(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<本発明の実施形態の概要>
以下、本発明の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 本実施形態の通信方法は、通信フレームを無線で送受信する通信方法であって、移動体の動作モードを定義するための格納領域が前記通信フレームに含まれ、当該格納領域に格納する情報には、下記のモード種別の識別情報が含まれる。
手動運転:搭乗者が自車両の運転の全部を行うモード種別
自動運転:車両の制御システムが自車両の運転の一部又は全部を自動的に行うモード種別
【0016】
本実施形態の通信方法によれば、移動体の動作モードを定義するための格納領域が通信フレームに含まれ、当該格納領域に格納する情報に上記の手動運転と自動運転が含まれているので、通信フレームの受信側の移動体は、送信側の移動体のモード種別が手動運転か自動運転かを無線通信によって察知できる。
このため、自動運転は手動運転に対して道を譲るなどの所定のルールを予め定めておくことにより、動作モードが異なる移動体が混在する交通状況において、各移動体による適切な通行を実現することができる。
【0017】
(2) 本実施形態の通信方法において、前記格納領域に格納する情報には、前記自動運転を細分化した下記のモード種別の識別情報が含まれることが好ましい。
自律運転:車両の制御システムが自車両の運転の全部を自動的に行うモード種別
支援運転:車両の制御システムが自車両の運転の一部を自動的に行い、搭乗者による自車両の運転を支援するモード種別
【0018】
この場合、自動運転を自律運転と支援運転に細分化しているので、通信フレームの受信側の移動体は、送信側の移動体の動作モードが手動運転、支援運転又は自動運転のいずれであるかを無線通信によって察知できる。
このため、自動運転を細分化しない場合に比べて、モード種別に応じた通行のルールをより詳細に定めることができる。従って、混在状況における各移動体の適切な通行をより確実に実現することができる。
【0019】
(3) 本実施形態の通信方法において、前記格納領域に格納する情報には、下記のモード種別の識別情報が更に含まれることが好ましい。
歩行者移動:歩行者である移動体が移動中であることを示すモード種別
【0020】
この場合、移動体の動作モードを定義するための格納領域に格納する情報に、上記の歩行者移動が含まれているので、通信フレームの受信側の移動体は、送信側の移動体が移動中の歩行者であるか否かを察知できる。
このため、車両は必ず歩行者移動の移動体に対して道を譲るなど、モード種別に応じた通行のルールに歩行者を含めることができる。従って、混在状況における各移動体の適切な通行をより確実に実現することができる。
【0021】
(4) 本実施形態の通信方法において、前記移動体の運転者の属性を定義するための格納領域が前記通信フレームに含まれ、当該格納領域に格納する情報には、前記移動体の運転者が交通弱者であるか否かの識別情報が含まれることが好ましい。
【0022】
この場合、移動体の運転者の属性を定義するための格納領域が通信フレームに含まれ、当該格納領域に格納する情報に、移動体の運転者が交通弱者であるか否かの識別情報が含まれるので、通信フレームの受信側の移動体は、送信側の移動体の運転者が交通弱者であるか否かを無線通信によって察知できる。
このため、動作モードが自車両と同じでも、運転者が交通弱者の場合は道を譲るなど、交通弱者の観念を通行のルールに含めることができる。従って、混在状況における各移動体の適切な通行をより確実に実現することができる。
【0023】
(5) 本実施形態の通信方法において、前記移動体の搭乗者の有無を定義するための格納領域が前記通信フレームに含まれ、当該格納領域に格納する情報には、前記搭乗者が有り又は無しのいずれであるかの識別情報が含まれることが好ましい。
【0024】
この場合、移動体の搭乗者の有無を定義するための格納領域が通信フレームに含まれ、当該格納領域に格納する情報に、搭乗者が有り又は無しのいずれであるかの識別情報が含まれるので、通信フレームの受信側の移動体は、送信側の移動体の搭乗者が有りか無しかを無線通信によって察知できる。
このため、動作モードがお互いに自律運転である場合には、搭乗者無しの車両が道を譲るなど、搭乗者の有無を通行のルールに含めることができる。従って、混在状況における各移動体の適切な通行をより確実に実現することができる。
【0025】
(6) 以上の説明では、通信フレームの受信側が移動体である場合を想定したが、当該通信フレームを路側装置が受信する場合(例えば、路車間通信の場合)を想定すると、路側装置においても有用となる情報を通信フレームに含めることが好ましい。
そこで、本実施形態の通信方法において、前記移動体の駐車状態を定義するための格納領域が前記通信フレームに含まれ、当該格納領域に格納する情報には、前記移動体が移動中又は駐車中のいずれかであるかの識別情報が含まれることが好ましい。
【0026】
この場合、移動体の駐車状態を定義するための格納領域が通信フレームに含まれ、当該格納領域に格納する情報に、移動体が移動中又は駐車中のいずれかであるかの識別情報が含まれるので、通信フレームを受信した路側装置は、送信側の移動体が移動中か駐車中かを無線通信によって察知できる。
このため、例えば駐車場の管理を行う路側装置が、移動体が移動中か駐車中かを事前に察知することにより、通信フレームの情報を駐車場の管理に利用できるようになる。
【0027】
(7) 同様の理由で、前記移動体の駐車エリアを定義するための格納領域が前記通信フレームに含まれ、当該格納領域に格納する情報には、前記移動体を駐車させる予定のエリアが自律運転用の専用エリア又はそうでない混在エリアのいずれかであるかの識別情報が含まれることが好ましい。
【0028】
この場合、移動体の駐車エリアを定義するための格納領域が通信フレームに含まれ、当該格納領域に格納する情報に、移動体を駐車させる予定のエリアが自律運転用の専用エリア又はそうでない混在エリアのいずれかであるかの識別情報が含まれるので、通信フレームを受信した路側装置は、送信側の移動体の駐車エリアが専用エリアか混在エリアかを無線通信によって察知できる。
このため、例えば駐車場の管理を行う路側装置が、移動体の駐車エリアが専用エリアか混在エリアかを事前に察知することにより、通信フレームの情報を駐車場の管理に利用できるようになる。
【0029】
(8) 同様の理由で、前記移動体に対する充電要否を定義するための格納領域が前記通信フレームに含まれ、当該格納領域に格納する情報には、前記移動体に対する充電が必要又は不要のいずれであるかの識別情報が含まれることが好ましい。
【0030】
この場合、前動体に対する充電要否を定義するための格納領域が通信フレームに含まれ、当該格納領域に格納する情報に、移動体に対する充電が必要又は不要のいずれであるかの識別情報が含まれるので、通信フレームを受信した路側装置は、送信側の移動体の充電要否を無線通信によって察知できる。
このため、例えば充電設備の管理を行う路側装置が、移動体の充電要否を事前に察知することにより、通信フレームの情報を充電設備の管理に利用できるようになる。
【0031】
(9) 本実施形態の路側装置は、上述の通信方法を行う路側装置であって、1又は複数の前記格納領域に所定の前記識別情報が格納された前記通信フレームを前記移動体から受信し、受信した前記通信フレームを他の前記移動体に転送する通信部を備える。
【0032】
本実施形態の路側装置によれば、通信部が、受信した通信フレームを他の移動体に転送するので、移動体間の通信(例えば、車車間通信)ができない位置関係にある移動体に、他の移動体の通信フレームを渡すことができる。従って、通信フレームを用いた適切な通行をより確実に実現することができる。
【0033】
(10) 本実施形態の移動通信機は、上述の通信方法を行う移動通信機であって、当該移動通信機を搭載した前記移動体について、1又は複数の前記格納領域に格納すべき前記識別情報を決定し、決定した前記識別情報を対応する前記格納領域に格納して前記通信フレームを生成する制御部と、生成した前記通信フレームを他の装置に送信する通信部と、を備える。
【0034】
本実施形態の移動通信機によれば、生成した通信フレームを他の装置に送信するので、送信元の移動体のモード種別などを含む通信フレームが外部に情報発信されることになる。
このため、送信された通信フレームを、受信側の移動体が自身の挙動を決定するのに利用したり、受信側の路側装置が送信側の移動体に対する駐車場管理に利用したりできるようになる。
【0035】
(11) 本実施形態の車両の制御装置(
図4〜
図6に示す「車載通信機54」であってもよいし、同図に示す「制御システム50」であってもよい。)は、上述の通信方法を行う車両の制御装置であって、自車両について、1又は複数の前記格納領域に格納すべき前記識別情報を決定し、決定した前記識別情報を対応する前記格納領域に格納して前記通信フレームを生成する制御部と、生成した前記通信フレームを他の装置に送信する通信部と、を備える。
【0036】
本実施形態の車両の制御装置によれば、生成した通信フレームを他の装置に送信するので、送信元の車両のモード種別などを含む通信フレームが外部に情報発信されることになる。
このため、送信された通信フレームを、受信側の移動体が自身の挙動を決定するのに利用したり、受信側の路側装置が送信側の車両に対する駐車場管理に利用したりできるようになる。
【0037】
(12) 本実施形態の車両の制御装置において、前記通信部は、他の前記移動体が生成した前記通信フレームを受信可能であり、前記制御部は、前記自車両のモード種別と受信した前記通信フレームに含まれるモード種別との比較に基づいて、前記自車両の動作内容を決定することが好ましい。
【0038】
本実施形態の車両の制御装置によれば、制御部が、自車両のモード種別と受信した通信フレームに含まれるモード種別との比較に基づいて、自車両の動作内容を決定するので、自動運転は手動運転よりも通行優先度が低いなどの所定のルールを予め定めておくことにより、動作モードが異なる移動体が混在する交通状況において、自車両の適切な通行を実現することができる。
【0039】
(13) 本実施形態の車両の制御装置において、前記制御部は、前記自車両と他の前記移動体のうちいずれの通行優先度が高いかを前記比較によって判定し、他の前記移動体の通行優先度の方が高い場合に、その旨を前記自車両の運転者に通知する制御及び当該自車両の走行を抑制する制御のうちの少なくとも1つを実行することが好ましい。
【0040】
この場合、制御部が、上記の制御のうちの少なくとも1つを実行するので、相手方の移動体の通行優先度が高い場合に、自車両の通行を抑制することができる。
