特許第6331677号(P6331677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331677
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】振動発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/18 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   H02N2/18
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-100231(P2014-100231)
(22)【出願日】2014年5月14日
(65)【公開番号】特開2015-220774(P2015-220774A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】曹 寧源
(72)【発明者】
【氏名】工藤 高裕
(72)【発明者】
【氏名】古市 卓也
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/157246(WO,A1)
【文献】 特開2003−209980(JP,A)
【文献】 特開2012−079667(JP,A)
【文献】 特開2013−219940(JP,A)
【文献】 特開2009−183015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動源から振動を受ける支持体と、
この支持体に設けた支点を介して長手方向中間部が支持され、振動を受けることで前記支点回りに揺動する第1揺動ビームと、
この第1揺動ビームの両端に固定された一対の錘体と、
これら一対の錘体のうち少なくとも一方の錘体の移動方向に配置され、当該錘体との衝突により前記第1揺動ビームの振幅を制限する第1振幅制限装置と、
前記第1揺動ビームの前記支点を挟んで長手方向の両側のうち少なくとも前記第1振幅制限装置が配置される側に設けられ、振動を受けた前記錘体と前記第1振幅制限装置との衝突による衝撃力によって磁歪部材が伸長または圧縮することで発電する第1振動電力変換部と、を備えていることを特徴とする振動発電装置。
【請求項2】
前記第1振幅制限装置が前記第1揺動ビームの両端に固定された一対の錘体の移動方向にそれぞれ配置されるとともに、
前記第1振動電力変換部が前記第1揺動ビームの前記支点を挟んで長手方向の両側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1記載の振動発電装置。
【請求項3】
前記第1揺動ビームに対して直交する方向に延在し、長手方向中間部が前記支点を介して前記支持体に揺動自在に支持されている第2揺動ビームと、
この第2揺動ビームの両端に固定された一対の錘体と、
これら一対の錘体のうち少なくとも一方の錘体の移動方向に配置され、当該錘体との衝突により前記第2揺動ビームの振幅を制限する第2振幅制限装置と、
前記第2揺動ビームの前記支点を挟んで長手方向の両側のうち少なくとも前記第2振幅制限装置が配置される側に設けられ、振動を受けた前記錘体と前記第2振幅制限装置との衝突による衝撃力によって磁歪部材が伸長または圧縮することで発電する第2振動電力変換部と、を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の振動発電装置。
【請求項4】
前記第2振幅制限装置が前記第2揺動ビームの両端に固定された一対の錘体の移動方向にそれぞれ配置されるとともに、
前記第2振動電力変換部が前記第2揺動ビームの前記支点を挟んで長手方向の両側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項3記載の振動発電装置。
【請求項5】
前記第1振動電力変換部は、前記長手方向に延在する第1磁歪棒と、この第1磁歪棒に対して前記長手方向に直行する方向に平行に配置された第1磁性部材と、これら第1磁歪棒及び第1磁性部材を磁気的に連結する第1連結部材と、前記第1磁歪棒に巻装された第1磁気コイルと、を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の振動発電装置。
【請求項6】
前記第1磁歪棒の両端のうち少なくとも一方端に配置され、前記第1磁歪部材と前記第1磁性部材とに磁気バイアスを供給する第1永久磁石を備えていることを特徴とする請求項5記載の振動発電装置。
【請求項7】
前記第2振動電力変換部は、前記長手方向に延在する第2磁歪棒と、この第2磁歪棒に対して前記長手方向に直行する方向に平行に配置された第2磁性部材と、これら第2磁歪棒及び第2磁性部材を磁気的に連結する第2連結部材と、前記第2磁歪棒に巻装された第2磁気コイルと、を備えていることを特徴とする請求項3又は4記載の振動発電装置。
【請求項8】
前記第2磁歪棒の両端のうち少なくとも一方端に配置され、前記第2磁歪部材と前記第2磁性部材とに磁気バイアスを供給する第2永久磁石を備えていることを特徴とする請求項7記載の振動発電装置。
【請求項9】
前記振幅制限装置は、前記錘体の衝突による衝撃力を受ける変位部材と、この変位部材を保持するバネ部材とで構成され、当該バネ部材は、自身のバネ復元力により前記錘体が衝突した方向に対して逆方向に前記錘体を押し戻す力を作用することを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の振動発電装置。
【請求項10】
前記振幅制限装置は、磁歪部材と、この磁歪部材に巻装された磁気コイルと、磁歪部材との間に磁路を形成する磁気ヨークと、前記錘体の衝突による衝撃力を前記磁歪部材に伝達する変位部材と、を備えていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の振動発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高速道路や橋梁などに設置したセンサ類に電源を供給可能な振動によって発電する振動発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振動を利用した発電技術としては、圧電素子を利用した方法がよく知られている。圧電素子を利用した発電方法の多くは、圧電素子に何らかの方法で外部から力を加えることにより、圧電素子を変形させて発電するものである。
