(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
油性成分が、オリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油及び脂肪酸の炭素数が6〜12であるトリ脂肪酸グリセリルから選ばれる1種以上の油脂である請求項1記載の液体口腔用組成物。
更に、((C)成分のエマルション粒子中に含まれる油性成分の組成物全体に対する含有量)/((A)成分の組成物全体に対する含有量(アラントイン換算))が質量比として0.04〜40である請求項1乃至4のいずれか1項記載の液体口腔用組成物。
(C)成分のO/W型エマルションを、多価アルコール及び水を分散媒とし、25℃で液体の油脂である油性成分をノニオン性界面活性剤によって乳化して調製した後、(A)及び(B)成分と共に配合する請求項1〜6のいずれか1項記載の液体口腔用組成物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、アラントインは、口腔用組成物用の配合成分として公知であり、例えば薬用歯みがき類に歯周病予防の有効成分として配合し得ることが知られている。また、特許文献1(特開2007−8831号公報)には、アラントインとビタミンB5を配合した口腔用組成物が、口腔内の創傷治癒作用を奏し口内炎治療に有効であることが提案されている。
しかし、アラントインは水溶解性が必ずしも高くなく、液体口腔用組成物に配合した場合に特に低温下では溶解性が低下して経時でオリとして析出するという問題があった。
【0003】
また、最近の動向として、口腔内適用時の刺激が少ない製剤が求められているが、洗口剤等の液体口腔用組成物において、刺激感を抑えたり、さらには香料等の油溶性の配合成分を溶解させるために、グリセリン、ソルビット、キシリット、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールの配合量を増やすと、アラントインの溶解性がいっそう低下し、アラントインがオリとして析出するのを抑えることができなかった。
このため、液体口腔用組成物におけるアラントインの低温安定性の向上が望まれた。
【0004】
一方、従来から、エマルションを液体口腔用組成物に配合する技術として、エタノール配合製剤のエタノール刺激を抑えるために特定のエマルションを配合した技術(特許文献2;特開2005−179231号公報)、薬用成分の滞留性を向上させ作用性を高める技術(特許文献3:特開2005−179231号公報、特許文献4:特開平11−335253号公報、特許文献5:特許第5043588号公報、特許文献6:特開2011−168506号公報、特許文献7:特開2012−12394号公報、特許文献8:国際公開第2011/115034号、特許文献9:国際公開第2011/077847号)などが提案されている。しかし、これら特許文献2〜9は、アラントインの低温安定化について言及がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、液体口腔用組成物において、アラントイン又はその誘導体の低温安定性を向上し、安定な製剤外観を与えることが技術課題となっていた。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、アラントイン又はその誘導体の低温安定性が向上し、低温保存時のオリ析出が抑えられ安定な製剤外観を有し、使用感も良好な液体口腔用組成物及び該組成物でのアラントイン又はその誘導体の低温安定化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(A)アラントイン又はその誘導体と、(B)プロピレングリコール、平均分子量190〜630のポリエチレングリコールから選ばれる1種以上の多価アルコールと、(C)油性成分が25℃で液体の油脂からなるエマルションとを含有し、(B)成分の含有量が3〜15質量%であり、(C)成分のエマルション粒子中に含まれる油性成分の含有量が組成物全体の0.02〜0.4質量%であることによって、意外にも、液体口腔用組成物においてアラントイン又はその誘導体の低温安定性が向上し、低温保存時のオリ析出を抑制して安定な製剤外観を与えることができ、また、口腔内に適用して使用後の刺激感を軽減し、べたつき感も抑制し、良好な使用感を与え、油溶性の配合成分を十分に溶解させることもできることを知見し、本発明をなすに至った。
【0008】
本発明では、(A)アラントイン又はその誘導体と、(B)特定の多価アルコールを特定量とを併用配合した液体口腔用組成物に、(C)成分のエマルションを、前記エマルションの粒子中に含まれる油性成分の含有量が組成物全体に対して特定範囲内になるように添加、配合すると、(C)成分のエマルションが特異的に作用し、水への溶解性が低いため温度が下がったり、多価アルコールの配合量が増えるといっそう溶解性が低下するアラントイン又はその誘導体の低温安定性が向上し、上記格別の作用効果を付与することができる。
【0009】
従って、本発明は、下記の液体口腔用組成物、その製造方法及び前記組成物でのアラントイン又はその誘導体の低温安定化方法を提供する。
〔1〕
(A)
アラントイン、アラントインジヒドロキシアルミニウム及びアラントインクロルヒドロキシアルミニウムから選ばれるアラントイン又はその誘導体、
