(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の成膜生成システム1の全体構成を説明する図である。
成膜生成システム1(塗装システム)は、クリーンルーム5内において、板状体であるガラス板2(
図4参照)の上面にUVカット皮膜を成膜するものである。ガラス板2は、UVカット被膜生成後、自動車の窓ガラスとして利用される。
クリーンルーム5内には、さらに、塗装室6が設けられている。塗装室6は、ガラス板2に実際にスプレー塗装する部屋であり、塗装液をスプレー噴射するスプレー装置60が設けられている。
塗装液は、紫外線吸収剤を含む。UVカット被膜は、ガラス板2の上面に塗装した塗装液が、硬化することにより生成される。
クリーンルーム5内でのガラス板2の搬送には、成膜台10等を用いる。成膜台10は、ガラス板2を載置した状態で、ガラス板2の塗装室6内への搬入、ガラス板2上への塗装、ガラス板2の塗装室6外への搬出を行う。
【0011】
以下、塗装室6に配置された状態の成膜台10、及び成膜台10の周辺の構成について、詳細に説明する。
なお、以下の説明及び図面には、理解を容易にするために、XYZ直交座標系を設けた。この座標系は、
図2に示すように、塗装室6内に配置された成膜台10の鉛直方向Z、左右方向X(搬送方向)、奥行方向Yを表す。
図2は、第1実施形態の成膜台10が塗装室6に配置された状態を説明する図である。
図2(A)は、上面図である。
図2(B)は、手前側Y1から見た図である。
図3は、第1実施形態のガラス板2、成膜台10を説明する図である。
図3(A)は、ガラス板2の上面図である。
図3(B)は、成膜台10がガラス板2を載置した状態の断面図(
図2(B)を左側X1から見た断面図)である。
図4は、第1実施形態の成膜台10及びエア供給装置を示す図である。
図4(A)は、上面図である。
図4(B)は、手前側Y1から見た断面図(B−B断面図)である。
図4(C)は、
図4(B)の矢印C部の拡大図である。
なお、
図2(A)、
図4(A)は、成膜台ユニット20の内部構成を説明するために、ガラス板2の図示を省略した。
【0012】
図2(B)、
図3(A)に示すように、ガラス板2の平面形状は、三角形に近い異形の四角形である。ガラス板2の断面形状は、湾曲している。このため、ガラス板2の上面及び下面は、三次元曲面である。ガラス板2が自動車に取り付けられた状態では、上面である凹状側の面が車室側である。塗装液は、この凹状側の面に、スプレー塗装される。
【0013】
図2、
図3に示すように、成膜生成システム1は、成膜台10、エア供給装置40(圧力差生成部)、レール装置50、スプレー装置60を備える。
成膜台10は、シャーシ11、6つの成膜台ユニット20(20A〜20F)(塗装板載置装置)、仕切板30を備える。
シャーシ11は、6つの成膜台ユニット20(20A〜20F)を固定する車台である。シャーシ11は、長方形の枠状である。
シャーシ11は、車輪12を備える。
車輪12は、シャーシ11のコーナ部に、それぞれ設けられている。
【0014】
6つの成膜台ユニット20A〜20Fは、シャーシ11上に配列されている。成膜台ユニット20A〜20Fは、6枚のガラス板2を、交互に180°回転して支持する。6つのガラス板2は、ガラス板2の短辺方向と、成膜台10の搬送方向(左右方向X)とが一致するように、成膜台10に載置される。成膜台ユニット20A〜20Fは、ガラス板2を、凹状側の面を上側Z2として支持する。
【0015】
図4に示すように、各成膜台ユニット20は、外箱21(圧力容器)、内箱22、ガラス板支持具25(支持部材)、ガラス上昇部26(板状体上昇部)、エア流入管27、連通管28(低圧生成部)を備える。
外箱21は、上側Z2が開口した箱体である。
上側Z2から見たときに、外箱21の外形と、ガラス板2の外形とは、ほぼ同じである。なお、より詳細に説明すると、外箱21の外形は、ガラス板2の外形よりも若干大きくても若干小さくてもよい。実施形態では、外箱21の外形は、ガラス板2の外形よりも、若干小さく設定している。これは、ガラス板2が位置ズレしても、この位置ズレを吸収して、外箱21の開口縁部21a(
図4(C)参照)が上側Z2に露出しないようにするためである。これにより、成膜台ユニット20は、開口縁部21aへの塗装液の付着を抑制できる。
鉛直方向Zにおいて、外箱21の開口縁部21aは、ガラス板2の曲面に倣っている。これにより、ガラス板2をガラス板支持具25で支持した状態において、ガラス板2の下面縁部2aと、ガラス板2の下面縁部2aとの隙間Dが、全周に渡って一定になる。
隙間Dは、1mm程度を目標値とし、誤差等を勘案して2mm以下であることが好ましい。なお、隙間Dが狭過ぎると、塗装液が毛細管現象によって、引き込まれてしまうことがある。このため、隙間Dは、ある程度の大きさが必要である。
【0016】
外箱21は、縁部材21c、位置決め部21dを備える。
縁部材21cは、外箱21の開口縁部21aの内面全周に固定されている。縁部材21cは、例えば断面形状が2mm角のアクリル樹脂の角棒等が用いられる。なお、縁部材21cは、ブロックを切削し成型してもよいし、エポキシ樹脂等を盛り上げて形成してもよい。
外箱21の開口縁部21aの厚さは、縁部材21cの形状分だけ厚くなる。これにより、外箱21の開口縁部21aと、支持されたガラス板2とが対向する面積を増やすことができる。