圧電素子を利用した振動力発電装置として、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1では、音による空気の圧力変動を利用して圧電素子により発電する音力発電装置、および、振動による圧力変動を利用して圧電素子により発電する振動力発電装置が記載されている。
また、圧電素子に代えて磁歪素子を利用した発電方法も提案されている。磁歪素子を利用した発電方法として、例えば、特許文献2に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献2の磁歪素子を利用した振動発電装置は、図7(a)及び(b)に示す発電素子100を備えている。なお、図7(a)は発電素子100を示す上面図であり、図7(b)は発電素子100を示す側面図である。
発電素子100は、連結ヨーク100aおよび100bと、連結ヨーク100aおよび100bに平行に支持された磁歪棒110aおよび110bと、各磁歪棒110aおよび110bに巻装されたコイル120aおよび120bと、連結ヨーク100a及び100bに永久磁石140aおよび140bを介して連結されたバックヨーク150とを備えている。
【0004】
この発電素子100を、図8に示すように、連結ヨーク100aを固定部に固定して方持ち梁構造とし、連結ヨーク100bに発電素子100の軸方向と直交する方向に曲げ応力Pを印加することにより、磁歪棒110aおよび110bが曲げ変形される。これにより磁歪棒110aおよび110bに発生する逆磁歪効果によって、コイル120aおよび120bを貫く磁束が変化することで、コイル120aおよび120bに誘導電圧(または誘導電力)が発生する。これにより発電素子100に振動を印加することで発電が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−166694号公報
【特許文献2】特許第4905820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された圧電素子を利用した振動力発電装置は、圧電素子を構成する圧電材料が脆性材料であり、曲げや衝撃に対して弱い材料である。そのため、過度な負荷を加えることはできず、発電量を増加するために大きな曲げや衝撃を加えることが困難であるという問題点がある。また、圧電素子は低周波数でインピーダンスが高く、圧電素子より低いインピーダンスを有する負荷を接続した際に、負荷に発生する電圧が小さくなるため、発電により得られる電力が小さくなり、発電の効率が低いという問題点もある。
【0007】
一方、特許文献2に記載されている磁歪棒110aおよび110bを構成する磁歪材料は延性材料であり、圧電材料に比べて曲げや衝撃に強いため、大きな曲げや衝撃を加えることで発電量を増加することが可能である。また、発電素子のインピーダンスが圧電材料よりも低いことから、インピーダンスの低い負荷の接続による発電効率の低下が少なく、前述した圧電材料の問題点を解決することができる。
【0008】
しかし、特許文献2に記載された振動発電装置は、振動しながら磁歪棒のバネ変形を発生させて発電するために振動源から大きな加振力を必要とするため、振動エネルギーの吸収が悪く発電効率が低下するという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、発電効率を高めることができる振動発電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る振動発電装置は、振動源から振動を受ける支持体と、この支持体に設けた支点を介して長手方向中間部が支持され、振動を受けることで上記支点回りに揺動する第1揺動ビームと、この第1揺動ビームの両端に固定された一対の錘体と、これら一対の錘体のうち少なくとも一方の錘体の移動方向に配置され、この錘体との衝突により上記第1揺動ビームの振幅を制限する第1振幅制限装置と、上記第1揺動ビームの上記支点を挟んで長手方向の両側のうち少なくとも上記第1振幅制限装置が配置される側に設けられ、振動を受けた錘体と上記第1振幅制限装置との衝突による衝撃力によって磁歪部材が伸長または圧縮することで発電する第1振動電力変換部とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る振動発電装置によれば、振動源から振動が伝達されると第1揺動ビームが支点を回動中心として揺動し、第1揺動ビームの両端に固定した一対の錘体のうち少なくとも一方の錘体の移動方向に設けた第1振幅制限装置に当該錘体が衝突することで、第1揺動ビームの長手方向の両側のうち少なくとも上記第1振幅制限装置が配置される側に設けた第1振動電力変換部が振動発電を行うので、発電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る第1実施形態の振動発電装置を示す図である。
図2】第1実施形態の振動発電装置を構成する磁歪部材が圧縮変形する状態を示す図である。
図3】第1実施形態の振動発電装置を構成する磁歪部材が伸長変形する状態を示す図である。
図4】本発明に係る第2実施形態の振動発電装置における振幅制限装置を示す図である。
図5】本発明に係る第3実施形態の振動発電装置を示す図である。
図6】本発明に係る第1実施形態の振動発電装置における電源回路の構成例を示す図である。
図7】従来の発電素子の構成を示す図である。
図8図7に示した発電素子による発電装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
[実施形態1]
図1は、本発明に係る第1実施形態の振動発電装置を示す正面図である。
