(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗り物用シートとしては、乗り物が移動している際に乗員へ掛かる荷重(横G等)によって、乗員が着座姿勢を崩さないことが望ましい。
【0005】
本発明は、乗員のホールド性が確保できる乗り物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、乗員が着座する着座部を有し、ビーズ材が封入されたビーズクッションと、前記ビーズクッションの側部及び後部に配置され、前記ビーズ材の側方及び後方への移動を制限する制限部と、を備える。
【0007】
請求項1の構成によれば、ビーズ材が封入されたビーズクッションが着座部を有するため、乗員が着座部に着座すると、乗員の体に沿ってビーズクッションが凹む。また、制限部によって、ビーズ材の側方及び後方への移動が制限されるため、着座部に対する側部側及び後部側でビーズクッションが潰れにくく、着座部に対する側部側及び後部側が上方へ盛り上がった状態(凸状)に維持されやすい。これにより、乗員の体がビーズクッションに保持されて、乗員のホールド性が確保できる。
【0008】
請求項1の発明は、前記着座部に対する前記制限部側に設けられ、乗り物を操作するための乗員による入力を検知するセンサと、前記ビーズ材で形成され、乗員の前記着座部への着座状態において非着座状態よりも前記ビーズ材の密度が高くなることで前記センサへの入力荷重を支持又は伝達可能となる荷重受け部と、を備える。
【0009】
請求項1の構成によれば、乗員が着座部に着座することで、荷重受け部がセンサへの入力荷重を支持又は伝達可能となり、センサへの入力、すなわち、乗り物の操作が可能となる。特に、
請求項1の構成では、制限部によってビーズ材の側方及び後方への移動が制限されることで、制限部を有さない場合に比べ、荷重受け部でのビーズ材の密度が高くなる。これにより、荷重受け部の支持部又は伝達部としての剛性(強度)が高まり、乗員による入力がセンサに伝わらないことを効果的に抑制できる。
【0010】
請求項2の発明では、前記センサは、前記着座部に対する前記制限部側における前記ビーズクッション上に配置され、前記荷重受け部は、乗員の前記着座部への着座状態において前記センサへの入力荷重を支持可能となる。
【0011】
請求項2の構成によれば、ビーズクッション上に配置されたセンサへ乗員が入力しても、荷重受け部がセンサへの入力荷重を支持するので、ビーズクッションが沈み込みにくく、乗員による入力がセンサに伝わらないことを抑制できる。
【0012】
請求項3の発明では、前記センサは、前記着座部に対する前記制限部側における前記ビーズ材の下側、又は、前記ビーズクッションの側部側における前記ビーズ材と前記制限部との間に配置され、前記荷重受け部は、乗員の前記着座部への着座状態において前記センサへの入力荷重を伝達可能となる。
【0013】
請求項3の構成によれば、ビーズ材の下側、又は、ビーズクッションの側部側におけるビーズ材と制限部との間に配置されたセンサへ、ビーズ材を介して乗員が入力しても、荷重受け部がセンサへの入力荷重を伝達するので、乗員による入力がセンサに伝わらないことを抑制できる。
【0014】
請求項4の発明は、前記着座部の下方における前記ビーズ材の下側に配置されたクッションを備え、前記センサは、前記クッションに対する前記制限部側における前記ビーズ材の下側、又は、前記クッションの側方における前記ビーズ材と前記制限部との間に配置されている。
【0015】
請求項4の構成によれば、クッションが、着座部の下方におけるビーズ材の下側に配置されているので、着座部に着座した乗員の臀部が、底板に底付きすることを抑制できる。また、着座部に乗員が着座することで、着座部とクッションとの間のビーズ材が制限部側へ移動する。これにより、クッションを有さない場合に比べ、荷重受け部におけるビーズ材の密度が高くなり、乗員による入力がセンサに伝わらないことを効果的に抑制できる。
【0016】
請求項5の発明では、前記センサは、複数設けられ、前記荷重受け部は、前記センサごとに区画されて前記センサごとに形成される
【0017】
請求項5の構成によれば、荷重受け部が、センサごとに区画されてセンサごとに形成されるので、ビーズ材の移動範囲が制限される。これにより、荷重受け部が区画されない場合に比べ、荷重受け部におけるビーズ材の密度が高くなり、乗員による入力がセンサに伝わらないことを効果的に抑制できる。また、荷重受け部が、センサごとに区画されてセンサごとに形成されることで、センサへの入力荷重がセンサごとに支持又は伝達される。これにより、センサが、センサごとに独立して動作し、誤検知などが抑制される。
