
1が経過したと判定されたときには、吸着器再生モードに切り換えるため、ステップ200に移行する。
【0118】
ステップ200において、吸着材26の水蒸気を脱離させるため、バルブSV03を開いて、蓄熱反応器30から加熱された水蒸気を供給する。加熱された水蒸気が、流通配管38を通じて吸着器20の流体保持室24に送られると、水蒸気は流体保持室24で凝縮し、水に相変化することで保持されるとともに、凝縮熱を放出する。このとき、流体保持室24に供給された水蒸気の熱が流体保持室22との間で熱交換され、さらに放出された凝縮熱も流体保持室22との間で熱交換されることにより、流体保持室22の吸着材26は加熱される。このようにして、流体保持室22の吸着材26に吸着された水蒸気は、再び脱離する。そのため、次のステップ220において、流通配管28に取り付けられたバルブSV01を開き、流通配管28を通じて凝縮器40に水蒸気が送られる。このとき、蒸発器10に接続されている流通配管11を、蓄熱反応器30に接続されている流通配管14と連通させるように、3方蒸気バルブSV1は切り換えられている。
【0119】
次のステップ240において、ステップ200へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q
2に満たない状況であるか否かが判定され、未だ時間Q
2が経過していないと判定されたときは、吸着器20の吸着材に吸着した水をさらに脱離させて吸着材を再生するため、ステップ200、220を継続する。一方、時間Q
2が経過したと判定されたときには、次のステップ300に移行して、まずシステムの停止要求の有無を判定する。
【0120】
また、ステップ130において、水蒸気の吸着量が閾値P以上に達していると判定されたときには、はじめにステップ200に移行する(吸着器再生モード)。その後、上記同様にステップ220、240を経た後、上記したようにステップ140に移行し、吸着器吸着モードに切り換えられる。
【0121】
ステップ300において、システム停止の要求がされていないと判定されたときには、増熱サイクルを継続するにあたり、蓄熱反応器30の化学蓄熱材での反応熱を確保するため、ステップ320で「吸着器吸着モード+吸着器再生モード」を1サイクルとしてカウントされたサイクル数が、所定数Nに達しているか否かが判定される。一方、ステップ300において、システム停止の要求がされていると判定されたときには、システムを停止するため、ステップ360において、バルブV1、V2、V3を閉塞すると共に、ポンプP1、P2の稼動を停止し、本ルーチンを終了する。
【0122】
次のステップ320において、サイクル数が所定数Nに達していないと判定されたときは、化学蓄熱材への水和反応が継続的に進行し得る状態(反応熱が得られる状態)にあるため、そのままステップ140に戻って、上記と同様のステップを繰り返す。一方、ステップ320でサイクル数が所定数Nに達したと判定されたときは、化学蓄熱材の水和反応が進行せず反応熱が得られない状態にあるため、ステップ340で、蒸発器10に接続されている流通配管11を、蓄熱反応器30に接続されている流通配管14と連通させるように、3方蒸気バルブSV1を切り換え、外部熱源により蓄熱反応器に熱を付与し、化学蓄熱材を再生する。このとき、化学蓄熱材の脱水反応が進行し、脱水生成した水蒸気は、流通配管14を通じて蒸発器10に戻され、凝縮される。また、サイクル数はリセットされる。
【0123】
その後、再びステップ300において、システムの停止要求の有無が判定される。ステップ300でシステム停止の要求がされていないと判定されたときは、再びステップ320でサイクル数が判定され、上記と同様のステップが繰り返される。なお、ステップ300において、システム停止の要求がされていると判定されたときは、上記のように、ステップ360を経て、本ルーチンを終了する。
【0124】
第1実施形態では、化学蓄熱材にCaOを使用したが、他の化学蓄熱材を用いても同様の効果が奏される。また、流体として水蒸気を用いた例を説明したが、水蒸気に限らず、水蒸気以外のアンモニア等の蒸発潜熱の比較的大きい流体を用いた場合にも同様の効果が奏される。アンモニアを用いる場合は、化学蓄熱材として塩化マグネシウム(MgCl
2)等の金属塩化物が好適である。
【0125】
以上説明したように、第1実施形態に係る吸着式ヒートポンプによれば、蒸発器からの蒸気供給量及び停止を、ポンプP2及びバルブV2の制御によって行い、蒸発器からの蒸気供給先の切り換えを、3方蒸気バルブSV1の制御によって行うことにより、バルブの個数を低減し、低コスト化、システム簡素化、小型化を図ることができる。
【0126】
また、本実施形態のように、化学蓄熱システムで温熱を貯蔵して、吸着式ヒートポンプにより冷熱を増熱するシステムは、熱をくみあげる側(蒸発器)における反応熱(蒸発潜熱)と、熱を供給する側における反応熱との差を補う有効なシステムである。一方で、蒸発器からの供給蒸気、凝縮器への蒸気流入、蒸気熱輸送バスを含めて蒸気バルブを複数使用すると同時に、冷熱生成では低温・低圧作動となるため、圧力損失を低減するためバルブ径を大きくする必要がある。そこで、本実施の形態では、蒸発器からの蒸気供給先の切り換えを、3方蒸気バルブSV1の制御によって行うことにより、蒸気バルブの個数を低減し、システム簡素化及び小型化を図ることができる。
【0127】
(第2実施形態)
本発明の吸着式ヒートポンプの第2実施形態について
図11〜
図13を参照して説明する。本実施形態は、蒸発器からの蒸気供給先をバルブSV04、SV05を切り換え、凝縮器への供給切換を、3方蒸気バルブSV2により行うシステム構成となっている。
【0128】
なお、第1実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0129】
本実施形態の吸着式ヒートポンプ200は、
図11に示すように、第1実施形態と同様に、蒸発器10と、吸着器20と、蓄熱反応器30と、凝縮器40と、水タンク41と、を備えている。
【0130】
蒸発器10には、バルブSV04を有する流通配管12の一端と、バルブSV05を有する流通配管14の一端と、がそれぞれ接続されており、蒸発器10は、流通配管12を介して吸着器20と連通されると共に、流通配管14を介して蓄熱反応器30と連通されている。
【0131】
凝縮器40には、3方蒸気バルブSV2に一端が接続された流通配管31の他端が接続されており、凝縮器40は、流通配管31及び3方蒸気バルブSV2に一端が接続された流通配管29を介して吸着器20の流体保持室24と連通されると共に、流通配管31及び3方蒸気バルブSV2に一端が接続された流通配管28を介して吸着器20の流体保持室22と連通されている。流体保持室22、24からそれぞれ流通配管28、29を通じて排出された水蒸気が凝縮器40一箇所に回収されるようになっている。
【0132】
