(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数本のうちの一部または全部の前記端子における前記傾斜部が、当該傾斜部と前記絡げ端子部との為す角を減少させる向きに弾性的に付勢された状態で前記ベース部に包埋されている請求項1から5のいずれか一項に記載のコイル部品。
面実装部を含む実装端子部と、前記実装端子部から斜め上方に立ち上がる傾斜部と、前記傾斜部から垂下して終端する絡げ端子部と、をそれぞれ備える複数本の端子を用意する工程と、
前記実装端子部の前記面実装部を第一金型に載置して複数本の前記端子を前記第一金型に装填する工程と、
第二金型を前記第一金型に沿って摺動させ、前記端子の前記傾斜部に前記第二金型を当接させるとともに複数本の前記端子の周囲を前記第二金型で取り囲む工程と、
前記第一金型および前記第二金型で区画される空隙部に溶融樹脂を注入し、前記傾斜部と前記絡げ端子部とに亘って前記端子を包埋するとともに前記絡げ端子部を下方に突出させるように樹脂製のベース部を成形する工程と、
前記ベース部に保持されたコイルの巻線リードの末端部を前記面実装部よりも上方で前記絡げ端子部に絡げて固定する工程と、
前記絡げ端子部にレーザを照射して前記絡げ端子部を溶融させ、前記巻線リードの前記末端部の少なくとも一部を内包する塊状部を形成する工程と、
を含むコイル部品の製造方法。
前記端子の前記傾斜部に前記第二金型を当接させる前記工程において、前記複数本のうちの一部または全部の前記端子における前記傾斜部を前記第二金型によって前記絡げ端子部に向けて弾性的に付勢し、
前記ベース部を成形する工程において、前記傾斜部が弾性的に付勢された状態で前記空隙部に前記溶融樹脂を注入することを特徴とする請求項7に記載のコイル部品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各図面において、対応する構成要素には共通の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0015】
なお、本明細書では、コイル部品100が搭載される回路基板200を基準として、コイル部品100が接合される実装面210が形成されている側を上方と呼称する。逆に、コイル部品100を基準として、実装面210に接合される面実装部21が形成されている側を下方と呼称する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものであり、コイル部品100の製造時や使用時における重力方向の上下とは必ずしも一致しない。また、本明細書でいう「面」とは略平坦な形状であることを意味し、幾何学的に完全な平面であることを要するものではない。
【0016】
図1(a)は、本発明の実施形態にかかるコイル部品100が回路基板200に実装されている状態を示す正面図である。
図1(b)は、本実施形態のコイル部品100からコア部50(
図2参照)を取り外した端子構造90を示す正面図である。
図2は、本実施形態のコイル部品100の分解斜視図である。
【0017】
はじめに、本実施形態の概要について説明する。
本実施形態のコイル部品100は面実装型であり、コイル10、複数本の端子20、およびこれらの端子20の中間部を包埋する樹脂製のベース部40を備えている。
複数本の端子20は、面実装部21を含む実装端子部22と、この実装端子部22から斜め上方に立ち上がる傾斜部24と、傾斜部24から垂下するとともにベース部40から下方に突出して終端する絡げ端子部26と、をそれぞれ有している。コイル10の巻線リード12の末端部14は、面実装部21よりも上方で絡げ端子部26に絡げて固定されている。
【0018】
次に、本実施形態のコイル部品100について詳細に説明する。
【0019】
コイル部品100はコイル10を含む電子部品であり、具体的にはトランスやインダクタンス素子、チョークコイルなどが例示される。このうち、本実施形態のコイル部品100は、複数本のコイル10がボビン46の巻軸部42に巻回形成されたトランスである。
【0020】
図2に示すように、本実施形態のコイル部品100は、ベース部40の対向する側面よりそれぞれ外側に4本ずつ、合計8本の端子20が突出して設けられている。
【0021】
ベース部40は絶縁性の樹脂材料からなる。具体的には、フェノール樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を例示することができるが、耐熱性の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0022】
