(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光分割部と前記回折光学素子とは、一体であり、その前記光出射部側の面と前記光出射部とは反対側の面との一方は、入射した光束を回折作用によって前記複数の光束に分割させる前記光分割部の回折発現面として構成され、他方は、前記マイクロレンズが配列される面である、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係るHUD装置を、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るHUD装置1は、
図1に示すように、車両2のダッシュボード内に設けられ、生成した表示像M(
図2参照)を表す光をウインドシールド3で反射させることにより、ユーザ(主に、車両2の運転者)に表示像Mの虚像Vを視認させるものである。ユーザが虚像Vを視認可能な領域は、アイボックス4として規定される。
【0012】
表示像Mは、例えば、車両2に関する情報(自車だけでなく車外の情報も含む)を報知するための画像である。具体的には、表示像Mは、車速、エンジン回転数などの情報や、カーナビゲーションのための情報を示す画像等である。この表示像Mは、後述の制御部90が車両2のECU(Electronic Control Unit)などから取得した情報に基づいて表示される。
【0013】
HUD装置1は、
図2に示すように、合成レーザー光発生装置10と、MEMS(Micro Electro Mechanical System)スキャナ20と、入射角制御レンズ30と、透過スクリーン40と、反射部50と、ハウジング60と、を備える。
【0014】
合成レーザー光発生装置10は、R,G,Bの三原色のレーザー光を合波して1本の合成レーザー光を出射する装置である。
合成レーザー光発生装置10は、
図3に示すように、レーザーダイオード(LD;Laser Diode)11と、集光光学系12と、ダイクロイックミラー14,15と、を備える。
【0015】
LD11は、赤色のレーザー光Rを発するLD11rと、緑色のレーザー光Gを発するLD11gと、青色のレーザー光Bを発するLD11bと、から構成される。
【0016】
集光光学系12は、LD11rに対応する集光レンズ12rと、LD11gに対応する集光レンズ12gと、LD11bに対応する集光レンズ12bと、から構成される。集光レンズ12rは、LD11rから出射されたレーザー光Rが、所望の位置に結像するように収差補正されたレンズであり、発散するレーザー光Rを収束光に変換する。集光レンズ12gとLD11gとの対応関係、集光レンズ12bとLD11bとの対応関係についても同様である。
【0017】
ダイクロイックミラー14,15は、それぞれ、誘電体の多層膜等の薄膜が鏡面に形成された鏡で構成され、LD11r,11g,11bの各々が出射したレーザー光R,G,Bを反射又は透過させ、レーザー光R,G,Bを1本のレーザー光に合波する。
【0018】
ダイクロイックミラー14は、集光レンズ12rと集光レンズ12bとから出射される光の進行方向側に位置し、各々の光の進行方向に対して所定の角度をもって配設される。これにより、レーザー光Bを透過させ、レーザー光Rを反射させる。このようにして、ダイクロイックミラー14は、レーザー光RとBを合波する。
【0019】
ダイクロイックミラー15は、集光レンズ12gとダイクロイックミラー14とから出射される光の進行方向側に位置し、各々の光の進行方向に対して所定の角度をもって配設される。これにより、合波されたレーザー光R,Bを透過させ、レーザー光Gを反射させる。このようにして、ダイクロイックミラー15は、レーザー光R,Bとレーザー光Gをさらに合波する。
【0020】
以上の構成からなる合成レーザー光発生装置10は、LD11r,11g,11bの各々から出射されたレーザー光R,G,Bを、1本の合成レーザー光として出射する。なお、合成レーザー光発生装置10から出射される合成レーザー光を構成するレーザー光R,G,Bの各々の偏光方向(電場振動方向)が一致するように、LD11r,11g,11bの各々は調整されている。また、この偏光方向は、表示像Mを表す光が到達するウインドシールド3の反射率の偏光依存性を考慮して決定されている。
【0021】
MEMSスキャナ(MEMSミラー)20は、合成レーザー光発生装置10が出射した合成レーザー光を走査して、透過スクリーン40の上面に表示像Mを生成する。なお、ここで「上」とは、同図に示す両端矢印のように、HUD装置1に対して、ウインドシールド3側の方向を言う。「下」は、その逆方向を言う。