これにより、ガラス板2が多少位置ズレしても、ガラス板2の外形を、縁部材21c(縁部材21c及び開口縁部21a)の厚み上に配置できる(
図4(C)参照)。
【0017】
位置決め部21dは、外箱21のコーナ部近傍に5箇所設けられている。位置決め部21dは、ガラス板2の載置時にガラス板2を所望の載置位置に案内し、また、塗装時等にガラス板2の位置ズレを抑制する部材である。位置決め部21dは、下側Z1に至る程、内側に至るような形状である。位置決め部21dは、針金等の部材を折り曲げて形成される。位置決め部21dは、外箱21の外周に固定される。
位置決め部21dの先端は、外側に向けて折り曲げ加工されている。このため、位置決め部21dは、ガラス板2を載せる場合にガラス板2が接触しても、ガラス板2の損傷を抑制できる。
なお、
図4に示す位置決め部21dの個数、配置は、実施形態のガラス板2の位置決めに対応したものである。ガラス板の大きさ、形状等が実施形態とは異なる場合には、そのガラス板を位置決めできるように、位置決め部21dの個数、配置等を、適宜設定することができる。
【0018】
内箱22は、上側Z2が開口した箱体である。内箱22は、外箱21よりも一回り小さい。つまり、上側Z2から見たときに、内箱22の外形は、外箱21よりも一回り小さく、また、内箱22の深さは、外箱21よりも浅い。
なお、内箱22の深さは、一定である。つまり、側板22bの高さは、一定である。
内箱22は、外箱21の底から、浮いた形態で収容されている。内箱22は、外箱21に対して、支持金具22dによって固定されている。
【0019】
内箱22は、パッキン22cを備える。
パッキン22cは、内箱22の開口縁部22aの外側全周に設けられている。パッキン22cは、断面形状が矩形である。パッキン22cは、弾力性及び気密性を有する発泡樹脂等(例えば独立気泡のポリエチレンフォーム等)によって形成されている。
パッキン22cの上面は、内箱22の開口縁部22aよりも上側Z2に突出している。このため、パッキン22cの上面は、ガラス板2の下面に加圧接触する。
【0020】
上記構成により、成膜台ユニット20内には、ガラス板2の下側Z1には、以下の2つの高圧空間A2(内部空間)、低圧空間A3が形成される。
高圧空間A2は、ガラス板2の下面縁部2aの下側Z1の空間であり、内箱22及び外箱21間に形成される。高圧空間A2及び外部空間A1は、外箱21の側板21b(仕切り部)によって仕切られる。高圧空間A2は、後述するように、空気が供給されることにより、外部空間A1よりも圧力が高くなる。
低圧空間A3は、内箱22の内部に形成される空間である。低圧空間A3は、高圧空間A2の内側に設けられる。後述するように、高圧空間A2に空気が供給されても、低圧空間A3は、外部空間A1と同じ圧力を維持し、高圧空間A2よりも圧力が低くなる。
【0021】
ガラス板支持具25は、ガラス板2を支持する部材である。ガラス板支持具25は、内箱22の3つのコーナ部に固定されている。
なお、ガラス板支持具25は、ネジ機構(図示せず)を備え、必要に応じて高さ調整をすることができる。
【0022】
ガラス上昇部26は、ガラス板支持具25によって支持されたガラス板2を、ガラス板支持具25上から、例えば数十mm程度、持ち上げる装置である。
ガラス上昇部26は、保持パット26a、シリンダ26bを備える。
保持パット26aは、ガラス板支持具25によって支持されたガラス板2の重心位置、又はその近傍設けられている。このため、1つの保持パット26aでも、ガラス板2をバランスよく持ち上げることができる。保持パット26aは、ゴム等の弾力を有する材料により形成されている。このため、ガラス板2を持ち上げる場合に、ガラス板2を損傷することはない。
シリンダ26bは、保持パット26aを上下駆動する駆動装置である。
【0023】
エア流入管27は、両端が開口した直管状の部材である。エア流入管27は、外箱21の底板のほぼ中央に接続されている。
なお、成膜台ユニット20A〜20Fの6つのエア流入管27は、左右方向Xの同一線上に配置されている(
図2参照)。このため、供給管41(
図2参照)から真上に向けて配管すれば、6つのエア流入管27に容易に接続できる。
エア流入管27の一端は、外箱21の底板に接続されて外箱21の内側に開口し、他端は、外箱21の下側Z1に突出している。他端は、外側に突出するフランジ部27aになっている。
【0024】
連通管28は、内箱22内の低圧空間A3と、外部空間A1(つまり塗装室6の内部)とを連通させる管である。連通管28の一端は、内箱22の底板に接続されて内箱22の内側に開口し、他端は、外箱21の底板を貫通して外部に開口している。
【0025】
図2に示すように、仕切板30は、スプレー装置60が噴射した塗装液が、隣接する他の成膜台ユニット20のガラス板2上に塗装液が付着しないようにする板材である。
仕切板30は、成膜台ユニット20間に配置されている。仕切板30は、シャーシ11に支持されている。仕切板30の高さは、各成膜台ユニット20が支持するガラス板2の位置よりも高い。
【0026】
エア供給装置40は、成膜台10に空気を供給する装置である。
図2、
図4に示すように、エア供給装置40は、供給管41、伸縮管42、シリンダ43、接続管44を備える。