増熱システム停止時において、熱バッテリ作動では、流体保持室22からの脱離蒸気が凝縮器40へ流入し、吸着器作動では、流体保持室24からの蒸気が凝縮器40へ流入すると、吸着量と輸送蒸気量との熱量バランスが崩れることにより、システム再開後で再生不可能/吸着温度制御性の悪化が発生する。そのため、凝縮器40に流入する蒸気を遮断する必要がある。本実施の形態では、蓄熱反応器作動/吸着器作動が停止すると同時に輸送蒸気の凝縮/吸着発熱も停止し、
図12に示すように、吸着器20は、凝縮器40の温度まで冷却されて自動的に凝縮器40への流入蒸気が停止する。
【0133】
また、連続的な温熱/冷熱生成では、吸着器20の流体保持室22または流体保持室24と凝縮器40との連続切換制御が必要となる。そこで、本実施の形態では、凝縮器40と吸着器20の流体保持室22、24との間に3方蒸気バルブSV2を設置し、3方蒸気バルブSV2を切換駆動させることにより、吸着器20の流体保持室22、24で発生した蒸気を凝縮器40へ連続切換供給でき、1台の蒸気バルブで連続的な温熱/冷熱が生成可能となる。
【0134】
制御装置90は、3方蒸気バルブSV2、バルブV1〜V3、SV03〜SV05、ポンプP1〜P2、及び外部熱源などと電気的に接続されており、バルブやポンプ、熱源、熱交換を制御して熱利用をコントロールできるように構成されている。
【0135】
次に、本実施形態の吸着式ヒートポンプを制御する制御装置90による制御ルーチンのうち、吸着器20の2つの流体保持室に交互に水蒸気を供給して増熱サイクルを継続し熱エネルギーを回収する増熱サイクル制御ルーチンを中心に
図13を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0136】
本ルーチンが実行されると、まず、ステップ100において、流通配管42、43、44に取り付けられたバルブV1、V2、V3を開き、次のステップ110において、ポンプP1、P2の稼動を開始させる。
【0137】
そして、ステップ120において、吸着量を計測する。そして、次のステップ130において、吸着量が所定の閾値P未満であるか否かが判定される。
【0138】
ステップ130において、水蒸気の吸着量が閾値P未満であると判定されたときには、蒸発器10からの水蒸気を吸着材26が継続的に吸着できる状態にあるため、ステップ400に移行する(吸着器吸着モード)。ステップ400において、流通配管12に取り付けられたバルブSV04を開いて、吸着材26による水蒸気の吸着を開始する。このとき、水蒸気の吸着により吸着熱が発生し、熱交換が可能な流体保持室24が加熱される。流体保持室22からの吸着熱を熱交換して加熱された流体保持室24では、水が気化して水蒸気として脱離する。そのため、次のステップ420において、凝縮器40に接続されている流通配管31を、流体保持室24に接続されている流通配管29と連通させるように、3方蒸気バルブSV2を切り換え、流通配管29、31を通じて凝縮器40に水蒸気が送られる。このとき、流通配管38に取り付けられたバルブSV03及び流通配管14に取り付けられたバルブSV05は、閉塞されている。そして、ステップ170において、バルブV1を閉塞すると共に、ポンプP1の稼動を停止する。
【0139】
次のステップ180において、ステップ400へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q
1に満たない状況にあるか否かが判定され、未だ時間Q
1が経過していないと判定されたときは、ステップ400、420、170を継続する。一方、時間Q
1が経過したと判定されたときには、吸着器再生モードに切り換えるため、ステップ440に移行する。
【0140】
ステップ440において、吸着材26の水蒸気を脱離させるため、バルブSV03、SV05を開いて、蓄熱反応器30から加熱された水蒸気を供給する。加熱された水蒸気が、流通配管38を通じて吸着器20の流体保持室24に送られると、水蒸気は流体保持室24で凝縮し、水に相変化することで保持されるとともに、凝縮熱を放出する。このとき、流体保持室24に供給された水蒸気の熱が流体保持室22との間で熱交換され、さらに放出された凝縮熱も流体保持室22との間で熱交換されることにより、流体保持室22の吸着材26は加熱される。このようにして、流体保持室22の吸着材26に吸着された水蒸気は、再び脱離する。そのため、次のステップ460において、凝縮器40に接続されている流通配管31を、流体保持室22に接続されている流通配管28と連通させるように、3方蒸気バルブSV2を切り換え、流通配管28、31を通じて凝縮器40に水蒸気が送られる。このとき、流通配管12に取り付けられたバルブSV04は、閉塞されている。
【0141】
次のステップ240において、ステップ440へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q
2に満たない状況であるか否かが判定され、未だ時間Q
2が経過していないと判定されたときは、ステップ440、460を継続する。一方、時間Q
2が経過したと判定されたときには、次のステップ300に移行して、まずシステムの停止要求の有無を判定する。
【0142】
また、ステップ130において、水蒸気の吸着量が閾値P以上に達していると判定されたときには、はじめにステップ440に移行する(吸着器再生モード)。その後、上記同様にステップ460、240を経た後、上記したようにステップ400に移行し、吸着器吸着モードに切り換えられる。
【0143】
ステップ300において、システム停止の要求がされていないと判定されたときには、ステップ320で「吸着器吸着モード+吸着器再生モード」を1サイクルとしてカウントされたサイクル数が、所定数Nに達しているか否かが判定される。一方、ステップ300において、システム停止の要求がされていると判定されたときには、システムを停止するため、ステップ360において、バルブV1、V2、V3を閉塞すると共に、ポンプP1、P2の稼動を停止し、本ルーチンを終了する。
【0144】
次のステップ320において、サイクル数が所定数Nに達していないと判定されたときは、そのままステップ400に戻って、上記と同様のステップを繰り返す。一方、ステップ320でサイクル数が所定数Nに達したと判定されたときは、化学蓄熱材の水和反応が進行せず反応熱が得られない状態にあるため、ステップ480で、流通配管14に取り付けられているバルブSV05を開き、外部熱源により蓄熱反応器30に熱を付与し、化学蓄熱材を再生する。このとき、化学蓄熱材の脱水反応が進行し、脱水生成した水蒸気は、流通配管14を通じて蒸発器10に戻され、凝縮される。また、サイクル数はリセットされる。
【0145】
その後、再びステップ300において、システムの停止要求の有無が判定される。ステップ300でシステム停止の要求がされていないと判定されたときは、再びステップ320でサイクル数が判定され、上記と同様のステップが繰り返される。なお、ステップ300において、システム停止の要求がされていると判定されたときは、上記のように、ステップ360を経て、本ルーチンを終了する。
【0146】