端子20は金属材料からなる。具体的には、リン青銅や銅覆鋼線などの高弾性の金属材料からなる棒材や板材を用いることができる。
【0023】
本実施形態のベース部40は、ボビン46と端子保持部48とを一体成形してなる。ボビン46と端子保持部48とは同種の樹脂材料を用いることで密着性に優れる。ただし、ボビン46と端子保持部48とを異種材料で構成してもよい。
【0024】
端子保持部48は、ベース部40のうち、端子20の傾斜部24を包埋する部分である。端子保持部48の下部には、
図1(b)に示すように、外向き下方に傾斜する傾斜面49が設けられている。傾斜面49から端子20の傾斜部24が突出している。傾斜面49の法線方向は、端子20の傾斜部24の突出方向と略一致している。端子保持部48の下部に傾斜面49を形成することで、端子20の実装端子部22に対するアクセス性が向上し、回路基板200の実装面210(
図1(a)参照)への実装作業を正確に行うことができる。
【0025】
ボビン46は、中空の巻軸部42と、この巻軸部42の両端に形成された鍔部44と、巻軸部42の中間部に形成された隔壁部45とを備えている。本実施形態のボビン46においては、2枚の隔壁部45が巻軸部42の周囲にフランジ状に並んで形成されている。巻軸部42は隔壁部45によって2箇所に隔てられており、それぞれの巻軸部42に異なるコイル10が巻回形成されている。コイル10はワイヤを巻回してなり、このワイヤの両端近傍の一部長さは巻軸部42から引き出されている。かかる長さ領域を巻線リード12と呼称する。巻線リード12は鍔部44の内側面に沿って巻軸部42から引き出され、その末端部14はベース部40の下方に下向きに突出するボビン46に絡げて固定されている。本実施形態のボビン46における巻軸部42の巻軸方向AXは水平方向(
図1各図における左右方向)であり、絡げ端子部26の延在方向に対して直交している(
図1(b)参照)。
【0026】
すなわち、本実施形態のベース部40(ボビン46)は、絡げ端子部26に直交する方向を巻軸方向AXとする巻軸部42と、この巻軸部42の両端に形成された大径の鍔部44と、を有している。そして、コイル10は巻軸部42の周囲に巻回され、鍔部44よりも巻軸方向AXの外側に巻線リード12が引き出されて絡げ端子部26に絡げて固定されている。
【0027】
巻軸部42に巻回されたコイル10の巻線リード12は、巻軸方向AXに対して直交方向にコイル10から引き出されて末端部14が絡げ端子部26に絡げられる。このため、コイル部品100に外力や重力加速度が負荷されるなどして絡げ端子部26が外方に傾き変形した場合には巻線リード12の末端部14を巻軸方向AXの外側に牽引して緊張させることとなる。しかしながら、以下に説明するように本実施形態のコイル部品100によれば、傾斜部24の存在により絡げ端子部26の傾き変形が抑制されている。
【0028】
端子20は、実装端子部22から斜め上方に立ち上がる傾斜部24と、傾斜部24から垂下するとともにベース部40から下方に突出して終端する絡げ端子部26と、を有している。実装端子部22は水平または略水平に延在しており、実装端子部22の下面は面実装部21を構成している。面実装部21とは、回路基板200の実装面210に実装される平坦面であり、複数本(本実施形態では8本)の端子20の面実装部21は同一平面上に位置している。
【0029】
図3は、端子20の斜視図である。傾斜部24は、実装端子部22から鈍角の傾斜角度φで斜め上方に立ち上がっている。傾斜角度φは、面実装部21と傾斜部24との厚み中心Cが互いに交差する角度である。傾斜角度φは90度を超えて180度未満であるが、120度以上160度以下が好ましい。
【0030】
傾斜部24の上端にあたる基端部25は、
図1(b)に示すようにベース部40の端子保持部48に包埋されている。言い換えると傾斜部24は、ベース部40に包埋された基端部25から斜め下方に向ってベース部40から外向きに突出している。絡げ端子部26は、傾斜部24の基端部25から下方に垂下している。傾斜部24と絡げ端子部26との厚み中心Cが互いに交差する角度である屈曲角度θは鋭角である。屈曲角度θは、20度以上60度以下とすることができる。
【0031】
端子20はバネ性を有する金属材料からなり、傾斜部24に水平方向の荷重を負荷することで、傾斜部24は絡げ端子部26に対して撓み変形して屈曲角度θを変化させる。
【0032】
