(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のカプラに流通管部を接続する場合、まず先端側に付勢されているスリーブをコイルスプリングの付勢力に抗して基端側(ロック解除位置側)に後退させ、ロック用ボールのロックを解除した状態で、カプラに接続する流通管部をカプラの先端側から挿入した後、スリーブを後退させていた手を放して、コイルスプリングの付勢力によりスリーブを前進させ、ロック用ボールをロックするという一連の作業が必要となる。したがって、流通管部の接続作業が煩雑で手間がかかるという問題がある。また、スリーブを前進させる力はコイルスプリングの付勢力だけなので、ロックが確実になされるかどうかは不明であり、仮に流通管部がカプラの途中までしか挿入されていない場合には、流通管部を確実にロックすることができない。この状態で、作業者がロックできていないことに気付かずに濾過フィルタを使用すると、漏水が起こる虞れがある。
【0009】
また、特許文献2、3のホルダはいずれも、濾過フィルタをホルダに保持する場合、まず濾過フィルタをホルダの取付位置に取り付けた後、上側及び下側ロックレバーを操作してロックしなければならない。したがって、濾過フィルタをホルダに保持するために、濾過フィルタの操作とレバーの操作の両方を行わなければならないため、作業が煩雑で手間がかかるという問題がある。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、濾過フィルタをホルダに確実かつ簡便に保持できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、この発明では、濾過フィルタの流通管部に形成されたロック用凹部に係合する係合部材と、係合部材を係合位置に固定するためのロック部材とを備え、流通管部の接続作業時に接続部に作用する力によって、ロック部材をロック解除位置からロック位置に移動させるようにした。
【0012】
第1の発明は、
濾過材を収容する筒状のハウジングを備える濾過フィルタを保持するための濾過フィルタ用ホルダであって、
ホルダ本体と、
上記ハウジングの内部と外部との間で液体が流通する複数の流通管部がそれぞれ接続される複数の接続部と、を備え、
上記複数の接続部は、
上記流通管部が挿入される挿入筒と、
上記挿入筒の壁を貫通する係合部材収容孔に収容されるとともに、上記挿入筒の内周面から該挿入筒の径方向内側に突出して上記流通管部の外周面に形成されたロック用凹部に係合する係合位置と、該係合位置よりも上記挿入筒の径方向外側に配置され、上記ロック用凹部に係合しない非係合位置との間で、上記挿入筒の径方向に移動する係合部材と、
上記係合部材を上記係合位置に固定するロック位置と、上記係合部材の上記係合位置から上記非係合位置への移動を許容するロック解除位置との間で、上記挿入筒の軸方向に移動するロック部材と、
上記流通管部の上記挿入筒への挿入時に、上記濾過フィルタに当接されて上記ロック部材を上記ロック解除位置から上記ロック位置へと切り替える切替部材と、
をそれぞれ備え、
上記複数の切替部材は、
上記ホルダ本体側から上記濾過フィルタ側に延びる切替筒であり、上記複数の流通管部がそれぞれ上記複数の挿入筒に挿入される時に、上記濾過フィルタが上記複数の切替部材に作用する力によって、上記複数のロック部材をそれぞれ上記ロック解除位置から上記ロック位置へと切り替え、上記複数の流通管部をそれぞれ上記複数の接続部に同時接続させ
、
上記切替筒には、上記濾過フィルタに当接するヘッド部が上記濾過フィルタ側に突出するように設けられ、
上記切替筒は、該切替筒の上記濾過フィルタ側の端面のうち、上記ヘッド部から上記切替筒の周方向に離れた部分に、上記ヘッド部が上記濾過フィルタ当接したときに、上記濾過フィルタに当接する当接部を有していることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、流通管部を挿入筒に挿入すると、濾過フィルタが切替部材に当接して切替部材が挿入筒の軸方向へ移動する。このとき、濾過フィルタが切替部材に作用する力によって、ロック部材はロック位置へ移動する。同時に、係合部材が挿入筒の内周面から挿入筒の径方向内側に突出し、流通管部の外周面に形成されたロック用凹部に係合する係合位置に固定されて、係合部材がロック用凹部に係合する。これらの作用は、複数の接続部で同時に起こっているため、複数の流通管部がそれぞれ複数の接続部に同時に接続され、濾過フィルタがホルダに確実かつ簡便に保持される。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、
上記接続部は、弾性変形することによって、上記ロック部材に対する上記切替部材の、上記挿入筒の軸方向における相対的な移動を許容する弾性部材を備え、
上記弾性部材は、上記流通管部の上記挿入筒への挿入時に、上記ロック用凹部が上記係合部材に対応する挿入位置となるまで、上記ロック部材を上記ロック解除位置に留めた状態で、上記ロック部材に対する上記切替部材の相対的な移動を許容することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、弾性部材により、切替部材がロック部材に対して相対的に移動することが許容されているため、流通管部の挿入筒への挿入時に、ロック部材がロック解除位置に留められた状態で、濾過フィルタが切替部材に作用する力によって、切替部材が挿入筒の軸方向に移動して、弾性部材に弾性力が蓄えられる。さらに流通管部を挿入筒の奥側に挿入し、ロック用凹部が係合部材に対応する挿入位置になると、係合部材がロック用凹部に係合することが可能となり、係合部材がロック用凹部に係合すれば、ロック解除位置に留められていたロック部材がロック位置に移動することが可能となる。したがって、弾性部材に蓄えられた弾性力が解放されることにより、ロック部材がロック解除位置からロック位置に移動するとともに、係合部材がロック用凹部に係合して係合位置に固定される。この結果、流通管部が接続部に接続され、濾過フィルタがホルダに保持される。