【0022】
入射角制御レンズ30は、MEMSスキャナ20で走査されたレーザー光R,G,Bの合成レーザー光を、走査位置に応じた入射角で透過スクリーン40へ入射させる。入射角制御レンズ30は、合成レーザー光の透過スクリーン40への入射角を、透過スクリーン40以降の光学系(反射部50、ウインドシールド3)の特性に合わせて最適化するように形成され、配置されている。
【0023】
透過スクリーン40は、入射角制御レンズ30を透過した合成レーザー光(以下、レーザー光Lとも言う)を受けることで、表示像Mを表示する。MEMSスキャナ20で走査されたレーザー光R,G,Bが透過スクリーン40上で結像することで、表示像Mが表示される。また、透過スクリーン40の下面には、後述するカラーセンサ70が設けられている。
【0024】
透過スクリーン40は、MEMSスキャナ20で走査されたレーザー光Lを透過・発散(拡散)させる。透過スクリーン40で拡散されたレーザー光Lは、反射部50(後述の平面ミラー51)へと向かう。なお、透過スクリーン40については、後に詳述する。
【0025】
反射部50は、透過スクリーン40の上面に表示された表示像Mが、所望の位置に、所望の大きさで虚像Vとして結ばれるように、透過スクリーン40とウインドシールド3との光路間に設けられる光学系である。反射部50は、平面ミラー51と拡大ミラー52の2枚の鏡から構成される。
【0026】
平面ミラー51は、平面状の全反射ミラー等であり、透過スクリーン40に表示された表示像Mを表す光(表示光)を受ける位置に配置され、表示光を拡大ミラー52に向けて反射させる。
【0027】
拡大ミラー52は、凹面鏡等であり、平面ミラー51からの表示光を、その凹面でウインドシールド3に向けて反射させる。これにより、結ばれる虚像Vは、透過スクリーン40に表示されている表示像Mが拡大された大きさとなる。拡大ミラー52による表示像Mの拡大倍率は、拡大ミラー52の焦点距離(曲率半径)や、透過スクリーン40と拡大ミラー52間の距離で決まる。拡大ミラー52の焦点距離が短い方が光路スペースを低減できるが、拡大ミラー52による拡大倍率は、表示像Mの大きさ、虚像Vとして結像させたい像の大きさ、虚像Vの像歪み、HUD装置1の許容体積(光路スペース)等を勘案して最適な値となるように決定される。
【0028】
ハウジング60は、例えば硬質樹脂から、上部開口の箱状に形成されている。ハウジング60は、上記各部(合成レーザー光発生装置10、MEMSスキャナ20、入射角制御レンズ30、透過スクリーン40、及び反射部50)を収容する。ハウジング60の開口部には、拡大ミラー52からの表示光をウインドシールド3に向けて透過させる窓部61が設けられている。窓部61は、アクリル等の透光性樹脂から湾曲形状に形成されている。窓部61の下面には、後述するライトセンサ80が設けられている。
【0029】
次に、
図4を参照して、HUD装置1の制御系統について説明する。HUD装置1は、同図に示すように、カラーセンサ70と、ライトセンサ80と、制御部90と、MEMSドライバ100と、を備える。
【0030】
カラーセンサ70は、レーザー光R,G,Bそれぞれの光強度を検出し、検出した光強度のアナログデータを制御部90に供給する。ライトセンサ80は、外光強度を検出し、検出した外光強度のアナログデータを制御部90に供給する。なお、本実施形態では、カラーセンサ70が透過スクリーン40の下面に設置され、ライトセンサ80が窓部61の下面に設置されているが、これらの設置場所は、検出光の強度が所定値以上検出可能な範囲であれば任意である。
【0031】
制御部90は、マイクロコントローラ(マイコン)91、出力制御部92、図示しない記憶部及びDAC(Digital to Analog Converter)を有する。DACは、カラーセンサ70及びライトセンサ80の各々から受信したアナログデータをデジタルデータに変換し、マイコン91に供給する。
【0032】
マイコン91は、HUD装置1の各部の動作を制御する。記憶部には、表示像Mを表示するための画像データが予め記憶されており、マイコン91は、この画像データを記憶部からLVDS(Low Voltage Differential Signal)通信等で取得する。また、記憶部には、所定の動作プログラム、カラーセンサ70が配置された位置を示す位置データ等が予め記憶されている。
【0033】
マイコン91は、動作プログラムを実行して以下のように各部の制御を行う。
