(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を含むトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランとエーテル系溶剤と水を含む複合シリカ膜形成用塗布液を基材に塗布し、塗膜を形成する工程と、
塗膜より溶剤を蒸発させる工程と、
塗膜に紫外線を照射しアルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を架橋させて、または塗膜を加熱しアルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を架橋させて複合シリカ膜を得る工程を含む、
複合シリカ膜の形成方法。
【背景技術】
【0003】
LED、OLED、ディスプレイ等の電子部品の耐久性を高め電子部品の寿命を延ばすための封止材、飲食品および医薬品等の酸化または吸湿による変質を抑制し消費期限を延ばすためのガスバリア膜が求められている。
【0004】
特に、電子部品において、大気中の湿気等に伴う水分および硫黄分の部材への浸入を抑制するためのガスバリア性封止材が求められている。また、ディスプレイまたは太陽電池においても、これら機器内への酸素または水分の浸入を抑制するガスバリア性封止材が求められている。
【0005】
ガスバリア性封止材として用いるガスバリア膜として、例えば、特許文献1に、ガスバリア性を有する塩化ビニリデン樹脂を基材にコーティングしガスバリア膜としたガスバリア性シュリンクフィルムが開示されている。特許文献2には、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)等のプラスチック基板上にスパッタリング法等を用いて金属酸化物成分をコーティングしガスバリア性を高めることが開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1のガスバリア性シュリンクフィルムには、使用温度が高くなるに連れ、ガスバリア性が低下する問題があった。特許文献2の透明ガスバリア性積層フィルムは、金属酸化物コーティングの膜厚を厚くするとクラックが発生するため、金属酸化物を薄くコーティングしたプラスチック基板を接着剤で複数枚重ね、ポリマー金属酸化物の繰り返し層を形成し、柔軟性を持たせつつ十分なバリア性をもたらすための複雑なプロセスを要していた。
【0007】
また、LED用封止材においては、耐熱性とガスバリア性を両立させる材料が求められ、例えば、近年、利用拡大が続く照明用LEDについては、発光素子部を水分から保護するために、樹脂による封止が施されている。封止材としてはガスバリア性に優れたエポキシ樹脂または耐熱性に優れたシリコーン樹脂等がLEDの使用用途に応じて封止材として活用されている。
【0008】
特に、今後利用が進むと見られる屋外用の高出力LED向けにおいては、膜中に有機質部位と無機質部位を併せ持つポリシロキサン系の有機無機ハイブリッド膜による、封止剤の開発が進められている。しかしながら、照明機材に使用する際の要求を満足する対候性を有するガスバリア性封止材は開発されていない。
【0009】
また、クレイ状無機材料をエポキシ樹脂またはシリコーン樹脂と複合させて、ガスバリア性および耐候性を向上させることが行われている。しかしながら、要求性能を満足するガスバリア性を発現させることは難しく、これら樹脂へクレイ状無機材料を数質量%含有させると、樹脂の光物性または機械強度が大きく変化するため、特にディスプレイまたはLEDといった光学用途で使用する際に要求性能を満足させるとは言い難い。
【0010】
このように、空気中の水蒸気を含む水分を通しにくい等のガスバリア性に優れることに加え、電子デバイスの封止材または保護膜として光学用途の電子デバイスに用いた際は耐熱性、および例えば食品包装、医薬品用包装に用いた際のパッケージの印刷の視認性(シャープネス)を確保できる透明性、および硬度を併せ持つ封止材が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前述した従来のガスバリア膜より水分を通しにくく、封止材料として実用可能な耐熱性、透明性および硬度を有するシリカ膜を、簡便に得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、アルケン−1−イル−シリル基のアルケン部分またはアルキン−1−イル−シリル基のアルキン部分が相互に重合した構造を有する有機層と、シリカ構造を有する無機層を隣接して含む、複合シリカ膜である。尚、本発明において、複合シリカ膜とは有機層と無機層を隣接して含むシリカ膜を言う。
【0014】
また、本発明は、アルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を有するトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランとエーテル系溶剤と水を含む、アルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を有するトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランの少なくとも一部が加水分解している、上記の複合シリカ膜を供するための複合シリカ膜形成用塗布液である。
