特許第6331843号(P6331843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6331843-圧縮機 図000002
  • 特許6331843-圧縮機 図000003
  • 特許6331843-圧縮機 図000004
  • 特許6331843-圧縮機 図000005
  • 特許6331843-圧縮機 図000006
  • 特許6331843-圧縮機 図000007
  • 特許6331843-圧縮機 図000008
  • 特許6331843-圧縮機 図000009
  • 特許6331843-圧縮機 図000010
  • 特許6331843-圧縮機 図000011
  • 特許6331843-圧縮機 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331843
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20180521BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   F04B39/00 106B
   H02K5/22
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-155328(P2014-155328)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2016-31070(P2016-31070A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】川本 啓介
(72)【発明者】
【氏名】平野 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】澤崎 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】神田 文男
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 達也
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−264825(JP,A)
【文献】 特開2012−082776(JP,A)
【文献】 特開2000−297759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコイル(44)を有するモータ(40)と、
前記モータを収容するケーシング(20)と、
前記ケーシングに取り付けられたターミナル(60,160)と、
前記ステータコイルと前記ターミナルとを結ぶリード線アセンブリ(100)と、
を備えた圧縮機であって、
前記リード線アセンブリは、
前記ターミナルの第1相に接続される第1リード線(210)および第2リード線(220)、前記ターミナルの第2相に接続される第3リード線(230)および第4リード線(240)、および、前記ターミナルの第3相に接続される第5リード線(250)および第6リード線(260)と、
第1束ね紐(310)、第2束ね紐(320)、第3束ね紐(330)、第4束ね紐(340)、および第5束ね紐(350)と、
を有し、
前記第1リード線および前記第2リード線は、前記第1束ね紐によって束ねられ、前記第1束ね紐から前記第1リード線および前記第2リード線の前記ターミナル側の先端までの距離は、それぞれ第1距離(L1)で等しく、
前記第3リード線および前記第4リード線は、前記第2束ね紐によって束ねられ、前記第2束ね紐から前記第3リード線および前記第4リード線の前記ターミナル側の先端までの距離は、それぞれ第2距離(L2)で等しく、
前記第5リード線および前記第6リード線は、前記第3束ね紐によって束ねられ、前記第3束ね紐から前記第5リード線および前記第6リード線の前記ターミナル側の先端までの距離は、それぞれ第3距離(L3)で等しく、
前記第1距離と、前記第2距離と、前記第3距離とは、それぞれ異なり、
前記第1リード線、前記第2リード線、および前記第3リード線は、前記第1束ね紐および前記第2束ね紐よりも前記ステータコイル側で、前記第4束ね紐によって束ねられ、
前記第4リード線、前記第5リード線、および前記第6リード線は、前記第2束ね紐および前記第3束ね紐よりも前記ステータコイル側で、前記第5束ね紐によって束ねられる、
圧縮機(10)。
【請求項2】
前記第1リード線、前記第2リード線、前記第3リード線、前記第4リード線、前記第5リード線および前記第6リード線の先端には、それぞれ端子(400)が取り付けられ、
前記ターミナルは、当該圧縮機の中心側に向かって互いに平行に延びる3本のピン(62)と、前記ピンにそれぞれ固定された、一対の互いに平行に対向する端子板(63,163)と、を有し、
各前記ピンの一対の前記端子板には、それぞれ、前記第1リード線の前記端子および前記第2リード線の前記端子と、前記第3リード線の前記端子および前記第4リード線の前記端子と、前記第5リード線の前記端子および前記第6リード線の前記端子と、が接続され、
各前記ピンを、前記ピンが延びる方向から見た時に、前記端子板の平面が延びる方向は、前記ピン毎に異なる、
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記第4束ね紐および前記第5束ね紐は、前記ステータコイルと共にワニスで固めて固定されている、
請求項1又は2に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機、特には、モータのステータコイルとターミナルとを6本のリード線で結んだ圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1(特開平4−331435号公報)のように、モータのステータコイルとターミナルとを結ぶ3本のリード線を1本の束ね紐で束ねたリード線アセンブリを備えた圧縮機が知られている。リード線アセンブリを用いることで、圧縮機に使用されるリード線を一体に管理できるため、リード線を束ねずに用いる場合に比べ、圧縮機の組立性を向上させることができる。
【0003】
ところで、圧縮機の大容量化等に伴い、ステータコイルとターミナルとを、1相当たり2本ずつ、計6本のリード線で結ぶ場合がある。
【0004】
このような場合には、圧縮機に、6本のリード線を1本の束ね紐で束ねたリード線アセンブリを用いることが考えられる。
【0005】
また、特許文献1(特開平4−331435号公報)のような3本のリード線R1,R2,R3を1組としたリード線アセンブリを、ステータコイル側で、ステータコイルの同相に接続されるリード線同士を束ねることで2つ組み合わせた、図11に模式的に示すようなリード線アセンブリを、圧縮機に利用することも考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、6本のリード線を1本の束ね紐で束ねた場合、リード線の認識が困難になりやすく、リード線をターミナルに接続する際に誤結線を引き起こす可能性がある。また、6本のリード線を束ねた場合、配線作業時に一部のリード線だけの向きを調整することが困難になりやすく、リード線をターミナルに接続する際の作業性が低下する可能性がある。