このため、動作モードが異なる移動体が混在する交通状況において、自車両の適切な通行を実現することができる。
【0041】
(14) 具体的には、通行優先度の判定に用いるモード種別に、下記のモード種別が含まれている場合には、前記制御部は、手動運転>支援運転>自律運転の順で前記移動体の通行優先度が高いと判定する。
手動運転:搭乗者が自車両の運転の全部を行うモード種別
支援運転:車両の制御システムが自車両の運転の一部を自動的に行い、搭乗者による自車両の運転を支援するモード種別
自律運転:車両の制御システムが自車両の運転の全部を自動的に行うモード種別
【0042】
自律運転の通行優先度が最も低い理由は、次の通りである。すなわち、この場合、自律運転の車両が相手方の移動体に対して必ず道を譲ることになり、他の移動体の搭乗者が不安を感じて事故を招く可能性が低減するからである。また、駐車場での通行を想定すると、搭乗者が乗っている他の移動体の入庫又は出庫が早まる可能性が高まり、顧客満足度の向上に繋がるからである。
【0043】
また、手動運転の通行優先度が支援運転の優先度より高い理由は、例えば駐車場での通行を想定すると、支援運転の移動体は手動運転の移動体に比べて他の移動体の存在や挙動を予め予測しやすく、衝突を回避できる可能性が高い。従って、支援運転の移動体が手動運転の移動体に配慮して、手動運転の通行優先度を高くした方が、手動運転の移動体の衝突事故の確率を下げ、かつ、間接的にスムーズな運転を可能とする。このため、駐車場への入庫又は出庫が早まる可能性が全体的に高まり、顧客満足度の向上に繋がるからである。
【0044】
(15) 本実施形態の車両の制御装置において、通行優先度の判定に用いるモード種別には、下記のモード種別が含まれており、前記制御部は、モード種別が歩行者移動である前記移動体の通行優先度が最も高いと判定することが好ましい。
歩行者移動:歩行者である移動体が移動中であることを示すモード種別
その理由は、交通弱者の代表である歩行者の通行の安全性を向上するためには、モード種別が歩行車移動である移動体の通行優先度を最も高く設定すべきだからである。
【0045】
(16) 本実施形態の車両の制御装置において、通行優先度の判定に用いる情報には、前記移動体の運転者の属性が含まれており、前記制御部は、運転者の属性が交通弱者であるか否かを、前記自車両と他の前記移動体のうちのいずれの通行優先度が高いかの判定条件とすることが好ましい。
このようにすれば、運転が未熟な交通弱者(例えば、高齢者など)が運転する車両の通行を優先することにより、事故防止をより有効に図ることができる。
【0046】
(17) 本実施形態の車両は、上述の制御装置を搭載した車両でもある。従って、本実施形態の車両は、上述の制御装置と同様の作用効果を奏する。
【0047】
(18) 他の観点から見た本実施形態の車両の制御装置は、他の移動体が生成した通信フレームの内容に基づいて、自車両の動作内容を決定する車両の制御装置であって、他の前記移動体が生成したモード種別を含む前記通信フレームを受信する通信部と、前記自車両のモード種別と受信した前記通信フレームに含まれるモード種別との比較に基づいて、前記自車両の動作内容を決定する制御部と、を備える。
【0048】
本実施形態の車両の制御装置によれば、制御部が、自車両のモード種別と受信した通信フレームに含まれるモード種別との比較に基づいて、自車両の動作内容を決定するので、自動運転は手動運転よりも通行優先度が低いなどの所定のルールを予め定めておくことにより、動作モードが異なる移動体が混在する交通状況において、自車両の適切な通行を実現することができる。
【0049】
(19) 本実施形態の動作決定方法は、上述の制御装置において実行される動作決定方法である。従って、本実施形態の車両は、上述の制御装置と同様の作用効果を奏する。
【0050】
(20)(21) 他の観点から見た本実施形態の路側装置は、駐車エリアへの移動体の進入許否を判定する路側装置であって、前記移動体のモード種別、駐車状態の種別、駐車エリアの種別及び位置情報を含む前記通信フレームを受信する通信部と、受信した前記通信フレームに含まれる前記各情報に基づいて、自動運転用の専用エリアへの前記移動体の進入の許否を判定し、その判定結果を含む前記移動体宛ての制御フレームを前記通信部に送信させる制御部と、を備える。
【0051】
本実施形態の路側装置によれば、制御部が、移動体のモード種別、駐車状態の種別、駐車エリアの種別及び位置情報に基づいて、自律運転である車両の専用エリアへの進入の許否を判定する。
従って、自動運転である車両の専用エリアへの入庫管理を自動的に行うことができ、駐車場の運用コストを低減することができる。
【0052】
(22) 具体的には、前記制御部は、次の条件a1〜d1が成立した場合に、前記専用エリアへの入庫許可を前記制御フレームに含める。
条件a1:移動体のモード種別が自律運転であること
条件b1:移動体の駐車状態の種別が移動中であること
条件c1:移動体の駐車エリアの種別が自動運転用の専用エリアであること
条件d1:移動体の位置情報が専用エリアの入口手前であること
【0053】
その理由は、上記の条件a1〜条件d1がすべて揃えば、自律運転中の車両が、専用エリアに入庫するためにその出入口に到達したと判断できるからである。
【0054】
(23) 本実施形態の路側装置において、前記制御部は、搭乗者の快適性を考慮しない俊敏動作の指令を前記制御フレームに含めることが好ましい。
このようにすれば、自動運転の車両が、専用エリアにおける加減速などの動作を混在エリアの場合よりも俊敏に行うことになり、専用エリアにおける入庫に要する時間を短縮できる利点がある。
【0055】
(24) 本実施形態の路側装置において、前記制御部は、次の条件a2〜c2が成立した場合に、前記専用エリアからの退出許可の判定結果を前記制御フレームに含める。
条件a2:移動体のモード種別が自律運転であること
条件b2:移動体の駐車状態の種別が移動中であること
条件c2:移動体の位置情報が専用エリアの出口手前であること
【0056】
その理由は、上記の条件a2〜条件c2がすべて揃えば、自律運転中の車両が、専用エリアから出庫するために出入口に到達したと判断できるからである。
【0057】
(25) 本実施形態の路側装置において、前記制御部は、搭乗者の快適性を考慮しない俊敏動作の指令解除を前記制御フレームに含めることが好ましい。
このようにすれば、自動運転の車両が、専用エリアで行っていた加減速などの俊敏な動作を混在エリアで行わなくなるので、専用エリアにおける出庫に要する時間を短縮しつつ、混在エリアにおける通行の安全性を高めることができる。
【0058】
(26)(27) 他の観点から見た本実施形態の路側通信機は、移動体の充電優先度を判定する路側装置であって、前記移動体の充電要否、出庫予定時刻及び充電希望量を含む前記通信フレームを受信する通信部と、受信した前記通信フレームに含まれる前記各情報に基づいて、前記移動体の充電優先度を判定し、その判定結果を含む前記移動体宛ての制御フレームを前記通信部に送信させる制御部と、を備える。
【0059】
本実施形態の路側装置によれば、制御部が、通信フレームに含まれる充電要否、出庫予定時刻及び充電希望量に基づいて、車両の充電優先度を判定し、その判定結果を含む制御フレームを、通信フレームの送信元の車両に送信する。
従って、公平の観点又は管理者ポリシーに応じた適切な充電順序を車両に通知することができ、充電設備の管理を適切に行うことができる。
【0060】
<本発明の実施形態の詳細>
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。
〔用語の定義〕
本実施形態の詳細を説明するに当たり、まず、本実施形態で用いる用語の定義を行う。
「移動体」:公道、私道及び駐車場などの通行可能な領域を通行する物体の総称である。本実施形態の移動体には、後述の「車両」と「歩行者」が含まれる。
【0061】
「車両」:道路を通行可能な車両全般のことである。具体的には、道路交通法上の車両を意味する。道路交通法上の車両には、自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスが含まれる。
本実施形態において、単に「車両」というときは、後述の「自律運転車両」、「支援運転車両」、「手動運転車両」及び「電動車両」のすべてを含む。
【0062】
「歩行者」:車両によらない方法で道路などの通路を移動する人のことである。具体的には、道路交通法上の歩行者を意味する。道路交通法上の歩行者には、身体障害者用の車いす、歩行補助車等又は小児用の車を通行させている者なども含まれる。
本実施形態では、歩行者が後述の「携帯端末」を用いて他の無線通信機との無線通信が可能である場合を想定している。
【0063】
「無線通信機」:所定の通信フレームを無線で送受信する通信機能を有し、無線通信の送受信主体となる機器のことである。本実施形態の無線通信機には、後述の「路側通信機」と「移動通信機」が含まれる。
「路側通信機」:路側に設置された無線通信機のことをいう。本実施形態では、移動通信機とのローカルな無線通信を独自に実行することができる無線通信機のことをいう。
【0064】
「移動通信機」:移動体に搭載(歩行者の場合は「携帯」)された無線通信機のことをいう。本実施形態の移動通信機には、後述の「車載通信機」と「携帯端末」が含まれる。
「車載通信機」:車両に恒久的又は一時的に搭載された無線通信機のことをいう。
「携帯端末」:歩行者が携帯する無線通信機のことをいう。具体的には、携帯電話機、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、PND(Portable Navigation Device)、ノートパソコンなどがこれに該当する。
【0065】
「路側装置」:路側(インフラ側)に設置された装置の総称である。本実施形態では、後述の「管理装置」と、これによって管理される1又は複数の管理対象機器(路側通信機など)がこれに含まれる。
「管理装置」:1又は複数の管理対象機器を統合的に管理するコンピュータ装置のことをいう。本実施形態の管理装置は、具体的には、1又は複数の路側通信機を含む管理対象機器を管理するサーバーコンピュータよりなる。
【0066】
「手動運転」:車両の搭乗者が自車両の運転の全部を行うことをいう。すなわち、後述の「自動運転」の対比概念であり、加減速及び操舵などの基本操作の主体がすべて搭乗者である運転のことをいう。
「自動運転」:車両の各種センサによるセンシング結果に基づいて、車両の制御システムが自車両の運転の一部又は全部を自動的に行うことをいう。本実施形態の自動運転には、後述の「支援運転」と「自律運転」が含まれる。
【0067】
