特許第6331907号(P6331907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331907
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20180521BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20180521BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   H01L29/80 H
   H01L29/80 F
   H01L29/80 M
   H01L29/78 613B
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 618E
   H01L29/78 617T
   H01L29/78 617U
   H01L29/78 617N
   H01L29/78 371
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-185313(P2014-185313)
(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公開番号】特開2016-58622(P2016-58622A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樽見 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】小山 和博
(72)【発明者】
【氏名】松井 正樹
(72)【発明者】
【氏名】樋口 安史
(72)【発明者】
【氏名】大竹 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】加地 徹
(72)【発明者】
【氏名】菊田 大悟
【審査官】 杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−130672(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/190997(WO,A1)
【文献】 特開平05−347417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/336
H01L 29/78
H01L 29/788
H01L 29/792
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半絶縁性もしくは半導体にて構成される基板(1)と、
前記基板上に形成され、ヘテロジャンクション構造を構成する第1のGaN系半導体層(3)および前記第1のGaN系半導体層よりもバンドギャップエネルギーが大きく電子供給部を構成する第2のGaN系半導体層(4)を有し、前記第2のGaN系半導体層が部分的に除去されることで凹部(4a)が形成されたチャネル形成層と、
前記凹部上に、第1ゲート絶縁膜(5)、浮遊ゲート層(6)、第2ゲート絶縁膜(7)およびゲート電極(8)が積層されることで構成されたゲート構造体と、
前記チャネル形成層上において、前記ゲート構造体を挟んだ両側に配置されたソース電極(9)およびドレイン電極(10)と、を有する横型高電子移動度トランジスタを備え、
前記第1ゲート絶縁膜および前記第2ゲート絶縁膜がシリコン酸化膜よりも電子に対して高い障壁を有した絶縁膜で構成されており、
前記第1ゲート絶縁膜と前記浮遊ゲート層および前記第2ゲート絶縁膜が更に前記第1ゲート絶縁膜および前記第2ゲート絶縁膜よりも正孔に対して高い障壁を有した絶縁膜で構成される第3ゲート絶縁膜(11)および第4ゲート絶縁膜(12)によって挟み込まれていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1ゲート絶縁膜および前記第2ゲート絶縁膜はダイヤモンド膜によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第3ゲート絶縁膜および前記第4ゲート絶縁膜はシリコン酸化膜によって構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体である窒化ガリウム(以下、GaNという)とのヘテロジャンクション構造を有する半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