本実施形態の端子20において、絡げ端子部26の延在方向は端子20の面実装部21の法線方向と一致しており、屈曲角度θは傾斜角度φの補角である。ただし、本実施形態に代えて、絡げ端子部26は面実装部21に対して斜めに傾斜していてもよい。また、本実施形態の端子20における基端部25は折り曲げ部であって実質的に端子20の延在方向の寸法を有しておらず、傾斜部24と絡げ端子部26とは互いに隣接している。傾斜部24と絡げ端子部26とは逆V字状に屈曲している。ただし、本実施形態に代えて、基端部25は、水平方向に所定長さで延在する部分を有していてもよい。
【0033】
ベース部40(端子保持部48)は、傾斜部24と絡げ端子部26とに亘って端子20を包埋している。ベース部40は面実装部21よりも上方に設けられている。すなわち、ベース部40の最下点は面実装部21よりも上方に位置している。
【0034】
ベース部40のうち、鍔部44および隔壁部45の下縁がベース部40の最下点にあたる。鍔部44および隔壁部45の下縁は実装端子部22の上面と同高さであり、言い換えると実装端子部22の厚み寸法だけ面実装部21よりも上方に位置している。
【0035】
本実施形態のコイル部品100は、特許文献2の装置とは異なり、ベース部40(端子保持部48)が絡げ端子部26のみならず傾斜部24をも包埋している。このため、傾斜部24と絡げ端子部26との屈曲角度θがベース部40で保持される。したがって、応力集中しやすい傾斜部24の基端部25がベース部40で保護されることとなり、面実装部21に対して回路基板200から荷重が負荷されても、傾斜部24の基端部25における屈曲角度θは実質的に変化することがない。このため、絡げ端子部26が傾き変形して巻線リード12を緊張および破断させることが防止されている。また、ベース部40が面実装部21よりも上方に設けられていることで、ベース部40が回路基板200から直接に荷重を受けることもない。
【0036】
なお、面実装部21に回路基板200から荷重が負荷されるとは、回路基板200またはコイル部品100に外力または重力加速度が作用して、コイル部品100の面実装部21と回路基板200の実装面210との間に、コイル部品100の自重を超える荷重が発生することをいう。
【0037】
図2に示すように、本実施形態のコア部50は、上面視でE字状を為す一対の磁性材料からなる、いわゆるE−Eコアである。コア部50は、一例としてフェライトで作成することができる。コア部50は、棒状の挿入部52と、その両側に突出する外枠部54とを備えている。ベース部40のボビン46には開口部47が巻軸方向AXに沿って貫通形成されている。開口部47は、巻軸部42、鍔部44および隔壁部45を貫通している。開口部47には、一点鎖線で示すように、コア部50の挿入部52が挿通される。一対のコア部50は、挿入部52同士および外枠部54同士が突き当てられ、コイル10が生成する磁束の閉磁路を構成する。一対のコア部50は、図示しない粘着テープで互いに固定されている。また、この粘着テープにより、一対のコア部50およびベース部40を共に固定してもよい。なお、本実施形態に代えて、コア部50はE字状とI字状の一対の磁性材料を組み合わせた、いわゆるE−Iコアでもよい。
【0038】
図2では、説明のため、コイル10が露出している態様を例示しているが、本発明はこれに限られない。コイル10およびボビン46を収容して掩蔽するカバー部材(図示せず)を装着してもよく、または樹脂材料でコイル10およびボビン46を封止してもよい。
【0039】
図1各図および
図2に示すように、絡げ端子部26は、巻線リード12の末端部14の少なくとも一部を内包する塊状部27を有している。絡げ端子部26と塊状部27とは同一材料からなり、塊状部27は絡げ端子部26の下端または下端近傍に形成されている。
図3では塊状部27を図示省略している。なお、塊状部27が巻線リード12の末端部14の少なくとも一部を内包するとは、巻線リード12の末端近傍の一部の長さ領域に亘って、巻線リード12の線径の一部または全部が塊状部27の内部に包埋されていることをいう。
【0040】
塊状部27の形状は特に限定されないが、絡げ端子部26のうち塊状部27を除く部位における太さよりも大径の球形状とすることができる。塊状部27は、後述する製造方法にて説明するように、絡げ端子部26にレーザL(
図6参照)を照射してこれを溶融させることによって形成することができる。絡げ端子部26の下端に塊状部27を形成することで、仮に絡げ端子部26が回路基板200に干渉しても、大径の塊状部27が回路基板200と接触することになるため回路基板200を損傷することが防止される。また、塊状部27が巻線リード12の末端部14を内包していることで、塊状部27が仮に回路基板200と接触しても、巻線リード12が物理的に保護されて断線が防止される。