【0015】
本発明は、前記複合シリカ膜形成用塗布液を基材に塗布し塗膜とした後、乾燥し、紫外線照射または加熱を行い架橋させ、アルケン−1−イル−シリル基のアルケン部分またはアルキン−1−イル−シリル基のアルキン部分が相互に重合した構造を有する有機層と、シリカ構造を有する無機層を隣接して含む複合シリカ膜とすることで、有機層と無機層とが交互に配列された複合シリカ膜をゾルゲル法による一度の塗布で得、従来技術より水蒸気透過性の低い複合シリカ膜を得たものである。また、本発明は、本発明の複合シリカ膜形成用塗布液および複合シリカ膜形成用塗布液の形成方法において、特定の溶剤、例えばテトラヒドロフラン(以下、THFと呼ぶことがある)を用いることよって、基材に塗布し塗膜とした後で常温25℃で乾燥させ加熱することなしに、紫外線照射によって硬度の高い複合シリカ膜を得たものである。
【0016】
すなわち、本発明は以下の発明1〜17を含む。
[発明1]
アルケン−1−イル−シリル基のアルケン部分またはアルキン−1−イル−シリル基のアルキン部分が相互に重合した構造を有する有機層と、シリカ構造を有する無機層を隣接して含む、複合シリカ膜。
[発明2]
アルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を有するトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランとエーテル系溶剤と水を含む、アルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を有するトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランの少なくとも一部が加水分解している、発明1に記載の複合シリカ膜を供するための複合シリカ膜形成用塗布液。
[発明3]
アルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を有するトリアルコキシシランが、
一般式(1)
【0017】
【化1】
【0018】
(式中、R
1は、炭素数3〜8の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルケン−1−イル基、または炭素数3〜8の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキン−1−イル基であり、基中の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。
R
2はメチル基、エチル基、n−プロキル基またはイソプロピル基である。)
で表されるトリアルコキシシランである、
発明2の複合シリカ膜形成用塗布液。
[発明4]
架橋基R
1が7−オクテン−1−イル基、6−ヘプテン−1−イル基、または5−ヘキセン−1−イル基である、
発明3の複合シリカ膜形成用塗布液。
[発明5]
テトラアルコキシシランが、
一般式(2)
【0019】
【化2】
【0020】
(式中、R
3はメチル基、エチル基、n−プロキル基またはイソプロピル基である。)
で表されるテトラアルコキシシランである、
発明2〜4の複合シリカ膜形成用塗布液
[発明6]
複合シリカ膜形成用塗布液が、触媒をさらに含む複合シリカ膜形成用塗布液である、発明2〜5の複合シリカ膜形成用塗布液。
[発明7]
触媒が塩酸である、発明6の複合シリカ膜形成用塗布液。
[発明8]
エーテル系溶媒がテトラヒドロフランである、発明2〜7の複合シリカ膜形成用塗布液。
[発明9]
アルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を含むトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランとエーテル系溶剤と水を含む複合シリカ膜形成用塗布液を基材に塗布し、塗膜を形成する工程と、
塗膜より溶剤を蒸発させる工程と、
塗膜に紫外線を照射しアルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を架橋させて、または塗膜を加熱しアルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を架橋させて複合シリカ膜を得る工程を含む、
複合シリカ膜の形成方法。
[発明10]
アルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を有するトリアルコキシシランが、
一般式(1)
【0021】
【化3】
【0022】
(式中、R
1は、炭素数3〜8の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルケン−1−イル基、または炭素数3〜8の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキン−1−イル基であり、基中の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。
R
2はメチル基、エチル基、n−プロキル基またはイソプロピル基である。)
で表されるトリアルコキシシランである、