【0007】
また、図11のようなリード線アセンブリを利用する場合には、ターミナル側において、3つの相に接続される3本のリード線R1,R2,R3が1組にまとめられているため、ターミナルの同相に一対のリード線を接続する際に、リード線の配線が複雑になりやすく、誤結線を引き起こす可能性がある。
【0008】
本発明の課題は、モータのステータコイルとターミナルとを6本のリード線で結んだ圧縮機であって、組立性に優れ、リード線の誤結線が防止されやすい圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1観点に係る圧縮機は、モータと、ケーシングと、ターミナルと、リード線アセンブリと、を備える。モータは、ステータコイルを有する。ケーシングは、モータを収容する。ターミナルは、ケーシングに取り付けられる。リード線アセンブリは、ステータコイルとターミナルとを結ぶ。リード線アセンブリは、第1〜第6リード線と、第1〜第5束ね紐と、を有する。第1リード線および第2リード線は、ターミナルの第1相に接続される。第3リード線および第4リード線は、ターミナルの第2相に接続される。第5リード線および第6リード線は、ターミナルの第3相に接続される。第1リード線および第2リード線は、第1束ね紐によって束ねられる。第1束ね紐から、第1リード線および第2リード線のターミナル側の先端までの距離は、それぞれ第1距離で等しい。第3リード線および第4リード線は、第2束ね紐によって束ねられる。第2束ね紐から、第3リード線および第4リード線のターミナル側の先端までの距離は、それぞれ第2距離で等しい。第5リード線および第6リード線は、第3束ね紐によって束ねられる。第3束ね紐から、第5リード線および第6リード線のターミナル側の先端までの距離は、それぞれ第3距離で等しい。第1距離と、第2距離と、第3距離とは、それぞれ異なる。第1リード線、第2リード線、および第3リード線は、第1束ね紐および第2束ね紐よりもステータコイル側で、第4束ね紐によって束ねられる。第4リード線、第5リード線、および第6リード線は、第2束ね紐および第3束ね紐よりもステータコイル側で、第5束ね紐によって束ねられる。
【0010】
ここでは、各々がターミナルの同相に接続される3組の一対のリード線が、それぞれ第1〜第3束ね紐によって束ねられてまとめられる。また、第1〜第3束ね紐によって束ねられる各一対のリード線において、そのリード線を束ねる(第1、第2、又は第3)束ね紐から、リード線のターミナル側の先端までの距離がそれぞれ等しい。しかも、リード線の組別(リード線が接続されるターミナルの相別)に、束ね紐から、その束ね紐によって束ねられる一対のリード線のターミナル側の先端までの距離が異なる。そのため、リード線をターミナルに接続する際に、同相につなぐべきリード線を、別々の相に誤結線することを防止することが容易である。
【0011】
また、ここでは、ステータコイル側において、ターミナルの第1相に接続される一対のリード線とターミナルの第2相に接続される一対のリード線のうちの1本とが第4束ね紐により束ねられ、ターミナルの第2相に接続される一対のリード線の他の1本とターミナルの第3相に接続される一対のリード線とが第5束ね紐により束ねられている。このため、リード線を一体として管理することができる。特に、ここでは、ステータコイル側において、リード線全部を1本の束ね紐で束ねるのではなく、3本ずつ2本の束ね紐で束ねているため、リード線のターミナル接続時に、リード線の向きを個別に調整することが比較的容易で、圧縮機の組立性を向上させることができる。
【0012】
本発明の第2観点に係る圧縮機は、第1観点に係る圧縮機であって、第1〜第6リード線の先端には、それぞれ端子が取り付けられる。ターミナルは、当該圧縮機の中心側に向かって互いに平行に延びる3本のピンと、ピンにそれぞれ固定された、一対の互いに平行に対向する端子板と、を有する。各ピンの一対の端子板には、それぞれ、第1リード線の端子および第2リード線の端子と、第3リード線の端子および第4リード線の端子と、第5リード線の端子および第6リード線の端子と、が接続される。各ピンを、ピンが延びる方向から見た時に、端子板の平面が延びる方向は、ピン毎に異なる。
【0013】
6本のリード線が1つの束ね紐により束ねられる場合、リード線のそれぞれの向きを個別に調整することが容易ではない。そのため、ターミナルをピンが延びる方向から見た時に、3本のピンに固定された一対の端子板の平面が互いに異なる方向に延びる場合には、リード線のそれぞれの向きを、束ね紐で束ねる前に正確に調整しておくことが必要になる。
【0014】
これに対し、ここでは、リード線が、ステータコイル側で、3本のリード線毎に異なる束ね紐により束ねられているため、リード線の全てが1つの束ね紐により束ねられる場合に比べ、端子板への端子の接続時に、各リード線の向きを個別に変更することが比較的容易である。そのため、リード線の向きを、束ね紐で束ねる前に調整することが不要となり、圧縮機の組立性を向上させることができる。
【0015】
本発明の第3観点に係る圧縮機は、第1観点又は第2観点に係る圧縮機であって、第4束ね紐および第5束ね紐は、ステータコイルと共にワニスで固めて固定されている。
【0016】
ここでは、第4および第5束ね紐がステータコイルにワニスで固定されているため、圧縮機の運転時にリード線が振動して騒音の原因となることを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る圧縮機では、各々がターミナルの同相に接続される3組の一対のリード線が、それぞれ第1〜第3束ね紐によって束ねられてまとめられる。また、第1〜第3束ね紐によって束ねられる各一対のリード線において、そのリード線を束ねる(第1、第2、又は第3)束ね紐から、リード線のターミナル側の先端までの距離がそれぞれ等しい。しかも、リード線の組別(リード線が接続されるターミナルの相別)に、束ね紐から、その束ね紐によって束ねられる一対のリード線のターミナル側の先端までの距離が異なる。そのため、各リード線をターミナルに接続する際に、同相につなぐべきリード線を、別々の相に誤結線することを防止することが容易である。
【0018】
また、ここでは、ステータコイル側において、ターミナルの第1相に接続される一対のリード線とターミナルの第2相に接続される一対のリード線のうちの1本とが第4束ね紐により束ねられ、ターミナルの第2相に接続される一対のリード線の他の1本とターミナルの第3相に接続される一対のリード線とが第5束ね紐により束ねられている。このため、6本のリード線を一体として管理することができる。特に、ここでは、ステータコイル側において、6本のリード線全部を1本の束ね紐で束ねるのではなく、リード線3本ずつを、2本の束ね紐で束ねているため、リード線のターミナル接続時に、各リード線の向きを個別に調整することが比較的容易で、圧縮機の組立性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る圧縮機の一実施形態のスクロール圧縮機の概略縦断面図である。
図2図1のスクロール圧縮機のターミナルの縦断面図である。