【0016】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
上記ロック位置にある上記ロック部材を上記ロック解除位置に向けて押圧するロック解除部材を備えることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、流通管部と接続部との接続を解除する場合、まずロック解除部材がロック位置にあるロック部材を押圧してロック解除位置に移動させる。この状態では、係合部材が係合位置から非係合位置に移動することが許容されているため、流通管部を挿入筒から抜ける方向に移動させることで、係合部材が非係合位置に移動して、係合部材とロック用凹部との係合が解除される。したがって、流通管部と接続部との接続が解除されて、濾過フィルタがホルダから分離される。
【0018】
第4の発明は、第3の発明において、
上記複数の接続部にそれぞれ備えられた上記複数のロック部材を押圧する複数の上記ロック解除部材を互いに連結する連結部材と、
上記連結部材を作業者が操作する操作部と、
を備えることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、作業者が操作部によって連結部材を操作することにより、連結部材によって連結された複数のロック解除部材がロック位置にある複数のロック部材をそれぞれロック解除位置に向けて押圧し、ロック位置からロック解除位置に移動させることが可能である
。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、複数の流通管部がそれぞれ複数の挿入筒に挿入される時に濾過フィルタが複数の切替部材に作用する力によって、複数のロック部材がそれぞれ、ロック解除位置からロック位置に移動するので、カプラを両手で操作することやロックレバーの操作等の煩雑な作業をすることなく、濾過フィルタをホルダに確実かつ簡便に保持することができる。
また、切替筒の周方向に離れたヘッド部及び当接部が濾過フィルタの外周面に当接するので、切替筒が安定して流通管部の挿入方向へ移動して、ロック部材にロック解除位置からロック位置へ移動するための力を伝えることができる。
【0021】
第2の発明によれば、切替部材に対するロック部材の相対的な移動を許容する弾性部材を接続部に設けたので、流通管部及び接続部の寸法に誤差があっても、流通管部を接続部にスムーズに接続できる。
【0022】
第3の発明によれば、ロック位置にあるロック部材をロック解除位置に向けて押圧するロック解除部材を設けたので、濾過フィルタをホルダから簡便に分離することができる。
【0023】
第4の発明によれば、複数のロック解除部材を互いに連結する連結部材を設け、作業者が連結部材を操作部で操作できるようにしたので、操作部を操作するだけで、複数の接続部と流通管部との接続を解除し、濾過フィルタをホルダから分離することができる
。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0026】
本発明の実施形態に係るホルダ1は、例えば
図1及び
図2に示すような濾過フィルタFを保持するためのものである。この濾過フィルタFは透析治療時において、外部から供給される水道水等の原水(液体)を精密濾過できるように構成された周知のものであり、濾過後の純水に電解質等が添加されて、透析液としてダイアライザ(図示せず)に供給される。濾過フィルタFは中心線方向に延びる筒状のハウジングF1を備え、ハウジングF1の長手方向が上下方向となる姿勢で使用される。
【0027】
以下の説明では、ハウジングF1の長手方向が上下方向となった状態を基準として、「上側」とは
図1における上側を示し、「下側」とは
図1における下側を示し、「前側」とは
図1における左側を示し、「後側」とは
図1における右側を示している。
【0028】
ハウジングF1の上端面及び下端面は上側蓋部材F2及び下側蓋部材F3でそれぞれ覆われている。
図2に示すように、上側蓋部材F2には、濾過後の純水を流出させることのできる上管部F21が、上側に突出するように一体に設けられている。また、下側蓋部材F3には、濾過後の純水を流出させることのできる下管部F31が、下側に突出するように一体に設けられている。上管部F21及び下管部F31には、濾過フィルタF内部の汚染を防ぐためのキャップFcが液密に取り付けられている。濾過フィルタFの上側蓋部材F2及び下側蓋部材F3の外径は、ハウジングF1の上下方向中央部の外径よりも大きくなっている。
【0029】
ハウジングF1内には複数の中空糸膜F4(濾過材)が収容されている。中空糸膜F4は、膜の厚み方向に極微小な孔が形成された半透膜である。中空糸膜F4の両端部は封止剤により固着されて各端部が揃うように束ねられており、中空糸膜F4内部の空間と上管部F21及び下管部F31の内部の空間が連通している。
【0030】
ハウジングF1は、ハウジングF1内に原水を流入させる流入管部F11(流通管部)と、ハウジングF1外に原水を流出させる流出管部F12(流通管部)とを備え、流入管部F11はハウジングF1の外周面の下部から後方に向かって突出し、流出管部F12はハウジングF1の外周面の上部から後方に向かって突出している。