発明9の複合シリカ膜の形成方法。
[発明11]
架橋基R
1が7−オクテン−1−イル基、6−ヘプテン−1−イル基、または5−ヘキセン−1−イル基である、発明10の複合シリカ膜の形成方法。
[発明12]
テトラアルコキシシランが
一般式(2)
【0023】
【化4】
【0024】
(式中、R
3はメチル基、エチル基、n−プロキル基またはイソプロピル基である。)
で表されるテトラアルコキシシランである、
発明9〜11の複合シリカ膜の製造方法。
[発明13]
複合シリカ膜形成用塗布液が、触媒をさらに含む複合シリカ膜形成用塗布液である、発明9〜12の複合シリカ膜の形成方法。
[発明14]
触媒が塩酸である、発明13の複合シリカ膜の形成方法。
[発明15]
エーテル系溶媒がテトラヒドロフランである、発明9〜14の複合シリカ膜の形成方法。
[発明16]
発明1の複合シリカ膜を含む発光ダイオード用封止材。
[発明17]
発明1の複合シリカ膜を含むガスバリアフィルム。
【発明の効果】
【0025】
本発明の複合シリカ膜、複合シリカ膜形成用塗布液およびそれを用いた複合シリカ膜の形成方法によれば、簡便な方法、例えば、ゾルゲル法による1回の塗膜形成で、従来のガスバリア膜より水分を通しにくく、LED用封止材として実用可能な耐熱性、透明性および硬度を有する複合シリカ膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の複合シリカ膜形成用塗布液が含む各原料、本複合シリカ膜形成用塗布液を用いた複合シリカ膜の形成方法、ついで本複合シリカ膜の特徴について、詳細に説明する。本発明の複合シリカ膜、複合シリカ膜用塗布液およびそれを用いた複合シリカ膜の形成方法は、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。
1.複合シリカ膜形成用塗布液
[アルコキシルシラン]
本発明の複合シリカ膜形成用塗布液は原料してアルコキシシランを含む。本アルコキシシランは、複合シリカ膜形成用塗布液中で水の存在または酸の触媒作用により、前記OR
2またはOR
3で表されるアルコキシ基が加水分解し、シラノール基(Si−OH)となる。これらシラノール基が脱水縮合しシロキサン結合(−Si−O−Si−)となることで硬質な膜となる。
<アルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を含むトリアルコキシシラン>
本発明の複合シリカ膜形成用塗布液が原料として含む、トリアルコキシシランが有するアルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基は、末端に二重結合または三重結合性からなる多重結合を有する炭化水素基または含フッ素炭化水素基である。
【0028】
本発明の複合シリカ膜形成用塗布液が含む、アルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を有するトリアルコキシシランは、
好ましくは、一般式(1)
【0030】
(式中、R
1は、炭素数3〜8の直鎖状、炭素数3〜8の分岐鎖状もしくは炭素数3〜8の環状のアルケン−1−イル基、または炭素数3〜8の直鎖状、炭素数3〜8の分岐鎖状もしくは炭素数3〜8の環状のアルキン−1−イル基であり、基中の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。R
2はメチル基、エチル基、n−プロキル基またはイソプロピル基である。)で表されるトリアルコキシシランである。
【0031】
炭素数が3より少ないと、アルケン−1−イル−シリル基のアルケン部分またはアルキン−1−イル−シリル基のアルキン部分が相互に重合した有機層と、アルコキシシランが脱水縮合してなる無機層が交互に重なりあって隣接し層状構造となった複合シリカ膜を得にくく、炭素数が8より多いと形成した有機層が分解し易く複合シリカ膜の耐熱性が損なわれる。
【0032】
R
1としては、例えば、7−オクテン−1−イル基、6−ヘプテン−1−イル基、5−ヘキセン−1−イル基、4−ペンテン−1−イル基、3−ブテン−1−イル基、7−オクチン−1−イル基、6−ヘプチン−1−イル基、5−ヘキシン−1−イル基、4−ペンチン−1−イル基、3−ブチン−1−イル基を例示することができる。好ましくは、7−オクテン−1−イル基、6−ヘプテン−1−イル基または5−ヘキセン−1−イル基である。R
1が7−オクテン−1−イル基、6−ヘプテン−1−イル基、または5−ヘキセン−1−イル基であれば、有機層と無機層が交互に重なりあって隣接し層状構造となった複合シリカ膜の形成が容易である。
【0033】
R
2としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基またはイソプロピル基を例示することができる。トリアルコキシシランの加水分解のし易さから、好ましくは、メチル基またはエチル基である。
【0034】
一般式(1)で表されるトリアルコキシシランであるならば、同一でなく異なるトリアルコキシシランを混合して使ってもよい。
【0035】
一般式(1)で表されるトリアルコキシシランを複合シリカ膜形成用塗布液の原料に使用する理由は、架橋させた際、R
1で表される基が架橋反応により複合シリカ膜中に有機層を作るとともに、−OR
