特許第6331825号(P6331825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331825
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】連続鋳造用鋳型装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/04 20060101AFI20180521BHJP
   B22D 11/05 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B22D11/04 311D
   B22D11/05 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-149943(P2014-149943)
(22)【出願日】2014年7月23日
(65)【公開番号】特開2016-22521(P2016-22521A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一将
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄司
(72)【発明者】
【氏名】中前 征司
(72)【発明者】
【氏名】東野 和美
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−013422(JP,A)
【文献】 特開昭58−179540(JP,A)
【文献】 特開平10−193043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/04,11/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の第一鋳型部材と、互いに対向する一対の第二鋳型部材とを矩形に組み合わせた鋳型を備えた連続鋳造用鋳型装置において、
少なくとも一対の前記第一鋳型部材の鋳型面形状を変化させる変形機構を備えており、
前記変形機構は、前記第一鋳型部材ごとに設けられた複数のアクチュエータと、アクチュエータごとに設けられた複数の駆動源とを備えている
ことを特徴とする連続鋳造用鋳型装置。
【請求項2】
一つの前記第一鋳型部材に対して、前記アクチュエータが三つ以上設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造用鋳型装置。
【請求項3】
前記第一鋳型部材は、長尺の金属製板状部材からなり、
前記アクチュエータの前記第一鋳型部材への取り付け位置は、前記第一鋳型部材の長手方向に移動可能となっている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の連続鋳造用鋳型装置。
【請求項4】
前記第一鋳型部材は、長辺部を構成する側面鋳型部材であり、前記第二鋳型部材は短辺部を構成する端面鋳型部材である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面形状が略矩形を呈している鋳塊の連続鋳造に用いられる連続鋳造用鋳型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
断面形状が略矩形を呈している鋳塊(以下、「スラブ」という場合がある)は、たとえば、圧延に用いられる。圧延に利用されるスラブは、圧延される面が平坦性を備えていないと、圧延欠陥の原因となる虞があるので、圧延される面に平坦性が要求されている。
【0003】
品質欠陥の原因とならないよう、スラブでは、圧延加工前に面削加工して表層部の除去を行い、平坦性を確保している。なお、面削加工は、品質上問題のある鋳込み先端部(前耳)をスラブ切断機で除去した後に行う場合もある。この面削加工の際に発生する面削屑は、製品歩留に影響する。そして、この面削屑を少なくするためには、スラブの圧延面を鋳造初期よりできるだけ平坦にすることが有効である。
【0004】
ところで、アルミニウムまたはアルミニウム合金などの金属は、凝固する際に凝固収縮する。そのため、スラブの断面形状を、金型の断面形状と同一とすることは困難である(特に鋳造初期においてその傾向が顕著である)。したがって、圧延面を形成する鋳型面を平坦にしても、スラブの圧延面は平坦にならず、断面がくびれた形状になってしまう場合がある。
【0005】
凝固収縮は、鋳造条件によって異なる。具体的には、スラブ寸法や合金種などの条件によっても凝固収縮は異なるし、鋳造スタート時と定常状態時とでも凝固収縮は異なる。特に断面形状が矩形のスラブでは、断面形状が円形のビレットとは異なり、長辺面、短辺面およびコーナー部での冷却状態が異なるので、均一な収縮挙動を得るのは困難である。
【0006】
そこでこれらの問題点を解決すべく、本出願人らは、スラブの圧延面を形成する鋳型面のうち、長尺の長側鋳型面を外側に湾曲した形状にした鋳型装置を提案した(特許文献1および特許文献2参照)。この鋳型装置では、諸条件に応じて、長側鋳型面の湾曲の度合いを調整する変形機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭54−13422号公報
