【実施例】
【0042】
以下、このような局部洗浄装置10における制御の形態について、実施例に基づいて説明する。
【0043】
(1)局部洗浄開始時
まず、局部洗浄を行っていない状態から局部洗浄を開始する場合の制御方法を、第一おしり洗浄を開始する場合を例に説明する。この際の制御方法を
図4に時系列に沿って示す。ここでは、時刻t1〜t2における収納位置でのおしりノズル11からの冷水の放出と、時刻t7〜t8における第一おしり洗浄位置での温水の吐出が主要な動作となっており、それらを実現するためのロータリーバルブ6’、おしりノズル11、ヒータ3’の動作が行われる。その中で、ロータリーバルブ6’の切替え動作との関係において、ヒータ3’の制御方式が切り替えられる。
【0044】
時刻t0より前の状態においては、いかなる局部洗浄も行われておらず、タンク2’の上流に設けられているメインバルブが閉じられ、ヒータ3’の出力も停止されている。そして、ロータリーバルブ6’は、いずれの出口ポート63a〜63cも対応する接続孔64a〜64cと回転方向位置が一致しないような停止位置(ホームポジション)にある。おしりノズル11は、おしり洗浄時よりも後方に退いた収納位置にある。
【0045】
時刻t0において、使用者が操作パネル等を操作することで第一おしり洗浄の開始を選択すると、メインバルブが開けられ、タンク2’へ水源から冷水が流入可能な状態となる。また、ヒータ3’の出力が開始され、即座に水温に基づくフィードバック制御が開始される。目標温度T’は、使用者によって選択されているおしり洗浄時の温水の温度である。そして、ロータリーバルブ6’が、ホームポジションから、第一出口ポート63aと第一接続孔64aの回転方向位置が一致する第一おしり位置に向かって、ロータ62の回転を開始する。おしりノズル11の位置は、収納位置に維持される。
【0046】
時刻t1において、ロータ62の回転が完了し第一おしり位置に到達すると、収納位置にあるおしりノズル11から、第一おしり流路5aを介して、おしりノズル11から水の吐出が開始される。これは、時刻t0より前にヒータ3’の出力が停止されていたことで、タンク2’からおしりノズル11の吐出孔に至る水流路の間に蓄積されていた冷水を、使用者の局部に接触させずに捨てるためである。
【0047】
収納位置においておしりノズル11から水が吐出されている最中の時刻t2において、ヒータ3’のフィードバック制御が終了され、フィードフォワード制御が開始される。フィードフォワード制御におけるヒータ3’の出力値は、時刻t2直前のフィードバック制御における出力値および温度差ΔT2、流量Fをもとに、式(1)または式(2)を用いて下限値と上限値の間で(以下同様)定められる。
【0048】
その後、おしりノズル11からの十分な冷水の放出が完了し、タンク2’内の水が十分に加熱された状態に対応する時刻t3において、ロータリーバルブ6’が、第一おしり位置からホームポジションに向かってロータ62を回転させる切替動作を開始する。これにより、第一おしり流路5aを介したおしりノズル11からの水の放出が停止される。
【0049】
時刻t4において、切替動作が完了し、ロータリーバルブ6’がホームポジションに達すると、水を吐出していない状態のおしりノズル11が、収納位置から、第一おしり流路5aを介した強力なおしり洗浄に適した位置である第一おしり洗浄位置に向かって前進を開始される。また、ヒータ3’のフィードフォワード制御が終了され、時刻t0〜t2と同じ目標温度T’を設定して、フィードバック制御が再開される。
【0050】
時刻t5においておしりノズル11の前進が完了し、第一おしり洗浄位置に到達する。また、ヒータ3’のフィードバック制御が終了され、フィードフォワード制御に切り替えられる。フィードフォワード制御におけるヒータ3’の出力値は、時刻t5直前のフィードバック制御における出力値O1と温度差ΔT2、流量Fをもとに定められる。
【0051】
その後、時刻t6において、ロータリーバルブ6’において切替動作が行われ、ホームポジションから第一おしり位置に向かってロータ62の回転を開始する。時刻t7において切替動作が完了し、ロータリーバルブ6’の回転位置が第一おしり位置に達すると、第一おしり流路5aを介して、第一おしり洗浄位置にあるおしりノズル11から、タンク2’内で目標温度T’にまで加熱された温水が吐出され始める。これにより、第一おしり洗浄が実際に開始される。また、ヒータ3’のフィードフォワード制御が終了され、フィードバック制御が再開される。この目標温度T’は、時刻t0〜t2および時刻t4〜t5における目標温度T’と同じであるが、第一おしり流路5aを介した温水の供給が開始されていることに対応し、ヒータ3’の出力値は、温水の供給が行われていなかった時刻t4〜t5におけるフィードバック制御における出力値よりも大きくなる。