以上説明したように、第2実施形態に係る吸着式ヒートポンプによれば、吸着器の流体保持室22、24から凝縮器への供給元の切り換えを、3方蒸気バルブSV2によって行うと共に、蒸気発生側の温度と凝縮温度とが等しくなることによって凝縮器を自動停止させることにより、バルブの個数を低減し、低コスト化、システム簡素化、小型化を図ることができる。
【0147】
(第3実施形態)
本発明の吸着式ヒートポンプの第3実施形態について
図14〜
図15を参照して説明する。本実施形態は、蒸発器からの蒸気供給先を3方蒸気バルブSV1により切り換え、凝縮器への供給切換を、3方蒸気バルブSV2により行うシステム構成となっている。
【0148】
なお、上記の第1実施形態〜第2実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0149】
本実施形態の吸着式ヒートポンプ300は、
図14に示すように、第1実施形態と同様に、蒸発器10と、吸着器20と、蓄熱反応器30と、凝縮器40と、水タンク41と、を備えている。
【0150】
蒸発器10には、第1実施形態と同様に、3方蒸気バルブSV1に一端が接続された流通配管11の他端が接続されており、蒸発器10は、流通配管11及び3方蒸気バルブSV1に一端が接続された流通配管12を介して吸着器20と連通されると共に、流通配管11及び3方蒸気バルブSV1に一端が接続された流通配管14を介して蓄熱反応器30と連通されている。
【0151】
凝縮器40には、第2実施形態と同様に、3方蒸気バルブSV2に一端が接続された流通配管31の他端が接続されており、凝縮器40は、流通配管31及び3方蒸気バルブSV2に一端が接続された流通配管29を介して吸着器20の流体保持室24と連通されると共に、流通配管31及び3方蒸気バルブSV2に一端が接続された流通配管28を介して吸着器20の流体保持室22と連通されている。
【0152】
制御装置90は、3方蒸気バルブSV1、SV2、バルブV1〜V3、SV03、ポンプP1〜P2、及び外部熱源などと電気的に接続されており、3方蒸気バルブやバルブ、ポンプ、熱源、熱交換を制御して熱利用をコントロールできるように構成されている。
【0153】
次に、本実施形態の吸着式ヒートポンプ300を制御する制御装置90による制御ルーチンのうち、吸着器20の2つの流体保持室に交互に水蒸気を供給して増熱サイクルを継続し熱エネルギーを回収する増熱サイクル制御ルーチンを中心に
図15を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0154】
本ルーチンが実行されると、まず、ステップ100において、流通配管42、43、44に取り付けられたバルブV1、V2、V3を開き、次のステップ110において、ポンプP1、P2の稼動を開始させる。
【0155】
そして、ステップ120において、吸着量を計測する。そして、次のステップ130において、吸着量が所定の閾値P未満であるか否かが判定される。
【0156】
ステップ130において、水蒸気の吸着量が閾値P未満であると判定されたときには、蒸発器10からの水蒸気を吸着材26が継続的に吸着できる状態にあるため、ステップ500に移行する(吸着器吸着モード)。ステップ500において、蒸発器10に接続されている流通配管11を、吸着器20に接続されている流通配管12と連通させるように、3方蒸気バルブSV1を切り換えて、吸着材26による水蒸気の吸着を開始する。このとき、水蒸気の吸着により吸着熱が発生し、熱交換が可能な流体保持室24が加熱される。流体保持室22からの吸着熱を熱交換して加熱された流体保持室24では、水が気化して水蒸気として脱離する。そのため、そのため、次のステップ520において、凝縮器40に接続されている流通配管31を、流体保持室24に接続されている流通配管29と連通させるように、3方蒸気バルブSV2を切り換え、流通配管29、31を通じて凝縮器40に水蒸気が送られる。このとき、流通配管38に取り付けられたバルブSV03は、閉塞されている。そして、ステップ170において、バルブV1を閉塞すると共に、ポンプP1の稼動を停止する。
【0157】
次のステップ180において、ステップ500へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q
1に満たない状況にあるか否かが判定され、未だ時間Q
1が経過していないと判定されたときは、ステップ500、520、170を継続する。一方、時間Q
1が経過したと判定されたときには、吸着器再生モードに切り換えるため、ステップ540に移行する。
【0158】
ステップ540において、吸着材26の水蒸気を脱離させるため、バルブSV03を開いて、蓄熱反応器30から加熱された水蒸気を供給する。加熱された水蒸気が、流通配管38を通じて吸着器20の流体保持室24に送られると、水蒸気は流体保持室24で凝縮し、水に相変化することで保持されるとともに、凝縮熱を放出する。このとき、流体保持室24に供給された水蒸気の熱が流体保持室22との間で熱交換され、さらに放出された凝縮熱も流体保持室22との間で熱交換されることにより、流体保持室22の吸着材26は加熱される。このようにして、流体保持室22の吸着材26に吸着された水蒸気は、再び脱離する。そのため、次のステップ560において、凝縮器40に接続されている流通配管31を、流体保持室22に接続されている流通配管28と連通させるように、3方蒸気バルブSV2を切り換え、流通配管28、31を通じて凝縮器40に水蒸気が送られる。このとき、蒸発器10に接続されている流通配管11を、蓄熱反応器30に接続されている流通配管14と連通させるように、3方蒸気バルブSV1は切り換えられている。
【0159】
次のステップ240において、ステップ540へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q
2に満たない状況であるか否かが判定され、未だ時間Q
2が経過していないと判定されたときは、ステップ540、560を継続する。一方、時間Q
2が経過したと判定されたときには、次のステップ300に移行して、まずシステムの停止要求の有無を判定する。
【0160】
また、ステップ130において、水蒸気の吸着量が閾値P以上に達していると判定されたときには、はじめにステップ540に移行する(吸着器再生モード)。その後、上記同様にステップ560、240を経た後、上記したようにステップ400に移行し、吸着器吸着モードに切り換えられる。
【0161】
ステップ300において、システム停止の要求がされていないと判定されたときには、ステップ320で「吸着器吸着モード+吸着器再生モード」を1サイクルとしてカウントされたサイクル数が、所定数Nに達しているか否かが判定される。一方、ステップ300において、システム停止の要求がされていると判定されたときには、システムを停止するため、ステップ360において、バルブV1、V2、V3を閉塞すると共に、ポンプP1、P2の稼動を停止し、本ルーチンを終了する。
【0162】