【0031】
以下の説明では、流入管部F11及び流出管部F12について、「先端側」とは流入管部F11及び流出管部F12の先端側(
図1及び
図2における右側)を示し、「基端側」とは流入管部F11及び流出管部F12の基端側(
図1及び
図2における左側)を示している。
【0032】
流入管部F11の外周面には、後述するホルダ1の流入側接続部40のロック用ボール434(係合部材)が係合するための流入側環状溝F11a(ロック用凹部)が、流入管部F11の軸方向における中央近傍に形成されており、流入側環状溝F11aよりも先端側の外周面には、軸方向に沿って平坦な流入側環状平坦部F11bが設けられている。流入側環状平坦部F11bよりも先端側では、流入管部F11の外径は小径であって、この小径部の形成に対応して、流入側段部F11cが形成されている。
【0033】
流出管部F12の外周面にも同様に、流出側接続部50のロック用ボール534(係合部材)が係合するための流出側環状溝F12a(ロック用凹部)が、流出管部F12の軸方向における中央近傍に形成されており、流出側環状溝F12aよりも先端側の外周面には、軸方向に沿って平坦な流出側環状平坦部F12bが設けられている。流出側環状平坦部F12bよりも先端側では、流出管部F12の外径は小径であって、この小径部の形成に対応して、流出側段部F12cが形成されている。
【0034】
流入管部F11からハウジングF1内に流入した原水のうち、中空糸膜F4を通過した濾過後の純水は、中空糸膜F4内部を通って上管部F21から流出し、中空糸膜F4を通過しない原水は流出管部F12からハウジングF1外に流出するように構成されている。
【0035】
図3〜
図5は、上記濾過フィルタFを保持するためのホルダ1を示す。ホルダ1は、例えば透析装置の側面等(図示せず)に取り付けられて使用される。このホルダ1は、屈曲した板状のホルダ本体10と、ホルダ本体10の一部を覆うカバー部20と、作業者が操作するノブ31(操作部)と、濾過フィルタFの流入管部F11が接続される流入側接続部40と、流出管部F12が接続される流出側接続部50と、を備える。
【0036】
ホルダ1には、例えば透析装置(図示せず)の側面等に取り付けるための掛止部(図示せず)が設けられ、ホルダ本体10の長手方向が上下方向になるように、透析装置の側面等に取り付けられて使用される。以下の説明では、ホルダ本体10の長手方向が上下方向となった状態を基準として、「上側」とは
図3における上側を示し、「下側」とは
図3における下側を示し、「右側」とは
図3における右側を示し、「左側」とは
図3における左側を示し、「前側」とは
図4における左側を示し、「後側」とは
図4における右側を示している。
【0037】
ホルダ本体10は、前側に位置する前板部11と、前板部11の右縁部から後方に延びる右板部12と、前板部11の左縁部から後方に延びる左板部13とを備え、
図4に示すように、右板部12及び左板部13の上部と下部は切り欠かれている。
図5に示すように、ホルダ本体10の上部及び下部にはそれぞれ、上板部14及び下板部15が、前板部11、右板部12及び左板部13に垂直になるように取り付けられている。
【0038】
カバー部20は、ホルダ本体10の上下方向中央部を後側から覆うように取り付けられている。カバー部20は、左右方向両端部が前方に屈曲した板状の部材であり、カバー部20の左右の板が、ホルダ本体10の右板部12及び左板部13に、ねじ等の締結部材21によって取り付けられている。
【0039】
図3及び
図4に示すように、ホルダ本体10の右板部12の右側には、上下方向中央部に、作業者が回動操作可能な円板状のノブ31が取り付けられている。
図4に示すように、ノブ31の直径は、ホルダ本体10の右板部12の上下方向中央部における前後方向の幅よりも若干大きく設定されている。また、
図3に示すように、ノブ31の外周面には滑り止めとして、厚み方向に延びる複数の溝が形成されている。このノブ31には、ホルダ本体10の右板部12を貫通する四角柱状の回動軸32(
図5に示す)が回動一体に連結されている。回動軸32は、右板部12を垂直に貫通して、ホルダ本体10の右板部12と左板部13との間の中央近傍まで、左右方向に延びている。回動軸32におけるノブ31と逆側の端部(左端部)には、
図5に示すように、円板状の偏心カム33が連結されている。偏心カム33は、ホルダ本体10の右板部12と平行になるように、回動軸32に回動一体に連結されており、偏心カム33の中心からずれた位置に、回動軸32が固定されている。偏心カム33の外周面は、後述する連結棒61(連結部材)に後方から当接し、連結棒61を前方に押圧して移動させることができるようになっている。
【0040】
前板部11の上下方向中央部の後面には、連結棒61を後方に押圧する圧縮ばね34が、後方に突出するように取り付けられている。この圧縮ばね34が連結棒61を後方に押圧して移動させることで、連結棒61に当接している偏心カム33の外周面も後方に押圧されるため、作業者がノブ31を回動操作していない通常の状態(
図5に示す)では、回動軸32が偏心カム33の中心よりも前側に位置するように、偏心カム33が回動して停止している。
【0041】
図3〜
図5に示すように、流入側接続部40は、ホルダ本体10の下部を前後方向に貫通して設けられている。また、流出側接続部50は、ホルダ本体10の上部を前後方向に貫通して設けられている。
【0042】
図6に、流入側接続部40の拡大図を示す。尚、以下の説明では、流入側接続部40について説明するが、流出側接続部50については、流入側接続部40と上下対称であることを除けば同様の構成であることから、その詳細な説明は省略する。