【特許文献2】特開昭58−179540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記変形機構は、長側鋳型面の外側に接続されており、長側鋳型面を外方に引き寄せて変形させるものである。変形機構は、一の長側鋳型面に少なくとも一つ(一対の長側鋳型面に少なくとも二つ)のアクチュエータを備えて設けられている。アクチュエータは、一つの駆動源を用いて作動されていた。そのため、各アクチュエータは、同一のタイミングでしか作動しないので、個々で複雑な制御はできなかった。
【0009】
従来、連続鋳造を行う鋳型装置は大規模であったので、スラブ全体に対する、表層部の面削加工による面削屑の割合は小さい。したがって、特許文献1,2の変形機構で製品歩留は十分に改善されていた。しかしながら、近年では、小型の連続鋳造用鋳型装置も製造されるようになってきており、さらなる製品歩留の改善が求められるようになってきた。また、断面形状の長側面(圧延面)の長さ方向の幅の異なるスラブを、同時に鋳造する場合もでてきた。
【0010】
このような観点から本発明は、製品歩留を向上させることができる連続鋳造用鋳型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための請求項1に係る発明は、互いに対向する一対の第一鋳型部材と、互いに対向する一対の第二鋳型部材とを矩形に組み合わせた鋳型を備えた連続鋳造用鋳型装置において、少なくとも一対の前記第一鋳型部材の鋳型面形状を変化させる変形機構を備えており、前記変形機構は、前記第一鋳型部材ごとに設けられた複数のアクチュエータと、アクチュエータごとに設けられた複数の駆動源とを備えていることを特徴とする連続鋳造用鋳型装置である。
【0012】
このような構成によれば、第一鋳型部材ごとに設けられた複数のアクチュエータを独立制御することで、第一鋳型部材を、鋳造条件に適した形状に変形させることができる。これによって、表層部の面削加工による面削屑を低減できるので、製品歩留を向上させることができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、一つの前記第一鋳型部材に対して、前記アクチュエータが三つ以上設けられていることを特徴とする。このような構成によれば、第一鋳型部材の曲率を細かく制御できるので、より最適な形状に変形させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記第一鋳型部材は、長尺の金属製板状部材からなり、前記アクチュエータの前記第一鋳型部材への取り付け位置は、前記第一鋳型部材の長手方向に移動可能となっていることを特徴とする。このような構成によれば、第一鋳型部材の変形形態を多様化することができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記第一鋳型部材は、長辺部を構成する側面鋳型部材であり、前記第二鋳型部材は短辺部を構成する端面鋳型部材であることを特徴とする。このような構成によれば、長辺部の曲率等を容易に変更することができる。
【0016】
なお、本発明に係る連続鋳造用鋳型装置を複数並べて、鋳造を行うことにより、断面形状の長側面の長さ方向に幅の異なるスラブを、同時に鋳造することが可能であるとともに、スラブの長側面の平坦性および寸法精度をよくすることができる。
【0017】
さらに、本願出願人が先に出願した特開平10−193043号公報に記載された第一鋳型部材の長さ方向の幅を変更できる可変幅鋳型の機構に、本発明に係る機構を組み合わせれば、長側面の長さ方向の幅の異なるスラブを、平坦性良く鋳造することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る連続鋳造用鋳型装置によれば、製品歩留をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る連続鋳造用鋳型装置を示した平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る連続鋳造用鋳型装置の変形状態を示した平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る連続鋳造用鋳型装置の変形機構を示した図であって、(a)は平面図、(b)は図3(a)のI−I線断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る連続鋳造用鋳型装置を用いて行った変形試験の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態を、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。本発明の実施形態に係る連続鋳造用鋳型装置1は、断面略長方形の鋳塊を形成するものである。
【0021】
図1に示すように、連続鋳造用鋳型装置1は、互いに対向する一対の第一鋳型部材10,10と、互いに対向する一対の第二鋳型部材20,20とを矩形(本実施形態で略長方形)に組み合わせた鋳型を備えている。連続鋳造用鋳型装置1は、少なくとも一対の第一鋳型部材10,10の鋳型面形状を変化させる変形機構30を備えている。
【0022】
第一鋳型部材10は、長方形の長辺部を構成する側面鋳型部材である。第一鋳型部材10は、長辺方向に延在する長尺の金属製板状部材からなる。一対の第一鋳型部材10,10は、変形前の状態において、互いに平行になっている。第一鋳型部材10は、長手方向中間部が外側に膨らむように変形可能である。
【0023】