2で表されるアルコキシ基および、一般式(2)で表されるテトラアルコキシシランの−OR
3で表されるアルコキシ基が加水分解したシラノール基(−SiOH)脱水縮合してシロキサン結合(−Si−O−)を生成し、複合シリカ膜中に無機層を形成するからである。
【0036】
上記トリアルコキシシランの、本発明の複合シリカ膜形成用塗布液が含むアルコキシシラン全量に占める比は、質量%で表して、5%以上、50%以下である。5%より少ないと複合シリカ膜の中に有機層が形成されにくい。アルキル基の種類にもよるが50%より多いと複合シリカ膜の硬度が低くなる懸念がある。好ましくは、20%以上、30%以下である。
[テトラアルコキシシラン]
本発明の複合シリカ膜形成用塗布液は、原料としてテトラアルコキシシランを含む。
テトラアルコキシシランは、一般式(2)
【0038】
(式中、R
3はメチル基、エチル基、n−プロキル基またはイソプロピル基である。)
で表されるテトラアルコキシシランであることが好ましい。テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが加水分解しやすく、本発明の複合シリカ膜形成用塗布液に好適に用いられ、特にテトラメトキシシランが好ましい。
【0039】
本発明の膜形成用塗布液において、一般式(2)で表されるテトラアルコキシシランを使用する理由は、硬化させた際、複合シリカ膜中に−OR
3で表されるアルコキシ基が加水分解し生成したシラノール基によるシロキサン結合部位が複合シリカ膜の中にシリカ構造を有する無機層を形成し易くなるから、および複合シリカ膜とした際に、硬質な膜となるからである。
【0040】
本発明の膜形成用塗布液に含まれる上記テトラアルコキシシランの、本発明の膜形成用塗布液が含むアルコキシシラン全量に占める比は、質量%で表して、50%以上、95%以下である。50%より少ないと複合シリカ膜の所望の硬度が得られにくく、95%より多いと複合シリカ膜の中に有機層を形成しにくくなる。好ましくは、70%以上、80%以下である。
【0041】
テトラアルコキシシランを用いる際の、アルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を有するトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランの好ましい質量比は、トリアルコキシシラン:テトラエトキシシラン=25:75〜30:70である。
[他アルコキシシラン]
本発明において、上述のアルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を有するトリアルコキシシラン、およびテトラアルコキシシラン以外に、以下の一般式(3)で表されるトリアルコキシシランを加えもよい。
一般式(3)
【0043】
(式中、R
4は、フェニル基、ビフェニル基、スチリル基、炭素数6〜12の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のパーフルオロアルキル基、であり、R
5はメチル基、エチル基、n−プロキル基またはイソプロピル基である。)
加える量は上述のアルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を有するトリアルコキシシラン、およびテトラアルコキシシランを合わせた質量に対し、質量%で表して、5%以上、50%以下である。
【0044】
また、本発明の複合シリカ膜形成用塗布液が含むアルコキシシランの全量に対して、質量%で表して、ジアルキルジアルコキシシランまたはトリアルキルモノアルコキシシランを50%以下の範囲で含んでもよい。50%より多いと、複合シリカ膜の硬度を下げる虞がある。
[溶剤]
本発明の複合シリカ膜形成用塗布液が含む、エーテル系溶剤、その他溶剤について説明する。本発明の複合シリカ膜形成用塗布液における、溶剤の使用量は、複合シリカ膜形成用塗布液全量に対して、質量%で表して、30%以上、99%以下である。30%より少ないと液が濃すぎて膜厚が均一な膜が形成し難い。99%より多いと液が薄すぎて膜自体が形成し難い。好ましくは、50%以上、60%以下である。
[エーテル系溶剤]
本発明の複合シリカ膜形成用塗布液が含むエーテル系溶剤は、例えば、テトラヒドロフラン、モノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールならびにその誘導体、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルまたは1,4−ジオキサンを例示することができる。これらエーテル系溶剤は混合して使用してもよい。
【0045】
これらエーテル系溶剤の中で、特に好ましくは、テトラヒドロフランである。
【0046】
複合シリカ膜形成用塗布液の溶剤にエーテル系溶剤を用いることで、発明2〜8に記載の複合シリカ膜形成用塗布液を基板へ塗布し塗膜とした後、乾燥硬化させ、次いで紫外線照射または加熱により、アルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基が相互に重合してなる有機層をシリカ膜中に形成させ、有機層とアルコキシシランが脱水縮合してなるシリカ構造を有する無機層を隣接させ層状構造の複合シリカ膜が形成される。