GaNや窒化アルミニウムガリウム(以下、AlGaNという)などの窒化物系半導体は、従来より用いられているシリコン(以下、Siという)などの半導体に比べてエネルギーバンドギャップが広いため、高温・高耐圧デバイス用半導体として優れている。AlGaN/GaN等のヘテロジャンクション構造の作製が可能であり、その構造を有する横型のFETであるHEMT(High electron mobility transistor:高電子移動度トランジスタ)の開発が盛んに行われている。
【0003】
AlGaN/GaNによるヘテロジャンクション界面には、自発分極および圧電効果(ピエゾ効果)によってAlGaN側にプラスの電荷が発生し、その結果、GaN側にマイナスの電荷(電子)が蓄積される。この蓄積電子はAlGaNにドーピングを行わなくても、高濃度の二次元電子ガス(以下、2DEGという)を形成し、チャネル抵抗、すなわちFETのオン抵抗を小さくできる効果がある。
【0004】
一方、通常電力の制御に使われているインバータやコンバータにおいては、ゲートに信号が入っていない時、FETに電流が流れない、いわゆるノーマリオフ型のFETが使われる。しかしながら、AlGaN/GaN系HEMTでは、自発分極および圧電効果の為に、ゲートに信号が入っていない時(ゲート電圧ゼロの時)、2DEGをゼロにすることが難しい。
【0005】
例えば、AlGaN/GaN系HEMTにおいて、ゲートに信号が入っていないとき、FETに電流が流れないノーマリオフ状態(エンハンスメント・モード)を達成できる構造の一つとして、例えば特許文献1に示されたメモリー膜構造が挙げられる。このメモリー膜構造では、浮遊ゲート層に、予め負の電荷を付与することにより、AlGaN/GaN系HEMTのしきい値電圧(Vth)をノーマリオフ型に必要な正の電圧にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−311782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、浮遊ゲート層に注入した電荷は抜けやすく、経時劣化によってノーマリオフ状態を維持できなくなるなど、信頼性に乏しいという問題がある。これは、浮遊ゲート層をサンドイッチしている絶縁膜の障壁高さが低く、長い時間電荷が保持できず抜けてしまうためである。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、浮遊ゲート層からの電荷抜けを防ぎ、経時劣化によってノーマリオフ状態が維持できなくなることを防ぐことが可能な、信頼性の高い横型HEMTを有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、半絶縁性もしくは半導体にて構成される基板(1)と、基板上に形成され、ヘテロジャンクション構造を構成する第1のGaN系半導体層(3)および第1のGaN系半導体層よりもバンドギャップエネルギーが大きく電子供給部を構成する第2のGaN系半導体層(4)を有し、第2のGaN系半導体層が部分的に除去されることで凹部(4a)が形成されたチャネル形成層と、凹部上に、第1ゲート絶縁膜(5)、浮遊ゲート層(6)、第2ゲート絶縁膜(7)およびゲート電極(8)が積層されることで構成されたゲート構造体と、チャネル形成層上において、ゲート構造体を挟んだ両側に配置されたソース電極(9)およびドレイン電極(10)と、を有する横型HEMTを備え、第1ゲート絶縁膜および第2ゲート絶縁膜がシリコン酸化膜よりも電子に対して高い障壁を有した絶縁膜で構成されており、第1ゲート絶縁膜と浮遊ゲート層および第2ゲート絶縁膜が更に第1ゲート絶縁膜および第2ゲート絶縁膜よりも正孔に対して高い障壁を有した絶縁膜で構成される第3ゲート絶縁膜(11)および第4ゲート絶縁膜(12)によって挟み込まれていることを特徴としている。
【0010】
このように、浮遊ゲート層をシリコン酸化膜よりも電子に対して高い障壁を有する第1、第2ゲート絶縁膜によって挟み込んだ構造としている。このため、浮遊ゲート層に注入された電荷が抜け難くなり、経時劣化によってノーマリオフ状態が維持できなくなることを抑制できる。したがって、横型HEMTを信頼性の高い素子とすることが可能になる。