供給管41からの空気は、伸縮管42、接続管44を通って、成膜台10に供給される。
供給管41は、ブロワ等の空気供給装置に接続されている。供給管41は、レール51の下側Z1に、レール51に平行に配置されている。
伸縮管42は、蛇腹状の管であり、鉛直方向Zに伸縮可能である。
シリンダ43は、エアシリンダ、油圧シリンダ等である。シリンダ43は、伸縮管42を伸縮させる。シリンダ43は、3つ設けられており、1つのシリンダ43が、2つの伸縮管42を駆動する(
図2参照)。
【0027】
接続管44は、各成膜台ユニット20のエア流入管27のフランジ部27aに接続する管である。接続管44は、伸縮管42の伸縮にともなって、鉛直方向Zに移動する。
接続管44の先端の周囲は、シール部材44aを備える。
シール部材44aは、ゴム等の弾性部材によって形成されている。シール部材44aの上端は、平面となっている。
【0028】
図4(B)に示すように、上記構成により、エア供給装置40は、シリンダ43を駆動させることによって、接続管44を、退避位置P1と、接続位置P2との間で、上下駆動する。
退避位置では、接続管44及びエア流入管27が離間している。このため、成膜台10は、接続管44に干渉せずに、レール51に沿って移動することができる。
接続位置では、エア供給装置40は、シール部材44aと成膜台10のエア流入管27のフランジ部27aとを接続して、各成膜台ユニット20にエアを供給する。シール部材44aは、エア流入管27のフランジ部27aに加圧接触するので、接続管44及びエア流入管27の接続部分からの空気の漏洩を抑制する(なお、
図4(B)には、各構成を明確にするために、シール部材44a及びフランジ部27a間に隙間を有するように図示した)。
【0029】
図2に示すように、レール装置50は、レール51、ストッパ52a、回転アーム52bを備える。
レール51は、塗装室6の外部から内部に、連続して敷設されている(
図1参照)。レール51は、柱51aに支持されて、床面から数百mm程度の高さに設置される。レール51は、成膜台10の車輪12が載っており、成膜台10を塗装室6の内外に案内する。
【0030】
ストッパ52a、回転アーム52bは、成膜台10を、塗装位置に保持する装置である。塗装位置は、スプレー塗装時に、成膜台10が配置される位置である。
ストッパ52aは、レール装置50の搬送方向奥側(
図1に示す塗装室6の奥側)に配置されている。成膜台10のシャーシ11がストッパ52aに当接することにより、成膜台10が塗装位置に配置される。
回転アーム52bは、回転駆動されることにより、塗装位置に配置された成膜台10に対して、搬送方向手前端(塗装室6の扉6a側)から、シャーシ11に当接する。回転アーム52bの駆動は、エアシリンダ、モータ等を用いてもよい。
上記構成により、ストッパ52a、回転アーム52bは、成膜台10を搬送方向両側から挟み込んで、塗装位置に保持する。
【0031】
図3(B)に示すように、スプレー装置60は、多関節のロボットアームの先端に、塗装液をスプレーする塗装ヘッドを備える。スプレー装置60は、予め設定されたプログラムに従って、成膜台10によって支持されたガラス板2に対して、塗装液のスプレー塗装を行う。
スプレー装置60は、各成膜台ユニット20(20A〜20F)に、それぞれ設けられていてもよい。又は1つのスプレー装置60が、各成膜台ユニット20(20A〜20F)のガラス板2を順次塗装してもよい。
【0032】
成膜生成システム1を用いた成膜生成処理について説明する。
成膜生成処理は、以下の順に行われる。
[クリーンルーム内搬入工程]
図1、
図4に示すように、ガラス板2は、ベルトコンベヤ7aによって搬送されながら、洗浄機7bを通り、クリーンルーム5内に搬入される。
【0033】
[ガラス板載置工程]
作用者又はロボットは、搬入されたガラス板2を、ベルトコンベヤ7a上から成膜台10に載置する。
この場合、成膜台10のガラス上昇部26は、降下位置に配置されていても、上昇位置に配置されていてもよい。ガラス上昇部26が上昇位置に配置されている場合には、作用者は、ガラス板2を載置後、ガラス上昇部26を降下させる。
これにより、ガラス板2は、ガラス板支持具25によって、成膜台10上に載置された状態になる。
【0034】
作業者P等は、ガラス板2の外周と、外箱21の外周とが一致するように、ガラス板2を載置する。この場合、ガラス板2の外形は、外箱21の外形よりも若干大きく、かつ、ガラス板2は、位置決め部21dにより所望の載置に案内される。これにより、外箱21の内部が直接露出することはない。このため、後述するような塗装液のガラス板2下面への裏回りを、十分に抑制できる。
[成膜室内搬入工程]
作業者Pは、成膜台10を、レール51に乗せて塗装室6内に搬入する。
【0035】
[塗装準備工程]
成膜台10がレール51上を移動してストッパ52aに当接すると、作業者Pは、回転アーム52bを回転して、成膜台10を塗装位置に保持する。
次に、作業者Pは、操作部を操作して、エア供給装置40のシリンダ43を駆動して、接続管44を退避位置P1から接続位置P2に配置する。
これにより、接続管44が成膜台10の各成膜台ユニット20(20A〜20F)のエア流入管27に接続され、空気が各成膜台10に供給される。
【0036】