図3図2のターミナルを、ケーシング内部であって、ターミナルピンが延びる方向から見た側面図である。
図4図1のスクロール圧縮機のモータのステータおよびリード線アセンブリの概略平面図である。
図5図4のリード線アセンブリの模式図である。
図6図4のリード線アセンブリの端子の形状を説明するための、第1端子の概略の外観図である。
図7図1のスクロール圧縮機における、ターミナルの端子板とリード線の端子との接続状態を模式的に描画した図である。図7は、ターミナルを、ターミナルピンが延びる方向に沿って、ケーシング内部から見た図である。ここでは、端子については、端子の端子板接続部をターミナルピンに垂直な断面で切断した状態を描画している。
図8図1のスクロール圧縮機における、ターミナルとリード線との接続状態を描画した図である。図8は、ターミナルを、ターミナルピンが延びる方向に沿って、ケーシング内部から見た図である。
図9】変形例Dのスクロール圧縮機における、延長部を有さない端子板を備えたターミナルとリード線との接続状態を描画した図である。図9は、ターミナルを、ターミナルピンが延びる方向に沿って、ケーシング内部から見た図である。
図10】変形例Dのスクロール圧縮機における、ターミナルの端子板とリード線の端子との接続状態を模式的に描画した図である。図10は、ターミナルを、ターミナルピンが延びる方向に沿って、ケーシング内部から見た図である。ここでは、端子については、端子の端子板接続部をターミナルピンに垂直な断面で切断した状態を描画している。
図11】従来のリード線アセンブリにおける、リード線の束ね紐による束ね方を描画した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る圧縮機を、図面を参照しながら説明する。なお、下記の実施形態は、実施例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0021】
(1)全体構成
本発明の一実施形態に係るスクロール圧縮機10について説明する。スクロール圧縮機10は、例えば、空気調和装置の室外機に使用され、空気調和装置の冷媒回路の一部を構成する。
【0022】
図1は、一実施形態に係るスクロール圧縮機10の概略縦断面図である。スクロール圧縮機10は、ケーシング20(図1参照)、圧縮機構30(図1参照)、モータ40(図1参照)、クランク軸50(図1参照)、ターミナル60(図1参照)、リード線アセンブリ100(図4参照)、および下部軸受90(図1参照)を主に有する。
【0023】
(2)詳細構成
スクロール圧縮機10のケーシング20、圧縮機構30、モータ40、クランク軸50、ターミナル60、リード線アセンブリ100、および下部軸受90について以下に説明する。
【0024】
なお、以下の説明では、方向や配置を説明するために、「上」、「下」等の表現を用いる場合があるが、特に断りの無い場合、図1中の矢印Uの方向を上とする。また、以下の説明では、平行、直角、水平、垂直等の表現を用いる場合があるが、これには実質的に平行、直角、水平、垂直等である場合、つまり略平行、略直角、略水平、略垂直等である場合を含む。
【0025】
(2−1)ケーシング
ケーシング20は、上下が開口した円筒状の円筒部材21と、円筒部材21の上端および下端にそれぞれ設けられた上蓋22aおよび下蓋22bと、を有する(図1参照)。円筒部材21と、上蓋22aおよび下蓋22bとは、気密を保つように溶接により固定される。
【0026】
ケーシング20は、その内部に、圧縮機構30、モータ40、クランク軸50、リード線アセンブリ100、および下部軸受90を含むスクロール圧縮機10の構成機器を収容する(図1参照)。また、ケーシング20の円筒部材21の側面には、ターミナル60が取り付けられる。
【0027】
ケーシング20の上部には、圧縮機構30の圧縮対象である低圧のガス冷媒を、スクロール圧縮機10が接続される冷媒回路から吸入する吸入管23が、ケーシング20の上蓋22aを貫通して設けられる(図1参照)。吸入管23の下端は、後述する圧縮機構30の固定スクロール31に接続される。吸入管23は、圧縮機構30の圧縮室Scと連通する。
【0028】
ケーシング20の円筒部材21の中間部には、ケーシング20外に吐出されるガス冷媒が通過する吐出管24が設けられる(図1参照)。吸入管23から吸入され、圧縮機構30により圧縮されたガス冷媒は、吐出管24を通過してケーシング20外に吐出される。
【0029】
(2−2)圧縮機構
圧縮機構30は、主に、ハウジング33と、ハウジング33の上方に配置される固定スクロール31と、固定スクロール31とハウジング33との間に配置される可動スクロール32と、を有する(図1参照)。
【0030】
圧縮機構30では、固定スクロール31の下面と可動スクロール32の上面とが対向する状態で、固定スクロール31の下面から下方に突出する渦巻状の固定側ラップ31aと、可動スクロール32の上面から上方に突出する渦巻状の可動側ラップ32aとが組み合わされる。その結果、隣接する固定側ラップ31aと可動側ラップ32aとの間には、圧縮室Scが形成される。
【0031】
可動スクロール32は、その下部に設けられたボス部32bにクランク軸50の偏心部51が挿入されることで、クランク軸50と連結される。クランク軸50は、後述するモータ40のロータ45とも連結されている。モータ40が駆動され、ロータ45と連結されているクランク軸50が回転すると、可動スクロール32は固定スクロール31に対して自転することなく公転する。その結果、圧縮室Sc内の冷媒が圧縮される。圧縮室Scで圧縮された冷媒は、固定スクロール31の上部に形成された吐出口31bから上方に吐出され、固定スクロール31およびハウジング33に形成された、図示しない冷媒通路を通過して、ハウジング33の下方の空間へと流入する。
【0032】
ハウジング33は、ケーシング20の円筒部材21に圧入され、ハウジング33の外周面の全周が、円筒部材21の内周面に固定されている。ハウジング33の上面には、固定スクロール31が固定される。また、ハウジング33は、可動スクロール32を下方側から支持する。また、ハウジング33の下部には、クランク軸50を軸支する上部軸受35が設けられる(図1参照)。上部軸受35は、クランク軸50の主軸52を回転自在に軸支する。
【0033】
(2−3)モータ
モータ40は、ターミナル60およびリード線アセンブリ100を介して3相交流電流の供給を受け、圧縮機構30を駆動する。モータ40は、ハウジング33に設けられた上部軸受35と、後述する下部軸受90との間に配置される(図1参照)。
【0034】
モータ40は、ステータ41と、ロータ45と、を主に有する(図1参照)。ステータ41は、円筒状に形成されている。ステータ41の内部(中空部)には、ロータ45が僅かな隙間(エアギャップG)を介して収容される(図1参照)。
【0035】
ステータ41は、ステータコア42と、インシュレータ43と、ステータコイル44と、を有する(図1参照)。
【0036】
ステータコア42は、円筒状に形成されている。ステータコア42は、ケーシング20の円筒部材21の内周面に固定されている。ステータコア42の円筒状の外周面の一部には、径方向中心側に凹む様に切り欠かれた、コアカット部42aが形成されている(図1参照)。