例えば、マイコン91は、制御データを生成し、生成した制御データを出力制御部92に出力することで、出力制御部92を介してLD11を駆動する。なお、制御データは、カラーセンサ70からDACを介してマイコン91が受信したレーザー光強度のデジタルデータに基づき生成される。例えば、この制御データは、LD11r,11g,11bの各々が出射するレーザー光R,G,Bの光強度を、LVDS通信で供給された画像データが含む映像信号が要求する強度にするためのデータである。また、マイコン91は、MEMSドライバ100を介して、MEMSスキャナ20を駆動する。また、マイコン91は、記憶部に記憶されている位置データを参照し、カラーセンサ70の位置に応じたタイミングで出力制御部92に制御データを供給し、カラーセンサ70から光強度のデータを取得する。
【0034】
出力制御部92は、マイコン91の制御の下でLD11r,11g,11bの各々を駆動する駆動回路などから構成される。MEMSドライバ100は、マイコン91の制御の下でMEMSスキャナ20を駆動する駆動回路などから構成される。
【0035】
ここで、HUD装置1における虚像Vの表示機構を簡潔に述べると、下記のようになる。
制御部90は、出力制御部92を介して合成レーザー光発生装置10に合成レーザー光を出射させると共に、MEMSドライバ100を介してMEMSスキャナ20を駆動する。MEMSスキャナ20は、合成レーザー光発生装置10からの合成レーザー光を透過スクリーン40に向けて走査し、透過スクリーン40上に表示像Mを生成する。
透過スクリーン40に表示された表示像Mを表す光(表示光)は、反射部50を介して、ウインドシールド3に向けて出射される。つまり、HUD装置1は、ウインドシールド3に向けて表示光を出射する。
HUD装置1が出射した表示光がウインドシールド3で反射されることで、
図1に示すように、運転者から見てウインドシールド3の前方に、表示像Mの虚像Vが結ばれる。これにより、運転者は、視域であるアイボックス4において、表示像Mを虚像Vとして視認することができる。
【0036】
(透過スクリーン40)
ここからは、本実施形態に特有の透過スクリーン40について詳細に説明する。
なお、HUD装置1では、虚像Vとして視認される表示像Mは、視認者から見て横長の長方形状に設定されている(つまり、アイボックス4も同様の長方形状)。そして、表示像Mとなるレーザー光を透過・拡散させる透過スクリーン40も、表示像M及びアイボックス4に対応して平面視で長方形状となっている。以下では、この長方形の短辺に沿う軸をy軸、長辺に沿う軸をx軸として、透過スクリーン40の機能や形状を適宜説明する。
【0037】
図2に示す透過スクリーン40は、
図5等に示すように、マイクロレンズアレイ(MLA)41と、MLA41よりもレーザー光Lの入射側に位置するビームスプリッター42と、を有する。
【0038】
MLA41は、
図7に示すように、例えばレンズサイズ100μm程度のマイクロレンズ(ML)41aが、x−y平面の面内方向に配列されるようにして形成されている。同図に示すように、ML41aは、x方向、y方向にそれぞれd1、d2のピッチで周期的に配列されている(d1>d2)。ここで言うピッチとは、互いに隣り合うML41aのレンズ中心間の距離であり、以降、このピッチを「MLA41のピッチ」と呼ぶ。
【0039】
なお、MLA41では矩形のML41aが格子状に周期的に配列されている。そして、MLA41は、隣り合うML41a同士に生じる隙間が最小限となるように形成されているため、この隙間の大きさは無視できるものである。そのため、1つのML41aは、平面視で長辺がd1、短辺がd2の長方形状となる。
【0040】
ここで、MLA41のピッチと、アイボックス4上に形成される回折パターンについて説明する。
本実施形態のMLA41は、
図8に示すように、x方向(水平方向)に回折角θ1で、y方向(垂直方向)に回折角θ2で、レーザー光Lを発散(拡散)させる。このときの回折角θ1,θ2は、nを回折次数として、下記の(数1)、(数2)式で表すことができる。
【0043】
(数1)、(数2)式から分かるように、回折により生じるパターンは、MLA41への入射光の波長を一定とした場合、MLA41のピッチd1,d2によって一義的に決定されることになる。MLA41のピッチd1,d2を小さくすれば表示像Mの高精細化(虚像Vの高精細化と同義)を図ることができるが、この場合、回折角θ1,θ2が大きくなる。回折角θ1,θ2が大きくなると、アイボックス4に到達する光のうち、隣り合う回折次数を有する光同士の距離が大きくなる。