空気が供給された状態における成膜台ユニット20(20A〜20F)内の圧力の状態について説明する。
図4に示すように、成膜台ユニット20(20A〜20F)に供給された空気は、高圧空間A2に供給される。
外箱21の開口縁部21a及びガラス板2間の隙間Dは、1〜2mm程度である。このため、高圧空間A2及び外部空間A1には、圧力差が生じる。つまり、高圧空間A2の圧力は、上昇し、外部空間A1の圧力よりも高くなる。その結果、
図4(C)に矢印で示すように、高圧空間A2内の空気は、隙間Dから外部空間A1に流出する。なお、外部空間A1の圧力は、塗装室6の圧力であるので、通常は、大気圧である。
一方、内箱22内の低圧空間A3は、パッキン22cによって、高圧空間A2との間が仕切られている。また、低圧空間A3は、連通管28を介して外部と連通している。このため、低圧空間A3の圧力は、この連通管28によって、外部空間A1の圧力に等しい状態が維持される。
【0037】
ここで、高圧空間A2の圧力は、ガラス板2を押し上げるように作用する。このため、ガラス板2の周縁(高圧空間A2に接する領域)には、ガラス板2を上側Z2に持ち上げる力が働く。一方、内箱22内の低圧空間A3は、外部空間A1と同じ圧力に保たれるので、ガラス板2の中央(低圧空間A3に接する領域)には、ガラス板2を持ち上げる力は、働かない。
従って、ガラス板2には、周囲の限られた部分(面積)においてのみ持ち上げる力が働くことになる。ガラス板2は、この力程度では持ち上がらないような十分な重さを有しており、浮き上がったり、移動することはない。なお、仮に、ガラス板2が軽いために浮き上がってしまうような場合であっても、位置決め部21dが、ガラス板2の面方向(XY平面方向)の移動を抑制し、ガラス板2の外形が外箱21の外形からはみ出すことを抑制できる。
【0038】
[塗装工程]
作業者Pは、塗装室6の扉6aを閉じる。
スプレー装置60は、作業者Pの操作に応じて、成膜台10に支持されたガラス板2に塗装液をスプレー塗装する。
塗装工程においても、前述した圧力状態が維持される。
このため、スプレー装置60から噴射された塗装液は、隙間D内に侵入することなく、ガラス板2の下面への裏回りが抑制される。
なお、実際に、隙間D=1〜2mmとし、かつ、隙間Dからの空気の流出量が5〜10m/秒の間で、空気の供給量を調整して塗装を行った。この条件では、塗装液がガラス板2の下回りせず、良好に塗装できることを確認した。
また、仕切板30によって、スプレー装置60から噴射された塗装液は、他の成膜台ユニット20(20A〜20F)のガラス板2上に付着することを抑制できる。これにより、色むらを抑制できる。
さらに、成膜生成システム1は、成膜台10を用いることにより、6枚のガラス板2を同時に塗装できる。
【0039】
[塗装室6からの搬出工程]
塗装が終了すると、作業者Pは、回転アーム52bを回転駆動して成膜台10の保持を解除し、また、接続管44を退避位置P1に配置する。
図1に示すように、作業者Pは、成膜台10を、塗装室6からレール51上に沿って移動させて、レベリングスペース8に移動する。
レベリングスペース8は、塗装室6の扉6a近傍の領域である。
[レベリング工程]
作業者Pは、成膜台10を、レベリングスペース8に一定時間、待機させる。これによってガラス板2上の塗膜が、レベリングされる。
[塗装膜硬化工程]
レベリング終了後、作業者Pは、成膜台10上のガラス板2を、硬化処理台車9aに乗せ換える。この場合、作業者Pは、ガラス上昇部26を駆動して保持パット26aを上昇させて、ガラス板2をガラス板支持具25上から上昇させる。
これにより、作業者Pやロボットは、外箱21の開口縁部21aと、ガラス板2との間に手やロボットハンドを入れることができる。このため、作業者P等は、ガラス板2を容易に持ち上げて、硬化処理台車9aに移載できる。
作業者Pは、硬化処理台車9aを硬化装置9内に移動して、ガラス板2の塗膜を硬化する。これにより、UVカット被膜が形成さる。
【0040】
[搬出工程]
塗膜硬化後、作業者Pは、硬化処理台車9a上のガラス板2を、検査台車9bに乗せ換えて、クリーンルーム5から出入スペース7に搬出する。その後、作業者Pは、外観検査等の必要な検査を行い、ガラス板2を出入スペース7の外部に搬出する。
【0041】
以上説明したように、実施形態の成膜生成システム1は、塗装液のガラス板2の下面への回り込み抑制を、外箱21等を用いることにより、簡単な構成で実現できる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、第1実施形態の成膜生成システム1(塗装システム)を利用して製造するガラス板270、及び製造方法について説明する。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を適宜付して、重複する説明を適宜省略する。
【0043】
図5は、第2実施形態のガラス板270を示す図である。
図5(A)は、ガラス板270を上面271から見た図である。
図5(B)は、ガラス板270を方向X1から見た図である。
図5(C)は、ガラス板270の断面図(
図5(A)のC−C部断面図)である。
図5(D)は、ガラス板270を方向Y2から見た図である。
図5(E)は、ガラス板270の断面図(
図5(A)のE−E部断面図)である。