【0041】
絡げ端子部26(塊状部27)は面実装部21よりも上方で終端している。このため、コイル部品100の実装時や製品の使用環境下で端子20の実装端子部22が回路基板200から面直方向に荷重を受けて傾斜部24の傾斜角度φ(
図3参照)が減少しても、絡げ端子部26が回路基板200に干渉することがない。
【0042】
なお、本発明のコイル部品100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0043】
(製造方法)
以下、本実施形態のコイル部品100の製造方法(以下、本方法という場合がある)について説明する。
図4(a)は、第一工程および第二工程を示す模式図である。
図4(b)は、第三工程を示す模式図である。
図5は、第三工程の詳細を示す模式図である。
図6(a)は、第四工程で成形されたベース部40を第一金型110から取り外す様子を示す模式図である。
図6(b)は、第五工程および第六工程を示す模式図である。
【0044】
以下、複数の工程を用いて本方法を説明するが、その記載の順番は各工程を実行する順番やタイミングを必ずしも限定するものではない。このため、本方法の複数の工程の順番は内容的に支障のない範囲で変更することができ、また複数の工程の実行タイミングの一部または全部が互いに重複していてもよい。
【0045】
本方法は、第一工程から第六工程を含む。
図4(a)に示すように、第一工程では複数本の端子20を用意する。端子20は、上述のように、面実装部21を含む実装端子部22と、この実装端子部22から斜め上方に立ち上がる傾斜部24と、傾斜部24から垂下して終端する絡げ端子部26と、をそれぞれ備えている。
第二工程では、実装端子部22の面実装部21を第一金型110に載置して複数本の端子20を第一金型110に装填する。
第三工程では、第二金型120を第一金型110に沿って摺動させ、
図4(b)に示すように端子20の傾斜部24に第二金型120を当接させるとともに複数本の端子20の周囲を第二金型120で取り囲む。
第四工程では、第一金型110および第二金型120で区画される空隙部130に溶融樹脂を注入し、傾斜部24と絡げ端子部26とに亘って端子20を包埋するとともに絡げ端子部26を下方に突出させるように樹脂製のベース部40を成形する。成形されたベース部40を含む端子構造90を
図6(a)に示す。
図6(b)に示すように、第五工程では、ベース部40(ボビン46)に保持されたコイル10の巻線リード12の末端部14を面実装部21よりも上方で絡げ端子部26に絡げて固定する。
第六工程では、絡げ端子部26にレーザLを照射して絡げ端子部26を溶融させ、巻線リード12の末端部14の少なくとも一部を内包する塊状部27(
図1(b)参照)を形成する。
【0046】
つぎに、本方法を更に詳細に説明する。
【0047】
第一工程では、端子20を成形する。端子20は、金属材料の板材をカットおよびプレス加工して、
図3に示すように実装端子部22と傾斜部24とを傾斜角度φで屈曲させ、また基端部25で鋭角に折り曲げて傾斜部24と絡げ端子部26とを屈曲角度θで屈曲させる。本実施形態の端子20は、実装端子部22から絡げ端子部26まで均一の幅寸法および厚み寸法であるが、これに限られない。実装端子部22と絡げ端子部26とを細幅とし、傾斜部24をこれらよりも太幅としてもよい。
【0048】
端子20の実装端子部22および絡げ端子部26は、
図1(b)に示す仕上がり状態よりも十分に長く形成しておくとよい。
【0049】
第一金型110の上面112には、実装端子部22の幅寸法および厚み寸法に対応する長尺の凹溝114が形成されている。すなわち、凹溝114の深さ寸法(
図4(a)の上下寸法)は実装端子部22の厚み寸法と略等しく、凹溝114の幅寸法(同図の紙面奥行寸法)は実装端子部22の幅寸法と略等しい。
第一金型110の上面112には、絡げ端子部26を挿入可能な凹穴116が形成されている。凹穴116の深さ寸法は、絡げ端子部26の長さ寸法と同等またはそれ以上である。凹穴116に絡げ端子部26を挿入した状態で、溶融樹脂(図示せず)が流入しないよう、凹穴116は絡げ端子部26を嵌め合いに挿入する開口寸法であることが好ましい。
