(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明のポリ乳酸系樹脂シートを実施するための形態について、詳細に説明する。本発明において「シート」とは、2次元的な構造物、例えば、フィルムおよびプレートなどを含む意味に用いられ、また、「成形品」とは、3次元的な構造物、例えば容器や印刷物など、前記シートに加工が施されたものを含む意味に用いられる。
【0019】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートはポリ乳酸系樹脂を含み、次の条件1を満たすことが重要である。
・条件1:ポリ乳酸系樹脂含有量×耐熱温度×耐熱温度≧320000
(ただし、ポリ乳酸系樹脂含有量は、シートを構成する全成分を100質量%とした際の、ポリ乳酸系樹脂シート中のポリ乳酸系樹脂の含有量(質量%)であり、耐熱温度は、ヒートサグ値が30mm未満であった温度のなかで、もっとも高い温度(℃)である。)
本発明で定義する耐熱温度とは、具体的には、ギアオーブンを用いて、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃および100℃のそれぞれの温度条件で1時間の熱処理を行ったときのヒートサグ値を測定し、ヒートサグ値が30mm未満であった温度のなかで、もっとも高い温度(℃)のことである。
【0020】
なお、本発明において、上記の条件1は耐熱性パラメータとして表示されることがある。
【0021】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、耐熱性パラメータが320000以上であることが重要であるが、ここで、耐熱性パラメータの意義について説明する。
本発明においては、耐熱性パラメータは、ポリ乳酸系樹脂含有量×耐熱温度×耐熱温度の式により求めることができ、環境性と耐熱性の両立具合の指標となる。本発明における耐熱性パラメータの定義によれば、例えば、ポリ乳酸100質量%で構成されるシートは、耐熱温度は55℃であるため、耐熱性パラメータは302500である(比較例1参照)。また、ポリ乳酸系樹脂シートに耐熱性を付与する方法として、前記特許文献5に例示される、ポリ乳酸樹脂とポリメチルメタクリレートとを混合してポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性を向上させる方法を用いた場合においては、高い耐熱温度を得るためにはポリメチルメタクリレートを多く含有させる必要があり、ポリメチルメタクリレート含有量の増加に伴ってポリ乳酸系樹脂シートの耐熱温度は高くなる傾向ではあるものの、環境性との両立が困難であり、ポリメチルメタクリレート含有量の増加に伴い、耐熱性パラメータは低下する傾向である(比較例2〜4参照)。環境性と耐熱性を両立させる方法として、前記特許文献6〜9に例示される、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有量が異なる複数の層を積層する方法を用いた場合においては、前記のポリ乳酸樹脂とポリメチルメタクリレートとを混合してポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性を向上させる方法と比較して耐熱性パラメータの上昇は見られるものの、生産性との兼ね合いから、実質的に耐熱性パラメータを320000以上とすることは困難であり、高いレベルで環境性と耐熱性を両立しているとは言えないものである(比較例5〜11参照)。
このように、従来の技術によれば、耐熱性パラメータを320000以上とすることは困難であり、すなわち、環境性と耐熱性を高いレベルで両立させることは困難であった。一方で、本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、後述する方法により高いレベルで環境性と耐熱性を両立することができるが、環境性と耐熱性の両立具合の指標として耐熱性パラメータを採用することにより、本発明の効果を、従来の技術と明確に差別化することができるようになる。
【0022】
本発明において、耐熱性パラメータが320000未満では、環境性と耐熱性を両立することができず、環境性に対して耐熱性が劣っていたり、耐熱性に対して環境性が劣っていたりする。本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、耐熱性パラメータが340000以上であることが好ましく、特に好ましくは400000以上である。一方、耐熱性パラメータの上限の値は、特に限定されるものではないが、本発明のポリ乳酸系樹脂シートの技術思想から、植物度が95質量%のときに耐熱温度が85℃であることが実質的な上限であると考えられ、650250が実質的な上限である考えられる。
【0023】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートのポリ乳酸系樹脂含有量は、50質量%以上98質量%以下の範囲であることが好ましく、特に好ましくは75質量%以上95質量%以下である。ポリ乳酸系樹脂含有量が50質量%未満である場合は高い環境性を得ることが困難である場合があり、また、ポリ乳酸系樹脂含有量が98質量%を超える場合は高い耐熱性を得ることが困難である場合がある。
【0024】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートの耐熱温度は、前記条件1を満たすものであるが、実質的に60℃以上90℃以下の範囲となる。耐熱温度が60℃未満である場合は、ブリスターパック等の各種保形具類や、食品トレー、飲料カップなどの容器類、および飲料自動販売機のディスプレイ用ボトルなどの成形体用途に用いることが困難であったり、また、耐熱温度が90℃を超える場合は、環境性と両立させることが困難である場合がある。
【0025】
本発明においては、耐熱性パラメータを320000以上とすることが重要であるが、耐熱性パラメータを制御するための方法としては、ポリ乳酸系樹脂シートのシート構成を制御することが好ましい制御方法である。耐熱性パラメータを制御するための方法について、以下に詳細に説明する。
【0026】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、さらにポリ(メタ)アクリレート系樹脂を含有す
る。ポリ(メタ)アクリレート系樹脂を含有させることにより、前記条件1を満たすことが容易になり、環境性と耐熱性を両立しやすくなる。
【0027】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートに含有させることのできるポリ(メタ)アクリレート系樹脂は、アクリレートおよびメタクリレートから選ばれる少なくとも1種の単量体を構成単位とする樹脂や、2種以上の単量体を共重合して得られる樹脂を用いても構わない。ポリ(メタ)アクリレートを構成するアクリレートおよびメタクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、シアノエチルアクリレートおよびシアノブチルアクリレートなどのアクリレートや、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのメタクリレートが挙げられるが、より高い耐熱性を付与するには、ポリメチルメタクリレートを用いることが好ましい。
【0028】
これらの単量体を重合あるいは共重合する方法については、塊状重合、溶液重合および懸濁重合などの公知の重合方法を用いることができる。
【0029】