つまり、単にMLA41のピッチを小さくすることで高精細化を図ろうとすれば、視認者の瞳に入射する光強度がアイポイントによって変化しやすくなるため、表示像Mのちらつきや、フルカラー表示時の虹色に色分離する現象(虹色現象)が顕著に表れてしまうことになる。
【0044】
また、本実施形態では前述のように、d1>d2の長方形レンズを用いることで、MLA41を出射した光の分布形状をアイボックス4と同様の長方形状とし、効率良くアイボックス4に光が到達するようにHUD装置1が構成されている。
この構成で、単にMLA41のピッチを小さくすることで高精細化を図ろうとすれば、視認者から見て虚像Vとして視認される表示像Mの上下方向(MLA41の短手方向(y方向)に対応)では、左右方向(MLA41の長手方向(x方向)に対応)に比べて回折角が大きくなるため、特に、表示像のちらつきや、虹色現象が顕著に発生してしまう。
本願発明者は、MLA41の近傍に、次に説明するビームスプリッター42を配設することで、この問題を回避できることを見出した。
【0045】
ビームスプリッター42は、透過型のビームスプリッターであり、偏光グレーティング、ブレーズド回折格子、ホログラム等から構成される。ビームスプリッター42は、光の回折によって入射光束を分割して出射する機能を有していれば、これらの例示に限らず種々の光学部材を用いることが可能である。
【0046】
ここでは、透過スクリーン40の機能の理解を容易にするために、ビームスプリッター42は偏光グレーティングにより構成されるものとする。また、第1実施形態では、ビームスプリッター42は、
図9に示すように、入射したレーザー光Lをy向のみに回折させる。
【0047】
偏光グレーティングは、透光性基板(ガラス、樹脂などからなる)上にパターニングされた液晶ポリマーにより、回折を生じさせるものである。なお、この偏向グレーティングによる回折作用は、上記(数1)、(数2)と同様の式で説明することができる。
【0048】
また、本実施形態では、偏光グレーティングからなるビームスプリッター42に対し、直線偏光のレーザー光Lを入射させ、この入射光は、±1次光(+y方向,−y方向の各々で回折次数が1次の光)の出射光として分割されるものとする。
これは、0次光、及び2次以上の高次の回折光が、±1次光に対して数%の強度となるビームスプリッター42を用いることで、実質的に(近似的に)、ビームスプリッター42からは、±1次光のみが出射されると見做すことができるためである。
【0049】
また、ビームスプリッター42は、入射した直線偏光の光を、±1次光として分割するだけでなく、±1次光をそれぞれ、右または左回転の円偏光として出射する。このように、ビームスプリッター42からの出射光が円偏光であると、表示像M(虚像V)の視認者(主に車両2の運転者)が偏光サングラスをかけていても、表示輝度が低下しづらく、視認性を損なわないといった効果が期待できる。
【0050】
ここで、透過スクリーン40の作用について、
図8〜
図10を参照して説明する。
ビームスプリッター42に入射したレーザー光Lは、ビームスプリッター42を透過し、
図9に示すように、2つの光束に分割されて出射する。ビームスプリッター42から出射された2つの光束は、直後に配置されたMLA41に入射する。
【0051】
ビームスプリッター42での回折による±1次光は、各々、MLA41を透過すると共にMLA41で回折する。
具体的には、ビームスプリッター42からの+1次光は、MLA41での回折を考えれば、その光軸に沿う光を0次光として、MLA41のx方向に回折角θ1で、y方向に回折角θ2で回折する。ビームスプリッター42からの−1次光は、MLA41での回折を考えれば、その光軸に沿う光を0次光として、MLA41のx方向に回折角θ1で、y方向に回折角θ2で回折する。
【0052】
ここで、透過スクリーン40は、
図10に示すように、ビームスプリッター42からの+1次光がMLA41によってさらに回折して形成される回折パターン(以下、「+1次光による回折パターン」と言う)の中間(y方向における中間)に、ビームスプリッター42からの−1次光がMLA41によってさらに回折して形成される回折パターン(以下、「−1次光による回折パターン」と言う)が入り込むように、構成されている。
なお、
図10では、+1次光による回折パターンを「●」の集合で表し、−1次光による回折パターンを「○」の集合で表している。このような回折パターンは、分割されて出射される2つ光のなす角(+1次光と−1次光とのなる角)が適切な値となるように設定されたビームスプリッター42を用いることで実現される。