図1に示す第1実施形態の振動発電装置1は、振動源2の上部に固定された装置ケース3と、装置ケース3の底部3aから立ち上がっている支柱4と、支柱4の上部に設けたピン5に長手方向中間部が回動自在に支持され、鉛直振動を受けることでピン5を回動中心として揺動する天秤棒状の揺動ビーム6と、揺動ビーム6の長手方向両端に固定されている一対の錘体7、8と、錘体7の移動方向に対応する装置ケース2の上壁3b及び底部3aに配置した振幅制限装置9,10と、錘体8の移動方向に対応する装置ケース2の上壁3b及び底部3aに配置した振幅制限装置11,12と、揺動ビーム6の長手方向の両側に設けた一対の振動電力変換部13,14と、電源回路201と、を備えている。
【0014】
揺動ビーム6は磁性材料からなる部材であり、この揺動ビーム6の長手方向の両側に幅方向の一側を長手方向に延長して切り欠くことで一対の切り欠き部6a,6bが形成されているとともに、これら切り欠き部6a,6bに沿って長手方向に延在する磁性棒状部6c,6dが形成されている。
一方の切り欠き部6aの長手方向両縁部6e,6fには、両端部に磁気バイアス供給用の永久磁石15,16を固定した磁歪棒17が磁性棒状部6cに平行に延在して固定されているとともに、磁歪棒17には磁気コイル18が巻装されている。磁気コイル18は電源回路201に接続されている。
【0015】
また、他方の切り欠き部6bの長手方向両縁部6g,6hには、両端部に磁気バイアス供給用の永久磁石19,20を固定した磁歪棒21が磁性棒状部6dに平行に延在して固定されているとともに、磁歪棒21には磁気コイル22が巻装されている。磁気コイル22は電源回路201に接続されている。
ここで、磁歪棒17,21は、鉄ガリウム合金や鉄コバルト合金からなる部材である。永久磁石15,16,19,20はバイアス磁界を発生するものである。永久磁石15,16は例えば左端側がS極,右端側がN極に着磁され、永久磁石19,20は例えば左端側がN極,右端側がS極に着磁されている。
【0016】
これにより、一対の振動電力変換部13,14の一方の振動電力変換部13は、長手方向に延在する磁性棒状部6cと、磁歪棒17と、これら磁性棒状部6c及び磁歪棒17を磁気的に連結する揺動ビーム6(長手方向両縁部6e,6f)と、磁気コイル18とで構成され、永久磁石15のN極から出る磁束が磁歪棒17を通過し、永久磁石16、磁性棒状部6cを通って永久磁石15のS極に達する磁路が形成される。
【0017】
また、他方の振動電力変換部14は、長手方向に延在する磁性棒状部6dと、磁歪棒21と、これら磁性棒状部6d及び磁歪棒21を磁気的に連結する揺動ビーム6(長手方向両縁部6g,6h)と、磁気コイル22とで構成され、永久磁石19のN極から出る磁束が磁歪棒21を通過し、永久磁石20、磁性棒状部6dを通って永久磁石19のS極に達する磁路が形成される。
【0018】
なお、搖動ビーム6は全体が磁性材料からなる構成に限定されるものではなく、揺動ビーム44の長手方向の両側において各磁歪棒17,21に対応してそれぞれ磁気回路のループを形成することができる構造となっていればよい。
振幅制限装置9,10は、揺動ビーム6の長手方向の一端に固定した錘体7に当接する変位部材23と、この変位部材23を保持して上壁3b及び底部3aに固定されたコイルスプリング24とで構成されている。また、振幅制限装置11,12も、揺動ビーム6の長手方向の他端に固定した錘体8に当接する変位部材23と、変位部材23を保持して上壁3b及び底部3aに固定されているコイルスプリング24を備えている。これら振幅制限装置9〜12のコイルスプリング24は、揺動ビーム6がピン5を回動中心として揺動し、錘体7,8が変位部材23に衝突したときに弾性伸縮することで揺動ビーム6の振幅を制限するとともに、自身のバネ復元力により、衝突した方向に対して逆方向に向かう力を錘体7,8に付与する。
【0019】
ここで、本発明に係る支持体が支柱4に対応し、本発明に係る支点がピン5に対応し、本発明に係る第1揺動ビームが揺動ビーム6に対応し、本発明に係る第1振幅制限装置が振幅制限装置9〜12に対応し、本発明に係る第1振動電力変換部が振動電力変換部13,14に対応し、本発明に係るバネ部材がコイルスプリング24に対応している。
第1実施形態の振動発電装置1で用いられる電源回路201の構成について説明する。図6は、本発明の第1実施形態に係る電源回路の構成例を示す図である。図6において、202a,202bは磁気コイル18,22(コイル巻線)に発生する交流電圧を整流する整流手段、203a,203bは整流手段202a,202bの各整流信号を平滑する平滑手段、205は二次電池やコンデンサで構成される蓄電手段、206は蓄電手段205に蓄電した電力を出力端子207に出力する出力手段である。204は平滑手段203a,203bで平滑した直流電圧を蓄電手段205に蓄電させるとともに、蓄電手段205に蓄電された電力を出力回路206に供給する制御を行う制御手段である。
【0020】
次に、上述した第1実施形態の動作及び効果について、図1及び図2を参照して説明する。
例えば、高速道路や橋梁では、老朽化が進むことから、加速度センサ、振動センサ、腐食センサ等の構造ヘルスモニタリングセンサを配置して劣化傾向を把握する必要がある。
これら構造ヘルスモニタリングセンサには、電源を必要とするが、蓄電池では寿命があることから定期的な交換が必要となり、その管理が煩雑となる。このため、構造ヘルスモニタリングセンサの電源として振動発電装置1を適用する。
【0021】
本実施形態は、高速道路や橋梁を振動源2とし、振動源2上に振動発電装置1を設置する。
振動源2から装置ケース3に振動が伝達されていない状態では、図1に示すように、揺動ビーム6は、ピン5を回動中心として揺動することなく水平状態に保持される。このビーム6の水平状態では、一対の振動電力変換部13,14の磁歪棒17,21が伸縮変形せず磁力線が変化しないので、磁気コイル18,22(コイル巻線)から電圧(電力)は出力されることがない。
【0022】
この状態で、高速道路又は橋梁(振動源2)に車両が通過すると振動発電装置1に振動が伝達される。
