特許第6331842号(P6331842)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331842
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20180521BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20180521BHJP
【FI】
   F21S2/00 371
   F21S2/00 311
   F21S2/00 310
   F21S2/00 320
   F21Y101:00 300
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-155233(P2014-155233)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2016-31913(P2016-31913A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106862
【弁理士】
【氏名又は名称】五十畑 勉男
(72)【発明者】
【氏名】二口 大督
(72)【発明者】
【氏名】利田 哲平
(72)【発明者】
【氏名】森 純一郎
【審査官】 河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−108657(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104765241(CN,A)
【文献】 特開2009−032424(JP,A)
【文献】 特開2007−066742(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/090344(WO,A1)
【文献】 特開2003−338264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
G03B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部内に一対の電極が対向配置され、前記発光部の両端には封止部が形成されてなる放電ランプと、前記放電ランプを取囲む反射鏡とを備え、
前記反射鏡の後方首部に前記放電ランプの後方封止部が固定されるとともに、
点灯電源からの給電線が、前記反射鏡に穿設された給電線用開口を介して前記反射鏡内に導かれ、該反射鏡の前面開口側に位置する前記放電ランプの前方封止部の外部リードに接続されてなる光源装置において、
前記反射鏡には、前記給電線用開口に対して、光軸を中心としてほぼ対向する位置に固定線用開口が穿設され、
一端が固定された固定線が、前記固定線用開口を介して前記反射鏡内に導かれ、その他端側が前記前方封止部または該前方封止部の外部リードに固定されており、
前記給電線と前記固定線とによって、放電ランプの破裂時に前記前方封止部が前方へ飛散することを防止していることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記反射鏡内において、前記給電線の長さが前記固定線の長さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記給電線と前記固定線が、共通する同一の導電性部材によって構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記共通する同一の導電性部材が、前記前方封止部の外部リードに固定された固定スリーブを貫通して、該固定スリーブに固定されていることを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記前方封止部における前記発光部に近接する領域にはトリガーワイヤが巻回されており、
前記固定線の他端が、前記前方封止部に巻回されて固定され、更にその先端が前記トリガーワイヤの一端に電気的に接続され、
前記トリガーワイヤに電圧を印加する直流電源の一方の配線が、前記固定線の一端に接続されるとともに、他方の配線が、前記放電ランプの後方封止部の外部リードに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショートアーク型放電ランプと反射鏡を組み合わせた光源装置に関するものであり、特に、プロジェクタの光源として使用される光源装置に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタの光源装置として、ショートアーク型放電ランプと凹面反射鏡を組み合わせたものが使用される。プロジェクタには演色性のよい光源が要求され、従来、高い水銀蒸気圧を持った超高圧水銀ランプが好適に使用されている。
