(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332085
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】金属製結束バンドを用いたアース接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 4/14 20060101AFI20180521BHJP
H01R 4/64 20060101ALI20180521BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
H01R4/14
H01R4/64 C
B60R16/02 623D
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-46687(P2015-46687)
(22)【出願日】2015年3月10日
(65)【公開番号】特開2016-167401(P2016-167401A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2017年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 肇之
【審査官】
楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−357910(JP,A)
【文献】
実開平02−084268(JP,U)
【文献】
実開昭61−006270(JP,U)
【文献】
実開平02−010253(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/00〜 4/72
B60R 16/02
F16B 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被覆電線の絶縁被覆を皮剥ぎして芯線を露出させた皮剥ぎ部に一括して巻きつけ可能な可撓性を有し、かつ前記芯線に接する内周側の面にセレーション溝を備えると共にその反対側の外周側となる面に該バンド部の長手方向と交差し、該バンド部の長手方向に間欠的に並ぶ複数の係止溝を有する金属製のバンド部と、
前記バンド部の一端に設けられ、該バンド部の他端を挿通可能な挿通孔が設けられた本体部と、
前記本体部にその挿通孔内に突出するように設けられて前記バンド部の前記係止溝に係止する係止突部とを備える金属製結束バンドを用いたアース接続構造であって、前記複数の被覆電線の皮剥ぎ部と共に車体に設けた被取付部が前記バンド部により巻きつけられているアース接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、金属製結束バンド及び金属製結束バンドを用いたアース接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のワイヤーハーネスをスプライス接続する際には、特開2010−15900号公報(下記特許文献1)に開示されるようなスプライス用の圧着端子が用いられる。このスプライス端子では、その長手方向の端部に設けた圧着部に2本の電線の芯線をそれぞれ圧着することで、この2本の電線を電気的に接続する。このようなスプライス端子では、電線を確実に圧着するために、圧着される電線の芯線径等に合わせて、スプライス端子の圧着部の内径等を設計し、電線の形状などに合わせて板材からスプライス端子を予備成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−15900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2010−15900号公報(上記特許文献1)のようなスプライス端子を用いる接続方法では、予め決められた電線の芯線径に合わせた圧着部を有するスプライス端子を用意しなければいけない。また、圧着する際には、圧着機を用いて圧着しなければならず、作業工数が増え、コストがかかる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示される金属製結束バンドは、複数の被覆電線の絶縁被覆を皮剥ぎして芯線を露出させた皮剥ぎ部に一括して巻きつけ可能な可撓性を有し、かつ前記芯線に接する内周側の面にセレーション溝を備えると共にその反対側の外周側となる面に該バンド部の長手方向と交差し、該バンド部の長手方向に間欠的に並ぶ複数の係止溝を有する金属製のバンド部と、前記バンド部の一端に設けられ、該バンド部の他端を挿通可能な挿通孔が設けられた本体部と、前記本体部にその挿通孔内に突出するように設けられて前記バンド部の前記係止溝に係止する係止突部とを備える。
【0006】
このような構成によると、中間皮剥ぎして露出した芯線の太さに合わせて、巻きつけられたバンド部の長さを調整することができる。そのため、芯線の太さに合わせて予め端子等を用意しなくても、芯線の太さや本数に合わせて芯線を一括してバンド部で束ねることができる。また、バンド部を挿通孔に挿通させて係止突部で係止するだけの簡単な作業で接続作業を終えることができ、圧着機等の特別な装置の必要がないため、作業工数やコストを削減できる。また、バンド部の内周面にセレーションを設けているため、芯線とバンド部との確実な導通を確保できる。
【0007】