【0053】
なお、−1次光による回折パターンは、必ずしも、+1次光による回折パターンの丁度中間に入り込む必要はなく、これらの回折パターン同士が重ならなければよい。ただし、アイボックス4を通過して、視認者の瞳孔に入射する光強度の均一性を高めるには、略中間に回折パターンを入り込ませる方が好ましい。
【0054】
このように透過スクリーン40を構成することで、MLA41の短手方向(y方向。視認者から見てアイボックス4の上下方向に対応)の回折角を見かけ上1/2に低減することができ、虚像Vとして視認される表示像Mのちらつきや、虹色現象を低減することができる。また、MLA41のピッチを小さくしても、ビームスプリッター42を設けない場合に比べて、実質的に回折角が大きくなることを防ぐことができるため、表示像Mのちらつきを抑えつつ、表示像Mの高精細化が可能である。
【0055】
ここで、MLA41とビームスプリッター42との好適な配置関係について、
図5、
図6を用いて説明する。
【0056】
ビームスプリッター42とMLA41とは別体とされ、密着もしくは離間して配置される。但し、ビームスプリッター42の回折発現面42aと、MLA41(ML41a)のレンズ面(ビームスプリッター42に向く面)とが、なるべく近距離に配置されることが望ましい。
これは、ビームスプリッター42は、入射光束を異なる角度で出射する2光束に分けることから、回折発現面42aとMLA41のレンズ面との間の距離が開きすぎると、表示像Mの1画素に相当するレーザー光がMLA41上の離れた2箇所に照射された後に拡散してしまうため、投射された表示像Mが二重になったり、ボケの原因となったりするからである。
したがって、両者を離間して配置する場合には、
図6に示すように、MLA41のレンズ面上に照射される2光束(+1次光と−1次光)の中心間距離が、ML41aの短手方向の幅以下(つまり、MLA41のピッチd2以下)となることが望ましい。このようにすれば、表示像Mに生じるおそれのあるボケ等を最小限に抑えることができる。
【0057】
なお、MLA41のレンズ面に照射される2光束の中心間距離が、ML41aの短手方向の幅以下になるという条件を満たしていれば、ビームスプリッター42の回折発現面42aがレーザー光の入射側に配置されてもよいし、MLA41のレンズ面がレーザー光の出射側(反射部50側)に配置されてもよい。
【0058】
以上が第1実施形態である。ここからは、透過スクリーン40の種々の構成例を示す第2〜第9実施形態について順に説明する。なお、以下の実施形態は、透過スクリーン40の構成以外は、第1実施形態に係るHUD装置1と同様である。
【0059】
以下の実施形態は、透過スクリーン40の一部構成(ビームスプリッター42による光束の分割方向、分割光束数、ML41aの形状など)が各々異なるものの、透過スクリーン40において、ビームスプリッター42がレーザー光Lを分割し、MLA41がレーザー光Lを拡散するという主な機能は共通しているため、透過スクリーン40の構成について第1実施形態と同じ符号を用いて説明する。
また、以下の実施形態は、透過スクリーン40による見かけ上の回折角を低減することで、表示像Mのちらつき等を低減するという主な効果も同様であるため、第1実施形態と異なる箇所について主に説明する。
【0060】
(第2実施形態)
第1実施形態との相違点はビームスプリッター42を出射する回折光の回折方向である。第1実施形態ではビームスプリッター42を出射する回折光の回折方向は、MLA41のy方向(
図9参照)、すなわちx方向に対して方位角90°であった。
一方、第2実施形態では、
図11に示すMLA41の回折角θ1,θ2との関係を用いて、下記の(数3)式で表すことのできる角γ(x方向に対しての方位角)の方向にビームスプリッター42は、レーザー光Lを回折させる。
【0062】
この(数3)式と
図11から分かるように、x−y平面上で考えれば、第2実施形態におけるビームスプリッター42による回折方向は、MLA41により回折角θ1で回折する光と、回折角θ2で回折する光との対角線方向ということになる。
これを前提に、ビームスプリッター42を出射した+1次光と−1次光とのなす角を適切に設定することにより、
図12に示すように、+1次光による回折パターンの中間(x,y方向の対角線方向における中間)に、−1次光による回折パターンを入り込ませることができる。なお、