【0052】
その後、使用者が操作パネル等の操作によっておしり洗浄の停止を指示した後の時刻t9まで、ヒータ3’のフィードバック制御と、第一おしり流路5aを介したおしりノズル11からの温水の吐出が継続される。洗浄中に使用者が流量Fや目標温度T’の変更を指示した場合にも、フィードバック制御におけるヒータ3’の出力値は変更されるものの、ヒータ3’のフィードバック制御自体と温水の吐出はそのまま継続される。
【0053】
時刻t8において、おしり洗浄の停止が指示されると、ヒータ3’のフィードバック制御が終了され、フィードフォワード制御が開始される。フィードフォワード制御におけるヒータ3’の出力値は、時刻t8直前のフィードバック制御における出力値O1と温度差ΔT2、流量Fをもとに定められる。
【0054】
時刻t8から少し時間が経過した後の時刻t9において、ロータリーバルブ6’が、第一おしり位置からホームポジションに向かって切替動作を開始する。これにより、第一おしり流路5aを介したおしりノズル11からの温水の吐出が停止される。
【0055】
時刻t10において、切替動作が完了し、ロータリーバルブ6’がホームポジションに達すると、ヒータ3’のフィードフォワード制御が終了され、フィードバック制御が再開される。また、おしりノズル11の後退が開始され、第一おしり洗浄位置から収納位置へと向かい始める。
【0056】
時刻t11において、おしりノズル11の後退が完了し、収納位置に達すると、フィードバック制御を行っていたヒータ3’の出力が停止される。なお、ヒータ3’の出力が、ロータリーバルブ6’が切替動作を完了した時刻t10ではなく、その後おしりノズル11が収納位置に後退する時刻t11まで継続されるのは、時刻t8からt11の間に再度第一おしり洗浄の開始が指示された場合に、効率よく再度の洗浄を開始するためである。
【0057】
最後に、ヒータ3’の出力が停止された後の時刻t12において、メインバルブが閉じられる。これにより、メインバルブ、ロータリーバルブ6’、おしりノズル11位置、ヒータ3’が、おしり洗浄を行う前の時刻t0以前と同じ状態に戻る。
【0058】
以上においては、ヒータ3’の出力を継続した状態でロータリーバルブ6’において切替動作が行われる、時刻t3〜t4、時刻t6〜t7、時刻t9〜t10の各期間において、ヒータ3’において、フィードバック制御ではなく、フィードフォワード制御が行われる。これにより、ロータリーバルブ6’の切替動作に伴うオーバーシュートを抑制することができる。つまり、時刻t3〜t4、および時刻t9〜t10の期間においては、第一おしり流路5aに水が供給されている状態から切替動作が行われることによる水流の一時的な停止に伴うオーバーシュートが抑制される。一方、時刻t6〜t7においては、ホームポジション位置に水が供給されている状態から切替動作が行われることによる水流の一時的な停止に伴うオーバーシュートが抑制される。さらに、各期間において、切替動作が実際に開始される時刻t3,t6,t9の少し前の時刻に当たる時刻t2,t5,t8からフィードフォワード制御が開始されていることで、各切替動作の初期から、効果的にオーバーシュートの発生を抑制することができる。
【0059】
なお、時刻t0〜t1においても、ヒータ3’の出力を行っている状態でロータリーバルブ6’の切り替えが行われているが、この場合は、ヒータ3’の出力が開始された直後であり、オーバーシュートが起こる可能性が極めて低いので、フィードフォワード制御を行わず、フィードバック制御を行っている。局部洗浄装置10の連続使用等の理由により、時刻t0からすでに水温が高い場合等には、この期間にフィードフォワード制御を行ってもよい。
【0060】
下の表1に、時刻t2〜t4,t5〜t7,t8〜t10の各期間におけるフィードフォワード制御の際のヒータ3’のデューティ比の見積もりを、直前のフィードバック制御におけるデューティ比D1および温度差ΔT2、流量Fとともに示す。ここでは、式(2)に基づき、算出値D2を計算している。そして、下限値を、直前のフィードバック制御におけるデューティ比D1の80%とし、上限値を、該デューティ比D1の100%として、算出値D2をそれらと比較することで、フィードフォワード制御におけるデューティ比を規定している。なお、式(2)による算出値D2の算出に際し、試験に基づいて、a=6.7×10