【0018】
請求項6の発明では、複数の前記センサは、減速、加速及び方向転換の各操作における乗員の入力をそれぞれ検知する減速用センサ、加速用センサ及び方向転換用センサで構成される。
【0019】
請求項6の構成によれば、減速、加速、方向転換の機能が乗り物用シートに集約されると共に、減速、加速、方向転換の各操作における乗員の入力を、乗り物用シートを通じて行うことができる。
【0020】
請求項7の発明では、前記減速用センサ及び前記加速用センサは、前記着座部に対する前記制限部側における前記ビーズクッション上に配置され、前記方向転換用センサは、前記着座部に対する前記制限部側における前記ビーズ材の下側、又は、前記ビーズクッションの側部側における前記ビーズ材と前記制限部との間に配置され、前記荷重受け部は、前記減速用センサへの入力荷重を支持可能となる荷重受け部と、前記加速用センサへの入力荷重を支持可能となる荷重受け部と、前記方向転換用センサへの入力荷重を伝達可能となる荷重受け部と、で構成される。
【0021】
請求項7の構成によれば、減速、加速の各操作における乗員の入力をそれぞれ検知する複数のセンサが、ビーズクッション上に集約されるので、減速、加速の各操作における乗員の入力の切り替えが、素早く行える。また、方向転換の操作における乗員の入力を検知する方向転換用センサを、減速、加速の各操作における乗員の入力をそれぞれ検知する複数のセンサと異なる場所に配置することで、方向転換用センサを独立して動作させることができる。
【0022】
請求項8の発明では、前記減速用センサ及び前記加速用センサは、乗員の手及び肘のそれぞれによる入力を検知するセンサであり、前記方向転換用センサは、前記着座部に対する左右側の下方にそれぞれ配置され、乗員が左右に体を傾けることによる臀部での入力を検知するセンサである。
【0023】
請求項8の構成によれば、乗員の手、肘及び臀部という体の各部分を用いて、乗り物を操作することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、上記構成としたので、乗員のホールド性が確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
(車両用シート10の構成)
まず、乗り物用シートの一例としての車両用シート10の構成について説明する。
【0027】
車両用シート10は、
図1に示されるように、ビーズ材12が封入されたビーズクッション20と、ビーズクッション20を覆うカバー40と、底板50と、を備えている。車両用シート10では、
図2に示されるように、カバー40で覆われた状態のビーズクッション20に対して乗員Hが着座する。
【0028】
ビーズクッション20は、具体的には、
図3に示されるように、乗員Hが着座する着座部23を有する第1クッション21と、乗員Hが寄り掛かる背もたれ部24を有する第2クッション22と、を有して構成されている。
【0029】
第1クッション21は、上下方向に厚みを有する扁平状に形成されており、側面視(
図4参照)及び平面視にて、前後方向に長さを有する長方形状をしている。第2クッション22は、平面視にて、左右方向に長さを有する長方形状をしており、側面視にて(
図4参照)、前方側が鋭角にされた三角形状をしている。第2クッション22の底面の四隅のそれぞれが、紐などの固定部材により、第1クッション21の上面の後部に固定されている。
【0030】
第1クッション21及び第2クッション22は、それぞれ、ビーズ材12と、ビーズ材12が封入された伸縮性を有する袋状の布と、を有して構成されている。当該布は、例えば、ポリエステルとポリウレタンとを混合した化学繊維などで形成されている。
【0031】
ビーズ材12は、発泡ビーズ(粒状の発泡体)である。ビーズ材12としては、例えば、ポリスチレン発泡ビーズやポリエチレン発泡ビーズなどが用いられる。なお、ポリエチレン発泡ビーズは、ポリスチレン発泡ビーズよりもへたり難いので、補てんせずに長期に使用が可能である。
【0032】
カバー40は、
図1及び
図2に示されるように、ビーズクッション20の全体を覆う袋状の布で構成されている。カバー40は、具体的には、着座部23及び背もたれ部24に相当する部分を含む上部が伸縮性を有する伸縮布42で構成され、底部、前部、後部及び両側の側部が伸縮布42よりも伸縮性が低い制限布44で構成されている。なお、例えば、カバー40の一部とビーズクッション20の一部とが縫製されて、ビーズクッション20に対してカバー40が位置決めされる。