ポリ(メタ)アクリレート系樹脂としてポリメチルメタクリレートを用いる場合、ポリ乳酸系樹脂との相溶性の観点、また、積層製膜時における各層の粘度調整の観点から、JIS−K−7210(1999年)に準じて230℃の温度、3.80kgの荷重で測定したポリメチルメタクリレートの流動性が、1〜22g/10minであるものが好ましく、1.5〜15g/10minであるものがさらに好ましく、2〜10g/10minであるものが特に好ましく用いられる。
【0030】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートに含有させることのできるポリ(メタ)アクリレート系樹脂は、重量平均分子量が2万〜50万であることが好ましく、より好ましくは10万〜20万である。重量平均分子量が2万未満である場合はシートの耐衝撃性が悪化する場合があり、また、重量平均分子量が50万を超える場合は積層シートの生産時に積層斑に起因する外観不良が発生したり、成形時の流動性低下を招く場合がある。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーでクロロホルム溶媒にて測定を行い、ポリメチルメタクリレート換算法により計算した分子量をいう。
【0031】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、ポリ乳酸系樹脂を含有する層A、および、ポリ乳酸系樹脂を含有する層Bを有する積層構成とし、層Bが、シートの少なくとも一方の最表層に配置されるシートであ
る。また、層Bを構成する全成分を100質量%とした際の層B中のポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有量(質量%)(すなわち、Zb)が、層Aを構成する全成分を100質量%とした際の層A中のポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有量(質量%)(すなわち、Za)よりも多
い。このような積層構成とすることにより、前記条件1を満たすことが容易になり、環境性と耐熱性を両立しやすくなる。
【0032】
層Aを構成する全成分を100質量%とした際の層A中のポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有量(質量%)(すなわち、Za)は、0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。Zaが5質量%を超えた場合、高い環境性を得にくいことがある。Zaは0質量%以上2質量%以下であることがより好ましく、特に好ましくは0質量%である。
【0033】
また、層Bを構成する全成分を100質量%とした際の層B中のポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有量(質量%)(すなわち、Zb)は、50質量%以上98質量%以下であることが好ましい。Zbが50質量%未満である場合は耐熱性を得にくい場合があり、一方、Zbが98質量%を超える場合は積層シートの生産時に積層斑に起因する外観不良が発生したり、成形時の流動性低下を招いたり、高い環境性を得にくいことがある。Zaは60質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、特に好ましくは70質量%以上90質量%以下である。
【0034】
層構成としては、層B/層Aの2種2層積層構成であってもよいが、シートのカール抑制の観点から、層B/層A/層Bの2種3層積層構成であることが好ましく、さらに、両方の最表層に位置した2つの層Bの積層厚みが同一の厚みであることが特に好ましい態様である。また、層Aおよび層Bに該当しない層を配置しても良く、仮にこの層を層Cとすれば、層B/層C/層A/層C/層B、層B/層A/層C/層A/層Bなどの3種5層積層構成や、層B/層A/層Cの3種3層積層構成としても良い。
【0035】
積層比率としては、シート全体に対する層Aの積層比率が50%以上95%以下であることが好ましく、特に好ましくは75%以上90%以下である。シート全体に対する層Aの積層比率が50%未満である場合は、高い環境性を得ることが困難である場合があり、また、シート全体に対する層Aの積層比率が95%を超える場合は積層シートの生産時に積層斑に起因する外観不良が発生する場合がある。積層比率の確認方法としては、シート断面を、ライカマイクロシステムズ(株)製金属顕微鏡LeicaDMLMを用いて、倍率100倍、透過光で写真撮影し、各層の厚みを測定することにより、シート全体に対する各層の積層比率を算出することができる。
【0036】
また、層Aおよび層Bに含有されるポリ乳酸系樹脂については、層A中のポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量(Ma1)が層B中のポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量(Mb1)よりも大きいことが好ましい。層Aおよび層Bに含有されるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量(Ma1およびMb1)が同等、あるいは層A中のポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量(Ma1)が層B中のポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量(Mb1)よりも小さい場合は、特に、層Bを構成する全成分を100質量%とした際の層B中のポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有量(質量%)(すなわち、Zb)と層Aを構成する全成分を100質量%とした際の層A中のポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有量(質量%)(すなわち、Za)の差が60質量%を超えるときに、積層斑に起因する外観不良が発生するなど生産性の悪化を招く場合がある。
【0037】
層Aおよび層Bに含有されるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量(Ma1およびMb1)は、上述のとおり、Ma1>Mb1の関係であることが好ましいが、Ma1>Mb1+2万の関係であることがより好ましく、Ma1>Mb1+4万の関係であることが特に好ましい態様である。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーでクロロホルム溶媒にて測定を行い、ポリメチルメタクリレート換算法により計算した分子量をいう。また、サンプルが積層シートである場合は、顕微鏡観察しながら、目的でない層を研磨して除外し、目的の層のみで構成されるサンプル片を得てから測定を行うことで確認することが可能である。
【0038】
層A中のポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量を層B中のポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量よりも大きくするための方法としては、層Bの樹脂組成物を供給する押出機の温度条件を層Aの樹脂組成物を供給する押出機の温度条件よりも高く設定すること、層A中のポリ乳酸系樹脂の押出工程における分子量低下を抑制するために公知の末端封鎖剤を添加すること、あるいは、層Aおよび層Bの原料となるポリ乳酸系樹脂にそれぞれ異なる重量平均分子量のポリ乳酸系樹脂を選定することなどを挙げることができる。