振動源2の鉛直方向の振動エネルギーが振動発電装置1の装置ケース3に伝達されると、振動エネルギーが支柱4を介して伝達された揺動ビーム6は、ピン5を回動中心として揺動し、揺動ビーム6の両端部に固定した一対の錘体7,8が一次モードの共振状態となる。
【0023】
そして、図2に示すように、揺動ビーム6の揺動により錘体7が底部3a上の振幅制限装置10に衝突すると、振幅制限装置10の変位部材23から揺動ビーム6に反力が入力することで、振動電力変換部13の磁歪棒17が圧縮方向に変形する。
錘体7が衝突した振幅制限装置10のコイルスプリング24は、弾性伸縮することで揺動ビーム6の振幅を制限するとともに、自身のバネ復元力によって衝突した方向に対して逆方向の押し上げ力を錘体7に付与し、揺動ビーム6に揺動推進力(ピン5を回動中心とした回転動作)を作用する。
【0024】
また、図3に示すように、揺動ビーム6の揺動により錘体7が上壁3b上の振幅制限装置9に衝突すると、振幅制限装置9の変位部材23から揺動ビーム6に反力が入力することで、振動電力変換部13の磁歪棒17が伸長方向に変形する。
錘体7が衝突した振幅制限装置9のコイルスプリング24は、弾性伸縮することで揺動ビーム6の振幅を制限するとともに、自身のバネ復元力によって衝突した方向に対して逆方向の押し下げ力を錘体7に付与し、揺動ビーム6に揺動推進力を作用する。
【0025】
また、図示しないが、揺動ビーム6の揺動により錘体8が底部3a上の振幅制限装置12に衝突すると、振幅制限装置12の変位部材23から揺動ビーム6に反力が入力することで、振動電力変換部14の磁歪棒21が圧縮方向に変形する。
また、錘体8が衝突した振幅制限装置12のコイルスプリング24は、弾性伸縮することで揺動ビーム6の振幅を制限するとともに、自身のバネ復元力によって衝突した方向に対して逆方向の押し上げ力を錘体8に付与し、揺動ビーム6に揺動推進力を作用する。
【0026】
また、図示しないが、揺動ビーム6の揺動により錘体8が上壁3b上の振幅制限装置11に衝突すると、振幅制限装置11の変位部材23から揺動ビーム6に反力が入力することで、振動電力変換部14の磁歪棒21が伸長方向に変形する。
また、錘体8が衝突した振幅制限装置11のコイルスプリング24は、弾性伸縮することで揺動ビーム6の振幅を制限するとともに、自身のバネ復元力によって衝突した方向に対して逆方向の押し下げ力を錘体8に付与し、揺動ビーム6に揺動推進力を作用する。
【0027】
このように一対の振動電力変換部13,14は、それぞれの磁歪棒17,21に伸長と圧縮が繰り返し作用することになり、逆磁歪効果によって磁力線が交番状に変化する。この磁力線の変化が電磁誘導の法則によって、一対の振動電力変換部13,14の磁気コイル18,22(コイル巻線)に誘起電圧(誘起電力)を発生させて振動発電を行うことができる。
【0028】
したがって、本実施形態の振動発電装置1は、高速道路や橋梁(振動源2)から振動が伝達されると揺動ビーム6がピン5を回動中心として揺動し、揺動ビーム6の両端に固定した錘体7,8の移動方向に設けた振幅制限装置9〜12の何れかに衝突することで、一対の振動電力変換部13,14が振動発電を行うので、この振動発電装置1で発生した電力を環境ヘルスモニタリングセンサに動作電源として供給することができ、これら環境ヘルスモニタリングセンサを作動させることができる。
【0029】
また、本実施形態の振動発電装置1は、揺動ビーム6の揺動により一対の振動電力変換部13,14が同時に振動発電を行うので、発電効率を向上させることができる。
また、揺動ビーム6がピン5を回動中心として揺動するだけで、一対の振動電力変換部13,14の振動発電が行われるので、低周波数領域の振動に対して共振現象を生じさせて確実に発電することができる。
【0030】
また、一対の振動電力変換部13,14を構成する磁歪棒17,21は延性材料であり、圧電材料に比べて曲げや衝撃に強いため、大きな曲げや衝撃を加えることで発電量を増加することが可能である。
さらに、本実施形態における振幅制限装置9〜12を構成するコイルスプリング24は、自身のバネ復元力によって衝突した方向に対して逆方向の押し力を錘体7,8に付与することで揺動ビーム6に揺動推進力を作用し、長時間の間、揺動ビーム6が揺動動作を繰り返すことで錘体7,8が振幅制限装置9〜12に衝突して一対の振動電力変換部13,14が振動発電を行うので、さらに発電効率を高めることができる。
【0031】
なお、図1では、振幅制限装置として、錘体7の移動方向に対応する装置ケース2の上壁3b及び底部3aに配置した振幅制限装置9,10と、錘体8の移動方向に対応する装置ケース2の上壁3b及び底部3aに配置した振幅制限装置11,12との両方を備えた構成を示しているが、このような構成に限定されるものではない。すなわち、一対の錘体のうち一方の錘体の移動方向に対応する位置にのみ振幅制限装置を配置した構成、例えば錘体7の移動方向に対応する装置ケース2の上壁3b及び底部3aに配置した振幅制限装置9,10だけを備える構成とすることもできる。
【0032】
また、図1では、振動電力変換部として、揺動ビーム6の長手方向の両側に一対の振動電力変換部13,14を設けた構成を示したが、このような構成に限定されるものではない。すなわち、揺動ビーム6の長手方向の両側のうち一方側にのみ振動電力変換部を設けた構成、例えば振動電力変換部13だけを設けた構成とすることもできる。
なお、上述のように一対の錘体のうち一方の錘体の移動方向に対応する位置にのみ振幅制限装置を配置した構成においては、振動電力変換部は、揺動ビーム6の長手方向の両側のうち上記振幅制限装置が配置される側に設けるようにする。
【0033】
また、図1では、例えば振動電力変換部13における磁歪棒17の両端に磁気バイアス供給用の永久磁石15,16を配置した構成を示したが、このような構成に限定されるものではなく、磁歪棒17の一方端にのみ磁気バイアス供給用の永久磁石を配置した構成としてもよい。この点は振動電力変換部14も同様である。