このような光源装置の一般的構造は、特開2008−010384号公報(特許文献1)などに開示されている。
図5にその構造が示されていて、光源装置31は、ショートアーク型放電ランプ32と、このランプ32からの光を集光する反射鏡33とからなる。放電ランプ32は、内部に一対の電極が対向配置された発光部34と、その両端の後方封止部34と前方封止部35とを備えている。この後方封止部34が、前記反射鏡33の後方首部33aに挿入された状態で固定されて、前方封止部35が反射鏡33の前面開口33b側に位置している。
前記後方封止部35の外部リード37、および、前方封止部36の外部リード38には、点灯電源40からの給電線41、42が接続されている。
このうち、前方封止部36への給電線42は、反射鏡33に穿設した貫通口43を貫通して反射鏡33内に導かれて、外部リード38に巻き付け固定されている。
【0003】
ところで、この種のショートアーク型放電ランプは、非常な高圧で点灯されることもあり、予期せぬトラブルによって破裂を起こすことがあり、その場合、図6に示すように、発光部34の前方封止部36の根本部に応力集中が起きてこの部分で破裂を起こすことが多い。一旦破裂が起こると、破断した前方封止部36が反射鏡33の前面開口33bから前方外部に飛び出ることがあり、この前方封止部36の動きは前方封止部36の外部リード38に接続された給電線42によって規制されるのみであって、前方への飛散が防止できず、光源装置の前方に配置される、UV−IRカットフィルタやカラーホイールなどの光学部品に衝突して、これらを破損することがある。
この封止部36からは外部リード38が突出していることもあって、衝突の際の破壊力が大きく、光学部品のダメージが大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−010384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、発光部内に一対の電極が対向配置され、前記発光部の両端には封止部が形成されてなる放電ランプと、前記放電ランプを取囲む反射鏡とを備え、前記反射鏡の後方首部に前記放電ランプの後方封止部が固定されるとともに、点灯電源からの給電線が、前記反射鏡に穿設された給電線用開口を介して前記反射鏡内に導かれ、該反射鏡の前面開口側に位置する前記放電ランプの前方封止部の外部リードに接続されてなる光源装置において、放電ランプが万一破裂しても、破裂した前方封止部が妄りに前方に飛び出すことを防止して、前方に位置する光学部品を損傷することのないようにした構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係る光源装置は、前記反射鏡には、前記給電線用開口に対して、光軸を中心としてほぼ対向する位置に固定線用開口が穿設され、一端が固定された固定線が、前記固定線用開口を介して前記反射鏡内に導かれ、その他端側が前記前方封止部または該前方封止部の外部リードに固定されていることを特徴とする。
また、前記反射鏡内において、前記給電線の長さが前記固定線の長さよりも長いことを特徴とする。
また、前記給電線と前記固定線が、共通する同一の導電性部材によって構成されていることを特徴とする。
また、前記共通する同一の導電性部材が、前記前方封止部の外部リードに固定された固定スリーブを貫通して、該固定スリーブに固定されていることを特徴とする
また、前記前方封止部における前記発光部に近接する領域にはトリガーワイヤが巻回されており、前記固定線の他端が、前記前方封止部に巻回されて固定され、更にその先端が前記トリガーワイヤの一端に電気的に接続され、前記トリガーワイヤに電圧を印加する直流電源の一方の配線が、前記固定線の一端に接続されるとともに、他方の配線が、前記放電ランプの後方封止部の外部リードに接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光源装置によれば、放電ランプの前方封止部が、反射鏡における後軸に関してほぼ対向する位置に延びる給電線と固定線とによって、接続されているので、万一前方封止部が破裂するようなことがあっても、この2本の給電線と固定線によって前方への飛散が防止されて、反射鏡の前方に配置される光学部品を損傷するようなことがない。
また、いわゆる外部トリガ方式を採用したものにあっては、固定線をトリガーワイヤへの給電線として兼ねる構造とすることによって、部品点数を減らして、破裂封止部の飛散を防止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の光源装置の断面図。
図2図1の上面図。
図3】本発明の他の実施例の断面図。
図4】本発明の更に他の実施例の断面図。
図5】従来技術の光源装置の断面図。