次のステップ320において、サイクル数が所定数Nに達していないと判定されたときは、そのままステップ400に戻って、上記と同様のステップを繰り返す。一方、ステップ320でサイクル数が所定数Nに達したと判定されたときは、化学蓄熱材の水和反応が進行せず反応熱が得られない状態にあるため、ステップ580で、蒸発器10に接続されている流通配管11を、蓄熱反応器30に接続されている流通配管14と連通させるように、3方蒸気バルブSV1を切り換え、外部熱源により蓄熱反応器に熱を付与し、化学蓄熱材を再生する。このとき、化学蓄熱材の脱水反応が進行し、脱水生成した水蒸気は、流通配管14を通じて蒸発器10に戻され、凝縮される。また、サイクル数はリセットされる。
【0163】
その後、再びステップ300において、システムの停止要求の有無が判定される。ステップ300でシステム停止の要求がされていないと判定されたときは、再びステップ320でサイクル数が判定され、上記と同様のステップが繰り返される。なお、ステップ300において、システム停止の要求がされていると判定されたときは、上記のように、ステップ360を経て、本ルーチンを終了する。
【0164】
以上説明したように、第3実施形態に係る吸着式ヒートポンプによれば、蒸発器からの蒸気供給先の切り換えを、3方蒸気バルブSV1によって行うと共に、吸着器の流体保持室22、24から凝縮器への供給元の切り換えを、3方蒸気バルブSV2によって行うことにより、バルブの個数を低減し、低コスト化、システム簡素化、小型化を図ることができる。
【0165】
また、蒸発量を液供給(ポンプP2及びバルブV2)で制御し、凝縮量を流路保水量(ポンプP1及びバルブV1、V3)で制御し、2台の3方蒸気バルブSV1、SV2で蒸発器10からの蒸気生成と凝縮器40への蒸気供給を切換制御することで、蒸気バルブの個数を低減し、小型・安価な水バルブによる蒸気量制御が可能となり、連続的な温熱/冷熱生成が可能となる。
【0166】
(第4実施形態)
本発明の吸着式ヒートポンプの第4実施形態について
図16〜
図18を参照して説明する。本実施形態は、3方蒸気バルブSV1、SV2が、閉流路における隙間流量を、許容漏れ以内とするゲート遮断機構を備えているシステム構成となっている。
【0167】
なお、吸着式ヒートポンプの第4実施形態は、上記の第3実施形態と同様の構成要素であるため、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0168】
本実施形態の3方蒸気バルブSV1、SV2の側方断面図を
図16に示す。3方蒸気バルブSV1、SV2内のバルブ部62に設けられたシール部64は、ゲート遮断機構の一例であり、隙間を形成するように設けられている。ここで、
図17に示すように、シール部64の隙間c[m]は、シール部64の外径a[m]、内径b[m]に基づいて、以下の式に従って設計されている。
【0170】
ただし、隙間流量Q[m
3/s]は、作動状態、配管圧力損失により設定されたバルブ前後圧力差に対して、許容漏れ量(例えば、出力の1%)以内である予め定められた値である(
図18参照)。ΔPは、バルブ前後圧力差であり、当該シール部64が、蒸発器10と接続された流通配管11と、蓄熱反応器30の反応室32と接続された流通配管14とを遮断するためのシール部64である場合には、以下の式に従って求められる。
【0171】
ΔP=(Pe−ΔPe)−(Ps+ΔPs)
【0172】
ただし、Peは、蒸発器流路の圧力であり、ΔPeは、流通配管11の圧力であり、Psは、蓄熱反応器30の反応室32の圧力であり、ΔPsは、流通配管14の圧力である。
【0173】
また、当該シール部64が、蒸発器10と接続された流通配管11と、吸着器20の流体保持室22と接続された流通配管12とを遮断するためのシール部64である場合には、バルブ前後圧力差ΔPは、以下の式に従って求められる。
【0174】
ΔP=(Pe−ΔPe)−(Pd+ΔPa)
【0175】
ただし、Pdは、吸着器20の流体保持室22の圧力であり、ΔPaは、流通配管12の圧力である。
【0176】
また、当該シール部64が、吸着器20の流体保持室22と接続された流通配管28と、凝縮器40と接続された流通配管31と、を遮断するためのシール部64である場合には、バルブ前後圧力差ΔPは、以下の式に従って求められる。
【0177】
ΔP=(Pd−ΔPd)−(Pc+ΔPc)
【0178】
ただし、Pdは、吸着器20の流体保持室22の圧力であり、ΔPdは、流通配管28の圧力であり、Pcは、凝縮器40の圧力であり、ΔPcは、流通配管31の圧力である。
【0179】
また、当該シール部64が、吸着器20の流体保持室24と接続された流通配管29と、凝縮器40と接続された流通配管31と、を遮断するためのシール部64である場合には、バルブ前後圧力差ΔPは、以下の式に従って求められる。
【0180】
ΔP=(Pt−ΔPt)−(Pc+ΔPc)
【0181】
ただし、Ptは、吸着器20の流体保持室24の圧力であり、ΔPtは、流通配管29の圧力である。
【0182】
なお、第4実施形態の吸着式ヒートポンプの他の構成及び作用については、第3実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0183】
以上説明したように、第4実施形態の吸着式ヒートポンプによれば、システムの作動状態(蓄熱反応器作動/吸着器作動)、接続配管の圧力損失により設定されたバルブ前後の圧力差に対し、蒸気流通を遮断するシール部における隙間を流れる隙間流量が許容漏れ量以下となるように3方蒸気バルブを設計することで、一方のガスを流通すると同時に他方のガス流通のリークレートを緩和することができ、バルブの簡素化、耐久性確保、コスト低減を図ることができる。
【0184】
(第5実施形態)
本発明の吸着式ヒートポンプの第5実施形態について
図19〜
図22を参照して説明する。本実施形態は、流通配管38にバルブを設けずに、バルブV1、ポンプP1の制御により、蓄熱反応器30と吸着器20との間の輸送蒸気量及び輸送停止を制御するシステム構成となっている。
【0185】
なお、上記の第1実施形態〜第3実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0186】
本実施形態の吸着式ヒートポンプ500は、
図19に示すように、第1実施形態と同様に、蒸発器10と、吸着器20と、蓄熱反応器30と、凝縮器40と、水タンク41と、を備えており、蓄熱反応器30の気化室34と吸着器20の流体保持室24との間が、流通配管38によって連通されている。
【0187】
蒸気熱輸送式の増熱システムでは、蓄熱反応器30で生成した温熱を気化室34で除熱し、吸着器20の流体保持室24に輸送・凝縮させることにより脱離熱を供給する。一方で、吸着器20の脱離反応完了後では、気化室34で凝縮させた水を蒸発させることにより、吸着反応により発生した熱を除熱するため、吸着反応時における蓄熱反応器30からの供給蒸気を遮断する必要がある。そこで、本実施の形態では、蓄熱反応器30の気化室34内部における液保水量が少ない流路構成とすることで、保水液の顕熱変化量による温度応答遅れを低減でき(
図20参照)、保水量変化による蒸発量不安定性を抑制でき、供給水量に対する発生蒸気量の応答性が良好で、安定した蒸気量を液供給のみで制御可能となる。また、蒸気バルブ方式と比較して小型・安価なバルブV1により、水供給の開始/停止をすることで(