【0047】
本発明の複合シリカ膜形成用塗布液において、テトラヒドロフランを用いることで、基板に複合シリカ膜形成用塗布液を塗布した際、常温25℃でアルコキシシランの加水分解および脱水縮合反応が進行しシロキサン結合を有する、即ち、常温25℃でシリカ構造を有する硬質な膜を与える。テトラヒドロフランを用いた場合、本発明の複合シリカ膜形成用塗布液より形成した複合シリカ膜中の、アルケン−1−イル−シリル基のアルケン部分またはアルキン−1−イル−シリル基のアルキン部分が相互に重合した構造を有する有機層と、シリカ構造を有する無機層が発現し易く、複合シリカ膜中で有機層と無機層が隣接した層状構造となることで水蒸気透過性の低い複合シリカ膜が得やすい。
【0048】
これらエーテル系溶剤は、溶剤の全量に対し、質量%で表して、10%以上、50%以下の比率で用いてもよい。50%より多く含むと、複合シリカ膜形成用塗布液を塗布後、架橋させて得られる複合シリカ膜中に無機成分が多い無機層、有機成分が多い有機層が層状構造として発現し難い。
[他溶剤]
本発明の複合シリカ膜形成用塗布液に、ゾル溶液を均一に溶解するもの、または均一に混ざり合うものであるならばエーテル系溶剤以外の他の有機溶剤を用いてもよく、本発明の複合シリカ膜形成用塗布液に用いてもよい有機溶剤は以下の通りである。
【0049】
例えば、アルコール系溶剤として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール(tert−ブタノール)、iso−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノーまたはメトキシメタノール、多価アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルもしくはプロピレングリコールモノエチルエーテルまたはその誘導体、ケトン系溶剤としては、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびイソホロンを例示することができる。これら溶剤の2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
これら有機溶剤は、溶剤の全量に対して、質量%で表して、10%以上、50%以下の比率で用いてもよい。50%より多く含むと、複合シリカ膜形成用塗布液を塗布後、架橋させて得られる複合シリカ膜中に有機層、無機層が隣接した層状構造として発現し難い。
[水]
また、本発明の複合シリカ膜形成用塗布液に、触媒を加える際に溶液とするのに使用するための水、およびアルコキシシランの加水分解に必要な水を加える。加える量は、溶剤の全量に対し、質量%で表して、10%以上、90%以下である。10%より少ないと加水分解の効果が薄く、90%より多いと複合シリカ膜形成用塗布液がゲル化する虞がある。好ましくは、60%以上、70%以下である。
[触媒]
本発明の複合シリカ膜形成用塗布液において、アルコキシシランの加水分解を促進させるために触媒を用いることが好ましい。これらの触媒については、従来のゾルゲル法で使われてきたアルカリ触媒および酸触媒でよい。アルカリ触媒としてはアンモニア、ジアザビシクロウンデセンが、酸触媒としては塩酸、酢酸が好ましい。
【0051】
特に塩酸を用いた場合、本発明の複合シリカ膜形成用塗布液より形成した複合シリカ膜中の無機層および有機層が隣接した層状構造として発現し易く、複合シリカ膜中で有機層と無機層が層状構造となることで水蒸気透過性の低い複合シリカ膜が得やすい。
【0052】
本発明の複合シリカ膜形成用塗布液のアルコキシランの全量に対して、触媒を加える量は、質量%で表して、0.001%以上、0.1%以下である。0.001%より少ないと、加水分解を促進させる効果がなく、0.1%より多いと、複合シリカ膜形成用塗布液がゲル化する虞がある。
[その他の添加剤]
また、本発明の複合シリカ膜形成用塗布液には、得られた複合シリカ膜の硬度不足等の不具合を生じさせない範囲で他の添加剤を加えることができる。例えば、界面活性剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、難燃剤、加水分解防止剤、防黴剤、顔料、染料、色素、希土類化合物および蛍光体材料を例示することができる。
[複合シリカ膜形成用塗布液の調製]
本発明の複合シリカ膜形成用塗布液の調製は、本発明の複合シリカ膜形成用塗布液が含むアルコキシシラン、エーテル系溶媒、水、必要に応じて触媒、添加剤を混合後、撹拌させることにより、アルコキシシランを加水分解させ、シラノールとする。この際の、撹拌時間は10分以上、24時間以下が好ましく、好ましくは5時間以上、15時間以下である。
【0053】
攪拌する際の温度については特に指定はしないが、シラノールが凝固または溶媒が蒸発しない温度で行うのが好ましく、−40℃以上、70℃以下の間で行うのが好ましい。さら好ましくは、10℃以上、35℃以下であり、室温25℃で行うことができる。
2.複合シリカ膜の形成方法