図6】従来技術の不具合を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の光源装置の断面図で、図2はその上面図である。
その全体の構造については、図4の従来例のものと同様であって、光源装置1は、放電ランプ2と、これを取り囲む反射鏡3とを備える。放電ランプ2の発光部4内には一対の電極が対向配置され、該発光部4の両端には後方封止部5と前方封止部6が設けられ、後方封止部5が、反射鏡3の後方首部3aに挿入・固定され、前方封止部6は前記反射鏡3の前面開口3b側に位置している。
そして、点灯電源10からの給電線11、12が、前記後方封止部5の外部リード7、および、前方封止部6の外部リード8に、それぞれ接続されている。前記一方の給電線12は、反射鏡3に穿設された給電線用開口13を介して反射鏡3の内部に導かれている。
前記前方封止部6における前記発光部4に近接する領域にはトリガーワイヤ15が巻回されており、このトリガーワイヤ15は前記前方封止部6の外部リード8に接続され、前記一方の給電線12と電気的に接続されている。なお、このトリガーワイヤ15と給電線12は同一部材で構成してもよい。
この実施例におけるトリガ方式は、いわゆる内部トリガ方式と呼ばれるものである。
【0010】
前記反射鏡3における、前記給電線用開口13に対して、反射鏡3の光軸を中心としてほぼ対向する位置に、固定線用開口14が穿設されている。そして、一端を反射鏡3の外面に固定された固定線16が、この固定線用開口14を介して反射鏡3内部に導かれ、前記放電ランプ2の前方封止部6の外部リード8に固定されている。
これにより、図2にも示されるように、反射鏡3のほぼ対向する位置の開口13、14から内部に延びる給電線12と固定線16とによって、放電ランプ2の前方封止部の外部リード8が支持される構造となる。
【0011】
こうすることにより、万一、放電ランプ2が破裂するようなことがあっても、破裂した前方封止部6は、給電線12と固定線16によって飛散が抑制されて、反射鏡3の前方に飛び出すことが防止され、反射鏡3の前方に配置される光学部品を損傷することがなくなる。
なお、固定線16は、前方封止部6の外部リード8に固定する構造を示したが、前方封止部6自体に巻き付けて固定する構造であってもよい。そして、固定線16の一端の固定は、反射鏡3に限られず、その周囲の部材に固定されるものであってもよい。
また、給電線用開口13と固定線用開口14とは、厳密に対向する位置にあることが必要なわけではなく、給電線12との共働によって、破裂した前方封止部6の前方への飛散を防止できるような位置に設けてあればよい。
更には、放電ランプ2の破裂を前方封止部6での破裂として説明したが、後方封止部5が破裂する場合にも同様に飛散防止がなされることは明らかである。
【0012】
また図2に示すように、反射鏡3内において、給電線12は固定線16よりも線を長くすることが好ましい。具体的には、給電線用開口13から外部リード8へ伸びる給電線12の長さLxと、固定線用開口14から外部リード8へ伸びる固定線16の長さLyは、Lx>Lyとなるよう線の長さが調節される。これにより、固定線16よりも給電線12の方が、若干緩められた状態で給電線用開口13と外部リード8の間に張り渡されている。
これは、給電線12が放電ランプ2の電力供給経路のため、電流が投入されることで固定線16よりも高温になりやすく、熱膨張及び熱収縮の影響による断線や、封止部6への負荷が生じやすい。そこで上記構成により、給電線12を適宜緩めた状態とすることにより、給電線12での熱膨張や熱収縮が緩和される。
他方、固定線16の長さLyは、給電線12の長さLxよりも短く調整することにより、ランプが破裂した際に封止部6の飛散を好適に防止できる。
【0013】
また給電線12を比較的長く設計することで、反射鏡3への放電ランプ2の設置作業が容易となる。具体的には、放電ランプ2は、光源装置からの出力光が最も高くなるよう反射鏡3に設置させる必要がある。そこで放電ランプ2の後方封止部5を反射鏡3の後方首部3aに挿入した後であって、接着剤で後端封止部5と反射鏡3の位置を固定する前に、放電ランプ2の管軸方向(図1における上下方向)や周方向の位置を微調整することで、出力光が最も高くなる最適位置に調整している。
上述の調整工程においては、光源装置からの出力光の増減を確認しつつ位置合わせを行う必要があり、給電線12は予め外部リード8に接続させた状態で位置合わせを行っている。ここで、給電線12が短い場合は、放電ランプ2の位置調整の範囲(つまり管軸方向や周方向の調整範囲)が限定的となり、十分な位置調整ができない。
そのため、給電線12の長さLxは、十分な位置調整ができるよう長くすることが望ましい。
【0014】
給電線12と固定線16は、例えば、反射鏡3内での給電線12の長さを40mmとし、固定線の長さを30mmとしている。このように、給電線12と固定線16が4:3の比率に調整されていることが望ましい。