凹溝114および凹穴116は、複数本(本実施形態では8本)の端子20にそれぞれ対応して形成されている。第一工程において絡げ端子部26を仕上がり長さよりも長く形成しておくことで、絡げ端子部26を凹穴116に十分な深さまで挿入して端子20を安定して保持することができる。
【0050】
第二金型120は、第一金型110の上面112に沿って、凹溝114の延在方向に進退自在に摺動する。第二金型120は、上面112と摺動する下面122と、この下面122から所定の角度で起立する立面124を備えている。本実施形態の立面124は下面122に対して垂直に起立している。立面124の下部には凹欠部126が設けられている。凹欠部126は、端子保持部48の傾斜面49(
図1(b)参照)の仕上げ面を構成する雌型となる。凹欠部126の内部には、立面124に向って突出する突起部128が形成されている。
【0051】
本方法では、同形状の一対の第二金型120を互いに対向させて用いる。一対の第二金型120は、立面124を内向きに対向させた状態で、第一金型110の上面112に対して摺動する。第二金型120は、ボビン46の片側に並設される複数本(本実施形態では片側4本)の端子20を少なくとも包含するだけの幅寸法(
図4(a)の紙面奥行寸法)を有している。
【0052】
第二工程では、実装端子部22を凹溝114に嵌合させ、絡げ端子部26を凹穴116に嵌合させて端子20を第一金型110に装填する。これにより、実装端子部22の上面が上面112と面一となる。これにより、第二金型120の下面122は実装端子部22と干渉することなく上面112に沿って摺動可能となる。
【0053】
第三工程では、
図4(a)に矢印で示すように、第二金型120を第一金型110の上面112に当接させた状態で、実装端子部22の延在方向に摺動させる。このとき、ボビン46(
図1(b)参照)に対応する雌型形状の第三金型132を更に第一金型110に配置する。これにより、
図4(b)に示すように、第一金型110および第二金型120で区画される空隙部130が形成される。
【0054】
なお、空隙部130が第一金型110および第二金型120で区画されるとは、第一金型110および第二金型120がそれぞれ有する平面または曲面を少なくとも含む複数の面で、閉鎖した、またはほぼ閉鎖した空隙部130が形成されることをいう。本実施形態では、第一金型110の上面112と、第二金型120の凹欠部126(
図4(a)参照)の表面および立面124と、第三金型132と、で空隙部130が区画形成される。空隙部130には、端子20の傾斜部24および絡げ端子部26の上側の一部が露出している。
【0055】
第四工程では、空隙部130に溶融樹脂を注入し、傾斜部24と絡げ端子部26とに亘って端子20を溶融樹脂で包埋して端子保持部48を成形するとともに、ボビン46を成形する。絡げ端子部26の下端部は凹穴116に挿入されているため、溶融樹脂から下方に突出する。溶融樹脂を硬化させることで、ボビン46および端子保持部48が一体成形されてベース部40が作成される。なお、本実施形態に代えて、ボビン46と端子保持部48とを異種材料で成形する場合には、第四工程における溶融樹脂の注入および硬化を複数回に亘って行ってもよい。この場合、端子保持部48とボビン46との間に境界面43が形成されてもよい(
図6(a)参照)。
【0056】
ここで、端子20の傾斜部24に第二金型120(突起部128)を当接させる工程(第三工程)において、複数本のうちの一部または全部の端子20における傾斜部24を第二金型120によって絡げ端子部26に向けて弾性的に付勢してもよい(
図5参照)。これにより、付勢された端子20における屈曲角度θは僅かに減少する。そして、ベース部40を成形する工程(第四工程)において、傾斜部24が弾性的に付勢された状態で空隙部130に溶融樹脂を注入してもよい。
【0057】
これにより、本実施形態のコイル部品100は、複数本のうちの一部または全部の端子20における傾斜部24が、当該傾斜部24と絡げ端子部26との為す角(屈曲角度θ)を減少させる向きに弾性的に付勢された状態でベース部40に包埋されていてもよい。
【0058】
図5に示すように、第二金型120を摺動させて、複数本の端子20における傾斜部24に対して突起部128が最初に接触した状態(破線で図示)を超えて、矢印で示すように第二金型120を更に前進させてもよい。そして、すべての端子20における傾斜部24に対して突起部128が良好に当接した位置で第二金型120の前進を停止させるとよい。これにより、複数本の端子20における傾斜部24の傾斜角度が共通化される。
【0059】
すなわち、第一工程で用意される端子20における屈曲角度θや傾斜角度φ(