【0037】
インシュレータ43は、ステータコア42の上下両端部に取り付けられている。インシュレータ43は、ステータコア42とステータコイル44とを絶縁するために設けられている。
【0038】
ステータコイル44は、ステータコア42およびインシュレータ43に巻回されている。ステータコイル44の3つの相(U相、V相、W相)は、それぞれ、後述するリード線アセンブリ100の、第1リード線210および第2リード線220、第3リード線230および第4リード線240、および、第5リード線250および第6リード線260、に接続される(図5参照)。ステータコイル44は、リード線アセンブリ100により、後述するターミナル60と結ばれている。
【0039】
ロータ45は、ステータ41の中空部に、回転自在に収容されている。ロータ45の中央部には、クランク軸50の主軸52を挿入するための中央穴45aが形成されている(図1参照)。ロータ45の中央穴45aに主軸52が挿入されることで、ロータ45は、クランク軸50を介して可動スクロール32と連結される。
【0040】
ロータ45には、複数の永久磁石(図示せず)が埋め込まれている。ステータコイル44に電流が供給されると、回転磁界が発生する。ロータ45は、ロータ45に設けられた永久磁石が回転磁界の影響を受けることで回転し、クランク軸50を介して連結される可動スクロール32を回転させる。
【0041】
ロータ45の下方には、下部バランスウェイト80が取り付けられている。下部バランスウェイト80は、後述する上部バランスウェイト53と共に用いられて、モータ40のロータ45およびクランク軸50を含む回転体の質量分布の不釣合いを解消し、回転体の振動を抑制する。
【0042】
(2−4)クランク軸
クランク軸50は、モータ40の駆動力を可動スクロール32に伝達する伝動軸である。クランク軸50は、ケーシング20の円筒部材21の軸心に沿って上下方向に延びるように配置され、モータ40のロータ45と、圧縮機構30の可動スクロール32とを連結する(図1参照)。
【0043】
クランク軸50は、円筒部材21の軸心と中心軸Oが一致する主軸52と、主軸52の中心軸Oに対して(円筒部材21の軸心に対して)偏心した偏心部51とを有する(図1参照)。
【0044】
偏心部51は、主軸52の上端に配置され、可動スクロール32のボス部32bに連結される。
【0045】
主軸52は、ハウジング33に設けられた上部軸受35、および、後述する下部軸受90により、回転自在に軸支される。また、主軸52は、上部軸受35と下部軸受90との間で、モータ40のロータ45と連結される。主軸52は、上下方向に延びる中心軸O周りを回転する(図1参照)。主軸52には、上部バランスウェイト53が取り付けられている。上部バランスウェイト53は、ロータ45の上方であって、ハウジング33の下方に配置される(図1参照)。
【0046】
(2−5)ターミナル
ターミナル60は、ケーシング20の円筒部材21に取り付けられる。ターミナル60は、主に、ターミナルボディ61と、ピンの一例としての3本のターミナルピン62と、各ターミナルピン62に2つずつ設けられる端子板63と、を有する(図2参照)。
【0047】
ターミナルボディ61は、3本のターミナルピン62を支持する部材である。ターミナルボディ61は、円筒部材21に溶接により固定されている。
【0048】
ターミナルピン62は、ピンの一例である。ターミナルピン62は、円柱状に形成されている。ターミナルピン62は、ケーシング20の外部から、ケーシング20の内部まで、ターミナルボディ61を貫通して延びる(図2参照)。ターミナルピン62は、ケーシング20の外部から、スクロール圧縮機10の中心側に向かって、言い換えれば円筒部材21の中心側に向かって延びる(図2参照)。3本のターミナルピン62は、それぞれ他のターミナルピン62と平行に延びる。
【0049】
各ターミナルピン62のケーシング20の内部側には、それぞれ一対の端子板63が固定されている(図2および図3参照)。各ターミナルピン62に固定される一対の端子板63は、互いに平行に対向する(図3参照)。なお、端子板63は、それぞれターミナルピン62の側面に固定され、ターミナルピン62のスクロール圧縮機10の中心側の端部よりも、更に内側(スクロール圧縮機10の中心側)まで延びる(図2参照)。なお、各端子板63には、後述するリード線アセンブリ100のリード線200の端部の先端に取り付けられた端子400が接続される。端子板63と端子400との接続については後述する。
【0050】
なお、ターミナルピン62を、ターミナルピン62が延びる方向から(ケーシング20の内部側から、ターミナルピン62の軸方向に沿って)見た時に、端子板63の平面が延びる(平面が広がる)方向は、端子板63が取り付けられたターミナルピン62毎に異なる(図3参照)。つまり、各ターミナルピン62に取り付けられた端子板63の平面は、他のターミナルピン62に取り付けられた端子板63の平面のいずれとも平行ではない(図3参照)。
【0051】
ターミナルピン62のケーシング20の外部側には、外部電源が接続される。
【0052】
(2−6)リード線アセンブリ
リード線アセンブリ100は、ステータコイル44とターミナル60とを結ぶ。
【0053】
リード線アセンブリ100は、リード線200と、束ね紐300と、端子400と、を有する(図4参照)。
【0054】
リード線200は、ステータコイル44とターミナル60とを結ぶ導線である。リード線200は、第1リード線210、第2リード線220、第3リード線230、第4リード線240、第5リード線250、および、第6リード線260を含む(図5参照)。第1リード線210および第2リード線220は、一端がターミナル60のU相に接続され、他端がステータコイル44のU相に接続される。第3リード線230および第4リード線240は、一端がターミナル60のV相に接続され、他端がステータコイル44のV相に接続される。第5リード線250および第6リード線260は、一端がターミナル60のW相に接続され、他端がステータコイル44のW相に接続される。つまり、ここでは、ステータコイル44のU相,V相、W相が、それぞれ2本のリード線で、ターミナル60のU相,V相、W相と結ばれる。
【0055】
なお、U相に接続される第1リード線210および第2リード線220と、V相に接続される第3リード線230および第4リード線240と、W相に接続される第5リード線250および第6リード線260とは、それぞれ被覆の色が異なる。
【0056】