【0043】
流入側接続部40は、ホルダ本体10の前板部11から前方に突出した円筒状のケーシング41と、ケーシング41内に大部分が収容されるワンタッチロック機構42とを備える。
【0044】
以下のホルダ1に関する説明では、特に断らない限り、「軸方向」、「径方向」及び「周方向」の各方向は、ケーシング41を基準として定めている。すなわち、「軸方向」とはケーシング41の中心軸線に沿った方向を示し、「径方向」とはケーシング41の中心軸線に対して直交する方向を示し、「周方向」とはケーシング41の中心軸線周りの周回方向を示している。また、「先端側」とはケーシング41の前側(
図6における左側)を示し、「基端側」とはケーシング41の後側(
図6における右側)を示している。
【0045】
ケーシング41の基端部は、ホルダ本体10の前板部11に対して、ワンタッチロック機構42を構成する挿入筒43の一部を介して固定されている。ケーシング41の先端側の内径は基端側の内径よりも小径であって、この小径部の形成に対応して、ケーシング41の内周面には軸方向中央近傍にケーシング内段部411が形成されている。ケーシング41の先端部における上側部分には、軸方向に延びる切欠部412が形成されている。ケーシング41の外周面には、
図3にも示すように、複数の面取り部413が形成されている。
【0046】
図6に示すように、ワンタッチロック機構42は、濾過フィルタFの流入管部F11が挿入される挿入筒43の他、流入管部F11の流入側環状溝F11aに係合可能な複数のロック用ボール434と、ロック用ボール434の位置を規制するロック筒44(ロック部材)と、ロック筒44をロック解除位置からロック位置へと切り替える切替筒45(切替部材)と、を備える。
【0047】
挿入筒43は、径方向外側に突出して環状に延びるフランジ部431を、軸方向における中央近傍に備える。このフランジ部431は、ホルダ本体10の前板部11の前面に固定されており、フランジ部431の前面には、ケーシング41の基端部が固定されている。フランジ部431を軸方向に貫通するように、後述する流入側ロック解除ピン64が挿通されるピン挿通孔431aが形成されている。このピン挿通孔431aは、周方向に間隔を空けて、複数形成されている。
【0048】
挿入筒43は、フランジ部431よりも後側に、原水供給用チューブ(図示せず)を接続するためのチューブ接続管部432を備える。チューブ接続管部432は、ホルダ本体10の前板部11を貫通して後側へ延びている。チューブ接続管部432には、原水供給用チューブが接続された際に原水供給用チューブを外れにくくするための係止部432aが、径方向外側に突出するように設けられている。
【0049】
挿入筒43の先端側(前側)の所定領域は薄肉部433であり、この薄肉部433の形成によって、挿入筒43の外周面に薄肉側段部433aが形成されている。薄肉部433の軸方向における中央近傍には、ロック用ボール434を収容するボール収容孔433b(係合部材収容孔)が、薄肉部433の壁を貫通するように、周方向に間隔を空けて複数形成されている。
【0050】
ロック用ボール434は、挿入筒43の内周面から径方向内側に突出して、流入管部F11の流入側環状溝F11aに係合する係合位置と、流入側環状溝F11aに係合しない非係合位置との間で、往復動可能に収容されている。後述するように、ロック用ボール434の位置は、ロック筒44によって、非係合位置から係合位置へと切り替えられる。ロック用ボール434の直径は、薄肉部433の厚みと流入管部F11の流入側環状溝F11aの深さとの和と同程度に設定されている。したがって、後述するように、ロック用ボール434が流入側環状溝F11aに係合した際に、ロック用ボール434は挿入筒43の外周面から突出しないようになっている。
【0051】
挿入筒43の内周面におけるボール収容孔433bよりも基端側には、流入管部F11が接続された際に漏水を抑制するためのシール材として、Oリング435が収容されている。挿入筒43の軸方向におけるボール収容孔433bからOリング435までの長さは、流入管部F11の軸方向における流入側環状溝F11aから流入側段部F11cまでの長さと同程度に設定されている。したがって、後述するように、流入管部F11が挿入筒43に挿入され、ロック用ボール434が流入側環状溝F11aに係合した際に、流入側段部F11cがOリング435に当接するようになっている。
【0052】
ロック筒44は、挿入筒43におけるフランジ部431よりも先端側の外周面を囲むように、軸方向に往復動可能に配設されている。軸方向におけるロック筒44の長さは、挿入筒43の先端面とフランジ部431の前面との間の距離よりも短く設定されている。したがって、ロック筒44の先端面と挿入筒43の先端面とが同一面上に配置された
図6の状態では、ロック筒44の基端面とフランジ部431の前面との間に隙間が形成されている。
【0053】
ロック筒44の先端側の内周面には、ロック用突条部441が周方向全周に亘って設けられている。このロック用突条部441の突出方向先端には、ロック用ボール434を係合位置に固定するためのロック面441aが軸方向に延びており、このロック面441aは、挿入筒43の薄肉部433の外周面に摺接している。ロック用突条部441の側面のうち軸方向基端側に面した側面は、軸方向基端側に行くほど径方向外側に位置するように傾斜する傾斜面441bである。
図6の状態では、傾斜面441bは、挿入筒43の薄肉側段部433aから先端側に離れている。
【0054】