また、図1では、例えば振動電力変換部13における磁歪棒17に磁気コイル18が巻装されている構成を示したが、振動電力変換部において磁気コイルを巻装する位置は磁歪棒のみに限定されるものではなく、磁歪棒とともに磁路を形成する他の部材に巻装してもよい。すなわち、振動電力変換部13において例えば磁性棒状部6cに磁気コイルを巻装してもよく、磁歪棒17と磁性棒状部6cの両方に磁気コイルを巻装してもよい。この点は振動電力変換部14も同様である。
【0034】
また、本実施形態の振動発電装置1は、揺動ビーム6がその長手方向においてピン5による支持点を中心とした対称構造であって、搖動ビーム6の長手方向両端に固定されている錘体7の質量と錘体8の質量とが互いに等しい構成に限定されるものではなく、搖動ビーム6の長手方向の両側におけるピン5を回動中心とするモーメントが互いに等しい天秤構造となっていればよい。例えば、図1の揺動ビーム6の長手方向におけるピン5による支持点の一方側(例えば左側)の部分の長さを他方側(例えば右側)の部分に比べてより長くするとともに、これに合わせて、両側のモーメントが等しくなるように、他方側(例えば右側)の錘体(錘体8)の質量を一方側(例えば左側)の錘体(錘体7)に比べてより大きくした非対称構造の構成とすることもできる。ここで、以下では、非対称構造の揺動ビーム6の長手方向におけるピン5による支持点の一方側と他方側とのうち、他方側の部分に比べてより長くした一方側の部分を「長腕部」と称するとともに、上記他方側の部分を「短腕部」と称する。また、対称構造の揺動ビーム6の長手方向におけるピン5による支持点の両側の部分をそれぞれ「腕部」と称する。
【0035】
上記非対称構造の構成においては、さらに、揺動ビーム6の長腕部側にのみ振動電力変換部(例えば振動電力変換部13)を設けた構成とすることもできる。ここで、揺動ビーム6の全長が非対称構造と対称構造とで同じである場合、非対称構造の揺動ビーム6の長腕部は、対称構造の揺動ビーム6の腕部より長くなる。このため、非対称構造の揺動ビーム6の長腕部の端部に固定された錘体(例えば錘体7)の質量が、対称構造の揺動ビーム6の腕部の端部に固定された錘体の質量と同じである場合、当該錘体(例えば錘体7)と振幅制限装置(例えば振幅制限装置9,10)との衝撃力が対称構造の構成に比べてより大きくなる。これにより、非対称構造であって、かつ、揺動ビーム6の長腕部側にのみ振動電力変換部を設けた構成では、振動電力変換部1個当たりの発電能力は対称構造の構成に比べてより高くなる。
【0036】
また、上記のような、非対称構造であって、かつ、揺動ビーム6の長腕部側にのみ振動電力変換部を設けた構成は、振動電力変換部を1個だけ設ける構成であるため、振動電力変換部を2個設けた対称構造の構成に比べてより簡素な、かつ、より低コストの構成になる。
また、上記のような、非対称構造であって、かつ、揺動ビーム6の長腕部側にのみ振動電力変換部を設けた構成は、揺動ビーム6の長腕部側に対してのみ振幅制限装置を設ければよいため、この点でも、振動電力変換部を2個設けた対称構造の構成に比べてより簡素な、かつ、より低コストの構成になる。
また、上記のような、非対称構造であって、かつ、揺動ビーム6の長腕部側にのみ振動電力変換部を設けた構成は、振動電力変換部を1個だけ設ける構成であるため、電源回路201(図6参照)における整流手段、平滑手段が1系統だけで済むので、この点でも、振動電力変換部を2個設けた対称構造の構成に比べてより簡素な、かつ、より低コストの構成になる。
【0037】
[実施形態2]
次に、図4は、本発明に係る第2実施形態の振動発電装置における振幅制限装置を示す図である。第2実施形態における振幅制限装置は、第1実施形態で示した振幅制限装置9〜12とは異なる構造の振幅制限装置25である。本実施形態の振動発電装置の構成は、振幅制限装置の構造以外の点では、第1実施形態の振動発電装置の構成と同様である。
本実施形態は、図1で示した第1実施形態の振幅制限装置9〜12と同様に、揺動ビーム6の長手方向両端に固定されている一対の錘体7、8の一方の錘体7の移動方向に対応する装置ケース2の上壁3b及び底部3aに2個の振幅制限装置25が配置され、他方の錘体8の移動方向に対応する装置ケース2の上壁3b及び底部3aに2個の振幅制限装置25が配置されている。
【0038】
本実施形態の振幅制限装置25は、磁性材料で形成した有底筒形状の装置ケース26と、磁性材料で形成した開口部27aを有する蓋部27と、装置ケース26の底部に配置したリング形状の永久磁石28と、永久磁石28の上部の装置ケース26内に収容された鉄ガリウム合金や鉄コバルト合金からなる磁歪部材29と、磁歪部材29の外周に巻装された磁気コイル30と、装置ケース26の上部に配置したリング形状の永久磁石31と、磁歪部材29に接触し、蓋部27の開口部27aを通過して外部に突出している変位部材32と、を備えている。
【0039】
磁気バイアス供給用として設けられる永久磁石28,31は上記のようにリング形状、すなわち中空形状であって、磁気コイル30と装置ケース26と蓋部27とからなる上部空間、および、磁気コイル30と装置ケース26とからなる下部空間にそれぞれ収まるようにして配置されており、変位部材32の変位方向に着磁されている。装置ケース26の上部に配置されている永久磁石31は例えば上端側がS極、下端側がN極に着磁され、装置ケース26の底部に配置されている永久磁石28は例えば上端側がS極、下端側がN極に着磁されている。これにより、変位部材32と磁歪部材棒29と装置ケース26と蓋部27とからなる磁路において、永久磁石28,31は磁気抵抗にならず効率よくバイアス磁界を印加することができる。
【0040】
なお、本発明に係る磁気ヨークが、装置ケース26及び蓋部27に対応している。
本実施形態は、図1で示した第1実施形態の振幅制限装置9〜12と同様に、揺動
本実施形態の振幅制限装置25を、図1の振幅制限装置9〜12に代えて配置すると、振動源2から鉛直方向の振動エネルギーが振動発電装置1の装置ケース3に伝達された際に、振動エネルギーが支柱4を介して伝達された揺動ビーム6がピン5を回動中心として揺動し、揺動ビーム6の両端部に固定した一対の錘体7,8が一次モードの共振状態となる。