(B)プロピレングリコール及び平均分子量190〜630のポリエチレングリコールから選ばれる1種以上の多価アルコール、
(C)多価アルコール及び水を分散媒とし、分散質が25℃で液体の油脂である油性成分20〜50質量%であり、乳化剤がノニオン性界面活性剤5〜20質量%であるO/W型エマルション
を含有し、(A)成分の含有量がアラントイン換算で組成物全体の0.005〜0.5質量%、(B)成分の含有量が組成物全体の5〜15質量%であり、(C)成分のエマルション粒子中に含まれる油性成分の含有量が組成物全体の0.02〜0.4質量%であることを特徴とする液体口腔用組成物。
〔2〕
油性成分が、オリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油及び脂肪酸の炭素数が6〜12であるトリ脂肪酸グリセリルから選ばれる1種以上の油脂である〔1〕に記載の液体口腔用組成物。
〔3〕
エマルション粒子の平均粒径が30〜300nmである〔1〕又は〔2〕に記載の液体口腔用組成物。
〔4〕
分散媒の多価アルコールが、グリセリン及びジプロピレングリコールから選ばれる1種以上である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の液体口腔用組成物。
〔5〕
更に、((C)成分のエマルション粒子中に含まれる油性成分の組成物全体に対する含有量)/((A)成分の組成物全体に対する含有量(アラントイン換算))が質量比として0.04〜40である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の液体口腔用組成物。
〔6〕
洗口剤である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の液体口腔用組成物。
〔7〕
(C)成分のO/W型エマルションを、多価アルコール及び水を分散媒とし、25℃で液体の油脂である油性成分をノニオン性界面活性剤によって乳化して調製した後、(A)及び(B)成分と共に配合する〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の液体口腔用組成物の製造方法。
〔8〕
(A)
アラントイン、アラントインジヒドロキシアルミニウム及びアラントインクロルヒドロキシアルミニウムから選ばれるアラントイン又はその誘導体をアラントイン換算で組成物全体の0.005〜0.5質量%と、(B)プロピレングリコール及び平均分子量190〜630のポリエチレングリコールから選ばれる1種以上の多価アルコールを組成物全体の5〜15質量%とを含有する液体口腔用組成物に、
(C)多価アルコール及び水を分散媒とし、分散質が25℃で液体の油脂である油性成分20〜50質量%であり、乳化剤がノニオン性界面活性剤5〜20質量%であるO/W型エマルションを、(C)成分のエマルション粒子中に含まれる油性成分の含有量が組成物全体の0.02〜0.4質量%となるように配合する、前記液体口腔用組成物での
(A)アラントイン又はその誘導体の低温安定化方法。
〔9〕
分散媒の多価アルコールが、グリセリン及びジプロピレングリコールから選ばれる1種以上である〔8〕
に記載の
前記液体口腔用組成物での
(A)アラントイン又はその誘導体の低温安定化方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アラントイン又はその誘導体の低温安定性が向上し、低温保存時のオリ析出が抑えられ安定な製剤外観を有し、使用感も良好な液体口腔用組成物、及び液体口腔用組成物でのアラントイン又はその誘導体の低温安定化方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の液体口腔用組成物は、(A)アラントイン又はその誘導体、(B)特定の多価アルコール、(C)油性成分が25℃で液体の油脂からなるエマルションを含有する。
【0012】
(A)成分のアラントイン又はその誘導体としては、具体的にアラントイン、アラントインジヒドロキシアルミニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム等が挙げられる。
【0013】
(A)成分のアラントイン又はその誘導体の含有量は、アラントイン換算で組成物全体の0.005〜0.5%(質量%、以下同様。)が好ましく、より好ましくは0.02〜0.2%である。0.005%以上であると、歯ぐき細胞の活性化や抗炎症効果などアラントイン又はその誘導体の効果が十分に発現する。0.5%以下であると、低温保存後のオリ析出を十分に抑制できる。
【0014】
(B)成分の多価アルコールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールであり、1種類単独でも、あるいは効果発現の点で2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエチレングリコールの平均分子量は190〜630であり、好ましくは380〜630である。なお、ポリエチレングリコールの平均分子量は、医薬部外品原料規格記載の平均分子量である(以下、同様)。