図5(F)は、ガラス板270の断面図(
図5(A)のF−F部断面図)である。
第2実施形態以降の説明及び図面では、第1実施形態と同様なXYZ直交座標系を設けた。第2実施形態以降では、ガラス板270の形状に合わせて、短手方向X、長手方向Y、鉛直方向Zと称する。
【0044】
ガラス板270(板状体)は、第1実施形態の成膜生成システム1によって、UVカット皮膜280が生成されている。
製造されたガラス板270は、自動車のドアガラスとして利用されるものである。ドアガラスは、自動車に装着した状態では、短手方向Xの方向X2が鉛直方向下側であり、方向X1が鉛直方向上側である。
【0045】
図5(A)に示すように、ガラス板270を上面271から見た形状は、略四角形である。使用時において、ガラス板270の方向X1側の辺273と、長手方向Yの両側(方向Y1,Y2)の辺274,275とは、ドアの枠295に入り込む(
図8参照)。ガラス板270の方向X2側の辺276は、開閉機構に接続するために(
図8(A)参照)、不規則な形状になっている。
図5(C)、
図5(E)、
図5(F)に示すように、ガラス板270の断面形状は、湾曲している。辺273,274,275,276側の端面273a,274a,275a,276aの断面形状は、研磨加工等によって、厚さ方向Zの中心に至る程、XY平面内において外側に突出するように湾曲している。実施形態では、これらの断面形状は、略半円形状である。
【0046】
[UVカット皮膜280の形成領域]
UVカット皮膜280が形成領域は、
図5に網状のハッチングで示す領域である。UVカット皮膜280は、上面271(表面)及び端面273a,274a,275aに、一体的に形成されている。
UVカット皮膜280は、ガラス板270の表面のうち方向X1側の範囲280aにのみ形成されている。方向X2側の範囲280bは、ドアに収容された状態で外部に露出しないため、UVカット皮膜280は、この範囲280bには形成されていない。このため、UVカット皮膜280は、辺276側の端面276aにも形成されていない。
また、UVカット皮膜280は、下面272の全面に形成されていない。
【0047】
図5(B)に示すように、端面273aにおいて、弓形の領域273dには、UVカット皮膜280が設けられていない。つまり、端面273aのUVカット皮膜280は、辺273に沿った方向の中央範囲273cでは、端面273aの上面271側(上側Z2)の一部のみを覆っている。
図5(E)に示すように、中央範囲273cでの中央の断面形状において、UVカット皮膜280は、湾曲形状の最も外側に突出した部分である突出部277を越えない。つまり、ガラス板270は、突出部277よりも上面271側に、UVカット皮膜280が設けられていない領域を有する。
【0048】
一方、
図5(F)に示すように、端面273aのUVカット皮膜280は、中央範囲273cを除く範囲273bでは、厚さ方向Zにおいて、端面273aの全てを覆っている。なお、「端面の全て」は、「端面の略全て」の形態も含まれ、例えば、端面273a及び下面272が交差する稜線近傍に、UVカット皮膜280が形成されていない態様も含む。
【0049】
端面274a,275aの断面形状は、
図5(F)に示す端面273aの断面形状と同様である。
但し、
図5(D)に示すように、端面274aのうち範囲280bには、厚さ方向Zの全範囲において、UVカット皮膜280が設けられていない。端面275aも、端面274aと同様である。
【0050】
[製造方法]
第2実施形態のガラス板270の製造工程は、第1実施形態と同様な成膜生成システム1を用いて、第1実施形態と同様な成膜生成処理に従う。以下、第2実施形態のガラス板270の製造工程の一部について説明する。
図6は、第2実施形態のガラス板270を、成膜台ユニット20に載置した状態を拡大して示す断面図である。
図6(A)は、ガラス板270の上面271を塗装している状態を示す。
図6(B)は、範囲273bにおいて、ガラス板270の端面273aを塗装している状態を示す。
図6(C)は、中央範囲273cにおいて、ガラス板270の端面273aを塗装している状態を示す。
図7は、第2実施形態の塗装工程における塗装ヘッド61の移動経路65を、上面271から見た状態において説明する図、塗装後のガラス板270を持ち上げる工程を説明する図である。
実施形態では、便宜上、UVカット皮膜280を生成するための塗料を「塗料280」ともいう。
【0051】
[塗装工程]
第2実施形の塗装工程も、第1実施形態と同様な工程によって行う。
図6(A)、
図7(A)に示すように、スプレー装置60(
図1参照)の記憶装置には、塗装ヘッド61の移動経路65を定めるプログラムが組み込まれている。
スプレー装置60の制御装置は、このプロプラムに従って、ロボットアームを制御して、塗装ヘッド61を連続して移動する。
塗装ヘッド61は、短手方向Xに往復移動しながら、往復移動の終端で方向Y1に移動することにより、ガラス板270の上面271をXY平面内で移動して、UVカット皮膜280を形成するための塗料を塗布する。これにより、スプレー装置60は、塗料280を、ガラス板270の上面271と、端面273a,274a,275aとに、1回の塗装工程で連続して塗布できる。