−5[min/K/ml],b=1.54としている。なお、表1および後の表2において、「フィードフォワード制御」を「FF制御」、「フィードバック制御」を「FB制御」と表示している。
【0061】
【表1】
【0062】
表1では、いずれの期間においても、式(2)に基づく算出値D2が上限値と下限値の間に存在し、算出値D2が、フィードフォワード制御時のデューティ比として採用されている。
【0063】
(2)流路変更時
次に、別の切替動作として、選択する流路を変更する場合の制御方法を、第一おしり洗浄からビデ洗浄に変更する場合を例に説明する。この際の制御方法を
図5に時系列に沿って示す。ここでは、時刻t0後のおしりノズル11からの温水の吐出の停止と、時刻t5〜t7における収納位置でのビデノズル12からの冷水の放出と、時刻t11以降のビデ洗浄位置でのビデノズル12からの温水の吐出が主要な動作となっており、それらを実現するためのロータリーバルブ6’、おしりノズル11、ビデノズル、ヒータ3’の動作が行われる。その中で、ロータリーバルブ6’の切替え動作との関係において、ヒータ3’の制御方式が切り替えられる。
【0064】
時刻t0以前においては、第一おしり洗浄が行われている。つまり、メインバルブは開けられており、ロータリーバルブ6’は第一おしり位置にあり、おしりノズル11は第一洗浄位置にある。そして、ヒータ3’の出力が行われ、フィードバック制御を受けている。これにより、第一おしり流路5aを介して、第一おしり洗浄位置にあるおしりノズル11から、目標温度に加熱された温水が吐出されている。ビデノズル12は、ビデ洗浄時よりも後方に退いた収納位置にある。
【0065】
時刻t0において、使用者が操作パネル等を操作し、ビデ洗浄への変更を指示すると、ヒータ3’のフィードバック制御が終了され、フィードフォワード制御が開始される。フィードフォワード制御におけるヒータ3’の出力値は、時刻t0直前のフィードバック制御における出力値O1と温度差ΔT2、流量Fをもとに定められる。
【0066】
その後、時刻t1において、ロータリーバルブ6’が、第一おしり位置からホームポジションに向かって、切替動作を開始する。これにより、第一おしり流路5aを介したおしりノズル11からの温水の吐出が停止される。なお、本実施例においては、ロータリーバルブ6’に、第四出口ポートを設け、いかなる流路からも水を供給しないホームポジションの代わりに、その第四出口ポートを介しておしりノズル11およびビデノズル12の先端部に水を流してノズル先端部を洗浄するノズル洗浄位置を選択するようにしてもよい。
【0067】
時刻t2で切替動作が完了し、ロータリーバルブ6’がホームポジションに到達すると、おしりノズル11の第一おしり洗浄位置から収納位置への後退が開始される。また、ヒータ3’のフィードフォワード制御が終了され、ビデ洗浄における目標温度に基づいたフィードバック制御が開始される。
【0068】
時刻t3でおしりノズル11が収容位置に到達すると、ヒータ3’のフィードバック制御が終了され、フィードフォワード制御が開始される。フィードフォワード制御におけるヒータ3’の出力値は、時刻t3直前のフィードバック制御における出力値O1と温度差ΔT2、流量Fをもとに定められる。
【0069】
その後、時刻t4において、ロータリーバルブ6’が、ホームポジションからビデ位置へ向かって、切替動作を開始する。ビデ位置は、ロータリーバルブ6’の第三出口ポート63cと第三接続孔64cの回転方向位置が一致する状態である。
【0070】
時刻t5において、切替動作が完了し、ロータリーバルブ6’がビデ位置に到達すると、収納位置にあるビデノズル12から、ビデ流路5cを介して、水が吐出される。これは、タンク2’からビデノズル12の吐出孔に至る水流路の間に蓄積されていた冷水を捨てるためである。また、ヒータ3’のフィードフォワード制御が終了され、ビデ洗浄における目標温度に基づいたフィードバック制御が再開される。
【0071】
その後、収納位置においてビデノズル12から水が吐出されている最中の時刻t6において、ヒータ3’のフィードバック制御が終了され、フィードフォワード制御が開始される。フィードフォワード制御におけるヒータ3’の出力値は、時刻t6直前のフィードバック制御における出力値O1と温度差ΔT2、流量Fをもとに定められる。