図12では、+1次光による回折パターンを「●」の集合で表し、−1次光による回折パターンを「○」の集合で表している。
【0063】
なお、この場合も第1実施形態と同様に、−1次光による回折パターンと、+1次光による回折パターンとが重ならなければよい。ただし、アイボックス4を通過して、視認者の瞳孔に入射する光強度の均一性を高めるには、略中間(前記の対角線方向における略中間)に回折パターンを入り込ませる方が好ましい。
【0064】
このように透過スクリーン40を構成することで、y方向だけでなくx方向の回折パターンの密度が上昇するため、良好に表示像Mのちらつきや、虹色現象を低減することが可能である。
【0065】
(第3実施形態)
第1及び第2実施形態では、ビームスプリッター42の出射光として+1次光と−1次光を用いたが、この限りではない。ビームスプリッター42で幾つかに分割されて出射する光束のうち、所定の一光束がMLA41を透過することによって形成される回折パターンの隙間を埋めるように、他の光束がMLA41を透過することによって形成される回折パターンが入り込めば良い。つまり、このように回折パターンを入り込ませるために利用する、ビームスプリッター42からの出射光の回折次数は問わない。また、ビームスプリッター42からの出射光束は、少なくとも2光束であれば、一方がMLA41を透過した後に形成する回折パターンが、他方がMLA41を透過した後に形成する回折パターンを入り込ませることができ、回折パターンの密度を高めることができることが第1、第2実施形態の説明から分かるであろう。
例えば、
図13に示す第3実施形態に係るビームスプリッター42のように、y軸方向に沿って3光束を出射するようにしてもよい。こうすれば、透過スクリーン40による回折パターンは、
図14に示すようになり、よりy方向の密度を高めることが可能である。なお、
図14では、0次光(つまり、入射するレーザー光Lの光軸に沿う光)による回折パターンを「黒塗りの三角形」の集合で表し、+1次光による回折パターンを「●」の集合で表し、−1次光による回折パターンを「○」の集合で表している。
【0066】
(第4実施形態)
第1〜第3実施形態では、ビームスプリッター42が入射光束を1軸方向に回折させて出射させ、+1次光と−1次光との分割光束を得たが、これに限られない。
図15に示す第4実施形態に係るビームスプリッター42のように、入射光束を2軸方向に回折させてもよい。
具体的には、第4実施形態に係るビームスプリッター42は、MLA41に入射する光束として、0次光と、x方向における1次光と、y方向における1次光とを利用した例である。こうすれば、透過スクリーン40による回折パターンは、
図16に示すようになり、x、yの両方向における光密度を高めることが可能である。なお、
図16では、0次光による回折パターンを「黒塗りの三角形」の集合で表し、y方向における1次光による回折パターンを「●」の集合で表し、x方向における1次光による回折パターンを「○」の集合で表している。
【0067】
(第5実施形態)
また、
図17に示す第5実施形態に係るビームスプリッター42のように、出射光束の回折方向は3軸であってもよい。こうすれば、透過スクリーン40による回折パターンは、
図18に示すようになり、x−y平面上における(アイボックス4の平面全域に渡って)光密度を高めることが可能である。なお、
図18では、0次光による回折パターンを「黒塗りの三角形」の集合で表し、y方向における1次光による回折パターンを「●」の集合で表し、x方向における1次光による回折パターンを「○」の集合で表し、x−y平面上でx軸及びy軸に対して傾斜する軸方向における1次光による回折パターンを「△」の集合で表している。
【0068】
(第6実施形態)
以上の実施形態では、MLA41の微小レンズ(ML41a)の形状が矩形の例を示したが、
図19に示す第6実施形態に係るMLA41のように、ML41aがハニカム状に配列されていても良い。このとき、ML41aは、正六角形状で、互いに隣り合うML41aのレンズ中心間の距離dで、規則的に配列される。なお、ML41aは、正六角形状である必要はなく、縦横のアスペクト比が異なる六角形状であってもよい。このとき、MLA41が形成する回折パターンは、
図20に示すように、3軸の回折方向により形成されることになる。また、MLA41と組み合わせるビームスプリッター42は、
図21に示すように、MLA41の回折方向と同様の3軸に設定されている。
こうすれば、透過スクリーン40による回折パターンは、
図22に示すようになり、x−y平面上における(アイボックス4の平面全域に渡って)光密度を高めることが可能である。なお、