図3参照)は設計値に対して所定のばらつきをもつ場合がある。具体的には、実装端子部22と傾斜部24とが為す傾斜角度φが設計値よりも大きいと、複数本の端子20の間で傾斜部24が揃わずに不一致となり、屈曲角度θは所定値よりも小さくなる。このため、上記のように第二金型120の突起部128で傾斜部24を絡げ端子部26に向けて弾性的に付勢し、この状態で端子保持部48を樹脂成形することで、傾斜部24の所望の仕上がり形状を実現することができる。
さらに、コイル部品100が回路基板200から面直上方に荷重を受けた場合に、実装端子部22とともに傾斜部24が押し上げられて傾斜角度φが広がる方向に端子20は変形する。このとき、傾斜部24は絡げ端子部26に向けて予め付勢されていることで、かかる変形により生じる応力がキャンセルされるため、絡げ端子部26への負荷が軽減される。
【0060】
第四工程でベース部40が成形されたのち、
図6(a)に示すように、一対の第二金型120を互いに離間させる方向に摺動させ、成形後の端子構造90を第一金型110から上方に取り外す。
【0061】
第五工程では、
図6(b)に示すように、切断刃140により実装端子部22を所定の長さ寸法に切断して切断片23を分離、除去する。また、ベース部40の巻軸部42にワイヤを巻回してコイル10を形成し、さらに、コイル10から引き出されたワイヤの一部である巻線リード12の末端部14を絡げ端子部26に絡げて固定する。巻線リード12は、鍔部44の内側面に沿って巻軸部42から下方に引き出され、実質的に弛みなく絡げ端子部26に巻回される。巻線リード12の末端部14は、ベース部40から下方に突出する絡げ端子部26の露出部における上端近傍に固定するとよい。また、第五工程では、絡げ端子部26の下端部の余剰長さを切除してもよい。具体的には、絡げ端子部26が回路基板200に接触しないよう、絡げ端子部26の下端が面実装部21の実装端子部22よりも上方で終端するように絡げ端子部26をカットし、切断片28を分離、除去するとよい。ただし、後述するレーザLの照射により絡げ端子部26は溶融し、塊状部27が形成されて絡げ端子部26の長さが僅かに縮小する。このため、かかる縮小長さを見越して、第五工程においては絡げ端子部26の下端が実装端子部22よりも僅かに下方に位置する長さで絡げ端子部26をカットしてもよい。なお、第一工程において、絡げ端子部26の長さが仕上がり寸法と等しくなるように予め所定長さに成形された端子20を用意する場合は、第五工程において絡げ端子部26の下部をカットする上記工程は不要となる。
【0062】
第六工程では、絡げ端子部26の下端部に対して照射装置150を用いてレーザLを照射する。レーザLの種類は特に限定されず、YAGレーザなどの固体レーザのほか、半導体レーザや、炭酸ガスレーザなどの気体レーザを用いてもよい。レーザLは、複数本の端子20の絡げ端子部26に対してそれぞれ1回または複数回に亘って照射される。これにより、絡げ端子部26が溶融して塊状部27(
図1(b)参照)となり、絡げられている巻線リード12の末端部14が塊状部27に内包される。
【0063】
本方法では、絡げ端子部26がいずれもベース部40から下方に突出しており、すべての絡げ端子部26の突出方向が一致している。このため、いずれの絡げ端子部26に対してもベース部40の下方からレーザLを照射することができる。言い換えると、レーザLの照射面が共通化されているため照射装置150のハンドリング性が良好である。
【0064】
以上により、
図1(b)に示す端子構造90が形成される。本実施形態のコイル部品100は、上述したように任意でカバー部材(図示せず)でコイル10およびボビン46を収容し、さらにベース部40にコア部50を装着および固定して作成される。
【0065】
以上説明した本方法によれば、ベース部40を樹脂成形した後に端子20を曲げて実装端子部22を形成するのではなく、予め所定形状に形成した端子20を溶融樹脂で包埋するため、絡げ端子部26に負荷される応力が低減される。さらに、端子20に傾斜部24を形成することで、実装時および実装後の使用環境下で実装端子部22に衝撃的な荷重が負荷されても、傾斜部24の撓み変形によってこれを吸収する。このため、絡げ端子部26およびこれに固定された巻線リード12の末端部14に実質的に応力が伝達されず、コイルおよび巻線リード12を保護することができる。
【0066】