平均分子量190〜630のポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール200(平均分子量190〜210)、ポリエチレングリコール300(平均分子量280〜320)、ポリエチレングリコール400(平均分子量380〜420)、ポリエチレングリコール600(平均分子量570〜630)が該当し、これらを好適に使用できる。商品によっては、例えばポリエチレングリコール#200のように、ポリエチレングリコールと数値の間に#がつく場合がある。
【0015】
(B)成分の多価アルコールの含有量は、組成物全体の3〜15%であり、好ましくは5〜10%である。3%以上であると、油溶性の配合成分を十分に溶解し、また、刺激感を抑制することもできる。15%以下であると、アラントインの低温安定性が向上し、オリの生成を抑制でき、また、べたつき感を抑えることもできる。
なお、(B)成分の含有量が上記範囲内において、プロピレングリコールの含有量は0〜15%、特に3〜15%、ポリエチレングリコールの含有量は0〜10%、特に5〜10%が好ましい。
【0016】
(C)成分のエマルションは、エマルション粒子中に含まれる油性成分が25℃で液体の油脂からなるものであり、このエマルションとしては、グリセリン等の多価アルコール、水などを分散媒とし、上記油脂を乳化剤で乳化することによって得られるO/W型(水中油滴型)のエマルションを用いることができ、このようなO/W型のエマルションを添加、配合することが好ましい。この場合、液体口腔用組成物中にO/W型エマルションの油滴粒子が分散し、上記分散媒が液体口腔用組成物の水相と混合し、O/W型のエマルションとして存在する。
【0017】
油性成分である25℃で液体の油脂としては、オリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油などの液状油脂、炭素鎖長6〜12のトリ脂肪酸グリセリルが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用し得る。トリ脂肪酸グリセリルとしては、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等が挙げられる。中でも、トリ脂肪酸グリセリル、オリーブ油が好ましく、とりわけ酸化による変色などが起こりにくく、油脂として安定でもあることから、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルが好適である。
【0018】
エマルション中の油性成分量は、分散媒も含めたエマルション全体の10〜60%(質量%、以下同様。)、特に20〜50%が好ましい。エマルション粒子の平均粒径に応じて油性成分量は調整され、平均粒径が小さくなるほど油性成分量を少なくすることでエマルションの安定性が向上する。10%以上であると、十分にエマルション形成できる。60%以下であると、油性成分が分離することがなく、外観安定性が損なわれるのを防止するには好適である。
【0019】
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤を1種又は2種以上用いることができ、HLB値が10〜16のものが好ましい。グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル等の脂肪酸炭素数が12〜16であるデカグリセリンモノ脂肪酸エステルが挙げられる。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のエチレンオキサイドの平均付加モル数は10〜100モル、特に20〜60モル、とりわけ20モルが好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルのエチレンオキサイドの平均付加モル数は4〜20モル、特に6〜15モルが好ましい。
これらの中では、特にモノミリスチン酸デカグリセリルとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましい。
【0020】
乳化剤の添加量は、通常、分散媒も含めたエマルション全体の5〜30%が好ましく、より好ましくは5〜20%である。乳化剤の添加量は、形成させるエマルション粒子の平均粒径に応じて調整され、平均粒径が小さくなるほど乳化剤の含有量を多くすることでエマルションの安定性は向上する。5%以上であると、油性成分が分離することがなく、30%以下であることが、ゲル化抑制には好適である。
【0021】
分散媒としては、水に加えて、グリセリン、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、平均分子量190〜630のポリエチレングリコール等の多価アルコールの1種又は2種以上を使用することができる。
【0022】
上記エマルションは、粒子の平均粒径が30〜300nm、特に40〜150nmであることが好ましく、とりわけ40〜120nmであると口腔内での使用後の刺激を抑え、かつ使用後のべたつき感を抑えスッキリ感を感じさせることから好ましい。平均粒径が上記範囲内であると、より優れた低温保存安定性(オリ生成抑制効果)を与え、本発明の効果が向上する。平均粒径が小さすぎると、口腔内で使用後の刺激が増える場合があり、平均粒径が大きすぎると、使用後のべたつきが増える場合がある。
【0023】
なお、エマルションの平均粒径の測定方法は下記に示す通りである。
平均粒径の測定方法:
大塚電子(株)製、ダイナミック光散乱光度計DLS−8000を用いて、エマルションを精製水で1000倍希釈し、セルに入れて25℃での平均粒径を測定した。
【0024】
(C)成分のエマルションとしては、とりわけ、グリセリン又はジプロピレングリコールと水とを分散媒とし、油性成分であるトリ脂肪酸グリセリル又はオリーブ油を、脂肪酸炭素数が12〜16のデカグリセリンモノ脂肪酸エステル又はエチレンオキサイドの平均付加モル数が20〜60モルであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油によって乳化した、エマルション粒子の平均粒径が40〜120nmであるO/W型エマルションが好ましく、これを好適に添加、配合し得る。
【0025】
エマルションの調製方法は、公知の方法を採用できる。
例えば、所定量のノニオン界面活性剤、分散媒の多価アルコール及び半量の水をホモミキサーで撹拌後、油性成分を加え、エマルションを形成させ、最後に残りの水を加えることでO/W型エマルションを調製することができる。その後、調製したエマルションは、高圧ホモジナイザーを用いて平均粒径を調節することができる。
乳化操作は公知の乳化方法により実施できる。例えば、ホモミキサーやアジホモ真空乳化機、ナウターミキサー、高圧ホモジナイザーなどの高剪断型の撹拌装置を用いて乳化することができる。これらの中でも、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。高圧ホモジナイザーによる乳化では、剪断力の違いにより平均粒径が調整される。高圧ホモジナイザーを用いることにより、乳化粒子が微粒化し、経時安定性がさらに向上する。
高圧ホモジナイザーとして、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス インターナショナル CO社製)、ゴーリンホモジナイザー(ラニーゴーリン社製)、アルティマイザー(スギノマシン社製)などを使用し得るが、これらの機種に限定されず、同様な機構であればどのような機種でも利用できる。
高圧ホモジナイザーを用いた乳化(高圧乳化)の際の圧力は通常、30MPa以上であり、安定性の点から、30〜100MPaが好ましい。油相の水相への投入、乳化操作は、25〜50℃程度の温度条件下で行うことができる。
【0026】
本発明では、(C)成分として、上記方法で調製したエマルションを添加、配合できるが、市販品を用いることもでき、例えば日光ケミカルズ(株)製のNET−TE−50等を使用できる。
【0027】
本発明では、(C)成分のエマルション粒子中に含まれる油性成分の含有量が、組成物全体の0.02〜0.4%であり、好ましくは0.1〜0.3%であり、組成物中の油性成分の含有量がこの範囲内となるように、(C)成分のエマルションを添加、配合する。油性成分の組成物全体に対する含有量が0.02%未満であると、低温保存時の安定性低下によるオリの生成や口腔内適用後の刺激が抑制できない。0.4%を超えると、口腔内で使用後のべたつきが起こり、使用感が低下する。
なお、エマルションの添加量(分散媒も含めたエマルションの添加量)は、組成物全体の0.1〜4%が好ましく、より好ましくは0.1〜1%である。
【0028】
更に、本発明では、(A)成分の含有量(アラントイン換算)に対して、(C)成分のエマルション粒子中に含まれる油性成分の組成物全体に対する含有量が、質量比として、((C)成分のエマルション粒子中に含まれる油性成分の組成物全体に対する含有量)/((A)成分の含有量(アラントイン換算))が0.04〜40とすることができるが、より好ましくは0.4〜8、さらに好ましくは2〜8、とりわけ好ましくは2〜4である。この範囲内であると、低温安定性がさらに向上し、本発明効果がより優れる。比率が小さすぎると、低温保存時のオリ生成抑制効果や口腔内で使用後の刺激のなさが低下する場合があり、大きすぎると、使用後のべたつきが増加する場合がある。
【0029】
本発明の液体口腔用組成物は、洗口剤、液体歯磨等として調製され、上記成分に加えて、本発明の効果を妨げない範囲で剤型に応じた公知成分を配合できる。例えば、湿潤剤、増粘剤、界面活性剤、溶剤、さらに必要により、pH調整剤、甘味剤、着色料、香料、有効成分等を含有できる。なお、液体口腔用組成物、特に洗口剤には通常、研磨剤等の不溶性粉体は配合されない。
【0030】
湿潤剤としては、上記(B)成分のプロピレングリコール、平均分子量190〜630のポリエチレングリコールに加え、これら以外の多価アルコール、例えばグリセリンを配合することができ、その配合量は0〜15%、特に1〜10%が好ましい。(C)成分のエマルションの分散媒を含めて上記範囲内が好ましい。
なお、本発明組成物中の多価アルコールの総含有量は、(B)成分、(C)成分のエマルションの分散媒を含めて21%以下、特に17%以下であることが好ましく、3%以上、特に10%以上が好ましい。上記範囲内であると、アラントインの低温安定性が確保され、油溶性成分を十分に溶解し、かつ口腔内で使用後のべたつきを抑えることができる。
【0031】
増粘剤としては、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール等が挙げられる(配合量は通常、0〜1%、特に0〜0.5%)。
【0032】