図21参照)、流通配管38に蒸気バルブを設けることなく、蒸気の生成/停止制御が可能となる。
【0188】
制御装置90は、3方蒸気バルブSV1、SV2、バルブV1〜V3、ポンプP1〜P2、及び外部熱源などと電気的に接続されており、3方蒸気バルブやバルブ、ポンプ、熱源、熱交換を制御して熱利用をコントロールできるように構成されている。
【0189】
次に、本実施形態の吸着式ヒートポンプを制御する制御装置90による制御ルーチンのうち、増熱サイクル制御ルーチンを中心に
図22を参照して説明する。なお、第3の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0190】
本ルーチンが実行されると、まず、ステップ600において、流通配管43、44に取り付けられたバルブV2、V3を開く。このとき、流通配管42に取り付けられたバルブV1は、閉塞されている。次のステップ610において、ポンプP2の稼動を開始させる。
【0191】
そして、ステップ120において、吸着量を計測する。そして、次のステップ130において、吸着量が所定の閾値P未満であるか否かが判定される。
【0192】
ステップ130において、水蒸気の吸着量が閾値P未満であると判定されたときには、蒸発器10からの水蒸気を吸着材26が継続的に吸着できる状態にあるため、ステップ500に移行する(吸着器吸着モード)。ステップ500において、蒸発器10に接続されている流通配管11を、吸着器20に接続されている流通配管12と連通させるように、3方蒸気バルブSV1を切り換えて、吸着材26による水蒸気の吸着を開始する。このとき、水蒸気の吸着により吸着熱が発生し、熱交換が可能な流体保持室24が加熱される。流体保持室22からの吸着熱を熱交換して加熱された流体保持室24では、水が気化して水蒸気として脱離する。そのため、次のステップ620において、凝縮器40に接続されている流通配管31を、流体保持室24に接続されている流通配管29と連通させるように、3方蒸気バルブSV2を切り換え、流通配管29、31を通じて凝縮器40に水蒸気が送られる。そして、ステップ630において、流通配管42に取り付けられたバルブV1を閉塞し、ポンプP1の稼動を停止する。
【0193】
次のステップ180において、ステップ500へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q
1に満たない状況にあるか否かが判定され、未だ時間Q
1が経過していないと判定されたときは、ステップ500、620、630を継続する。一方、時間Q
1が経過したと判定されたときには、吸着器再生モードに切り換えるため、ステップ640に移行する。
【0194】
ステップ640において、吸着材26の水蒸気を脱離させるため、流通配管42に取り付けられたバルブV1を開き、ポンプP1の稼動を開始させて、蓄熱反応器30から加熱された水蒸気を供給する。加熱された水蒸気が、流通配管38を通じて吸着器20の流体保持室24に送られると、水蒸気は流体保持室24で凝縮し、水に相変化することで保持されるとともに、凝縮熱を放出する。次のステップ560において、凝縮器40に接続されている流通配管31を、流体保持室22に接続されている流通配管28と連通させるように、3方蒸気バルブSV2を切り換え、流通配管28、31を通じて凝縮器40に水蒸気が送られる。このとき、蒸発器10に接続されている流通配管11を、蓄熱反応器30に接続されている流通配管14と連通させるように、3方蒸気バルブSV1は切り換えられている。
【0195】
次のステップ240において、ステップ540へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q
2に満たない状況であるか否かが判定され、未だ時間Q
2が経過していないと判定されたときは、ステップ640、560を継続する。一方、時間Q
2が経過したと判定されたときには、次のステップ300に移行して、まずシステムの停止要求の有無を判定する。
【0196】
また、ステップ130において、水蒸気の吸着量が閾値P以上に達していると判定されたときには、はじめにステップ640に移行する(吸着器再生モード)。その後、上記同様にステップ560、240を経た後、上記したようにステップ500に移行し、吸着器吸着モードに切り換えられる。
【0197】
ステップ300において、システム停止の要求がされていないと判定されたときには、ステップ320で「吸着器吸着モード+吸着器再生モード」を1サイクルとしてカウントされたサイクル数が、所定数Nに達しているか否かが判定される。一方、ステップ300において、システム停止の要求がされていると判定されたときには、システムを停止するため、ステップ360において、バルブV1、V2、V3を閉塞すると共に、ポンプP1、P2の稼動を停止し、本ルーチンを終了する。
【0198】
次のステップ320において、サイクル数が所定数Nに達していないと判定されたときは、そのままステップ500に戻って、上記と同様のステップを繰り返す。一方、ステップ320でサイクル数が所定数Nに達したと判定されたときは、化学蓄熱材の水和反応が進行せず反応熱が得られない状態にあるため、ステップ660で、蒸発器10に接続されている流通配管11を、蓄熱反応器30に接続されている流通配管14と連通させるように、3方蒸気バルブSV1を切り換え、外部熱源により蓄熱反応器30に熱を付与し、化学蓄熱材を再生する。このとき、化学蓄熱材の脱水反応が進行し、脱水生成した水蒸気は、流通配管14を通じて蒸発器10に戻され、凝縮される。また、サイクル数はリセットされる。
【0199】
次のステップ680では、流通配管42に取り付けられたバルブV1を閉塞し、ポンプP1の稼動を停止させる。
【0200】
その後、再びステップ300において、システムの停止要求の有無が判定される。ステップ300でシステム停止の要求がされていないと判定されたときは、再びステップ320でサイクル数が判定され、上記と同様のステップが繰り返される。なお、ステップ300において、システム停止の要求がされていると判定されたときは、上記のように、ステップ360を経て、本ルーチンを終了する。
【0201】
以上説明したように、第5実施形態に係る吸着式ヒートポンプによれば、流通配管38にバルブを設けずに、バルブV1、ポンプP1の制御により、蓄熱反応器30と吸着器20との間の輸送蒸気量及び輸送停止を制御することにより、蒸気バルブの個数を更に低減し、低コスト化、システム簡素・小型化を図ることができる。
【0202】
(第6実施形態)
本発明の吸着式ヒートポンプの第6実施形態について
図23〜
図24を参照して説明する。本実施形態は、3方蒸気バルブSV1、SV2の駆動部を共通のものとしたシステム構成となっている。
【0203】
なお、吸着式ヒートポンプの第6実施形態は、上記の第5実施形態と同様の構成要素であるため、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0204】
本実施の形態では、