本発明の複合シリカ膜の形成方法において、複合シリカ膜の原料物質は、アルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を有するトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランを少なくとも含むアルコキシシランであり、本アルコキシシラン、エーテル系溶媒および水、その他任意で触媒等の添加物を混合した複合シリカ膜形成用塗布液である。例えば、発明2〜8の複合シリカ膜形成用塗布液を例示することができる。
【0054】
このように、複合シリカ膜形成用塗布液とした後、基体上に複合シリカ膜形成用塗布液を塗布し塗膜とする。次いで溶剤および水を蒸発させ乾燥させる。硬化は、塗膜した基材を常温乾燥雰囲気、25℃で長時間おくことで進行させることができる。硬化時間は2時間以上、24時間以下である。2時間より長くおかないと硬化が進行せず、24時間より長くおく必要はない。特に好ましいのは10時間以上、12時間以下である。
【0055】
次いで、塗膜に紫外線照射または加熱し、アルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基の末端二重結合または末端三重結合を架橋させて、アルケン−1−イル−シリル基のアルケン部分またはアルキン−1−イル−シリル基のアルキン部分が相互に重合した有機層を形成し複合シリカ膜を得る。
【0056】
即ち、本発明の複合シリカ膜の製造方法は、下記の工程を含む。
工程A:発明2〜8の複合シリカ膜形成用塗布液を基材に塗布し塗膜を形成する工程
工程B:塗膜より溶剤を蒸発させる工程
工程C: 塗膜に紫外線照射または加熱し、複合シリカ膜とする工程
複合シリカ膜形成用塗布液の溶剤にエーテル系溶剤を用いることで、発明2〜8に記載の複合シリカ膜形成用塗布液を基板へ塗布し塗膜とした後、、常温25℃で長時間かけて乾燥させ、次いでUV照射後に、アルケン−1−イル−シリル基のアルケン部分またはアルキン−1−イル−シリル基のアルキン部分が相互に重合してなる有機層とアルコキシシランが脱水縮合してなるシリカ構造を有する無機層が隣接した層状構造を有してなる、複合シリカ膜が形成される。
【0057】
工程Aにおける。基材、例えば、基板への複合シリカ膜形成用塗布液の塗布方法は、例えば、スピンコート、ディップコート、フローコート、ロールコート、スプレーコート、スクリーン印刷またはフレキソ印刷等の公知の方法を採用することができる。
【0058】
塗布する側の基材としては、例えば、ガラス基板、金属製またはセラミックス製の無機基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、 フッ化ビニリデンまたはアクリル製の樹脂基板、シリコーンゴム、またはこれらの複合材料から構成された膜またはシート状の物品を例示することができる。
【0059】
基材に塗布形成された塗膜を、工程Bにおいて、塗膜中のシラノール基を脱水縮合させてシロキサン結合とさせて、工程Cにおいて、アルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基の末端二重結合または末端三重結合を架橋させた複合シリカ膜とする。塗膜を光架橋する場合は、本発明の複合シリカ膜形成用塗布液中に光重合開始剤を含有させると効率的に架橋反応を進行することができるため好ましい。
【0060】
また光照射とともに加熱して、架橋反応を促進させてもよい。塗膜を熱架橋させる場合は、本発明の複合シリカ膜形成用塗布液に熱重合開始剤をを含有させることが、効率的に架橋反応を進行させることができるため好ましい。
【0061】
工程Cにおいて紫外線照射を選択し複合シリカ膜を得る場合には、190nm以上、380nm以下のピーク波長をもち、照度1μW/cm
2〜以上、10mW/cm
2以下の光源を用いることができる。好ましくはピーク波長245nm、照度10μW/cm
2のUVランプを用いるのがよい。
【0062】
工程Cにおいて加熱を選択し複合シリカ膜とする場合には、60℃以上、250℃以下の範囲で加熱することが好ましい。
【0063】
塗布する側の基板の耐熱性から、紫外線照射と加熱のいずれかを適宜選択してもよい、また、同時に用いてもよい。好ましくは、紫外線照射である。
【0064】
このようにして、基材上に得られた複合シリカ膜は、必要に応じて基板上から複合シリカ膜を剥離(工程D)し、単体の複合シリカ膜として使用することも可能である。この際、塗布する側の基板としては銅板を用い、成膜後に塩化鉄(III)水溶液にて銅板を溶解除去することにより独立膜を得ることができる。
3.複合シリカ膜
本発明の複合シリカ膜の厚さは0.1μm以上、200μm以下である。0.1μmより薄いと、水蒸気の透過を抑制する効果が少なく、また成膜し難い。200μmより厚いと、クラック等が発生する懸念がある。
【0065】
図1に、複合シリカ膜の構造の一例を示す概略断面図を示す。
【0066】
本発明の複合シリカ膜1は、末端二重結合または末端三重結合を有する長鎖アルキル基であるアルケン−1−イル基またはアルキン−1−イル基を含むトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランとエーテル系溶剤と水を含む、発明2〜8の複合シリカ膜形成用塗布液を用いた、発明9〜15の製造方法により得られた複合シリカ膜1である。
【0067】