【0011】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態にかかる横型HEMTを有する半導体装置の断面構成を示す図である。
図2】第1実施形態の横型HEMTの浮遊ゲート層6に対して負の電荷を注入した後のエネルギーバンド図である。
図3】従来のようにダイヤモンド膜を用いていない構造の横型HEMTの浮遊ゲート層に対して負の電荷を注入した後のエネルギーバンド図である。
図4】本発明の第2実施形態にかかる横型HEMTを有する半導体装置の断面構成を示す図である。
図5】第2実施形態の横型HEMTの浮遊ゲート層6に対して負の電荷を注入した後のエネルギーバンド図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
図1図3を参照して、本実施形態にかかる横型HEMTを備えた半導体装置について説明する。
【0015】
図1に示すように、横型HEMTは、基板1の表面に、バッファ層2を介してi型もしくはn型のGaN層3およびAlGaN層4が積層された構造を化合物半導体基板として用いて形成されている。横型HEMTは、化合物半導体基板のうちのGaN層3およびAlGaN層4をチャネル形成層として、AlGaN/GaN界面のGaN層3側に、ピエゾ効果および分極効果により図中破線で示した2DEGキャリアが誘起されることで動作する。
【0016】
基板1は、Si(111)やSiCもしくはサファイヤなどの半絶縁性材料や半導体材料によって構成されており、この上にGaN層3を結晶性良く成膜するための下地膜となるバッファ層2が形成されている。バッファ層2は、例えばAlGaN−GaN超格子層などによって構成されている。基板1の上に結晶性良くGaN層3が成膜できる場合には、バッファ層2は無くても構わない。なお、ここでの結晶性とは、GaN層3中の欠陥や転位などであり、電気的および光学的な特性に対して影響を及ぼすものを意味している。
【0017】
バッファ層2の上には、GaN層3とAlGaN層4が例えばヘテロエピタキシャル成長によって形成されている。GaN層3は、i−GaNもしくはp−GaN系の半導体材料である第1のGaN系半導体材料で構成されたものであり、第1のGaN系半導体層に相当するものである。AlGaN層4は、第1のGaN系半導体材料よりもバンドギャップエネルギーの大きな第2の半導体材料で構成されたものであり、第2のGaN系半導体層に相当し、電子供給部を構成している。
【0018】
AlGaN層4のうちゲート領域と対応する部分が部分的に除去されることで凹部(リセス部)4aが形成されている。そして、このAlGaN層4が除去された凹部4a内に第1ゲート絶縁膜5、浮遊ゲート層6、第2ゲート絶縁膜7およびゲート電極8が順に積層されることでゲート構造体が構成されている。
【0019】
第1、第2ゲート絶縁膜5、7は、シリコン酸化膜(SiO2)よりも電子に対して高い障壁を持つ絶縁膜によって構成されている。本実施形態では、第1、第2ゲート絶縁膜5、7をダイヤモンド膜によって構成している。浮遊ゲート層6は、不純物がドープされたPoly−Siなどによって構成されており、ゲート電極8などから電気的に分離された浮遊状態とされ、負の電荷が注入された電荷蓄積層とされている。この電荷は、例えば、一般的にメモリにおける電荷注入と同様の手法によって注入されている。すなわち、ゲートに駆動電圧以上の電圧をかけることで電子を注入する。ゲート電極8は、アルミニウムまたは不純物がドープされたPoly−Siなどによって構成されている。
【0020】
一方、AlGaN層4の表面のうちゲート構造体を挟んだ両側それぞれにソース電極9とドレイン電極10が形成されている。そして、ソース電極9やドレイン電極10がAlGaN層4に対してそれぞれオーミック接触させられている。
【0021】
このように、第1のGaN系半導体層をGaN層3で構成すると共に第2のGaN系半導体層をAlGaN層4で構成し、AlGaN層4に設けた凹部4aに、ゲート構造体を構成している。そして、ゲート構造体としてゲート電極8に加えて浮遊ゲート層6を備え、浮遊ゲート層6をダイヤモンド膜によって構成された第1、第2ゲート絶縁膜5、7によって挟み込んだ構成としている。このような構造により、第1、第2ゲート絶縁膜5、7を介して浮遊ゲート層6およびゲート電極8が備えられたゲート構造体によるMOS構造が構成され、本実施形態にかかる横型HEMTが構成されている。