塗装ヘッド61の移動範囲は、UVカット皮膜280が形成される範囲280aに対応している。また、移動経路65に示すように、端面274a,275aの全面にUVカット皮膜280を形成できるように、塗装ヘッド61は、端面274a,275aの外側を通る。
【0052】
端面273a側において、塗装ヘッド61の移動ストロークは、辺273に沿った方向(略長手方向Y)の中央に至るに従って短くなっている。
このため、塗装ヘッド61の移動ストロークの終端位置(塗装ヘッド61の折り返し点)と端面273aとの距離は、範囲273b(
図7(A)に示す距離L65b等参照)の方が、範囲273c(
図7(A)に示す距離L65c等参照)よりも長い。
そのため、
図6(B)に示すように、範囲273bでは、塗装ヘッド61から噴出した塗料280が、端面273aの厚さ方向Zの全てに塗布される。なお、図示は省略するが、端面274a,275aも、
図6(B)と同様な状態である。
一方、
図6(C)に示すように、中央範囲273cの中央では、厚さ方向Zにおいて、端面273aの上面271側(上側Z2)の範囲にのみ塗料280が塗布される。
【0053】
ここで、隙間Dからは、第1実施形態と同様に、空気が流出している。また、端面273a,274a,275aの断面形状は、略半円形状である。このため、端面273a,274a,275aの塗料280の塗布量は、厚さ方向Zの下側Z1に至るに従って少なくなり、かつ、空気の流速は、厚さ方向Zの下側Z1に至るに従って速くなる。そのため、塗膜は、厚さ方向Zの下側Z1に至るに従って、徐々に薄くなっていく。
これにより、ガラス板270と塗膜との境界279には、段又は大きな段が形成されない。また、塗料280は、下面272に裏回りすることが抑制される。
さらに、ガラス板270を載置した状態で、塗装ヘッド61の経路を定めて塗料280を塗布できるので、端面273a、端面274a,275aとで、異なる範囲に塗料280を塗布でき、異なる断面形状の塗膜を形成できる。
【0054】
[塗装室6からの搬出工程、レベリング工程、塗装膜硬化工程]
塗装が終了すると、ガラス板270は、塗装室6(
図1参照)からの搬出された後、レベリングスペース8で、レベリングされる。
図7(B)に示すように、レベリング終了後、作業者Pは、ガラス上昇部26を駆動することにより、ガラス板270を成膜台ユニット20から上昇させる。作業者Pは、この上昇させた状態で、ガラス板270の端面273a,276aを両手P5で支持することにより、ガラス板270を持ち上げて硬化処理台車9a(
図1参照)に移載する。
【0055】
前述したように、端面276aには、塗料280が塗布されていない。また、端面273aの中央範囲273cには、突出部277の下側Z1に、塗料280が塗布されていない。このため、作業者Pは、端面273a,276aの斜め下側を、両手P5で支持することにより、塗装された塗料280に触れることなく、ガラス板270を持ち上げて移載できる。
これにより、ガラス板270は、製造時の取扱いが容易である。かつ、ガラス板270は、塗膜の汚損を抑制できるので、不良を低減し、また、品質を向上できる。さらに、作業者Pは、手に塗料が付着することを抑制できるので、他のガラス板270等に塗料を不用意に付着させることを抑制できる。なお、ガラス板270を、作業者Pではなくロボットのハンド等で移載する場合にも、同様な作用、効果を奏する。
その後、塗装膜硬化工程によって、塗膜を硬化させる。
【0056】
以上の工程によって、実施形態のガラス板270は、以下の作用、効果を奏する。
(1)UVカット皮膜280を、ガラス板270の上面271、端面273a、274a,275aに、連続して塗装することにより、これらに一体的に形成することができる。これにより、丈夫なUVカット皮膜280を形成できる。
(2)UVカット皮膜280と、ガラス板270との境界279に大きな段等が形成されないので、後述するように、使用時のUVカット皮膜280の剥離を抑制できる。
(3)予め決められた移動経路65に従ってスプレー装置60を移動して、塗料280を塗布するので、複数の製品間において、塗装のバラツキを小さくできる。これにより、均一の製品を製造することができる。
(4)端面273aと、端面274a,275aとの間で、皮膜範囲を変えることができる。つまり、端面273aの弓形の領域273dや、端面274a,275aのうち範囲280bの領域のように、異なる態様で、UVカット皮膜280を抜いた範囲を設けることができる。
【0057】
実施形態とは異なり例えば引用文献2に記載のフローコート法等による製造方法では、鉛直下側の端面には、UVカット皮膜を形成可能であるが、他の端面に対して、UVカット皮膜を同時に形成することはできない。また、仮に、他の端面にUVカット皮膜を形成できたとしても、複数の端面に一体でUVカット皮膜を形成すること、複数の端面間において皮膜範囲を変えること、複数の製品間でバラツキを少なくUVカット皮膜を形成することは、極めて困難である。また、端面の一部のみに塗膜を形成するような塗装ができないので、移載する場合に、上記作用、効果(塗料の作業者等への付着抑制等)を奏することはできない。
【0058】
[ガラス板270の使用態様]
図8は、第2実施形態のガラス板270の使用態様を説明する図である。
図8(A)は、ガラス板270の使用態様を上面271から見た図である。