【0039】
層A中のポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量を層B中のポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量よりも大きくするための方法として、層Bの樹脂組成物を供給する押出機の温度条件を層Aの樹脂組成物を供給する押出機の温度条件よりも高く設定する方法を選定する場合は、層Bの樹脂組成物を供給する押出機の温度条件を、層Aの樹脂組成物を供給する押出機の温度条件よりも20℃以上40℃以下の温度範囲で高く設定することが好ましい。それぞれの押出機の設定温度の温度差が20℃未満である場合は、積層斑に起因する外観不良や、生産性の悪化を抑制できない場合がある。一方、それぞれの押出機の設定温度の温度差が40℃を超える場合は、層B中のポリ乳酸系樹脂の熱分解等によりシート中に気泡が混入するなどの不具合が発生する場合がある。
【0040】
層A中のポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量を層B中のポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量よりも大きくするための方法として、層A中のポリ乳酸系樹脂の押出工程における分子量低下を抑制するために公知の末端封鎖剤を添加する場合は、添加する末端封鎖剤は、ポリ乳酸系樹脂のカルボキシル末端基または水酸基を封鎖することのできる化合物であればよく、好ましく用いることができる末端封鎖剤としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物を挙げることができ、なかでも、カルボジイミド化合物を用いることが特に好ましい。
【0041】
層A中のポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量を層B中のポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量よりも大きくするための方法として、層Aおよび層Bの原料となるポリ乳酸系樹脂にそれぞれ異なる重量平均分子量のポリ乳酸系樹脂を選定する場合は、2万以上20万以下の重量平均分子量差があるポリ乳酸系樹脂原料を用いることが好ましく、4万以上16万以下の重量平均分子量差があるポリ乳酸系樹脂原料を用いることがより好ましい。層Aおよび層Bの原料となるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量差が20万を超える場合、あるいは、層Aおよび層Bの原料となるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量差が2万未満である場合は、積層斑に起因する外観不良が発生する場合がある。
特に好ましくは、層Aの原料となるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量(すなわち、Ma2)を16万以上24万以下とし、さらに、層Bの原料となるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量(すなわち、Mb2)を8万以上12万以下とすることである。
【0042】
ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーでクロロホルム溶媒にて測定を行い、ポリメチルメタクリレート換算法により計算した分子量をいう。
【0043】
層A中のポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量を層B中のポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量よりも大きくするための方法として、本発明のポリ乳酸系樹脂シートが採用することができる方法を前記のとおり例示したが、生産性および生産コストなどの観点から、層Aおよび層Bの原料となるポリ乳酸系樹脂にそれぞれ異なる重量平均分子量のポリ乳酸系樹脂を選定する方法がもっとも好ましい方法である。
【0044】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、未延伸シート、1軸延伸シート、2軸延伸シート、あるいは2軸延伸シートを再度延伸した再延伸シートのいずれのシートであっても良いが、成形性の観点から、それぞれの延伸軸の延伸倍率の積で示される面倍率が3以下であることが好ましく、特に、ブリスターパック等の各種保形具類、食品トレー、飲料カップなどの容器類および飲料自動販売機のディスプレイ用ボトルなどの成形体用途に使用しやすいという観点から、絞り比0.3以上の深絞り成形が容易である、未延伸シートであることが特に好ましい。本発明のポリ乳酸系樹脂シートが1軸延伸シート、2軸延伸シート、あるいは2軸延伸シートを再度延伸した再延伸シートのいずれかのシートであって、それぞれの延伸軸の延伸倍率の積で示される面倍率が3を超える場合は、絞り比0.5以上の深絞り成形を行うときに成形不良が発生しやすい等の不具合がある場合がある。
【0045】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、ヘイズが0%以上5%以下であることが好ましい。ヘイズが0%以上5%以下の範囲であれば、このようなポリ乳酸系樹脂シートを用いてなる成形品は、内容物の視認性に優れ、商品として見栄えがよいなど、高い意匠性を有した包装容器あるいは包装シートとして好ましく用いることができる。また、ヘイズが5%より大きい場合は、透明性が不十分であり、実用化に際し、好ましくない場合がある。本発明のポリ乳酸系樹脂シートのヘイズは、特に好ましくは0.5%以上3%以下である。
【0046】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、結晶化度が10%以下であることが好ましく、結晶化度が5%以下であることが特に好ましい。結晶化度が10%を超える場合は、透明性や成形性が悪化する場合があり、特に、絞り比0.5以上の深絞り成形を行うときに成形不良が発生しやすい等の不具合がある場合がある。一方、結晶化度の下限の値は、特に限定されるものではないが、実質的に、結晶化発熱量と結晶融解吸熱量が等しい場合、すなわち0%が下限である。本発明における結晶化度とは、ポリ乳酸系樹脂シート片を試料として約5mg秤量し、窒素雰囲気下、−50℃で5分間保持後10℃/分の昇温速度で220℃の温度まで示差走査型熱量計(DSC)測定を行い、観測されたサーモグラフから、ポリ乳酸系樹脂に由来する、昇温中の結晶化により起こる結晶化発熱量:ΔHc(J/g)と結晶融解吸熱量:ΔHm(J/g)を読みとり、次の式に従って算出するものとする。
【0047】
・ 結晶化度(%)={(ΔHm−ΔHc)/93.6}×100
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、耐衝撃改良剤を含有していても良い。特に、本発明のポリ乳酸系樹脂シートが
、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有量(質量%)が40質量%を超える樹脂組成物からなる層を有している積層構成である場合は、かかる層に耐衝撃改良剤を含有することが好ましい
。ポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有量(質量%)が40質量%を超える樹脂組成物からなる層を有している積層構成である場合において、かかる層に耐衝撃改良剤が添加されてない場合、ブリスターパック等の各種保形具類、食品トレー、飲料カップなどの容器類および飲料自動販売機のディスプレイ用ボトルなどの成形体用途と使用した際に、成形体の割れが発生する等の不具合がある場合がある。
【0048】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートが耐衝撃改良剤を含有する場合において、耐衝撃改良剤の含有量は、透明性や環境性などの観点から、ポリ乳酸系樹脂シート全体の質量に対して15質量%未満とすることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。また、本発明のポリ乳酸系樹脂シート
の、すべての層に添加しても良いし、任意の1層、あるいは複数の層に添加しても良いが、通常は、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有量(質量%)が40質量%を超える樹脂組成物からなる層のみに添加することが好ましい。
【0049】
ポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有量(質量%)が40質量%を超える樹脂組成物からなる層に耐衝撃改良剤を添加する場合においては、その添加量は、環境性の観点から、かかる層のポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有量(質量%)に対して、10質量%以上30質量%以下とすることが好ましい。
【0050】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートに用いることのできる耐衝撃改良剤としては、ポリエチレン、ポリプロプレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、各種アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体(たとえば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体)、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、ジエンゴム(たとえばポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニル単量体との共重合体(たとえばスチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合せしめたもの、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエンまたはイソプレンとの共重合体、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリエステル系エラストマー、およびポリアミド系エラストマーなどを使用することができ、特に、本発明のポリ乳酸系樹脂シートの透明性や環境性の観点からは、比較的少量の添加で耐衝撃性の改善が期待できる各種ゴム粒子を好ましく用いることができる。
【0051】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートに用いることのできるゴム粒子としては、ゴム粒子が多層構造重合体であることが好ましい。ゴム成分のみの単層構成からなるゴム粒子の場合は、耐衝撃性は優れるが、ポリ乳酸との接着性、相溶性に劣る場合がある。一方で、ゴム成分の層を覆うシェル層を有する多層構造重合体のゴム粒子とすることにより、ゴム粒子とポリ乳酸の接着性や相溶性を向上させることができるため、ゴム粒子としては多層構造重合体であることが好ましい。
【0052】
前記の多層構造重合体とは、最内層(コア層)とそれを覆う1以上の層(シェル層)から構成され、また、隣接し合った層が異種の重合体から構成される、いわゆるコアシェル型と呼ばれる構造を有する重合体である。多層構造重合体を構成する層の数は、2層以上(1層のコア層と、1層以上のシェル層)であればよく、3層以上(1層のコア層と、2層以上のシェル層)または4層以上(1層のコア層と、3層以上のシェル層)であってもよい。特に好ましい多層構造重合体のゴム粒子は、1層のコア層と1層のシェル層からなる態様である。多層構造重合体としては、最外層以外の層に少なくともゴム層を有する多層構造重合体であることが好ましい。
【0053】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートに用いることのできるゴム粒子が多層構造重合体である場合において、ゴム層の種類は、ゴム弾性を有する重合体成分から構成されるものであればよい。例えば、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分またはエチレンプロピレン成分などを重合させたものから構成されるゴムが挙げられる。ゴム層として好ましく用いられる重合体成分としては、例えば、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分、スチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分、アクリロニトリル単位やメタクリロニトリル単位などのニトリル成分およびブタジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン成分を重合させたものから構成されるゴムである。また、これらの成分を2種以上組み合せて共重合させたものから構成されるゴムも好ましく用いることができる。
【0054】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートに用いることのできるゴム粒子が多層構造重合体である場合において、ゴム層以外の層の種類は、ゴム弾性を有さない熱可塑性を有する重合体成分から構成されるものであり、ゴムよりもガラス転移点が高い重合体成分が好ましい。このような熱可塑性を有する重合体としては、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、グリシジル基含有ビニル系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸系単位またはその他のビニル系単位などから選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体が挙げられ、中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、不飽和グリシジル基含有単位および不飽和ジカルボン酸無水物系単位から選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体が好ましく、さらに不飽和グリシジル基含有単位または不飽和ジカルボン酸無水物系単位から選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体がより好ましく用いられる。