「支援運転」:車両の各種センサによるセンシング結果に基づいて、車両の制御システムが自車両の運転の一部を自動的に行って、搭乗者による自車両の運転を支援することをいう。車両の制御システムによる支援には、減速又は方向転換の自動的な介入や、音声又は画面表示による搭乗者への注意喚起などがある。
「自律運転」:車両の各種センサによるセンシング結果に基づいて、車両の制御システムが自車両の運転の全部を自動的に行うことをいう。従って、自律運転では、加減速及び操舵などの基本操作の主体が、搭乗者(人間)ではなく車両の制御システムである。
【0068】
「手動運転車両」:手動運転のみに対応する制御システムを有する車両のこという。
「自動運転車両」:自動運転が可能な制御システムを有する車両のことをいう。本実施形態の自動運転車両には、後述の「支援運転車両」と「自律運転車両」が含まれる。
【0069】
「支援運転車両」:支援運転が可能な制御システムを有する車両のことをいう。本実施形態では、支援運転車両は支援運転と手動運転のいずれかに切り替え可能であるとする。
「自律運転車両」:自律運転が可能な制御システムを有する車両のことをいう。本実施形態では、自律運転車両は自律運転、支援運転又は手動運転のいずれかに切り替え可能であるとする。
【0070】
「電動車両」:電気モータで駆動することができる車両のことをいう。これには、電気モータのみを駆動源とするEV(Electric Vehicle)だけでなく、電気モータと化石燃料エンジンの双方を駆動源とするPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)及びPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)も含まれる。
【0071】
〔無線通信システムの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システムを採用した駐車場2の一例を示す斜視図である。
図1の例では、フェンス3で囲まれた敷地内の北側よりに、ショッピングセンターなどの店舗施設である建物1が設置されており、敷地内における建物1南側の大半が駐車場2となっている。
【0072】
駐車場2の西側のフェンス3には入場口4が設けられ、駐車場2の東側のフェンス3には退場口5が設けられている。建物1周囲の広場と駐車場2とを仕切るフェンス3には、広場から駐車場2に向かって車両20や歩行者24が出入りするための出入口6が設けられている。
駐車場2内の駐車エリアは、混在エリア8、専用エリア9及び充電エリア10の3種類のエリアに区画されている。
【0073】
混在エリア8は、車両20の運転種別すなわち手動運転か自動運転かに関係なく、すべての車両20が駐車可能なエリアであり、敷地内の中央のほぼ大部分を占めている。
図1の例では、混在エリア8には、10台分の駐車スペースを有する駐車区画11が6つ設けられている。駐車区画11同士の間のスペース及び駐車区画11とフェンス3の間のスペースは、車両20や歩行者24が混在エリア8を通行するための通路12となっている。
【0074】
専用エリア9は、自律運転の車両20専用に用意された駐車エリアであり、駐車場2の南側よりに設けられている。
図1の例では、専用エリア9には、26台分の駐車スペースを有する駐車区画13が1つ設けられている。専用エリア9は、フェンス3によって他のエリア8,9から隔離されている。専用エリア9を仕切るフェンス3には、混在エリア8から専用エリア9に向かって自律運転の車両20が出入りするための専用出入口7が設けられている。
【0075】
充電エリア10は、電動車両である車両20に対して充電を行うために用意された駐車場エリアであり、駐車場2の南東部分に設けられている。
図1の例では、充電エリア10には、8台分の駐車スペースを有する駐車区画14が1つ設けられている。充電エリア10は、混在エリア8に対してフェンス3で仕切られておらず、混在エリア8と充電エリア10の間は車両20が自由に行き来できる。
【0076】
駐車場2には、更に、路側通信機31、監視カメラ33、スピーカ34、充電機器35及び通行表示器36が設けられている。
路側通信機31は、駐車場2の適所に立設された支柱に設置されている。
図1の例では、路側通信機31は、設置位置の違いに応じて次の3種類の路側通信機31A〜31Cに分類される。
【0077】
路側通信機31A:入場口4、退場口5及び出入口6に設置された路側通信機31
路側通信機31B:専用出入口7に設置された路側通信機31
路側通信機31C:通路12の交差点に設置された路側通信機31
なお、本実施形態では、各路側通信機31A〜31Cの共通事項を説明する場合は、それらの共通符号「31」を用いて「路側通信機31」と記載する。
【0078】
監視カメラ33は、駐車場2の北西の角部に立設された支柱に設置されている。スピーカ34は、出入口6に立設された支柱に設置されている。
充電機器35は、充電エリア10内の各駐車スペースに埋設されている。本実施形態では、電動車両に非接触で給電する給電方式を想定している。このため、各駐車スペースに埋設された充電機器35は、電動車両の下面部分に設けられた充電器(図示せず)に非接触で電力を供給する非接触タイプのものが採用されている。
【0079】
通行表示器36は、通路12の交差点に立設された支柱に設置されている。通行表示器36は、交差点に流入する車両20に対して、流入可能を示す「通行可能表示」と、流入不可能を示す「通行不能表示」とのいずれかに切り替え可能な電光表示器よりなる。
通行表示器36による各表示は、例えば、一般道路の信号灯器と同様に、「青灯器」又は「赤灯器」の点灯で行ってもよいし、「通行可」及び「ストップ」などの文字表示によって行ってもよい。
【0080】
建物1の東側には、管理室15が設置されている。管理室15の内部には、管理装置38が収納されている。
管理装置38は、通信線(
図1及び
図3の破線)を介してルータ37に接続されている。駐車場2の各種の管理対象機器31,33〜36も、通信線を介してルータ37に接続されている(
図3参照)。従って、管理装置38と管理対象機器31,33〜36は、ルータ37を介して有線通信が可能となるように接続されている。
【0081】
なお、管理装置38と管理対象機器31,33〜36との通信は、例えば無線LAN(Local Area Network)などの通信規格を利用した無線通信であってもよい。
図1に示す建物1及び駐車場2の内部の構造及び配置はあくまでも一例であって、その構造及び配置は
図1のものに限定されるものではない。
【0082】
〔無線通信システムの通信主体の組み合わせ〕
図2は、無線通信システムにおける通信主体の組み合わせの説明図である。
本実施形態の無線通信システムでは、
図1に示す駐車場2において、路側通信機31、車両20の車載通信機54及び歩行者24の携帯端末70が、それぞれ、所定のフォーマットの通信フレーム(
図8参照)を用いた無線通信によりデータ交換を行う。
【0083】
従って、本実施形態の無線通信システムを通信主体の相違で区別すると、
図2に示す「路車間通信」、「車車間通信」、「路歩間通信」及び「車歩間通信」の4種類となる。なお、各通信の内容を簡単に定義すると次の通りである。
路車間通信:路側通信機31と車両20の車載通信機54の間の無線通信
車車間通信:車両20の車載通信機54同士の無線通信
路歩間通信:路側通信機31と歩行者24の携帯端末70の間の無線通信
車歩間通信:車両20の車載通信機54と歩行者24の携帯端末70の間の無線通信
【0084】
上記4種類の通信を共存させるマルチアクセス(Multiple Access)方式としては、周波数分割多重(FDMA:Frequency Division Multiple Access)や符号分割多重(CDMA:Code Division Multiple Access)などを採用することができる。
路側通信機31による送信の優先度を向上させる場合には、「700MHz帯高度道路交通システム標準規格(ARIB STD-T109)」に倣ったマルチアクセス方式を採用することにしてもよい。本実施形態ではこの方式が採用されているものとする。
【0085】
上記標準規格のマルチアクセス方式は、路側通信機31が送信する専用のタイムスロットをTDMA(Time Division Multiple Access)方式で割り当て、路側専用のタイムスロット以外のタイムスロットをCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/ Collision Avoidance)方式による車車間通信に割り当てる方式である。
なお、本実施形態では、携帯端末70も、車載通信機54と同様に、路側専用のタイムスロット以外の時間帯にCSMA/CA方式による無線通信を行うものとする。
【0086】
〔駐車場の管理システムの構成〕
図3は、駐車場2の管理システム30の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、管理システム30は、路側通信機31、監視カメラ33、スピーカ34、充電機器35、通行表示器36、ルータ37及び管理装置38を含む。
路側通信機31は、通信部81、制御部82、記憶部83及びアンテナ84を含む。通信部81は、無線通信及び有線通信の機能を有する通信インターフェースよりなる。
【0087】
従って、通信部81は、アンテナ84から受信したRF信号をデジタル信号に変換して制御部82に出力し、制御部82から入力されたデジタル信号をRF信号に変換してアンテナ84から送信する。
また、通信部81は、管理装置38から受信したアナログ信号をデジタル信号に変換して制御部82に出力し、制御部82から入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換して管理装置38に送信する。
【0088】
制御部82は、公知のCPU、RAM及びRAMなどを含む。制御部82は、記憶部83に記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行し、路側通信機31の全体の動作を制御する。
記憶部83は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどより構成されており、各種のコンピュータプログラムやデータを記憶する。
【0089】
制御部82が実行する制御には、通信部81に対する中継制御が含まれる。例えば、制御部82は、通信部81が受信した通信フレームを管理装置38に転送する。
また、制御部82は、顧客全員に通知すべき情報が格納された管理フレームを通信部81が管理装置38から受信すると、受信した管理フレームを通信部81により無線でブロードキャスト送信させる。