第二鋳型部材20は、長方形の短辺部を構成する端面鋳型部材である。第二鋳型部材20は、短辺方向に延在する長尺の金属製板状部材からなり、若干湾曲して外側に膨らんでいる。第二鋳型部材20は、一対の第一鋳型部材10,10の間に配置されており、第一鋳型部材10の長手方向(長辺方向)に移動可能に設けられている。
【0024】
変形機構30は、アクチュエータ31と、当該アクチュエータ31を駆動させる駆動源32とを備えている。
【0025】
アクチュエータ31は、第一鋳型部材10ごとに複数設けられている。アクチュエータ31は、一つの第一鋳型部材10につき三つ以上の奇数個設けられるのが好ましい。本実施形態では、アクチュエータ31は、一つの第一鋳型部材10につき三つずつ設けられており、第一鋳型部材10が三点引きで変形される構成となっている。
【0026】
三つのアクチュエータ31,31,31は、第一鋳型部材10の長手方向(長辺方向)に沿って配列されている。三つのアクチュエータ31,31,31のうち、中央のアクチュエータ31は、第一鋳型部材10の長辺方向中間部に連結される。一方、両端のアクチュエータ31,31は、中央のアクチュエータ31の連結位置から鋳型の長辺方向に沿って、離間した位置に連結される。
【0027】
図3に示すように、アクチュエータ31は、ラック33とピニオン34とケーシング35と連結部材36とを備えてなる。ラック33は、第一鋳型部材10の表面に対して直交する方向(短辺方向)に延在している。ラック33の歯33aには、ピニオン34の歯34aが噛合されている。ピニオン34が回転することで、ラック33が鋳型の短辺方向に移動する。ピニオン34は、後記する駆動手段32の回転軸32aの先端部に固定されている。
【0028】
ケーシング35は、回転軸32aを囲むとともに、ラック33とピニオン34との連結部分を覆っている。ケーシング35の側壁35aには、開口部35bが形成されており、この開口部35bには、ラック33が貫通している。開口部35bは、第一鋳型部材10に対向する側壁35aと、その反対側の側壁35aとに形成されている。
【0029】
連結部材36は、ラック33の一端部(第一鋳型部材10側端部)に設けられている。連結部材36は、断面コ字状の金属部材からなる。連結部材36の凹部36aの開口端は、第一鋳型部材10に向かって対向している。凹部36aには、第一鋳型部材10に取り付けられた連結プレート11の先端部が挿入される。連結プレート11は、第一鋳型部材10の側面に溶接されており、短辺方向の外側に向かって突出している。
【0030】
連結部材36の上板部と下板部には、貫通孔37,37(図3の(b)参照)がそれぞれ形成されている。連結プレート11には、貫通孔12(図3の(b)参照)が形成されている。貫通孔37,11は、同径であって、連結プレート11を連結部材36に装着した状態で、同軸状に配置される。中央のアクチュエータ31では、上下の貫通孔37,37が、鋳型の長辺方向に間隔をあけて二か所にそれぞれ形成されている。中央の連結プレート11では、貫通孔12が、鋳型の長辺方向に間隔をあけて二か所に形成されている。端部のアクチュエータ31では、上下の貫通孔37,37が、鋳型の長辺方向の中央一か所にそれぞれ形成されている。端部の連結プレート11では、貫通孔12が、鋳型の長辺方向の中央一か所に形成されている。同軸状の貫通孔37,12,37には、上方から連結ピン38が挿入され、連結部材36と連結プレート11とが固定されている。
【0031】
図1および図2に示すように、連結プレート11は、一つのアクチュエータ31に対して三つ設けられている。三つの連結プレート11は、長辺方向に沿って所定間隔をあけて配置されている。
【0032】
図1乃至図3に示すように、駆動源32は、アクチュエータ31ごとに設けられている。すなわち、一つのアクチュエータ31につき、一つの駆動源32が設けられている。駆動源32は、電動モータにて構成されており、ケーシング35の側部に取り付けられている。電動モータの回転軸32aは、ケーシング35の内部に挿入され、ラック33の上方位置に達している。回転軸32aの先端部には、ピニオン34が固定されている。
【0033】
駆動源32には、制御装置(図示せず)が接続されており、各アクチュエータ31の作動を個別に制御可能となっている。なお、本実施形態では、中央のアクチュエータ31は独立制御し、両端部のアクチュエータ31,31は連動制御している。つまり、両端部のアクチュエータ31,31の作動量は同じになるが、中央のアクチュエータ31の作動量は、両端部のアクチュエータ31,31の作動量と異ならせることができる。したがって、例えば中央のアクチュエータ31では、第一鋳型部材10の変形量を大きくする一方、両端部のアクチュエータ31では、第一鋳型部材10の変形量を等しくして小さくすることができる。なお、両端部のアクチュエータ31,31を互いに独立制御して、変形量を変えても構わない。
【0034】
前記構成のアクチュエータ31と駆動源32とで、一のラック式電動リニアジャッキが構成されている。ラック式電動リニアジャッキは、第一鋳型部材10ごとに三つ設けられていることとなる。
【0035】
次に、前記連続鋳造用鋳型装置1を用いて断面略長方形の鋳塊を形成する工程を説明しつつ、本発明の作用効果を説明する。
【0036】
鋳造スタート時には、まず、図2に示すように、第一鋳型部材10を外方に変形させ、鋳型の形状を略太鼓形状とする。これは、鋳塊は凝固する際に凝固収縮するので、鋳塊の製品形状よりも鋳型を広げておく必要があるためである。このとき、中央のアクチュエータ31を独立制御して、その引張り長さを大きくする。一方、両端部の二つのアクチュエータ31,31を連動制御して、その引張り長さを小さくする。両端部のアクチュエータ31,31による引張り長さは等しい。中央のアクチュエータ31による引張り長さと、両端部のアクチュエータ31による引張り長さは、長辺部と短辺部の長さや鋳塊の材料などの諸条件に応じて適宜決定される。