界面活性剤として、(C)成分のエマルションの乳化剤として用いられるノニオン性界面活性剤に加えて、液体口腔用組成物に一般的に用いられる界面活性剤を添加、配合することができる。具体的には、ノニオン性界面活性剤としてポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、両性界面活性剤としてアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型両性界面活性剤、N−脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩等のイミダゾリン型両性界面活性剤、N−脂肪酸アシル−L−アルギネート塩等のアミノ酸型界面活性剤などが挙げられる。これら界面活性剤の添加量は、0.2〜0.8%、特に0.2〜0.6%が好ましい。(C)成分のエマルションの乳化剤を含めた界面活性剤の総含有量が上記範囲内であることが、とりわけエマルションの安定性の点から望ましい。界面活性剤の添加量が少なすぎると、油溶性成分の溶解性が低下する場合があり、多すぎると、エマルションの安定性が低下する場合がある。
【0033】
溶剤としては、精製水が一般的に用いられ、配合量は通常60%以上、特に70%以上である。
pH調整剤としては、フタル酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、炭酸や、これらのカリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、リボ核酸又はその塩、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。なお、本発明組成物は、25℃でpH5.5〜8.5であることが好ましく、この付近のpH調整剤としてクエン酸とクエン酸ナトリウムとの組み合わせ、リン酸とそのナトリウム塩(特にリン酸二水素ナトリウムとリン酸一水素ナトリウム)との組み合わせが好ましい。
【0034】
甘味剤としてはサッカリンナトリウム、ステビオサイト、スクラロース、還元パラチノース、エリスリトール等が挙げられる。
着色料として、青色1号、緑色3号、黄色4号、赤色105号等の安全性の高い水溶性色素を添加できる。
【0035】
香料としては、ミント系香料、スパイス系香料、フルーツ系香料等の公知の香料を使用し得る。具体的には、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及びこれら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、メントン、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。これら香料の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で組成物中0.00001〜3%が望ましい。
【0036】
有効成分としては、アラントインに加えて、トリクロサン、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、イソプロピルメチルフェノール等の殺菌剤、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸などの抗炎症剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素、リテックエンザイム等の酵素、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物、アズレン、塩化リゾチーム、アスコルビン酸等のビタミンC類、トコフェロール酢酸エステル、ジヒドロコレステロール、グリチルレチン塩類、グリチルレチン酸類、ヒドロコレステロール、クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、タイム、オウゴン、チョウジ、ハマメリス等の植物抽出物、グルコン酸銅、カロペプタイド、ポリリン酸ナトリウム、水溶性無機リン酸化合物、ポリビニルピロリドン、ラウロイルサルコシンナトリウム、歯石防止剤、歯垢防止剤、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム等を添加できる。なお、これら有効成分は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合できる。
【0037】
本発明の液体口腔用組成物は、エタノールを含有してもよいが、実質的にエタノールを含まないほうが、エマルションの安定化の点から、より好ましい。ここで、「実質的にエタノールを含まない」とは、組成物中のエタノール量が組成物全体に対して好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは10ppm以下のものである。なお、液体口腔用組成物は、エタノールを無配合であっても、組成物中に配合される香料中に原料由来のエタノールが微量含まれる場合があるため、これらの理由を考慮した上で、香料中などに微量含有されるエタノール以外にエタノールを含まないことが望ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0039】
[実施例、比較例]
表1、2に示す液体口腔用組成物(洗口剤)を常法により調製し、下記方法で評価した。結果を表に併記した。なお、ポリエチレングリコールの平均分子量は、医薬部外品原料規格記載の平均分子量である。