図23(A)、(B)に示すように、蒸発器10で生成した蒸気を蓄熱反応器30及び吸着器20へ切り換え供給が可能な3方蒸気バルブと、吸着器20の流体保持室22、24で生成した蒸気を凝縮器40へ切り換え供給が可能な3方蒸気バルブSV1、SV2との駆動部660を共有化し、蒸発器10と蓄熱反応器30が接続されていると同時に吸着器20の流体保持室22と凝縮器40とが接続し(
図23(A)の位置A)、一方で、蒸発器10と吸着器20が接続されていると同時に吸着器20の流体保持室24が接続される(
図23(B)の位置B)。
【0205】
なお、
図23(C)に示すように、3方蒸気バルブSV1、SV2との駆動部を、3方蒸気バルブSV1、SV2側に設置し、コンパクト化を図ってもよい。
【0206】
制御装置90は、3方蒸気バルブSV1、SV2の共有化した駆動部660、バルブV1〜V3、ポンプP1〜P2、及び外部熱源などと電気的に接続されており、バルブやポンプ、熱源、熱交換を制御して熱利用をコントロールできるように構成されている。
【0207】
次に、本実施形態の吸着式ヒートポンプを制御する制御装置90による制御ルーチンのうち、増熱サイクル制御ルーチンを中心に
図24を参照して説明する。なお、第5の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0208】
本ルーチンが実行されると、まず、ステップ600において、流通配管43、44に取り付けられたバルブV2、V3を開く。このとき、流通配管42に取り付けられたバルブV1は、閉塞されている。次のステップ610において、ポンプP2の稼動を開始させる。
【0209】
そして、ステップ120において、吸着量を計測する。そして、次のステップ130において、吸着量が所定の閾値P未満であるか否かが判定される。
【0210】
ステップ130において、水蒸気の吸着量が閾値P未満であると判定されたときには、蒸発器10からの水蒸気を吸着材26が継続的に吸着できる状態にあるため、ステップ500に移行する(吸着器吸着モード)。ステップ700において、蒸発器10に接続されている流通配管11を、吸着器20に接続されている流通配管12と連通させ、かつ、凝縮器40に接続されている流通配管31を、流体保持室24に接続されている流通配管29と連通させるように、3方蒸気バルブSV1、SV2を位置Bに切り換えて、吸着材26による水蒸気の吸着を開始する。このとき、水蒸気の吸着により吸着熱が発生し、熱交換が可能な流体保持室24が加熱される。流体保持室22からの吸着熱を熱交換して加熱された流体保持室24では、水が気化して水蒸気として脱離する。また、流通配管29、31を通じて凝縮器40に水蒸気が送られる。そして、ステップ630において、流通配管42に取り付けられたバルブV1を閉塞し、ポンプP1の稼動を停止する。
【0211】
次のステップ180において、ステップ700へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q
1に満たない状況にあるか否かが判定され、未だ時間Q
1が経過していないと判定されたときは、ステップ700、630を継続する。一方、時間Q
1が経過したと判定されたときには、吸着器再生モードに切り換えるため、ステップ640に移行する。
【0212】
ステップ640において、吸着材26の水蒸気を脱離させるため、流通配管42に取り付けられたバルブV1を開き、ポンプP1の稼動を開始させて、蓄熱反応器30から加熱された水蒸気を供給する。加熱された水蒸気が、流通配管38を通じて吸着器20の流体保持室24に送られると、水蒸気は流体保持室24で凝縮し、水に相変化することで保持されるとともに、凝縮熱を放出する。次のステップ720において、凝縮器40に接続されている流通配管31を、流体保持室22に接続されている流通配管28と連通させ、かつ、蒸発器10に接続されている流通配管11を、蓄熱反応器30に接続されている流通配管14と連通させるように、3方蒸気バルブSV1、SV2を位置Aに切り換え、流通配管28、31を通じて凝縮器40に水蒸気が送られる。
【0213】
次のステップ240において、ステップ540へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q
2に満たない状況であるか否かが判定され、未だ時間Q
2が経過していないと判定されたときは、ステップ640、720を継続する。一方、時間Q
2が経過したと判定されたときには、次のステップ300に移行して、まずシステムの停止要求の有無を判定する。
【0214】
また、ステップ130において、水蒸気の吸着量が閾値P以上に達していると判定されたときには、はじめにステップ640に移行する(吸着器再生モード)。その後、上記同様にステップ720を経た後、上記したようにステップ500に移行し、吸着器吸着モードに切り換えられる。
【0215】
ステップ300において、システム停止の要求がされていないと判定されたときには、ステップ320で「吸着器吸着モード+吸着器再生モード」を1サイクルとしてカウントされたサイクル数が、所定数Nに達しているか否かが判定される。一方、ステップ300において、システム停止の要求がされていると判定されたときには、システムを停止するため、ステップ360において、バルブV1、V2、V3を閉塞すると共に、ポンプP1、P2の稼動を停止し、本ルーチンを終了する。
【0216】
次のステップ320において、サイクル数が所定数Nに達していないと判定されたときは、そのままステップ500に戻って、上記と同様のステップを繰り返す。一方、ステップ320でサイクル数が所定数Nに達したと判定されたときは、化学蓄熱材の水和反応が進行せず反応熱が得られない状態にあるため、ステップ740で、蒸発器10に接続されている流通配管11を、蓄熱反応器30に接続されている流通配管14と連通させるように、3方蒸気バルブSV1、SV2を位置Aに切り換え、外部熱源により蓄熱反応器に熱を付与し、化学蓄熱材を再生する。このとき、化学蓄熱材の脱水反応が進行し、脱水生成した水蒸気は、流通配管14を通じて蒸発器10に戻され、凝縮される。また、サイクル数はリセットされる。
【0217】
次のステップ680では、流通配管42に取り付けられたバルブV1を閉塞し、ポンプP1の稼動を停止させる。
【0218】
その後、再びステップ300において、システムの停止要求の有無が判定される。ステップ300でシステム停止の要求がされていないと判定されたときは、再びステップ320でサイクル数が判定され、上記と同様のステップが繰り返される。なお、ステップ300において、システム停止の要求がされていると判定されたときは、上記のように、ステップ360を経て、本ルーチンを終了する。
【0219】
以上説明したように、第6実施形態に係る吸着式ヒートポンプによれば、1つの駆動部で2つの3方蒸気バルブの切換制御が可能となるため、システム要素の削減、コスト低減を図ることができる。
【0220】
(第7実施形態)
本発明の吸着式ヒートポンプの第7実施形態について
図25〜