図8(B)は、ガラス板270の開閉時において、端面273aがドアの溝295aに対して、挿抜される状態を説明する断面図である。
図8(A)に示すように、ガラス板270の辺276側には、ガラス板270の開閉機構に接続するための接続部290を備える。接続部290は、その断面がコの字状の部材であり(図示は省略する)、また、金属、樹脂等の材料により形成される。接続部290は、例えば、ガラス板270に対して、接着剤、クリップ、ねじ止め等によって、固定される。
【0059】
図8(A)に示すように、ガラス板270を閉じた状態では、端面273a,274a,275aは、ドアの枠295に係合する。
図8(B)に示すように、ガラス板270の開閉時には、ガラス板270の端面273aは、溝295aの内壁295b等に擦れる。
ここで、前述したように、UVカット皮膜280とガラス板270との境界279には、大きな段等が形成されない。このため、ガラス板270の273aのUVカット皮膜280は、溝295aの内壁295b等に引っかかることが抑制できる。これは、端面274a,275aについても同様である。また、UVカット皮膜280は、上面271、3つの端面273a,274a,275aに一体的に形成される。
これにより、ガラス板270は、3つの端面273a,274a,275aにおいて、一部のUVカット皮膜280が剥がれてしまうことも抑制でき、丈夫である。
【0060】
これに対して、実施形態の成膜台ユニット20を用いずに、例えば上面だけに膜を形成した形態では、UVカット皮膜とガラス板との境界に、大きな段が形成されてしまう。この形態では、UVカット皮膜がこれらの境界から剥がれやすくなってしまう。
【0061】
以上説明したように、本実施形態のガラス板270は、成膜台ユニット20上に載置した状態で、塗装を塗布できる。このため、ガラス板の向きを変えながら塗布液を塗布するフローコート法等に比べると、製造が容易である。また、ガラス板270は、UVカット皮膜280を、端面273a,274a,275aに、異なる態様で形成でき、製造時に塗料が作業者P等へ付着すること等を抑制できるので、取扱いが容易であり、製造が一層容易である。
【0062】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第2実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を適宜付して、重複する説明を適宜省略する。
図9は、第3実施形態のガラス板370を示す図である。
図9(A)は、ガラス板370を上面271から見た図である。
図9(B)は、ガラス板370を方向X1から見た図である。
図9(C)は、ガラス板370を方向Y2から見た断面図である。
【0063】
図9(B)に示すように、本実施形態のガラス板370は、端面273aのUVカット皮膜280の範囲が、第2実施形態とは異なる。
端面273aのUVカット皮膜280は、辺273の全長に渡って、端面273aの上辺373e(上面271側の辺)から突出部277までの範囲373fを、覆うように設けられている。このため、UVカット皮膜280及びガラス板270の境界379の位置と、突出部277の位置とは、略同じである。なお、突出部277とは、最も外側に突出した部分のみをいうものではなく、最も外側に突出した部分の近傍も含む概念である。
これにより、UVカット皮膜280は、辺273の全長に渡って、端面273aの一部のみを均一に覆うことができる。このため、端面273aの断面形状は、辺273の全長に渡って、
図9(C)のような形態である。
このようにUVカット皮膜280を形成するには、
図9(A)に示すように、塗装ヘッド61の移動経路365の移動ストロークの終端位置P365aを、辺273と略同じ位置にすればよい。なお、終端位置P365aは、
図9(A)に示す位置に限定されず、実際の製造時には、範囲373fに塗装できるように、調整することができる。
【0064】
これにより、端面273aのUVカット皮膜280は、端面273aの上側Z2の範囲373fに形成されることになり、端面273aの見栄え(外観の品質)を向上できる。
なお、
図9(B)の二点鎖線内に示すように、塗装時における塗料の液垂れ等によって、微細な領域において、UVカット皮膜280が下面272まで達してしまうことがある。このような形態であっても、辺273の略全長に渡って、端面273aの一部のみを均一に覆うことができるので、端面273aの見栄えを向上できる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態のガラス板370は、第2実施形態の効果に加えて、見栄えを向上できる。
【0066】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1から第3実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を適宜付して、重複する説明を適宜省略する。
図10は、第4実施形態のガラス板470を示す図である。
図10(A)は、ガラス板470を上面271から見た図である。
図10(B)は、ガラス板470を方向X1から見た図である。
図10(C)は、ガラス板470を方向Y2から見た断面図である。
【0067】