【0041】
そして、揺動ビーム6の揺動により一対の錘体7,8が底部3a及び上壁3bに配置した振幅制限装置25の変位部材32に衝突すると、変位部材32が磁歪部材29に圧縮変形を作用する。この磁歪部材29の圧縮変形により磁力線が変化し、電磁誘導の法則によって、振幅制限装置25の磁気コイル30(コイル巻線)に誘起電圧(誘起電力)が発生して振動発電が行われる。
このように、揺動ビーム6の揺動により四個の振幅制限装置25が一対の錘体7,8に衝突することで、四個の振幅制限装置25のそれぞれが、誘起電圧(誘起電力)を発生して振動発電を行う。
【0042】
したがって、本実施形態の振幅制限装置25を、図1の振動発電装置1の振幅制限装置9〜12に代えて装着すると、揺動ビーム6の揺動により一対の振動電力変換部13,14が同時に振動発電を行うとともに、磁歪部材29と、磁歪部材29に巻装した磁気コイル30と、永久磁石28,31と、磁気ヨーク(装置ケース26、蓋部27)と、一対の錘体7,8の衝突を磁歪部材29に伝達する変位部材32とを備えた四個の振幅制限装置25がそれぞれ振動発電を行うので、さらに発電効率を向上させることができる。
【0043】
なお、変位部材32の形成部材が磁性材料でなくても、振幅制限装置25は振動発電の機能を奏するが、変位部材32と磁歪部材棒29と装置ケース26と蓋部27とから磁路、すなわち磁気閉ループを構成した方が発電効率の向上につながるので、装置ケース28および蓋部27と同様に変位部材32の形成材料も磁性材料とした方が好適である。
ここで、第2実施形態の振動発電装置で用いられる電源回路の回路ブロック構成は、第1実施形態の振動発電装置1で用いられる電源回路201と同様であり、その回路ブロック構成の図示は省略する。なお、第2実施形態のように、図1に示した第1実施形態の振動発電装置1における振幅制限装置9〜12を振幅制限装置25に置き換えた構成では、揺動ビーム6の揺動により四個の振幅制限装置25が一対の錘体7,8に衝突することで、振動電力変換部13,14に加えて、四個の振幅制限装置25もそれぞれ誘起電圧(誘起電力)を発生して振動発電を行なう。このため、振動電力変換部13,14の磁気コイル18,22(コイル巻線)に対応する整流手段202a,202bおよび平滑手段203a,203bに加えて、四個の振幅制限装置25の磁気コイル30(コイル巻線)に発生する各交流電圧をそれぞれ整流する4個の整流手段、および、これら4個の整流手段の各整流信号をそれぞれ平滑する4個の平滑手段を更に設ける。蓄電手段および出力手段は、振動電力変換部13,14に対応する2個の平滑手段203a,203bと、四個の振幅制限装置25に対応する4個の平滑手段とに対して共通の1系統(図6における蓄電手段205、出力手段206)でよい。
【0044】
また、図4では、磁気バイアス供給用の永久磁石として、リング形状の永久磁石28,31が、磁気コイル30と装置ケース26と蓋部27とからなる上部空間、および、磁気コイル30と装置ケース26とからなる下部空間にそれぞれ収まるようにして配置された構成を示したが、このような構成に限定されるものではない。すなわち、リング形状の永久磁石が1個だけ、磁気コイル30と装置ケース26と蓋部27とからなる上部空間、または、磁気コイル30と装置ケース26とからなる下部空間のいずれかに収まるようにして配置された構成としてもよい。また、磁気バイアス供給用の永久磁石を例えば装置ケース26と蓋部27との間に介装した構成とすることもできるが、磁気バイアス供給用の永久磁石が磁歪部材棒29を含む磁路における磁気抵抗にならないようにする上では、図4に示した振幅制限装置25の構成が好適である。
【0045】
[実施形態3]
次に、図5は、本発明に係る第3実施形態の振動発電装置を示す正面図である。
なお、第1実施形態で示した鉛直振動を受けることで揺動する天秤棒状の揺動ビーム6と、この揺動ビーム6に関連する部材は同一符号を付して説明は省略する。
本実施形態の振動発電装置40は、振動源2の上部に固定された装置ケース41と、装置ケース41から立ち上がっている支柱42と、支柱42に設けたピン43に長手方向中間部が回動自在に支持され、鉛直振動を受けることでピン43を回動中心として揺動する天秤棒状の揺動ビーム6と、揺動ビーム6の長手方向両端に固定されている一対の錘体7、8と、錘体7の移動方向に対応する装置ケース41に配置した振幅制限装置9,10と、錘体8の移動方向に対応する装置ケース41に配置した振幅制限装置11,12と、揺動ビーム6の長手方向の両側に設けた一対の振動電力変換部13,14と、支柱42に設けたピン43に長手方向中間部が回動自在に支持され、水平振動を受けることでピン43を回動中心として揺動する揺動ビーム44と、揺動ビーム44の長手方向両端に固定されている一対の錘体45、46と、錘体45の移動方向に対応する装置ケース41に互いに水平方向に配置した振幅制限装置47,48と、錘体46の移動方向に対応する装置ケース41に互いに水平方向に配置した振幅制限装置49,50と、揺動ビーム44の長手方向の両側に設けた一対の振動電力変換部51,52と、電源回路201Bと、を備えている。
【0046】
揺動ビーム44は磁性材料からなる部材であり、装置ケース41内に鉛直方向に延在して配置されている。
また、搖動ビーム6と搖動ビーム44とは、直交した状態で互いが固定された十字構造とすることもできるが、振動の干渉効果が発生することを防止するため、互いが固定されない構造とすることが好適である。
【0047】
この揺動ビーム44の長手方向の両側に幅方向の一側を長手方向に延長して切り欠くことで一対の切り欠き部44a,44bが形成され、これら切り欠き部44a,44bに沿って長手方向に延在する磁性棒状部44c,44dが形成されている。
一方の切り欠き部44aの長手方向両縁部44e,44fには、両端部に磁気バイアス供給用の永久磁石53,54を固定した磁歪棒55が磁性棒状部44cに平行に延在して固定されているとともに、磁歪棒55には磁気コイル56が巻装されている。磁気コイル56は電源回路201Aに接続されている。