本明細書に開示される金属製結束バンドの実施の態様として、以下の構成としてもよい。
前記本体部には、車体に固定されるボルトに接続可能な丸端子金具部が設けられている構成としても良い。
このような構成によると、丸端子金具部を介して、被覆電線が車体にアース接続可能になる。
【0008】
また、本明細書に開示された金属製結束バンドを用いたアース接続構造として、前記複数の被覆電線の皮剥ぎ部と共に車体に設けた被取付部が前記バンド部により巻きつけられていることによりアース接続を行っても良い。
このような構成によると、バンド部を被取付部に巻きつけるという簡単な方法で被覆電線のアース接続を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に開示された金属製結束バンド及びこの金属製結束バンドを用いたアース接続構造によれば、簡易な構成で芯線の太さに合わせて芯線同士の接続及び芯線とのアース接続作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図6】被覆電線を結束バンドで結束した状態の平面図
【
図7】被覆電線を結束バンドで結束した状態の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
実施形態1について
図1から
図7を参照して説明する。
本実施形態における金属製結束バンド(以下、単に結束バンドとする)10は、
図7に示すように、自動車内に配索される複数の被覆電線50をスプライス配線するためのものであって、導電性を有する金属で形成されている。
【0012】
被覆電線50は、
図4及び
図5に示すように、複数の金属素線からなる可撓性を有する芯線51が絶縁被覆53によって覆われた構成とされている。各被覆電線50の中間位置において、絶縁被覆53のみを切断・除去することで芯線51が露出する中間皮剥ぎ部55が設けられている。中間皮剥ぎ部55は、後述する結束バンド10のバンド部20の幅寸法よりも芯線51の露出する幅寸法が大きくなっている。
【0013】
結束バンド10は、
図1から
図3に示すように、中間皮剥ぎ部55に一括して巻きつけ可能なバンド部20と、バンド部20の一端に設けられ、バンド部20の他端(先端部20A)を挿通可能な挿通孔31が設けられた本体部30とを備えている。バンド部20には、芯線51に接する内周側の面にセレーション溝21が設けられており、外周側の面には係止溝23が設けられている。また、バンド部20は、隙間を空けた状態で略円形となるように成形されており、中間皮剥ぎ部55に巻きつけ可能な程度の可撓性を有している。
【0014】
セレーション溝21は、バンド部20の芯線51に接する内周側の面に複数並んで設けられている。具体的には、セレーション溝21は、バンド部20の長手方向と直交する方向(幅方向)に断面視略三角形状の溝が間欠的に複数並んで切り込まれることで形成されている。セレーション溝21は、バンド部20の内周面のほぼ全面に設けられており、
図7に示すように、バンド部20が中間皮剥ぎ部55に巻きつけられる際に、芯線51に食い込むようになっている。
【0015】
係止溝23は、バンド部20の芯線51に接する側の面と反対側の面(外周側の面)に複数並んで設けられている。具体的には、係止溝23は、バンド部20の長手方向と直交する方向(幅方向)に鋸歯状に連続して設けられている。具体的には、係止溝23は、バンド部20の外周面と直交する方向(板厚方向)に切り込まれた平面23Aと、平面23Aの奥端から外側に向かう斜面23Bとが連続して切り込まれることで、鋸歯状とされている。係止溝23は、バンド部20の外周面における長手方向のほぼ全面に設けられており、
図7に示すように、バンド部20が中間皮剥ぎ部55に巻きつけられる際に、芯線51の周径に応じて係止位置を変更可能としている。
【0016】
本体部30は、
図1から
図3に示すように、バンド部20の一端に一体で設けられ略立方形状をしている。本体部30は、その下面がバンド部20と面一となっている。また、本体部30は、その中央部分に上下方向(バンド部20の厚さ方向)に貫通しており、バンド部20の先端部20Aを挿通可能な挿通孔31が設けられている。
【0017】
挿通孔31の内壁には対向する内壁側に向かって突出する金属ランス33(「係止突部」の一例)が設けられている。金属ランス33は、
図7に示すように、上面が本体部30の上面と平行で下面が挿通孔31の内壁に対して斜めになっており、断面視略三角形状となっている。また、金属ランス33は、バンド部20の係止溝23に引っかかる程度まで突出している。そして、所定位置において金属ランス33の先端部が係止溝23の平面23Aに係止することで、バンド部20を所定位置に係止する。
【0018】
次に、本実施形態の結束バンド10を用いて被覆電線50同士を接続する方法について説明する。具体的には、
図4に示すように、複数本(本実施形態では2本)の被覆電線50を接続する方法について説明する。
図5に示すように、被覆電線50の中間位置において、芯線51を露出するように、絶縁被覆53を剥ぎ取って中間皮剥ぎ部55を形成する。
【0019】
図6及び
図7に示すように、この中間皮剥ぎ部55の芯線51をまとめて束ねるようにバンド部20を巻きつけ、バンド部20の先端部20Aを挿通孔31に通す。そして、バンド部20の先端部20Aを引っ張ってセレーション溝21が芯線51に若干食い込む位置で金属ランス33をバンド部20の係止溝23に係止されて締結状態を固定する。