端子400は、リード線200のターミナル60側の先端に取り付けられ、ターミナルピン62に固定された端子板63と接続される部材である。端子400は、ファストン端子である。端子400は、端子400に接続されるリード線200が、端子400の挿抜方向(端子400の端子板63に対する取付/取外し方向)と直交するように配置される、いわゆる旗型の端子である。端子400は、第1端子410、第2端子420、第3端子430、第4端子440、第5端子450、および、第6端子460を含む(図5参照)。第1端子410、第2端子420、第3端子430、第4端子440、第5端子450、および、第6端子460は、それぞれ、第1リード線210、第2リード線220、第3リード線230、第4リード線240、第5リード線250、および第6リード線260の先端(ターミナル60側の先端)に取り付けられている。第1端子410および第2端子420のそれぞれは、ターミナル60のU相のターミナルピン62に固定されている一対の端子板63の一方に接続される。第3端子430および第4端子440のそれぞれは、ターミナル60のV相のターミナルピン62に固定されている一対の端子板63の一方に接続される。第5端子450および第6端子460のそれぞれは、ターミナル60のW相のターミナルピン62に固定されている一対の端子板63の一方に接続される。なお、スクロール圧縮機10の組立作業時には、例えば、第1端子410および第2端子420、第3端子430および第4端子440、第5端子450および第6端子460の順に、端子400が、ケーシング20の円筒部材21に固定されたターミナル60の端子板63と接続される。
【0057】
端子400の形状について更に説明する。ここでは、図6に示す第1端子410の概略の外観図を用いて、端子400の形状を説明する。第2端子420、第3端子430、第4端子440、第5端子450、および、第6端子460の形状は、第1端子410の形状と同様であるので、図面および説明は省略する。
【0058】
第1端子410は、端子板63と接続される端子板接続部410aと、第1リード線210と接続されるリード線接続部410bと、を含む(図6参照)。
【0059】
端子板接続部410aは、筒状に形成され、内部に端子板63が挿入される。なお、端子板接続部410aの側面には、筒状の端子板接続部410aの軸方向、言い換えれば第1端子410の挿抜方向(第1端子410の端子板63に対する取付/取外し方向)に延びるスロット410aa(図6参照)が形成されている。スロット410aaを具備しているため、筒状の端子板接続部410aの断面は環状ではなく、概ねC字形状である(図7参照)。筒状の端子板接続部410aの両端部は開口しており、第1端子410と端子板63とを接続する際には、一方の端部開口410ab(図6参照)から端子板63が挿入される。端部開口410abは、端子板63を端子板接続部410aの内部に挿入するための開口である。なお、他方の端部開口410acは、リード線接続部410bに隣接しており、リード線接続部410bにより端部開口410acが塞がれているため、端部開口410acからは端子板63を挿入できない。
【0060】
リード線接続部410bは、筒状に形成されている。リード線接続部410bの中空部に第1リード線210の被覆されていない部分を挿入し固定することで、第1端子410と第1リード線210とが接続される。
【0061】
図7は、ターミナル60のU相のターミナルピン62に固定される端子板63と、その端子板63に接続される第1端子410および第2端子420を模式的に示した図である。以下に、図7に基づいて、第1端子410および第2端子420と、端子板63との接続状態とについて説明する。
【0062】
なお、第3端子430、第4端子440、第5端子450、および第6端子460の形状や、第3端子430、第4端子440、第5端子450、および第6端子460と端子板63との接続状態は、第1端子410および第2端子420の形状や、第1端子410および第2端子420と端子板63との接続状態と同様であるので、図面および説明は省略する。
【0063】
端子板63に取り付けられた状態の第1端子410の端子板接続部410aおよび第2端子420の端子板接続部420aを、ターミナルピン62の軸方向(ターミナルピン62の延びる方向)に垂直な断面で切断した時に、端子板接続部410aおよび端子板接続部420aは、C字形状に形成されている(図7参照)。端子板接続部410aおよび端子板接続部420aは、端子板63に取り付けられた状態でターミナルピン62の軸方向に延びる筒状に形成されている。第1端子410および第2端子420が端子板63と接続された状態では、端子板接続部410aおよび端子板接続部420aの内部に、端子板63が配置された状態となる(図7参照)。より具体的には、第1端子410および第2端子420が端子板63と接続された状態では、端子板接続部410aおよび端子板接続部420aの内部に、端子板63のターミナルピン62よりもスクロール圧縮機10の中心側に延びる部分が配置された状態となる。第1端子410および第2端子420を端子板63に取り付ける際には、C字断面の筒状の端子板接続部410aおよび端子板接続部420aの内部に端子板63が挿入されるように、ターミナルピン62の軸方向に沿って端子板接続部410aおよび端子板接続部420aが動かされる。なお、筒状の端子板接続部410aおよび端子板接続部420aは、一端の開口側からのみ(例えば、端子板接続部410aでは、端部開口410abからのみ)、端子板接続部410aおよび端子板接続部420aの内部に端子板63が挿入可能に構成されている。第1端子410および第2端子420は、図7のように、第1端子410および第2端子420から図7における下方に第1リード線210および第2リード線220が延び、端子板接続部410aのスロット410aaおよび端子板接続部420aのスロット420aaが右方を向く場合に、筒状の第1端子410および第2端子420の紙面奥側の端部側からのみ端子板63が挿入可能に構成されている。なお、図7の構成は一例であって、これに限定されるものではない。例えば、図7とは逆に、第1端子410および第2端子420は、第1端子410および第2端子420から図7における下方に第1リード線210および第2リード線220が延び、端子板接続部410aのスロット410aaおよび端子板接続部420aのスロット420aaが左方向を向く場合に、筒状の第1端子410および第2端子420の紙面奥側の端部側からのみ端子板63が挿入可能に構成されてもよい。第1端子410および第2端子420は、同じ向きに、言い換えればターミナルピン62の軸方向に沿って見た時に、C字形状の開口(スロット410aa,420aa)が同じ方向(図7中では右方向)を向くように、ターミナルピン62に装着される。
【0064】
ここでは、端子板63が、ターミナルピン62のスクロール圧縮機10の中心側の端部よりも更に内側まで延びる。この端子板63のターミナルピン62よりもスクロール圧縮機10の中心側に延びる部分に、第1端子410および第2端子420は取り付けられる。そのため、第1端子410および第2端子420を同じ向きに端子板63に取り付けても、第1端子410および第2端子420のいずれもターミナルピン62には接触しない。言い換えれば、第1端子410および第2端子420を同じ向きに端子板63に取り付けても、ターミナルピン62が第1端子410および第2端子420の取り付けを阻害することがない。
【0065】