図27を参照して説明する。本実施形態は、2つの3方蒸気バルブSV1、SV2を、1つの回転式切り換え蒸気バルブSV12で実現したシステム構成となっている。
【0221】
吸着式ヒートポンプの第7実施形態は、
図25に示す回転式切り換え蒸気バルブSV12を備えている。
図25は、回転式切り換え蒸気バルブSV12の側面図である。回転式切り換え蒸気バルブSV12は、回転駆動させるための駆動部760、駆動軸762、2つの流通配管を接続するためのマニホールド764、回転部766、及び固定配管部768を備えている。
【0222】
図26(A)に、回転式切り換え蒸気バルブSV12の上面図を示す。回転式切り換え蒸気バルブSV12が回転することにより、位置Aと位置Bとに切り換える。
図26(B)に、回転部766の下面図を示す。2つのマニホールド764によって、2つの流通配管を接続するように構成されている。
図26(C)に、固定配管部768の上面図を示す。固定配管部768は、流通配管11、12、14、28、29、31の各々と接続するための穴及びシール部770を備えている。
【0223】
蒸発器10には、回転式切り換え蒸気バルブSV12に一端が接続された流通配管11の他端が接続されており、蒸発器10は、流通配管11及び回転式切り換え蒸気バルブSV12に一端が接続された流通配管12を介して吸着器20と連通されると共に、流通配管11及び回転式切り換え蒸気バルブSV12に一端が接続された流通配管14を介して蓄熱反応器30と連通されている。
【0224】
凝縮器40には、第2実施形態と同様に、回転式切り換え蒸気バルブSV12に一端が接続された流通配管31の他端が接続されており、凝縮器40は、流通配管31及び回転式切り換え蒸気バルブSV12に一端が接続された流通配管29を介して吸着器20の流体保持室24と連通されると共に、流通配管31及び回転式切り換え蒸気バルブSV12に一端が接続された流通配管28を介して吸着器20の流体保持室22と連通されている。
【0225】
図27(A)に示すように、回転式切り換え蒸気バルブSV12が回転することにより、凝縮器40に接続されている流通配管31を、流体保持室22に接続されている流通配管28と連通させ、かつ、蒸発器10に接続されている流通配管11を、蓄熱反応器30に接続されている流通配管14と連通させるように、3方蒸気バルブSV1、SV2を位置Aに切り換える。
【0226】
また、
図27(B)に示すように、蒸発器10に接続されている流通配管11を、吸着器20に接続されている流通配管12と連通させ、かつ、凝縮器40に接続されている流通配管31を、流体保持室24に接続されている流通配管29と連通させるように、3方蒸気バルブSV1、SV2を位置Bに切り換える。
【0227】
なお、吸着式ヒートポンプの第7実施形態の他の構成及び作用は、上記の第6実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0228】
以上説明したように、第7実施形態に係る吸着式ヒートポンプによれば、1つの回転式切り換え蒸気バルブで、2つの3方蒸気バルブを実現するため、更に蒸気バルブの個数を低減することができる。
【0229】
(第8実施形態)
本発明の吸着式ヒートポンプの第8実施形態について
図28〜
図29を参照して説明する。本実施形態は、システム始動時及び停止後再開時に、蓄熱反応器及び吸着器の双方に蒸発器から蒸気を供給するシステム構成となっている。
【0230】
なお、吸着式ヒートポンプの第8実施形態は、上記の第5実施形態と同様の構成要素であるため、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0231】
システム始動モード、長期停止後再開モードでは、蒸発器温度が常温(夏場35°C)となり作動温度(10〜15°C)まで冷却するための顕熱量が必要となる。一方で、吸着器あるいは蓄熱反応器のみの作動における冷熱生成では出力に限界があるため常温から作動温度に冷却するまでに長い時間を要する問題がある。そこで、本実施の形態では、システム始動時、及び再開時において、蒸発器10と蓄熱反応器30/吸着器20を接続する3方蒸気バルブSV1、SV2のバルブ位置制御を行うことにより、蓄熱反応器30と吸着器20の両方に蒸気が供給可能となるよう制御し、蒸発器顕熱量のアシストを行う。これにより、蒸発器温度が常温スタートであっても冷熱出力を一時的に(常温から作動温度に到達するまでの期間)高めることで、始動応答時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0232】
システム始動、停止後再開モードで吸着器20を作動させるためには、システム停止後に吸着器20を脱離させておく必要がある。そこで、本実施の形態では、蓄熱反応器30の顕熱を利用し停止直後で温熱を生成し、蒸気熱輸送により吸着器20を脱離させる。
【0233】
また、低下した反応器温度は、始動、再開モードにおける蓄熱反応器30の水和反応熱により自己回復すると同時に、始動、再開モード直後の蓄熱反応器30を作動温度とすることで吸着器20の脱離反応に必要な蒸気熱輸送の再開が可能となる。
【0234】
また、本実施の形態では、上記の第6の実施の形態と同様に、2つの3方蒸気バルブSV1、SV2の駆動部を共有化する。このとき、蒸発器10から蓄熱反応器30/吸着器20の両方に蒸気供給が可能となるように制御すると、吸着器の流体保持室24や凝縮器40から、3方蒸気バルブSV2を介して流体保持室22に蒸気が流入し、吸着器20の吸着反応による冷熱出力が低下してしまう。
【0235】
そこで、本実施の形態では、
図28(A)〜(C)に示すように、3方蒸気バルブSV1、SV2の位置を制御することにより、蓄熱反応器30/吸着器20への蒸気供給割合を制御すると同時に、流体保持室22から凝縮器40への蒸気流入を遮断し、吸着器20の流体保持室24から凝縮器40へ蒸気を流入させることで(
図28(B)の位置C参照)、吸着器20の流体保持室24で発生する蒸気を流体保持室22へ流入させることなく、蓄熱反応器30と吸着器20の両方に蒸気が供給可能となるように制御し、システム始動、再開モードにおける蒸発器顕熱量のアシストを行う。
【0236】
これにより、1つの駆動部で2つの3方蒸気バルブSV1、SV2の切換制御が可能となると同時に、蒸発器温度が常温スタートであっても冷熱出力を一時的に(常温から作動温度に到達するまでの期間)高めるごとで、始動応答時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0237】
制御装置90は、3方蒸気バルブSV1、SV2の共有化した駆動部660、バルブV1〜V3、ポンプP1〜P2、及び外部熱源などと電気的に接続されており、バルブやポンプ、熱源、熱交換を制御して熱利用をコントロールできるように構成されている。
【0238】
次に、本実施形態の吸着式ヒートポンプを制御する制御装置90による制御ルーチンのうち、増熱サイクル制御ルーチンを中心に
図29を参照して説明する。なお、第6の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0239】