【0015】
なお、固定線16は給電線12と別部材として説明したが、共通する同一の導電性部材で構成することもできる。つまり、図1に示した実施例において、給電線12を外部リード8に巻き付け固定した後に、そのまま固定線16として固定線用開口14から反射鏡3外に導出して、その端部を反射鏡3などに固定することができる。
更に、この給電線12と固定線16を同一部材で構成する別の実施例が図3に示されていて、金属製固定スリーブ18に導電線が挿通されており、この固定スリーブ18を貫通して給電線用開口13へ伸びる一方を給電線12とし、固定線用開口14へ伸びる他方を固定線16としている。このスリーブ18は、導電線を通した後に加締めることで、導電線上の任意の場所に固定される。そして、スリーブ18は、例えば、溶接やハンダ付けで外部リード8に固定されており、このスリーブ18を介して給電線12と外部リード8が電気的に接続されている。
上記構成により、給電線12と固定線16の取り付け作業が簡素化し、給電線12の長さLxと固定線16の長さLyの比率を調整しやすい、という利点がある。
【0016】
また給電線12と固定線16を別部材で構成するとき、給電線12は、固定線16よりも線径を太くすることが好ましい。
高入力のランプは、給電線12の線径が細いと給電線自身が電気抵抗となり発熱しやすく、エネルギーの損失が大きくなる。
他方、固定線16は、ランプが破裂した際の前方封止部6の飛散を防止できるだけの強度があればよく、必要以上に線径を太くすると反射鏡3で反射した光が遮られやすくなり、光の利用効率を低下させてしまう。そこで、給電線12は固定線16よりも線径を太くさせたほうが好ましい。
例えば、給電線の線径はφ0.6mmとし、固定線の線径はφ0.5mmとしている。
【0017】
図4に他の実施例が示されていて、この実施例は、いわゆる外部トリガ方式を採用した場合の実施例である。
つまり、一端を固定された固定線16は、その他端で前記放電ランプ2の前方封止部6に巻き付け固定されている。そして更にその先端は、トリガーワイヤ15に電気的に接続されている。
そして、トリガーワイヤ15に給電する直流電源20の一方の配線21が、前記放電ランプ2の後方封止部5の外部リード7に電気的に接続されるとともに、他方の配線22が前記固定線16の一端に電気的に接続されている。
これにより、直流電源20からトリガーワイヤ15への給電は、固定線16を介してなされる。つまり、固定線16は、トリガーワイヤ15への給電線としても機能していることになる。なお、この固定線16は、トリガーワイヤ15と同一部材で構成してもよい。
この実施例においては、固定線16は前方封止部6に巻き付け固定されるものであって、回路構成上で当然のことながら、前方封止部6の外部リード8に固定することはできない。
【0018】
本発明の効果を実証する実験を行った。
本発明の実施例として、図1,2に示す構成の光源装置を用い、比較例として、図5に示す構成の光源装置を用いて、以下の破裂実験を行った。
光源装置:330kWタイプの放電ランプ
点灯条件:点灯時にAC330Wを入力。冷却は行わない。
破裂条件:AC330W用の破裂バラストを用い、点灯後4分で破裂させる。
破裂の影響:ランプハウスの反射鏡の前方に配置した前面ガラスの損傷の有無。
【0019】
上記の実験条件で、実施例と比較例でそれぞれ10回ずつの破裂実験を行い、放電ランプの破裂後の前面ガラスへの影響を検証。
比較例では、10回中、すべての実験で、封止部や給電線が前面ガラスに衝突して、これを破損させた。
実施例では、10回中、すべての実験で、前面ガラスへの衝突がなく、損傷が見られなかった。
これにより、給電線と固定線とによる破裂封止部の飛散防止効果が実証された。
【0020】
以上説明したように、本発明の光源装置においては、反射鏡に、給電線用開口に対して、光軸を中心としてほぼ対向する位置に固定線用開口が穿設され、一端が固定された固定線が、前記固定線用開口を介して前記反射鏡内に導かれ、その他端側が前方封止部または該前方封止部の外部リードに固定されていることにより、放電ランプが破裂するようなことがあっても、破裂した封止部が妄りに反射鏡の前方に飛散することがなく、その前方に位置する他の光学部品を損傷することがないという効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0021】
1 光源装置
2 放電ランプ
3 反射鏡
4 発光部
5 後方封止部
6 前方封止部
7,8 外部リード
10 点灯電源
11,12 給電線
13 給電線用開口
14 固定線用開口
15 トリガーワイヤ
16 固定線
18 固定スリーブ
20 直流電源


図1
図2
図3
図4
図5
図6