【0090】
監視カメラ33は、駐車場2の内部の動画映像を撮影するビデオカメラよりなる。監視カメラ33は、撮影した映像の画像データを管理装置38の通信部91に送信する。
管理装置38の制御部88は、通信部91が受信した画像データを記憶部93に一時的に記憶するとともに、出力部94のモニタにライブ映像として表示する。
スピーカ34は、音声による館内放送を駐車場2に向けて行うための拡声器よりなる。スピーカ34は、管理装置38の通信部91から受信した音声信号を拡声して出力する。
【0091】
充電機器35は、充電エリア10の所定位置に車両20がセットされたかを検出する検出センサ(図示せず)を有する。この検出信号は管理装置38に送信される。
管理装置38の制御部88は、充電エリア10の所定位置に車両20が検出されかつ予定の給電開始時刻になると、給電オン信号を充電機器35に送信する。制御部88は、予定の給電終了時刻が経過すると、給電オフ信号を充電機器35に送信する。
【0092】
通行表示器36は、管理装置38から受信した制御信号に応じて、交差点への流入が可能か不可能かを車両20の搭乗者が識別するための表示を行う。
管理装置38の制御部88は、車両20の流入を許可する流入方向が「通行可能表示」(例えば、青信号)となり、車両20の流入を規制する流入方向が「通行不能表示」(例えば、赤信号)となるように制御信号を生成し、生成した制御信号を駐車場2内の交差点に設置された通行表示器36に送信する。
【0093】
管理装置38は、内部バス89を介して通信可能に接続された制御部88及び入出力インターフェース90と、このインターフェース90に接続された通信部91、ドライブ92、記憶部93、出力部94、入力部95を備えている。
制御部88は、公知のCPU、RAM及びROMなどを含む。制御部88は、記憶部93に記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行し、管理装置38の全体の動作を制御する。
【0094】
記憶部93は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどより構成されており、各種のコンピュータプログラムやデータを記憶する。入力部95は、キーボード、マウス及び音声マイクなどよりなり、出力部94は、ディスプレイ及びスピーカなどよりなる。
通信部91は、ネットワークインターフェースよりなる。通信部91は、ルータ37に接続された各路側通信機31と有線LANを構成している。通信部91は、その他の管理対象機器33〜36ともデータ通信が可能である。
【0095】
ドライブ92は、CDやDVDなどのディスク記録媒体を駆動し、そのディスクに対して所定のデータを読み書き可能である。
制御部88が実行するコンピュータプログラムは、上記ディスクに書き込まれたコンピュータプログラムであってもよい。
【0096】
制御部88が実行する制御には、各管理対象機器31,33〜36に対する上述の制御の他に、路側通信機31から受信した通信フレームを用いた充電順序の決定処理(
図14参照)などがある。
また、制御部88は、顧客全員に通知すべき情報がある場合には、その情報を格納した管理フレームを生成し、生成した管理フレームを通信部81により各路側通信機31宛てにブロードキャスト送信させる。
【0097】
〔車両の構成〕
(自律運転車両の場合)
図4は、自律運転車両21の制御システム50の構成例を示すブロック図である。
図4に示すように、自律運転車両21の制御システム50は、内部バス52を介して通信可能に接続された中央制御部51及び入出力インターフェース53と、このインターフェース53に接続された車載通信機54、走行制御ユニット55、操舵制御ユニット56、ナビゲーションユニット57、第1センサ58及び第2センサ59を備えている。
【0098】
中央制御部51は、公知のECU(Electronic Engine Control Unit)よりなり、記憶装置(図示せず)を内部に有する。中央制御部51は、記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行し、制御システム50の全体の動作を制御する。
車載通信機54は、通信部104、制御部105、記憶部106及びアンテナ107を含む。通信部104は、外部との無線通信機能とシステム内での通信機能とを有する通信インターフェースよりなる。
【0099】
従って、通信部104は、アンテナ107から受信したRF信号をデジタル信号に変換して制御部105に出力し、制御部105から入力されたデジタル信号をRF信号に変換してアンテナ107から送信する。
また、通信部104は、中央制御部51から受信した制御信号を制御部105に出力し、制御部105から入力された制御信号を中央制御部51に送信する。
【0100】
制御部105は、公知のCPU、RAM及びRAMなどを含む。制御部105は、記憶部106に記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行し、車載通信機54の全体の動作を制御する。
記憶部106は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどより構成されており、各種のコンピュータプログラムやデータを記憶する。記憶部106は、自車両の識別情報である車両IDを記憶している。車両IDは、例えば、エンジンの始動時に乱数発生器が生成する数値などよりなる。
【0101】
制御部105が実行する制御には、制御システム50の現時点の状態情報を格納した通信フレーム(
図8参照)を外部に送信する情報発信処理(
図9参照)が含まれる。
具体的には、制御部105は、
図8に定義する格納領域A1〜A10に格納すべき現時点の識別情報を制御システム50内の各部から収集し、その識別情報を記憶部106に一時的に記憶させる。そして、記憶した識別情報を格納した通信フレームを生成し、生成した通信フレームを通信部104に無線送信させる。
【0102】
走行制御ユニット55は、車両20の走行に関するすべての制御を管轄する制御ユニットである。
走行制御ユニット55が行う制御には、例えば、アクセルペダルの踏み込み量に応じてエンジンや電気モータなどの回転数を調整する加減速制御、ブレーキペダルの踏み込み量に応じて油圧ブレーキの油圧力を調整する制動制御、トルクコンバータに対する変速制御などが含まれる。
【0103】
操舵制御ユニット56は、車両20の操舵に関するすべての制御を管轄する制御ユニットである。
操舵制御ユニット56が行う制御には、例えば、ハンドルの回転量に応じて前輪の操舵角を調整する方向制御、方向指示器などの灯器類の点滅を制御する灯器制御、急な制動によるタイヤのロックを防止して操舵可能状態を維持するABS(Antilock Brake System)制御などが含まれる。
【0104】
ナビゲーションユニット57は、自車両が目的地まで通行する場合の最適経路を探索するコンピュータ装置よりなる経路探索部と、経路探索部に入力するための操作部と、演算結果である経路を画像や音声で搭乗者に案内するディスプレイ及びスピーカを有する。
経路探索部は、リンクコストが最小となる最小コスト経路を特定の経路探索ロジックによって算出するのが一般的である。この経路探索ロジックとしては、例えばダイクストラ法やポテンシャル法が利用される。
【0105】
ナビゲーションユニット57は、GPS信号から現在時刻を取得する時刻同期機能と、GPS信号から自車両の現在位置(緯度、経度及び高度)を計測する位置検出機能と、方位センサによって自車両の方位及び角速度を計測する方位検出機能などを有する。
ナビゲーションユニット57は、道路地図データが格納された記憶装置も備えている。道路地図データは、経路探索部による探索処理に際して自車両の位置情報をマップマッチングするために使用される。
【0106】
第1センサ58は、支援運転に必要なセンシング結果を得るためのセンサ類である。
図4に示すように、例えば、第1センサ58は、車両20の前後左右の四隅に配置された超音波センサやビデオカメラなどよりなる。
前側に設けられた第1センサ58は、主として自車両の前方に存在する物体の存在を検出するためのセンサであり、後側に設けられた第1センサ58は、主として自車両の後方に存在する物体の存在を検出するためのセンサである。
【0107】
第2センサ59は、自律運転に必要なセンシング結果を得るためのセンサ類である。
図4に示すように、例えば、第2センサ59は、車両20の天井部分に配置された超音波センサやビデオカメラなどよりなる。
第2センサ59は、縦軸心回りに比較的高速で回転自在となっており、自車両の周囲に存在する物体の存在を検出するためのセンサである。
【0108】
自律運転車両21の中央制御部51は、第1及び第2センサ58,59によるセンシング結果に基づいて自律運転を行うことができる。自律運転が可能な車両の実例としては、例えば特許文献4に記載の車両(いわゆる「グーグルカー」)がある。
自律運転の制御原理は、第1及び第2センサ58,59によって検出した物体に予期される挙動を過去のデータから予測し、予測した挙動に基づいて自車両が目的位置に指向するよう、各ユニット55〜57に指令を与えるものである。
【0109】
なお、自律運転では、自車両の運転の全部を中央制御部51が行うが、ナビゲーションユニット57に対する目的地の入力などの初期設定については、自律運転車両21の所有者(搭乗又は非搭乗を問わない。)や所有者から管理委託を受けた者などが行う。
【0110】
自律運転車両21の中央制御部51は、第1センサ58によるセンシング結果に基づいて支援運転を行うこともできる。支援運転が可能な車両の実例としては、例えば特許文献1〜3に記載の車両がある。
支援運転の制御例としては、第1センサ58によって検出した物体と自車両の間の距離から衝突可能性を予測し、衝突可能性が高いと判断した場合に減速介入したり、搭乗者に注意喚起したりするよう、各ユニット55〜57に指令を与えるものがある。
【0111】
自律運転車両21の中央制御部51は、第1及び第2センサ58,59によるセンシング結果を利用せず、搭乗者の手動運転に切り替えることもできる。
このように、自律運転車両21に搭載された制御システム50は、自律運転が可能であることは勿論のこと、ダウングレードした動作モードとして、支援運転又は手動運転のいずれかを実行することができる。動作モードの切り替えは、搭乗者による手動の操作入力や、携帯端末70からの制御指令の送信などによって行われる。
【0112】
(支援運転車両の場合)
図5は、支援運転車両22の制御システム50の構成例を示すブロック図である。
以下、
図4と共通する機能部分については、同じ参照符号を付して詳細な説明を省略し、