【0033】
この制限布44によって、乗員が着座部23に着座した際におけるビーズクッション20内のビーズ材12の前方、後方及び側方への移動を制限する。すなわち、制限布44は、ビーズ材12の前方、後方及び側方への移動を制限する制限部の一例として機能する。なお、伸縮布42は、例えば、ポリエステルとポリウレタンとを混合した化学繊維など形成され、制限布44は、例えば、綿などで形成されている。また、伸縮布42を編み物で構成することで伸縮性を持たせ、制限布44を織物で構成することで伸縮布42よりも低い伸縮性を持たせるようにしてもよい。
【0034】
底板50は、例えば、樹脂板又は金属板で構成され、カバー40で覆われた状態のビーズクッション20を支持する支持部として機能する。底板50上における着座部23の直下の位置には、
図3及び
図4に示されるように、上下方向に厚みを有する板状(座布団状)のクッション52が配置されている。クッション52は、例えば、発泡ウレタンなどの硬質スポンジで構成されている。
【0035】
さらに、車両用シート10は、乗り物の一例としての車両(自動車)を操作するための乗員による入力を検知するセンサ60、62、64を備えている。このセンサ60、62、64は、具体的には、圧力センサで構成されている。
【0036】
センサ60、62、66は、平面視にて、着座部23に対する制限布44側に設けられている(
図6、
図7及び
図8参照)。具体的には、センサ60は、
図3に示されるように、ビーズクッション20の第1クッション21上の前方側であって、着座部23に対する右側及び左側にそれぞれ前後一対ずつ配置されている。センサ62は、ビーズクッション20の第2クッション22上におけるセンサ60の後方側であって、背もたれ部24に対する右側及び左側にそれぞれ前後一対ずつ配置されている。
【0037】
センサ64は、ビーズクッション20(カバー40)の下側であって、底板50上におけるクッション52に対する右側及び左側のそれぞれに8個ずつ配置されている。具体的には、センサ64は、4個が前後方向に並べられて列を構成し、その列が、クッション52に対する右側及び左側のそれぞれに、2つずつ配置されている。
【0038】
ビーズクッション20上に配置された前後一対のセンサ60、62は、具体的には、
図5に示されるように、ビーズクッション20上に接着や縫製などにより固定されたプラスチックなどの薄板78上に配置されている。そして、薄板78上の一対のセンサ60、62及び薄板78を覆う布79の周囲が、ビーズクッション20の上面に縫い付けられている。
【0039】
なお、
図4、
図6、
図7及び
図8では、薄板78及び布79の図示を省略している。また、布79とビーズクッション20とで囲まれた空間内にビーズ材12を封入してもよい。また、
図6、
図7及び
図8は、それぞれ、
図2に示す6−6線断面図、7−7線断面図及び8−8線断面図である。
図2に示す6−6線、7−7線及び8−8線は、ビーズクッション20との位置関係を示すべく、
図3にも図示している。
【0040】
ここで、本実施形態では、
図3及び
図4に示されるように、ビーズクッション20の第1クッション21が、前後3つに区画されている。具体的には、第1クッション21における上下の布が、4個のセンサ60の後方側であって16個のセンサ64の前方側において、左右方向に沿って縫製されている。さらに、第1クッション21における上下の布が、16個のセンサ64の後方側で左右方向に沿って縫製されている。これにより、第1クッション21における4個のセンサ60と16個のセンサ64との間の位置と、16個のセンサ64の後方側の位置に、仕切部分70、74が形成される。この仕切部分70、74が形成されることで、第1クッション21が、前後3つに区画される。
【0041】
そして、第1クッション21における仕切部分70の前方側の領域において、乗員Hの着座部23への着座状態において非着座状態よりもビーズ材12の密度が高くなることで、センサ60への入力荷重を支持可能となる荷重受け部80が、ビーズ材12で形成される。なお、荷重受け部80は、少なくとも、平面視における着座部23に対する制限布44側であって、センサ60の下側でビーズ材12の密度が高くなればよい。
【0042】