【0055】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートに用いることのできるゴム粒子が多層構造重合体である場合において、最外層の種類は、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、グリシジル基含有ビニル系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位および/またはその他のビニル系単位などを含有する重合体が挙げられ、中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、不飽和グリシジル基含有単位および/または不飽和ジカルボン酸無水系単位を含有する重合体が好ましく、さらに不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位を含有する重合体がより好ましく用いられる。不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、さらに、(メタ)アクリル酸メチルが好ましく使用される。
【0056】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートに用いることのできるゴム粒子が多層構造重合体である場合において、その多層構造重合体の好ましい例としては、コア層と1つのシェル層から構成される多層構造重合体であり、コア層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体、コア層がブタジエン/スチレン重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体、コア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であることなどが挙げられる。さらに、ゴム層または最外層のいずれか一つもしくは、両方の層がメタクリル酸グリシジル単位を含有する重合体であることがより好ましい態様である。
【0057】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートに用いることのできるゴム粒子が多層構造重合体である場合において、コア層とシェル層の質量比は、多層構造重合体全体に対して、コア層が50質量%以上90質量%以下であることが好ましく、さらに、コア層が60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい態様である。
【0058】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートに用いられるポリ乳酸系樹脂は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とし、乳酸由来の成分が、ポリ乳酸を構成する全ての単量体成分100モル%において70モル%以上100モル%以下のものをいい、実質的にL−乳酸および/またはD−乳酸のみからなるホモポリ乳酸が好ましく用いられる。
【0059】
また、本発明のポリ乳酸系樹脂シートに用いられるポリ乳酸系樹脂は、結晶性を有することが好ましい。ポリ乳酸系樹脂が結晶性を有するとは、そのポリ乳酸系樹脂を加熱下で十分に結晶化させた後に、適当な温度範囲で示差走査熱量分析(DSC)測定を行った場合、ポリ乳酸系樹脂成分に由来する結晶融解熱が観測されることを言う。通常、ホモポリ乳酸は、光学純度が高いほど融点や結晶性が高い。ポリ乳酸系樹脂の融点や結晶性は、分子量や重合時に使用する触媒の影響を受けるが、通常、光学純度が98%以上のホモポリ乳酸では融点が170℃程度であり結晶性も比較的高い。また、光学純度が低くなるに従って融点や結晶性が低下し、例えば光学純度が88%のホモポリ乳酸では融点は145℃程度であり、光学純度が75%のホモポリ乳酸では融点は120℃程度である。光学純度が70%よりもさらに低いホモポリ乳酸では明確な融点は示さず非結晶性となる。
【0060】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートに用いられるポリ乳酸系樹脂は、結晶性を有するホモポリ乳酸と非晶性のホモポリ乳酸を混合することも可能である。この場合、非晶性のホモポリ乳酸の割合は本発明の効果を損ねない範囲で決定すれば良く、特に、比較的高い耐熱性を付与したい場合は、使用するポリ乳酸系樹脂のうち少なくとも1種に光学純度が95%以上のポリ乳酸系樹脂を含むことが好ましい。
【0061】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートに用いられるポリ乳酸系樹脂は、ステレオコンプレックス結晶を形成するポリ乳酸系樹脂を使用しても良い。ステレオコンプレックス結晶とは、例えば、Macromolecules,vol.20,904(1987)に記載されているように、ポリ−L−乳酸ユニットとポリ−D−乳酸ユニットが1対となった結晶のことである。ポリ−L−乳酸は左巻きらせん構造を有するのに対し、光学異性体のポリ−D−乳酸は右巻きらせん構造を有するところから、これらを混合すると、二成分間に立体特異的な結合が生じ、ポリ−L−乳酸あるいはポリ−D−乳酸それぞれ単独の場合に形成される結晶構造よりも緊密かつ強固な結晶構造を形成し、この結晶構造をステレオコンプレックス結晶という。
【0062】
ステレオコンプレックス結晶を形成しているポリ乳酸系樹脂は、ステレオコンプレックス結晶の形成により融点が高くなり、通常のポリ−L−乳酸あるいはポリ−D−乳酸の融点が165〜180℃であるのに対して、ステレオコンプレックス結晶を形成しているポリ乳酸系樹脂の融点は190℃〜250℃となることもある。本発明にステレオコンプレックス結晶を形成可能なポリ乳酸系樹脂を用いることは、本発明のポリ乳酸系樹脂シートがステレオコンプレックス結晶を形成したポリ乳酸系樹脂を有することとなり、その結果として高融点のポリ乳酸系樹脂シートとすることができるので、例えば、電子レンジ対応容器用途等の高い耐熱性が要求されるような用途に好適に用いられる。
【0063】
本発明に用いることができるステレオコンプレックス結晶を形成するポリ乳酸系樹脂の製造方法としては、公知の方法で製造することができ、例えば特開2006−036808号公報に例示されるような、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを溶融混練して得る方法や、特開2003−238672号公報に例示されるような、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸をブロック共重合して得る方法などを例示することができる。
【0064】
また、本発明のポリ乳酸系樹脂シートに用いられるポリ乳酸系樹脂は、L−乳酸やD−乳酸のほかに、エステル形成能を有するその他の単量体成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。共重合可能な単量体成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸および6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンおよびペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸および5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が挙げられる。これら共重合成分は、ポリ乳酸系樹脂を構成する全ての単量体成分100モル%において0モル%以上30モル%以下含有することが好ましい。
【0065】