【0072】
そして、時刻t7において、ロータリーバルブ6’が、ビデ位置からホームポジションに向かって、切替動作を開始する。これによって、収納位置にあるビデノズル12からの水の放出が停止される。
【0073】
時刻t8において、切替動作が完了し、ロータリーバルブ6’がホームポジションに到達すると、ビデノズル12が、収納位置からビデ洗浄位置に向かって前進を開始する。また、ヒータ3’のフィードフォワード制御が終了され、フィードバック制御が再開される。
【0074】
時刻t9において、ビデノズル12の前進が完了し、ビデ洗浄位置に到達すると、ヒータ3’のフィードバック制御が終了され、フィードフォワード制御が開始される。フィードフォワード制御におけるヒータ3’の出力値は、時刻t9直前のフィードバック制御における出力値O1と温度差ΔT2、流量Fをもとに定められる。
【0075】
その後、時刻t10において、ロータリーバルブ6’が、ホームポジションからビデ位置へ向かって、切替動作を開始する。
【0076】
時刻t11において、切替動作が完了し、ロータリーバルブ6’がビデ位置に到達すると、ビデ洗浄位置にあるビデノズル12から、目標温度に加熱された温水の吐出が開始される。また、ヒータ3’のフィードフォワード制御が終了され、フィードバック制御が再開される。
【0077】
時刻t11以降、使用者が操作パネル等を操作してビデ洗浄の終了を指示するまで、ロータリーバルブ6’がビデ位置にあり、ビデノズル12がビデ洗浄位置にあり、ヒータ3’がフィードバック制御を行っている状態が維持される。
【0078】
以上においては、ヒータ3’の出力を継続した状態でロータリーバルブ6’において切替動作が行われる、時刻t1〜t2、時刻t4〜t5、時刻t7〜t8、時刻t10〜t11の各期間において、ヒータ3’において、フィードバック制御ではなく、フィードフォワード制御が行われる。これにより、切替動作に伴うオーバーシュートを抑制することができる。さらに、各期間において、切替動作が実際に開始される時刻t1,t4,t7,t10の少し前の時刻に当たる時刻t0,t3,t6,t9からフィードフォワード制御が開始されていることで、切替動作の初期から、効果的にオーバーシュートの発生を回避することができる。
【0079】
下の表2に、時刻t0〜t2,t3〜t5,t6〜t8,t9〜t11の各期間におけるフィードフォワード制御の際のヒータ3’のデューティ比の見積もりを、直前のフィードバック制御におけるデューティ比D1および温度差ΔT2、流量Fとともに示す。ここでも、式(2)に基づき、算出値D2を計算している。そして、下限値を、直前がおしり洗浄である場合においては(時刻t0〜t2)、直前のフィードバック制御におけるデューティ比D1の80%とし、直前がビデ洗浄である場合においては(時刻t3〜t5,t6〜t8,t9〜t11)、70%としている。また、いずれの場合にも、上限値を、該デューティ比D1の100%としている。算出値D2をそれら上限値および下限値と比較することで、フィードフォワード制御におけるデューティ比を規定している。なお、式(2)による算出値の算出に際し、上記実施例(1)の場合と同様に、a=6.7×10
−5[min/K/ml],b=1.54としている。
【0080】
【表2】
【0081】
表2では、時刻t0〜t2,t3〜t5の期間においては、式(2)に基づく算出値D2が上限値を上回り、上限値であるフィードバック制御時のデューティ比D1が、フィードフォワード制御時のデューティ比として採用されている。一方、時刻t6〜t8,t9〜t11の期間においては、式(2)に基づく算出値D2が上限値と下限値の間に存在し、算出値D2が、フィードフォワード制御時のデューティ比として採用されている。
【0082】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、流体加熱装置における流路が1つであってもよく、この場合には、切替動作としては、その1つの流路への水の供給の実行と停止の間での切り替えが行われることになる。また、加熱手段は、PWM制御によって出力を調整される必要はなく、例えば、連続的に電圧を印加し、電圧を変化させることによって出力を調整するものであってもよい。また、上記のような流体加熱装置は、局部洗浄装置に限らず、手洗い器等、種々の温水供給装置に組み込んで用いることができる。