なお、本方法では、第一工程から第六工程をこの順番に実施することを例示したが、本発明はこれに限られない。例えば、第一工程と第二工程とを同時に行ってもよい。具体的には、第一金型110に端子20を装填した状態で、端子20を所定形状に曲げ成形してもよい。また、第五工程および第六工程を実施したのちに、第三工程や第四工程を実施してもよい。すなわち、予め成形されたボビン46にワイヤを巻回してその巻線リード12を絡げ端子部26に絡げて固定し、必要によりレーザLで塊状部27を形成したのち、かかる端子20を第一金型110に装填して端子保持部48(ベース部40)を成形してもよい。
【0067】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0068】
たとえば、本実施形態のコイル部品100では、すべての端子20が同一形状であり、ベース部40における対向する両側(
図1における左右両側)から外向きに突出している形態を例示したが、本発明はこれに限られない。端子20はベース部40の周囲の略全周に放射状に配置されてもよく、また一部の端子20の形状が他の端子20の形状と異なってもよい。
【0069】
また、本実施形態では巻軸部42の巻軸方向AX(
図1(b)参照)が水平方向であって絡げ端子部26の延在方向と直交することを例示したが、本発明はこれに限られない。コイル部品100は、いわゆるドラムコア形状でもよく、この場合、巻軸部42の巻軸方向AXは絡げ端子部26の延在方向と平行または略平行でもよい。
【0070】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)コイル、複数本の端子、および前記端子の中間部を包埋する樹脂製のベース部を備える面実装型のコイル部品であって、複数本の前記端子は、面実装部を含む実装端子部と、前記実装端子部から斜め上方に立ち上がる傾斜部と、前記傾斜部から垂下するとともに前記ベース部から下方に突出して終端する絡げ端子部と、をそれぞれ有し、前記コイルの巻線リードの末端部が前記面実装部よりも上方で前記絡げ端子部に絡げて固定されているコイル部品。
(2)前記絡げ端子部が、前記巻線リードの前記末端部の少なくとも一部を内包する同一材料の塊状部を有する上記(1)に記載のコイル部品。
(3)前記ベース部が、前記傾斜部と前記絡げ端子部とに亘って前記端子を包埋するとともに前記面実装部よりも上方に設けられている上記(1)または(2)に記載のコイル部品。
(4)前記ベース部が、前記絡げ端子部に直交する方向を巻軸方向とする巻軸部と、前記巻軸部の両端に形成された大径の鍔部と、を有し、前記コイルは前記巻軸部の周囲に巻回され、前記鍔部よりも前記巻軸方向の外側に前記巻線リードが引き出されて前記絡げ端子部に絡げて固定されている上記(3)に記載のコイル部品。
(5)前記絡げ端子部が前記面実装部よりも上方で終端している上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のコイル部品。
(6)前記複数本のうちの一部または全部の前記端子における前記傾斜部が、当該傾斜部と前記絡げ端子部との為す角を減少させる向きに弾性的に付勢された状態で前記ベース部に包埋されている上記(1)から(5)のいずれか一項に記載のコイル部品。
(7)面実装部を含む実装端子部と、前記実装端子部から斜め上方に立ち上がる傾斜部と、前記傾斜部から垂下して終端する絡げ端子部と、をそれぞれ備える複数本の端子を用意する工程と、前記実装端子部の前記面実装部を第一金型に載置して複数本の前記端子を前記第一金型に装填する工程と、第二金型を前記第一金型に沿って摺動させ、前記端子の前記傾斜部に前記第二金型を当接させるとともに複数本の前記端子の周囲を前記第二金型で取り囲む工程と、前記第一金型および前記第二金型で区画される空隙部に溶融樹脂を注入し、前記傾斜部と前記絡げ端子部とに亘って前記端子を包埋するとともに前記絡げ端子部を下方に突出させるように樹脂製のベース部を成形する工程と、前記ベース部に保持されたコイルの巻線リードの末端部を前記面実装部よりも上方で前記絡げ端子部に絡げて固定する工程と、前記絡げ端子部にレーザを照射して前記絡げ端子部を溶融させ、前記巻線リードの前記末端部の少なくとも一部を内包する塊状部を形成する工程と、を含むコイル部品の製造方法。
(8)前記端子の前記傾斜部に前記第二金型を当接させる前記工程において、前記複数本のうちの一部または全部の前記端子における前記傾斜部を前記第二金型によって前記絡げ端子部に向けて弾性的に付勢し、前記ベース部を成形する工程において、前記傾斜部が弾性的に付勢された状態で前記空隙部に前記溶融樹脂を注入することを特徴とする上記(7)に記載のコイル部品の製造方法。