第1クッション21における仕切部分70と仕切部分74との間の領域において、乗員Hの着座部23への着座状態において非着座状態よりもビーズ材12の密度が高くなることで、センサ60への入力荷重を伝達可能となる荷重受け部84が、ビーズ材12で形成される。なお、荷重受け部84は、少なくとも、平面視における着座部23に対する制限布44側であって、センサ64の上側でビーズ材12の密度が高くなればよい。
【0043】
さらに、本実施形態では、ビーズクッション20の第2クッション22が、前後2つに区画されている。具体的には、第2クッション22における上下の布が、4個のセンサ62の後方側で左右方向に沿って縫製されている。これにより、第2クッション22における4個のセンサ62の後方側の位置に、仕切部分72が形成される。この仕切部分72が形成されることで、第2クッション22が、前後2つに区画される。
【0044】
そして、第2クッション22における仕切部分72の前方側の領域において、乗員Hの着座部23への着座状態において非着座状態よりもビーズ材12の密度が高くなることで、センサ62への入力荷重を支持可能となる荷重受け部82が、ビーズ材12で形成される。なお、荷重受け部82は、少なくとも、平面視における着座部23に対する制限布44側であって、センサ62の下側でビーズ材12の密度が高くなればよい。
【0045】
センサ60は、例えば、減速操作(制動操作)をするための乗員Hの入力を検知するための減速用センサとされる(ブレーキ機能)。乗員Hの入力操作は、例えば、着座状態の乗員Hが手H1で、カバー40を介してセンサ60を下側に押すことによってなされる。
【0046】
センサ62は、例えば、加速操作(発進操作)をするための乗員Hの入力を検知するための加速用センサとされる(アクセル機能)。乗員Hの入力操作は、例えば、着座状態の乗員Hが肘H2によってカバー40を介してセンサ62を下側に押すことによってなされる。
【0047】
本実施形態では、例えば、センサ60とセンサ62との距離が、乗員Hの想定される手H1と肘H2との間の距離よりも長くされている。すなわち、センサ60とセンサ62とに対して同時に入力ができないようになっている。
【0048】
センサ64は、例えば、車両の左右への操舵(方向転換操作)をするための乗員Hの入力を検知するための方向転換用センサとされる(ステア機能)。乗員Hの入力操作は、例えば、着座状態の乗員Hが体を左右へ振ることで、臀部H3によってなされる。具体的には、着座状態の乗員Hが体を左に傾けることで、臀部H3によって、クッション52に対する左側の荷重受け部84を押して(圧迫して)、センサ64へ入力し、車両の車輪を左へ転舵させる。また、着座状態の乗員Hが体を右に傾けることで、臀部H3によって、クッション52に対する右側の荷重受け部84を押して(圧迫して)、センサ64へ入力し、車両の車輪を右へ転舵させる。
【0049】
このように、ビーズクッション20上で手、肘を下方へ動作させてセンサ60、62に入力されるのに対して、センサ64への入力は、ビーズクッション20上で体を左右へ動作させて行われる。すなわち、センサ64への入力は、センサ60、62へ入力する際の手、肘の動作方向に対して、直交する動作によってなされる。
【0050】
なお、各センサ60、62、64では、複数のセンサ60、62、64ごとに入力された圧力の和を求めて、信号を生成し、車両の駆動機構を駆動するようになっている。
【0051】
(車両用シート10の作用)
次に、車両用シート10の作用を説明する
【0052】
本実施形態の構成によれば、カバー40で覆われた状態のビーズクッション20の着座部23に、乗員Hが着座すると(
図2参照)、乗員Hの体に沿ってビーズクッション20が凹む。
【0053】
また、カバー40の制限布44によって、ビーズクッション20内のビーズ材12の前方、側方及び後方への移動が制限されるため、着座部23に対する前部側、側部側及び後部側でビーズクッション20が潰れにくく、着座部23に対する前部側、側部側及び後部側が上方へ盛り上がった状態(凸状)に維持されやすい。これにより、乗員Hの体がビーズクッション20に保持されて、乗員Hのホールド性が確保できる。すなわち、車両が移動している際に乗員Hへ掛かる荷重(横G等)によって、乗員Hの着座姿勢が崩れることが抑制される。
【0054】
また、カバー40で覆われた状態のビーズクッション20の着座部23に、乗員Hが着座すると(
図2参照)、以下のように、ビーズクッション20内のビーズ材12が移動する。
【0055】