具体的には、本発明の複合シリカ膜1は、基材2に塗布し塗膜とした後、紫外線照射を行い複合シリカ膜1とすることで、長鎖炭化水素基による有機層3とシリカ構造を有する無機層4とが隣接した複合シリカ膜1を一度の塗布で得、ゾルゲル法により、従来技術より水蒸気透過性の低い複合シリカ膜1を得たものである。
【0068】
本発明の複合シリカ膜1は発光ダイオード用封止材に使用される。また、本発明の複合シリカ膜1はガスバリア膜に使用される。
【0069】
本発明の複合シリカ膜1は、透明性、耐熱性が求められるLED用封止材、食品用の包装、ワイン、ビール、コーヒーなど飲料に用いるプラスチックボトル、医薬品の錠剤や粉薬を封入する包装材、OLEDフレキシブルディスプレイ用基板、太陽電池バックシート、液晶ディスプレイ用のオーバーコート膜用途に使用される水蒸気の透過性の低いガスバリア膜に利用することができる。特に、LED用封止材、水蒸気透過性の低いガスバリア膜として有用である。
【実施例】
【0070】
実施例を用いて本発明を具体的に示す。
[複合シリカ膜および複合シリカ膜を形成した基板の評価方法]
本発明の複合シリカ膜および本発明の範疇にないシリカ膜を含むシリカ膜を形成した基板に対し、以下の(1)〜(6)の評価を行った。
(1)シリカ膜の厚さの測定
シリカ膜の厚さを、共焦点レーザー走査型顕微鏡(株式会社島津製作所製、型番、LSCM;SFT23500、)を用いて測定した。
(2)シリカ膜の厚さ方向の観察
シリカ膜の厚さ方向の観察には、電界放射型走査電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、型番、FE−SEM;S−4800)を用いた。観察に際して、Pt/Pd合金薄膜をコーティングした。
(3)シリカ膜の鉛筆硬度
ソーダライムガラス基板上に形成したシリカ膜に対して、JIS K 5600「塗料一般試験方法」に準拠し、750g加重した各硬度の鉛筆で膜表面を5mm/sの速度で1cmの長さ引っ掻き、シリカ膜の破れまたは傷つきの観察結果より測定した。
(4)シリカ膜の結晶化度分析
シリカ膜の結晶化度を、X線回折(XRD;SmartLab、Rigaku)装置により測定した。
(5)シリカ膜の組成分析
シリカ膜の化学組成分析は、赤外吸収スペクトル(FT−IR;ALPHAFT−IR Spectrometer、Bruker Optik GmbH)を用いて測定した。
(6)シリカ膜の透過率測定
シリカ膜の透過率測定は、シリカ膜の紫外−可視吸収スペクトルを分光光度計(日本分光株式会社製、型式 UV−Vis;V−670 Spectrophotometer、)を用いて測定し、石英ガラスに塗布したシリカ膜を用い、リファレンスの(何も塗布していない)石英ガラスの透過率と比較することで用いて波長400nmのUV光の透過率を測定した。
(7)シリカ膜の熱分析
シリカ膜の熱重量減少を、熱重量分析(TG;Thermo Plus Evo、Rigaku)法を用いて、空気雰囲気下、昇温条件10℃/分の条件で測定した。
(8)シリカ膜の水蒸気透過性
図1を用いて、シリカ膜の水蒸気透過性の測定手順について説明する。
【0071】
図1のa−1)に示すようにシリカ膜1と水蒸気を透過するシリコーン膜5を貼り合わせた張り合わせ膜6を調製した。次いで。a−2)に示すように、シリカ膜1の設置部分に穴をあけたセパレータ7の穴を塞ぐように、上記貼り合わせ膜6を設置した。次いで、
図1のa−3)a−4)に示すように、2部屋に分離したガラス容器内に貼り合わせ膜6を設置したセパレータ7設置し、片側の部屋9に塩化カルシウム8を置き、片側の部屋10に温度および湿度を調節した空気(温度40℃、湿度90%RH)を流して、塩化カルシウム8の重量増加を経時的に計測し、シリカ膜1の水蒸気透過性を測定した。
実施例1
[複合シリカ膜形成用塗布液の調製]
トリメトキシ(7−オクテン−1−イル)シラン(シグマアルドリッチ社製、品名TM7O1S)、テトラメトキシシラン(TMOS、Si(OCH
3)
4)、濃度36質量%の塩酸、超純水、テトラヒドロフラン(THF)を、モル比で表して、TM7O1S:TMOS:HCl:H
2O:THF =1:4:2×10
−3:28.5:15となるように混合した。次いで、反応系を室温で10時間攪拌し、複合シリカ膜形成用塗布液を得た。
[複合シリカ膜の形成]
厚さ30μm、大きさ100mm×100mmの銅板を用意し、アセトン中で20分間超音波洗浄した。次いで、調製した複合シリカ膜形成用塗布液を、室温25℃、湿度45%RHの環境下で銅板に垂らし、スピンコーターを用い回転速度1000rpmで30秒間塗布し塗膜を得た。失透することなきよう、塗膜をシリカゲルと脱酸素剤を置いたコンテナ中、室温25℃で12時間乾燥させた。次いで塗膜に、窒素雰囲気中で波長254nm、強度10μW/cm
2の紫外光を12時間照射し、塗膜を光架橋させた。なお、光架橋の完了は、塗布液と光照射後の塗膜に対して、全反射測定(ATR法)によって測定した赤外吸収スペクトルの1638cm
−1付近のC=C結合に由来する吸収ピークの高さを比較し吸収ピークが消えることにより確認した。
[複合シリカ膜の物性評価]
複合シリカ膜のX線解析(XRD)の結果、複合シリカ膜は層状構造を有しているが確認された。
【0072】