図4に示す自律運転車両21との相違点について説明する。
【0113】
図5に示す支援運転車両22の制御システム50は、中央制御部51が自律運転に対応しておらず、このため第2センサ59が省略されている。
すなわち、支援運転車両22の中央制御部51は、第1センサ58によるセンシング結果に基づいて支援運転を行うことができるが、第2センサ59によるセンシング結果を用いた自律運転を行うことはできない。
【0114】
支援運転車両22の中央制御部51は、第1センサ58によるセンシング結果を利用せず、搭乗者の手動運転に切り替えることもできる。
このように、支援運転車両22に搭載された制御システム50は、支援運転が可能であることは勿論のこと、ダウングレードした動作モードとして、手動運転を実行することができる。動作モードの切り替えは、搭乗者による手動の操作入力や、携帯端末70からの制御信号の送信などによって行われる。
【0115】
(手動運転車両の場合)
図6は、手動運転車両23の制御システム50の構成例を示すブロック図である。
以下、
図4及び
図5と共通する機能部分については、同じ参照符号を付して詳細な説明を省略し、
図4に示す自律運転車両21及び
図5に示す支援運転車両22との相違点について説明する。
【0116】
図6に示す手動運転車両23の制御システム50は、中央制御部51が自律運転及び支援運転に対応しておらず、このため第1及び第2センサ58,59が省略されている。
すなわち、手動運転車両23の中央制御部51は、第1及び第2センサ58,59によるセンシング結果を用いた自律運転と、第1センサ58によるセンシング結果を用いた支援運転を行うことができず、手動運転のみを実行することができる。
【0117】
〔携帯端末の構成〕
図7は、携帯端末70の構成例を示すブロック図である。
図7に示すように、携帯端末70は、通信部120、制御部121、記憶部122、操作部124、表示部123及びアンテナ125を含む。通信部120は、契約したキャリアの携帯基地局の他に、路側通信機31及び車載通信機54とも無線通信できる通信インターフェースを備えている。
【0118】
従って、通信部120は、携帯基地局からのRF信号だけでなく、路側通信機31や車載通信機54からアンテナ125に到達したRF信号についても、デジタル信号に変換して制御部121に出力することができる。
また、通信部120は、制御部121から入力されたデジタル信号をRF信号に変換して、路側通信機31や車載通信機54宛てにアンテナ125から送信することもできる。
【0119】
制御部121は、公知のCPU、ROM及びRAMなどを含む。制御部121は、記憶部122に記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行し、携帯端末70の全体の動作を制御する。
記憶部122は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどより構成されており、各種のコンピュータプログラムやデータを記憶する。記憶部122は、携帯端末70の識別情報である携帯IDを記憶している。携帯IDは、例えば、契約者の固有IDやMACアドレスなどよりなる。
【0120】
記憶部122は、利用者が任意にインストールした各種のアプリケーションソフトを記憶している。
このアプリケーションソフトには、例えば、路側通信機31及び車載通信機54との無線通信を行うための制御プログラムなどが含まれる。
【0121】
制御部121が実行する制御には、携帯端末70の現時点の状態情報を格納した通信フレーム(
図8参照)を外部に送信する情報発信処理(
図9参照)が含まれる。
具体的には、制御部121は、
図8に定義する格納領域A1〜A10に格納すべき現時点の識別情報を携帯端末70内の各部から収集し、その識別情報を記憶部122に一時的に記憶させる。そして、記憶した識別情報を格納した通信フレームを生成し、生成した通信フレームを通信部120に無線送信させる。
【0122】
操作部124は、各種の操作ボタンや表示部123のタッチパネル機能により構成されている。操作部124は、利用者の操作に応じた操作信号を制御部121に出力する。
表示部123は、例えば液晶ディスプレイよりなり、各種の情報を利用者に表示する。例えば、表示部123は、管理装置38から送信された画像データなどを画面表示することができる。
【0123】
携帯端末70は、GPS信号から現在時刻を取得する時刻同期機能と、GPS信号から自車両の現在位置(緯度、経度及び高度)を計測する位置検出機能と、方位センサによって自車両の方位及び角速度を計測する方位検出機能なども有する。
【0124】
〔通信フレームのフレームフォーマット〕
図8は、通信フレームのフレームフォーマットの一例を示す説明図である。
図8に示すように、本実施形態の無線通信システムにおいて送受信される「通信フレーム」には、「プリアンブル」、「ヘッダ」、「データ」及び「CRC」(Cyclic Redundancy Check)が含まれる。
【0125】
「データ」には、A1からA10までの「格納領域」が含まれている。
「格納領域A1」は、端末IDの格納領域である。格納領域A1には、通信フレームの送信時における移動通信機54,70の端末IDの値が格納される。
例えば、車載通信機54の制御部105は、フレーム送信時に記憶部106が記憶する車両IDの値を格納領域A1に格納する。また、携帯端末70の制御部121は、フレーム送信時に記憶部122が記憶する携帯IDの値を格納領域A1に格納する。
【0126】
「格納領域A2」は、時刻情報の格納領域である。格納領域A2には、通信フレームの送信時刻が格納される。
移動通信機54,70による通信フレームの送信時刻は、厳密にはアンテナ107,125からの電波送出時刻である。しかし、RF部の遅延時間は非常に小さいので、制御部105,121による通信フレームの生成時点における現在時刻値であればよい。
【0127】
「格納領域A3」は、現時点の位置情報の格納領域である。格納領域A3には、現時点の位置情報として緯度と経度が格納される。
例えば、移動通信機54,70の制御部105,121は、フレーム送信時に記憶部106,122が記憶する緯度と経度(フレーム送信時における現在位置)を格納領域A3に格納する。
【0128】
「格納領域A4」は、移動体の種別を定義するための格納領域である。従って、格納領域A4には、移動体の種別の識別情報が格納される。
本実施形態では、移動体の種別として、「一般車両」、「大型車両」、「二輪車」及び「歩行者」を想定している。従って、移動体の種別の識別情報としては、少なくとも2ビットのデータ量を割り当てればよい。
【0129】
例えば、「一般車両」=00、「大型車両」=01、「二輪車」=10、「歩行者」=11のように識別情報が割り当てられている場合には、車載通信機54の制御部105は、記憶部106が記憶する自車両の種別に対応する識別情報(=00,01又は10)を格納領域A4に格納する。
また、携帯端末70の制御部121は、記憶部122が記憶する移動体の種別に対応する識別情報(=11)を格納領域A4に格納する。
【0130】
「格納領域A5」は、移動体の動作モードの種別を定義するための格納領域である。従って、格納領域A5には、モード種別の識別情報が格納される。
本実施形態では、移動体の動作モードのモード種別として、「手動運転」、「支援運転」、「自律運転」及び「歩行者移動」を想定している。従って、モード種別の識別情報としては、少なくとも2ビットのデータ量を割り当てればよい。
【0131】
例えば、「手動運転」=00、「支援運転」=01、「自律運転」=10、「歩行者移動」=11のように識別情報が割り当てられている場合、車載通信機54の制御部105は、現時点のモード種別に対応する識別情報を決定し、決定した識別情報(00,01又は10)を格納領域A5に格納する。
制御部105によるモード種別の決定は、例えば、制御部105が中央制御部51にアクセスして現時点のモード種別を問い合わせることによって行うことができる。
【0132】
手動運転車両23では、手動運転のみが実行される。従って、手動運転車両23の車載通信機54が送信する通信フレームに含まれるモード種別の識別情報は、必然的に「手動運転」(=00)となる。
支援運転車両22では、支援運転と手動運転のいずれかが実行される。従って、支援運転車両22の車載通信機54が送信する通信フレームに含まれるモード種別の識別情報は、「支援運転」(=01)又は「手動運転」(=00)となる。
【0133】
自律運転車両21では、自律運転、支援運転又は手動運転のいずれかが実行される。従って、自律運転車両21の車載通信機54が送信する通信フレームに含まれるモード種別の識別情報は、「自律運転」(=10)、「支援運転」(=01)又は「手動運転」(=00)となる。
【0134】
携帯端末70の制御部121は、歩行者24のモード種別に対応する識別情報を決定し、決定した識別情報(=11)を格納領域A5に格納する。
制御部121によるモード種別の決定、すなわち、歩行者24が実際に移動中であるか否かの判定は、例えば、携帯端末70に搭載された加速度センサなどにより歩行が検出されたことなどによって行うことができる。なお、歩行には、歩く場合だけでなく駆け足で移動する場合も含まれる。
【0135】
「格納領域A6」は、搭乗者の有無を定義するための格納領域である。従って、格納領域A6には、車両20の搭乗者が有り又は無しのいずれであるかの識別情報が格納される。
車両20の搭乗者の有無は、「有」又は「無」のいずれかの状態しかない。従って、搭乗者の有無の識別情報としては、少なくとも1ビットのデータ量を割り当てればよい。
【0136】
例えば、「搭乗者有」=0、「搭乗者無」=1のように識別情報が割り当てられている場合、車載通信機54の制御部105は、記憶部106が記憶する自車両の搭乗者の有無に対応する識別情報(=0又は1)を格納領域A6に格納する。
搭乗者の有無の判定は、例えば、車両20に対するキー挿入の有無や、車両20の所有者による所定の設定入力があったか否かなどにより行うことができる。
【0137】
支援運転車両22及び手動運転車両23では、車両20の運転主体は必ず搭乗者である。従って、これらの車両22,23が走行中に送信する通信フレームに含まれる搭乗者の有無の識別情報は、必然的に「搭乗者有」(=0)となる。
自律運転車両21では、自律運転の場合に搭乗者がいないこともあり得る。従って、この車両21が走行中に送信する通信フレームに含まれる搭乗者の有無の識別情報は、「搭乗者有」(=0)の場合と「搭乗者無」(=1)の場合がある。
【0138】
なお、移動体が歩行者24の場合は、搭乗者の有無は無関係であるから、携帯端末70の制御部121は格納領域A6に識別情報を格納しない。
【0139】