【0022】
なお、図示していないが、ゲート電極8やソース電極9およびドレイン電極10の表面には、それぞれ、Alなどで構成されるゲート配線層やソース配線層およびドレイン配線層が形成されている。これらは、層間絶縁膜を介して電気的に分離されており、各電極に任意の電圧が印加できるようになっている。
【0023】
このように構成される横型HEMTは、ゲート電極8に対するゲート電圧を制御することでMOS動作(スイッチング動作)を行う。
【0024】
まず、ゲート電極8に対して電圧印加を行うか否かにかかわらず、GaN/AlGaN界面におけるGaN層3側に、ピエゾ効果および分極効果により図中破線で示した2DEGキャリアが誘起されている。
【0025】
そして、ゲート電極8に対してゲート電圧を印加する前においては、浮遊ゲート層6に対して負の電荷が注入されていて、しきい値電圧(Vth)が正の電圧に調整されていることから、凹部4aの底部にチャネルが形成されない。このため、ドレインに高電圧が印加されていてもソース−ドレイン間に電流が流れない。つまり、ゲート電圧を印加していない状態では横型HEMTはオフ状態となる。
【0026】
これに対して、ゲート電極8に対してゲート電圧として正電圧を印加すると、凹部4aの底部に位置するGaN層3の表面部に電子が誘起され、チャネルが形成される。このため、2DEGキャリアおよび電子によって形成されたチャネルを通じてソース−ドレイン間に電流が流れる。つまり、横型HEMTはオンの状態になる。
【0027】
このように、本実施形態の横型HEMTは、ゲート電圧が印加されていないときにはオフ状態となり、ゲート電圧が印加されるとオン状態になるノーマリオフ型の素子なる。
【0028】
このような横型HEMTにおいて、本実施形態では、浮遊ゲート層6をダイヤモンド膜で構成された第1、第2ゲート絶縁膜5、7によって挟み込んだ構造としている。このため、浮遊ゲート層6に注入された電荷が抜け難くなり、経時劣化によってノーマリオフ状態が維持できなくなることを抑制できる。したがって、本実施形態の横型HEMTを信頼性の高い素子とすることが可能になるという効果が得られる。
【0029】
この理由について、図2および図3に、本実施形態の構造や従来のようにダイヤモンド膜を用いていない従来の構造の横型HEMTの浮遊ゲート層6に対して負の電荷を注入した後のエネルギーバンド図を示し、これらの図を参照して説明する。なお、ここでは、浮遊ゲート層6をPoly−Siによって構成した場合のエネルギーバンド図としてある。また、参考として、表1に横型HEMTの構成材料別のエネルギーバンドギャップ、電子親和力χ、比誘電率を示す。値は文献により少しの違いはあるが、大小関係は維持されるため、本文の主張は変わらない。
【0030】
【表1】
【0031】
図3に示すように、従来では、図2に示した本実施形態の横型HEMTにおける第1、第2ゲート絶縁膜5、7の部分をシリコン窒化膜(SiN)やシリコン酸化膜(SiO2)で形成していた。表1から分かるように、Poly−Si(Si)の電子親和力χは約4.5eV、シリコン窒化膜(SiN)の電子親和力χは約3.0eVである。このため、図3中に示したように、浮遊ゲート層6を構成するPoly−Siと第1ゲート絶縁膜5を構成するシリコン窒化膜との電子親和力の差が1.5eVと小さな障壁となる。また、シリコン酸化膜の場合、シリコン窒化膜よりは大きな値となるが、浮遊ゲート層6を構成するPoly−Siと第2ゲート絶縁膜7を構成するシリコン酸化膜との障壁高さも小さな値となる。このように、障壁高さが小さいため、浮遊ゲート層6に対して負の電荷を注入しても、経年減衰によってシリコン窒化膜もしくはシリコン酸化膜側から電荷が抜けてしまい、ノーマリオフ状態が維持できなくなって、横型HEMTが信頼性に乏しい素子になっていた。
【0032】