ポリ乳酸系樹脂の製造方法としては、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。例えば、直接脱水縮合して製造する場合、乳酸類または乳酸類とヒドロキシカルボン酸類を、好ましくは有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより高分子量のポリマーが得られる。また、開環重合法としては、ヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えば、ラクチド、グリコリド等の環状エステル中間体をオクチル酸錫等の触媒を用い減圧下開環重合することによっても高分子量のポリマーが得られることも知られている。このとき、有機溶媒中での加熱還流時の水分および低分子化合物の除去の条件を調整する方法や、重合反応終了後に触媒を失活させ解重合反応を抑える方法、製造したポリマーを熱処理する方法などを用いることにより、ラクチド量の少ないポリマーを得ることができる。
【0066】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の酸化防止剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、抗酸化剤、イオン交換剤、結晶核剤および着色顔料等、あるいは滑剤として、無機粒子、有機粒子および有機滑剤を必要に応じて添加してもよい。また、これらの添加剤は、本発明のポリ乳酸系樹脂シート
の、すべての層に添加しても良いし、任意の1層あるいは複数の層に添加しても良い。ここで挙げた有機粒子とは、前記ゴム粒子とは別の有機粒子である。
【0067】
ポリ乳酸系樹脂とゴム粒子とを含有する本発明のポリ乳酸系樹脂シートを得るにあたっては、各成分を溶媒に溶かした溶液を均一混合した後、溶媒を除去して組成物を製造することも可能であるが、溶媒への原料の溶解や溶媒除去等の工程が不要な、より実用的な製造方法である、各成分を溶融混練することにより組成物を製造する溶融混練法を採用することが好ましい。
【0068】
その溶融混練方法については、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサーおよび単軸または二軸押出機等の通常使用されている混合機を用いることができる。中でも生産性の観点から、単軸または二軸押出機の使用が好ましい。
【0069】
またその混合順序については、例えば、ポリ乳酸系樹脂とゴム粒子をドライブレンド後に溶融混練機に供する方法や、予めポリ乳酸系樹脂と多層構造重合体などのゴム粒子を溶融混練したマスターバッチを作製後に、そのマスターバッチとポリ乳酸系樹脂とを溶融混練する方法等が挙げられる。また必要に応じて、その他の成分を同時に溶融混練する方法や、予めポリ乳酸系樹脂とその他の添加剤とを溶融混練したマスターバッチを作製後に、そのマスターバッチと上述したゴム粒子を含むマスターバッチとポリ乳酸系樹脂とを溶融混練する方法を用いてもよい。
【0070】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、例えば、Tダイキャスト法、インフレーション法およびカレンダー法などの既存のフィルムの製造法により得ることができるが、Tダイキャスト法による製造が好ましい。例えば、Tダイキャスト法による製造例としては、ペレットを60〜110℃の温度で3時間以上乾燥するなどして水分量を質量比で400ppm以下としたペレットを用い、シリンダー温度150℃以上240℃以下の範囲で二軸押出機を用いて溶融混練を行い、口金温度150℃以上240℃以下の範囲でTダイから押出した後、30〜40℃の温度の冷却ロールを用いて冷却し、厚み0.1mmから2.0mm程度のシートを得ることが挙げられる。この場合、シリンダー温度および口金の温度範囲は、原料の熱劣化を抑制する観点から、200℃以上220℃以下の温度範囲とすることが好ましい。一方で、ステレオコンプレックス結晶を形成しているポリ乳酸系樹脂を用いる場合は、そのステレオコンプレックス結晶を融解させる必要があるため、この場合のシリンダー温度および口金の温度範囲は、ステレオコンプレックス結晶の融解温度以上ステレオコンプレックス結晶の融解温度+20℃未満の温度範囲とすることが好ましい。
【0071】
また、ステレオコンプレックス結晶を形成可能なポリ乳酸系樹脂を用いる場合は、本発明のポリ乳酸系樹脂シートの製造工程において熱処理を施すことも可能であり、ステレオコンプレックス結晶の比率を上げるために、熱風オーブンによる熱処理工程を設けても良い。
【0072】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、コーティング適性を向上させる目的で各種の表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理および酸処理などが挙げられる。
【0073】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートの厚みは、通常0.1mmから1.0mm程度である。本発明のポリ乳酸系樹脂シートが容器用途やブリスターパック用途として用いられる場合には、ポリ乳酸系樹脂シートは通常0.15mmから0.7mm程度の厚さが好適であり、本発明のポリ乳酸系樹脂シートが印刷加工物用途として用いられる場合には、ポリ乳酸系樹脂シートは通常0.1mmから0.4mm程度の厚さが好適である。
【0074】
本発明の成形品は、前述の本発明のポリ乳酸系樹脂シートを用いて得られる成形品である。本発明のポリ乳酸系樹脂シートを用いて本発明の成形品を得るためには、本発明のポリ乳酸系シートを、真空成形法、真空圧空成形法、プラグアシスト成形法、ストレート成形法、フリードローイング成形法、プラグアンドリング成形法およびスケルトン成形法などの各種成形法を適用することで可能である。各種成形法におけるシート予熱方式としては、間接加熱方式と熱板直接加熱方式があり、間接加熱方式はシートから離れた位置に設置された加熱装置によってシートを予熱する方式であり、熱板直接加熱方式はシートと熱板が接触することによってシートを予熱する方式であるが、本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、熱板直接加熱方式の真空成形法および熱板直接加熱方式の真空圧空成形法が好ましく用いられる。
【0075】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートを用いて得られる成形品は、耐熱性を必要とするブリスターパック等の各種保形具類、食品トレー、飲料カップなどの容器類および飲料自動販売機のディスプレイ用ボトルなどの各種用途に好ましく用いることができる。
【0076】
本発明のポリ乳酸系樹脂シートおよび/または成形品は、印刷加工等を施してもよい。例えば、印刷加工を施した本発明のポリ乳酸系樹脂シートは、各種容器、ブリスターパック、カード、クリアファイルおよびクリアケース等の用途に好ましく用いることができるが、印刷加工を施す前の本発明のポリ乳酸系樹脂シートが透明である場合は、既存の印刷加工機を使用することで、クリアケース、卓上カレンダーケースおよびクリアファイル用途などに特に好ましく用いることができる。
【0077】
また一方で、本発明のポリ乳酸系樹脂シートおよび/または成形品が公知の方法で白色などに着色されている場合は、カード用途などに好ましく用いることができる。また、印刷加工の順序としては、ポリ乳酸系樹脂シートを成形加工する場合、印刷加工は成形加工前に行ってもよいし、成形加工後に行ってもよい。
【実施例】
【0078】
次に、実施例によって本発明のポリ乳酸系樹脂シートについて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0079】
[測定および評価方法]
実施例中に示す測定や評価は、次に示す条件で行った。
【0080】
(1)各層の厚み比