図22では、0次光(つまり、入射するレーザー光Lの光軸に沿う光)による回折パターンを「黒塗りの三角形」の集合で表し、3軸の各々における1次光による回折パターンを「●」の集合、「△」の集合、「○」の集合で表している(ビームスプリッター42の回折方向も同様であるため、透過スクリーン40に対応させて
図21でもこれらの記号を表した)。
なお、上記のようにビームスプリッター42の回折方向(3軸方向の各々)を、MLA41の回折方向と一致させることが好ましいが、この限りではない。ビームスプリッター42で分割されて出射する光束のうち、所定の一光束がMLA41を透過することによって形成される回折パターンの隙間を埋めるように、他の光束がMLA41を透過することによって形成される回折パターンが入り込めば、ビームスプリッター42とMLA41との回折方向は、少なくとも一部が異なっていても良い。また、例えばML41aを縦横のアスペクト比が異なる六角形とした場合には、ビームスプリッター42の回折方向は、1軸もしくは2軸方向であってもよい。
【0069】
(第7実施形態)
以上の実施形態では、ビームスプリッター42とMLA41とが別体である例を説明したが、これに限られない。例えば、
図23に示す第7実施形態に係る透過スクリーン40のように、ビームスプリッター42とMLA41とが一体に構成されていてもよい。
この場合、例えばMLA41のレンズ面とは反対側の面に、液晶ポリマーをパターニングすることでビームスプリッター42の回折発現面42aを形成し、一体となったビームスプリッター42とMLA41によって透過スクリーン40が構成される。同図に示すように、レーザー光Lの入射側に回折発現面42aが位置し、出射側にMLA41のレンズ面が位置する。このようにした場合も、第1実施形態で説明したのと同様に、表示像Mがボケないようにするために、ビームスプリッター42からMLA41のレンズ面上に分割して到達する光束の中心間距離が、MLA41のピッチd2以下となることが望ましい。
【0070】
(第8実施形態)
以上の実施形態では、レーザー光Lの入射側にビームスプリッター42が位置し、出射側にMLA41が位置する例を示したが、
図24に示す第8実施形態に係る透過スクリーン40のように、両者の位置関係を逆にすることも可能である。
第8実施形態では、レーザー光Lの入射側にMLA41が、出射側にビームスプリッター42が配置される。また、MLA41のレンズ面とビームスプリッター42の回折発現面42aとが互いに向き合うように構成されている。この配置の場合、MLA41のレンズ面と回折発現面42aとが離れすぎると、表示像Mがボケる虞がある。そのため、MLA41の後側焦点距離をfとした場合に、MLA41のレンズ面と回折発現面42aとの間隔(距離)は、概ね5f以内であることが好ましいと考えられる。また、逆に、MLA41のレンズ面と回折発現面42aとが近すぎると、回折発現面42aの回折作用が不十分になる虞がある。そのため、MLA41のレンズ面と回折発現面42aとの間隔(距離)は、2f以上であることが好ましい。
【0071】
(第9実施形態)
また、
図25に示す第9実施形態に係る透過スクリーン40のように、MLA41とビームスプリッター42を一体で構成すると共に、レーザー光Lの入射側にMLA41を形成し、出射側にビームスプリッター42の回折発現面42aを形成することも可能である。
【0072】
以上に説明した透過スクリーン40を備えるHUD装置1によれば、MLA41の回折角を見かけ上低減し、アイボックス4に到達する光強度の密度を高めることができるため、視認者の瞳に入射する光強度がアイポイントによって変化しづらくなる。これにより、表示像Mのちらつきや、虹色現象の発生を良好に低減することができる。また、表示像Mのちらつき等を抑制しつつ、MLA41のピッチを小さくすることができるため、表示像Mの光学的な分解能を向上することができる。したがって、以上に説明したHUD装置1によれば、表示像M(虚像V)の視認性を良好に保つことができる。これらの効果は、下記の構成により実現される。
【0073】
HUD装置1は、表示像Mをウインドシールド3(透光部材の一例)に投影することで表示像Mの虚像Vを視認させる。
HUD装置1は、表示像Mとなる光束(レーザー光L)を出射する光出射部(合成レーザー光発生装置10及びMEMSスキャナ20)と、光出射部が出射した光束を透過させると共に、表示像Mを表示する透過スクリーン40と、透過スクリーン40に表示された表示像Mを表す光をウインドシールド3に向けて反射させる反射部50と、を備える。