これに対して、本実施形態の横型HEMTでは、第1、第2ゲート絶縁膜5、7をダイヤモンド膜(C)で形成している。表1に示されるように、Poly−Si(Si)の電子親和力χは4.5eV、ダイヤモンド(C)の電子親和力χは0.5eVである。このため、図2中に示したように、浮遊ゲート層6を構成するPoly−Siと第1、第2ゲート絶縁膜5を構成するダイヤモンド膜との電子親和力の差が4eVと大きな障壁となる。このように、電子に対する障壁高さが大きくなるため、浮遊ゲート層6に対して注入された負の電荷が抜け難くなる。このため、経年減衰が生じ難くなり、ノーマリオフ状態を維持できて、横型HEMTの信頼性を向上させることが可能となる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の構成により、浮遊ゲート層6からの電荷抜けを防ぎ、経時劣化によってノーマリオフ状態が維持できなくなることを防ぐことが可能な、信頼性の高い横型HEMTを有する半導体装置とすることが可能となる。
【0034】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して更に浮遊ゲート層6に注入した電荷が消滅することを防止できるようにしたものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0035】
図4に示すように、本実施形態では、浮遊ゲート層6を第1、第2ゲート絶縁膜5、7で挟み込んだ構造を、更にダイヤモンドよりも正孔に対して高い障壁を有する材料で構成された第3、第4ゲート絶縁膜11、12で挟み込んだ構造としている。すなわち、凹部4a内において、第3ゲート絶縁膜11、第1ゲート絶縁膜5、浮遊ゲート層6、第2ゲート絶縁膜7、第4ゲート絶縁膜12の順に積層され、さらにその上にゲート電極8が形成された構造としている。例えば、シリコン酸化膜(SiO2)によって第3、第4ゲート絶縁膜11、12を形成している。
【0036】
このように、第1、第2ゲート絶縁膜5、7で挟み込んだ浮遊ゲート層6を更に第1、第2ゲート絶縁膜5、7を構成してるダイヤモンド膜よりも正孔に対して高い障壁を有する材料で構成された第3、第4ゲート絶縁膜11、12で挟み込むようにしている。この構造によりホールがフローティングゲートに入ってこないため、既に注入した電子と再結合しないため、消滅することを防止でき、より信頼性を高めることが可能となる。
【0037】
図5は、本実施形態の横型HEMTの浮遊ゲート層6に対して負の電荷を注入した後のエネルギーバンド図を示している。上記第1実施形態のように、第1、第2ゲート絶縁膜5、7のみによって浮遊ゲート層6を挟み込んだ場合、図2中に示したように、正孔に対する障壁があまり高くないため、正孔が浮遊ゲート層6側に移動する可能性がある。これに対して、図5に示されるように、ダイヤモンド(C)と比較して、シリコン酸化膜(SiO2)の正孔に対する障壁が高いことから、GaN層3やAlGaN層4側となる化合物半導体基板側から浮遊ゲート層6側へ正孔が移動し難い。このため、上記したように、化合物半導体基板側からの正孔が電荷蓄積層となる浮遊ゲート層6に注入した電荷と再結合して消滅することを防止することが可能となる。
【0038】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0039】
例えば、第1、第2実施形態では浮遊ゲート層6をPoly−Siによって構成する場合について説明したが、窒化シリコンゲート(SiNゲート)によって構成することもできる。浮遊ゲート層6をPoly−Siによって構成する場合、第1、第2ゲート絶縁膜5、7にピンホールが存在していると、そこから電荷抜けが発生する可能性がある。これに対して、浮遊ゲート層6をSiNゲートとする場合、窒化シリコンに準位が多く存在していることから、この準位に電荷をトラップさせることが可能となり、第1、第2ゲート絶縁膜5、7にピンホールが存在していたとしても、電荷抜けを抑制できる。
【0040】
また、上記各実施形態では、チャネル形成層を構成する第1のGaN系半導体層および第2のGaN系半導体層がGaN層3およびAlGaN層4によって構成される場合を例に挙げて説明した。しかしながら、これらは一例を示したものであり、GaNを主成分とする第1のGaN系半導体層およびこれよりもバンドギャップエネルギーの大きな第2のGaN系半導体層によってチャネル形成層が構成されるものであれば、他の材料であっても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 半絶縁性基板
3 GaN層
4 AlGaN層
4a 凹部
5、7 第1、第2ゲート絶縁膜
6 浮遊ゲート層
8 ゲート電極
9 ソース電極
10 ドレイン電極
11、12 第3、第4ゲート絶縁膜
図1
図2
図3
図4
図5