図3に複合シリカ膜の断面を写した電界放射型走査電子顕微鏡写真を示す。複合シリカ膜表面と11と複合シリカ膜断面12が観察された。
【0073】
前記電界放射型走査電子顕微鏡による複合シリカ膜の断面を観察したところ、複合シリカ膜は層状構造を有しており、X線解析(XRD)の結果と合わせて、7−オクテン−1−イル基に由来する有機層とシロキサン結合に由来する無機層と、複合シリカ膜内で基板に対して平行に積み重なった層状構造と推定され膜全体が基板から無機層、有機層、無機層・・・と規則正しく配列された複合シリカ膜であると判断された。また、ガラス基板上に形成した複合シリカ膜の鉛筆硬度を測定したところ、6Hであり、硬い膜が得られていた。
[複合シリカ膜の基板からの剥離]
複合シリカ膜上に、厚さ100μm、大きさ100mm×100mmのシリコーンゴム板を載せた状態で、濃度37.5質量%の塩化鉄(III)水溶液に浸漬させ、銅基板を溶解除去し、シリコーンゴム板上に複合シリカ膜を転写した。転写した複合シリカ膜は室温25℃で乾燥させた。
[水蒸気バリア性評価結果]
シリコーンゴムから剥離した、厚さ100μmの複合シリカ膜の水蒸気透過性を測定したところ、測定値は63g/(m
2・day)であり低い値であった。熱重量分析による5%質量減少温度(Td5)は200℃であった。複合シリカ膜の波長400nmにおける光透過率の測定値は97%であった。
実施例2
トリメトキシシランとして、トリメトキシ(6−ヘプテン−1−イル)シランを用いた以外は、実施例1と同様の操作で複合シリカ膜を銅板上に形成し、同様の操作で厚さ100μmの複合シリカ膜を得た。上記のようにして得られた厚さ100μmの複合シリカ膜の水蒸気透過性を測定したところ67g/(m
2・day)であり、実施例1の複合複合シリカ膜に同等のガスバリア性であった。熱重量分析による5%質量減少温度(Td5)は200℃、複合シリカ膜の波長400nmにおける光透過率の測定値は97%であり実施例1と同等であった。また、ガラス基板上に成膜した複合シリカ膜の鉛筆硬度を測定したところ、6Hであり、硬い膜が得られていた。
実施例3
トリメトキシシランとして、トリメトキシ(5−ヘキセン−1−イル)シランを用いた以外は、実施例1と同様の操作で複合シリカ膜を銅板上に形成し、同様の操作で厚さ100μmの複合シリカ膜を得た。上記のようにして得られた厚さ100μmの複合シリカ膜の水蒸気透過性を測定したところ67g/(m
2・day)であり、実施例1の複合シリカ膜に同等のガスバリア性であった。熱重量分析による5%質量減少温度(Td5)は200℃、複合シリカ膜の波長400nmにおける光透過率の測定値は97%であり実施例1と同等であった。また、ガラス基板上に成膜した複合シリカ膜の鉛筆硬度を測定したところ、6Hであり、硬い膜が得られていた。
実施例4
トリメトキシシランとして、トリメトキシ(7−ヘキシン−1−イル)シランを用いた以外は、実施例1と同様の操作で複合シリカ膜を銅板上に形成し、同様の操作で厚さ100μmの複合シリカ膜を得た。上記のようにして得られた厚さ100μmの複合シリカ膜の水蒸気透過性を測定したところ64g/(m
2・day)であり、実施例1の複合シリカ膜に同等のガスバリア性であった。熱重量分析による5%質量減少温度(Td5)は200℃、複合シリカ膜の波長400nmにおける光透過率の測定値は95%であり実施例1と同等であった。また、ガラス基板上に成膜した複合シリカ膜の鉛筆硬度を測定したところ、6Hであり、硬い膜が得られていた。
比較例1
塗布液の溶媒にテトラヒドロフラン(THF)の替わりにジメチルホルムアミド(DMF)を使用した以外は、実施例1と同様の操作でシリカ膜を銅板上に形成し、同様の操作で厚さ100μmのシリカ膜を得た。上記のようにして得られた厚さ100μmのシリカ膜の水蒸気透過性を測定したところ800g/(m
2・day)であり、実施例1のシリカ膜に比べ高い値であり、水蒸気透過量が多かった。熱重量分析による5%質量減少温度(Td5)は200℃、シリカ膜の波長400nmにおける光透過率の測定値は97%であり実施例1と同等であった。また、ガラス基板上のシリカ膜の鉛筆硬度を測定したところ、5Hであり、硬い膜が得られていた。
比較例2
原料にジメチルジメトキシシランとフェニルトリメトキシシランを使用した以外は、実施例1と同様の操作でシリカ膜を銅板上に形成し、同様の操作で厚さ100μmのシリカ膜を得た。上記のようにして得られた厚さ100μmのシリカ膜の水蒸気透過性を測定したところ630g/(m
2・day)であり、実施例1のシリカ膜に比べ高い値であり、水蒸気透過量が多かった。熱重量分析による5%質量減少温度(Td5)は200℃、シリカ膜の波長400nmにおける光透過率の測定値は97%であり実施例1と同等であった。また、ガラス基板上のシリカ膜の鉛筆硬度を測定したところ、2Hであり、所望の硬度に達していなかった。
【0074】
表1に、実施例1〜4、比較例1〜2で得られたシリカ膜の膜厚、水蒸気透過性、鉛筆硬度、可視光透過率の測定結果を示す。
【0075】
比較例1〜2においては、アルケン−1−イル−シリル基のアルケン部分またはアルキン−1−イル−シリル基のアルキン部分が相互に重合した構造を有する有機層と、シリカ構造を有する無機層が隣接した層状構造が得られなかったため水蒸気透過性が高かったと判断される。
【0076】
【表1】