ビーズクッション20の第1クッション21における仕切部分70の前方側に形成された荷重受け部80では、
図6に示されるように、着座部23に着座する乗員Hの大腿部H4によって第1クッション21内のビーズ材12が押される。押されたビーズ材12は、仕切部分70によって後方への移動が制限されながら、左右側へ移動する。これにより、荷重受け部80では、少なくとも、センサ60の下側において、非着座状態よりもビーズ材12の密度が高くなり、センサ60への入力荷重を支持可能となる。
【0056】
また、ビーズクッション20の第1クッション21における仕切部分70と仕切部分74との間の荷重受け部84では、
図7に示されるように、乗員Hの臀部H3によって第1クッション21内のビーズ材12が押される。押されたビーズ材12は、仕切部分70と仕切部分74とによって前後方向への移動が制限されながら、左右側へ移動する。これにより、荷重受け部84では、少なくとも、センサ64の上側において、非着座状態よりもビーズ材12の密度が高くなり、センサ64への入力荷重を伝達可能となる。
【0057】
ビーズクッション20の第2クッション21における仕切部分72の前方側の荷重受け部82では、
図8に示されるように、乗員Hの上体H5によって第2クッション22のビーズ材12が押される。押されたビーズ材12は、仕切部分72によって後方への移動が制限されて、左右側へ移動する。これにより、荷重受け部82では、少なくとも、センサ62の下側において、非着座状態よりもビーズ材12の密度が高くなり、センサ62への入力荷重を支持可能となる。
【0058】
そして、着座部23に着座した状態の乗員Hが、
図6に示されるように、手H1で、カバー40を介してセンサ60を下側に押すことで、車両の減速操作が行われる。また、着座部23に着座した状態の乗員Hが、
図8に示されるように、肘H2で、カバー40を介してセンサ62を下側に押すことで、車両の加速操作が行われる。
【0059】
さらに、着座部23に着座した状態の乗員Hが、体を左右に振ることで、臀部H3によって、カバー40及びビーズクッション20を介して、センサ62を押すことで、車両の操舵が行われる(
図7参照)。具体的には、着座状態の乗員Hが体を左に傾けることで、臀部H3によって、クッション52に対する左側の荷重受け部84を押して(圧迫して)、センサ64へ入力し、車両の車輪を左へ転舵させる。また、着座状態の乗員Hが体を右に傾けることで、臀部H3によって、クッション52に対する右側の荷重受け部84を押して(圧迫して)、センサ64へ入力し、車両の車輪を右へ転舵させる。
【0060】
このように、本実施形態では、減速(ブレーキ)、加速(アクセル)、操舵(ステア)の機能が車両用シート10に集約されると共に、減速、加速、操舵の各操作における乗員Hの入力を、車両用シート10を通じて行うことができる。
【0061】
特に、減速、加速の各操作における乗員Hの入力をそれぞれ検知する複数のセンサ60、62が、ビーズクッション20上に集約されるので、減速、加速の各操作における乗員Hの入力の切り替えが、素早く行える。また、操舵における乗員Hの入力を検知する操舵用センサ64を、センサ60、62と異なる場所に配置することで、センサ64を独立して動作させることができる。
【0062】
さらに、本実施形態の構成では、乗員Hの着座部23への着座によって着座部23側から制限布44側へ移動したビーズ材12の側方への移動が制限布44で制限されることで、制限布44を有さない場合に比べ、荷重受け部80、82、84でのビーズ材12の密度が高くなる。これにより、荷重受け部80、82、84の支持部又は伝達部としての剛性(強度)が高まる。
【0063】
したがって、柔らかいビーズクッション20上に配置されたセンサ60、62へ乗員Hが入力しても、荷重受け部80、82がセンサ60、62への入力荷重を支持し、ビーズクッション20が沈み込みにくく、乗員Hによる入力がセンサ60、62に伝わらないことを抑制できる。また、ビーズクッション20の下に配置されたセンサ64へ、柔らかいビーズクッション20を介して乗員Hが入力しても、荷重受け部84がセンサ64への入力荷重を伝達するので、乗員Hによる入力がセンサ64に伝わらないことを抑制できる。
【0064】
さらに、本実施形態では、荷重受け部80、82、84が、センサ60、62、64ごとに区画されてセンサ60、62、64ごとに形成されるので、ビーズ材12の移動範囲が制限される。これにより、荷重受け部80、82、84が区画されない場合に比べ、荷重受け部80、82、84におけるビーズ材12の密度が高くなり、乗員Hによる入力がセンサ60、62、64に伝わらないことを効果的に抑制できる。