【0037】
前記構成の連続鋳造用鋳型装置1によれば、アクチュエータ31ごとに駆動源32が設けられており、中央のアクチュエータ31と両端部のアクチュエータ31,31とを、別々に制御することができるので、引張り長さを細かく設定することができる。
【0038】
さらに、アクチュエータ31は、一つの第一鋳型部材10に対して三つ設けられているので、第一鋳型部材10の変形を細かく制御できる。したがって、第一鋳型部材10の曲率を細かく設定することができ、より最適な形状に変形させることができる。また、連続鋳造用鋳型装置1では、短辺部より凝固収縮の影響が生じ易い長辺部(第一鋳型部材10)にアクチュエータ31が設けられている。このようにすると、長辺部の曲率を細かく設定できるので、凝固収縮の影響を抑えることができる。
【0039】
以上のように、第一鋳型部材10の内面(鋳型面)は、鋳造条件に応じて、単純な湾曲形状ではない最適な曲面形状に変形することができる。これによって、表層部の面削加工による面削屑を低減できるので、製品歩留を向上させることができる。
【0040】
なお、連続鋳造用鋳型装置1を複数並べて、鋳造を行えば、断面形状の長側面(長辺部の表面)の長さ方向に幅の異なるスラブを、同時に鋳造することが可能である。さらに、スラブの長側面(長辺部の表面)の平坦性および寸法精度をよくすることができる。さらに、本願出願人が先に出願した特開平10−193043号公報に記載された第一鋳型部材の長さ方向の幅を変更できる可変幅鋳型の機構に、本発明に係る機構を組み合わせれば、長側面の長さ方向の幅の異なるスラブを、平坦性良く鋳造することが可能となる。
【0041】
図4に、連続鋳造用鋳型装置1を用いて三点引きベンディング試験を行った結果を示す。本試験は、鋳型サイズが560×1310mmである場合を想定して行っている。図4のグラフでは、横軸に第一鋳型部材10の長辺方向寸法を示し、縦軸に変形量を示している。また、一点鎖線と破線にて、暫定目標とする既存のスラブ鋳型のプロファイルの範囲を示し、実線にて、第一鋳型部材10の変形状態を示している。なお、図中、3本の上向き矢印が、アクチュエータ31により第一鋳型部材10が引っ張られた位置を示している。図示するように、連続鋳造用鋳型装置1によれば、両端部のアクチュエータ31,31の連結位置の間において、第一鋳型部材10を、目標形状に近い形状とすることができる。
【0042】
鋳造をスタートしたら、下型の降下速度を徐々に増していき、連続鋳造を行う定常速度になったところで、下型の降下速度を一定に保持する。降下速度を徐々に増やす際には、アクチュエータ31による引張り長さを徐々に小さくして、第一鋳型部材10の変形量を徐々に減らす。そして、定常速度になると、アクチュエータ31の移動を停止させ、第一鋳型部材10の変形量(形状)を一定に保持する。
【0043】
変形量を徐々に減らす場合においても、連続鋳造用鋳型装置1によれば、アクチュエータ31ごとに引張り長さを細かく設定することができるので、第一鋳型部材10を最適な曲面形状に変形することができる。これによって、表層部の面削加工による面削屑を低減できるので、製品歩留を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る連続鋳造用鋳型装置1では、連結プレート11を、一つのアクチュエータ31に対して三つ設けているので、アクチュエータ31の第一鋳型部材10への取り付け位置が、第一鋳型部材10の長さ方向に移動可能となっている。これによれば、鋳塊の長さを変更した場合であっても、その長さに応じた最適な位置にアクチュエータ31を取り付けることができる。したがって、第一鋳型部材10を、最適な形状に変形することができるとともに、第一鋳型部材10の変形形態を多様化することができる。
【0045】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、一の第一鋳型部材10に対して、三つのアクチュエータ31が設けられているが、これに限定されるものではなく、さらに多数のアクチュエータ31を設けてもよい。なお、アクチュエータ31の個数は奇数であるのが好ましい。アクチュエータ31の個数が奇数であれば、第一鋳型部材10の長手方向中間部にアクチュエータ31が取り付けられるので、中心のアクチュエータ31の左右対称に他のアクチュエータ31を配置できる。このようにすれば、左右対称のアクチュエータ31,31は、連動制御することができるので、制御が容易になる。
【0046】
また、前記実施形態のアクチュエータ31と第一鋳型部材10との連結構造は、一例であって、前記構成に限定されるものではない。たとえば、連結プレートを長辺方向に延在する長尺に形成し、ピンが挿入される貫通孔を複数個所に設けるようにしてもよい。このような構成にすれば、アクチュエータ31の第一鋳型部材10への取り付け位置を多数設定することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 連続鋳造用鋳型装置
10 第一鋳型部材
11 連結プレート
20 第二鋳型部材
30 変形機構
31 アクチュエータ
32 駆動源
33 ラック
34 ピニオン
36 連結部材
図1
図2
図3
図4