ロック筒44は、ロック面441aがロック用ボール434よりも先端側に位置するロック解除位置と、ロック解除位置よりも基端側に配置され、ロック面441aがロック用ボール434に径方向外側から当接するロック位置との間で、往復動可能である。ロック筒44がロック解除位置にあるときには、ロック用ボール434が挿入筒43の外周面から径方向外側に突出し、非係合位置に位置することが可能である。一方、ロック筒44がロック位置にあるときには、ロック面441aがロック用ボール434を径方向内側に押圧して、ロック用ボール434を係合位置から径方向外側に移動させないように固定する。そして、ロック筒44がロック解除位置からロック位置に移動するときには、傾斜面441bが基端側に移動することで、径方向外側の非係合位置にあるロック用ボール434を径方向内側に押圧し、係合位置に移動させる。
【0055】
ロック筒44の外周面には、後述する移動コイルばね48(弾性部材)の基端部を支持する環状支持突条部442が、ロック用突条部441よりも基端側に設けられている。
【0056】
切替筒45は、ロック筒44の外周面を囲むように、軸方向に往復動可能に配設されている。切替筒45の外周面は、ケーシング41のケーシング内段部411よりも先端側の内周面に摺接して、軸方向に案内される。
【0057】
切替筒45の基端部には、ケーシング内段部411に基端側から当接して係合する環状係合突条部451が、径方向外側に突出するように設けられている。この環状係合突条部451がケーシング内段部411に係合することにより、切替筒45がケーシング41よりも先端側に外れないようになっている。切替筒45の基端面とフランジ部431の前面との間は軸方向に離れており、両者の間に後述する固定コイルばね47が配設される。
【0058】
切替筒45の先端部には、径方向内側へ延びる延出円板部452が設けられ、この延出円板部452の中央を貫通するように、流入管部F11が挿通される開口部が形成されている。延出円板部452の先端面(濾過フィルタF側の端面)の下側部分は、後述するヘッド部46が濾過フィルタFの外周面に当接したときに、濾過フィルタFの外周面に当接する当接面452a(当接部)である。当接面452aは、ヘッド部46から切替筒45の周方向に離れた部分に位置している。
【0059】
切替筒45の延出円板部452の上側部分には、濾過フィルタFの外周面に当接するヘッド部46が、延出円板部452の先端面から、先端側に突出するように設けられている。ヘッド部46の延出円板部452からの突出長さ(ヘッド部46の先端面から先端側に突出した部分の軸方向の長さ)は、濾過フィルタFの上側蓋部材F2及び下側蓋部材F3の外径と、ハウジングF1の上下方向中央部の外径との差の2分の1程度に設定されている。したがって、後述するように、流入管部F11を挿入筒43に挿入し、ヘッド部46が濾過フィルタFの外周面に当接したときに、当接面452aも、濾過フィルタFの外周面に当接するようになっている。
【0060】
図3及び
図6に示すように、ヘッド部46の上部には、ヘッド部46の先端から切替筒45の軸方向における中央近傍まで、軸方向に延びるガイド用突条部461が設けられており、このガイド用突条部461がケーシング41上部の切欠部412に挿入されている。外力が作用しない
図6の状態では、ガイド用突条部461の軸方向基端側の部分は、切欠部412の基端側の部分よりも先端側に離れている。
【0061】
切替筒45の基端側の内周面には、ロック筒44が切替筒45よりも基端側へ外れることを防止するリングスプリング453が固定されている。リングスプリング453は、ロック筒44の環状支持突条部442よりも軸方向基端側に位置しており、このリングスプリング453がロック筒44の環状支持突条部442の軸方向基端側の側面に当接することで、ロック筒44が切替筒45よりも基端側へ外れないようになっている。切替筒45におけるリングスプリング453よりも先端側の内周面には、後述する移動コイルばね48を収容するためのばね収容凹部454が形成されている。
【0062】
ワンタッチロック機構42は、固定コイルばね47と移動コイルばね48とをさらに備える。
【0063】
固定コイルばね47は、挿入筒43のフランジ部431と切替筒45の基端部との間に配設され、伸縮方向一端部(
図6における右端部)は挿入筒43のフランジ部431の前面に当接し、他端部(
図6における左端部)は切替筒45の基端面に当接して、切替筒45を先端側に押圧している。
【0064】
移動コイルばね48は、切替筒45のばね収容凹部454に収容され、伸縮方向一端部(
図6における左端部)がばね収容凹部454の先端側の面に当接し、他端部(
図6における右端部)がロック筒44の環状支持突条部442の軸方向先端側の面に当接して、ロック筒44を基端側に押圧している。移動コイルばね48のばね定数は、固定コイルばね47のばね定数よりも、若干大きく設定されている。この移動コイルばね48が弾性変形することにより、切替筒45がロック筒44に対して軸方向に相対的に移動することが可能である。
【0065】
図6の状態では、固定コイルばね47及び移動コイルばね48の弾性力により、切替筒45の延出円板部452の基端面は、挿入筒43の先端面よりも先端側に離れた位置にある。また、ロック筒44のロック面441aはロック用ボール434よりも先端側に位置し、傾斜面441bはロック用ボール434に当接する位置にある。
【0066】
図5に示すように、流出側接続部50も、流入側接続部40と同様に、ケーシング51とワンタッチロック機構52とを備え、ワンタッチロック機構52は、挿入筒53と、複数のロック用ボール534(係合部材)と、ロック筒54(ロック部材)と、切替筒55(切替部材)と、ヘッド部56と、固定コイルばね57と、移動コイルばね58(弾性部材)と、を備えている。また、挿入筒53は、ハウジングF1外に原水を排出するための排水用チューブ(図示せず)が接続されるチューブ接続管部532を備える。