なお、仮に、ターミナルピン62の内側部に固定される端子板63が、ターミナルピン62のスクロール圧縮機10の中心側の端部よりも内側まで延びていないとすれば、一方の端子がターミナルピン62に接触する。例えば、ターミナルピン62のスクロール圧縮機10の中心側の端部よりも内側まで延びていない端子板63に、第1端子410および第2端子420を図7のような向きに取り付ける場合、第1端子410については、端子板接続部410aのスロット410aaにターミナルピン62が配置されるため、第1端子410はターミナルピン62と接触しない。しかし、第2端子420については、スロット420aaがターミナルピン62と反対側に開口するため、端子板接続部420aがターミナルピン62に接触し、第2端子420を端子板63に取り付けることが困難である。
【0066】
端子板63に接続された第1端子410および第2端子420のそれぞれからは、ターミナルピン62に対して同一方向に第1リード線210および第2リード線220が延びる(図7および図8参照)。例えば、図7では、端子板63に接続された第1端子410および第2端子420のそれぞれからは、ターミナルピン62に対して図7における下方に第1リード線210および第2リード線220が延びる。そのため、ここでは、複数のリード線200とターミナルピン62とを整然と接続することが容易である(図8参照)。
【0067】
束ね紐300は、複数のリード線200を束ねるための紐である。束ね紐300により束ねられるリード線200は、バラバラになることが無いよう、束ね紐300により強く結束されている。束ね紐300は、第1束ね紐310、第2束ね紐320、第3束ね紐330、第4束ね紐340、および、第5束ね紐350を含む(図5参照)。第1リード線210および第2リード線220は、第1束ね紐310によって束ねられる(図5参照)。第1束ね紐310から、第1リード線210および第2リード線220のターミナル60側の先端までの距離(リード線の長さ)は、それぞれ第1距離L1で等しい(図5参照)。第1距離L1は、第1リード線210および第2リード線220の先端の第1端子410および第2端子420が、ターミナル60の所定の(U相の)ターミナルピン62の端子板63に取り付けられた際に、第1リード線210および第2リード線220に過度に引張力が作用した状態や、第1リード線210および第2リード線220が過度に弛んだ状態になることがないように、適切な長さに決定されている。第3リード線230および第4リード線240は、第2束ね紐320によって束ねられる(図5参照)。第2束ね紐320から、第3リード線230および第4リード線240のターミナル60側の先端までの距離は、それぞれ第2距離L2で等しい(図5参照)。第2距離L2は、第3リード線230および第4リード線240の先端の第3端子430および第4端子440が、ターミナル60の所定の(V相の)ターミナルピン62の端子板63に取り付けられた際に、第3リード線230および第4リード線240に過度に引張力が作用した状態や、第3リード線230および第4リード線240が過度に弛んだ状態になることがないように、適切な長さに決定されている。第5リード線250および第6リード線260は、第3束ね紐330によって束ねられる(図5参照)。第3束ね紐330から、第5リード線250および第6リード線260のターミナル60側の先端までの距離は、それぞれ第3距離L3で等しい(図5参照)。第3距離L3は、第5リード線250および第6リード線260の先端の第5端子450および第6端子460が、ターミナル60の所定の(W相の)ターミナルピン62の端子板63に取り付けられた際に、第5リード線250および第6リード線260に過度に引張力が作用した状態や、第5リード線250および第6リード線260が過度に弛んだ状態になることがないように、適切な長さに決定されている。リード線200の誤配線を防止するため、第1距離L1と、第2距離L2と、第3距離L3とは、それぞれ異なる値に設定されている。
【0068】
第1リード線210、第2リード線220、および第3リード線230は、第1束ね紐310および第2束ね紐320よりもステータコイル44側で、第4束ね紐340によって束ねられる(図5参照)。第4リード線240、第5リード線250、および第6リード線260は、第2束ね紐320および第3束ね紐330よりもステータコイル44側で、第5束ね紐350によって束ねられる(図5参照)。
【0069】
なお、リード線アセンブリ100のリード線200の、第4束ね紐340および第5束ね紐350により束ねられている部分は、ステータコイル44と共にワニス(例えば、樹脂)により固めて固定されている。
【0070】
(2−7)下部軸受
下部軸受90は、クランク軸50を軸支する軸受であって、モータ40の下方に配置される(図1参照)。下部軸受90は、ケーシング20の円筒部材21に固定されている。下部軸受90は、クランク軸50の主軸52を回転自在に軸支する。
【0071】
(3)スクロール圧縮機の動作説明
スクロール圧縮機10の動作について説明する。
【0072】
ターミナル60およびリード線アセンブリ100を介してステータコイル44に電流が供給され、モータ40が駆動されると、ロータ45が回転し、ロータ45と連結されたクランク軸50が回転する。クランク軸50が回転することで、可動スクロール32が駆動される。可動スクロール32は、自転することなく固定スクロール31に対して公転する。
【0073】
可動スクロール32の公転に伴い、圧縮機構30の圧縮室Scの容積は周期的に変化する。圧縮室Scの容積が増加する際には、低圧のガス冷媒が、吸入管23を通って圧縮室Scに供給される。より具体的には、最周縁側の圧縮室Scの容積が増加する際に、吸入管23から供給される低圧のガス冷媒が、最周縁側の圧縮室Scに供給される。一方、圧縮室Scの容積が減少する際には、圧縮室Sc内でガス冷媒が圧縮され、最終的に高圧のガス冷媒となる。高圧のガス冷媒は、固定スクロール31の上面の中心付近に位置する吐出口31bから吐出される。吐出口31bから吐出された高圧のガス冷媒は、固定スクロール31およびハウジング33に形成された図示されない冷媒通路を通過して、ハウジング33の下方の空間へと流入する。圧縮機構30により圧縮された高圧のガス冷媒は、最終的に吐出管24からスクロール圧縮機10外に吐出される。
【0074】
(4)特徴
(4−1)
本実施形態のスクロール圧縮機10は、モータ40と、ケーシング20と、ターミナル60と、リード線アセンブリ100と、を備える。モータ40は、ステータコイル44を有する。ケーシング20は、モータ40を収容する。ターミナル60は、ケーシング20に取り付けられる。リード線アセンブリ100は、ステータコイル44とターミナル60とを結ぶ。リード線アセンブリ100は、リード線200と、束ね紐300と、を有する。リード線200は、第1リード線210、第2リード線220、第3リード線230、第4リード線240、第5リード線250、および、第6リード線260を含む。束ね紐300は、第1束ね紐310、第2束ね紐320、第3束ね紐330、第4束ね紐340、および、第5束ね紐350を含む。第1リード線210および第2リード線220は、ターミナル60の第1相の一例としてのU相に接続される。第3リード線230および第4リード線240は、ターミナル60の第2相の一例としてのV相に接続される。第5リード線250および第6リード線260は、ターミナルの第3相の一例としてのW相に接続される。第1リード線210および第2リード線220は、第1束ね紐310によって束ねられる。