「格納領域A7」は、車両20の駐車情報を定義するための格納領域である。「駐車情報」の格納領域A7は、現時点の車両20の「駐車状態」を定義するための格納領域と、車両20が駐車する「駐車エリア」に関する格納領域とに分類されている。
駐車場2での車両20の駐車状態は、未駐車の状態を示す「移動中」と、駐車完了を示す「駐車中」のいずれかで定義できる。従って、駐車状態の識別情報としては、少なくとも1ビットのデータ量を割り当てればよい。
【0140】
例えば、「移動中」=0、「駐車中」=1のように識別情報が割り当てられている場合、車載通信機54の制御部105は、現時点の駐車状態に対応する識別情報を決定し、決定した識別情報(=0又は1)を格納領域A7の駐車状態の部分に格納する。
車両20の駐車状態の判定は、例えば、車両20が駐車場2内で走行中であるときは移動中と判断し、駐車場2内の所定位置で一定時間(例えば、10分)以上停止している場合は駐車中と判断することによって行うことができる。
【0141】
本実施形態では、車両20が使用する駐車エリアの種別として、「混在エリア」及び「専用エリア」を想定している。従って、駐車エリアの種別の識別情報としては、少なくとも1ビットのデータ量を割り当てればよい。
例えば、「混在エリア」=0、「専用エリア」=1のように識別情報が割り当てられている場合、車載通信機54の制御部105は、駐車エリアに対応する識別情報を記憶部106から読み出して決定し、決定した識別情報(=0又は1)を格納領域A7の駐車エリアの部分に格納する。
【0142】
支援運転車両22及び手動運転車両23は、駐車場2の専用エリア9を利用できない。従って、これらの車両22,23が送信する通信フレームに含まれる駐車エリアの種別の識別情報は、必然的に「混在エリア」(=0)となる。
自律運転車両21は、駐車場2の混在エリア8と専用エリア9の双方を利用できる。従って、この車両21が送信する通信フレームに含まれる駐車エリアの識別情報は、「混在エリア」(=0)の場合と「専用エリア」(=1)の場合がある。
【0143】
自律運転車両21が混在エリア8と専用エリア9のいずれを利用するかの設定は、所有者によるナビゲーションユニット57の操作部に対する手動の設定入力や、携帯端末70を用いた制御フレームの送信などによって行うことができる。
なお、移動体が歩行者24の場合は、駐車情報(駐車状態と駐車エリア)は無関係であるから、携帯端末70の制御部121は格納領域A7に識別情報を格納しない。
【0144】
「格納領域A8」は、運転者(ドライバ)の属性を定義するための格納領域である。格納領域A8には、車両20の運転者の属性として交通弱者であるか否かの識別情報が格納される。運転者が交通弱者である場合とは、例えば、運転者が70歳以上の高齢者ある場合や、運転免許を取り立ての初心者である場合などが含まれる。
運転者が交通弱者か否かは、「弱者フラグ有」又は「弱者フラグ無」のいずれかで表現できる。従って、運転者の属性の識別情報としては、少なくとも1ビットのデータ量を割り当てればよい。
【0145】
例えば、「弱者フラグ有」=0、「弱者フラグ無」=1のように識別情報が割り当てられている場合、車載通信機54の制御部105は、記憶部106が記憶する自車両の運転者の属性の識別情報(=0又は1)を格納領域A8に格納する。
運転者が交通弱者であることの設定は、例えば、交通弱者である運転者がナビゲーションユニット57の操作部に予め手動で入力することよって行うことができる。
【0146】
自律運転車両21、支援運転車両22及び手動運転車両23のすべてにおいて、手動運転が可能であり、手動運転の運転者は交通弱者の場合があり得る。従って、車両20が送信する通信フレームに含まれる運転者の属性の識別情報は、「弱者フラグ有」の場合と「弱者フラグ無」の場合がある。
なお、移動体が歩行者24の場合は、運転者の属性は無関係であるから、携帯端末70の制御部121は格納領域A8に識別情報を格納しない。
【0147】
「格納領域A9」は、エネルギー情報を定義するための格納領域である。「エネルギー情報」の格納領域A9は、エネルギーの「補給要否」を定義するための格納領域と、車両20が対応する「エネルギータイプ」に関する格納領域とに分類されている。
車両20に対するエネルギーの補給要否は、補給が必要であることを示す「補給要」と、補給が不要であることを示す「補給否」のいずれかで定義できる。従って、補給要否の識別情報としては、少なくとも1ビットのデータ量を割り当てればよい。
【0148】
例えば、「補給要」=0、「補給否」=1のように識別情報が割り当てられている場合、車載通信機54の制御部105は、自車両の補給要否に対応する識別情報を決定し、決定した識別情報(=0又は1)を格納領域A9の補給要否の部分に格納する。
車両20の補給要否の判定は、例えば、車両20が電動車両である場合は、現時点の充電残量の多寡や現時点の燃料残量の多寡を、所定の閾値と比較することによって行うことができる。
【0149】
電動車両を含めて車両20に補給するエネルギータイプとしては、バッテリに対する「充電」、ガソリンなどの燃料の「給油」、それらの双方が可能である「双方可」のいずれかで定義できる。従って、エネルギータイプを識別するための識別情報としては、少なくとも2ビットのデータ量を割り当てればよい。
【0150】
例えば、「充電」=00、「給油」=01、「双方可」=「10」のように識別情報が割り当てられている場合、車載通信機54の制御部105は、自車両に対応するエネルギータイプを記憶部106から読み出して決定し、決定した識別情報(=00,01又は10)を格納領域A9のエネルギータイプの部分に格納する。
【0151】
「格納領域A10」は、自由領域を定義するための格納領域である。本実施形態では、格納領域A10には、電動車両である車両20の所有者が、駐車場2の充電エリア10に設けられた充電機器35の利用する場合に必要となる各種の情報が格納される。
例えば、格納領域A10には、自車両のパッテリに充電したい充電希望量や、駐車場2からの出庫予定時刻などが格納される。これらの情報は、電動車両の所有者が、運転者がナビゲーションユニット57の操作部に予め手動で入力することよって行うことができる。
【0152】
なお、
図8に示す通信フレームの例では、A1〜A10までの10個の格納領域Aが定義されているが、11個以上の格納領域Ai(i≧11)を定義することにしてもよいし、10個未満の格納領域Ai(1≦i<10)が定義された通信フレームを採用してもよい。
【0153】
〔移動通信機による情報発信制御〕
図9は、移動通信機54,70が実行する情報発信制御のフローチャートである。
図9に示すように、移動通信機54,70の制御部105,121は、まず、移動体の状態情報を取得する(ステップS10)。
移動体の「状態情報」とは、
図8に定義する通信フレームの各格納領域A1〜A10に格納すべき現時点の識別情報のことをいう。
【0154】
従って、移動体が車両20である場合、車載通信機54の制御部105は、
図8に定義する格納領域A1〜A10に格納すべき現時点の識別情報を、制御システム50内の各部から収集し、その識別情報を記憶部106に一時的に記憶させる。
また、移動体が歩行者24である場合、携帯端末70の制御部121は、
図8に定義する格納領域A1〜A10に格納すべき現時点の識別情報を収集し、その識別情報を記憶部122に一時的に記憶させる。
【0155】
次に、移動通信機54,70の制御部105,121は、状態情報を所定の格納領域A1〜A10に格納して通信フレーム(
図8参照)を生成し、生成した通信フレームを通信部104,120に無線送信させる(ステップS12)。
これにより、駐車場2に存在する車両20や歩行者24などよりなる移動体は、通信フレームを用いた車車間通信や車歩間通信により、自身以外の他の移動体の状態情報を察知できるようになる。
【0156】
例えば、
図2に示す車車間通信を想定すると、受信可能な距離だけ離れた両車両20の車載通信機54の双方が、情報発信処理を実行して通信フレームを送出する。
従って、一方の車両20は、他方の車両20から受信した通信フレームから他方の車両20の状態情報を把握できる。また、他方の車両20は、一方の車両20から受信した通信フレームから一方の車両20の状態情報を把握できる。
【0157】
同様に、
図2に示す車歩間通信を想定すると、受信可能な距離だけ離れた車両20の車載通信機54と歩行者24の携帯端末70の双方が、情報発信処理を実行して通信フレームを送出する。
従って、車両20は、歩行者24から受信した通信フレームから歩行者24の状態情報を把握できる。また、歩行者24は、車両20から受信した通信フレームから車両20の状態情報を把握できる。
【0158】
また、
図2に示す路車間通信を想定すると、車両20の車載通信機54が情報発信処理を実行して通信フレームを送出することにより、路側通信機31は、受信可能な距離だけ離れた複数の車両20の状態情報を把握できる。
そして、路側通信機31は、車両20や歩行者24の状態情報を含む通信フレームを受信すると、受信した通信フレームを即時にブロードキャストで転送する「第1の転送処理」と、管理装置38に転送する「第2の転送処理」を実行する。
【0159】
第1の転送処理を行う理由は、一方の車両20と他方の車両20の間にフェンス3や他の車両20などの障害物が存在するために、車車間通信では通信フレームを受信できない場合があるからである。
路側通信機31が、第1の転送処理を実行すれば、車車間通信では通信フレームを送受信できない場合でも、他の車両20の状態情報を事前に察知でき、通信フレームを用いた安全支援制御(
図10参照)をより確実に実行できるという利点がある。
【0160】
第2の転送処理を行う理由は、管理装置38が、車両20や歩行者24の状態情報を含む通信フレームを収集管理するためである。
管理装置38が移動体の状態情報を含む通信フレームを収集管理すれば、仮に駐車場2内で事故が発生した場合に、事故が発生した時刻付近の通信フレームの内容を解析することで、事故の責任がいずれにあるかを分析することができる。
【0161】
なお、
図9の情報発信制御は、移動体が車両20の場合には、車載通信機54の制御部105ではなく、制御システム50の中央制御部51が実行することにしてもよい。
【0162】
〔通信フレームの識別情報を利用した制御の概要〕
本実施形態の無線通信システムでは、
図8に示す通信フレームを用いて、各々の移動体の無線通信機が自身の状態情報を外部に発信している。
従って、通信フレームの受信側において、他の移動体の通信フレームに含まれる識別情報の内容に応じて、駐車場2での安全運転の励行に役立つ制御や、管理システム30による効率的な管理制御など、種々の有用な制御を実行できるようになる。以下、これらの制御の内容について説明する。