【0048】
また、他方の切り欠き部44bの長手方向両縁部44g,44hには、両端部に磁気バイアス供給用の永久磁石57,58を固定した磁歪棒59が磁性棒状部44dに平行に延在して固定されているとともに、磁歪棒59には磁気コイル60が巻装されている。磁気コイル60は電源回路201Aに接続されている。
磁歪棒55,59は、鉄ガリウム合金や鉄コバルト合金からなる部材である。り、永久磁石53,54,57,58はバイアス磁界を発生するものである。永久磁石53,54は例えば上端側がS極,下端側がN極に着磁され、永久磁石57,58は例えば上端側がN極,下端側がS極に着磁されている。
【0049】
これにより、一対の振動電力変換部51,52の一方の振動電力変換部51は、長手方向に延在する磁性棒状部44cと、磁歪棒55と、これら磁性棒状部44c及び磁歪棒55を磁気的に連結する揺動ビーム44(長手方向両縁部44e,44f)と、磁気コイル56とで構成され、永久磁石53のN極から出る磁束が磁歪棒55を通過し、永久磁石54、磁性棒状部44cを通って永久磁石53のS極に達する磁路が形成される。
【0050】
また、他方の振動電力変換部52は、長手方向に延在する磁性棒状部44dと、磁歪棒59と、これら磁性棒状部44d及び磁歪棒59を磁気的に連結する揺動ビーム44(長手方向両縁部44g,44h)と、磁気コイル60とで構成され、永久磁石57のN極から出る磁束が磁歪棒59を通過し、永久磁石58、磁性棒状部44dを通って永久磁石57のS極に達する磁路が形成される。
【0051】
なお、搖動ビーム44は全体が磁性材料からなる構成に限定されるものではなく、揺動ビーム44の長手方向の両側において各磁歪棒55,59に対応してそれぞれ磁気回路のループを形成することができる構造となっていればよい。
振幅制限装置47,48は、鉛直方向に延在している揺動ビーム44の上端に固定されて錘体45に当接する変位部材23と、この変位部材23を保持して装置ケース41の内壁に固定されたコイルスプリング24とで構成されている。また、振幅制限装置49,50も、揺動ビーム44の下端に固定されて錘体46に当接する変位部材23と、変位部材23を保持して装置ケース41の内壁に固定されているコイルスプリング24を備えている。これら振幅制限装置47〜50のコイルスプリング24は、揺動ビーム44がピン43を回動中心として揺動し、錘体45,46が変位部材23に衝突したときに弾性伸縮することで揺動ビーム44の振幅を制限するとともに、自身のバネ復元力により、衝突した方向に対して逆方向に向かう力を錘体45,46に付与する。
【0052】
ここで、本発明に係る支持体が支柱42に対応し、本発明に係る支点がピン43に対応し、本発明に係る第2揺動ビームが揺動ビーム44に対応し、本発明に係る第2振幅制限装置が振幅制限装置47〜50に対応し、本発明に係る第2振動電力変換部が振動電力変換部51,52に対応している。
第3実施形態の振動発電装置40で用いられる電源回路201Aの回路ブロック構成は、第1実施形態の振動発電装置1で用いられる電源回路201と同様であり、その回路ブロック構成の図示は省略する。なお、第3実施形態の振動発電装置40では、振動電力変換部13,14に加えて、振動電力変換部51,52も備えている。このため、振動電力変換部13,14の磁気コイル18,22(コイル巻線)に対応する整流手段202a,202bおよび平滑手段203a,203bに加えて、振動電力変換部51,52の磁気コイル56,60(コイル巻線)に発生する各交流電圧をそれぞれ整流する2個の整流手段、および、これら2個の整流手段の各整流信号をそれぞれ平滑する2個の平滑手段を更に設ける。蓄電手段および出力手段は、振動電力変換部13,14に対応する2個の平滑手段203a,203bと、振動電力変換部51,52に対応する2個の平滑手段とに対して共通の1系統(図6における蓄電手段205、出力手段206)でよい。
【0053】
次に、上述した第3実施形態の動作及び効果について説明する。
本実施形態の振動発電装置40を、振動源2(高速道路や橋梁)に設置すると、振動源2から伝達される鉛直方向の振動エネルギーは、揺動ビーム6がピン43を回動中心として揺動し、揺動ビーム6の両端に固定した錘体7,8の移動方向に設けた振幅制限装置9〜12の何れかに衝突することで、一対の振動電力変換部13,14が振動発電を行う。
【0054】
また、振動源2から水平方向の振動エネルギーが伝達されると、支柱42を介して振動エネルギーが伝達された揺動ビーム44は、ピン43を回動中心として揺動し、揺動ビーム44の両端部に固定した一対の錘体45,46が一次モードの共振状態となる。
そして、揺動ビーム44の揺動により錘体45が振幅制限装置47に衝突すると、振幅制限装置47の変位部材23から揺動ビーム44に反力が入力することで、振動電力変換部51の磁歪棒55が圧縮方向に変形する。
【0055】
錘体45が衝突した振幅制限装置47のコイルスプリング24は、弾性伸縮することで揺動ビーム44の振幅を制限するとともに、自身のバネ復元力によって衝突した方向に対して逆方向の押し上げ力を錘体45に付与し、揺動ビーム44に揺動推進力(ピン43を回動中心とした回転動作)を作用する。
また、揺動ビーム44の揺動により錘体45が振幅制限装置48に衝突すると、振幅制限装置48の変位部材23から揺動ビーム44に反力が入力することで、振動電力変換部51の磁歪棒55が伸長方向に変形する。
【0056】
錘体45が衝突した振幅制限装置48のコイルスプリング24は、弾性伸縮することで揺動ビーム44の振幅を制限するとともに、自身のバネ復元力によって衝突した方向に対して逆方向の押し下げ力を錘体45に付与し、揺動ビーム44に揺動推進力を作用する。
また、揺動ビーム44の揺動により錘体46が振幅制限装置49に衝突すると、振幅制限装置49の変位部材23から揺動ビーム44に反力が入力することで、振動電力変換部52の磁歪棒59が圧縮方向に変形する。
【0057】