また、使用したエマルションの調製方法、組成は下記の通りである。調製したエマルションC1〜C3を、表中に示す量で配合した。なお、液体製剤は半透明であった。
【0040】
<エマルションの調製方法>
下記組成のO/W型エマルションを下記方法で調製した。なお、ホモミキサーによる攪拌は公知の高圧ホモジナイザー(圧力条件30〜100MPa)、油相の水相への投入、乳化操作は25〜50℃で行った。
また、エマルション粒子の平均粒子径は、大塚電子(株)製、ダイナミック光散乱光度計DLS−8000を用いて、エマルションを精製水で1000倍希釈し、セルに入れて25℃で測定した。
【0041】
<エマルションの組成>
[エマルションC1(平均粒径100nm)の組成]
モノミリスチン酸デカグリセリル 15%
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 40
グリセリン 10
水 35
合計 100%
グリセリン、半量の水、モノミリスチン酸デカグリセリルを予備撹拌後、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルを加えて、ホモミキサーで撹拌し、最後に残りの水を加えて調製した。
【0042】
[エマルションC2(平均粒径50nm)の組成]
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 20%
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 20
ジプロピレングリコール 10
水 50
合計 100%
ジプロピレングリコール、半量の水、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油を予備撹拌後、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルを加えて、ホモミキサーで撹拌し、最後に残りの水を加えて調製した。
【0043】
[エマルションC3(平均粒径150nm)の組成]
モノラウリン酸デカグリセリル 15%
オリーブ油 30
グリセリン 15
水 40
合計 100%
グリセリン、半量の水、モノラウリン酸デカグリセリルを予備撹拌後、オリーブ油を加えて、ホモミキサーで撹拌し、最後に残りの水を加えて調製した。
【0044】
更に、使用原料の詳細を示す。
アラントイン;(株)パームケムアジア製
アラントインクロルヒドロキシアルミニウム;メルク(株)製
プロピレングリコール;(株)ADEKA製
ポリエチレングリコール400;平均分子量380〜420、三洋化成工業(株)製
ポリエチレングリコール600;平均分子量570〜630、三洋化成工業(株)製
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油;
エチレンオキサイドの平均付加モル数60、日光ケミカルズ(株)製
【0045】
(1)低温保存時のオリ生成抑制効果の評価方法
サンプル(液体口腔用組成物)を満注量500mLの無色透明なPET容器(吉野工業所製)に450mL充填し、−5℃恒温槽に1ヶ月保存した後、外観安定性(オリ生成抑制効果)を下記の4段階の評価基準に従って目視判定した。3本のサンプルを評価し、このうち最も低い評価を採用した。
オリ生成抑制効果の評価基準:
◎:オリが全くなかった。
○:オリがほとんどなかった。
△:オリがややあった。
×:オリがかなりあった。
【0046】
(2)使用後の刺激感のなさの評価基準
サンプル10mLを口に含み、30秒間すすいだ後、洗口後の刺激のなさについて下記の4段階で評価し、10名の平均点を次の基準に従い、◎、○、△、×で示した。
洗口後の刺激感のなさの評点基準:
4点:刺激感がなかった。
3点:刺激感がほとんどなかった。
2点:刺激感がややあった。
1点:刺激感がかなりあった。
刺激感のなさの評価基準:
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点2.0点未満
【0047】
(3)製造時の油溶性成分の溶解性
表に示す成分を配合して製造する時の香料等の油溶性成分の溶解性を、次の基準に従って目視判定した。
◎:均一に溶解した。
○:やや液が白濁しているが、均一に溶解している。
△:ごく僅かに分離が認められ、均一には溶解していない。
×:明らかに分離が認められ、溶解していない。
【0048】
(4)使用後のべたつき感のなさ
サンプル10mLを口に含み、30秒間すすいだ後、洗口後のべたつきについて下記の4段階で評価し、10名の平均点を次の基準に従い、◎、○、△、×で示した。
洗口後のべたつき感の評点基準
4点:べたつきがなかった。
3点:べたつきがほとんどなかった。
2点:べたつきがややあった。
1点:べたつきがかなりあった。
洗口後のべたつき感の評価基準
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点2.0点未満
【0049】
【表1】
*;(C)成分のエマルション粒子中に含まれる油性成分の組成物全体に対する含有量(以下、同様。)。
**;香料の組成は表3に示す通り(以下、同様。)。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】