【0020】
このように結束バンド10で中間皮剥ぎ部55の芯線51を締結することにより、芯線51同士が圧接されると共に、束ねられた芯線51の外周面がバンド部20のセレーション溝21に食い込んで導通が図られることにより、被覆電線50同士が接続される。また、被覆電線50の中間位置で結束バンド10に束ねられて、結束バンド10の両側に絶縁被覆53があるため、結束バンド10が側方にずれて抜けることがない。
【0021】
以上のように本実施形態では、中間皮剥ぎ部55で露出した芯線51の太さに合わせて、巻きつけられたバンド部20の長さを調整することができる。そのため、芯線51の太さに合わせて予め端子等を用意しなくても、芯線51の太さや本数に合わせて芯線51を一括してバンド部20で束ねることができる。また、バンド部20を挿通孔31に挿通させて金属ランス33で係止するだけの簡単な作業で接続作業を終えることができ、圧着機等の特別な装置の必要がないため、作業工数やコストを削減できる。また、バンド部20の内周面にセレーション溝21を設けているため、芯線51とバンド部20との確実な導通を確保でき、芯線51同士の導通を図ることができる。
【0022】
<他の使用例>
次に、実施形態1の結束バンド10を用いて、被覆電線50を車両のボディ70に対してアース接続する他の使用例について説明する。なお、本使用例の結束バンド10は実施形態1と同一のものをもちいるため、実施形態1と同一機能を有する部材、部位については、同一の符号を付すことで、説明を省略しまたは簡略化する。
【0023】
図8に示すように、車両のボディ70からは金属製のブラケット71(「被取付部材」の一例)が突設している。ブラケット71は上端部が折り返されることで、コの字状となっている。そして、ブラケット71のコの字状に屈曲された部分には、中間皮剥ぎ部55の芯線51と共にバンド部20が巻きつけられて締結される。
【0024】
このようにボディ70から突設したブラケット71と共に、中間皮剥ぎ部55の芯線51をバンド部20によって巻き付けられて締結されることにより、芯線51同士の導通が図れると共に、芯線51とブラケット71との導通を図ることができる。そのため、芯線51をボディ70に対してアース接続をすることができる。
【0025】
以上のように本使用例では、中間皮剥ぎ部55の芯線と共に、ボディ70から突設するブラケット71をバンド部20で巻き付けられて締結されるという簡易な構成で、被覆電線50の芯線51をアース接続することができる。
【0026】
<実施形態2>
次に、実施形態2を
図9によって説明する。
本実施形態の金属製結束バンド110では、本体部130に丸端子金具部135が設けられている点で、実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同一機能を有する部材、部位については、同一の符号を付すことで、説明を省略しまたは簡略化する。
【0027】
本体部130の下面(バンド部20の内周面と面一な面)から、バンド部20と交差する方向に丸端子金具部135が突出している。丸端子金具部135は本体部130と一体に導電性の金属から形成されている。そして、その中心には、車体から突設するスタッドボルトを挿通可能な略円形のボルト孔137が形成されている。
【0028】
そして、このボルト孔137にスタッドボルトを通してナット等で固定して、導通させる。このようにすると、中間皮剥ぎ部55の芯線51を束ねたバンド部20が、本体部130と丸端子金具部135を介して車両と電気的に接続されることになる。そのため、被覆電線50が丸端子金具部135を介して車体に対してアース接続可能になる。
【0029】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1、2では、本体部30、130に設けられた挿通孔31は、上下方向に貫通していたが、バンド部20の長手方向に貫通していても良い。
【0030】
(2)上記実施形態1、2では、セレーション溝21は、バンド部20の内周面の全面に設けられていたが、部分的に設けられていても良い。
【0031】
(3)上記実施形態1、2では、バンド部20は2本の被覆電線50を巻きつけていたが、もちろん3本以上であっても良い。
【0032】
(4)上記実施形態1、2では省略したが、バンド部20を中間皮剥ぎ部55に巻きつける際の作業性の向上のために、バンド部の側面に手で把持することが可能な程度の平面把持部が形成されていても良い。
【0033】
(5)上記実施形態1の他の使用例では、ボディ70から突設したブラケット71にバンド部20を巻きつけていたが、ボディ70に孔を設けて、ボディ70自体に巻きつけるようにしても良い。
【0034】
(6)上記実施形態2では、スタッドボルトにボルト孔137を挿通していたが、六角ボルト等で車体に固定しても良い。
【符号の説明】
【0035】
10、110…金属製結束バンド(結束バンド)
20…バンド部
21…セレーション溝
23…係止溝
30、130…本体部
31…挿通孔
33…金属ランス(係止突部)
135…丸端子金具部
137…ボルト孔
50…被覆電線
51…芯線
53…絶縁被覆
55…中間皮剥ぎ部
70…ボディ
71…ブラケット(被取付部材)