【0163】
〔車載通信機による安全支援制御〕
図10は、車載通信機54が実行する安全支援制御のフローチャートである。
図10に示すように、車載通信機54の制御部105は、他の移動体の通信フレームを受信したか否かを判定する(ステップS20)。
他の移動体の通信フレームは、車車間通信や歩車間通信により他の移動体から直接受信した通信フレームでもよいし、路側通信機31での転送によって受信した通信フレームであってもよい。
【0164】
上記の判定結果が否定的である場合は、制御部105は、処理を終了する。
上記の判定結果が肯定的である場合は、制御部105は、更に、他の移動体が自車両から近隣の位置にありかつ接近中か否かを判定する(ステップS22)。
他の移動体が近隣の位置にあるか否かの判定は、自車両から他の移動体までの距離が所定の閾値(例えば、10m)以内にあるか否かによって行うことができる。
他の移動体が接近中か否かの判定は、自車両から他の移動体までの距離の減少度合いが所定の閾値以内であるか否かによって行うことができる。
【0165】
上記の判定結果が否定的である場合は、制御部105は、処理を終了する。
上記の判定結果が肯定的である場合は、制御部105は、「通行優先度の比較処理」を実行する(ステップS24)。
具体的には、制御部105は、自車両のモード種別と他の移動体のモード種別との比較に基づいて、自車両の通行優先度と他の移動体の通行優先度のうち、いずれの通行優先度が高いかを比較する。
【0166】
車載通信機54の記憶部106には、移動体のモード種別に対応付けられた下記の通行優先度の関係式が予め設定されている。
P>M>A>A+
ここで、「P」は「歩行者移動」、「M」は「手動運転」、「A」は「支援運転」、「A+」は「自律運転」を意味する。
【0167】
そして、制御部105は、自車両のモード種別と、通信フレームから抽出したモード種別を上記の関係式に当てはめ、いずれの移動体の通行優先度が高いかを比較する。
例えば、自車両のモード種別が自律運転(A+)であり、他の移動体のモード種別が手動運転(M)であるとすると、上記の関係式を用いた比較により、制御部105は他の移動体の通行優先度の方が高いと判定できる。
【0168】
制御部105は、上記の関係式を用いた比較処理の結果、通信相手の通行優先度が自車両の通行優先度よりも高いか否かを判定する(ステップS26)。
上記の判定結果が否定的である場合は、制御部105は、処理を終了する。
上記の判定結果が肯定的である場合は、制御部105は、相手方の通行を優先させるための「相手方の通行優先処理」を実行する(ステップS28)。
【0169】
相手方の通行優先処理の具体例としては、自車両の通行優先度が低いため道を譲るべき旨を、音声又は画像出力により搭乗者に報知することが考えられる。また、自車両が停止するようにブレーキ介入を行うことにしてもよい。
上記の報知や介入制御に加えて、ヘッドライトを点滅させるパッシング動作を行って、相手方に通行を促してもよいし、道を譲る旨の情報を含む制御フレームを相手方の車載通信機54又は携帯端末70に送信することにしてもよい。
【0170】
このように、本実施形態の無線通信システムによれば、車載通信機54の制御部105が、自車両のモード種別と受信した通信フレームに含まれるモード種別との比較に基づいて、自車両の動作内容を決定する。
従って、種々のモード種別の車両20が混在する駐車場2の混在エリア8において、各車両20が適切な安全運転行動を取ることができる。
【0171】
例えば、自律運転(A+)の自律運転車両21が無人で走行中である場合を想定する。この場合、自律運転車両21に遭遇した他の車両22,23の搭乗者は、無人であることに驚いたり不安を感じたりして、事故を招く可能性が高くなる。
また、自律運転(A+)の自律運転車両21が無人の場合は、所有者が出入口6で降車後に駐車に向かうように所有者が指示、あるいは、出庫のために出入口6まで来るように所有者が指令した可能性が高いのに対し、支援運転(A+)や手動運転(M)の車両22,23の場合は、車両22,23に顧客が乗っているので、入庫や出庫を早く済ませた方が顧客満足度を向上させる上で好ましい。
【0172】
本実施形態の無線通信システムによれば、自律運転(A+)の通行優先度が最も低く設定されているので、自律運転(A+)の自律運転車両21は、他の動作モードの車両22,23や歩行者24に遭遇すると、必ず相手方の通行優先処理(
図10のステップS28)を行って道を譲る。
このため、他の車両22,23の搭乗者が不安を感じて事故を招く可能性が低減する。また、顧客が乗っている車両22,23の入庫又は出庫が早まる可能性が高まり、顧客満足度の向上に繋がる。
【0173】
本実施形態の無線通信システムによれば、歩行者移動(P)である歩行者24の通行優先度が最も高く設定されているので、駐車場2内における歩行者24の通行の安全性を向上できるという利点もある。
【0174】
本実施形態の無線通信システムにおいて、手動運転(M)の通行優先度が支援運転(A)の通行優先度よりも高いのは、次の理由による。
すなわち、手動運転(M)の車両20の運転者は制御システム50による運転支援を受けてないため、入庫及び出庫のための運転操作が支援運転(A)よりも重労働であると考えられる。また、支援運転(A)よりも衝突事故などを起こす可能性が高い。従って、手動運転(M)の通行優先度を高くした方が、事故の可能性を削減しつつ、駐車場2への入庫又は出庫が早まる可能性が全体的に高まり、顧客満足度の向上に繋がるからである。
【0175】
上述の通り、本実施形態の通信フレーム(
図8参照)には、運転者の属性が交通弱者であるか否かの識別情報を格納する格納領域A8が含まれている(
図8参照)。
そこで、本実施形態の無線通信システムにおいて、通行優先度が高いか否かの判定条件として、運転者の属性が交通弱者であるか否かを更に含めることにしてもよい。
【0176】
この場合、移動体のモード種別に対応付ける通行優先度の関係式として、例えば次の関係式を採用すればよい。
P>MW>AW>M>A>A+
ここで、「P」は「歩行者移動」、「MW」は「手動運転かつ運転者が交通弱者」、「AW」は「支援運転かつ運転者が交通弱者」、「A」は「支援運転」、「A+」は「自律運転」を意味する。
【0177】
上記の関係式のように、運転者が交通弱者である手動運転及び支援運転(MW,AW)の通行優先度を、通常の手動運転(M)の通行優先度よりも高くすれば、運転が未熟な交通弱者が運転する車両20の通行が優先される。このため、駐車場2における事故防止をより有効に図ることができる。
もっとも、上記の関係式は一例であり、例えば次の関係式を採用してもよい。
P>MW>M>AW>A>A+
【0178】
上述の通行優先度の関係式では、自律運転(A+)の自律運転車両21が無人である場合を想定した。しかし、モード種別が自律運転(A+)である自律運転車両21に、運転に関与しない搭乗者が乗っている場合もある。
このように、自律運転(A+)の自律運転車両21が有人の場合には、無人の場合と同様に完全な自動運転が行われるが、入庫時間を短縮して顧客満足度を向上するには、混在エリア8での通行優先度を無人の自律運転(A+)よりも高くすることが好ましい。
【0179】
従って、自律運転(A+)の車両21が有人か無人かで通行優先度に差を設ける場合には、通行優先度の関係式を、次のように設定することが好ましい。
P>M>A>A+P>A+
ここで、「P」は「歩行者移動」、「M」は「手動運転」、「A」は「支援運転」、「A+P」は「搭乗者ありの自律運転」、「A+」は「搭乗者なしの自律運転」を意味する。
【0180】
なお、
図10の安全支援制御は、車載通信機54の制御部105ではなく、制御システム50の中央制御部51が実行することにしてもよい。
【0181】
〔路側通信機よる安全支援制御〕
図11は、路側通信機31Cが実行する安全支援制御のフローチャートである。
図11に示すように、路側通信機31Cの制御部82は、2つの移動体(車両20又は歩行者24)が交差点にほぼ同時に流入するか否かを判定する(ステップS70)。
この判定は、通信フレームに含まれる時刻情報及び位置情報から推定される各移動体の交差点への到達時刻が、所定の閾値(例えば、1.0秒)以内であるか否かによって行うことができる。
【0182】
上記の判定結果が否定的である場合は、制御部82は、処理を終了する。
上記の判定結果が肯定的である場合は、制御部82は、受信した通信フレームを即時に転送する(ステップS72)。
これにより、移動体同士が直接的に通信(車車間通信又は車歩間通信)できない場合でも、路側通信機31Cを介在した間接的な通信にて互いの通信フレームを送受信できる。このため、移動体が
図10の安全支援制御を実行する可能性を高めることができる。
【0183】
上記の判定結果が肯定的である場合は、制御部82は、更に、通行表示器36による通行規制を実行する(ステップS74)。この通行規制は、一方の流入路の通行表示器36を「通行可能表示」とし、他方の流入路の通行表示器36を「通行不可表示」とすることによって行うことができる。
この場合、制御部82は、通信フレームに含まれるモード種別から2つの移動体の通行優先度を比較し、通行優先度が高い方の移動体の流入路を通行可能表示とし、通行優先度が低い方の移動体の流入路を通行不可表示とすればよい。
【0184】
また、通行表示器36による通行規制は、双方の流入路の通行表示器36を「通行不可表示」とすることにしてもよい。
この場合、2つの移動体の双方が交差点の手前で停止する可能性が高まり、駐車場2内の交差点での衝突事故をより有効に防止できる。
【0185】
なお、
図11の安全支援制御は、路側通信機31Cの制御部82ではなく、管理装置38の制御部88が実行することにしてもよい。
【0186】
〔路側通信機による入庫管理制御〕
図12は、路側通信機31Bが実行する入庫管理制御のフローチャートである。
図12の例は、自律運転モードで動作する無人の自律運転車両21が、敷地内の南側にある専用エリア9(
図1参照)に入庫するように指令された場合を想定している。なお、
図12中の丸印はフレームの受信を意味する。
【0187】
図12に示すように、自律運転車両21は、まず、専用エリア9の出入口7の外側でいったん停止し(ステップS30)、その後、自律運転車両21の車載通信機54が通信フレームを送信する(ステップS32)。
次に、路側通信機31Bの制御部82は、受信した通信フレームに含まれる識別情報に基づいて入庫許可条件の判定を行う(ステップS34)。
【0188】
この入庫許可条件の判定は、通信フレームに含まれる情報のうち、移動体のモード種別、駐車状態の種別、駐車エリアの種別及び位置情報に基づいて行われる。