図10(B)に示すように、本実施形態のガラス板470は、端面273aのUVカット皮膜280の範囲473fが、第3実施形態とは異なる。
すなわち、
図10(B)、
図10(C)に示すように、端面273aのUVカット皮膜280の範囲473fは、第3実施形態よりも狭く、上辺373e(上面271側の辺)から突出部277を越えない範囲である。
このように塗装するには、
図10(A)に示すように、塗装ヘッド61の移動経路465の移動ストロークの終端位置P465aを、第3実施形態よりも内側にすればよい。
【0068】
以上の構成により、端面273aのうちUVカット皮膜280が形成されていない範囲は、突出部277を含むことになり、かつ、第2、第3実施形態よりも広くなる。これにより、ガラス板470は、塗装時等において、作業者P等が塗膜に触れることを、より確実に抑制できるし、また、取り扱いが一層容易である。
なお、本実施形態においても、UVカット皮膜280が下面272まで達しても(
図9(B)の二点鎖線内参照)、作業者P等が塗膜に触れることを抑制できる程度に微小であれば許容される。
【0069】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
図11は、第5実施形態のガラス板570を示す図である。
図11(A)は、ガラス板570を上面271から見た図である。
図11(B)は、ガラス板570を方向Y2から見た断面図である。
ガラス板570の辺276側の端面276aには、辺276の全長に渡って、枠595が設けられている。枠595は、モール等とも称される。ガラス板570は、開閉されるものではなく、自動車のボディに、接着剤等により固定される。
なお、端面273aの形態は、前述した第2から第4実施形態のいずれの形態でもよい。
【0070】
枠595は、例えば、ガラス板570を金型に配置した状態で、PVC樹脂等を射出成形することにより設けられる。
枠595の内側面は、UVカット皮膜280が設けられていない範囲280b、端面276a、下面272において、UVカット皮膜280を介さずに、ガラス板570に直接接触している。これにより、ガラス板570は、枠595との接着強度を向上できる。なお、ガラス板570にプライマー(下地を作るための塗装)を設ける場合にも、範囲280b、端面276a、下面272に直接塗装できるので、ガラス板570及び枠595間の接着強度を向上できる。
【0071】
以上説明したように、ガラス板570は、枠595との接着強度を向上できる。
なお、枠595を射出成形ではなく、予め用意された枠を接着剤によってガラス板570に固定する場合にも、UVカット皮膜280が設けられていない上記部分に接着することにより、接着強度を向上できる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、後述する変形形態等のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、前述した実施形態及び後述する変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0073】
(変形形態)
(1)実施形態において、板状体及び外箱の縁部間の隙間は、1〜2mm程度である例を示したが、これに限定されない。この隙間は、塗装液が毛細管現象を起こさず、かつ、塗装液が板状体に裏回りしない程度に高圧空間及び外部空間の圧力差を発生させる程度であればよい。例えば、スプレー噴射された塗装液の粒が実施形態よりも大きい場合には、この隙間を大きくし、かつ、高圧空間及び外部空間の圧力差を大きくしてもよい。
【0074】
(2)実施形態において、圧力差生成部は、高圧空間内に空気を供給するエア供給部である例を示したが、これに限定されない。圧力差生成部は、高圧空間及び外部空間の圧力差が発生させる形態であれば、いずれの形態でもよい。
例えば、圧力差生成部として、塗装室内の圧力を低くするためのエア吸引装置を設けてもよい。この場合には、高圧空間を大気圧に保つような管を、外箱に配管すればよい。この場合にも、高圧空間及び外部空間の圧力差を発生させることができる。
【0075】
(3)実施形態において、成膜台は、6つの成膜台ユニットが配列されて構成される例を示したが、これに限定されない。例えば、成膜台として、成膜台ユニットを単独で用いてもよい。
【0076】
(4)実施形態において、塗装対象である板状体は、ガラス板2である例を示したが、これに限定されない。板状体は、他の素材(例えば金属の板材等)でもよい。
【0077】
(5)実施形態において、塗装液は、線紫外線吸収剤を含み、UVカット被膜を生成するものである例を示したが、これに限定されない。
例えば、塗装液は、赤外線吸収剤を含むものでもよい。
また、塗装液は、ガラス板を着色するためのものでもよい。この場合には、板状体を、金属の板材等にしてもよい。
【0078】
(6)実施形態において、成膜台ユニット間に仕切板を設ける例を示したが、これに限定されない。例えば、塗装液として、色むらが発生しない(又は色むらが発生しにくい)種類のものを用いる場合には、仕切板は、設けなくてもよい。
【0079】
(7)第2から第5実施形態において、UVカット被膜は、ガラス板の全周には、設けられていない例を示したが、これに限定されない。UVカット被膜は、ガラス板の全周の端面に形成してもよい。