第1束ね紐310から、第1リード線210および第2リード線220のターミナル60側の先端までの距離は、それぞれ第1距離L1で等しい。第3リード線230および第4リード線240は、第2束ね紐320によって束ねられる。第2束ね紐320から、第3リード線230および第4リード線240のターミナル60側の先端までの距離は、それぞれ第2距離L2で等しい。第5リード線250および第6リード線260は、第3束ね紐330によって束ねられる。第3束ね紐330から、第5リード線250および第6リード線260のターミナル60側の先端までの距離は、それぞれ第3距離L3で等しい。第1距離L1と、第2距離L2と、第3距離L3とは、それぞれ異なる。第1リード線210、第2リード線220、および第3リード線230は、第1束ね紐310および第2束ね紐320よりもステータコイル44側で、第4束ね紐340によって束ねられる。第4リード線240、第5リード線250、および第6リード線260は、第2束ね紐320および第3束ね紐330よりもステータコイル44側で、第5束ね紐350によって束ねられる。
【0075】
ここでは、各々がターミナル60の同相に接続される3組の一対のリード線(第1リード線210および第2リード線220、第3リード線230および第4リード線240、および、第5リード線250および第6リード線260)が、それぞれ第1束ね紐310、第2束ね紐320、および、第3束ね紐330によって束ねられてまとめられる。また、第1束ね紐310、第2束ね紐320、および、第3束ね紐330によって束ねられる各一対のリード線(第1リード線210および第2リード線220、第3リード線230および第4リード線240、および、第5リード線250および第6リード線260)において、そのリード線を束ねる束ね紐(第1束ね紐310、第2束ね紐320、又は、第3束ね紐330)から、リード線のターミナル60側の先端までの距離がそれぞれ等しい。しかも、リード線200の組別(リード線200が接続されるターミナル60の相別(U相、V相、W相の別))に、束ね紐(第1束ね紐310、第2束ね紐320、又は、第3束ね紐330)から、その束ね紐によって束ねられる一対のリード線(第1リード線210および第2リード線220、第3リード線230および第4リード線240、又は、第5リード線250および第6リード線260)のターミナル60側の先端までの距離が異なる。そのため、リード線200をターミナル60に接続する際に、同相につなぐべきリード線(第1リード線210および第2リード線220、第3リード線230および第4リード線240、および、第5リード線250および第6リード線260)を、別々の相に誤結線することを防止することが容易である。
【0076】
さらに、ここでは、U相に接続される第1リード線210および第2リード線220と、V相に接続される第3リード線230および第4リード線240と、W相に接続される第5リード線250および第6リード線260とで、それぞれ被覆の色が異なるので、リード線200の誤結線が更に防止されやすい。
【0077】
また、ここでは、ステータコイル44側において、ターミナル60のU相に接続される一対の第1リード線210および第2リード線220と、ターミナル60のV相に接続される一対のリード線のうちの1本(第3リード線230)とが第4束ね紐340により束ねられる。そして、ターミナル60のV相に接続される一対のリード線の他の1本(第4リード線240)と、ターミナル60のW相に接続される一対の第5リード線250および第6リード線260とが第5束ね紐350により束ねられている。このため、リード線200を一体として管理することができる。特に、ここでは、ステータコイル44側において、リード線200全部を1本の束ね紐で束ねるのではなく、3本ずつ2本の束ね紐で束ねているため、リード線200のターミナル60への接続時に、リード線200の向きを個別に調整することが比較的容易で、スクロール圧縮機10の組立性を向上させることができる。
【0078】
(4−2)
本実施形態のスクロール圧縮機10では、第1リード線210、第2リード線220、第3リード線230、第4リード線240、第5リード線250、および、第6リード線260の先端には、それぞれ端子400が取り付けられる。ターミナル60は、スクロール圧縮機10の中心側に向かって互いに平行に延びる3本のターミナルピン62と、ターミナルピン62にそれぞれ固定された、一対の互いに平行に対向する端子板63と、を有する。各ターミナルピン62の一対の端子板63には、それぞれ、第1リード線210の第1端子410および第2リード線220の第2端子420と、第3リード線230の第3端子430および第4リード線240の第4端子440と、第5リード線250の第5端子450および第6リード線260の第6端子460と、が接続される。各ターミナルピン62を、ターミナルピン62が延びる方向から見た時に、端子板63の平面が延びる方向は、ターミナルピン62毎に異なる。
【0079】
6本のリード線200が1つの束ね紐により束ねられる場合、リード線200のそれぞれの向きを個別に調整することが容易ではない。そのため、ターミナル60をターミナルピン62が延びる方向から見た時に、3本のターミナルピン62に固定された一対の端子板63の平面が互いに異なる方向に延びる場合には、リード線200のそれぞれの向きを、束ね紐で束ねる前に正確に調整しておくことが必要になる。
【0080】
これに対し、ここでは、リード線200が、ステータコイル44側で、3本のリード線(第1リード線210、第2リード線220、および第3リード線230と、第4リード線240、第5リード線250、および第6リード線260と)毎に異なる束ね紐(第4束ね紐340および第5束ね紐350)により束ねられているため、リード線200の全てが1つの束ね紐により束ねられる場合に比べ、端子板63への端子400の接続時に、リード線200の向きを個別に変更することが比較的容易である。そのため、リード線200の向きを、束ね紐300で束ねる前に調整することが不要となり、スクロール圧縮機10の組立性を向上させることができる。
【0081】
(4−3)
本実施形態のスクロール圧縮機10では、第4束ね紐340および第5束ね紐350は、ステータコイル44と共にワニスで固めて固定されている。
【0082】
ここでは、第4束ね紐340および第5束ね紐350がステータコイル44にワニスで固定されているため、スクロール圧縮機10の運転時にリード線200が振動して騒音の原因となることを防止できる。
【0083】
(5)変形例
以下に上記実施形態の変形例を示す。なお、以下に示す変形例は、互いに矛盾しない範囲で、複数組み合わして適用されてもよい。
【0084】
(5−1)変形例A
上記実施形態のターミナル60のターミナルピン62の配置や、各ターミナルピン62に固定される端子板63の向きは例示であって、これに限定されるものではない。
【0085】
例えば、1のターミナルピン62に固定される端子板63の平面と、他のターミナルピン62に固定される端子板63の平面とは、平行であってもよい。ただし、上記実施形態のように、ターミナルピン62が延びる方向から見た時に、ターミナルピン62に固定される端子板63の延びる方向が、ターミナルピン62毎に異なる場合には、ターミナルピン62同士の距離が比較的近接する場合にも、ターミナル60の端子板63と端子400との接続が容易である。