ポリ乳酸系樹脂シート断面を、ライカマイクロシステムズ(株)製金属顕微鏡LeicaDMLMを用いて、倍率100倍、透過光で写真撮影し、各層の厚みを測定することにより、各層の厚み比を求めた。
【0081】
(2)シート厚み(mm)
マイクロゲージを用いて、ポリ乳酸系樹脂シート全幅に対して10点の厚みを測定し、10点の厚みの平均値をシート厚みとした。
【0082】
(3)ポリ乳酸系樹脂含有量(質量%)
使用したそれぞれの原料におけるポリ乳酸系樹脂含有量と、シート全体におけるそれぞれの原料の含有量から、次の式を用いて、ポリ乳酸系樹脂シート全体におけるポリ乳酸系樹脂含有量(質量%)を算出した。
・ポリ乳酸系樹脂シート全体におけるポリ乳酸系樹脂含有量(質量%)=Σ(それぞれの原料におけるポリ乳酸系樹脂含有量(質量比)×ポリ乳酸系樹脂シート全体におけるそれぞれの原料の含有量(質量比))×100。
【0083】
(4)耐熱温度(℃)
ポリ乳酸系樹脂シートのシート製造時のシート流れ方向が長手方向になるように幅10mm×長さ80mmの短冊形のサンプル片を作成し、両面テープを用いて、金属製の直方体の台座に、サンプル片の張り出し部分の長さが60mm(すなわち、サンプル片の台座と接着される部分が20mm)になり、かつ、サンプル片の冷却ロール非接触面が台座表面と向かい合うように固定した。
【0084】
サンプル片が固定された台座ごと、任意の温度に設定されたギアオーブン内に1時間放置し、サンプル片の張り出し部分の中心点(すなわち、サンプルの張り出し部分の先端から30mm台座側の位置)の垂れ下がり量(mm、台座に固定されている位置からの垂直方向の距離)を測定し、ヒートサグ値とした。
【0085】
50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、および100℃のそれぞれの温度条件でのヒートサグ値を測定し、ヒートサグ値が30mm未満であった温度条件のなかで、もっとも高い温度を、そのサンプルの耐熱温度(℃)とした。ヒートサグ値を求める方法について、特に指定のない場合は、JIS−K−7195(1993年)に従って評価を行った。
【0086】
(5)耐熱性パラメータ
前記の(3)と(4)で求めたポリ乳酸系樹脂含有量(質量%)および耐熱温度(℃)の評価結果を用いて、次の式で算出した。
・耐熱性パラメータ=ポリ乳酸系樹脂含有量(質量%)×耐熱温度(℃)×耐熱温度(℃)。
【0087】
(6)ZaおよびZb:層Aおよび層B中のポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有量(質量%)
層Aあるいは層Bを構成する樹脂組成物全体におけるポリ(メタ)アクリレート系樹脂の含有量(質量%)を、製造の際にそれぞれの押出機に供給する配合量から算出した。
【0088】
(7)Ma1およびMb1:層Aおよび層B中のポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量
日本Warters(株)製、Warters2690を用い、PMMAを標準とし、カラム温度40℃、クロロホルム溶媒を用いて測定した。サンプルが積層シートである場合は、顕微鏡観察しながら、目的でない層を研磨して除外し、目的の層のみで構成されるサンプル片を得てから測定を行った。
【0089】
(8)Ma2およびMb2:層Aおよび層Bの原料であるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量
日本Warters(株)製、Warters2690を用い、PMMAを標準とし、カラム温度40℃、クロロホルム溶媒を用いて測定した。
【0090】
(9)ヘイズ(%)
JIS−K−7105(1981年)に準じて、ヘイズメーターHGM−2DP型(スガ試験機社製)を用いて、3回の測定値の平均値をヘイズ(%)とした。
【0091】
(10)結晶化度(%)
ポリ乳酸系樹脂シート片を試料として約5mg秤量し、窒素雰囲気下、−50℃の温度で5分間保持後10℃/分の昇温速度で、240℃の温度まで示差走査型熱量計(DSC)測定を行い、観測されたサーモグラフから、ポリ乳酸系樹脂に由来する、昇温中の結晶化により起こる結晶化発熱量:ΔHc(J/g)と結晶融解吸熱量:ΔHm(J/g)を読みとり、次の式に従って算出した。
・結晶化度(%)={(ΔHm−ΔHc)/93.6}×100
(11)環境性と耐熱性の両立
前記の(5)で求めた耐熱性パラメータの値を用いて、次の基準で評価した。
AA:耐熱性パラメータが400000以上であった。
A :耐熱性パラメータが340000以上400000未満であった。
B :耐熱性パラメータが320000以上340000未満であった。
C :耐熱性パラメータが320000未満であった。
【0092】
(12)成形性
セラミックヒーター加熱方式の真空成形機を用いて、ヒーター設定温度を300〜400℃とし、成形時のシート温度が90℃〜120℃の範囲になるような予熱条件で予熱を行い、40℃の温度に設定した直径70mmの円柱型の雌型金型を用いて成形を行った。金型の深さを任意に変更して絞り比0.3、0.5および0.7での成形を行い、次の基準で評価した。
A:絞り比0.3,0.5,0.7での成形が可能であった。
B:絞り比0.3,0.5での成形が可能であったが、絞り比0.7での成形では成形不良があった。
C:A及びBのいずれにも該当しない場合。
【0093】
(13)生産性
ポリ乳酸系樹脂シートの生産時において、積層斑に起因する外観不良(フローマーク)の有無から、次の基準で評価した。
A:積層斑に起因する外観不良(フローマーク)は発生しなかった。
B:積層斑に起因する外観不良(フローマーク)が発生することがあったが、押出機の設定温度を適正化することで解消できた。
C:積層斑に起因する外観不良(フローマーク)が発生し、押出機の設定温度を変更しても、解消することはできなかった。
【0094】
(14)透明性
前記の(9)で求めたヘイズの値を用いて、次の基準で評価した。
A:ヘイズが5%以下であった。
B:ヘイズが5%を超えた。
【0095】
(15)総合評価
前記の(11)、(12)、(13)および(14)で求めた環境性と耐熱性の両立、成形性、生産性および透明性の4項目の評価結果を用いて、次の基準で評価し、Aを合格とした。
A:AおよびAAの項目の合計が2項目以上であり、かつ、Cの項目がない。
C:前記Aに該当しない場合。
【0096】
[使用したポリ乳酸系樹脂]
(PLA−1):
D体含有割合1mol%、L体含有割合99mol%、PMMA換算の重量平均分子量19万のポリ乳酸系樹脂。
【0097】
(PLA−2):
D体含有割合5mol%、L体含有割合95mol%、PMMA換算の重量平均分子量19万のポリ乳酸系樹脂。
【0098】
(PLA−3):
D体含有割合1mol%、L体含有割合99mol%、PMMA換算の重量平均分子量13万のポリ乳酸系樹脂。
【0099】
(PLA−4):
D体含有割合1mol%、L体含有割合99mol%、PMMA換算の重量平均分子量10万のポリ乳酸系樹脂。
【0100】
(PLA−5):