【0067】
連結棒61は、前述した圧縮ばね34と偏心カム33との間で、上下方向に延びている。連結棒61の上下方向中央部の前面には、圧縮ばね34の後部が収容される円形凹部が形成されている。この円形凹部に収容された圧縮ばね34が、連結棒61を後方に押圧しているため、連結棒61は、偏心カム33の外周面に当接して偏心カム33を後方に押圧している。
【0068】
連結棒61の上端部及び下端部にはそれぞれ、円板状の流入側連結板62(連結部材)及び流出側連結板63(連結部材)が上下に延びる姿勢で固定されている。
図6に拡大して示すように、流入側連結板62の中央には、チューブ接続管部432が挿通される流入側管部挿通孔62aが形成されている。流入側管部挿通孔62aの周囲には、ロック筒44をロック位置からロック解除位置に向けて押圧する流入側ロック解除ピン64(ロック解除部材)の基端部が固定されている。流入側ロック解除ピン64は、前後方向に延びるように複数設けられ、ホルダ本体10の前板部11を貫通して、挿入筒43のフランジ部431に形成されたピン挿通孔431aに、軸方向に往復動可能に挿通されている。流入側ロック解除ピン64の先端とロック筒44の基端面とは対向しており、外力が作用しない
図6の状態では、流入側ロック解除ピン64の先端がロック筒44の基端面よりも基端側に離れている。後述するように、作業者がノブ31を回動させると、流入側ロック解除ピン64がロック筒44を前方に押圧し、ロック筒44をロック解除位置に移動させるようになっている。
【0069】
図5に示すように、流出側連結板63は流入側連結板62と上下対称の構造となっており、この流出側連結板63には、ロック筒54をロック位置からロック解除位置に向けて押圧する流出側ロック解除ピン65が固定されている。
【0070】
次に、上記のように構成されたホルダ1に濾過フィルタFを保持する場合について説明する。まず、
図7に示すように、ホルダ本体10の長手方向と濾過フィルタFのハウジングF1の長手方向とが一致するように、ホルダ1の前方に濾過フィルタFを配置する。ここで、濾過フィルタFの流入管部F11及び流出管部F12がホルダ本体10に向かって突出し、流入側接続部40及び流出側接続部50がそれぞれ流入管部F11及び流出管部F12に対向するように、濾過フィルタFを配置しておく。
【0071】
この状態での流入側接続部40の拡大断面図を
図8に示す。この状態では、ロック筒44は、固定コイルばね47及びリングスプリング453によって、ロック面441aがロック用ボール434よりも先端側に位置するロック解除位置に位置しているため、ロック用ボール434は、挿入筒43の内周面から径方向内側に突出する係合位置と、係合位置よりも径方向外側にある非係合位置との間で、挿入筒43の径方向に往復動可能である。
【0072】
次に、
図9に示すように、濾過フィルタFをホルダ本体10側に近付け、流入管部F11の先端部分(後側部分)を流入側接続部40の挿入筒43に挿入する。このとき、流入側環状平坦部F11bがロック用ボール434に挿入筒43の径方向内側から当接して、ロック用ボール434を径方向外側に向けて押し出す。これにより、ロック用ボール434が挿入筒43の内周面から径方向内側に突出せず、挿入筒43の外周面から径方向外側に突出するように押し出される。すると、ロック用ボール434がロック筒44の傾斜面441bを径方向外側かつ先端側に押圧し、ロック筒44が先端側に移動する。ロック筒44が先端側に移動すると、ロック筒44の環状支持突条部442と切替筒45のばね収容凹部454の先端側の面との間に配設された移動コイルばね48が圧縮されるため、この移動コイルばね48によって、切替筒45が先端側に押圧されることになるが、切替筒45の環状係合突条部451がケーシング41のケーシング内段部411に基端側から当接しているため、切替筒45が先端側に移動してケーシング41よりも先端側に外れてしまうことはない。
【0073】
さらに濾過フィルタFをホルダ本体10側に近付けると、
図10に示すように、ヘッド部46の先端面がハウジングF1の外周面に当接して基端側に押圧されるとともに、切替筒45の当接面452aが下側蓋部材F3の外周面に当接して基端側に押圧され、安定して切替筒45が基端側に押圧される。このとき、濾過フィルタFが切替筒45に作用する力によって、切替筒45は、挿入筒43の基端側(軸方向)に移動して、固定コイルばね47及び移動コイルばね48の先端側部分を基端側に押圧する。しかし、このときもロック用ボール434は、流入管部F11の流入側環状平坦部F11bに径方向内側から当接されて、径方向外側に向かって押し出されているため、ロック用ボール434は挿入筒43の外周面から径方向外側に突出する非係合位置に位置したままである。よって、ロック用ボール434がロック筒44の傾斜面441bに基端側かつ径方向内側から当接するため、ロック筒44は基端側に移動することはできず、ロック解除位置に留められる。このとき、切替筒45のばね収容凹部454の軸方向先端側の面とロック筒44の環状支持突条部442との間に配設された移動コイルばね48が圧縮されることにより、切替筒45はロック筒44に対して相対的に移動可能であるため、切替筒45は固定コイルばね47及び移動コイルばね48を圧縮しながら基端側に移動することになり、固定コイルばね47及び移動コイルばね48が弾性力を蓄える。
【0074】