【0086】
(5−2)変形例B
上記実施形態では、リード線200の長さに関し、第1距離L1<第2距離L2<第3距離L3の関係があるが、第1距離L1、第2距離L2、および、第3距離L3の距離の関係は一例であって、これに限定されるものではない。
【0087】
(5−3)変形例C
上記実施形態の端子400の形状は一例であって、これに限定されるものではない。端子400の形状には各種の形状を適用可能である。
【0088】
また、上記実施形態では、各ターミナルピン62の一対の端子板63に取り付けられる端子400から、そのターミナルピン62に対して同じ側にリード線200が延びる。ただし、これに限定されるものではなく、リード線200は、各ターミナルピン62の一対の端子板63に取り付けられる端子400から、そのターミナルピン62に対して異なる側にリード線200が延びるように構成されてもよい。例えば、図7を例に説明すれば、第1リード線210は、端子板63に取り付けられる第1端子410からターミナルピン62に対して図7における下方に、第2リード線220は、端子板63に取り付けられる第2端子420からターミナルピン62に対して図7における上方に、それぞれ延びるように構成されてもよい。
【0089】
ただし、各ターミナルピン62の一対の端子板63に取り付けられる端子400から、そのターミナルピン62に対して同じ側に一対のリード線200が延びる場合には、その一対のリード線200のいずれかに過度に引張力が作用した状態や、その一対のリード線200のいずれかが過度に弛んだ状態が発生しにくい。そのため、各ターミナルピン62の一対の端子板63に取り付けられる端子400からは、そのターミナルピン62に対して同じ側に一対のリード線200が延びることがより好ましい。
【0090】
(5−4)変形例D
上記実施形態では、端子板63は、ターミナルピン62のスクロール圧縮機10の中心側の端部よりも内側まで延びるが、これに限定されるものではない。
【0091】
端子板63が、ターミナルピン62のスクロール圧縮機10の中心側の端部より内側に延びない場合には、同一のターミナルピン62に固定される一対の端子板63に接続される端子400において、C字形状の断面の端子板接続部の開口(スロット)が、いずれもターミナルピン62側を向くようにリード線アセンブリ100が構成されてもよい。リード線アセンブリ100がこのように構成されることで、各ターミナルピン62の一対の端子板63に取り付けられる端子400から、そのターミナルピン62に対して同じ側に一対のリード線200が延びるように配置することができる。
【0092】
図9および図10を用いて具体的に説明する。図9に描画されるターミナル160は、端子板163だけが上記実施形態のターミナル60と相違する。図9および図10の端子板163は、ターミナルピン62のスクロール圧縮機10の中心側の端部よりも内側まで延びる部分を有さない点で、上記実施形態の端子板63と相違する。
【0093】
図10は1のターミナルピン62の一対の端子板163に取り付けられる第1端子410および第2端子420’を描画している。他のターミナルピン62に取り付けられる端子については同様であるため、図面および説明は省略する。
【0094】
上記実施形態との違いとして、第2端子420'は、図10のように、第2端子420'から図10における下方に第2リード線220が延びる場合に、第2端子420'の端子板接続部420aのスロット420aaがターミナルピン62側を向くように、上記実施形態の第2端子420と対称に構成されている。言い換えれば、上記実施形態では、第1端子410の端子板接続部410aのスロット410aaと、第2端子420の端子板接続部420aのスロット420aaとは、同じ向き(図7中では右)を向くように構成されているのに対し(図7参照)、変形例Dでは、端子板接続部410aのスロット410aaと、端子板接続部420aのスロット420aaとは、互いに向かい合うように線対称に構成されている。つまり、同一のターミナルピン62に固定された一対の端子板163の一方には、第2端子420’の端子板接続部420aのスロット420aaが、他方の端子板163に接続された第1端子410の端子板接続部410aのスロット410aaとターミナルピン62を挟んで対向するように、第2端子420’が取り付けられる。端子板接続部410aおよび端子板接続部420aの内部に端子板163が配置され、第1端子410および第2端子がそれぞれ端子板163と接続された状態で、端子板接続部410aのスロット410aaおよび端子板接続部420aのスロット420aaには、ターミナルピン62の一部が配置される。そのため、端子板接続部410aおよび端子板接続部420aは、いずれもターミナルピン62と接触しない。説明は省略するが、第3端子430および第4端子440'と、第5端子450および第6端子460'についても、同様に構成されている(図10参照)。このように構成されることで、1のターミナルピン62に平行に取り付けられた端子板163と接続される一対の端子(第1端子410,第2端子420’)から、同一の向きにリード線200が延びる場合に、第1端子410および第2端子420’のいずれもターミナルピン62と接触しない。
【0095】
ただし、このように構成される場合には、1のターミナルピン62の一対の端子板63に接続される端子の形状が2種類存在することになるので、リード線アセンブリ100の製造(組立)行程が複雑になりやすく、作業の手間がかかりやすい。リード線アセンブリ100の組立性の観点からは、リード線アセンブリ100に使用される端子400は1種類であることが好ましい。
【0096】
(5−5)変形例E
上記実施形態に係る圧縮機は、スクロール圧縮機であるが、これに限定されるものではない。例えば、圧縮機は、上記実施形態のリード線アセンブリ100を備えたロータリ圧縮機であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明に係る圧縮機は、ステータコイルとターミナルとが6本のリード線で結ばれる場合にも、組立性に優れ、リード線の誤結線が防止されやすい圧縮機として有用である。
【符号の説明】
【0098】
10 スクロール圧縮機(圧縮機)
20 ケーシング
40 モータ
44 ステータコイル
60,160 ターミナル
62 ターミナルピン(ピン)
63,163 端子板
100 リード線アセンブリ
200 リード線
210 第1リード線
220 第2リード線
230 第3リード線
240 第4リード線
250 第5リード線
260 第6リード線
300 束ね紐
310 第1束ね紐
320 第2束ね紐
330 第3束ね紐
340 第4束ね紐
350 第5束ね紐
400 端子
L1 第1距離
L2 第2距離
L3 第3距離
【先行技術文献】
【特許文献】
【0099】
【特許文献1】特開平4−331435号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11