具体的には、制御部82は、上記の各情報を用いて、次の条件a1〜d1がすべて成立するか否かを判定する(ステップS36)。
その理由は、次の条件a1〜条件d1がすべて揃えば、自律運転中の自律運転車両21が、専用エリア9に入庫するために出入口7に到達したと判断できるからである。
【0189】
条件a1:移動体のモード種別が自律運転であること
条件b1:移動体の駐車状態の種別が移動中であること
条件c1:移動体の駐車エリアの種別が自動運転用の専用エリアであること
条件d1:移動体の位置情報が専用エリアの入口手前(
図1の例では、専用出入口7のやや北側)であること
【0190】
上記の判定結果が肯定的である場合は、制御部82は、「入庫許可指令」を含む制御フレームを生成し、その制御フレームを自律運転車両21の車両ID宛てで送信して(ステップS38)、処理を終了する。
上記の判定結果が否定的である場合は、制御部82は、「入庫拒絶指令」を含む制御フレームを生成し、その制御フレームを自律運転車両21の車両ID宛てで送信して(ステップS40)、処理を終了する。
【0191】
上記の制御フレームを自律運転車両21の車載通信機54が受信すると、車載通信機54の制御部105は、制御フレームに含まれる入庫許可指令又は入庫拒絶指令の内容を中央制御部51に通知する(ステップS42)。
従って、自律運転車両21は、路側通信機31Cからの指令に従った自律運転を行うことになる。すなわち、自律運転車両21は、入庫許可指令を受けた場合は専用エリア9に進入し、入庫拒絶指令を受けた場合は混在エリア8に駐車するなどの行動を取る。
【0192】
このように、本実施形態の無線通信システムによれば、路側通信機31Cの制御部82が、移動体のモード種別、駐車状態の種別、駐車エリアの種別及び位置情報に基づいて、自律運転車両21のための専用エリア9への進入の許否を判定する。
従って、自律運転車両21の専用エリア9への入庫管理を自動的に行うことができ、駐車場2の運用コストを低減することができる。
【0193】
本実施形態の無線通信システムにおいて、入庫許可指令を含む制御フレームに、搭乗者の快適性(ドライバビリティ)を考慮しない俊敏動作の指令を含めることにしてもよい。
上記の指令を制御フレームに含めることにすれば、自律運転車両21は、専用エリア9における加減速などの動作を混在エリア8の場合よりも俊敏に行うことになる。このため、自律運転車両21の専用エリア9における入庫に要する時間を短縮でき、効率的な駐車管理を行うことができる。
【0194】
なお、
図12の入庫管理制御は、路側通信機31Cの制御部82ではなく、管理装置38の制御部88が実行することにしてもよい。
【0195】
〔路側通信機による出庫管理制御〕
図13は、路側通信機31Bが実行する出庫管理制御のフローチャートである。
図13の例は、自律運転モードで動作する無人の自律運転車両21が、敷地内の南側にある専用エリア9(
図1参照)から出庫するように指令された場合を想定している。なお、
図13中の丸印はフレームの受信を意味する。
【0196】
図13に示すように、自律運転車両21は、まず、専用エリア9の出入口7の内側でいったん停止し(ステップS50)、その後、自律運転車両21の車載通信機54が通信フレームを送信する(ステップS52)。
次に、路側通信機31Bの制御部82は、受信した通信フレームに含まれる識別情報に基づいて出庫許可条件の判定を行う(ステップS54)。
【0197】
この出庫許可条件の判定は、通信フレームに含まれる情報のうち、移動体のモード種別、駐車状態の種別、駐車エリアの種別及び位置情報に基づいて行われる。
具体的には、制御部82は、上記の各情報を用いて、次の条件a2〜c2がすべて成立するか否かを判定する(ステップS56)。
その理由は、次の条件a2〜条件c2がすべて揃えば、自律運転中の自律運転車両21が、専用エリア9から出庫するために出入口7に到達したと判断できるからである。
【0198】
条件a2:移動体のモード種別が自律運転であること
条件b2:移動体の駐車状態の種別が移動中であること
条件c2:移動体の位置情報が専用エリアの出口手前(
図1の例では、専用出入口7のやや南側)であること
なお、駐車エリアの種別が専用エリアであること(前述の条件c1)が条件となっていない理由は、この条件は入庫管理制御(
図12)において入庫を許可する条件となっているので、出庫の場合に更に条件とする必要がないからである。
【0199】
上記の判定結果が肯定的である場合は、制御部82は、「出庫許可指令」を含む制御フレームを生成し、その制御フレームを自律運転車両21の車両ID宛てで送信して(ステップS58)、処理を終了する。
上記の判定結果が否定的である場合は、制御部82は、「出庫拒絶指令」を含む制御フレームを生成し、その制御フレームを自律運転車両21の車両ID宛てで送信して(ステップS60)、処理を終了する。
【0200】
上記の制御フレームを自律運転車両21の車載通信機54が受信すると、車載通信機54の制御部105は、制御フレームに含まれる出庫許可指令又は出庫拒絶指令の内容を中央制御部51に通知する(ステップS62)。
従って、自律運転車両21は、路側通信機31Cからの指令に従った自律運転を行うことになる。すなわち、自律運転車両21は、出庫許可指令を受けた場合は専用エリア9から退出し、出庫拒絶指令を受けた場合は専用エリア9に留まり、出庫が拒絶された旨を所有者又は管理者に無線通信によって通知するなどの行動を取る。
【0201】
このように、本実施形態の無線通信システムによれば、路側通信機31Cの制御部82が、移動体のモード種別、駐車状態の種別及び位置情報に基づいて、自律運転車両21のための専用エリア9からの退出の許否を判定する。
従って、自律運転車両21の専用エリア9からの出庫管理を自動的に行うことができ、駐車場2の運用コストを低減することができる。
【0202】
本実施形態の無線通信システムにおいて、出庫許可指令を含む制御フレームに、搭乗者の快適性(ドライバビリティ)を考慮しない俊敏動作の指令解除を含めることにしてもよい。
上記の指令解除を制御フレームに含めることにすれば、自律運転車両21は、専用エリア9で行っていた加減速などの俊敏な動作を混在エリア8では行わなくなる。このため、自律運転車両21の専用エリア9における出庫に要する時間を短縮しつつ、混在エリア8における通行の安全性を高めることができる。
【0203】
なお、
図13の出庫管理制御は、路側通信機31Cの制御部82ではなく、管理装置38の制御部88が実行することにしてもよい。
【0204】
〔管理装置よる充電順序の決定処理〕
図14は、管理装置38が実行する充電順序の決定制御のフローチャートである。
図14に示すように、管理装置38の制御部88は、場内の路側通信機31から受信したすべての通信フレームの中から、充電要求ありの通信フレームを収集する(ステップS80)。
【0205】
充電要求ありの通信フレームであるか否かは、格納領域A9の補給要否が「補給要」でありかつエネルギータイプが「充電」であるか否かによって判定することができる。
次に、制御部88は、収集した通信フレームの格納領域A10に格納されている出庫予定時刻tpと充電希望量Pdの値を抽出し(ステップS82)、次の式を用いて給電開始予想時刻tsを算出する(ステップS84)。
【0206】
ts=tp−Pd/Vp
なお、Vpは、充電機器35を用いた場合に必要となる充電速度である。
次に、制御部88は、上記の式で算出された給電開始予想時刻tsが正数(>0)であるか否かを判定する(ステップS86)。
給電開始予想時刻tsが正数である場合には、充電機器35を用いた充電が出庫予定時刻tpに間に合うことを意味する。
【0207】
上記の判定結果が肯定的である場合は、制御部88は、給電開始予想時刻tsが小さい順(すなわち給電開始が早い順)に充電指示を出す(ステップS88)。
その理由は、充電が出庫予定時刻tpに間に合う場合には、給電開始が早い順に充電順序を割り当てるのが公平と考えられるからである。
【0208】
上記の判定結果が否定的である場合は、制御部88は、管理者ポリシーに応じて予め設定された充電指示を出す(ステップS90)。
その理由は、充電が出庫予定時刻tpに間に合わない点で、顧客の要望を充足できない場合には、駐車場2の管理者ポリシーに適合した充電順序を決定しても特に差し支えないからである。
【0209】
管理者ポリシーを反映した決定方法としては、例えば、充電完了時刻を更に予測し、予測した充電完了時刻が早い車両20から充電指示を出すことが考えられる。
このポリシーは、充電が早く終わる車両20を優先することにより、駐車場2の充電設備の回転率の向上を図る趣旨である。
【0210】
管理者ポリシーを反映した別の決定方法として、例えば、充電時間が長い車両20から順に充電指示を出すことにしてもよい。
このポリシーは、充電時間が長い車両20の所有者は、店舗を長時間利用する可能性が高い顧客と考えられるので、かかる顧客に対する満足度を向上させる趣旨である。
【0211】
そして、制御部88は、上記のようにして決定した充電指示を含む制御フレームを生成し、生成した制御フレームを通信フレームの送信元の車両ID宛で送信する(ステップS92)。
【0212】
このように、本実施形態の無線通信システムによれば、管理装置38の制御部88が、通信フレームに含まれる充電要否、出庫予定時刻及び充電希望量に基づいて、車両20の充電優先度を判定し、その判定結果を含む制御フレームを、通信フレームの送信元の車両20に送信する。
従って、公平の観点又は管理者ポリシーに応じた適切な充電順序を車両20に通知することができ、充電設備の管理を適切に行えるようになる。
【0213】
〔その他〕
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば、上述の実施形態では、車両20のためのサービスエリアとして充電エリア10が採用されているが、給油エリアを設けることにしてもよい。
【0214】
上述の実施形態では、駐車場2における無線通信システムを想定したが、移動通信機による情報発信処理(
図9)、車載通信機による安全支援制御(
図10)、路側通信機による安全支援制御(
図11)については、駐車場2以外の一般の公道や私道で実行することもできる。
【0215】
本発明の実施形態は、上述の特徴的な処理部(制御部や通信部など)を備える装置として実現することができるだけでなく、その特徴的な処理をステップとする方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現したりすることができる。
また、上記の特徴的な処理部は、それが行う処理の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現することもできる。