さらに濾過フィルタFをホルダ本体10側に近付けると、
図11に示すように、流入管部F11の流入側段部F11cが挿入筒43の内側のOリング435に前側から(挿入筒43の先端側から)当接するとともに、軸方向におけるロック用ボール434の位置と、流入管部F11の流入側環状溝F11aの位置が一致して、流入管部F11の流入側環状溝F11aの位置がロック用ボール434に対応する挿入位置となる。この状態では、ロック用ボール434が非係合位置から径方向内側に移動して、流入管部F11の流入側環状溝F11aに係合することが可能であり、ロック用ボール434が流入管部F11の流入側環状溝F11aに係合すれば、ロック解除位置にあるロック筒44は基端側のロック位置に移動することが可能である。ここで、移動コイルばね48は、作業者が濾過フィルタFをホルダ本体10側に近付ける力を受けて圧縮され、ロック筒44の環状支持突条部442を基端側に押圧しているため、この移動コイルばね48に蓄えられた弾性力が解放されることにより、ロック筒44がロック解除位置から基端側に移動する。このとき、ロック筒44の傾斜面441bも基端側に移動しているため、傾斜面441bによって径方向内側に押圧されたロック用ボール434は、非係合位置から係合位置まで径方向内側に移動して、流入管部F11の流入側環状溝F11aに係合する。すると、移動コイルばね48に蓄えられた弾性力によりロック筒44はさらに基端側のロック位置まで確実に移動して、ロック筒44のロック面441aがロック用ボール434に当接し、径方向内側に押圧するようになる。
【0075】
この状態では、ロック用ボール434はロック筒44のロック面441aによって径方向内側の係合位置に固定されているため、径方向内側の係合位置から径方向外側の非係合位置に移動することはできない。よって、濾過フィルタFの流入管部F11は挿入筒43から抜けられず、濾過フィルタFは前方に移動できない。したがって、この状態では、切替筒45の基端部は固定コイルばね47によって先端側に押圧されているが、切替筒45の当接面452a及びヘッド部46の先端面は濾過フィルタFの外周面に当接しているため、切替筒45も先端側すなわち前方に移動することができない。したがって、流入管部F11が流入側接続部40に確実に接続された接続状態となる。またこのとき、流入管部F11の流入側段部F11cが挿入筒43の内側のOリング435に当接しているため、挿入筒43のチューブ接続管部432を通って流入管部F11に流入する原水は、挿入筒43と流入管部F11との間の隙間から漏水しないようになっている。
【0076】
また、流出側接続部50についても、流入側接続部40と同様に、濾過フィルタFをホルダ本体10側に近付けると、流出管部F12が流出側接続部50に確実に接続される。したがって、濾過フィルタFをホルダ本体10に近付ける方向の力を加えるだけで、濾過フィルタFの流入管部F11及び流出管部F12が流入側接続部40及び流出側接続部50に同時に接続され、濾過フィルタFをホルダ1に確実かつ簡便に保持することができる。
【0077】
次に、ホルダ1に保持された濾過フィルタFをホルダ1から分離する場合について説明する。まず、
図5で示したように、回動軸32は、偏心カム33の中心からずれた位置に固定されており、外力が作用しない状態では、偏心カム33は、回動軸32が偏心カム33の中心よりも前側に位置するように回動して停止している。この状態で、
図7等に示すノブ31を反時計回りに回動させると、
図12に示すように、回動軸32を介して偏心カム33も反時計回りに回動し、偏心カム33の中心は前側に移動しつつ上側に移動して、偏心カム33の外周面が連結棒61を前方に押圧する。この押圧力によって、連結棒61が前方に移動すると、圧縮ばね34が圧縮されて弾性力を蓄えるとともに、連結棒61に固定された流入側連結板62及び流出側連結板63も前方に移動する。
【0078】
このとき、
図13に拡大して示すように、流入側連結板62に支持された流入側ロック解除ピン64も、前方すなわち先端側へ移動する。そして、流入側ロック解除ピン64の先端がロック筒44の基端面に当接し、ロック筒44は先端側に押圧されて、基端側のロック位置から先端側へ移動する。ロック筒44がロック解除位置まで先端側に移動すると、ロック面441aがロック用ボール434よりも先端側に位置した状態になるため、ロック面441aに径方向外側から当接されて係合位置に固定されていたロック用ボール434が、挿入筒43の外周面から径方向外側に突出する非係合位置へと移動することが可能となる。ロック用ボール434が非係合位置に移動すると、流入管部F11が挿入筒43から抜ける方向に移動することが可能であり、濾過フィルタF及び切替筒45が前方に移動することも可能である。ここで固定コイルばね47は、作業者が濾過フィルタFをホルダ本体10側に近付ける力を受けて圧縮され、切替筒45の基端面を先端側に押圧しており、かつ移動コイルばね48は、流入側ロック解除ピン64がロック筒44を先端側に押圧する力を受けて圧縮され、切替筒45のばね収容凹部454の先端側の面を先端側に押圧しているため、固定コイルばね47及び移動コイルばね48に蓄えられた弾性力が解放されることにより、切替筒45が先端側に押圧されて移動する。同時に、濾過フィルタFの外周面が当接面452a及びヘッド部46によって前方に押圧され、濾過フィルタFが前方に移動して、流入管部F11が挿入筒43から抜ける方向に移動する。すると、ロック用ボール434が流入側環状溝F11aの側面に沿って挿入筒43の径方向外側へ押し出され、非係合位置に移動するとともに、ロック用ボール434が流入側環状平坦部F11bに径方向内側から当接されて径方向外側に押圧される。