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)50gをフラスコに加え、窒素雰囲気下、120℃の温度で均一に溶解させた後、温度を150℃にし、オクチル酸スズ0.05gを加え、30分間重合させることにより、ポリ−L−乳酸を得た。一方、D−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製)用いたこと以外は、前記のポリ−L−乳酸と同じ製造方法により、ポリ−D−乳酸を得た。得られたポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を用いて、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のそれぞれのポリ乳酸50質量部ずつと、オクチル酸スズ0.1質量部をベント付き二軸押出機に供給し、減圧下に、220℃の温度で溶融混練(滞留時間2分)し、ストランドカッターでペレタイズすることにより、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のポリ乳酸混合物ペレットを得た。得られたポリ乳酸混合物ペレットを真空乾燥機に入れ、13.3Paの圧力下で、140℃の温度で20時間、さらに180℃の温度で30時間反応させ、PLA−5を得た。PLA−5は、熱処理を行うことにより、ステレオコンプレックス結晶を形成する。PMMA換算の重量平均分子量は、19万である。
【0101】
[使用したポリ(メタ)アクリレート系樹脂]
(PM−1):ポリメチルメタクリレート(旭化成ケミカルズ(株)製“デルペット”(登録商標)80NH、MFR:5.5g/10min(230℃、3.8kg荷重))
(PM−2):ポリメチルメタクリレート(住友化学(株)製“スミペックス”(登録商標)LG21、MFR:21g/10min(230℃、3.8kg荷重))
[使用した耐衝撃性改良剤]
(SP−1):コアシェル型ゴム粒子(三菱レイヨン(株)製“メタブレン”(登録商標)S2001(コア層:シリコーン/アクリル重合体、シェル層:メタクリル酸メチル重合体))
(SP−2):コアシェル型ゴム粒子(ロームアンドハースジャパン(株)製“パラロイド”(登録商標)BPM500(コア層:アクリル酸ブチル重合体、シェル層:メタクリル酸メチル重合体))
[使用したその他の原料]
(S−MB):
シリカ粒子(平均粒子径:3.2μm)を10質量%、ポリ乳酸系樹脂として前記PLA−1を90質量%含有する、シリカ粒子マスターバッチ。
【0102】
(TO−MB):
酸化チタン(アナターゼ型酸化チタン、平均粒子径:0.2μm)を25質量%、ポリ乳酸系樹脂として前記PLA−1を75質量%含有する、酸化チタンマスターバッチ。
【0103】
(TU−MB):
タルク粒子(平均粒子径:2.75μm)を20質量%、ポリ乳酸系樹脂として前記PLA−1を80質量%含有する、タルク粒子マスターバッチ。
【0104】
[ポリ乳酸系樹脂シートの作成]
(実施例1
〜2(参考例)、実施例3〜4、実施例5〜8(参考例)、実施例9〜10)
表1記載の原料を表1記載の各質量%の割合で、それぞれ独立した別々のベント式二軸押出機に供給し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、口金温度を210℃に設定したTダイ口金より共押出し、共押出された溶融シートに互いに接する方向に回転するように配置したキャスティングドラム(設定温度:40℃)とポリッシングロール(設定温度:40℃)を用いて溶融シートを冷却固化して、表2記載の厚みの、本発明のポリ乳酸系樹脂シートを得た。得られたポリ乳酸系樹脂シートの評価結果を、表2に示した。ただし、それぞれのベント式二軸押出機の設定温度は210℃を基本とするが、ポリ乳酸系樹脂シートの積層斑に起因する外観不良(フローマーク)等が発生した場合は、200℃〜240℃の温度範囲で適宜変更できるものとする。
【0105】
実施例1
(参考例)と3のポリ乳酸系樹脂シートは、環境性と耐熱性がかなり高いレベルで両立されていて、さらに、成形性、生産性、透明性にも優れており、成形品用途として好適に使用できるものであった。実施例2
(参考例)のポリ乳酸系樹脂シートは、シートの積層斑に起因する外観不良(フローマーク)を解消するために層Bの樹脂組成物を供給する押出機の設定温度を225℃の温度に変更することが必要ではあったが、環境性と耐熱性がかなり高いレベルで両立されていて、さらに、成形性、透明性にも優れており、成形品用途として好適に使用できるものであった。実施例4のポリ乳酸系樹脂シートは、環境性と耐熱性が高いレベルで両立されていて、さらに、成形性、生産性、透明性にも優れており、成形品用途として好適に使用できるものであった。
【0106】
実施例5
(参考例)、7
(参考例)および8
(参考例)のポリ乳酸系樹脂シートは、環境性と耐熱性が両立されていて、さらに、成形性、生産性、透明性にも優れており、成形品用途として好適に使用できるものであった。実施例6
(参考例)のポリ乳酸系樹脂シートは、シートの積層斑に起因する外観不良(フローマーク)を解消するために層Aの樹脂組成物を供給する押出機の設定温度を240℃の温度に変更することが必要ではあったが、環境性と耐熱性が高いレベルで両立されていて、さらに、成形性、生産性、透明性にも優れており、成形品用途として、好適に使用できるものであった。実施例9のポリ乳酸系樹脂シートは、シートの積層斑に起因する外観不良(フローマーク)を解消するために層Bの樹脂組成物を供給する押出機の設定温度を240℃の温度に変更することが必要ではあったが、環境性と耐熱性が両立されていて、さらに、成形性、透明性にも優れており、成形品用途として、好適に使用できるものであった。
【0107】
実施例10のポリ乳酸系樹脂シートは、白色シートとして製造したため透明性は悪いが、環境性と耐熱性が高いレベルで両立されていて、さらに、成形性、生産性にも優れており、特に、印刷を施す等の意匠性が求められるような成形品用途として好適に使用できるものであった。
【0108】
(実施例11
(参考例))
表1記載の原料を表1記載の各質量%の割合で用いて、層Aと層Bからなる2種2層構造とし、層Aがキャスティングドラムに接するようにして生産したこと以外は、実施例1
(参考例)と同様の方法により、本発明のポリ乳酸系樹脂シートを得た。得られたポリ乳酸系樹脂シート評価結果を表2に示した。実施例11
(参考例)のポリ乳酸系樹脂シートは、環境性と耐熱性が高いレベルで両立されていて、さらに、透明性、成形性および生産性にも優れており、成形品用途として好適に使用できるものであった。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0117】
(比較例1〜4)
層Aのみからなる単層構造としたこと以外は、実施例1と同様の方法により、ポリ乳酸系樹脂シートを得た。得られたポリ乳酸系樹脂シートの原料と評価結果を、表5と表6に示した。比較例1、2、3および4のポリ乳酸系樹脂シートは、耐熱性の機能と比較してポリ乳酸系樹脂含有量が少なく、環境性と耐熱性を両立しているとはいえないものであった。
【0118】
(比較例5〜11)
実施例1と同様の方法により、ポリ乳酸系樹脂シートを得た。得られたポリ乳酸系樹脂シートの原料と評価結果を、表5と表6に示した。比較例5、6、7、8、9、10および11のポリ乳酸系樹脂シートは、比較例1〜4のポリ乳酸系樹脂シートと同様に、耐熱性の機能と比較してポリ乳酸系樹脂含有量が少なく、環境性と耐熱性を両立しているとはいえないものであった。
【0119】
【表5】
【0120】
【表6】
【0121】
(比較例12〜15)
ポリ乳酸系樹脂シート実施例1と同様の方法により、ポリ乳酸系樹脂シートを得ようとしたが、ポリ乳酸系樹脂シートの積層斑に起因する外観不良(フローマーク)が発生し、これを解消するために押出機の設定温度の適正化を試みても、ポリ乳酸系樹脂シートの積層斑に起因する外観不良(フローマーク)を解消することができず、実用に耐えるポリ乳酸系樹脂シートを得ることができなかった。得られたポリ乳酸系樹脂シートの原料と評価結果を、表7と表8に示した。
【0122】
【表7】
【0123】
【表8】