透過スクリーン40は、入射した光束を複数の光束に分割して出射させると共に、前記複数の光束のうち少なくとも1つの光束を、入射した光束とは異なる角度で出射させるビームスプリッター42(光分割部の一例)と、ビームスプリッター42と対向し、入射した光束を回折作用により規則的に発散させて出射させるMLA41(回折光学素子の一例)と、を有する。
【0074】
一例として、MLA41を構成するML41aは、平面視で長辺と短辺を有する矩形状(長方形状)をなし、ビームスプリッター42は、入射した光束を、少なくとも前記短辺に沿う方向(y方向)に分割する。また、この場合において、ビームスプリッター42は、MLA41よりも光出射部側に位置し、分割して出射させた複数の光束のうち、隣り合う光束の中心間距離がML41aのピッチd2以下であるようにしてもよい(
図6参照)。
なお、
図11を参照して説明したように、ビームスプリッター42によって光束が分割される方向が前記長方形の対角線方向である場合は、分割して出射された隣り合う光束の中心間距離がML41aの平面視における対角線の長さ以下であることが好ましい。
【0075】
具体的には、HUD装置1においてビームスプリッター42がMLA41よりも光出射部側の場合、ビームスプリッター42からMLA41へと入射する複数の光束のうち、所定の光束を第1の光束とし、第1の光束とは異なる光束を第2の光束とすると、MLA41で発散した第1の光束と、MLA41で発散した第2の光束とは、仮想面(例えば、アイボックス4の照射面)内において重ならない(
図10、
図12、
図13、
図16、
図18、
図22で示した例など)。
【0076】
また、HUD装置1においてMLA41がビームスプリッター42よりも光出射部側の場合、MLA41で発散してからビームスプリッター42で分割された少なくとも2つの光束群同士は、仮想面(例えば、アイボックス4の照射面)内において重ならない(
図24や
図25で示した構成例)。
【0077】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変形(構成要素の削除も含む)が可能である。
【0078】
以上の説明では、MLA41が1面上に配列されたML41aから構成される例を示したが、向かい合う2面の各々に配列されたML41aから構成されていてもよい。つまり、回折光学素子は、向かい合う2つのMLA41から構成されていてもよい。この場合、向かい合うMLA41は、ML41aの焦点距離だけ隔てて配置される。このような構成とすることで、MLA41を出射した回折光の強度を均一化することができるため、虚像Vとして視認される表示像Mの見栄えを、より良好にすることができる。
また、以上の説明では、ML41aを四角形状、又は、ハニカム形状で配列した例を示したが、三角形状で配列することも可能である。
また、入射した光束を回折作用により規則的に発散させて出射させるものであれば、MLA41の代わりに、DOE(Diffractive Optical Element)等の回折光学素子を用いることも可能である。
【0079】
また、以上で説明したビームスプリッター42の回折方向はあくまで一例である。ある光束がMLA41を透過することによって形成される回折パターンの隙間を埋めることができれば、ビームスプリッター42の回折発現面42aで回折して出射する光の方向や角度は、任意である。
【0080】
また、以上の実施形態では、3つのLDが配設され、これらは各々、レーザー光R,G,Bを出射するものとしたがLDの数はこれに限られない。4つのLDを配設することで、4原色で表示像Mを生成してもよいし、1つのLDでモノクロの表示像Mを生成してもよい。
【0081】
また、HUD装置1が搭載される乗り物の一例を車両(自動四輪車)としたが、これに限られない。HUD装置1を、自動二輪車等の他の車両、建設機械、農耕機械、船舶、航空機、雪上バイク等に搭載することも可能である。
【0082】
また、反射部50は、平面ミラー51、拡大ミラー52の2枚の鏡から構成されたが、これに限られない、反射部50を構成する鏡の形状・枚数は目的に応じて任意である。
【0083】
また、表示像Mを投影する透光部材はウインドシールド3に限られない。透光部材は、HUD装置1に専用のコンバイナであってもよい。
【0084】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、重要でない公知の技術的事項の説明を適宜省略した。