【0079】
そして、
図14に示すように、固定コイルばね47及び移動コイルばね48の弾性力によって、切替筒45がさらに先端側に移動して、切替筒45の環状係合突条部451がケーシング41のケーシング内段部411に基端側から当接して係合する。すると、切替筒45はこの位置よりも先端側に移動できず、停止する。この状態では、ロック用ボール434が非係合位置にあるため、流入管部F11を流入側接続部40から抜くことが可能である。
【0080】
そして、
図15に示すように、作業者が濾過フィルタFを前方に移動させると、流入管部F11が流入側接続部40から完全に抜けた状態となる。このとき、作業者がノブ31(
図7等に示す)から手を離している場合には、圧縮ばね34(
図5及び
図12に示す)に蓄えられた弾性力により、連結棒61が後方に移動し、流入側連結板62、流出側連結板63、流入側ロック解除ピン64及び流出側ロック解除ピン65も後方に移動する。
【0081】
以上の一連の動きは、流入側接続部40だけでなく、流出側接続部50でも同時に同様に起こっており、この結果、濾過フィルタFがホルダ1から分離される。したがって、ホルダ1のノブ31を回動させるだけで、流入側接続部40と流入管部F11との接続及び流出側接続部50と流出管部F12との接続を同時に解除して、濾過フィルタFをホルダ1から分離することができる。なお、上記ではノブ31を反時計回りに回動させているが、ノブ31を時計回りに回動させて、偏心カム33を回動させてもよい。このとき、偏心カム33の中心は前側に移動しつつ下側に移動して、偏心カム33の外周面が連結棒61を前方に押圧するため、上記と同様に、流入側接続部40と流入管部F11との接続及び流出側接続部50と流出管部F12との接続を同時に解除することができる。
【0082】
以上説明したように、この実施形態に係るホルダ1によれば、流入管部F11及び流出管部F12がそれぞれ挿入筒43,53に挿入される時に濾過フィルタFが切替筒45,55に作用する力によって、ロック筒44,54が、それぞれロック解除位置からロック位置に移動するので、カプラを両手で操作することやロックレバーの操作等の煩雑な作業をすることなく、濾過フィルタFをホルダ1に確実かつ簡便に保持することができる。
【0083】
また、切替筒45に対するロック筒44の相対的な移動を許容する移動コイルばね48を流入側接続部40に設けたので、流入管部F11及び流入側接続部40の寸法に誤差があっても、流入管部F11を流入側接続部40にスムーズに接続できる。
【0084】
また、ロック位置にあるロック筒44をロック解除位置に向けて押圧する流入側ロック解除ピン64を設けたので、濾過フィルタFをホルダ1から簡便に分離することができる。
【0085】
また、流入側ロック解除ピン64及び流出側ロック解除ピン65を、連結棒61、流入側連結板62及び流出側連結板63を介して互いに連結し、作業者が連結棒61をノブ31で操作できるようにしたので、ノブ31を操作するだけで、流入側接続部40と流入管部F11との接続及び流出側接続部50と流出管部F12との接続を解除し、濾過フィルタFをホルダ1から分離することができる。
【0086】
また、切替筒45の周方向に離れたヘッド部46及び当接面452aが濾過フィルタFの外周面に当接するので、切替筒45が安定して流入管部F11の挿入方向へ移動して、ロック筒44にロック解除位置からロック位置へ移動するための力を伝えることができる。
【0087】
(その他の実施形態)
前述の実施形態では、操作部は回動可能なノブ31であり、ノブ31の操作によって偏心カム33を回動させて連結棒61を前方に移動させているが、前後方向に往復動可能なレバー(図示せず)を連結棒61に取り付けて、レバーの操作により連結棒61を前方に移動させてもよい。
【0088】
また、前述の実施形態では、流入側接続部40と流出側接続部50との間の離間距離は固定されているが、この離間距離を調整するための距離調整手段(図示せず)を設けてもよい。例えば、ホルダ1における流入側接続部40と流出側接続部50との間にスライド部(図示せず)を設け、流入側接続部40と流出側接続部50との間の距離を調整可能としてもよい。この場合、形状や大きさの異なる濾過フィルタでも、同じホルダ1で保持することができる。
【0089】
また、前述の実施形態において、ハウジングF1の長手方向と鉛直線とのなす角度を調整するための角度調整部(図示せず)を、ホルダ1に設けてもよい。この場合、例えば濾過フィルタFのハウジングF1内に気泡がたまらないような角度に調整できるため、濾過面積を広く保つことができるとともに、液体の流路内の圧力変動に起因する透析装置のエラーの発生を抑制することができる。
【0090】
また、前述の実施形態において、流入管部F11及び流出管部F12が流入側接続部40及び流出側接続部50に接続されているか否かを示すインジケータ(図示せず)をホルダ1に設けてもよい。この場合、流入管部F11及び流出管部F12が接続状態にあるか否かを作業者が簡単かつ確実に確認できるため、流入管部F11及び流出管部F12の少なくとも一方が非接続状態のときに誤って濾過フィルタFが使用されてしまい、漏水が起こることを回避することができる。
【0091】
また、前述の実施形態において、流入側接続部40及び流出側接続部50を保護するための保護カバー(図示せず)を、ホルダ1に対して着脱可能に取り付けてもよい。この場合、流入側接続部40及び流出側接続部50に異物が付着してハウジングF1内に流通する液体が汚染されることを抑制できる。また、不慮の事故による濾過フィルタF及びホルダ1の損傷を緩和することができる。