システム始動時及び停止後再開時に、本ルーチンが実行開始されると、まず、ステップ600において、流通配管43、44に取り付けられたバルブV2、V3を開く。このとき、流通配管42に取り付けられたバルブV1は、閉塞されている。次のステップ610において、ポンプP2の稼動を開始させる。
【0240】
そして、ステップ800において、蒸発器10に接続されている流通配管11を、吸着器20に接続されている流通配管12及び蓄熱反応器30に接続されている流通配管14と連通させ、かつ、凝縮器40に接続されている流通配管31を、流体保持室24に接続されている流通配管29と連通させるように、3方蒸気バルブSV1、SV2を位置Cに切り換えて、吸着材26による水蒸気の吸着を開始すると共に、外部熱源により蓄熱反応器30に熱を付与する。
【0241】
次のステップ810において、ステップ800へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q
3に満たない状況にあるか否かが判定され、未だ時間Q
3が経過していないと判定されたときは、ステップ800を継続する。一方、時間Q
3が経過したと判定されたときには、吸着器吸着モード又は吸着器再生モードに切り換えるため、ステップ120に移行する。
【0242】
そして、ステップ120において、吸着量を計測する。そして、次のステップ130において、吸着量が所定の閾値P未満であるか否かが判定される。
【0243】
ステップ130において、水蒸気の吸着量が閾値P未満であると判定されたときには、ステップ500に移行する(吸着器吸着モード)。ステップ700において、蒸発器10に接続されている流通配管11を、吸着器20に接続されている流通配管12と連通させ、かつ、凝縮器40に接続されている流通配管31を、流体保持室24に接続されている流通配管29と連通させるように、3方蒸気バルブSV1、SV2を位置Bに切り換えて、吸着材26による水蒸気の吸着を開始する。そして、ステップ630において、流通配管42に取り付けられたバルブV1を閉塞し、ポンプP1の稼動を停止する。
【0244】
次のステップ180において、ステップ700へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q
1に満たない状況にあるか否かが判定され、未だ時間Q
1が経過していないと判定されたときは、ステップ700、630を継続する。一方、時間Q
1が経過したと判定されたときには、吸着器再生モードに切り換えるため、ステップ640に移行する。
【0245】
ステップ640において、吸着材26の水蒸気を脱離させるため、流通配管42に取り付けられたバルブV1を開き、ポンプP1の稼動を開始させて、蓄熱反応器30から加熱された水蒸気を供給する。次のステップ720において、凝縮器40に接続されている流通配管31を、流体保持室22に接続されている流通配管28と連通させ、かつ、蒸発器10に接続されている流通配管11を、蓄熱反応器30に接続されている流通配管14と連通させるように、3方蒸気バルブSV1、SV2を位置Aに切り換え、流通配管28、31を通じて凝縮器40に水蒸気が送られる。
【0246】
次のステップ240において、ステップ540へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q
2に満たない状況であるか否かが判定され、未だ時間Q
2が経過していないと判定されたときは、ステップ640、720を継続する。一方、時間Q
2が経過したと判定されたときには、次のステップ300に移行して、まずシステムの停止要求の有無を判定する。
【0247】
また、ステップ130において、水蒸気の吸着量が閾値P以上に達していると判定されたときには、はじめにステップ640に移行する(吸着器再生モード)。その後、上記同様にステップ720を経た後、上記したようにステップ500に移行し、吸着器吸着モードに切り換えられる。
【0248】
ステップ300において、システム停止の要求がされていないと判定されたときには、ステップ320で「吸着器吸着モード+吸着器再生モード」を1サイクルとしてカウントされたサイクル数が、所定数Nに達しているか否かが判定される。一方、ステップ300において、システム停止の要求がされていると判定されたときには、システムを停止するため、ステップ360において、バルブV1、V2、V3を閉塞すると共に、ポンプP1、P2の稼動を停止し、本ルーチンを終了する。
【0249】
次のステップ320において、サイクル数が所定数Nに達していないと判定されたときは、そのままステップ500に戻って、上記と同様のステップを繰り返す。一方、ステップ320でサイクル数が所定数Nに達したと判定されたときは、化学蓄熱材の水和反応が進行せず反応熱が得られない状態にあるため、ステップ740で、蒸発器10に接続されている流通配管11を、蓄熱反応器30に接続されている流通配管14と連通させるように、3方蒸気バルブSV1、SV2を位置Aに切り換え、外部熱源により蓄熱反応器に熱を付与し、化学蓄熱材を再生する。また、サイクル数はリセットされる。
【0250】
次のステップ680では、流通配管42に取り付けられたバルブV1を閉塞し、ポンプP1の稼動を停止させる。
【0251】
その後、再びステップ300において、システムの停止要求の有無が判定される。ステップ300でシステム停止の要求がされていないと判定されたときは、再びステップ320でサイクル数が判定され、上記と同様のステップが繰り返される。なお、ステップ300において、システム停止の要求がされていると判定されたときは、上記のように、ステップ360を経て、本ルーチンを終了する。
【0252】
以上説明したように、第8実施形態に係る吸着式ヒートポンプによれば、3方蒸気バルブSV1、SV2の位置を制御し、蓄熱反応器/吸着器への蒸気供給割合を制御し、3方蒸気バルブSV1により、蒸発器10から吸着器20の流体保持室22及び蓄熱反応器30の反応室32の両方に蒸気を供給し、3方蒸気バルブSV2により、吸着器20の流体保持室24のみから凝縮器40へ蒸気が流入するように制御することにより、吸着器20の流体保持室22、24間の短絡を防ぎ、冷熱出力を一時的に増大することができる。
【0253】
なお、上記第8実施形態では、3方蒸気バルブSV1、SV2の駆動部を共有化した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、3方蒸気バルブSV1、SV2の各々が駆動部を備えている構成において、上記第8実施形態で説明した、3方蒸気バルブSV1、SV2の位置制御により、冷熱出力を一時的に増大する技術を適用してもよい。
【0254】
上記した実施形態では、流体として水を用いた例を説明したが、水に限らず、水以外のアンモニア等の蒸発潜熱の比較的大きい流体を用いた場合にも同様の効果が奏される。
【0255】
また、上記した実施形態では、吸着材としてシリカゲルを用いた場合を示して説明したが、シリカゲルに限らず、既述のシリカゲル以外の吸着材を用いることで同様の効果を奏することができる。