【0065】
また、荷重受け部80、82、84が、センサ60、62、64ごとに区画されてセンサ60、62、64ごとに形成されることで、センサ60、62、64への入力荷重がセンサ60、62、64ごとに支持又は伝達される。これにより、センサ60、62、64が、センサ60、62、64ごとに独立して動作し、誤検知などが抑制される。
【0066】
このように、本実施形態では、ビーズ材12で形成された荷重受け部80、82、84が、センサ60、62、64への入力荷重を支持又は伝達するので、ビーズクッション20内に入力荷重を支持又は伝達するための剛性がある支持部材や伝達部材を設ける必要がない。これにより、ビーズクッション20の柔らかく、乗員Hの体を包み込むような質感が失われない。
【0067】
さらに、本実施形態では、クッション52が、着座部23の下方におけるビーズクッション20の下に配置されているので、着座部23に着座した乗員Hの臀部H3が、底板50に底付きすることを抑制できる。また、着座部23に乗員Hが着座することで、着座部23とクッション52との間のビーズ材12が制限布44側へ移動して、荷重受け部84が形成される。これにより、クッション52を有さない場合に比べ、荷重受け部84におけるビーズ材12の密度が高くなり、乗員Hによる入力がセンサ64に伝わらないことを効果的に抑制できる。
【0068】
(変形例)
上記実施形態では、センサ64が底板50上に配置されていたが、これに限られない。
センサ64は、第1クッション21内のビーズ材12の下側に配置されていてもよい。この場合では、例えば、センサ64は、第1クッション21における下側の布の上面に固定される。また、センサ64は、第1クッション21の側部側におけるビーズ材12と制限布44との間に配置されてもよい。具体的には、センサ64は、例えば、第1クッション21の側面と制限布44との間に配置される。
【0069】
また、上記実施形態では、カバー40が制限布44を有していたが、これに限られず、ビーズクッション20が制限布44を有していてもよい。具体的には、例えば、ビーズクッション20を構成する布の側部に制限布44に縫い付けるなどして固定してもよい。また、ビーズクッション20を構成する布の側部自体を制限布44で構成してもよい。ビーズクッション20が制限布44を有する場合では、カバー40はなくてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、制限部として制限布44を用いたが、これに限られず、例えば、樹脂などで形成されたフィルムや板状部材を用いてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、センサ60が減速用センサとされ、センサ62が加速用センサとされ、センサ64が方向転換用センサとされていたが、これに限られない。例えば、センサ62が減速用センサとされ、センサ60が加速用センサとされていてもよい。また、センサ60及びセンサ62において着座部23に対する右側に配置された右側のセンサが、減速用センサ及び加速用センサの一方とされ、センサ60及びセンサ62において着座部23に対する左側に配置された左側のセンサが、減速用センサ及び加速用センサの他方とされていてもよい。また、当該右側のセンサが、右側に方向転換するためのセンサとされ、当該左側のセンサが、左側に方向転換するためのセンサとされていてもよい。このように、センサ60、62、64において、用途を組み替えることが可能である。
【0072】
さらに、センサ60、62、64は、減速、加速、操舵の各操作における乗員Hの入力を検知していたが、これに限られない。センサ60、62、64は、例えば、車両におけるワイパーやウインドなどの操作における乗員Hの入力を検知してもよく、車両における他の操作における乗員Hの入力を検知するように構成してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、乗り物用シートの一例としての車両用シート10について説明したが、乗り物用シートとしては、車両以外の乗り物(例えば、船舶、鉄道、航空機)に用いられるシートであってもよい。
【0074】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成しても良い。