また、錘体46が衝突した振幅制限装置49のコイルスプリング24は、弾性伸縮することで揺動ビーム44の振幅を制限するとともに、自身のバネ復元力によって衝突した方向に対して逆方向の押し上げ力を錘体46に付与し、揺動ビーム44に揺動推進力を作用する。
また、揺動ビーム44の揺動により錘体46が振幅制限装置50に衝突すると、振幅制限装置50の変位部材23から揺動ビーム44に反力が入力することで、振動電力変換部52の磁歪棒59が伸長方向に変形する。
【0058】
また、錘体46が衝突した振幅制限装置50のコイルスプリング24は、弾性伸縮することで揺動ビーム44の振幅を制限するとともに、自身のバネ復元力によって衝突した方向に対して逆方向の押し下げ力を錘体46に付与し、揺動ビーム44に揺動推進力を作用する。
このように、鉛直方向に配置した揺動ビーム44の一対の振動電力変換部51,52が、それぞれの磁歪棒55,59に伸長と圧縮が繰り返し作用することになり、逆磁歪効果によって磁力線が交番状に変化する。この磁力線の変化が電磁誘導の法則によって、一対の振動電力変換部51,52の磁気コイル56,60(コイル巻線)に誘起電圧(誘起電力)を発生させて振動発電を行うことができる。
【0059】
したがって、本実施形態の振動発電装置40は、高速道路や橋梁などの振動源2から鉛直振動が伝達されると、揺動ビーム6がピン43を回動中心として揺動して振幅制限装置9〜12の何れかに衝突することで一対の振動電力変換部13,14が振動発電を行い、振動源2から水平振動が伝達されると、揺動ビーム44がピン43を回動中心として揺動して振幅制限装置47〜50の何れかに衝突することで一対の振動電力変換部51,52が振動発電を行うので、振動源3からの任意の方向からの振動に対して効率よく発電を行うことができる。
【0060】
なお、本実施形態の装置は、変位部材23及びコイルスプリング24からなる振幅制限装置47〜50を使用しているが、これらに代えて、第2実施形態(図4参照)で示した振動発電を行う振幅制限装置25を使用すると、さらに発電効率を向上させることができる。
また、図5では、揺動ビーム6と揺動ビーム44とのうち、特に揺動ビーム44側の構成における振幅制限装置として、錘体45の移動方向に対応する装置ケース41に互いに水平方向に配置した振幅制限装置47,48と、錘体46の移動方向に対応する装置ケース41に互いに水平方向に配置した振幅制限装置49,50との両方を備える構成を示したが、このような構成に限定されるものではない。すなわち、一対の錘体のうち一方の錘体の移動方向に対応する位置にのみ振幅制限装置を配置した構成、例えば錘体45の移動方向に対応する装置ケース41に互いに水平方向に配置した振幅制限装置47,48だけを備える構成とすることもできる。
【0061】
また、図5では、揺動ビーム6と揺動ビーム44とのうち、特に揺動ビーム44側の構成における振動電力変換部として、揺動ビーム44の長手方向の両側に一対の振動電力変換部51,52を設けた構成を示したが、このような構成に限定されるものではない。すなわち、揺動ビーム44の長手方向の両側のうち一方側にのみ振動電力変換部を設けた構成、例えば振動電力変換部51だけを設けた構成とすることもできる。
【0062】
なお、上述のように一対の錘体のうち一方の錘体の移動方向に対応する位置にのみ振幅制限装置を配置した構成においては、振動電力変換部は、揺動ビーム44の長手方向の両側のうち上記振幅制限装置が配置される側に設けるようにする。
また、図5では、揺動ビーム6と揺動ビーム44とのうち、特に揺動ビーム44側の構成における振動電力変換部として、例えば振動電力変換部51における磁歪棒55の両端に磁気バイアス供給用の永久磁石53,54を配置した構成を示したが、このような構成に限定されるものではなく、磁歪棒55の一方端にのみ磁気バイアス供給用の永久磁石を配置した構成としてもよい。この点は振動電力変換部52も同様である。
【0063】
また、図5では、揺動ビーム6と揺動ビーム44とのうち、特に揺動ビーム44側の構成における振動電力変換部として、例えば振動電力変換部51における磁歪棒55に磁気コイル56が巻装されている構成を示したが、振動電力変換部において磁気コイルを巻装する位置は磁歪棒のみに限定されるものではなく、磁歪棒とともに磁路を形成する他の部材に巻装してもよい。すなわち、振動電力変換部51において例えば磁性棒状部44cに磁気コイルを巻装してもよく、磁歪棒55と磁性棒状部44cの両方に磁気コイルを巻装してもよい。この点は振動電力変換部52も同様である。
【0064】
また、本実施形態の振動発電装置40における揺動ビーム44側の構成は、揺動ビーム44がその長手方向においてピン43による支持点を中心とした対称構造であって、搖動ビーム44の長手方向両端に固定されている錘体45の質量と錘体46の質量とが互いに等しい構成に限定されるものではない。垂直方向の揺動ビーム44では、その長手方向が重力場方向と平行するため、錘体45と錘体46とが等質量ではなくても、モーメントのバランスを取ることができる。ただし、下側の錘体46の質量が上側の錘体45の質量より大きい構成の方が、振動によりバランスが崩れた後の挙動において安定的である点でより好適である。
【符号の説明】
【0065】
1,40…振動発電装置、2…振動源、3,41…装置ケース、3a…底部、3b…上壁、4,42…支柱、5,43…ピン、6,44…揺動ビーム、7,8,45,46…錘体、9,10,11,12,47,48,49,50…振幅制限装置、13,14,51,52…振動電力変換部、6a,6b,44a,44b…切り欠き部、6c,6d,44c,44d…磁性棒状部、6e,6f,6g,6h,44e,44f,44g,44h…長手方向両縁部、15,16,19,20,53,54,57,58…永久磁石、17,21,55,59…磁歪棒、18,22,56,60…磁気コイル、23…変位部材、24…コイルスプリング、25…振幅制限装置、26…装置ケース、27…蓋部、27a…開口部、28…永久磁石、29…磁歪部材、30…磁気コイル、31…永久磁石、32…変位部材、201,201A…電源回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8